2010.10.30

‘エヴァーラスティング ビル・エヴァンス’でもいかが!

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ここ1ヶ月、タワーレコードから7月に発売された‘エヴァーラスティング ビル・エヴァンス’(2枚組)をクルマのなかで聴いている。

このCDは8月中旬、新聞の文化欄で知った。今年はジャズ・ピアニスト、ビル・エヴァンス(1929~1980)の没後30年にあたる。で、このベスト復刻盤がでたというわけ。タワーレコードの担当者がHMVや新星堂など9社に声をかけお奨めの曲を選んでもらい、そのなかから22曲を収録したという。

どんな曲が入っているかというと‘いつか王子様が’、‘枯葉(テイク2)’、‘ワルツ・フォー・デビイ’、‘不思議の国のアリス(テイク2)’、‘MASHのテーマ’など々。

世の中にはビル・エヴァンスにぞっこんというジャズファンが大勢おられると思う。昨年1月発売の雑誌‘一個人’の‘保存版特集 ジャズの快楽’によると、日本でもっとも売れているジャズのアルバムはビル・エヴァンスの‘ワルツ・フォー・デビイ’かヘレン・メリルの‘ヘレン・メリル・ウイズ・クリフォード・ブラウン’だそうだ。

絶大な人気を誇るビル・エヴァンスなのに、若い頃夢中になって聴いたジャズメンに入ってなく、アルバムを買って聴いたことがない。だから、22曲のなかにはどこかで聴いたような旋律だなというのもあるが、大半は‘これがレコード店で見慣れたアルバムに収録されている曲か!’という感じ。

アルバムのなかではシオン城をデザインに使った‘アット・ザ・モントルー・ジャズ・フェスティヴァル’に惹かれていたが、これからは選ばれてなかった。はじめて聴く曲はベストセレクションだけあってどれも魅力いっぱい。繊細なタッチのリリシズムあふれる演奏はホテルのバーで楽しんでいるような気分にさせてくれる。

これはビル・エヴァンスのピアノだけの力ではなく、のびやかかつ洒落た雰囲気で繰り広げられるベース、ドラムとの生き生きしたインタープレイによって生みだされたもの。こんなすばらしい演奏を知らずに過ごしていたら大きな悔いを残すところだった。

クルマのなかではしばらくの間、ビル・エヴァンスのCDがマイルス・デイビスを横に追いやることになりそう。

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2007.09.09

ジョン・コルトレーンの「マイフェイヴァリットシングス」と見立絵

1028時々、クルマのなかで聴いているジョン・コルトレーンの“マイフェイヴァリットシングス”から、あることを思いついたので、今日はそのことを。

モダンジャズ界でマイルス・デイビスとともに一際大きな存在なのがサックス奏者のジョン・コルトレーン。

この巨人が演奏した数々の名曲のうち、“マイフェイヴァリットシングス”は魂の叫びがひしひしと伝わってくる“至上の愛”などと違い、柔らかい音色のソプラノサックスが美しい旋律をはじめから終わりまで奏でてくれるので、体が軽くなるくらいリラックスして聴ける曲。

ご承知のように、これは映画“サウンドオブミュージック”(1964)でジュリーアンドリュースが歌った曲。この曲の魅力はジャズの真髄である即興演奏が存分に楽しめること。はじめは明快な主旋律を繰りかえし、徐々にそれを自在に変奏していく。全部の小節を一斉に変えるわけではなく、正調と乱れが適度に混りながら進行していくので、カオス状態にはならない。それどころか、この正調を外した演奏がすごく心地いい。

横に進む曲線グラフで例えると、中心線の上下に揺れ動く曲線がはじめは太い実線で表されているが、次のゾーンに入ると、前とか真ん中とかの一部が破線に変わり、異なる線になっていく感じ。実際の演奏では、ソプラノサックスとピアノが主旋律を時に激しく、時にソフトに変容させていく。演奏がとても気持ちよく感じられるのはあの琴線にふれる旋律(例えでいうと実線)がいくら部分的には変奏(破線)されていても、いつも聴こえるような気がするから。

で、ふと頭をめぐったのが浮世絵師、鈴木春信が得意とした“見立絵”(拙ブログ07/2/8)。見立絵は故事、物語、和歌などを原案にして、絵師の同時代の風俗に置き換え、作者自身の翻訳を加えたもの。コルトレーンやピアノのマッコイ・ターナーは原曲の“マイフェイヴァリットシングス”をそのときの気分や感情で自由に変えてアドリブ演奏する。聴く者にとって、この自在な変奏はとても刺激的で、原曲以上に楽しめる。

見立絵はつい最近みた山口晃の“厩図2004”(8/20)もそうだし、カラヴァッジョの“バッカス”、グレコの“オルガス伯爵の埋葬”(3/26)、ベラスケスの“酔っ払いたち(バッカスの勝利)”(3/19)も同じ発想で描かれている。現代絵画にもある。ピカソは自分流の“ラスメニーナス”(ベラスケス)、“アルジェの女たち”(ドラクロア)、“草上の昼食”(マネ)を制作した。

また、オペラでも同じことがみられる。例えば、ヴェルディの“ナブッコ”では舞台のセットや衣装にかかる費用を節約するため、物語は古代から現代に変えて上演されたりする。登場人物は皆、現代の衣装を着て出てきたりするから、少々面くらう。これは歌劇場の運営を考えての設定変更という面も強いが、見立と同じ考えに立った演出である。

音楽は目に見えないから、コルトレーンのジャズと絵画やオペラの見立とがすぐには結びつかないが、本質的には同じ行為のように思える。

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2007.06.25

疾走する帝王 マイルス・デイビス

897昨日は音楽尽くしの一日だった。昼はクラシック音楽を聴き、夜は同じNHK教育のETV特集“疾走する帝王 マイルス・デイビス”を興味深く見た。

この番組を毎月購入している“TV太郎”で知ったとき、正直なところ“どうして今頃マイルス・デイビスなの?”という感じだった。

マイルス大好き人間だから、こういう特集は嬉しいのだが、番組を見終わっても、どの世代を意識した企画だったのか? マイルスのジャズを聴く若い人がいるのか? は解消されないまま。

サブタイトルは“菊地成孔(きくちなるよし)のジャズ講座”とある。この音楽家&文筆家は若く見えるから30代だろうか?ジャズ界の風雲児であると同時に、東京大学でジャズの歴史を講義しているという。となると、若い世代でもマイルスのジャズが楽しまれているのかもしれない。

拙ブログ05/9/9でマイルス・デイビス(1926~1991)のアルバムを取り上げたが、その後CDを買い増し、現在では12枚になった。昔買った聴いてたものだが、CDとしてコレクションし直したのである。いずれも1968年~1975年に制作されたジャズでもなくロックでもないフュージョンもの。

“夜の都会の音楽”というジャズのイメージをつくりあげた名盤“ラウンド・アバウト・ミッドナイト”(1955)や“死刑台のエレベーター”(1957)、ジャズの革命、モードジャズの代名詞“カインド・オブ・ブルー”(1959)もお気に入りのアルバムであるが、2年前からクルマのなかで頻繁に聴いているのは、テンポのいい打楽器とトランペット、ソプラノサックスやエレクトリックピアノなどの電子楽器が渾然一体となって響く“ビッチェズ・ブリュー”(1969)や右のサイケ調に描かれた鳥人間の絵がカバーに使われている“ライブ・イヴル”(1970)などのフュージョンサウンド。暑さには強いから、これらを夏に聴くと最高にノリがよく、マイルスのキレのいいズキン々と体全体に突き刺さるようなトランペットにこちらも元気よく反応するようになる。

これまでの演奏スタイルを壊し、そしてまた新たなスタイルを創造するマイルスは65歳で亡くなる1991年に、若手ラッパーとコラボし、ジャズとラップを融合させたサウンドを生み出す。ラップという新たな音楽シーンに刺激を受け、自らのジャズを新しいスタイルに変えていくのだから、本当にすごいミュージシャンである。

日本の絵画や陶芸の世界でも、若冲、北斎、御舟、河井寛次郎らはどんどん作風を変えていった。多様な作品を生み出せるのが天才芸術家の証。マイルス・デイビスのフュージョンサウンドに肉体がいつまでつきあえるかわからないが、当分は聴き続けようと思う。

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2005.09.09

マイルス・デイビス

8988/16の拙ブログでジャズのことを書いた後、無性にジャズが聴きたくなり、銀座の山野楽器で買ったマイルス・デイビスとウエザー・リポートのCDを今、クルマのなかでガンガン聴いている。

いずれも20代のころ、一度は聴いた作品。もっとも当時はLPレコードだったが。コレクターの趣味が無いので昔、手に入れたジャズのレコードは聴かなくなったら、みんな処分してしまい、替わりにクラシックとオペラのビデオテープが一杯になった。

再入手したのはマイルスの“ビッチェズ・ブリュー”(1969)、“マイルス・アッ
ト・フィルモア”(1970)、“アガルタ”(1975)、ウェザー・リポートの“ザ・ベスト”
(1973~1980)。右のは“ビッチェズ・ブリュー”のカバー。マイルスの
ジャズは50年代はパスし、もっぱら電子サウンドを導入した作品に夢中になった。
その頂点を飾る傑作が“ビッチェズ・ブリュー”。新宿のジャズクラブ、ピットインで
エコーをきかせたトランペットが鳴り響く 、この新着レコードを聴いたときの衝
撃をいまでも鮮明に覚えている。ジャズの枠を超えたまさにフリーミュージック
という印象だった。

あらためて聴いてみると、体が熱くなってくる。ジャズをテーマがあり、そしてアドリブ、
またテーマ、そしてアドリブというものだと思ってるひとには、マイルスと周りの
ミュージシャンが演奏する音楽はジャズという範疇からかけ離れているかもしれない。
マイルスは時代の空気を感じとるのに敏感で、若いソプラノサックス、エレクトリック
ギター、キーボード、ベース奏者、パーカッションニストらと、自由な演奏に溢れた
新しいジャズをつくりあげた。

“ビッチェズ・ブリュー”、“アット・フィルモア”、“アガルタ”の3枚で、マイルスは
トランペットを時に激しく、アップテンポに、さらに美しいバラードのように柔らかく吹き
まくる。R&Bのビート、アフロリズム、ロック、ファンクが上手くミックスした凄い
演奏だ。最近、マーラーの大爆発する交響曲を聴いてなかったので、マイルスの
シャープで迫力のあるトランペットにすごく感動した。

クラシック音楽にモーツァルト、ベートーベン、マーラーの定番の名曲があるように、
今、じっくり、マイルスの音楽を聴いてみると、これはジャズのクラシックではないか
と思う。音量が大きいこのジャズはさすがに隣の方がいる家のなかでは聴けない
ので、近くの本屋へ行くとか、ガソリンの給油のため走らせるクルマのなかで
至福の時を過ごしている。

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2005.08.16

渡辺貞夫とジャズ

2,3日前、栃木県宇都宮市の繁華街でジャズプレイヤーの渡辺貞夫が若い
打楽器奏者たちと一緒に愛知万博で演奏する曲のリハーサルをやっていた。
渡辺貞夫がまだ、現役で演奏活動をしているのをみて少々びっくり。今はジャズ
を聴くことはほとんどなくなったが、30歳くらいまではジャズの新着レコードを
月に何枚も買っていた。

渡辺貞夫、通称、ナベサダの音楽もよく聴いた。当時、日本のジャズメン
で人気があったのはアルトサックスのナベサダ、トランペットの日野皓正。
ナベサダのレコードでは“パストラル”というのがお気に入りだった。柔らかい
アルトサックスの音色が田園風景のイメージを掻き立てた。その後、渡辺貞夫
はアフリカに何度も演奏旅行し、現地の原始的な打楽器の激しいリズム
をとりいれた新しい音楽をつくりだした。ナベサダのジャズはこのあたりまでで、
その後の動きは全く知らない。が、宇都宮でアフリカの若い打楽器奏者
と競演してたのをみると、アフリカ路線を今も継続してるのだろう。

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