2017.03.01

日本橋高島屋の‘加山又造展’!

Img_0001     ‘淡月’(1996年 郷さくら美)

Img      ‘倣北宋水墨山水雪景’(1989年 多摩美大美)

Img_0002     ‘紅白梅’(1965年)

Img_0003     ‘迷える鹿’(1954年)

日本橋高島屋で開催中の‘加山又造展’(2/22~3/6)をみてきた。この展覧会の情報を得たのは2月に入ってから。今年は加山又造(1927~2004)が生まれて90年にあたる。高島屋はこれを記念して久しぶりの回顧展を企画してくれた。本当にエライ!

もう何回もしゃべっているからご存知かもしれないが、加山又造は一生付きあっていこうと思っている日本画家のひとり。過去に回顧展を3回体験した。今回は陶器や着物の絵付けなども含まれており、2009年国立新美であったときとよく似た構成になっている。作品は全部で70点ほど。

立ち尽くしてみていたのがはじめてお目にかかる‘淡月’、これまで加山が得意とする夜桜を何点かみたが、1982年に描かれた光ミュージアムにあるもの(今回出品)とその14年後に仕上げられたこの絵が双璧。月の位置が絶妙でもうすこし後対面していたら感激もひとしおだったろう。

多摩美にある‘倣北宋水墨山水雪景’は回顧展には欠かせない重要作品。画面は冷え冷えとしている感じで漆黒に浮き上がる奇岩の連なる山々や手前にあるトゲトゲしい細かい枝をつけた木をみると妖怪が棲む世界を覗きこんでいるような気分。

作域の広いのが加山又造の特徴。これは高い創作能力の証、やまと絵や琳派にみられる装飾的な意匠美に深く魅せられ宗達や光琳から刺激を受けた作品が生まれた。‘紅白梅’が今熱海の新装なったMOAに飾られている‘紅白梅図屏風’とコラボしているのを天国の光琳がみたら満面の笑みをうかべるにちがいない。

初期に数多く描いた動物の絵が11点でている。このあと向かった東博の‘春日大社展’といいつながりだったのが‘迷える鹿図’、よくみると5頭が重なるように連続的に描かれている。これは絵にスピードを持ち込んだイタリアの未来派の影響。

なお、展覧会は次の美術館を巡回する。
・瀬戸内市美 4/8~6/4
・新潟県近美 7/8~8/27
・横浜高島屋 8/30~9/10
・大阪高島屋 9/13~9/25
・京都高島屋 10/4~10/16

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2016.02.06

加山又造の動物画!

Img_2     ‘月と縞馬’(1954年)

Img_0001_2     ‘月と駱駝’(1957年 新潟県近美・万代島美)

Img_0003     ‘狼’(1956年)

Img_0002     ‘冬’(1957年 東近美)

友人知人にもうまのあう人がいるように画家のなかにもうまのあう画家がいる。戦後に活躍した日本画家、加山又造(1927~2004)もそのひとり。もっと長生きしてほしかったが2004年に亡くなった。享年77。

福井県美展に展示されていた加山の‘駱駝と人’と遭遇したあと、しばらくみていなかった加山の画集を2,3冊とりだしてみた。初期の作品、動物画は加山が24歳のころから30代の初めまでに描いたもの。ここには西洋絵画のいろいろな手法がとりこまれいる。

アンリ・ルソーやバッラらの未来派の作品がオーバーラップしてくるのが‘月と縞馬’、ルソーにも未来派にも関心が深いのでこういう作品には敏感に反応する。加山は日本画家ではあるが、この絵をみると洋画家が裸足で逃げ出さざるをえないほど西洋画の手法に通じている。まさに生まれながらにして天賦の才能を授けられたといっていい。

‘月と駱駝’は砂漠のなかで生きる駱駝のイメージがピッタリの作品。この絵でおもしろいのは加山流のシュルレアリスム、砂丘の上で体を寄せ合って眠る3頭の駱駝の姿が夜空の月にそのまま映っている。このよく見ないと気づかない控えめなシュール表現が加山らしいところ。

一度みたら忘れられないほど強いインパクトをもっているのが牙をむく‘狼’、そしてすこしおとなしくなった狼や鴉をモチーフにして描いたのが動物画の集大成と位置づけられる‘冬’、この絵は西洋絵画が好きな方ならすぐぴんとくるはず。そう、ブリューゲルの‘雪中の狩人’の構図を借りて描かれている。

西洋の近代絵画だけでなく古典画のブリューゲルまで貪欲に吸収する加山又造、本当にすごい画家だなと思う。

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2015.07.15

メトロポリタンから里帰りした暁斎!

Img     ‘大和美人図屏風’(1885年 河鍋暁斎記念美)      

Img_0001     ‘蛙を捕まえる猫図’(1888年 NY メトロポリタン美)

Img_0003       ‘群猫釣鯰図’(19世紀 河鍋暁斎記念美)

Img_0002         ‘柳に白鷺図’(19世紀 河鍋暁斎記念美)

三菱一号館美で行われている河鍋暁斎(1831~1889)の回顧展(6/27~9/6)をみてきた。強烈なインパクトを放つチラシ、‘画鬼 暁斎’ 黒の地に踊る赤ピンクで書かれたキャッチコピーは‘狂っていたのは、俺か、時代か?’さて、どんな作品がでているのか。

関心のある画家の場合、一度大きな回顧展を体験すると作品への思い入れがかなり強くなる。7年前京博でいい絵がどっと集まった暁斎展があった。それまで画集をみてなんとかお目にかかりたいと願っていたものがおおよそ揃った完璧ともいえる回顧展、流石、京博!

今回の期待は当然このときみたものとは違うプラスα、その目玉がちゃんと用意されていた。その前にまず最も魅せられている暁斎の最高傑作‘大和美人図屏風’から。視線が釘づけになるのが右の女性が身に着けている着物の柄、赤の生地に様々な紋様が金泥や鮮やかな色で精緻に描かれている。こんなに目を見張らせる美人画はそうそうない。だから、とてもいい気持になる。

2013年、メトロポリタン美を訪問したとき日本美術の展示室で印象深い作品に出くわした。暁斎の激しい花鳥画4点、鷹が兎や山猫、猿を襲うものと白鷲におそわれる猿と猫を描いたもの。これとよく似た絵が目の前に現れた。全部で12点、デジャブが起きているよう。

これらはアメリカのコレクターが明治のころ蒐集したもので100図を集めた画帖のなかの一部。ほかの画家のものの含まれており暁斎の絵が何点あるのかわからないが、現地で展示されていた4点を加えると16点あることは確か。勝手な予想だが25点くらいある?

3年前同様緊張感が走ったのが蛙を捕まえている猫。この猫はまるで虎のよう。もう一点、ぎょっとするのが蜥蜴を食べる兎、腹がすけばあのおとなしいう兎だってなんでも食べることは頭では理解できるが、こういう絵はみたくない。

暁斎は国芳と同じくらい猫が好きだったのかもしれない。作品には猫が何度も登場する。はじめてお目にかかった‘群猫釣鯰図’、この猫たちが上から鯰を狙っている構図に思わず足がとまった。暁斎の戯画はどれも本当に楽しい。鳥獣戯画を描いた昔の絵師たちの魂がのりうつったような感じがしてならない。

水墨の‘柳に白鷺’や山水画の‘秋冬山水図’の前にも長くいた。プラスαが予想より良かったので満足度は高い。なかでもメトロポリタンのコレクションが大きな収穫だった。

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2015.04.11

‘明治ニッポンの美’ 圧倒されるボストン美蔵の日本画!

Img     狩野芳崖の‘谿間雄飛図’(1885~86年)

Img_0003              柴田是真の‘雪中鷹図’(19世紀後半)

Img_0002             河鍋暁斎の‘地獄太夫’(19世紀後半)

Img_0001     下村観山の‘臨済僧’(1912年)

今月4日から東芸大美ではじまった‘ダブルインパクト 明治ニッポンの美’(4/4~5/17)はチラシに載っている8つの作品のうち5点をすでにみているので今回は図録の購入はやめにし、ボストン美から里帰りした河鍋暁斎の絵をお楽しむだけでいいと思っていた。

ところが、ボストン美からやって来た絵画と工芸品をみてびっくり仰天、ええー、こんなにすごい日本画が含まれていたの!、CM の台詞ではないが‘それ、早く言ってよ!’という感じ。はっきりいって展覧会のPR戦略がまったく下手くそ、このチラシでは人は集まらない、キャッチコピーは‘明治ニッポンの美 ボストンから芳崖、暁斎、大観、春草の傑作が里帰り!’とかなんとかにしたほうが美術ファンの心をとらえる。じっさいすばらしい傑作が来ているのだから。

サプライズの極みは狩野芳崖(1828~1888)の‘谿間雄飛図’、この絵を一度みたいと思っていたがボストンにあるので見れる可能性は10%くらいと大方は諦めていた。その絵がひょいと現れた、なんという幸運、興奮した。そして、背景の雄大な滝を斜めに横切るように配置された三羽の鷹を息を呑んでみた。この大胆な構図は200%痺れる。

もうひとつ鷹の絵がでている。描いたのは天才漆職人の柴田是真(1807~1891)、太い幹の上にとまっている鷹を下に垂れる細い枝で挟み込むように描くところは是真の鋭い表現力の現れ。とにかく是真の絵はいつもはっとさせられる。

チラシに載っていた河鍋暁斎(1831~1889)の‘地獄太夫’、この絵は別ヴァージョン(福富太郎コレクション)をみたことがある。二つを比べてみるとボストンのものは一休が頭に載っていたり太夫のまわりにいる骸骨たちは黒っぽく描かれているので骸骨の印象がちょっと弱い。みどころは精緻に描写された太夫の衣装の文様。暁斎の魅力がこの衣装に凝縮されている。

横山大観の朦朧体で描かれた‘月下の海’などは回顧展があったときに出品されたが、菱田春草の‘月の出’と下村観山(1873~1930)の3点ははじめてお目にかかった。立ち尽くしてみていたのが観山の‘臨済僧’。これは大きな収穫だった。

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2014.11.11

近代日本画 I  LOVE 猫!

Img        菱田春草の‘黒き猫’(重文 1910年 永青文庫)

Img_0002     竹久夢二の‘黒船屋’(1919年 竹久夢二伊香保記念館)

Img_0001     竹内栖鳳の‘班猫’(重文 1924年 山種美)

Img_0004     加山又造の‘猫’

近代日本画家で猫をもっとも多く描いたのは誰だろうか、浮世絵師ならすぐ歌川国芳で決まりだが、正確な答えを出すには少し時間がかかる。手元にある作品情報でみると、菱田春草(1874~1911)が一番多いが、奥村土牛(1889~1990)と加山又造(1927~2004)も何度も描いているから断定はできない。

東近美で開かれた菱田春草展に出品された猫の絵は全部で8点、白い猫が2点であとは黒い猫。春草本にはプラス2点(ともに白い猫)載っている。ひとつは足立美でみたもの。すると10点、これに個人蔵などを考慮するとトータルで15点くらいかもしれない。

白い猫より黒い猫のほうが存在感があるのは黒猫のほうが目に鋭さを感じ、毛がふわふわした印象をうけるからだろう。このふわふわ感は美の巨人たちでその描き方を解明してくれたのでいっそう目が寄っていく。

ほかの画家の描いた猫でとくに身近なのは竹久夢二(1884~1934)の‘黒船屋’、この絵を部屋に飾っているので家で猫を飼っているいるようなもの。この黒猫、顔はみせてくれないが後ろ姿はとてもかわいらしい。色白でくりっと目をした女性に大きな手でやさしく抱かれているので幸せ気分だろう。

9年前鑑賞の予約をとって伊香保の記念館までクルマを走らせ長年の夢を叶えた。だから、この絵は特別の思いれがある。そして、それから2年後また予約をとり今度は‘五月之朝’と対面した。夢二式美人に心をとかされ続けている。

昨年東近美では竹内栖鳳(1864~1942)の回顧展があり‘班猫’の人気が沸騰した。くにゃっと曲がった体の柔らかさと青い目が忘れられない。じっと見つめる視線はやがて猫から女性なり、妖艶な香りを漂わせる。すごい目パワー!

加山又造(1927~2004)は家に猫を何匹も飼っていたようで、猫は得意のモチーフ。春草と同じく牡丹との組み合わせにしたり、この絵のように蝶々と戯れる猫の姿を描いている。2007年のオークションでは又造の‘猫ト牡丹’は1億5千万円の高値で落札された。

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2014.11.05

もっと見たい春草の名画!

Img_0001          ‘月下の雁’(部分 1907年)

Img_0003     ‘帰舟’(1906年 播磨屋本店)

Img_0002     ‘六歌仙’(1899年 永青文庫)

Img      ‘砧’(部分 1904年 茨城県近美)

今年開かれる日本美術の展覧会で最も期待していた菱田春草展が11/3に終了した。思い入れの強い画家の回顧展にめぐりあえる喜びというのは格別なものがある。開幕した9/23の翌日に出かけて以来、毎日のように図録をながめ春草の作品のすらしさを腹の底から噛み締めている。

春草に限らず人気の作家の回顧展が開かれる場合、作品がみられる美術館の中だけでなく、展覧会に連動して美術雑誌で特集が組まれたりTVの美術番組で紹介されるので、作家の歩んできた創作活動や名画についての情報量は相当増えることになる。

だから、回顧展というのは普段気になっていいる作家に最接近する絶好のチャンス、やはり仕事と同じで趣味や道楽の世界でも真に楽しもうと思うと選択と集中が大事。春草展が開催されている間、春草の目指した新しい日本画や技巧についての理解が飛躍的に増大したのは二つの美術番組のお蔭。

美の巨人たちと日曜美術館で作品の再現を試みてくれたのが東芸大の荒井経さん。今美術番組ではこうした専門家による作品の再現が以前に比べるとすごく増えてきており番組の魅了度を上げているが、今回は特別目に力が入った。
 
‘黒い猫’の黒さの秘密、そして近年の科学調査で明らかになったという‘賢首菩薩’に使われた西洋の絵の具の話、再現の実演では菩薩の袈裟に塗られた合成ウルトラマリンブルーの上にカドミウムイエローに朱を混ぜてつくったオレンジで点をつけていくところが目に焼きついた。

展覧会ではいくつもあった追っかけ作品に会うことができ、そしてTV番組では春草の卓越した色彩感覚を表現する技を解明してくれた。こうした体験は次に狙う作品との対面を充実したものにしてくれるにちがいない。

その見たい度の強い作品はここにあげた4点。
今回‘月下の雁’とよく似た絵があったが、よくみるとちがっていた。雁が大きく描かれたこの絵は個人の所蔵、はたしてみる機会があるか。播磨屋本店の大観の作品はいろいろみたが、春草の‘帰舟’はまだ縁がない。なかなかよさそう。

永青文庫にある‘六歌仙’も一度はみてみたい作品。‘落葉’があり‘黒き猫’(ともに重文)があり、これも永青文庫のコレクション。声がでないくらいすごい。そして、一番みれる可能性が高いのが‘砧’、茨城県近美は3回訪問したがいずれも姿を現してくれなかった。次は夢を叶えたい。

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2014.11.01

人気を集める春草の‘黒き猫’!

Img_0001          ‘黒き猫’(重文 1910年 永青文庫)

Img_0002        ‘躑躅双鳩’(1901年 福井県美)

Img_0003_2           ‘躑躅’(1906年 遠山記念館)

Img     ‘四季山水’(部分 1910年 東近美)

東近美で開催中の‘菱田春草展’は11/3で終了となるが、後期にでた22点をしっかり目のなかに入れてきた。会場は大入り満員、定番の美術番組、日曜美術館と美の巨人たちが同じタイミングで取り上げたことも展覧会に対する関心が高まった一因かもしれない。

美の巨人たちが今日の一枚としたのは菱田春草(1874~1911)が亡くなる1年前に描いた‘黒き猫’、春草がこの黒猫のふわふわした毛をどうやって描いたのかを再現していた、これが大変興味深かった。だから、絵の前では墨に胡粉を混ぜたことや裏彩色を施していたことを思い浮かべながらみていた。この番組は視聴率が高いから隣にいた人も頭のなかは同じかなと思ったりした。

春草の画集で‘躑躅双鳩’の存在を知ったのはずいぶん前のことだが、ようやく本物をみることができた。鶴や鴛鴦の絵はすぐあれこれ思い出すが、鳩を描いたものは意外にでてこない。この鳩はとても優しそうな感じですごく惹かれる。

春草は天性のカラリストだなと思わせる作品が3点ある。前期にでた‘春丘’と後期出品の‘躑躅’、そして通期に展示されている‘四季山水’。じつはもう一点色の綺麗さに惚れ込んでいる絵がある。それは熱海のMOA美が所蔵する‘富士の巻狩’(1902年)、残念ながら今回でてこなかった。

じつはMOAは春草を3点もっていて1901年に描かれた‘群鷺’もびっくりするほどの名作。MOAは春草に限らず、大観でも松園でも清方でも回顧展にほとんど貸し出さない。だから、現地でみるほかないのだがその名作揃いのコレクションにはほとほと感服させられる。

東近美の常設展示でよくお目にかかる‘四季山水’、この絵をみるたびに春草がもっと長く生きていたら、この絵のような明るい色合いの風景画が沢山生まれただろうなと思ってしまう。そしてこの傑作はいつも重文としてみている。本来なら重文にしないとおかしいのだがそうなってないのは春草はもう4点が重文指定になっており、ほかの画家のことを配慮しているから。やはり、春草は誰もが認める天才画家。

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2014.09.28

足立美術館の春草と清方!

Img_0004     横山大観の‘紅葉’(1931年)

Img     菱田春草の‘紫陽花’(1902年)

Img_0002           菱田春草の‘猫梅’(1906年)

Img_0001         鏑木清方の‘紅’(1928年)

昨日の‘美の巨人たち’では制作スタッフは島根県安来市にある足立美へ出かけ、館の一番のお宝である横山大観(1868~1958)の‘紅葉’に大接近していた。美術好きで中国地方に住んでいる人なら一度は行ってみたいと思う足立美、広島にいたころ3度足を運んだので番組の頭から身をのりだしてみていた。

この美術館は大山や皆生温泉、出雲大社などの山陰観光では入館がツアーの行程に入っている。そのため、いつ行っても駐車場は大型バスでいっぱい。入館料は2500円くらい?と都内である展覧会の料金にくらべると高めだが、中に入って見事な庭園をまのあたりにし大観らの充実した日本画、そして河井寛次郎(安来市出身)と北大路魯山人のすばらしいやきものをみたらその金額にも納得するだろう。

‘紅葉’と2年前に描かれた‘夜桜’は2000年以降に開催された大観の大規模な回顧展(2004年京近美、2008年国立新美)にペアで展示された。だから、大観に関心のある方は安来まで遠出しなくて豪華絢爛の趣きの漂う‘紅葉’を楽しまれたかもしれない。

東京でこの絵が登場するのはまだ先のことだろうが、山陰の旅を計画すれば思いの丈はすぐ叶えられる。もちろん大観に感激するが、それだけでない。ほかの画家にもいい絵が揃っており、ここの日本画コレクションの質の高さに驚かれるはず。いくつかあげてみると、

菱田春草(1874~1911)は‘紫陽花’と‘猫梅’、東近美で行われている回顧展に‘紫陽花’がでている(全期間)。現地では‘猫梅’とはお目にかかったが、‘紫陽花’は不運にも縁のなさが続いた。20年近くかかってやっとみることができた。素直に嬉しい。

まだみていない鏑木清方(1878~1872)の‘紅’を千葉市美で期待したが、やはりダメだった。この美術館は大きな回顧展のときしか作品を貸し出さない方針を貫いている。また、こんな立派な回顧展なのにダメなのということもある。

例えばここには川端龍子の‘愛染’という鴛鴦を描いたすばらしい作品があるのだが、過去2回あったビッグな回顧展に2回とも出品されなかった。とにかくいい作品ほど特別な展覧会のとき以外は出したがらない。‘紅’は100%あきらめてはいないが、出かけない限り縁がないかも。

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2014.01.29

2度目の‘下村観山展’!

Img_0005     ‘木の間の秋’(右隻 1907年 東近美)

Img_0003     ‘唐茄子畑’(左隻 1911年 東近美)      

Img_0002        ‘維摩黙然’(1924年 大倉集古館)

Img     ‘稚児文殊’(1923年 横浜美)

現在横浜美で開かれている‘下村観山展’は後期(1/10~2/11)に新たに47点が展示されるので、再度足を運んだ。地元の画家の大回顧展であることと会期が残り2週間になったことが影響してか館内は思った以上に賑わっていた。

今回の出品作で所蔵している数が多い美術館は横浜美、東近美、東博、東芸大美、三渓園。東近美蔵の4点はすべて後期の展示、そのなかで一番のお目当ては下村観山(1873~1930)が明治40年に描いた‘木の間の秋’。もし観山の絵を一点さしあげるといわれたら、躊躇なくこの絵にする。

何本も立つ木の幹をよくみると右隻の左にあるものが最も丸さが感じられる。ほかの多くは表面に幾筋もの線が縦にのびているため立体的な造形とはいえず装飾的な模様としての印象のほうが強い。もうひとつ強いインパクトをもっているのが木のまわりにはえる草花の葉の葉脈。その線は金で描かれている。この鮮やかな金が目に入ると瞬時にこの絵と琳派が結びつく。

図録でとても気になっていたのがはじめてみる‘唐茄子畑’、左隻にカボチャが描かれたこの絵は東近美でみたおぼえがないが、3年前所在がわかり東近美にはいったという。じつに見ごたえのある花の絵、葉の表と裏のリアルな描き方と斜めの垣が画面に奥行きを与えずっしり重いカボチャを引き立てている。

大倉集古館の‘維摩黙然’を久しぶりにみた。視線が寄っていくのは維摩の座っている腰掛に施された文様やそばにいる待女が身に着けている衣装の柄の精緻な描写、単眼鏡も使ってじっくりみたが維摩の髪や女の髪飾りなども細い線でていねいに表現されている。大倉コレクションの一枚に加えたくなるはず。

今回一番の収穫は初見の‘稚児文殊’、この存在感のある獅子の姿に思わず足がとまった。人物でも動物でもはやり目の描き方が作品の魅力を決定づける。いい獅子に出会った。

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2013.11.14

大観の傑作‘夜桜’と再会!

Img_0001     横山大観の‘夜桜’(左隻 1929年 大倉集古館)

Img_0011              横山大観の‘井筒’(1897年 広島県美)

Img_0009     富田渓仙の‘若菜摘’(1912年 京近美)

Img_0007                今村紫紅の‘細雨’(1915年 横浜美)

横浜美で行なわれている‘横山大観展’の後期(11/1~11/24)に展示される作品をみてきた。今回の大観展は‘大観プラスフォー’というこれまでとちがったタイプの回顧展。だから、作品がバラエティに富んでいてとても楽しい。以前出光美で‘小杉放菴と大観’(2009年)をみたが、横浜美はこれにヒントを得たのかもしれない。

作品の数(通期)でいうと、
★横山大観  81点
★大観&ほかの画家の合作 4点
★今村紫紅  12点
★小杉放菴  13点
★小川芋銭  15点
★富田渓仙  16点

後期にでている横山大観(1868~1958)の目玉作品は昭和4年に描かれた‘夜桜’、5年ぶりにみた。大観作品のなかでこの絵に最も魅せられているから、いい気分でみていた。琳派狂いの目からするとこの‘夜桜’は加山又造の‘千羽鶴’(東近美)とともに琳派のDNAを受け継ぐ大傑作。

盟友の菱田春草が長谷川等伯の描いた‘松林図’を思わせるような静謐な世界を象徴的に表現した‘落葉’(重文 永青文庫)を残したのに対し、大観は琳派の意匠性や生き生きとしたリズム感をしっかり吸収し、赤いかがり火に照らされて浮かび上がる夜の山桜を装飾性豊かに描き上げた。これをみるたびに大観の画技の高さに感服させられる。

今回嬉しい絵と再会した。広島に住んでいるときにみた‘井筒’。拙ブログの名前が‘いづつや’になっているのはこの井筒が苗字だから。そのためこの絵には特別の思い入れがある。井筒とは井戸のまわりの囲いのこと。‘伊勢物語’にでてくる幼き恋の物語が絵画化されている。なんとも微笑ましい光景、もじもじする気持ちはよくわかる。

‘井筒’と同じくらいかわいらしい絵がある。それは富田渓仙(1879~1936)の‘若菜摘’、これは5,6年前にあった渓仙の‘回顧展’でお目にかかった。舟に乗っている3人の女は大人にはとてもみえない。その柿のように四角で丸い顔がとても愛らしい、舟のむこうの岩のところでは水が激しく流れ落ち緊張感があるのに、舟のまわりはほわっとした空気が流れている。このアンバランスな構成にわけもなく惹かれる。

今村紫紅(1880~1916)の‘細雨’にも思わず足がとまる。あまりみかけない雨の絵。雨はうす緑や茶色の細い線で表現されている。よくみるとこの線は縦長の掛け軸の上から下まで途切れることなく無数に引かれている。確かに雨はまっすぐ落ちているのだからこのような描き方は不思議でもなんでもないのだが、雨の絵というすぐ広重の‘大はしあたけの夕立’にみられる斜めの線を連想するから、この雨の表現は新鮮に感じられる。

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