2017.02.27

柴田是真の‘鬼女図額面’と対面!

Img     王子稲荷神社

Img_0001    凧市イベントのひとつ男の子の踊り

Img_0002    史料館のなかに様子

Img_0003     柴田是真の‘鬼女図額面’(1840年)

先週の金曜日(24日)、みどりがめさんから教えてもらった王子稲荷神社の凧市をみてきた。以前から関心を寄せていた柴田是真(1807~1891)の‘鬼女図額面’がみれるというので喜び勇んでJR王子駅をめざした。この駅で下車したのははじめてなので、王子稲荷神社の方向がすっと頭に入ってこず、交番のお巡りさんや地元の人に3人くらい聞いた。

駅から10分くらいで到着した。大きな神社を想像していたが、拍子抜けするくらいこじんまりした神社だった。最初の凧市のときは屋台の前まで続く長い列ができたとのことだがすぐイメージできた。ちょうど横の舞台では凧市のイベントとして女の子や男の子の踊りが行われていた。写真は3人の男の子が勇ましく剣を構える踊り、何度も練習したのだろう、上手く演じていた。

この舞台の前が史料館。ここに社宝である是真の‘鬼女図額面’が飾られている。この鬼女をいつかみたいと長いこと思っていたが、やっと実現した。その気になって王子稲荷へ足を運べばいつでもみれると気軽に考えていたが、これが大間違い。神社の大切なお宝だから、公開されるのは正月と2月の牛の日だけ。24日を案内して下さったみどりがめさんに心からお礼を申し上げたい。ありがとうございました。

是真がこの鬼女を描いたのは1840年で33歳のとき。それから177年も経っているので板の上の墨や岩絵の具がだいぶ剥落している。でも、スピード感のある鬼女の姿がぐっと目に迫ってくるから、じっとみていると体がフリーズしてくる。見終わるとなにか大仕事をしたみたいな気分になった。そして、この絵の横にあった谷文晁(1763~1840)の龍の絵もしばらく楽しんだ。

この日は寒かったので参拝客はあまりいなかったが、そのため効率よく念願の絵を見れたのは幸運だった。途中甘酒で体をあたためてまた上野に戻った。

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2016.12.17

2016年 感動の日本美術 ベスト10!

Img     狩野芳崖の‘伏龍羅漢図’(1885年 福井県美)

Img_0002     高島野十郎の‘雨 法隆寺’(1965年)

Img_0001     ‘半跏思惟像’(三国時代・6世紀 韓国国立中央博)

Img_0003     萬鉄五郎の‘赤い目の自画像’(1912年 岩手県立博)

西洋絵画に続いて、日本美術で強く心を揺さぶった作品を10選んでみた。いずれもはじめてお目にかかったもの。

昨年ワシントンのフリーア美で長年追い続けた俵屋宗達の‘松島図’をみた。これで日本画を語る上で欠かせないピースが大方うまった。そのため、追っかけは一段落し心のなかでは日本美術はもう済みマーク状態。といっても展覧会へはもう行かないというのではなく、いたって気軽にみている。自然体の鑑賞スタイルで気になっている作品が1点あればそれで十分、それをいつくしむように長くみている。

横浜そごうで開催された福井県美蔵品による‘日本画の革新者たち展’(1/16~2/16)で目を楽しませてくれたのが狩野芳崖(1828~1888)の‘伏龍羅漢図’、こんないい芳崖の作品が福井にあったのか、という感じ。大収穫だった。

高島野十郎(1890~1975)の回顧展(4/9~6/5、目黒区美)も忘れられない展覧会だった。強烈なイメージを残す自画像からはその繊細で写実性にとむ画風はちょっと想像できないが、描かれた風景画や静物画はみる者の魂を奪うほど強い磁力を放っている。最もみたかったのが雨を表す細い線に目が吸い寄せられる‘雨 法隆寺’、しばらく高島野十郎のことが頭から離れなかった。

韓国からやって来た‘半加思惟像’は本物をいつかこの目でと思っていた彫刻、TVの美術番組で中宮寺の国宝‘半加思惟像’がとりあげられるときは必ず韓国にあるこの像がでてくるのでずっと関心を持ち続けてきた。その思いが東博で行われた‘ほほえみの御仏ー二つの半跏思惟像-’(6/21~7/10)で叶ったのだからいうことなし。見る角度によって弥勒菩薩の表情がいろいろ変わるのも名品の証。

東芸大で開かれた‘いま、被災地からー岩手・宮城・福島の美術と震災復興ー’(5/17~6/26)で昨日アップした松本竣介の‘画家の像’同様、立ち尽くしてみていたのが萬鉄五郎(1885~1927)の‘赤い目の自画像’、この絵はある展覧会に出品されたのに展示替えのため見逃した。長いこと待たされたが対面の時がきた。盛岡へ出向かなくてみれたのは幸運だった。

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2016.04.03

期待通り名画が揃った‘安田靫彦展’!

Img_0001     ‘黄瀬川陣’(重文 1940年 東近美)

Img     ‘神武天皇日向御進発’(1942年 歌舞伎座)

Img_0002     ‘王昭君’(1947年 足立美)

Img_0003     ‘伏見の茶亭’(1956年 東近美)

近代日本画の殿堂、東近美で開催されている‘安田靫彦展’(3/23~5/15)をみてきた。東近美はここ数年、画家の代表作をずらっと揃えた見事な回顧展を連続して行ってきた。今年は日本画の魅力を完璧にみせてくれる安田靫彦(1884~1974)。

これまで安田靫彦展は大きなものを2回体験した。東近美が1976年に開催したものは縁がなかったが、1993年の愛知県美と2009年の茨城県美。回顧展は2回遭遇するのが理想だから今回はオマケかもしれない。でも、こういうビッグネームの場合、未見の作品が数点でてくるだけでも大きな喜びとなる。

作品は全部で108点、会期中に展示替えがあるのはじめて安田靫彦展に出会った方は2回出動すると感動はさらに高まるにちがいない。その感動の多くを占めるのが代表作の‘黄瀬川陣’、こういう歴史画の傑作に出会ったおかげで源氏と平家の戦いのイメージが広がっていく。とくに視線が向かうのは美形の義経のみせる厳しい目。それに対し兄の頼朝はどんと構えた大将といったところ。

そして、この絵の見どころは何といっても二人の鎧兜の見事な色彩描写、義経が身に着けている鎧のグラデーションをきかせた紫、頼朝の後ろにおかれた兜の鮮やかな赤が心をとらえてはなさない。この絵を何度見ても感動するのはモーツアルトを聴くたびに心が軽くなるのと似たところがある。

東近美が所蔵する作品では豊臣秀吉を描いた‘伏見の茶亭’もお気に入りの一枚。靫彦は秀吉が茶席を楽しむ様子を2点描いており、永青文庫にあるものも並んでいた。華やかな雰囲気につつまれているのは東近美のほう。

歌舞伎座にある‘神武天皇日向御進発’をみるのは2度目、歴史画のなかでは珍しく音が聞こえてくる作品、大海原を進む船の舳先に波が打ちつける音が戦いの緊張感をいやがおうにも高める感じ。そして、船の後ろでは兵士たちが腹の底から雄たけびをあげている。

島根県の安来市にある足立美はびっくりするほど質の高い日本画をたくさん所蔵しているが、‘王昭君’はそのひとつ。茨城県美の回顧展には出品されなかったので、お目にかかるのは20年ぶりくらい。今回衣装に施された鳥の模様をじっとながめていた。

‘黄瀬川陣’同様、安田靫彦の代名詞のような作品‘飛鳥の春の額田王’は4/19~5/15の展示、これに合わてもう一回出動するつもり。

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2015.04.09

視線を釘づけにさせる清親の風刺画・肉筆画!

Img     ‘眼を廻す器械’(1885年 京都国際マンガミュージアム)

Img_0001     ‘獅子図’(1884年 千葉市美)

Img_0002          ‘親子龍之図’

Img_0003     ‘那須与一 扇の的’

天才と呼ばれる画家はいつの世でもその作品の幅がとても広い、つまり画風がひとつにとどまってなくいろいろ変わっていく。小林清親(1847~1915)の作品は一世を風靡した光線画の風景版画だけでない。風刺画、動物画、戦争画、肉筆の歴史画、戯画、なんでも描ける。

清親のポンチ絵はこれまで何点かみたことがあるが、視線が釘づけになったのがはじめてお目にかかった‘眼を廻す器械’、この絵のアイデアはスゴイ!仕事が目が回るほど忙しいことは誰しも経験することではあるが、自分の目が器械によってぐるぐる回されているとは思わない。収税、学校教育など仕事が山ほどある下級官吏、こんなに目をぐるぐる回されたらストレスがたまって発狂してしまうのではないかと心配になってくる。

久しぶりにみた‘獅子図’、今回この正方形の画面に描かれたライオンをみてある絵が瞬間的に目の前をよぎった。それはNYのMoMAにあるアンリ・ルソーの‘眠るジプシー女’(1897年)にでてくるあの怖くないライオン、清親が描いたライオンも獰猛さは感じられない。清親とルソーがコラボしていることが不思議でならない。

清親が高い技を持っていることがより印象付けられたのはずらっと並んでいた肉筆画、‘親子龍之図’も思わず夢中になってみた一枚、龍の絵はこれまで数多くみてきたが、この絵のように親子が見つめ合うモチーフははじめてみた。感心するのは胴体が雲のなかに入ったり出たりしている様子がじつにリアルに描写されていること。この表現が光の画家、清親の真骨頂。

そして、最近発見されたという屏風絵‘那須与一 扇の的’(六曲一双、左隻)にも目を見張らされた。海はサントリー美の‘若冲、蕪村’に出品されている蕪村の‘山水図屏風’と同じ銀地。こんなすばらしい絵をみるとますます清親に惚れてしまう。

今回300点ちかくでてくる作品は前期(4/5~4/26)と後期(4/28~5/17)に分けて展示される。図録をみると後期にも気になる作品がいくつも登場する。また、足を運ぶことにした。

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2014.09.24

待望の菱田春草展!

Img_0001_2     ‘王昭君’(重文 部分 1902年 鶴岡市善ぽう寺)

Img_2           ‘月夜飛鷺’(1901年 岡山市林原美)

Img_0003     ‘松に月’(1906年)

Img_0004     ‘暮色’(1901年 京博)

待望の菱田春草展(東近美)が昨日からはじまったのでさっそく出かけてきた。会期は9/23~11/3、前後期あわせて108点が出品される大規模な回顧展、上村松園、竹内栖鳳のときと同様菱田春草(1874~1911)の名画を重文4点はじめ全部みせます、とくとご覧あれ!スタイル、流石東近美、すばらしい!

チケットはすでに2枚手配し、会期が終わるまではずっと春草モードですごすつもり。事前にHPで出品作はチェックしテンションのあがりそうな作品の狙いはつけてある。最も期待していたのが‘王昭君’、この場面は醜く描かれたばっかりに匈奴へ行くことになった美女の王昭君が悲しみのうちに旅立つところ。

左端にいるのが王昭君、後ろで泣いている二人は一緒についていくのだろうか、そのほか20くらいの女性たちが別れを悲しんでいる。目を奪られるのはうすくてやわらかい質感が胡粉で精緻に表現されている女性たちの衣装。よくみると王昭君の容貌が後ろの集団でもくりかえされている。だからみんな美形、美人が泣くのをみるのはつらい。

収穫はこの絵だけではなかった。鷺の飛ぶ姿に視線が釘付けになるのが‘月夜飛鷺’、これが岡山の林原美にあることは何年も前から知っていたが、やっとお目にかかれた。ちょっと丸っこい鷺たちの羽が月の明りで美しく輝いている。羽の縁に胡粉を巧みに使う春草の類をみない画才、この光の表現はスゴイ、参りました!

色をぼかして光や空気を表現した朦朧体、‘松に月’の月明りの見事な描写を長くみていた。斜めにのびる松の向こうに月が隠れその明るい光は松のあい間からこぼれ、松全体を浮かび上がらせている。なにか感動的なシーンをみているよう。

京博に‘暮色’があることは知らなかった。本当にいい絵、思わず足がとまった。細い木の枝に鳥を一羽とまらせるのは春草のお得意の構図。そして、水に木の影が映る情景がとてもいい感じ。実際こんな夕焼けに遭遇したら感激するだろう。

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2013.12.21

待望の‘下村観山展’!

Img_0001       ‘闍維(じゃい)’(1898年 横浜美)

Img_0003     ‘蒙古襲来図’(1895年 東京大学)

Img      ‘弱法師(よろぼし)’(重文 1915年 東博)

Img_0002             ‘酔李白’(1918年 北野美)

今年の後半、横浜では関心の高い日本画家の回顧展が3つ続いた。まず‘横山大観展’(横浜美)があり、次が‘今村紫紅展’(三渓園)、そして最後が‘下村観山展’(横浜美 12/7~2/11)。

下村観山(1873~1930)の回顧展を体験するのは2度目、はじめての観山展は7年前に三渓園で行われたもの。このときは重文の‘弱法師’や‘大原御幸’(東近美)などが25点出品された。今回横浜美が主催する回顧展は規模としては最大級、作品は前期(12/7~1/8)・後期(1/10~2/11)合わせて138点もでてくる。でかける前は三渓園でもみているから1回でいいかなと思ったが、図録をみると鑑賞欲をそそる作品が後期にも登場するので年が明けてからまた足を運ぶことになりそう。

展示室に入っていきなりいい絵と対面することになった。釈迦を荼毘にふすところを描いた‘闇維’、10年前はじめてこの絵をみたときなんて読むのはわからなかったが、今は‘じゃい’(荼毘のこと)とすっといえるようになった。やっぱりすごい絵。息を吞んで見入ってしまう。

次に足がとまったのが観山が22歳のときに描いた‘蒙古襲来図’、これは初見の絵だが迫力のある戦闘シーンは劇画をみているよう。視線がむかうのは日本の武者よりも攻めてくる蒙古軍のほう、円の陣形をつくり攻め立ててくるさまは強靭でスピード感が感じられ思わず唸ってしまった。収穫の一枚。

東博にある‘弱法師’をみるのは久しぶり、この絵がみるといつも3つのことを思う。失明した俊徳丸が御爺さんのように老けていることの不思議さ、地を這うような枝ぶりが目をひく臥龍梅、そして左の金地に映える大きな夕日。弱法師のストーリーを知っていなくても、この絵はじっとみていると心が揺さぶられる。

中国や日本の歴史上の人物を描いたものが沢山でているが、最も魅了されたのが‘酔李白’、西洋風にとらえると偉大な王が眠っている感じ。また、松岡美蔵の‘一休禅師’も見ごたえのある肖像画、一休は一度みたことのある永青文庫蔵のものが後期に展示されるが、好みは今回みたもの。

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2013.11.15

三渓園で待望の‘今村紫紅展’!

Img_3     ‘護花鈴’(右隻 1911年 霊友会妙一記念館)

Img_0001_3          ‘伊達政宗’(1910年 横浜美)

Img_0005_5                 ‘枇杷ニうそ’(1913年 横浜美)

Img_0002_2                   ‘山村夕暮’(1913年 三渓園)

展覧会の華はなんといってもひとりの作家の作品を沢山鑑賞できる回顧展、だから、好きな日本画家の回顧展は規模の大小を問わず関心を持ちせっせと足を運んできた。絵をみる側からすれば、特定の画家だけでなく画集に載っているようなビッグネームであれば、あまり間隔をあけず回顧展に遭遇したいというのが切なる願い。

でも、実際はこちらの思うようにはいかず、回顧展に縁のない画家がでてくる。今年は嬉しいことに二人の画家についてはその状況が解消された。‘竹内栖鳳展’(東近美)と横浜の三渓園で開催中の‘今村紫紅展’(11/2~12/8)。今村紫紅(1880~1916)は‘横山大観展’(横浜美)のプラスフォーの一人だから、これをみたあと三渓園に向かへば紫紅にもぐっと近づくことができる。

三渓園行きのバスはJR桜木町駅前のバス乗り場2番からでている。本牧行きの8番に乗って25分くらいで着いた。ここから三渓園までは10分ほど。大観展のチケットをみせると100円引きになり700円で園内と展覧会が楽しめる。なかに入るのは3度目なので道順はわかっている。チラシを手にして展示室へ急いだ。

作品の数は全部で33点ほど、ほかに紫紅らが絵付けしたやきものが9点ある。東近美で開催されるような大規模な回顧展ではないが、なにしろ紫紅のはじめて体験する回顧展なので目に気合が入る。横浜美でも‘熱国之巻’(重文)や‘細雨’などいい絵をみたばかりだから、‘紫紅パート2’といった感じ。

期待通り目の前に現れてくれのが‘護花鈴’、これは5年前‘日展100年展’(国立新美)で出会い大変魅了された作品。大和文華館にある国宝の‘婦女遊楽図屏風’を彷彿とさせる人物描写を息を吞んでみていた。真ん中に桜の木がどんと配置され花見を楽しむ女たちがひとり々大きく描かれているので、視線は画面の右から左へとゆっくり進んでいく。一見すると平板な画面構成だが、鳥を追い払うために鈴のついた赤い紐が斜めに交差してはられているため奥行きのある空間になっている。まるでこの光景をすぐ近くでみているよう。

歴史人物画のなかでお気に入りは‘伊達政宗’、惹かれるのが構図の妙。背景の十字架は上が切れておりよくみないとこれが十字架であることに気付かない。もうひとつ上手いなと思うのは座った政宗の右足の端がこれまた画面からはみだしていること。紫紅は意図してこのように描き政宗の存在感を強調している。

紫紅の天性のカラリストぶりが発揮されているのが風景画や花鳥画。思わず足がとまったのが緑と黄色の組み合わせが目に心地いい‘枇杷ニうそ’。うそは雀よりすこし大きい鳥。枇杷の枝にとまっているうその位置がピタッときまっている。こういう構成は描けそうで描けない。本当にいい絵をみた。

‘山村夕暮’は南画の池大雅を連想させる作品、ぬくもりがありゆったりとした山村の情景が緑と墨の濃淡によって表現されている。こうしたほわほわもこもこタイプの絵が3点ある。肩の力が自然にぬけリラックスした気分でながめていた。

歴史や文化に高い見識をもち美術品に対する審美眼もそなわった原三渓(1868~1939)は今村紫紅の才能を高く評価し、作品を手に入れ支援しつづけた。その紫紅の回顧展を三渓園で体験するのは感慨深く、時の流れを感じさせる。満ち足りた思いで展示室を後にした。

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2012.07.06

流麗な線に魅せられる‘吉川霊華展’!

4045_2     ‘離騒’(1926年)

4046_2     ‘羅浮僊女’(1928年)

4044_2     ‘清香妙音’(1927年)

4047_2             ‘香具耶姫昇天 竹取物語’(1920年)

東近美では今、‘吉川霊華展’(6/12~7/29)が開かれている。この回顧展の情報を得たときから注目していた。といっても、吉川霊華(1875~1929)の絵に詳しいわけではない。せいぜい両手くらいしかみていない。

これまでこの画家の絵をみた美術館は東博、東近美、埼玉県近美、目白の野間記念館、明治神宮記念館、そして静嘉堂文庫。画家の作風に目が慣れたのは野間記念館。ここにはグループをつくって一緒に活動をしていた吉川霊華と鏑木清方(1878~1972)の作品を所蔵しており、よく展示される。

今回の回顧展には100点くらいでている。その大半が白描といわれる墨のみを用いて描かれた絵。墨で描かれた絵というと水墨画があるが、水墨画の魅力が墨の濃淡、ぼかしにあるのに対し、白描は描線を主体にして描かれる。有名な‘鳥獣人物戯画図’は白描画の代表作であり、マンガのルーツ。

初見の作品ばかりだが、最も惹かれたのは‘離騒’。出品作の多くが個人の所蔵であり、これも個人のもの。じっとみてしまうのが、雲を表わすもこもことした線や小さな山形をリズミカルに連続させるシャープな波の線、そして女性の着ている着物の襞や風になびく裾の流麗な曲線。繊細かつのびのびとした筆線と人物と龍にすこしだけみえる淡墨だけでこれほどひきつけられる、日本画の真髄をみる思いである。

梅の精、‘羅浮僊女’(埼玉県近美)をみるのは2度目。羅浮を取り囲む梅の木のV字と遠くにみえる山の横のラインを組み合わせた画面構成がとてもいい。羅浮の黒髪は濃墨で描かれているが、これよりもっと黒髪が目に飛び込んでくるのが‘清香妙音’。濃い墨で1本々緻密に表現された長い黒髪がつくる流水のような美しいフォルムを夢中になってみた。

彩色画ではかぐや姫の昇天の場面を描いた作品に魅了された。また‘太平楽之図’や静嘉堂文庫にある‘稚児童文殊’にも思わず足がとまった。白描画をみる機会は少ないのでこういう展覧会はとても新鮮。後期にもう一度出かけるかもしれない。

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2011.11.08

明治神宮に近代日本画の名品が集結!

3245_2     前田青邨の‘罌粟’(1930年 光記念館)

3243_2           安田靫彦の‘卑弥呼’(1968年 茨城県近美)

3244_2     小林古径の‘竹取物語 昇天図’(1917年 横浜美)

3246_2              冨田渓仙の‘鵜船’(1912年 茨城県近美)

11月4日の美術館めぐりでは追っかけ画との対面がつづき、感動の袋がぱんぱんになった。現在、明治神宮の宝物展示室で行われている‘和紙に魅せられた画家たち 近代日本画の挑戦’(後期10/28~11/27)も満ち足りた気分で館を後にした展覧会。

展覧会がはじまった10/1の前にTELでお目当ての前田青邨(1885~1977)の‘罌粟(けし)’と安田靫彦(1884~1978)の‘卑弥呼’の展示期間を確認し、今回は後期のみ出動することにした。作品の数は28点(前期は34点)。絵が描かれる和紙が上質のものであれば、画家の豊かな感性と高い技量がいっそう引き立つ。前に並んだ名品をみていると日本画の魅力にぐぐっと惹きこまれる感じ。


六曲一双の‘罌粟’をようやくみることができた。右隻に白い花を咲かせた沢山の罌粟が描かれているのに対し、左隻はV字のところで二つの赤がみえるほかはまだつぼみで背景の煌く金地に下半分の緑が浮きあがっている。金と緑の色面の対比がとても印象深い。

安田靫彦の‘卑弥呼’は09年茨城県近美であった回顧展(拙ブログ09/3/2)ときに展示替えでみれなかった。いずれ会えるだろうと思っていたが、意外に早くリカバリーの機会が巡ってきた。この絵は三角形の構図になっているので、伝説の卑弥呼としっかり対面できる。まず目に飛び込んできたのが身につけている衣裳の柄。着物の柄としてはあまりみたことのない魚がリズミカルに描かれている。また、背景の山々を照らす橙色の光にもひきつけられる。

古典文学に題材をとった小林古径(1883~1957)の‘竹取物語’はひさしぶりにみた。昇天するかぐや姫とお供のものたちの情景が目に心地いい白や白紫、黄色や朱色で描かれている。京近美にある‘竹取物語’は6年前の回顧展(東近美)でみて以来ご無沙汰しているから、こちらのほうもみたくなった。

冨田渓仙(1879~1936)の‘鵜船’と再会できたのは嬉しい限り。渓仙は川合玉堂や前田青邨同様、鵜の絵が大変上手い。肩の力をぬいてしばらくみていた。

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2010.10.29

今村紫紅の‘伊達政宗’をやっとみれた!

2076_2        今村紫紅の‘伊達政宗’

2077_2                   鏑木清方の‘夕河原’

2079_2      下村観山の‘闍維’

2078_2      森田曠平の‘渡来図’

ドガ展(横浜美)をみたあと、導線にそって所蔵の近代日本画を鑑賞した(26点、展示期間は9/18~1/10)。ここ数年横浜美へ来るのは年に1回くらいなので、ここの日本画をみるのは久しぶり。図録に載っている自慢の名画は大半みていることもあり、気分的には余裕の裕ちゃん。が、思いもかけなかった作品が目の前に現れたから、もう大変。

なんと、これまでなぜか縁がなかった今村紫紅(1880~1916)の‘伊達政宗’が展示されているではないか!3年前まではこの絵に会えることを期待して平常展は熱心にみていたのだが、いつまでたっても姿をみせてくれず追っかけ意欲が薄れつつあったので、なんだか得した気分。

伊達政宗はご存知、独眼龍。この武将が実際どんな顔をしていたのかは知らないが、日本画と長くつきあっているお陰でこの絵でイメージができあがっている。背景に描かれているのは縦横に組み合わさった木だけ。これは何?画面から先の部分がはみ出しているのでわかりにくいが、じつは十字架。これによって伊達政宗がキリスト教にも熱心だったことを象徴的に表しているのである。造形的にみると後ろの十字架が伊達政宗の存在感をより高めている。

今村紫紅は横浜生まれで17歳まで横浜で育ったので、この美術館には紫紅の絵が沢山ある。今回はこの絵のほかにもう4点でている。紫紅同様、ここは鎌倉に住んでいた鏑木清方(1878~1972)の絵も多く所蔵している。‘夕河原’は確か鎌倉の記念館でみた記憶がある。手に団扇をもった女性の横を向くポーズにうっとり!

下村観山(1873~1930)の‘闍維(じゃい)’をみるのは十数年ぶり。闍維とは荼毘のこと。釈迦が荼毘にふされる場面が描かれている。心を静め息を整えてみた。ほかにも‘小倉山’、‘辻説法’がある。なお、‘小倉山’は11/13(土)の‘美の巨人たち’(テレビ東京)で取り上げられる。

‘出雲阿国’(拙ブログ06/2/13)を描いた森田曠平(1916~)の回顧展に出会わないかと常々願っているのだが、なかなか実現しない。手元に画集がないから画業全体をつかめずにいるが、‘出雲阿国’、‘渡来図’、京近美蔵の‘惜春(盲目物語)’(05/10/28)のほかにどんな絵を描いているのだろうか?

山種美は何年経っても‘夜鶯(アンデルセン童話集より)’を展示してくれないし、ヴァリエーションも増えないまま。この画家はずっと縁遠いかもしれない。

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