2017.10.19

心に沁みる仏教美術!

Img_0001     国宝‘釈迦金棺出現図’(平安時代・11世紀 京博)

Img     国宝‘阿弥陀二十五菩薩来迎図’(鎌倉時代・14世紀 知恩院)

Img_0002     国宝‘釈迦如来(赤釈迦)’(平安時代・12世紀 神護寺)

Img_0003     国宝‘薬師如来坐像’(平安時代・9世紀 奈良博)

京博で行われている‘国宝展’(11/26まで)には会期中200をこえる国宝が出品されジャンルごとに飾られる。すべてみるのに何回足を運ぶ必要があるか仔細にみてないが、4つの期間のうち混雑を覚悟で2回くらい出動するとかなりの数がみれるはず。

金剛寺の2つの仏像に大きな感動を覚えたので、2階の仏画のコーナーでも心は敏感に反応する。Ⅱ期(10/17~10/29)に出ているのは‘釈迦金棺出現図’、‘阿弥陀二十五菩薩来迎図(早来迎)’、‘山越阿弥陀図’、‘釈迦如来像(赤釈迦)’、‘普賢菩薩像’、‘千手観音像’。

これらは幸運にも過去お目にかかっているので体が前のめり状態にはならないが、傑作がこれほど多く並んでいると自然にテンションがあがってくる。とくに長くみていたのはここにあげた3つ。仏像の絵を追っかけていたとき二重丸をつけていたのは大作3つと知恩院にある早来迎。その2つと久しぶりに会った。

大作はこの‘釈迦金棺出現図’と3年前東博であった国宝展に出品された‘仏涅槃図’と‘阿弥陀聖衆来迎図’。‘阿弥陀聖衆来迎図’は存在を知ってから思いの丈を叶えるまでに長い時間がかかった。だから、対面できたときはなにか大きな仕事をしたような気分だった。

‘釈迦金棺出現図’で印象深いのは釈迦のすぐそばにいる母の摩耶夫人が太めの姿で描かれているところ。どうしても視線が摩耶夫人のほうにいってしまう。

仏教でもキリスト教でも宗教物語の知識が多少なりとも増えていくのは宗教をモチーフにした絵画や彫刻と長く接しているから。この来迎図の絵をみるたびに、このように阿弥陀様や菩薩様にお越しいただければ死の恐怖が和らぐかなと思ってしまう。

‘釈迦如来像’は神護寺を訪問したときにみたはずだが、ちょっと怖い顔をした国宝の‘薬師如来立像’のイメージがあまりに強く、これによってにどんな風にみたかかき消されてしまった。そのため、この赤い衣が目にとびこんでくるこの釈迦如来はとても新鮮にうつった。

1階にあった目の大きい‘薬師如来坐像’は奈良博でお馴染みの彫像、どっしりとして安定感のあるお姿をみていると肩の力が抜け気持ちがぐっと落ち着く。

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2017.07.27

お楽しみ! 英一蝶の巨大涅槃図

Img     英一蝶の‘涅槃図’(1713年)

Img_0002     喜多川歌麿の‘三味線を弾く美人図’(1804~06年)

Img_0001      陳容の‘九龍図巻’(南宋 1244年)   

Img_0003     曾我蕭白の‘風仙図屏風’(1764年)

2012年、東博で‘ボストン美 日本美術の至宝’が開催され、曾我蕭白の‘雲龍図’や‘平治物語絵巻 三条殿夜討巻’など心躍らせる傑作がどどーんとやって来た。まさにボストン美が集めた質の高い絵画や仏画、仏像を全部お見せしますという感じ。

今回はそのパート2、またまたすばらしい絵画とやきものが登場した。しかも、中国絵画のビッグなおまけまでついているのだからたまらない。

最も期待していたのが、はじめて里帰りするという英一蝶(1652~1724)の‘涅槃図’、噂通りの縦2.9m、横1.7mの巨大な涅槃図だった。この展示に合わせて行われた修理により画面全体ちょっと前に仕上がったように輝いている。これくらい色が鮮やかだと弟子たちと一緒に悲しみにくれている動物たちを一匹々確認していても疲れない。いいものをみた。一生の思い出になる。

喜多川歌麿(1753~1806)の‘三味線を弾く美人図’は2度目の来日。2006年にボストンが所蔵する肉筆画が公開されたとき北斎の‘鏡面美人図’などとともに目を楽しませてくれた。それから11年経ち、またみる機会に恵まれたが、来月、箱根の岡田美で見ることになっている‘吉原の花’(アメリカ ワズワース・アセーニアム美)の景気づけになる。

一蝶の涅槃図とともに楽しみにしていたのが、中国南宋時代の画家、陳容の描いた‘九龍図’。絵の存在は画集で知っていたが、横長の画面に九匹の龍がこれほど躍動的に描かれていたとは!200%KOされた。とくに吸い込まれたのが四匹目の龍(上)、胴体の一部が量感のある波の間を突き抜けている。これは参った。

陳容の龍とダイナミックに変化する波濤や渦巻きを目に焼き付けたので、あとでみた曾我蕭白(1730~1781)の‘風仙図屏風’にでてくる大きな渦巻きが激しく共振した。蕭白、やるじゃない、と声をかけたくなった。

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2016.11.21

‘禅展’で想定外の池大雅と遭遇!

Img   池大雅の‘五百羅漢図’(重文 部分 1772年頃 京都・萬福寺)

Img_0001    黙庵の‘四眠図’(重文 14世紀中期 前田育徳会)


Img_0002    吉山明兆の‘達磨像’(重文 14世紀後半 東福寺)

東博で11/27(日)まで行われている‘禅展’は日本と中国で描かれた絵画の傑作や見事な中国磁器などがずらっと揃った一級の展覧会。まさに10年に一度クラスの展覧会であることはまちがいない。

禅関連の特別展は2007年にも足利義満六百年御忌記念の‘京都五山 禅の文化展’が同じ東博で実施されている。そのため、今回はこれまでめぐりあわせが悪くみれなかった国宝‘無準師範像’との対面がはたせればOKという気分。こういうときは想定外の作品が目の前に現れるとすごく得した気分になる。

それは池大雅の‘五百羅漢図’と黙庵の‘四眠図’、ともに追っかけリストに入っているもの。‘五百羅漢図’はなかなか展示されず遠い存在だった。前期にも四幅が飾られたようなので惜しいことをした。でも、池大雅お得意のあの人懐っこい丸顔の人物とたくさん会えたからもって瞑すべしといったところ。

‘四眠図’も大収穫の絵、禅展の出品作と同じようなものが並んだ展覧会が‘京都五山’をはじめいくつかあったが、例えば徳川美の‘室町将軍家の至宝を探る’(2008年)、三井記念美の‘東山御物の美’(2014年)、どれにもこの絵はでてこなかった。だから、感慨深くながめていた。

再会した吉山明兆の‘達磨蝦蟇鉄拐’もいい気持ちでみていた。雪舟の達磨さんより正面向きでどーんと描かれた明兆のほうが存在感がある。そして、左右にいる二人のグロテスクな風貌が達磨の存在の大きさをより際立たせている。

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2014.11.24

お楽しみ満載の‘日本国宝展’!

Img     ‘阿弥陀聖衆来迎図’(12世紀 和歌山 有志八幡講十八箇院)     

Img_0001     ‘山越阿弥陀図’(13世紀 京都・禅林寺)

Img_0002     ‘孔雀明王像’(北宋時代・11世紀 京都・仁和寺)

Img_0004     ‘辟邪絵 天刑星’(12世紀後半 奈良博)

遅い出動となった東博の‘日本国宝展’(12/7まで)、‘東山御物の美’同様お目当ての作品が出てくるのをじっと待っていた。長年追っかけていたものがうまい具合に後期にかたまってくれたので1回の訪問で済んだ。

30分くらいで入館できると思っていたが、これは甘かった。12時をすぎるとみんな腹が減ってくるためか退館する数が増えてきて当初の80分待ちが早まり60分でなかに入れた。作品が全部国宝というのはもうイベントのようなもの。ここにもあそこにも名品があるのでテンションは上がりっぱなし。

今回もっとも期待値が高かったのが‘阿弥陀聖衆来迎図’、ようやくみれたので嬉しくてたまらない。この世に別れを告げるときはこの絵のことを思い浮かべることにしているので、しっかり予約をとりつけてきた。大勢いる菩薩のなかでお気に入りは真ん中手前にいるふたりの右のほう。白くてぽっちゃりした顔をうっとりしてながめていた。

楽器を演奏している菩薩たちを一人々じっくりみるとそれぞれ個性があってすごく愛着を覚える。二人笑っている。どこにいるか?みてのお楽しみ。以前みた同じサイズの模写でも十分楽しめたが、本物を前にすると心の高まりはその数倍。まさに天にも昇る気分とはこのこと。

日曜美術館で解説してくれた‘山越阿弥陀図’、当時は親指のところから五色の糸が垂れ下がり極楽へと旅立つ死者の手に握りしめられていた。その穴のあとを単眼鏡で確認した。

仁和寺にある‘孔雀明王像’ともやっと対面が叶った。昨年京都へ行ったとき、展示されていたのでバスを乗り継いで途中までたどり着いたが新幹線の時間が迫ったためあきらめた。これほど早いリカバリーができるとは思ってもみなかった。本当によかった。

久しぶりにみた‘辟邪絵 天刑星’、胴体を食いちぎるド迫力の天刑星。この絵をみるたびにゴヤの‘わが子を喰らうサトゥルヌス’が頭をよぎる。

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2012.03.25

スーパー展覧会!‘ボストン美 日本美術の至宝’ その三

3669_2          ‘馬頭観音菩薩像’(平安時代 12世紀中頃)

3668_2        ‘普賢延命菩薩像’(平安時代 12世紀中頃)

3671_2        狩野元信の‘白衣観音図’(室町時代 16世紀前半)

3670_2     狩野永納の‘四季花鳥図屏風’(江戸時代 17世紀後半)

展覧会場へ入ると最初に出迎えてくれるのが仏画。全部で16点ある。このなかに以前確実にみたものが2点、展覧会の図録には載っているがみたという実感がないのが3点あった。

日本にあったら国宝に指定されると思われるのが‘馬頭観音菩薩像’と‘普賢延命菩薩像’。‘馬頭観音’は07年奈良博であった‘美麗 院政期の絵画展’(拙ブログ07/9/21)ではじめてお目にかかったときその忿怒の表情と臙脂(えんじ)色のような赤の肉体に圧倒された。描かれた当時は截金で装飾された着衣の部分が美しく輝き、重厚な仏画だったにちがいない。

大収穫なのが‘普賢延命菩薩像’。目が自然に向かうのは菩薩を食ってしまうほど存在感のある白象。頭が3つある白象の下にはさらに小さな白象が5体みえる。どの象も目は金色で彩色され強い目力をしている。その目に吸い寄せられしばらくながめていた。

狩野派の実質的な確立者である狩野元信(1477~1559)の描いた‘白衣観音’に心を打たれた。絵の存在は知っていたが、本物はこれほどの傑作だったとは!白衣の観音が正面向きで宙に浮くように描かれているのでじっと見入ってしまう。元信はほかに3点あるが、大きな‘韃靼人狩猟図’にも視線が釘付けになる。

狩野山雪の‘十雪図屏風’と狩野永納の‘四季花鳥図屏風’は20年くらい前銀座の松坂屋であった‘ボストン美展’に出品された。そのころは狩野派というと永徳と山楽の絵くらいしか関心がなかったから、この親子の作品にそれほど惹きこまれなかった。

ところが、今では山雪(1590~1651)に開眼したから、永納(1631~1697)の‘四季花鳥図’に描かれた雪の積もった梅の太い幹が山雪の絵とダブってみえてくる。京狩野の画風の魅力を再認識した。

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2011.11.22

空海に続き‘法然と親鸞’展も大賑わい!

3279_2     国宝‘山越阿弥陀図’(鎌倉時代 13世紀 禅林寺)

3280_2     ‘阿弥陀三尊坐像’(重文 鎌倉時代 13世紀 浄光明寺)

3281_2       ‘二河白道図’(重文 鎌倉時代 13世紀 香雪美)

3282_2     国宝‘本願寺本三十六人家集・能宣集下’(平安時代 12世紀 西本願寺)

東博の‘法然と親鸞’展(10/25~12/4)をみてきた。開幕から一ヶ月ちかく経っての出動となったのは本日から展示される国宝‘親鸞聖人影像(鏡御影)’を待っていたから。

じつはこの展覧会は前期に行くことにしていた。入手したチラシに大きく使われている国宝‘早来迎’(拙ブログ05/11/3)に再会したいという気持ちが強くはずんでいた。が、今月のはじめ展覧会の主催者に名をつらねている朝日新聞の記事で国宝‘親鸞聖人影像(鏡御影)’が11/22から登場することがわかった。

これには面食らった、ええー、この親鸞の肖像画が出品されるの?すぐ出品リストをHPでチェックすると確かに載っている。そうなると、まだみてないこの秘宝が当然最優先となるから、出かけるのは後期に変更。‘早来迎’には未練が残るが、後期には国宝‘山越阿弥陀図’がまたみれるので気持ちを切り替えた。

‘鏡御影’は親鸞(1173~1262)の肖像画としてはもっとも生前の顔をうつしているといわれており、西本願寺のお宝中のお宝。03年東博で‘西本願寺展’が開催されたとき期間限定で展示されたが、当時広島からはせ参じたものの展示のタイミングにあわず見逃してしまった。今回の公開はそれ以来のこと、この先当分は展覧会にはでてこないと思われる。

細い線で描かれた眉のつりあがった顔をみていると親鸞が目の前にいるような錯覚を覚えた。やはり宗教家の顔である。親鸞の威厳のある顔にくらべると法然(1133~
1212)の顔はふっくらとして丸くとてもおだやかな印象をうける。こういうお坊さんから話を聞くと、誰でも不安な気持ちや苦悩から解放され救われた気持ちになるだろう。念仏を唱えるだけで極楽浄土へいけのなら、気分はぐっと楽になる。

とりあげた作品はどれもすでにみたものだが、法然、親鸞という宗教界の大スターにスポットライトがあたった展覧会で再会するとあらためて目に力が入る。

安定感のいい構図が心を落ち着かせてくれる‘山越阿弥陀図’も神戸の香雪美が所蔵する‘二河白道図’もMyお気に入り仏画の上位に入れているので、画面の隅から隅までじっくりみた。それにしても中央に描かれた一本の白い道の細いこと。女子の体操の平均台の上を素人が歩くような感じ。

右の河には愛欲が、そして左の河には憎悪がちらつくから、心を平常に保ち阿弥陀が迎えてくれる極楽浄土へたどりつくのは容易ではないが、強い気持ちをもってすれば必ず浄土へ行ける。そう信じよう。

鎌倉の鶴岡八幡宮の国宝館で一度みたことのある‘阿弥陀三尊坐像’は中央の大きな阿弥陀像にぐっと惹きこまれる。そして、両脇の菩薩の首を少し横に傾ける姿にも思わず足がとまる。

華麗な装飾料紙が使われている国宝‘本願寺三十六人家集’はいつも夢中になってみてしまう。日本美術を象徴する装飾美の真髄がここにある!最後に登場した‘能宣集下’の草花模様をつま先立ちで心ゆくまでみていた。

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2011.08.15

サプライズ200%の‘空海と密教美術展’! その三

2960_2     国宝‘両界曼荼羅図・胎蔵界’(平安時代 9世紀 東寺)

2959_2     ‘胎蔵界の中台八葉院’(中心部分)

2958_2       国宝‘真言七祖像・龍智像’(平安時代 821年 東寺)

2957_2        重文‘五大力菩薩像・無畏十力吼菩薩’(鎌倉時代 1197年 普賢院)

密教というとすぐ頭に浮かぶのが曼荼羅図。仏様がびっしり描かれた曼荼羅図をこれまでいくつも体験してきたが、最も感動したものは今回展示されている東寺にある‘両界曼荼羅図’と根津美が所蔵する‘金剛界八十一尊曼荼羅’(重文 拙ブログ10/7/31)。

彩色曼荼羅図の最高傑作といわれる東寺の‘両界曼荼羅図’は二つを一度にはみれない。‘胎蔵界’の展示は7/20~8/21で、‘金剛界’は8/23~9/25。

この曼荼羅図は一緒に出品されている‘高雄曼荼羅’(国宝 神護寺)のように大きくないから、描かれている仏が細かいところまでとらえることができる。びっくりさせられるのがその鮮やかな色彩。平安時代に描かれたとは思えないほど赤や青や緑がよく残っている。

混雑してなければ一体々を単眼鏡を使ってみるのだが、そうもいかないので中心部分の大日如来など9体を少し時間をかけてみた。丸顔でふっくらした体つきは2年前インドを旅行したときヒンズー教の寺院でみた天女の彫刻を彷彿とさせる。下の3つの仏のうち右の仏はにこやかに笑っている(拡大図)!是非ご自分の目で。

‘真言七祖像’のうち現在展示されているのは‘龍智’‘不空’‘金剛智’(8/9~9/4)。人物像の輪郭はこの順番でわかりにくくなる。‘龍智’で視線が向かうのは画面上部にみられる空海(774~835)が書いた絵のような文字。同様に空海が唐から請來した‘金剛智’もみみずのはったような文字ばかりをみていた。

鎌倉時代に描かれた‘五大力菩薩像’はダイナミックな動きをとらえた見事な線描に魅せられる。彩色の吼える菩薩(国宝 8/7までの展示)がでていたことを図録で知った。うかつだったが、これは2度みているからご愛嬌。

9月に入ってからまた出かけるつもりだが、お目当ては東寺蔵の‘金剛界’と‘海賦蒔絵袈裟箱’(国宝 8/16~9/25)。とても楽しみ。

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2010.07.31

再会を楽しみにしていた‘金剛界八十一尊曼荼羅’!

1791    ‘金剛界八十一尊曼荼羅’(重文、鎌倉時代 13世紀)

1793      ‘金剛界八十一尊曼荼羅’(部分)

1792    ‘愛染明王坐像’(重文、鎌倉時代 13~14世紀)

1794     ‘色絵葡萄文大平鉢’(江戸時代 17世紀)

根津美の新創記念特別展は残り2回、現在行われている‘いのりのかたち’(7/10~8/8)と‘コレクションを未来へ’(8/21~9/26)。6部の‘能面の心・装束の華’は記事にはしなかったが、これまで皆勤賞で‘いのりのかたち’も勿論出かけた。

再会を楽しみにしていたのが‘金剛界八十一尊曼荼羅’(重文)。この曼荼羅図を5年前、京博であった‘最澄と天台の国宝’ではじめてみたとき、その色の鮮やかさと完成度の高い描写に大変驚かされた。東博の平常展などで曼荼羅図をみることは結構あるのだが、その多くはコンディションがいまひとつで心を奪われという感じでもない。

だが、根津美のものは違った。これまでのイメージをふっとばす見事な曼荼羅で、しばらく息を呑んでみた。東寺にある‘両界曼荼羅図’(国宝、平安時代 9世紀中頃)の金剛界曼荼羅は九会で構成されているが、これは九会の最も中心をなす成身会(じょうしんえ)だけが描かれている。

正方形の画面にびっしり配置された八十一尊、蓮華座、孔雀、鳥はひとつ々赤や緑、金色を使いクリアの描かれているので隅から隅まで夢中になってみてしまう。こういう見ごたえのある曼荼羅を体験したのは東寺のもの以外ではこれしかない。再会できたことを腹の底から喜んでいる。

仏画はもう3点いいのがある。あまり目にすることがない高麗仏画‘阿弥陀如来坐像’(重文、1306年)、‘大日如来坐像’(重文、平安時代 12世紀)、そして‘愛染明王坐像’。阿弥陀如来と大日如来は着衣や蓮華座の精緻な文様と華やかな金泥に魅了された。これほど質の高い絵がならぶと圧巻である!流石、根津美という感じ。

そして、気分をいっそうハイにしてくれるのが‘愛染明王坐像’。国宝のものと比べると赤の状態がすこし悪いが、それでもこの赤と蓮華座の橙色が目に焼きつく。夏の暑い時期に愛染明王をみると元気がでる。

併設展示では拙ブログ7/7で紹介した酒井抱一の‘七夕図’とお気に入りの古九谷の名品‘色絵葡萄文大平鉢’の前にしばらくいた。

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2009.11.22

その六 待望のアジャンタ石窟壁画・蓮華手菩薩と対面!

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今回のインド世界遺産めぐりで最もみたかったのはアジャンタ石窟寺院。アウランガバードからバスで2時間くらいのところにある。

30の仏教窟はワーグラー河の流れる狭い渓谷にそって馬蹄形に曲がった岩山の断崖につくられている。その時期は紀元前1世紀~紀元後1世紀(前期窟)と5世紀中頃~7世紀(後期窟)だが、石窟は1819年、虎狩りにやって来たイギリス人ジョン・スミスによって偶然発見されるまでは1千年間もジャングルに埋もれていた。

観光バスは石窟のすぐ近くまでは行けず、すこし離れた駐車場で待機。シャトルバスに乗り換え、5分でつく。ここからは段差のある石段道を登って第1窟まで行く。ここでも籠サービス(往復500ルピー、約1000円)がある。前日のエローラ観光で太ももの筋肉痛に見舞われた隣の方は真っ先に手をあげ、4人の担ぎ手にアシストされ軽快に進んでいく。キツイ歩きということはないが、気温は30℃を超えているから、少しは体力を消耗する。

★ワーグラー河に面したアジャンタ石窟群(上の画像)
★第1窟の内部(上から2番目)
★第1窟の壁画・蓮華手菩薩(下から2番目)
★第2窟の壁画・ブランコに乗っているナーガ姫(下)

2時間半の観光で中に入ったのは後期窟の1、2、16、17、19、26窟と前期窟の10窟。見学はいきなりお目当ての壁画がある1窟からはじまった。BS2生中継のビデオを目に焼き付けているので、現地ガイドさんの話を聞かず、‘蓮華手菩薩’を夢中になってみた。石窟内はどこも壁画の保護のため常設灯が無く、写真はフラッシュがダメで、ビデオ撮影もNG。

このヴィハーラ窟(僧院)の天井は写真のように低い。中央の奥に石づくりのブッダが鎮座しており、手前の壁には左に‘蓮華手菩薩’(白い菩薩ともいわれる)、右に‘金剛手菩薩’(黒い菩薩)が描かれている。‘蓮華手’の顔は眉がつながり、鼻筋を高くみせるため白のハイライトを入れている。視線を釘付けにするのが青い蓮華を持つやわらかい右手と腰のくびれ。彫刻でも絵画でも人体をこのように生身っぽく、官能的に表現するのは人々に宗教を親しみやすいものにするため。あとのカジュラホの寺院でドドッと出てくる。

この1窟について重要な情報がある。バスが駐車しているところに現在、白のドームが建設されている。ここに‘蓮華手菩薩’の精巧なレプリカを置き、5年後には1窟の中は見れなくなるという。壁画の損傷が今以上にひどくならないための措置だから致し方ない。こういう話はここへきてはじめて知ったが、いいタイミングでこの最高傑作がみれたものである。暢気にかまえていたら、悔いを残すところだった。ミューズのお導きに違いない。

天井や周りの壁に描かれているのはブッダの生涯をつづった仏伝とブッダの前生の化身を物語る本生の話。風俗画の形をとって精緻に表現されている本生の絵には惹きつけられるのがいくつもある。例えば、2窟ではナーガ姫がブランコに乗っていたり、17窟に描かれた鬼退治の‘シンハラ物語’では、酔っ払った女がリアルな姿で登場する。

幸運にも仏教美術の根源ともいうべきアジャンタ石窟の壁画を沢山見ることができた。嬉しくてたまらない。

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2009.09.17

地獄絵はお好き?

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日本画の楽しみのひとつに地獄絵がある。大きな絵巻展では源氏物語絵巻などと一緒に地獄絵も展示されるから、有名なものはほぼ目のなかにおさめた。つい最近も三井記念美の‘道教の美術展’で同系の‘辟邪絵’2点(国宝)と再会した。

地獄絵には腹の膨れた死人が転がっていたり、鬼の獄卒から責苦1ダースを食らいフニャフニャなっている罪人など、目をそむけたくなる場面や怖い場面がこれでもかというくらいでてくる。また、細部もよく描かれているので、洛中洛外図を見るときと同じように単眼鏡は必須アイテム。

現在、東博の国宝室に展示されている‘地獄草紙’(10/4まで)とは3年ぶりの対面。三井の辟邪絵に続き地獄絵を見たから、以前ネーミングした地獄劇場(拙ブログ06/3/17)をまた開演してみた。

★地獄草紙・雲火霧地獄:東博(上の画像)
★六道絵・阿鼻地獄図:滋賀、聖衆来迎寺(真ん中)
★河鍋暁斎の地獄極楽図:東博(下)

数ある地獄の炎のなかで目に強く焼き付いているのが‘地獄草紙’のこの場面。炎で罪人が焼けれているのだろうが、燃え上がる炎の勢いが彼らの悲痛な叫びをかき消し、その流線形の重なる力強いフォルムは地獄パワーがまさに全開している感じ。

‘六道絵’(国宝、13世紀)は地獄草紙(12世紀後半)より後に描かれており、全部で15幅ある。そのうち地獄が4幅。‘阿鼻地獄図’(部分)は八大地獄中、もっとも悲惨なところ。火焰のかたまりにつつまれるこの最悪の大集熱地獄に落ちてくるのは父母を殺したり、仏を冒瀆した者。二人の鬼が男の口を大きく開け、そこへ火で焼いた鉄の玉を突っ込もうとしている。

下は9/6まで近代日本画のコーナーに出ていた暁斎の見事な地獄絵(部分)。脚立に登った獄卒は棒の先から男を炎のなかに投げいれようとしている。なんとも残酷な場面である。

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