2016.04.26

平成28年新指定の国宝、重文の展示!

Img_0002        竹内栖鳳の‘絵になる最初’(1913年 京都市美)

Img     能阿弥の‘蓮図’(室町時代 正木美)

Img_0001     ‘粉引茶碗(三好)’(朝鮮時代16世紀 三井記念美)

東博の平成館で行われている黒田清輝美をみたあと、いつもの流れで本館に寄り道した。現在、2階で今年新たに指定された国宝、重文が展示されている(4/19~5/8)。

どんな絵や彫刻、工芸が新たに日本のお宝に加わったかは3/12の新聞によりおおまかに知っていたが、見落としていたものが目の前に現れた。それは福田平八郎の‘漣(さざなみ)’の横に並んでいた竹内栖鳳(1864~1941)の‘絵になる最初’、ええー、これも重文になるの!?という感じ。

栖鳳が女性を描いた絵は数点しかないのですぐ栖鳳ファイルからでてくる。この絵の4年前に描かれた‘アレ夕立に’は舞妓の顔を扇で隠した姿なのでちょっともどかしい、これに対して‘絵になる最初’は女性は顔を見せてくれてはいるが、手で半分隠している。恥じらいのポーズだからこれで我慢するほかない。

これが重文になるとは思ってもいなかったが、栖鳳の作品では‘班猫’についで2点目。1937年(昭和12)に第1回の文化勲章を一緒の受賞した横山大観には重文が2点あるし弟子の上村松園も2点あるので、文化審議会はバランスをとったのかもしれない。

2008年の秋、新橋の東京美術倶楽部で大阪府にある正木美の名品展が開催された。そのとき出品された能阿弥(1397~1471)の‘蓮図’がこのたび重文に指定されることになった。描かれた蓮華の位置が歌とうまく調和がとれていてほわっとした花びらが心を沈めてくれる。

やきものは3点、三井記念美の‘粉引茶碗(三好)’は2,3回みたが、三代道入の‘黒楽茶碗(青山)’はお目にかかったかどうか半々だった。家に帰ってこれまでみた黒楽茶碗をチェックしたらどの図録にも‘青山’は載ってなかった。所有している楽美術館は名碗だから特別のことがないかぎり外へは出さないのかもしれない。

京博が所蔵している尾形光琳・乾山の合作‘銹絵寒山拾得図角皿’も縁がない。角皿は結構見たが、まだいいものが残っていた。やきものは奥が深い。

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2015.08.04

画家たちの夏!

Img     小倉遊亀の‘径’(1966年 東芸大美)

Img_0001     小倉遊亀の‘娘’(1951年 滋賀県近美)

Img_0002     伊東深水の‘宵’(1933年 埼玉県近美)

Img_0004     竹久夢二の‘日本の夜’(1931~32年 夢二郷土美)

画家が人物を描くとき季節をどこに設定するかということは作品の出来上がりに関係してくる。日本人は四季の移り変わりに敏感だから、みてる絵でもその季節感を感じとる。

日本画家の小倉遊亀(1895~2000)が亡くなったのは2000年。105歳の長寿を全うして天国へ旅立った。その2年後に東近美で大規模な回顧展が開催された。これを体験したので小倉遊亀がぐっと近くなった。作品は人物画と静物画が半々くらい。

身近な人物が描かれたもののなかにお気に入りの一枚がある。心がとても和む‘径’、お母さんの後を女の子、そして犬が同じような歩き方で続いている。母親は日よけの傘をさしているから、季節は暑い夏。横断歩道でこういう親子の光景をよくみる。そしてこの絵がすぐ目の前をよぎる。

小倉遊亀にはもうひとつ、夏らしい絵がある。浴衣をきたモダンガール風の女性が藤椅子に座っている。これが描かれたのは終戦から6年後の昭和26年、この年東博でマチス展がありマチスやピカソに傾倒していた小倉はマチスの作品に大きな衝撃を受けた。この‘娘’にはマチスの影響が色濃くでている。

最近ネットで知ったのだが朝丘雪路(72)が老人性うつ病になっているらしい。この女優の父親がご承知のように伊東深水(1898~1972)、‘宵’は親しみを覚える絵。暑い夏、人々が家にいるときはこんな恰好、横になっているときが一番気持ちがいい。

竹久夢二(1884~1934)の‘日本の夜’は夢二がアメリカとヨーロッパを旅行していたときに描いた作品。夜空には花火が勢いよくはじけているのに川面や団扇をもった女性がいる橋の上はいたって静か。ついいろんな物語を想像してしまう。

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2015.07.11

小林古径のとっておきの女性画!

Img_0003         ‘花’(1919年 コスモ石油)

Img_2        ‘河風’(1915年 山種美)

Img_0001_2      ‘琴’(1927年 京近美)

2年前、沢山たまった展覧会図録の大整理を行い、複数ある日本画家の図録を一冊ないし二冊に集約しここにダブってない作品を貼り付けていった。だから、今は‘Myベスト図録’がずらっと本棚に並んでいる。

この図録づくりにはひとつ副産物がある。それは余分になった図版からとくにお気に入りの女性画をぬきだしこれをまとめたファイル。称して‘MYベスト女性画ファイル’の出来上がり、心をときめかせる浮世絵、近代日本画、洋画、西洋絵画がずらっと並んでいる。

その近代日本画、洋画のとっておきの女性画は6人の画家の作品、上村松園、鏑木清方、小林古径、小倉遊亀、竹久夢二、岸田劉生が描いたもの。お気に入りの絵には図録から切り出せないものもあるが、これらがベストラインナップに近い。

意外かもしれないがここに小林古径(1883~1957)が2点入っている。‘花’と‘河風’、どちらも真っ赤な口紅に目が釘付けになる。とにかくこの二人にぞっこん参っている。そしてもう一点、はっとさせられるのが‘琴’、若い女性が着た衣装の赤い柄が強く印象に残る。

いずれも2005年東近美で開催された‘小林古径展’に出品された。2年後の2017年は古径の没後60年にあたる。だから、どこかの美術館が回顧展を企画してくれないかとひそかに期待している。回顧展は2回みるのが理想、夢が叶うと嬉しいのだが、はたして?

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2015.06.26

竹久夢二、小林かいち どちらがお好き?

Img_0001        竹久夢二の‘ツキノセカイヘノボルユメ’(1923年)

Img     竹久夢二の‘七夕’(1926年)

Img_0002      小林かいちの‘二号街の女’(1915~1930年)

Img_0003      小林かいちの‘闇の花’(1915~1930年)

昨年は竹久夢二(1884~1934)の生誕130年の節目の年だったこともあり、横浜そごうで回顧展が開催されTVの美術番組にも数回とりあげられた。

夢二とのつきあいはまだ20年くらいなのだが、この間幸運にも回顧展を6回くらい体験した。女性を中心に人気の高い画家だから、美術館で展覧会が開催される機会も多い。おかげで横山大観、上村松園、東山魁夷、棟方志功同様図録がどんどんたまっていく。

夢二は藤田嗣治とともに子ども絵の名手。子どもにとって夜空にきらめく星は願いをかなえてくれる神様のようなもの、だから少しでも近づきたい。映画‘ET’の日本版をみているようなのが‘ツキノセカイヘノボルユメ’、日本の大正時代にも子どもが主役を演じるこんなファンタジックな世界があった。

女性は大人になっても少女のころみた夢をもち続ける。そんなことを思わせる一枚が大正15年の婦人グラフ3月号の表紙を飾った‘七夕’、‘今年の願いはと、、なんといってもあのイケメン君とのことを書かなくちゃあ’、女性は恋をしているときが一番輝いている。

大正ロマンの象徴のような存在だった夢二よりひとまわり若いのが京都で活躍した天才デザイナー、小林かいち(1896~1968)。絵葉書のデザインとして描かれた‘二号街の女’は衝撃的な作品、このアールデコ調の表現には度肝をぬかれる。レンピッカがこの絵をみたら裸足で逃げたにちがいない。そして思っただろう。‘すごい日本人がいる!’と、このモダンさはエッジが立ちすぎるほど立っている。

星がたびたびでてくるかいちのデザイン、ギリシャのスタイルをした女性の切ない姿を描いた‘闇の花’もじわーっと心をゆすぶる。これまで小林かいちの回顧展を2回みたが、またみたくなった。

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2014.12.31

今年 My‘好きな女性画’に加わった作品!

Img  ホイッスラーの‘白のシンフォニーNo.3’(1867年 バーバー美)

Img_0001  ホドラーの‘ラルデの娘の肖像’(1876年 オスカーラインハルト美)

Img_0002       鏑木清方の‘花見幕’(1938年 島根県石見美)

年末にはいろいろとまとめのルーチンがある。年間に読んだ本の数、TVで放送された美術番組で出来栄えのよかったベスト5の選定、感動を与えてくれた大リーガーのプレイ、動画で何度も聞いた歌,そして出かけた展覧会のふりかえりとお気に入りの美術品のリストアップ。

心を奪われた美術品のなかでもとりわけ楽しい気分にさせてくれるのが女性を描いた絵。今年は3点がMy‘好きな女性画’に加わった。
★ ホイッスラーの‘白のシンフォニーNo.3’
★ ホドラーの‘ラルデの娘の肖像’
★ 鏑木清方の‘花見幕’

‘白のシンフォニーNo.3’はホイッスラーの画集でみているときは正直それほどぐっとくる絵ではなかった。ところが、横浜美で対面した瞬間、うわー!と思わず声がでた。こんなにいい絵だったの、という感じ。チラシの2面にこの絵が使われていたのも即納得、絵画の鑑賞はやはり本物と対面しないとダメだということをあらためて認識した。

ホドラー展の収穫の一つがこの少女の絵、ホドラーの肖像画では自画像がお気に入りだったが、この可愛らしい少女には200%KOされた。じっとみていたら、ボストン美にあるサージェントの3姉妹を描いた作品が頭をよぎった。

日本画で嬉しい出会いがあったのが鏑木清方、腹の底から惚れている清方の美人画はルノワールとともにMy‘好きな女性画’に多く登録されている。新たにメンバー入りをした‘花見幕’、心がとろけるようないい姿。

今年も拙ブログにおつきあいいただきましてありがとうございます。
皆様よいお年をお迎えください。

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2014.10.18

久しぶりの竹久夢二展!

Img     ‘立田姫’(1931年)

Img_0001     ‘水竹居’(1933年)

Img_0002         ‘星まつり’(1927~28年頃)

Img_0003     ‘秋のいこい’(1920年)

竹久夢二(1884~1934)の生誕130年を記念した展覧会を横浜の高島屋でみた。日本橋であったとき美術館巡りのなかに入れてもよかったが、横浜にも巡回するのでこのタイミングを待っていた。会期は10/15~27。

10年前にも二つの記念展が企画され、運よく尾道市美と日本橋高島屋で遭遇した。そして、2007年にも千葉市美でも回顧展が行われた。だから、夢二の図録は今全部で9冊ある。すでに作品の多くが目のなかに入っているため、追加の図録購入はなし。で、夢二郷土美(岡山市)の図録を手にしてみてまわった。

この図録に掲載されているのものでまだお目にかかってないものがあれば御の字という気分。収穫はあった。それは過去の展覧会で一度も出たことのない‘星まつり’、鮮やかな色彩で二人の女性と着物や帯がとても精緻に描かれている。思わず立ち尽くしてみていた。すばらしいプラスαが目の前に現れてくれたので観覧料400円(高島屋のカードを持っているので半額)のもとはとれた。出かけた甲斐があった。この一枚で十分。

あとはお馴染みの名画を楽しんだ。会場の最後のところにいい絵がずらっと並んでいる。これは圧巻! どういうわけか昔から中島みゆきを連想する‘立田姫’、東大のすぐ近くにある竹久夢二美が所蔵する晩年の傑作‘水竹居’。そして、榛名山を眺める夢二と最愛の恋人彦乃を描いた‘遠山に寄す’。

出品は夢二郷土美のものばかりと思っていたが、お気に入りの‘水竹居’が姿をみせてくれ、竹久夢二伊香保記念館からは2004年のときと同様‘榛名山賦’もやって来ていた。デパートでの開催だから展示スペースは広くはないが、夢二の有名な作品はほとんどでている感じ。これほど豪華なラインナップだったとは、夢二好きにとっては嬉しいかぎり。

菱田春草展にでている‘落葉’の残存効果が夢二の‘秋のいこい’にもおよんでいる。プラタナスの葉に囲まれるようにしてベンチに座る女、画面からちょっと離れしばらくみていた。

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2014.09.27

どうしても足がむかう‘鏑木清方展’!

Img_0001         ‘花見幕’(1938年 島根県立石見美)

Img         ‘春雪’(1946年 サントリー美)

Img_0003         ‘虫の音’(1947年 鎌倉市鏑木清方記念美)

Img_0002     ‘夏の武家屋敷’(1957年 ヤマタネ)

千葉市美はお気に入りの美術館のひとつ、何度もここへ足を運ぼうと思うのは江戸絵画、浮世絵で一世を風靡した絵師の回顧展をよく開催し、いい作品をどっさり集めてきてくれるから。期待に応えてくれる美術館が真のブランド美術館。

今年は4月に‘中村芳中展’があり、秋は‘鏑木清方と江戸の風情’(9/9~10/19)、鏑木清方(1878~1972)の回顧展ときけば開幕前から心が落ち着かなくなる。事前の情報だと作品の構成は鎌倉にある鏑木清方記念美の所蔵するものが軸、するとこれまで鑑賞したものとの再会が多くなるかもしれない、そのときは図録は買わないでおこうと思っていた。

ところが、予想とはちがい初見の美人画が結構あらわれてくれた。これは嬉しくなる。そのなかでぐっと惹きこまれたのが‘花見幕’、これを所蔵する石見美は広島に住んでいた時はまだ開館してなかった。8年くらい前にオープン?清方のこんないい絵をコレクションしているのならほかの画家もあるかも。いい美術館のような気がするが、、

清方の魅力あふれる美人画にはふたつのタイプがある、一つはフィギュアスケートの真央ちゃんのような目がくりっとして卵型の顔をしている女性、もうひとつのタイプは顔がちょっと細長く糸目の美人、‘花見幕’は後者の美人画、そしてサントリー美にある‘春雪’や‘虫の音’も糸目の美人の系譜。

今回おおいに楽しめるのは清方の作品を浮世絵の絵師たちが描いた美人画の見立て絵としてとらえているところ、そのため鈴木春信や勝川春章たちとのコラボが想像力を掻き立て江戸の風情をより身近なものにしてくれる。だから、‘夏の武家屋敷’もついじっとみてしまう。

ミュージアムショップで手に入れた図録はなかなかよくできている。お宝図録のひとつになりそう。

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2014.02.12

東京都美の‘世紀の日本画’展は日本美術の祭典!?

Img_0002_2     安田靫彦の‘飛鳥の春の額田王’(1964年 滋賀県美)

Img_2     小林古径の‘楊貴妃’(1951年 足立美)

Img_0005_2     小倉遊亀の‘舞妓’(1969年 京近美)

Img_0004_2     中村岳陵の‘婉膩水韻’(1931年 静岡県美)

上野で現在行われている3つの展覧会は事前にセットの割引前売り券(2400円)を購入していた。最初にでかけた東博の‘クリーブランド美展’ではまわりに引換券を手にしている人が結構いるから、このシステムは好評のようだ。お客を多く集めるために美術館同士が連携するのはとてもいいこと。

東博で‘クリーブランド美展&人間国宝展’をみたあと、東京都美へ移動して‘世紀の日本画’展をみた。だが、大きな勘違いがあった。それを生み出したのがチラシのキャッチコピー‘日本美術の祭典’とタイトルの‘世紀’、この展覧会が日本美術院再興100年を記念するものであることはちゃんと書いてある。

しかもチラシには橋本雅邦の‘龍虎図’をはじめ輝ける近代日本画の傑作が全部で10点載っている。まさに‘日本美術の祭典’であり‘世紀の日本画’をイメージさせる。ところが、作品をみていくうちに期待していた日本画展とはちがうものがでてきた。

大観や春草、さらには安田靫彦、小林古径、前田青邨といったビッグネームの作品と一緒にちょっと前まで院展に作品をだしていたそこそこ有名な作家や現役の作家の作品まで展示されている。こうした作品が前期(1/25~2/25)にでている63点のうち23点もある。そして後期(3/1~4/1)にも同じくらいの数が展示される。だから、この展覧会は近代日本画の祭典ではなく‘日本美術院の祭典’。

というわけで馴染みの傑作を中心にみて、40分ほどでひきあげた。再会した作品のなかで長くみていたのは女性を描いたものが多い。4点ある安田靫彦(1884~1934)は‘飛鳥の春の額田王’がお気に入り。この絵をみているとロマンあふれる古代飛鳥の世界に誘われるような気分になる。

小林古径(1883~1957)の‘楊貴妃’をみるのは2005年に東近美で開催された回顧展以来。所蔵する足立美(安来市)でも体験したが、中国の楊貴妃の話を翻案した謡曲‘楊貴妃’を題材にして描かれたものだから、その美形は能面で隠されて見えない。しかし、そこには幽玄な世界が広がり気品のある楊貴妃の姿が心のなかに浮かび上がってくる。

小倉遊亀(1895~2000)の‘径’と‘舞妓’に会うのも久しぶり。2点ともMy好きな小倉遊亀に登録している。色白で丸顔の‘舞妓’をみるたびに若い頃の(今でも子供顔?)安達祐実を連想する。

今回の収穫は中村岳陵(1890~1969)の川で泳ぐ裸婦像。一度岳陵の回顧展を横須賀市美でみたが、この絵はでてこなかった。静岡県美には‘残照’という傑作があるが、この絵も所蔵していたとは!それにしてもこの女性は長身。一瞬、鏑木清方が描いたあの‘妖魚’が岩から降りてゆっくりと泳ぐ姿が頭をよぎった。

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2013.12.22

模写でわかる観山の卓越した画技!

Img_0001_2     下村観山の‘遊歴の騎士(ミレイの模写)’(1904年 横浜美)

Img_0005_2     ミレイの‘遊歴の騎士’(1870年 ロンドン テート・ブリテン)

Img_0002     下村観山の‘椅子の聖母(ラファエロの模写)’(1904年 横浜美)

Img_0007_2     ラファエロの‘椅子の聖母’(1515~16年 フィレンツェ ピッティ美)

プロの画家になろうと思ったら優れた日曜画家がもっているテクニックのさらに上の技量を身につけないととても生きてはいけない。そうした確かな腕前をもった画家たちだけが顧客の注文に応えることができる。プロ同士の競争は大変厳しいが、仲間たちをうならせるほどのテクニックを発揮し独自の画業を切り開いていく画家も存在する。下村観山((1873~1930)もそんな画家のひとり。

横浜美で開催中の回顧展(12/7~2/11)には観山の技量が抜群だったことがすぐわかる作品がでている。それは西洋画の模写、観山は30歳のときイギリスへ2年間留学し、そのとき西洋画の技法を習得するため名画を貪欲に摸写した。その模写の一枚がミレイの描いた‘遊歴の騎士’。

原画は5年前Bunkamuraで開催された‘ミレイ展’に展示されたので、記憶に新しいところ。この油彩画を観山は水彩で描いている。じつはこの模写をみるのは3度目なのだが、手元にあるミレイ展の図録と一緒にならべてみるとびっくりするほどよく描けている。もう完璧な模写という感じ。日本画家の観山が描いたこの模写をみて当時の洋画家たちは‘参りました!’だったにちがいない。

横浜美はラファエロの作品を模写した2点も所蔵しており、今回一緒に展示してある。‘椅子の聖母’と‘まひわの聖母’。観山は2点ともラファエロの原画ではなくロンドンにあった模写を前にして描いたので原画とはすこしちがうが、どちらもラファエロの絵をみているような気分にさせてくれる。はじめて接する西洋画なのにこんなに原画の雰囲気を忠実に伝えられるのだから、観山の絵描きとしての才能は本当にスゴイなと思う。

模写ではない作品で西洋絵画の描き方がそのまま使われた異色の絵があった。‘魚籃観音’、中央の観音の顔がなんとあのダ・ヴィンチの‘モナリザ’、これには誰だって足がとまるし、誰だってモナリザだとわかる。日本画の展覧会をみにきて西洋絵画が楽しめるのは観山のほかには誰もいない。

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2012.08.15

ついつい足が向かう‘上村松園と鏑木清方’展!

4179_2     上村松園の‘青眉’(1934年 吉野石膏)

4177_2     上村松園の‘新蛍’(1944年 東近美)

4178_2     鏑木清方の‘鰯’(1927年 東近美)

4176_2                鏑木清方の‘権八小紫’(昭和初期 光記念館)

平塚市美はHPで企画展を定点観測している美術館のひとつ。ここで行われる作家の回顧展はハズレがないので関心のある作家のときは必ず出かけることにしている。昨年は‘伊東深水展’があり、今年は‘上村松園と鏑木清方展’(7/21~9/2)。美人画のビッグ2とくればついつい足が向かう。

上村松園(1875~1949)は2年前決定版の回顧展が東近美で行われ、鏑木清方(1878~1972)についても4,5年前サントリー美に名品が結集した。二人の描く女性の絵は特別な磁力を発しており、いつも深く魅せられる。

作品の数は松園が29点、清方が38点、このうちプラスαは9点あった。好きな画家なので新しい作品に遭遇すると充実した気分になる。これまでみた作品は画集によく載っている名品がズラリと揃う。

松園の‘青眉’と‘新蛍’は構図にとても惹かれる作品。‘青眉’は女性のさしている傘の描写に安堵するバランス感がうかがわれ、‘新蛍’は余白をたっぷりとった画面に蛍をじっとみつめる赤い帯の女性の姿がじつに優雅に描かれている。

清方の‘鰯’は明治のころに生きた人々の暮らしの一こまを切り取った作品。ぼてふりの少年と女性の会話が聞こえてくるよう。風俗画はほかに‘朝夕安居’や‘明治風俗十二ヶ月’もでている。

清方の新規作品の収穫は光記念館が所蔵する‘神田祭’と‘今様浅妻舟’。浮世絵をみている感じなのが‘権八小紫’。若衆の着ている衣裳の紫が目に沁みた。これも光記念館蔵。もう一点、‘稔りの秋’といういい絵がでている。これは見てのお楽しみ!

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