2010.04.13

もっとみたい文字絵!

1455_2             ‘信’

1456_2   ‘禮義’            ‘孝悌’              ‘忠信’

1457_2    ‘風雨風虎’                  ‘龍馬’

1458_2           ‘忠’

06年、民藝館であった‘朝鮮民画展’のとき、図録はいつものように用意されてなかった。が、前年の05年9月にソウル歴史博物館で開催された‘うれしい!朝鮮民画展’の図録があったので、すぐこれを購入した。

この展覧会には日本民藝館、倉敷民藝館、静岡市芹沢銈介美、高麗美、天理大学付属天理参考館などが所蔵する民画120点が出品されたが、大半は日本の美術館にあるものだった。

日本でもこの展覧会が開催されることを強く願っていたが、残念ながら実現しなかった。でも、この図録が手に入ったから時々頁をめくり、民藝館蔵品やほかの美術館にある民画のいろんなヴァリエーションに感じ入っている。一人で楽しむのはもったいないので、おもしろい文字絵をいくつか紹介したい。

‘信’は昨日取り上げた初期の文字絵と同じタイプのものだが、字の中に挿入された絵がくっきりわかるのでみてて楽しい。‘ィ’(にんべん)には虎がおり、‘口’の左には頭が人で身が鳥の鳥人間がみえる。この鳥人間をはじめここに登場するモティーフは‘信’という文字に関連する故事を表すために描かれている。

大変興味深いのが飛白体の‘禮義、孝悌、忠信’。飛天を連想させる流れるような字画に人物や鳥、魚が描かれている。絵と文字のこの見事なコラボのインパクトは大きい。ダリやマグリットのダブルイメージから受けるのと同じくらいの新鮮さがある。とくにハットするのが人物。この図録には49の文字絵が載っているが、人物画がでてくるのはこの3点だけ。朝鮮の絵師たちの豊かな発想にはまったく恐れ入る。

‘風雨風虎、龍馬’も同じく飛白体の文字絵。じっと眺めていると、文字と絵がじわじわ融合してきて、タイトルがイメージできるようになる。‘風雨風虎’はまわりの角々した枠は風の字を思わせるし、上のほうは雨の感じ。‘龍烏’も上のくねくね曲がる線が龍で、下が馬の字というのがなんとなくわかる。絵が上手いとか下手とかでこれをみてもしょうがない。自由で屈託のない絵心にとても惹かれる。

‘忠’という字で最もおもしろいのが龍、鯉、亀が描かれたもの。ソウルであった展覧会のタイトルの通り、‘うれしい!文字絵’である。一番上の‘信’を除く3点は静岡の芹沢美の所蔵。いつか、ここで本物と対面したい。

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2010.04.12

朝鮮民画をみる楽しみ!

1451_2             申師任堂の‘草虫図’

1452_2           ‘山神図’

1454_2    文字絵‘悌、孝’

1453_2    文字絵‘義、禮’

民藝館の今回の朝鮮陶磁展では、民画が25点くらいやきものと一緒に展示してある。まとまった形で民画をみる機会は06年にあった‘朝鮮民画展’(拙ブログ06/10/10)以来なので、しっかり楽しんだ。

4年前展示された100点のなかにあったのか、それともそれ以前にみたのかは記憶が定かでないのだが、再会した‘草虫図’を釘づけになってみた。これともう一幅が対になって飾られている。この絵、どこかでみたことがあるぞ!? そう、若冲ファンならすぐピンとくる絵、‘動植綵絵・池辺群虫図’(09/8/19)。

左の下に描かれている蛙や上の蝉、そして右の蝶の形や向きがまったくよく似ている。隣の一幅にも同じ方向の下へ飛ぶ蝶がでてくるが、これも若冲の蝶と色は違うが形、向きがそっくり。これが描かれたのは朝鮮時代の16世紀だから、若冲はこの絵をみていることを以前から200%確信している。若冲が好きな人はこれだけでも民藝館へ出かける価値がある。是非ご自分の目で。

‘山神図’は不思議な形をした絵で、虎と人物の絡みはどうなっているの?という感じ。4年前、はじめてみたとき瞬間的に‘ちびまるこちゃんのおじいさんがいる!’と思った。虎よりこのおじいさんの顔が気になってしょうがない。ここにはとびっきりいい虎の絵‘虎とかささぎ’があるが、今回はでてなかった。

花鳥画では2階のメイン展示室にある大作‘蓮花牡丹鴛鴦’の全体の構成と鮮やかな色が印象深い。また、ほかの‘蓮花’ヴァージョン、‘遊魚’、‘水禽’、‘飛鶴’などにも足がとまる。

前回と同じように文字絵(4点)をじっくりみた。‘孝、悌’は初期の文字絵で文字を形づくる太い墨線のなかに文字が示す内容をあらわす中国の故事が描き込まれている。‘悌’は上に孔雀、真ん中に人物、下には筍がみえる。こういう文字絵を使い、親は子供たちに儒教思想における根本の徳目、孝、悌、忠、信、禮、義、廉、恥を教えたのである。

鳥や花などのモティーフが文字の外に出て、字画のひとつとなったタイプのものが次の‘禮、義’。‘禮’には亀、草花、鳥が使われ、‘義’ではてっぺんで二羽の鳥が交差し、文字を一部をつくっている。府中市美の‘国芳展’に猫の当字、‘ふぐ’が展示されていたが、国芳は朝鮮の文字絵に霊感を得たにちがいない。

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2009.09.23

日本民藝館の柳宗悦の世界展

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定期的に足を運んでいる日本民藝館では、現在‘柳宗悦の世界展’(9/8~11/19)が行われている。今年は柳宗悦の生誕120年にあたる。これを記念した特別展だから、日用品の美を生涯追い求めた柳が朝鮮や日本各地で集めた絵画や民藝(民衆的工芸)が目いっぱい展示されている。

のびやかで素朴な味が存分にでた陶磁器やなにげない形や意匠が心に響く木工、色の鮮やかな沖縄の着物、ユーモアたっぷりの大津絵や朝鮮の民画などを心ゆくまで楽しんだ。そのなかから過去に取り上げてないものをいくつか紹介したい。

★李朝民画 蓮華図(上の画像)
★大津絵 鬼の行水(真ん中)
★棟方志功の観音経曼茶羅・夜叉の柵(下)

朝鮮時代(18~19世紀)の民画がここには沢山ある。今回は中国の瀟湘八景図にならった‘洞庭秋月’と‘平沙落雁’の山水図2幅と‘蓮華図’、‘蓮池飛鶴図’がでている。‘蓮華図’は緑の葉の上に見事に咲いたうすピンクの花弁が目に心地いい。

ゆるキャラの元祖といってもいい大津絵も人気の絵が登場している。‘鬼の行水’は体の赤い鬼が湯桶に入ろうとしているのは見ればわかる。じゃあー、上にあるのは何?これがわかりにくい。黄色のは鬼が脱いだ虎皮の褌。これが雲にまきついているのである。

はじめてこれを見たとき、オタマジャクシのお化けかフクロウが空を飛んでいるのかと思った。どうでもいいことだが、湯からあがったとき、また雲が虎の褌をひゅーっともってきてくれるのだろうか?

柳宗悦を人生の師として尊敬していた棟方志功が描いた‘観音経曼茶羅’は3点飾ってある。お気に入りは動感描写がすばらしい‘夜叉’。カーラチャクラよりは少ないが、顔が3つ、手が5本ある。また、代表作‘華狩頌’も楽しんだ。

柳宗悦との出会いについてすこしばかり。20数年前、宗悦のつくった心偈(こころうた)を知った。これは31文字の短歌や17文字の俳句より短くして、6、7字から多くても10字くらいの句に折々の心境を託したもの。そのなかに美術鑑賞に役立つものを見つけた。‘見テ 知リソ 知リテ ナ見ソ’ (先ず見よ、かくて知れ、知ってから見るな)。

ここで‘見’は直観の意味で、‘知’は概念のこと。柳は‘まず直観を働かせて得たものを、後から概念で整理せよ。これを逆にして概念から直観を得ようとしても無駄。知ってから見ると、見方は知に邪魔されて、純に見れなくなる’と言っている。

以来、美術品を鑑賞するときはこの心偈を言い聞かせている。余分な情報や美術史家の解説文は頭のなかに入れないで、いつも白紙の状態で作品と接する。画家のモノグラフは本物を7割みるまでは読まない。これから先もこの精神で展覧会へでかけたい。

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2006.10.10

日本民藝館の朝鮮民画展

500日本民藝館で現在開催中の“朝鮮民画展”(10/3~12/20)を初日にみた。

ここへ通うようになって新しい美の世界をいくつか発見した。そのひとつが大津絵や朝鮮民画。

朝鮮の民画は1階の李朝の白磁大壺や染付瓶などがある部屋の床の間に時々飾られる。まだ数点しかお目にかかってないので、まとめて沢山見せてくれないかなと願っていたら、今回、約100点どっとでた。

朝鮮民画は19世紀から20世紀にかけて、普通の人が描いた絵で、どの家にも飾られていた。描かれる画題や作風により、花鳥画、虎図、山水画、故事人物画、右の文字絵などに分類される。朝鮮を何度も訪れ、民画の美に魅せられた柳宗悦(1889~1961)は出来栄えのいいものを何点も収集した。この中には、柳の慧眼なくしては消え去っていたかもしれない優品がいくつも含まれている。

花鳥画で目を惹くのは色が鮮やかな“麒麟図”、“神亀図”、鶴と鹿の柄を刺繍した“刺繍十長生図屏風”、画面の真ん中に蓮の花を大きく描き、水面に鴛鴦、蓮のまわりに牡丹や鳥を配した“蓮花牡丹鴛鴦”。虎図は獰猛さがでている虎もいれば、子供が描いたのではないかと思われる猫みたいな虎もいる。一番ぐっとくるのは目が黄金で輝いている虎が木の枝にとまっているかささぎを威嚇している“虎かささぎ図”。

故事人物画のなかに、虎がでてくるいい絵がある。それは“山神図”という題がついている道士の体に虎が巻きつく面白い絵。道士の顔は漫画、“ちびまるこちゃん”にでてくるおじいちゃんの顔にそっくり。見てのお楽しみ。この絵は1905年、日本の浮世絵収集家が北朝鮮の山中で手に入れたもので、それが柳の晩年の1959年に日本民藝館に寄贈されたという。

今回、興味深く見たのが文字絵。全部で10点くらいある。右は“孝・悌・忠・信・禮・義”の“孝”(右)と“悌”(左)。太い墨線のなかに魚や花びら、葉っぱ、2羽の鳥を配置して文字をつくっている。絵のような文字である。よく考えると、これもダリが使うダブルイメージの一種。魚や花を絵としても楽しめるし、文字の一部も構成している。これは面白い。

浮世絵師、歌川国芳の絵にこれと発想が一緒のものがある。“なまづ”という平仮名を猫の体を組み合わせて表現したもので、ほかに“うなぎ”、“ふぐ”などが残っている。西洋画ではアンチンボルドの有名な奇画がある。例の鼻に西洋梨、ぽっぺたに桃、目の瞳に野いちごを使ったりして人の顔を描いた人物画(拙ブログ05/2/20)。

文字は読めないほうが多いが、文字のかたちを大胆にデフォルメし、墨線と花鳥を組み合わせて絵のようにした文字絵をじっくり楽しんだ。新たな美に接したときには新鮮な喜びが得られる。年に何回かはこういう体験をしてみたい。

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2006.06.26

町田市立博物館の大津絵

254町田市立博物館では現在、“大津絵と戯画錦絵展”(7/2まで)を開催中(入館無料)。

大津絵があるのは日本民藝館だけかと思っていたが、ここも46点を所蔵している。大津絵と漫画“のらくら”の作者、田河水泡(1899~1989)から寄贈された幕末から明治にかけての戯画・錦絵を3年に一度公開しているという。民藝館で味をしめたユーモラスで親しみやすい大津絵がみられるなら、これはもう駆けつけるしかない。

前回あった“河井寛次郎展”で驚いたが、この博物館は嬉しいことに無料なのである。板橋区立美も所蔵品を展示するときはお金をとらない。大津絵は昨年、民藝館ではじめてまとまった形でみた。このとき作られた図録(東方出版、05年2月)をときおりニヤニヤしながらみている。6/25までやってた70周年記念展に代表的な画題のものがいくつか展示してあったので、ここの作品にすっと入っていけた。

画題は4つのグループに分けられる。“神仏”、“世俗”、“諷刺”、“花鳥その他”。17世紀の中頃誕生した大津絵は最初は仏画だった。これは鑑賞用ではなく江戸初期の一般の人々が土着の講や自宅で祀るための礼拝用である。“阿弥陀三尊来迎”は掛け軸としては粗末な仏画だが、仏の描写はなかなか複雑。光輪や衣の輪郭を濃い墨で太く勢いよく描いたり、雲を渦巻き文で表すなど手がこんでいる。この絵を描いたのは大津と山科を結ぶ東海道筋に店を構えていた名もなき絵師たち。街道を行き来する旅人へ売る土産物として、せっせと手書きで描いた。

大津絵の販売が軌道にのってくると画題も仏画から皆が喜びそうな世俗物、諷刺物へとひろがってくる。画題の好みも十人十色といいたいところだが、日本は“十人一色の国”(拙ブログ05/1/17)。売れ筋の絵に需要が集中する。人気NO1の絵が右の“鬼の念仏”。その次が“藤娘”。鬼の絵はこの“念仏”のほかに“鬼の三味線”、“鬼の行水”、“節分”などがある。“鬼の念仏”に描かれた布施を求めて歩く鬼は怖くなく、左手に奉加帳、背中に雨傘を担う姿に親しみを覚える。この絵にはポーズはほとんど同じだが、足の爪が伸びてるものとか歯の並びが少し違うとかいろいろなヴァリエーションがある。

“藤娘”は民藝館のより着物の柄、色の鮮やかさ、、藤が下へ垂れ下がる様子がずっといい。ユーモラスな絵の極め付きは“雷と太鼓”。大きな目をした雷が黒雲から身を乗り出して、波間に落とした太鼓を紐でぶらさげた錨で拾い上げようとしている。なんとも愛嬌のある雷である。面白くてたまらない。期待値以上のいい大津絵だった。町田市立博物館に感謝。

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