2019.01.06

‘初夢’展覧会! その二

Img     クリムトの‘ダナエ’(1907~08年)

Img_0004     クリムトの‘金魚’(1901~02年 ゾロトゥルン美)

Img_0001     ココシュカの‘風の花嫁’(1914年 バーゼル美)

Img_0002     フォーゲラーの‘夢Ⅱ’(1912年 ゲルマン国立美)

女性の肖像画や裸婦図は西洋絵画の長い歴史のなかで繰り返し描かれてきた。画風もいろいろありその刺激は見る者の感情を微妙にあるいは大きく揺すぶる。女性の姿のインパクトが強すぎて心がザワザワしてしまう画家の双璧がロセッテイ(1828~1882)とクリムト(1862~1918)。

今年は‘クリムトイヤー’かもしれない。4月の後半から2つの美術館でクリムトの回顧展が開催される。東京都美は4/23~7/10、一日遅れでスタートし1ヶ月半くらい長く興行するのが国立新美の‘ウィーンモダン’(4/24~8/25)、こちらにはシーレ(1890~1918)も登場する。

久しぶりのクリムトなので会期中はクリムト絵画が生活のなかにドドーンと入ってきそう。こういうときクリムト狂としては大事な役目を果たさなくてはならない。絵画好きには昨年のムンク同様、展覧会を大いにPRしようと思っている。

クリムトの絵で死ぬまでに会えないかと願っているのが個人蔵の‘ダナエ’とスイスのゾロトゥルン美にある‘金魚’。ともにゾクゾクっとするほどの官能性を漂わせている。このダナエがみれたら最高なのだが、個人がもっているので可能性は限りなく低い。

これに対し、‘金魚’はスイスの美術館にある。このゾロトゥルンという街はベルンの北そう遠くないところに位置し、バーゼルとチューリヒとはちょうど三角形をつくるような関係になっている。スイス美術館巡りではバーゼルもベルンも出かける予定なのでゾロトゥルン美にも寄ってみるつもり。絵と対面したら卒倒するかもしれない。

昨年はムンクの‘叫び’を2つ一緒にみることができた。長年の夢が叶ったので少し楽になった。画家の代表作をみるというのは絵画ファンにとってはひとつの‘事件’、次に実現したい‘事件’はバーゼル美にあるココシュカ(1886~1980)の‘風の花嫁’。ムンクが‘叫び’ならココシュカは魔性の女アルマとの恋を描いたこの絵。

ところで、バーゼル美名品展というのは過去にあった?スイスからはチューリヒ美や昨年のビュールレコレクションがやって来たので、今度はバーゼル美やベルン美を期待したいが、ここはロンドンのナショナルギャラリーのように貸し出しをしない美術館なのだろうか。日本の美術館でチャレンジするところがでてくると嬉しいのだが。

ラファエロ前派を彷彿させるフォーゲラ―(1872~1942)の‘夢Ⅱ’にぐっときている。画集でみつけたのはもうだいぶ前だが、こんなファンタジックな乙女の姿を描いたフォーゲラーは60歳のときソ連に移住してしまう。そして、絵のスタイルをガラッと変える。いろんな画家がいる。

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2017.03.17

アール・ヌーヴォーの煌めき ミュシャ様式!

Img_0002     ‘黄道十二宮’(1896年 堺市)       

Img     ‘ラ・ナチュール’(1899~1900年 堺市)

Img_0001     ‘クオ・ヴァディス’(1904年 堺市)

Img_0003     ‘ヒヤシンス姫’(1911年 堺市)

画家でも陶芸家でもつきあいがぐっと深まるのは回顧展に遭遇したとき。ミュシャの回顧展は幸運にもこれまで2005年(東京都美)と2010年(三鷹市美術ギャラリー)にみることができた。そのため、今回‘スラブ叙事詩’のあとの展示コーナーではお馴染みのアールヌーヴォー調のミュシャ様式を楽しむことになった。

どうしても足がとまるのが‘黄道十二宮’、心をウキウキさせる女性の整った顔立ちはCMによくでてくる佐々木希ちゃんをつい連想してしまう。おもしろい形をしているのが顔の前後にのびる金髪、まじめにみると乱れすぎているようにも感じるがすぐに美女がもっている魔力がそれをかき消す。

2010年にみた彫刻‘ラ・ナチュール’もじっとみてしまう。頭部の装飾は‘黄道十二宮’の模様が造形されている。図録にはこの彫刻の横に蛇のブレスレットと指輪が載っているが、どうも見逃したらしい。でも、前回じっくりみたのでご愛敬。

収穫は前回展示がされなかった‘クオ・ヴァディス’。こんな鑑賞欲をそそる絵が1980年にシカゴで発見されるまで行方不明だったとは。堺市蔵のコレクションではこの絵とミュシャが‘スラブ叙事詩’を描く前に仕上げた‘ハーモニー’がリカバリーできたのはついていた。おかげで堺市まで出かけることがなくなった。

ミュシャがチェコに帰国して1年後に手がけた‘ヒヤシンス姫’も忘れられない一枚。花が好きな人はすぐ反応することだろう。頭部には赤いヒヤシンスの花を飾り、手に持っている輪の装飾にもヒヤシンスの模様が使われている。

‘スラブ叙事詩’ との関連でいうと、この姫のモデルは‘東ローマ皇帝として戴冠するセルビア皇帝ステファン・ドゥシャン’の最前列に描かれている女性とよく似ている。

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2015.09.04

久しぶりのガレ、ドーム兄弟!

Img    ドーム兄弟の‘花器(ブドウとカタツムリ)’(1904年)

Img_0001  ドーム兄弟の‘銀飾金具付花器(オダマキ)’(1898~1900年)

Img_0002    ガレの‘花器(カッコウ、マツヨイグサ’(1899~1900年)

Img_0003     ‘台付蓋付花器’(1885~1889年)

情報の入っている展覧会のなかには出かけるかどうか最後まで迷うものがときどきある。今日は意を決して会期が9/6(日)までの‘アール・ヌーヴォーのガラス展’(パナソニック 汐留ミュージアム)に足を運んだ。

出品されているのはドイツのデュッセルドルフ美からやってきたガレやドーム兄弟などのガラス作品140点、チラシにはローロッパ随一のガラスコレクションと記されている。もともとガレやドーム兄弟のガラスと聞くと血が騒ぐ体質だから、行くかどうか悩む。

やはり汐留へ行こうと思ったのはドーム兄弟(オーギュスト:1853~1909、アントナン:1864~1930)のカタツムリがくっついている花器が気になってしょうがなかったから。この1点をみるため入館料を払った。ドーム兄弟のつくる花器というと森や林のなかに木々が立ち並ぶ様子をとても細い線で繊細に描いたものをすぐイメージするが、この‘ブドウとカタツムリはそれとはまったくちがいガレの作風を彷彿とさせる。

同じ種類の文様のものを箱根のポーラ美でお目にかかったことがあるが、今回目にするカタツムリのほうが5倍印象深い。このカタツムリはブドウの若葉を食べて育つエスカルゴ、この花器がチラシの大半を占めている意味がよくわかった。出かけたのは正解!

ドーム兄弟はもう一点気を惹くのがあった。オダマキのそばに蛇がいる花器、蛇は大の苦手なのだが、これまでのドーム兄弟のイメージからはとても想像できない蛇に遭遇しそのいきさつに思いをめぐらすあまり蛇の怖さを忘れてしまった。

数の多いガレ(1846~1904)はカッコウとマツヨイグサを組み合わせた花器に思わず足がとまった。こういう意匠はみたことがないので非常に新鮮、まるで日本の花鳥画をみているよう。そして、北斎の浮世絵に描かれた鯉を連想させる茶色の花器の前にも長くいた。デザインしたのはフランス人のウジェーヌ・ルソー、ジャポニズム満載の文様に見入ってしまう。

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2013.12.08

ミュシャの‘ジョブ’に影響を与えた浮世絵!

Img_0003_2     ミュシャの‘ジョブ’(1896年)

Img_0001_2     喜多川歌麿の‘婦人相学十躰 ポペンを吹く娘’(1793年)

Img_0006_2     喜多川歌麿の‘北国五色墨 川岸(かし(’(1794~95年)

先月横浜そごうでミュシャの展覧会をみたので、2日前BS朝日で放送された‘世界の名画 世紀末パリ ミュシャの旅’にすぐとびついた。この番組をみはじめてから2年経つが、ミュシャが登場したのははじめてのような気がする。今年はミュシャ(1860~1939)を美術番組でみるのは2度目、4月日曜美術館でもとりあげていた。

番組の構成は1時間全部がミュシャの話でもなく、19世紀末のパリでポスターの黄金時代を築いたもう一人の立役者ロートレックの作風にもふれ、パリで流行したアールヌーヴォーが建築の分野ではどんな形で表現されたかも紹介していたから、情報量は予想以上に多かった。

そのなかではっとする話があった。大女優サラ・ベルナールが演じた舞台の宣伝ポスター‘ジスモンダ’(1895年)がパリ中で人気を博し、一躍脚光を浴びたミュシャ、企業からはデザインの依頼が殺到し次から次と魅力的なポスター芸術が生み出されていく。

1896年に制作された‘ジョブ’はとてもぐっとくるポスターの一枚、そごうの展覧会でもお目にかかった。この絵柄の説明のなかでなんと喜多川歌麿(1753~1806)の‘ビードロを吹く娘’の名で記念切手にもなった‘婦人相学十躰 ポペンを吹く娘’がでてきた。ミュシャは歌麿の描いた美人画のポーズから霊感をうけ、この‘ジョブ’を描いたのだと。

この関係性はまったく想定外。工芸におけるアールヌーヴォーの旗手ガレだとジャポニスムや浮世絵の影響がすぐイメージされるのに、ミュシャと歌麿のコラボは思いつかなかった。たしかに、ミュシャの女性が煙草を手に持っている姿と歌麿の娘がビードロを吹いているところがなにか似ている。そして下にのびた長い髪の曲がり具合と着物の袖の流れるような曲線が造形的にパラレルに感じられる。ううーん、これはおもしろい!

歌麿の美人画で大変気に入っているのがふてぶてしい表情をした‘北国五色墨 川岸(かし)’、これは歌麿の美人画のなかでは異色の一枚。視線が向かうのはこの勝気そうな下層遊女が口にくわえた楊枝。ミュシャは‘ポペンを吹く娘’だけでなくこの絵もみたのかもしれない。

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2013.11.17

3年ぶりの‘ミュシャ展’!

Img               ミュシャの生地イヴァンチッツェ

Img_0002      ‘オー・カルチェ・ラタン誌 特別号’(1898年)

Img_0003      ‘レスタンプ・モデルヌ誌 サランボー’(1897年)

Img_0004      ‘ウェイヴァリー自転車’(1898年)

横浜そごうで今‘知られざるミュシャ展 故国モラヴィアと栄光のパリ’(10/19~12/1)が開かれている。ミュシャ(1860~1939)の描く女性には特別の思い入れがあるので、これまでミュシャ展があると足がひとりでに美術館に向かっていた。

前回みたのは3年前三鷹であった堺市が所蔵するミュシャコレクション展、これを含め3冊も図録がたまったのでミュシャはもういいかなという感じ。だから、今年森アーツセンターギャラリーで行われたものはパスした。普通ならそごうの展覧会もお休みだが、招待券をいただいたので大観展と合わせてみてきた。

タイトルの‘知られざる’が気になるところ、そのわけは今回展示されている作品161点の大半がミュシャが生まれたチェコのイヴァンチッツェ近郊に住む医師チマル博士の祖父母から3代にわたるコレクションだから。このコレクションはヨーロッパ以外でははじめて公開されるのだとか。地元の人物が蒐集したものとなるとやはり期待したくなる。

作品のなかには女優サラ・ベルナールが演じる‘ジスモンダ’などを告知するお馴染みの縦長ポスターがあるから予定通りいい気持ちになった。次々とでてくるポスター、装飾パネル、商品広告に描かれた可憐で美しい女性は顔なじみのモデルが多い。でも、はじめてみる絵柄もずいぶんあり、ついつい惹きこまれた。

ハッとしたのが‘オー・カルチェ・ラタン’。女性の膝のところに腕に花束をもった男性や女性がいる。そして後ろにも着色されてない女性たちが沢山描かれており、同様に花を持っている。これはガリバーと小人たちの世界、ミュシャがこんなおもしろい絵が描いていたのは意外だった!

‘サランボー’は雑誌についているカラー版画。目が吸い寄せられたのが立ち姿の女性の背景に描かれた文様、流麗な曲線の描写がアールヌーヴォ―の魅力を強く印象づけている。隣にも同じく版画の‘サロメ’があり、うっとりしながらみていた。

ウェイヴァリー自転車はアメリカの自転車。この雑誌広告に女性が使われている、当時、自転車に乗っていたのは主に男性だと思うが、美女を登場させ需要を喚起しようという作戦。広告のABC理論というのがある。顧客にうける広告というのは‘A’(アニマル)、‘B’(ビューティー)、‘C’(チャイルド)がでてくる。このセオリーはこの時代からはじまっている。

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2012.02.15

いつかみてみたいフォーゲラー、ルンゲの絵!

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3528_2     フォーゲラーの‘春’(1897年)

3529_2     フォーゲラーの‘夢Ⅱ’(1912年 ニュルンベルク ゲルマン国立美)

3530_3        ルンゲの‘朝’(1808年 ハンブルク美)

アートを楽しむ生活を長年やっていても、美術本ではみていながら本物にお目にかかれない画家の作品がまだだいぶある。芸術の世界は限りなく広く、そして奥が深い。

ドイツの画家でまだ縁がないのはフォーゲラー(1872~1942)とルンゲ(1777~
1810)。二人の作品情報は少なく画業の全体像がつかめてないが、知っている絵はなかなか魅力的。フォーゲラーはドイツにおけるユーゲントシュティール(アール・ヌーヴォー)の画家。

‘春’は世紀末の芸術に相応しいテーマ。白樺の林のなか、清々しい自然の美しさに溶け合うようにたたずむ女性の姿が目に心地いい。そして見たい度の強いのが‘春’同様横向きの女性が大きな丸い円を背にして装飾的に彩られた草花にとりかこまれている‘夢Ⅱ’。

クリムトの描く黄金につつまれる女性が怪しい官能美でみる者の心をわしづかみするのに対し、この安定的な三角形のフォルムで表現された女性は甘美な香りの漂う夢の世界へ誘ってくれる。いつかみてみたい。

フォーゲラーは1894年22歳のときブレーメンの北にあるヴォルプスヴェーデに移り住む。そして仲間4人とともに新たな表現を求める創作活動の拠点となる芸術家村を築いた。詩人リルケも一時、フォーゲラーが‘バルケンホフ’と名づけたアトリエにいた。これに共鳴した竹久夢二(1884~1934)は芸術家村を榛名山につくろうとしたが、これは実現しなかった。

ルンゲはフリードリヒとともにドイツロマン派を代表する画家だが、フォーゲラーよりもっと縁がうすくまったく知らないといっていい。ルンゲは33歳の若さで亡くなっている。この‘朝’が代表作といわれている。朝、昼、夕、夜の連作を考えていたようだが、朝しか完成しなかった。ミューズがハンブルク美の上から手を振っているように思えてならない。

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2010.06.27

ポーラ美蔵のアール・ヌーヴォーガラス工芸は一級品揃い!

1684_2        ガレの‘ケシ文花器’

1683_2        ガレの‘草花文耳付花器’

1686_3               ドーム兄弟の‘ダチュラ文花器’

1685_2   ルイス・C・ティファニーの‘花形花器’

ポーラ美ではじめて開催された日本画展を存分に楽しんだあとは、一階下の展示室に飾ってあるアール・ヌーヴォーのガラス工芸を楽しんだ。4,5年前一度ここへ来たときは、この部屋に入ったかどうか記憶はあやふや。で、高い料金(1800円)を払ったのだから、じっくりみた。

作家はエミール・ガレ(1846~1904)、ドーム兄弟(兄1853~1909、弟1864~
1930)、ルイズ・C・ティファニー(1848~1933)の3人。ガラス工芸だけの図録には
158点載っているから、コレクションの総数としてはプラスアαを加えて200点くらい?しかもその質はかなり高い。一級のコレクションといっていい。

部屋は全部を展示するほど広くはなく、ガレは25点(図録には89点)、ドーム兄弟25点(71点)、テイファニーが10点(10点)。企画展が変わる度に作品をローテーションしているのだろう。ドーム兄弟、ティファニーははじめてお目にかかったが、ガレは05年江戸東博であった‘ガレ展’(拙ブログ05/1/30)で見た覚えがある。

Myカラーが緑&黄色なので、この透き通る明るい緑の‘ケシ文花器’(1900)はすぐ思い出した。もうひとつ目に焼きついているのが花器のふくよかな丸みと器面に描かれた蝶に惹きつけられる‘草花文耳付花器’(1895)。下のほうにいる蛙のモティーフは北斎漫画からとられている。

ドーム兄弟への思い入れはガレと同じくらい強い。北澤美だけでなくここにもこんなにすばらしい花器があったのか!という感じ。心に響いた形状は‘ダチュラ文花器’
(1900)。黄色と青の透明地に3つのダチュラ(朝鮮朝顔)が美しく浮かび上がっている。高さ63cmの‘薔薇文花器’に遭遇したのも大きな収穫。今回は風景画や花鳥画をみているような気分にさせてくれるものは登場してなかったから、もう一回来ざるを得なくなった。

ティファニーの‘花形花器’をみるのは7年前に訪問したティファニー庭園美(松江市)以来。左の高脚杯の洒落たフリル状の造形にとても魅せられる。また、蓮の花をイメージさせる花器にも足がとまった。図録に載っているテーブルランプ2点は次回の楽しみ。

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2010.06.15

ミュシャデザインのゴージャスな宝飾品にメロメロ!

1650_2         ミュシャの‘夢想’

1651_2    ミュシャデザインによる蛇のブレスレットと指輪

1652_2    ‘サマリアの女’

1653_2    ‘自力Ⅱー犠牲と勇気’

ミュシャがデザインした有名な宝飾品をみるため、三鷹まで足をのばした。今年はミュシャ(1860~1939)の生誕150年に当たり、これを記念して現在、三鷹市美術ギャラリーでは回顧展(5/22~7/4)が行われている。ギャラリーはJR三鷹駅の改札を出て左手に進んですぐのビルの5階にある。ここへ来るのは二度目だが、駅に隣接してるのと同じだからアクセスは楽。

ミュシャ展へ3回もでかけるのは少女雑誌にでてくるような麗しい女性の絵とプラハ時代の油彩のヴァリエーションを増やすため。装飾パネル‘夢想’は東京都美(拙ブログ05/1/29)にも日本橋高島屋(07/1/11にもあったが、装飾的にデザインされた円形の花柄模様を背にした美形の女性を毎度うっとりながめてしまう。これと同じくらい好きな‘黄道十二宮’も軽く会釈をしてみた。

ビスケットやビールの宣伝ポスターや女優サラ・ベルナーレが主演した舞台、‘ジスモンダ’や‘メディア’などの縦長ポスターをみながら進んでいるが、心はミュシャがデザインした蛇のブレスレットと指輪に向かっている。ありました、ありました!このゴージャスな宝飾品が堺市のミュージアムにあることを知ったのは5年前。いつかここを訪れなければと思いつつも、なかなか機会がなかった。それが幸運なことに三鷹までお出ましいただいた。ミューズに感謝!

蛇が苦手なんていってられない。金に七宝、ルビー、ダイヤモンドをはめこんだこの指輪とセットになった腕輪を夢中になってみた。フーケはこれを複数つくったが、その一つが日本の土井君雄氏(故人、カメラのドイの創業者)のコレクションのなかにあったというのがすごい。これをみれたのは一生の思い出になる。

東京都美の展覧会ではミュシャがプラハに帰ってから描いた油彩に心を揺すぶられたが、今回もいいのが揃っている。そのなかでとくに魅せられたのは‘少女の像’(西ボヘミヤ美)、‘サマリアの女’(プラハ国立美)と大作‘自力Ⅱー犠牲と勇気’(プラハ市美)。ミュシャの作品を存分に楽しむことのできるすばらしい回顧展だった。

なお、三鷹のあと次の美術館を巡回する。
・北九州市美:7/17~8/29
・高崎市美&高崎市タワー美:9/18~11/7
・堺市博:11/2/5~3/21
・いわき市美:4/9~5/22
・金沢21世紀美:5/28~6/26

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2009.09.12

オルセー美展 パリのアール・ヌーヴォーにも見事な螺鈿装飾があった!

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美術品の鑑賞でも読書と同様に、‘螺旋式鑑賞法’を実践している。西洋美術の深堀り分野のひとつにしている‘アール・ヌーヴォー&デコ’で今年出動を決めていた展覧会は3つ。

国立新美の‘ルネ・ラリック展’(拙ブログ6/27)と今日からはじまった世田谷美の‘オルセー美 パリのアール・ヌーヴォー’(9/12~11/29)、そして茨城県陶芸美で今月26日に開幕する‘エミール・ガレ展’(9/26~11/29)。

世田谷美のアール・ヌーヴォー展は会期中、地下鉄半蔵門線の用賀駅から美術館へ直通のバスが運行されているから、いつもと違いアクセスのおっくうさは少ない。

今回公開されているのは金銀細工、装身具、椅子、家具、陶芸、ガラスなど95点。このなかにはオルセーの図録に掲載されているものが3点ある。これで海外美術館展を評価するときのMy基準はOK。立派な展覧会である。数はもっと欲張りたい気持ちもあるが、質的にはかなりいいものが揃っているから、お宝を満喫するにはちょうどいいボリュームかもしれない。

上はチラシではそのすばらしさが伝わってこないバスタールの螺鈿装飾、‘扇子・孔雀’。昨日取り上げた東博の龍に酔いしれていたら、またまた繊細で優美な孔雀の螺鈿に遭遇した。このうすピンクと緑の煌めきは声を失うくらい美しい!龍と孔雀のコラボに心がはずみ、工芸の美に接する喜びを噛みしめている。バスタールはもう一点‘扇子・大麦の穂’があるが、館の図録にはこちらが載っている。

最接近中のラリックは3点。国立新でも展示されていた‘飾りピン・ケシ’(8/12)にまたクラクラし、花を支える金属の部分の巧みな細工が目を惹く‘髪留め・はなうど1対’(真ん中)を夢中になってみた。今年はラリックの当たり年。次の楽しみはパリ装飾美。気持ちだけは美術館の前でスタンバッている。まだ、早いか。

ナンシー派の装飾家、高級家具職人マジョレルとドーム兄弟の合作‘テールランプ・睡蓮’(下)にも魅了される。ランプの明かりは夕焼け空のような感じ。これまで見たドームのガラス作品のなかでは即上位グループに入れたい名品である。

ほかで足がとまったのはカエルやトンボや蝶が意匠に使われているガレの‘婦人用机・オンベリュル’、マジョレルのマホガニー材の‘書斎机・蘭’、ボワンの七宝‘蛇形脚付き小櫃’。

流石、オルセーが所蔵するアール・ヌーヴォー、一点々をじっくり見るとすごいコレクションだなと思う。オルセーを再訪する機会があれば、これまでの倍くらい目に力が入ることだろう。

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2008.04.21

ガレとジャポニスム展

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サントリー美術館の開館1周年を記念する特別展は“ガレとジャポニスム”(3/20~
5/11)。4年前訪れた諏訪湖のほとりにある北澤美術館でガレのガラス作品に開眼した。以来、ガレの展覧会は欠かさず出かけ、拙ブログで感想記を書いてきた。

作品の質の高さ、数の多さで強く印象に残っているのが05年の“ガレ展”(江戸東博)。また、Bunkamuraの“ガレとドーム兄弟展”(06年7月)と昨年MOAであった“ガレ、ドーム、ラリック展”も大きな満足が得られた。

さて、今回のガレ展である。期待以上のいい作品が集まっている。ガレの作品だけでなくプラスアルファのおまけの展示が目を楽しませてくれる。このおまけはガレが影響を受けたジャポニスムとは何ぞや?を理解するために展示してあるものだが、切り離してみても十分楽しい。で、まずその作品のことから。

お気に入りの北斎の絵が2点ある。“北斎漫画・魚濫観世音”(拙ブログ08/1/9)と“富嶽百景・登龍の不二”。横道にそれるが、横山大観が描いた“生々流転”の最後の場面にでてくる龍は“登龍の不二”に霊感を得ている。広重は“江戸名所百景”から“堀切の花菖蒲”(3/20~4/14)と“亀戸梅屋敷”(4/16~5/11)。

さらに豪華なのがガレの作品との取り合わせで対面するとは思いもしなかった“鹿下絵新古今和歌巻断簡”(本阿弥光悦・俵屋宗達)(3/20~4/7)。工芸品にもすばらしいのがある。クリストファー・ドレッサーがデザインした壺“日本女性像”の目の覚めるような青を息を呑んでみた。

ガレの初期から晩年までに制作されたガラス作品50点あまりはほとんどがはじめて見るものだった。描かれている花や蜻蛉や昆虫などは目新しくはないが、作品の形とか色合いなどがすばらしいので、とても新鮮に感じられる。取り上げた3点はとくに魅了されたものだが、別に意識したわけではないのにどれもサントリー蔵のもの。サントリーがガレのいい作品を所蔵していることは知っていたが、これほど質の高いコレクションだとは思わなかった。

上の“花器”は透明感のある素地に浮かび上がるバッタが印象深い。真ん中の紫と白の色使いと先が開いた美しいフォルムが心に響く“花器・蛾・昼顔”も名品。そして、下の脚付杯“蜻蛉”が今回の目玉。ガレの親族が所有していたものを近年、サントリーが入手したとのこと。期待値以上の出来栄えにKOされた。

朝日新聞にこの展覧会の紹介記事が載っており、西洋でイメージされる蜻蛉のことが解説されていた。西洋人にとって蜻蛉は“ドラゴン(悪竜)フライ”で、ヘビやイモリを連想させる不吉な虫だそうだ。だから、ガレのように杯や花器の装飾模様に蜻蛉を使うなんて誰も考えない。

ところが、美しい自然に囲まれて育ち、小さいころから花や昆虫と遊んでいたガレは日本人同様、蜻蛉に対してマイナスのイメージがないから、こんな立派な蜻蛉の杯が出来上がる。良質のガラス作品はジュエリーなどの装飾品と同じ。ガレの展覧会ではいつも宝物をみたようないい気分になる。今回も二重丸。

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