2016.12.20

秋田蘭画の魅力と司馬江漢!

Img_0002          小田野直武の‘鷺図’(18世紀 歸空庵)

Img_0003          佐竹曙山の‘松に椿に文鳥図’(18世紀)

Img_0001     司馬江漢の‘七里ヶ浜図’(18~19世紀 大和文華館)

Img  司馬江漢の‘金沢能見堂眺望図衝立’(1789~1800年 仙台市博)

最近は日本美術の展覧会に前期も後期も足を運ぶことが少なくなっているが、サントリー美で開催中の‘小田野直武と秋田蘭画’(11/16~1/9)は気になる作品が多かったので、再度ミッドタウンを訪れた。

小田野直武(1749~1780)は惜しいことに31歳の若さで亡くなっている。その死は謎につつまれているが平賀源内(1727~1779)が1年前に獄死したことと関連があるようだ。そして、ひとつ年上の秋田藩主佐竹曙山(1748~1785)も直武の死の5年後に37歳でこの世を去る。

後期に登場した直武の洋風画も魅力あるものが多い。なかでも足がとまったのが‘鷺図’、これは数年前に行われた府中市美の江戸絵画シリーズでお目にかかった。川の水面を首をまげてのぞきこんでいる鷺がまるで目の前にいるような感じ。陰影表現と二つの大きな木を十字をつくるように配置する構図によって立体的な空間構成がなされているため、描かれている場所だけでなく画面の外の空間までイメージがひろがっていく。

今回、佐竹曙山は展示されている書簡から大変な癇癪持ちであることがわかった。それでぴーんときた。直武に比べ構図のつくりかたに切れ味があり大胆なのは曙山のこの性格からきているのではないかと。‘松に椿に文鳥図’でハットするのは丸みのある松の太い幹のむこうに椿をちょこっとみせ小枝に二羽の文鳥を描いていること。この構成はなかなか思いつかない。

後期のお目当てはじつは司馬江漢(1748~1818)だった。奈良の大和文華館が所蔵している‘七里ヶ浜図’と‘海浜漁夫図’をようやくみることができた。小さいころから海が好きなので遠くに富士山を望む七里ヶ浜の景色を立ち尽くしてみてしまう。

衝立の表裏に江の島と金沢のすばらしい眺めが描かれたものは東日本大地震で被災した石巻市の旧家の蔵からでてきたという。この幸運なめぐりあわせをふくめて江漢は全部で6点みることができた。ミューズに感謝!

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2016.12.02

待望の‘小田野直武と秋田蘭画’!

Img          佐竹曙山の‘松に唐鳥図’(重文 18世紀)

Img_0001     小田野直武の‘不忍池図’(重文 18世紀)

Img_0002          佐竹曙山の‘蝦蟇仙人図’(18世紀)

Img_0003     司馬江漢の‘江ノ島稚児淵眺望’(19世紀 仙台市博)

サントリー美の今年の企画展で最も期待していたのは‘小田野直武と秋田蘭画’(11/16~1/9)、このなかにずっと追いかけていた作品がでている。それは前期(11/16~12/12)だけしか展示されない‘松の唐鳥図’、描いたのは秋田藩のお殿様、佐竹曙山(さたけしょざん 1748~1785))。

西洋画の陰影法や遠近法を取り入れて描いた風景画や花鳥画、いわゆる秋田蘭画は府中市美が精力的に開催している江戸絵画シリーズにちょくちょくでてくるのでだいぶ目が慣れてきているが、こうしてまとまった形でみるのははじめて。

この絵で目を惹くのはなんといっても画面を斜めにのびる大きな松の幹からでた枝にとまっている赤い鸚哥、おもしろいことに根津美の円山応挙展でも同じく松と赤の鸚哥を組み合わせた作品と出会った。赤の色の強さはともに尋常ではないが、絵全体のインパクトは曙山のものに軍配が上がる。松の力強さと極上の赤の絵の具を使って描かれた鸚哥、この構図はぐっとくる。

秋田蘭画のもうひとりの主役、小田野直武(おだのなおたけ 1749~1780)は秋田藩の藩士、代表作が‘不忍池図’(展示は前期のみ)、これは一度じっくりみているので軽くみていたが、解説のプレートに芍薬のつぼみのところに蟻がいると記されていたのですぐ単眼鏡を取り出してみた。前回は見逃したが2匹の蟻が姿を現わした。たまには説明文も読んでみるものだなと思った。横に秋田県の出身という男性がいて蟻を気にしていたので単眼鏡をわたしてあげた。

曙山の‘蝦蟇仙人図’をみるのは二度目、ここでハットすることに気づいた。なんと三足の蝦蟇と後ろの松の幹がダブルイメージになっている!松の表皮の菱形模様がそのまま蝦蟇の体のつぶつぶに連続し、よくみると蝦蟇は幹が変容した姿、これは気がつかなかった。曙山、なかなかやるじゃん、という感じ。

大きな収穫だったのが司馬江漢(1748~1818)、画集に載っていてまだお目にかかってないものが数点あった。とくに足がとまったのは‘江ノ島稚児淵眺望’、この展覧会は一回で終わりのつもりだったが後期に江漢がまた登場するのでそうもいかなくなった。

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2014.04.11

予想外に収穫のあった‘のぞいてびっくり江戸絵画’展!

Img_0002     小田野直武の‘不忍池図’(重文 1770年代 秋田県近美)

Img_0004     円山応挙の‘眼鏡絵 三十三間堂’(1751~64年)

Img_0001     ‘西洋婦人図鞘絵’(19世紀 神戸市博)

Img 歌川広重の‘即興影法師尽し 根上りのまつ 梅に鶯’(1830~44年)

サントリー美の‘のぞいてびっくり江戸絵画’(3/29~5/11)はもともと出かける予定はなかったが、たまたまみたHPにより小田野直武(1749~1780)の‘不忍池図’が出品されることがわかったので、急遽出動した。いわゆる‘一点買い’というやつ。

この展覧会ではサントリーにしては珍しく158点の作品を前期(3/29~4/21)と後期(4/23~5/11)の2回に分けたすっきりスタイルでみせている。‘不忍池図’は前期の展示。この秋田蘭画を代表する絵は入室するとすぐ出迎えてくれる。長年追っかけてきたが、ようやくみることができた。

目を惹くのが構図。手前になぜか鉢植えの芍薬が大きく描かれている。花弁の白の胡粉と薄ピンクが異様に輝いているのがじつに印象的、そして、目が釘づけになるのが池にむかって長くのびる鉢の影。この陰影法は西洋画となんら変わりない。

こういう自然の風景を背景にした静物画をドラクロアやデ・キリコ、日本の洋画家の岡鹿之助らも手がけており、画面の構成が小田野のこの絵とよく似ている。ちがいは描写の細やかさ。‘不忍池図’では遠景に空を舞う鳥や人々を単眼鏡でないと確認できないくらい小さく描き込んでいる。

収穫がもうひとつあった。それは円山応挙(1733~1795)の描いた眼鏡絵の‘三十三間堂’、これは絵としてはみたことがあるが、西洋で発見されたのぞきからくりにどのようにみえるのかイメージできなかった。今回美術本に載っているような反射式覗き眼鏡が展示してあり、鏡に反射させた絵をレンズのむこうにみれるようになっている。これは嬉しい体験!

眼鏡絵自体が遠近法を使って描かれているので立体的にみえるが、レンズをのぞくとさらに臨場感が増し通し矢の場面がまるで3D映像のような感じにみえる。反射式では鏡に映すので絵はモチーフがはじめから左右逆に描かれている。

ほかの作品はこれまで目にしたものが多かったのでさらっとみた。4階から3階に降りたところに江戸時代の人たちが楽しんだエンターテイメントが再現されている。絵を切り抜いていろいろなものにこしらえる‘立版古’、奇妙にゆがんだ絵を丸い筒の形に写してみる人にその形の変化をおもしろがらせる‘鞘絵(さやえ)’。夢中になってみてしまうのが鞘絵、この装置のまわりを回ってみたり、体をかがめたりすると絵に描かれたおかしな人物がたしかにまともな姿にみえてくるから不思議。

歌川広重(1797~1858)の影絵にも思わず足がとまる。障子のうしろの影はどうみても根が張った松、その形は男が傘を頭にかぶりそして両手にいくつも持つことによってつくられたものだった。これをみて、浅草演芸場で芸人が扇を口や手に数多くくわえたりもったりする演技を思い出した。

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2006.04.11

亜欧堂田善の浅間山図屏風

358洋風画家、亜欧堂田善(あおうどうでんぜん)が描いた大きな屏風が今、府中市美術館の“亜欧堂田善の時代展”に出ている(4/16まで)。それは右の“浅間山図屏風”(東博所蔵)。

江戸後期、西洋画の油彩や銅版画の技術を使って風景や人物を描いた絵師のことを洋風画家と呼ぶが、亜欧堂田善もそのひとり。

この屏風は油絵としては最も大きいものらしい。そう言われても、なにしろ、こういう
タイプの絵はこれまでみたことがないので、ピントこない。ほかの油彩画と較べると
たしかに大きい絵である。今回出品されてる油彩画(11点)では風景のなかに
人物が描かれているのに、ここには人が登場しない。雄大な浅間山を右にどんと
描いている。

この絵は遠近感があまり感じられず、色使いをみても、左の炭焼きの煙がのぼって
るまわりの木々の緑とか浅間山の手前の山の茶色は、もっと濃くて油絵の具のねっ
とりした感じをイメージしていたが、そうではなく淡い色調。洋風画家が描く風景画
だから、男性的な浅間山が立体的に圧倒的な存在感のある姿で描かれているのだ
ろうと予想してたのに、実物は拍子抜けするくらい洋画ぽくない絵だった。

前期に出ていた“江戸城辺風景図”では、濃い緑や明るい緑が木の葉や土手の草
に光があたるところとあたらない場所の感じをよく捉えており、油絵の特徴がでて
いた。だが、“浅間山図”はこの絵とは違い大きな屏風なので、田善は制作にあたり、
画面いっぱいに油絵の具のぎっちり塗り重ねて、密度の高い絵画空間をつくるのは
相応しくないと思ったのかもしれない。

屏風絵は元来装飾的に描かれるものだから、注文者の目を楽しませることが絵の価値
をあげる。淡い色調とはいえ、伝統的な墨の濃淡で描く狩野派流の風景画にくらべれ
ば、この絵は色数が多く、空の色は実際に見たとおりに近い青で彩色されているし、
浅間山の山頂近くにみえる雲も見慣れた形をしている。だから、この油絵風景画は見る
ものを心地よくしたのではないだろうか。

はじめは、なにか物足りない印象をもったが、しばらく見ていると、逆にこの風景に陰影
でアクセントをつけ、色も濃くしたら、すぐ飽きられる屏風になるような気がした。これく
らいの洋画っぽさが無難だったかもしれない。洋風画というと、司馬江漢の絵しか思い
浮かばなかったが、亜欧堂田善という絵師の存在を知り、その油絵を見る機会に恵ま
れたのは大変よかった。こういう新しい絵師に出会う展覧会も刺激があっていい。

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