2006.10.23

アール・デコ・ジュエリー展のポショワール

516現在、東京都庭園美術館で行われている“アール・デコ・ジュエリー展-宝飾デザインの鬼才シャルル・ジャコーと輝ける時代”(07/1/14まで)は事前にイメージした展示内容と異なっていたので、面食らった。

これはチラシをよく読まず、勝手な期待をしたことによるアンマッチ。てっきり、ジャコーがデザイナーした宝飾品がゴージャスにずらっと飾ってあるものと思い、それを期待して1階と2階の部屋を進んだのだが、その気配はない?!だんだん状況がつかめてきた。

今回のメインは166点あるジャコーの描いたデザイン画だった。“カルティエの宝飾品コレクションではなかったのー!”、なんという勘違い。チラシにはちゃんとそう書いてあるが、もう遅い。でも、ブシェロン、ラリックの作品、カルティエのコレクションなどアール・デコ様式の宝飾品、装身具も35点でているので、頭を切り替えて、これらを楽しむことにした。デザインや形の美しさ、光の輝きにうっとりしたのは、ラリックの“ブローチ、4匹の魚”、フーケの“バンドー”、ブシェロンの“ブレスレット”、そしてジャコーのデザインでカルティエが製作した“ブローチ、棕櫚(しゅろ)”。

シャルル・ジャコーのデザイン画に興味深いのがあった。中国の古美術や日本の漆芸、印籠などからもジャコーはヒントを得たようで、1914年頃描かれた“ヴァニティ・ケース”(小物入れ)には印籠の収納機能を取り入れている。円筒状の箱を三つに区切り、胴部に巻きたばこのパイプと煙草を入れ、下にはマッチ、上には白粉箱と口紅を収納する。女性の喜びそうなデザインを生み出すことに創作のエネルギーを注ぐだけでなく、使い勝手にも気を配る親切設計になっているのが面白い。ジャポニスムブームではじまった日本の工芸品への関心がアール・デコの時代ではさらに、細かいところにまで及んでいたことに驚かされる。

ジャコーのデザイン画より見てて数倍楽しかったのが、アール・デコ期に発行された“ガゼット・デュ・ボントン”など高級ファッション雑誌のポショワール(ステンシル版画)。ポショワールは型紙に色をつけたい部分に穴をあけ、そこにインクを含ませた筆やスポンジで色を塗る方法。今回、ルパープ、バルビエら一流イラストレーターが制作したファッションプレートが58点でている。

そのなかで、何点もあるジョルジュ・バルビエの美しいポショワールに魅了された。1920年代のアール・デコファッションで着飾りや煌く装身具をつけた女性のハイカラで洒落た感じがなんともいい。右は中国趣味を取り入れた豪奢な絵、“無慈悲な美しき上流婦人”(1921)。額に優美な幅広バンドームをつけた目鼻立ちの整った女性の背景にはピンクや黄色で着色された大きな鳳凰が描かれている。この絵と空を飛ぶ鳳凰を背にし、ベールのイブニングドレスを着た女性が描かれた“魔力”(1922)を見れたのが一番の収穫だった。

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2006.07.15

旧朝香宮邸とルネ・ラリック

434一日にいくつかの展覧会を観るときは西洋美術、日本美術を混ぜず、今日は西洋もの、次は日本ものという風に美術館をまわっている。

今回の“エミール・ガレとドーム兄弟展”(Bunkamura)のあとに行った東京都庭園美術館の“旧朝香宮邸のアール・デコ展”(10/1まで)は理想的な流れだった。二つの展覧会の接点はアール・デコのガラス工芸作家、ルネ・ラリック。

ラリックの作品は昨年、集中的に観て、ガレと同じくらい好きになった。Bunkamuraでは最後にラリックの“バッカスの巫女たち”に出会い、気分がプラトー状態で庭園美術館に足を運んだら、ここにもラリックの名品があった。展覧会は予備知識・情報を必要以上にもたないで見ることにしているので、こうした思わぬ作品のコラボレーションに遭遇すると腹の底から喜びがこみ上げてくる。ミューズに感謝。

今回の展覧会は正面入り口の隣にある“小客室”の改修工事が完了したのを機に、アール・デコの館、旧朝香宮邸をじっくり観てもらおうと企画されたもの。建物を公開するのは3年ぶりらしい。1933年に竣工したこの旧朝香宮邸に当時、アール・デコの顔だったアンリ・ラパンとラリックが関わった。装飾家のラパンは大客室、大食堂、小客室などの内装設計や壁画を手がけ、ラリックは右の大客室のシャンデリア、大食堂にあるパイナップルとざくろが描かれた天井灯、正面玄関のガラスレリーフ扉などを制作した。

この美術館へは過去2回来たことがあるが、企画展にでている作品を見るのに夢中で、部屋の内装とか、つくりに目がいってなかった。もちろん、立派な邸宅であることは体いっぱいで感じていたが、シャンデリアなどがラリック作とはつゆ知らなかった。一番感動したのが見栄えのする玄関のガラスレリーフ扉。いつもあったのだろうが、ラリックが頭にないものだから、見過ごしていた。ラリックの提示した4種類のデザインから選ばれたのが翼のある女性像。が、宮邸の玄関に裸婦はふさわしくないので、女性は薄布で覆われたという。

部屋にラリックのガラス作品がいくつか飾ってあった。いずれも名品。1階の“花瓶、大きなダイア”、2階の“フォルモーズ、金魚文”、“バッカスの巫女たち”、“雀”、“香水瓶”。その中で心を揺すぶられたのが、光の角度で色調が変化するオパルセントガラスでつくられた“バッカスの巫女たち”と香水の香りの魅力をつたえるのにぴったりの丸い形と深い青が美しい“香水瓶・真夜中”。

2階の部屋では“ボンボニエール”という小さなキャンディーボックスにはじめてお目にかかった。ヨーロッパでは子供の誕生祝いや結婚式、復活祭などの祝い事のとき、砂糖菓子をこの箱に入れて、卓上に飾る習慣があり、明治以降、天皇家や宮家でも特注のボンボニエールをつくり、贈答品にしたという。精巧に細工された“鶴亀”、“犬張子”などの“慶びの小箱”を時間を忘れてみた。

予想だにしなかったラリックの名品が見れ、ボンボニエールという初ものまであった。大げさにいうほどではないが、ミニエポック的な展覧会になった。

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2005.05.10

箱根のラリック

67先週のNHK日曜美術館ではラリックを取り上げていた。見る前は今、東京都美術館で開催中のアール・デコ展を紹介するのかなと思ったが、女性司会者の二人と人気の華道家が箱根ラリック美術館を訪れるという趣向だった。

昨年、北澤美術館のガレにスポットライトをあて、今回はラリック。NHKのスタッフはアール・ヌーボーがよほど好きとみえる。

3月、開館直後の箱根ラリック美術館を訪れたときは、ラリックの制作した宝飾
品に魅せられた。ブローチ、ペンダント、ネックレス、ブレスレッドなどの形、色
合いにラリックの繊細な美意識、センスの良さを感じる。女性と蝶を合体させた
ブローチや黄金の蛇をあしらったバックルなどはっとする造形がいくつもあった。
女性と蝶のブローチはあまりの小ささにスタッフもがっかりしたのか、スタートの
タイトルのバックに使っていたが、本編のなかではカットされていた。

右の作品は1900年万国博覧会に出品した“ショーウインドウの装飾棚・蝶の
女”。ショーウインドウを囲んだブロンズ製のオブジェ。2階に展示してある。形は
ブローチと同じタイプで女性が蝶の羽のマントを羽織ってる感じ。

これをじっとみていた時、昔見た映画の一シーンを思い出した。それは羊たちの
沈黙。鉄の檻から脱出した噛み切り男、レクターが警察官を殺害し、このオブジ
ェのような形で天井に吊り上げてた場面。

この番組をみて後悔したことがある。美術館へ入る途中にクラシックカーが展示
してあり、そのカーマスコットはしっかり見たのだが、豪華列車「コート・ダジュー
ル」号のために造られた装飾パネルを見逃してしまった。入って左側のレストラ
ンは覚えてるが、その向こうにわざわざフランスから運んできた列車があった
とは。うかつだった。パンフレットをみるとちゃんと載っている。

でも、注意が必要。この中でコーヒーが飲めるのだが、完全予約制(専用予約
カウンターで予約)。料金は一人2100円(デザート付き)。次回、箱根に行く時
は是非、ラリックの美しいパネルに囲まれてコーヒーを飲んでみたい。

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2005.05.05

アール・デコ展のルネ・ラリック

225現在、東京都美術館で開催中の“アール・デコ展”(6/26まで)は2ヶ月前京都でルネ・ラリックを鑑賞したときからチェックしていた。料金は1400円。ちょっととりすぎのような気がする。

アール・ヌーボーについては、自然をモティーフにした曲線の装飾美をガレやミュシャ、ラリックの作品に見た。今回のアール・デコは西も東のわからないので、ルネ・ラリックの作品がみれれば儲けものと思い入場した。

ファッション関係の人、デザイナー、アートディレクターなどにとってはたまらない
展覧会かもしれない。作家の名前は知らないほうが多い。チラシにのってる
“電話Ⅱ”を描いたレンピッカ。はじめて観る絵。パリの匂いがぷんぷんする。
こういうときは馴染みの名前をみつけるとほっとする。マッキントッシュの煙草用
キャビネット、フランク・ロイド・ライトが制作したステンド・グラス、絵ではマリー・
ローランサン、ソニア・ドローネー、レジェ、デュフィ。

アール・デコは世界中の美術品から霊感をうけており、それを多面的にみせて
くれる。古代エジプト、アフリカのプリミティブ美術、中国、日本、中米にヒントを
えて作った装飾品や置物などはみててあきない。時間があるとじっくりみたいの
だが、この美術館は階段をいくつも登らされるので本当に疲れる。これがなけ
ればどんなに楽か。

お目当てのルネ・ラリックの作品は3点あった。いずれもロンドン、ヴィクトリア&
アルバート美術館からの出品。“バッカントの花瓶”、右の“ランプ・二羽の孔雀”、
“オレンジの花瓶”。さすがヴィクトリア&アルバートの所蔵だけあって名品。京都
でみた作品よりランクがひとつ上の感じ。孔雀のランプも見事な出来栄え。孔雀
はラリックの日本趣味の表れ。こんなランプを部屋においてみたい。

料金が高いのと疲れる展示レイアウトにうんざりだったが、ルネ・ラリックの作品
と蓼科から出品されたマリー・ローランサンのいい絵に救われた。

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2005.03.29

ルネ・ラリック展

224京都駅ビルに入っている伊勢丹の7階でルネ・ラリク展というのをやっていた(3/28まで)。正確には美術館「えき」KYOTOの企画展。こんなところに美術館があるとは知らなかった。箱根でみたラリック作品がいまひとつぐっとこなかったので、口直しのつもりで入ってみた。

展示の大半はガラス工芸。魅力的なのが一杯ある。箱根の専門館にもガラス工芸の名品が揃ってたが、ここの造形の美しさ
にも釘づけになる。ラリックは宝飾品で名をなした後、50歳頃からガラス工芸
作家に転向し、透明ガラスで光の表現を追求する。造形に多く使われたのが
裸体の女性。

そのなかで魅せられたのが右の“三足鉢・セイレン”。ギリシャ神話にでてくる
美しい歌声で船乗りを誘惑するセイレンを、透明ガラスのなかに人魚の姿で
表現している。これは代表作のひとつだそうだ。じっと見てると目の前に人魚が
ゆらゆら動いてるように見える。

この作品のとなりにはオウムやインコをモティーフにした綺麗な花瓶がある。
また、光の角度でガラスの色がブルーになったり、オレンジ色になったりする
オパルセント・ガラスを使った作品が素晴らしい。裸婦を形どった花瓶や立像
は見る位置により色が変わる。このオパルセント・ガラスは1925年頃から
ラリックが使い、アール・デコ期に大流行したらしい。

このほかにも、香水瓶、カーマスコット、時計などにラリックが創作した優雅で
モダンな造形美をみることができる。この展覧会はこの後、日本橋高島屋に
巡回する(3/30~4/11まで)。

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2005.03.23

箱根ラリック美術館

34箱根、仙石原にルネ・ラリック専門の美術館が出来たというので行ってみた。今までラリックの宝飾やガラス工芸をまとまった形で見たことがないので、期待して観た。清里にも北澤コレクションがあるそうだが、まだ訪れてないのでこの新美術館が所蔵する作品のレベルがどのくらいなのか分からない。

2階建ての美術館はガレと並ぶアール・ヌーボーの旗手であるルネ・ラリックの創作活動の全貌がわかる展示になっている。ジュエリー、香水瓶、花器、置物、建築装飾など目を奪われる作品が
綺麗に展示してある。その中で、美しいと感じたのが右のブローチ“風の精あるい
は羽のあるセイレーン”。女性と蝶を組み合わせた造形がなかなか魅力的。世界
美術館紀行で紹介されたグルベンキアン美術館(リスボン)に“蜻蛉の女”という
素晴らしいブローチがあった。ここのも同じタイプだが、ちょっと小さい。

3/17の新聞に載ったオープン通知広告にこれが使われていたので、期待を膨
らませて観たが、ありゃら。。こんなに小さいのというくらい小さい。残念。。。学芸
員の人が“皆さん、そう言われるんですよね。館長のお気に入りでして”と恐縮し
ていた。確かに、いいブローチだと思う。でも、小さすぎる。これを言ってはいけな
いが、騙されたような気分。見ごたえがあるのは2階にあるガラス工芸。なかでも
斬新なデザインの花器が秀逸。

料金は1500円。そして、またまた駐車料金を300円とってくれる。近くのポーラ
美術館が500円とるのでここも右に習えしたのだろう。これではリピート客には
なれない。

なお、日本橋高島屋でも3/30から4/11までルネ・ラリック展が開催される。この
美術館の宝飾品は全般的に小ぶりで、満足感はいまいちだった。展覧会で一番
必要な、これが目玉というのがない。ここでの消化不良が高島屋の展示品で解消
されればいいのだが。

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