2017.05.01

鯉に乗る琴高仙人!

Img_0001     雪村の‘琴高仙人・群仙図’(重文 室町時代16世紀 京博)

Img     ‘風濤図’(重文 16世紀 野村美)

Img_0002     ‘猿猴図’(16世紀 茨城県立歴史館)

Img_0003     ‘龍虎図屏風’(16世紀 根津美)

東芸大美で開催中の‘雪村展’は後期(4/25~5/21)に入り作品ががらっと変わった。当初は一回で済ませるつもりだったが、気になる作品があるのでまた足を運んだ。

雪村の絵で最も楽しいのが‘琴高仙人・群仙図’、仙人が大きな鯉のひげをつかんでカウボーイが暴れ馬を乗りこなすように背中にまたがっている。この鯉、尾びれがこちらのほうを向き体は直角に曲がっている。だから、この上に乗っているのは相当な力技がいる。だが、そこは仙人、こんなことは朝飯前。

この場面は湖に潜った仙人が龍の子を手に入れて浮き上がってきたところ。まわりでは弟子たちが‘ありゃー、師匠やったね!’と唖然とした顔つきでみつめている。仙人の見事な動体描写をみていっぺんに雪村のファンになった。

京都の野村美が所蔵する重文の‘風濤図’は滅多に出てこない。2002年にあった回顧展のときは出品されなかったから、今回主催者は何度もお願いにあがったのかもしれない。2度目の対面だが、本当にいい絵。
強風のなかを懸命に進む船の姿が心を揺すぶる。

2回も出動したので前回展示替えで見逃した作品をかなりの数リカバリーできた。‘猿猴図’もそのひとつ。現在京博で行われている‘海北友松展’(4/11~5/21)で里帰りした手長猿をみたばかりなので、この絵にもすぐ反応する。川の流れが大げさに波濤の形になっているところが雪村流。

‘風濤図’同様、前回出品されなかった根津美蔵の‘龍虎図’、この度は4/25~5/7展示される。これまで数回みたので、海北友松の豪快な龍を思い起こしながらながめていた。

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2017.04.22

期待を上回る‘海北友松展’!

Img     ‘雲龍図 阿形’(右隻 重文 1599年 建仁寺)

Img_0001     ‘吽形’(左隻)

Img_0002_2     ‘柏に猿図’(16世紀 サンフランシスコ・アジア美)

Img_0003_2     ‘網干図屏風’(左隻 17世紀 三の丸尚蔵館)

Img_0004     ‘月下渓流図屏風’(左隻 17世紀 ネルソン・アトキンズ美)

4月19日、京博ではじまった‘海北友松展’(4/11~5/21)をみるため4年ぶりに京都へ行った。朝早い新幹線に乗ったので、9時30分の開館と同時に入館、新装なった京博に来るのははじめて。もとの本館での開催をイメージしていたが、通常展を行っている新館で列に並んだ。

海北友松(1533~1615)は実力絵師ではあるが、狩野永徳や長谷川等伯とくらべると知名度は三分の一くらいかもしれない。それは‘海北友松’という名前が‘かいほうゆうしょう’とすっと読めないことも一因。この絵師を知るきっかけになったのはかなり前京博で開催された‘建仁寺展’。

ここに出品された迫力満点の‘雲龍図’に度肝をぬかれ、‘かいほうゆうしょう’を胸に刻み込んだ。過去見た作品で印象深い龍の絵が全部で4点でている。そして、プラスαの収穫は長谷川等伯を連想させる手長猿を描いた‘柏に猿図’、下の草花の緑がよく残っており長くみていた。

じつは今回最も期待していたのは三の丸尚蔵館が所蔵する‘網干図屏風’、1999年にあった‘皇室の名宝展’にこの絵は‘浜松図’とともに出品されたが、展示替えでお目にかかれなかった。その後、尚蔵館での展示をずっと待ち続けたが願いが叶ったのは‘浜松図’のほうだけ。

この回顧展に2点はたぶんでてくるとは読んでいたが、出動するタイミングに‘網干図’が合うかどうか、果たして、ありました!ありました! 最初にこの網干がでて(4/11~4/23、5/9~5/21)、浜松は後半に展示される(4/25~5/21)、リカバリーに18年かかったので感慨深くながめていた。

そして、最後にすばらしい絵が飾ってあった。60年ぶりに里帰りした‘月下渓流図屏風’、等伯の‘松林図屏風’が頭をよぎる静寂な水墨の世界、こんないい絵があったのか、という感じ。もし、日本にあったら国宝まちがいないだろう。チラシに最晩年に描いた最高傑作とあったので、どんな絵かと気になっていたが確かにその通り。通期の展示なのでいつ出かけてもみられる。

この絵をみたら友松のスゴさがわかり絵画史における位置づけを改めなくてはならなくなった。永徳、等伯、友松は真に桃山のビッグ3、海北友松に乾杯!

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2015.04.22

あらためて雪舟!

Img_0001

Img_0002       国宝‘秋冬山水図’(15世紀 東博)

Img      国宝‘山水長巻’(部分 1486年 山口・防府市 毛利博)   

Img_0003     国宝‘破墨山水図’(1495年 東博)

今年一月、日曜美術館に雪舟(1420~1506)が登場した。このタイミングでなぜ雪舟なの?という思いで番組をみているとだんだん番組スタッフの狙いがわかってきた。それから3ヶ月が経ち、つい最近同じタイトル‘中国でよみがえる雪舟’をつけてEテレでも流された。これは番組づくりではよくやる‘一粒で二度美味しい’という編集方式だが、情報量はこちらのほうが多かった。

二つの番組からいくつか新情報が入ってきた。そのひとつが中国で開かれるオークションで水墨画や書の人気が高まっていること、中国人コレクターが高値で競り落とし、うん億円という落札価格が飛び交っている。このため、美術商たちは世界中にでかけ水墨画を集めているという。4,5年前、中国人が日本の寺などをまわり中国の古い絵を探しているという話を聞いたことがあるが、こういう動きはオークションでの人気を反映したものだった。

そして、とても興味深かったのが昨年6月杭州の大学で開かれた雪舟のシンポジウム、番組はこのシンポジウムを主導した書道家と水墨画家二人に密着取材し、なぜ今雪舟が中国美術界のなかで高く評価されているかを浮き彫りにする。彼らが関心を寄せているのは雪舟だけでなく、日本に数多く存在する夏珪や牧谿などの南宋絵画。二人が訪れた鎌倉の円覚寺で牧谿の猿の絵を興奮してみていたのが印象的だった。また、書道家は山口県の防府市まで足を運び、待望の国宝‘山水長巻’を息をのんでみていた。

広島にいたとき毛利博へクルマを走らせたからこの絵には特別な思い入れがあるが、このときは横に中国人がいることは想像もできなかった。それから17年くらい経ち、雪舟を研究する中国人がこの絵をみるためにわざわざ杭州からやって来る。日本で画聖とたたえられた雪舟に水墨画の本場中国で熱い視線が注がれる。そんな時代になった。日中で雪舟をめぐって画家や研究者の交流が盛んになるのはとてもいいこと。実りある成果を期待したい。

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2014.02.09

期待通りに楽しめた‘クリーブランド美展’!

Img_3     雪村の‘龍虎図屏風’(室町時代・16世紀)

Img_0003_4     ‘福富草紙絵巻’(室町時代・15世紀)

Img_0002_4     渡辺崋山の‘大空武左衛門’(江戸時代 1827年)

Img_0004_4     深江蘆舟の‘蔦の細道図屏風’(江戸時代・18世紀)

現在、東博で行われている‘クリーブランド美展’(1/15~2/23)を楽しんだ。クリーブランド美が所蔵する絵画コレクションみるのは2度目、8年くらい前には西洋絵画が公開された。今回は京博であった雪舟展(2002年)や曽我蕭白展(2005年)に出品されたものやこの美術館自慢のお宝である雪村の絵など40点あまりが里帰りした。これには中国絵画と西洋絵画7点のオマケがついている。その作品が上々なので美術館に対するク好感度はさらに上がるい。

最もみたかったのは雪村(生没年不詳)の‘龍虎図屏風’、絵の存在を知ってから十数年が経つが漸くみることができた。お目にかかれる可能性は少ないとみていたから、よくぞお帰りいただいたという感じ。根津美蔵の龍虎図よりこちらのほうに惹かれる。

左に描かれた虎は背中から尾っぽのラインはもうまるで猫、まん丸の顔は愛嬌がありゆるキャラとしてすぐにでもイベントに出演できる。後ろから風にビュービュー吹かれているが、じっと前方の龍をみている。この龍は光が当たってうろこが白く輝く胴体や手足の爪は生き生きしているのに、顔はなんともくたびれた爺さん顔。このアンバランスがおもしろい。

風俗絵巻にいいのがあった。室町時代に制作された‘福富草紙絵巻’。話の内容は一度京都・春浦院所蔵のものをみているから、頭のなかに入っている。思わず笑ってしまうのが中将邸で男が脱糞してさんざんに打たれる場面、‘なんて汚い奴だ!’‘勘弁してくださいよ、あっしは中将殿を楽しませた秀武ちゃんにいい音のする放屁の出し方をしっかり教えてもらったのでご披露しようと思って来たんですよ、ところがどうも腹の調子が悪くなってきましてねえー’。悪ふざけがすぎる長者の秀武にこの男の妻が噛みついたのも無理はないが、亭主をけしかけ自分たちも一儲けしようとするこの強欲な女にいいことがあるはずがない。

今回の収穫は渡辺崋山(1793~1841)の描いた2mをこえる力士の絵、浮世絵では相撲取りの絵がよくみるが、浮世絵以外でしかも等身大で描かれた人物画はお目にかかったことがない。唖然としてみていた。これは一生忘れない絵になりそう。

もう一点、深江蘆舟(1699~1757)の‘蔦の細道図屏風’の前にも長くいた。東博にもこのモチーフで描いたものがあるが、二つを比べると右に川が流れるこの絵の構成に魅力を感じる。修行僧を見送る男の立っている位置や岩に挟まれた道の曲がり具合、そして水流の柔らかな曲線、この空間構成がじつにいい。

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2012.07.15

王子江さん 日曜美術館に登場!

4076_2   岩手県大槌町で唯一残った公民館を描く王子江さん

4077_2     ‘夢・希望’(2012年)

4078_2    大槌町の子どもたちと一緒に絵を制作する王子江さん

4079_2     ‘吉祥如意図’(部分 2012年)

今日の日曜美術館に個展(拙ブログ05/12/706/10/1407/10/12)があるときよく話をさせてもらう水墨画家、王子江(おうすこう 1958年~)さんが登場した。昨年の個展は都合が悪く出かけられなかったので、TVのなかではあるが久しぶりにお会いした。

先月末恒例となっている雑誌‘TV太郎’による美術番組をチェックをした際、この番組が目に入った。大好きな画家なので楽しみにしていたが、その内容は見当がつかずひょっとして中国でまた個展が開かれたのかな?と思ったりもした。

王子江さんは東北の被災地に出かけ、そこに暮らす人々の今を水墨画で描いていた!番組のタイトルは‘水墨で今を映す アーティスト・王子江の世界’。今年54歳の王さんはNHKとは縁が深く、美術番組出演がこれで3度目くらいで、また何年か前田中優子が演じた‘西太后’に使われた絵を手がけたり、Eテレの水墨画の番組に講師として出演している。

岩手県の大槌町に今年3月訪れた王さんがまわりに瓦礫や壊れたオートバイやクルマが積み上げられているところから描いたのが津波で唯一流されなかった公民館。王さんは最後に地面に水を描いた。この水の描写が王さんは天才的に上手い。

釜石市では人物画を描いている。若い漁師さんをスケッチするとき話を聞きながら手を動かす。そのあと、仮設住宅に行き、可愛い娘さんと同居する祖母も一緒に描いた。王さんは若い頃北京の街にでかけ1万6千人もの人をを描いたという。王さんは根っから人間が好きなのだ。完成した‘夢・希望’をみていると08年上野の森美で開催された回顧展に展示してあった群像図(08/2/24)が目の前をよぎった。

大槌町を6月に再訪問したとき、王さんは16人の子どもたちと一緒に絵を描いている。横長の大きな画面の下半分に子どもたちが町の様子や海にいる魚や生き物を描き、上半分に王さんが吉祥の龍を描いた。王さんが2本の箒に墨をたっぷりつけて一気に龍の胴体を描いていく。それをみている子どもたちは生き生きとした表情で‘龍がスゴイ!’とつぶやく。

王さんと子どもたちの合作‘吉祥如意図’をみたくなった。王子江さんはもってる水墨画の技が高いだけでなく、人間性がすばらしい。このように被災した東北へでかけ復興に夢と希望を託し日々生きている人たちから話を聞きその姿を水墨で描き、子どもたちとは絵でコラボし元気を与える。本当にエライなと思った。

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2012.04.23

雪舟の国宝‘山水長巻’と再会!

3769_2     雪舟の国宝‘山水長巻’(1486年)

3770_2     ‘山水長巻’(1486年)

3771_2     円山応挙の‘鯉魚図’(江戸時代中期)

3772_2            狩野芳崖の‘福禄寿図’(明治時代)

サントリー美で開催中の‘毛利家の至宝展’(4/14~5/27)でとんだ勘違いをした。ここは夜8時までやっていると思い、国立新美で‘セザンヌ展’をみたあとゆっくりとサントリーへ。館に着いたのが5時25分。すると、‘あと20分で館は閉まりますがいいでしょうか?’と案内された。ええー!?

聞いてみると8時まで開館しているのは金曜日のみ。ほかの日は6時までだった。サントリー美がここに開館して5年もたつというのに間抜けなこと。で、急いでみた。

お目当ては雪舟(1420~1506)の大傑作、国宝‘山水長巻’。この絵をみるのは幸運にも3度目。前回みたのは02年京博であった雪舟展だから、10年ぶりの対面。嬉しいのは京博のときとちがって16mもある画巻が全部みれること。

山口県防府市にある毛利博物館でこれをはじめてみたときの記憶がすこしずつ戻ってきた。山水画の定番のモチーフである岩や山、樹木が力強い墨線や黒々とした墨の広がりで表現されている。視線をどんどん移動させると高士と童子が石橋の上を歩いている。霞む山々を背景に河の水流の曲線とまわりの岩や松の木の直線が見事にとけあう構成に思わず見入ってしまう。

この絵の最も好きな場面は最後からちょっと手前に描かれた山間の村。酒旗が立っている家の前には赤や青の服を着た沢山の人が集まり楽しげにしゃべっている。S字に曲がった道は上のほうでは急な坂道になっており、一人の男が昇っている。

この絵は保存状態がとても良く、墨と色がくっきりと目のなかに入ってくる。とくに印象づけられるのが樹木の描き方。濃い墨が目に焼くつく木の葉、垂直にすっと立ち並んでいたり大きく枝を曲げ強い生命力をみせる松、そしてところどころにでてくる木の赤い実。

思わぬ収穫だったのが円山応挙(1733~1795)の‘鯉魚図’と狩野芳崖(1828~1888)の‘福禄寿図’。ともに大きな絵なので見ごたえがある。毛利家のお宝展は広島にいたとき一度体験し今回展示されているものはほとんどみているので図録はパスするつもりだったが、こんないい絵をみてしまうと買わざるをえない。

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2011.07.15

雪舟の国宝‘天橋立図’が‘橋ものがたり’展に登場!

2856_2     雪舟の国宝‘天橋立図’(室町時代)

2855_2       野々村仁清の‘色絵柳橋図水指’(江戸時代 17世紀)

2858_2     葛飾北斎の‘諸国名橋奇覧・三河の八つ橋の古図’(江戸時代 19世紀)

2857_2     歌川広重の‘日本橋より富嶽遠望の図’(江戸時代 19世紀)

三井記念美で開催中の‘橋ものがたり’展(7/9~9/4)は昨年の‘隅田川’展(江戸東博)と似たタイプの展覧会。現在の石造二連アーチの日本橋ができたのは明治44年(1911年)。で、今年は架橋100年にあたる。それを記念したこの特別展では、絵画、やきもの、蒔絵などに描かれた橋をあれもこれもみせてくれる。サントリー美同様、ここも企画力があるからみてて楽しい。

今回追っかけ作品はとくになかった。こういうときはテーマ型の企画展の場合パスすることが多いのだが、チラシをみてそうもいかなくなった。雪舟の絵でお気に入りの国宝‘天橋立図’が京博から出品されるのである(展示は7/9~7/21)。この絵をみるのは京博であった‘雪舟展’(02年)以来。

9年前みたときと印象がちがった。前はもっと紙が白かったような気がする。時間の経緯により、その白の輝きが少しずつ消えているのだろうか。これは本当に見事は風景画。俯瞰の視点で橋立をとらえる構図に惹きこまれる。画面全体は墨の濃淡で描かれているが朱が6箇所で使われてる。是非ご自分の目で。

もうひとつ再会したいものがあった。それは野々村仁清の‘色絵柳橋図水指’(湯木美)。この名品と会うのは12年ぶり。V字をつくる緑の柳と金と赤で彩色された橋を息を呑んでみていた。‘柳橋水車’は屏風絵の画題として桃山から江戸初期にかけて人気のあったモチーフ。仁清の水指のほかにも屏風(MOA蔵)がでている。

橋をみて旅心が誘われるのはやはり浮世絵風景画。見覚えのある橋の絵がどどっと登場してくる。どれも琴線にふれるので選択に困るが、過去にとりあげたものとかぶらないように選んだ。北斎の‘諸国名橋奇覧’シリーズの‘三河の八つ橋の古図’は角々と曲がる八つ橋のフォルムとそこを行き交う旅人の丸い笠のリズミカルな動きが目に心地いい。

画面手前に大きく描かれた日本橋の擬宝珠と遠くの富士山を対比させた広重の絵(肉筆画)がとても気に入っている。この絵は5年前の開館記念展‘日本橋絵巻’に展示された。図録をみると後期にでてくる浮世絵にもいい橋の絵がある。リピート客の割引
(200円引き)を利用して、またでかけることにした。

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2010.10.23

お茶の間の笑い ‘仙厓展’!

2054     ‘布袋画賛’

2057     ‘座禅蛙画賛’

2055          ‘橋上人物画賛’

2056     ‘堪忍柳画賛’

出光美で開かれている‘仙厓展 禅とユーモア’(9/18~11/3)は3年前に回顧展をみたばかりだから、プラスαが期待できるのか心配だった。同じ図録を使っている可能性もあるので、さらっと見て引き上げようと思っていた。

ところが、作品91点(画賛のみ)の2/3は前回なかったものだったので、すぐ‘見るぞ!モード’にスイッチオン。ここに仙厓(1750~1837)のコレクションが一体何点あるのか知らないが、前回(拙ブログ07/9/24)は94点あったから2回の展覧会で160点近くをみたことになる。これに他の美術館蔵を加えると鑑賞したのは200点くらい。これで仙厓は済みマークがつけられそう。

初見で足がとまったのはあくびをしている布袋さん。13点の布袋画のなかでこれと‘指月布袋’がお気に入り。このあくびをする布袋さんは口を大きく開けたあくび顔と横によじれた太鼓腹がじつにユーモラス。散歩の楽しみのひとつがあくびをする赤ん坊にでくわすこと。赤ん坊はあれほど寝ているのに布袋さんみたいによくあくびをする。

どうでもいいことだが、電車の中であくびをする大人をみる頻度としては女性のほうが多いような気がする。といいつつも‘あなたが女性ばかりみているからでしょう!’とつっこまれるとその印象もすぐへなりと変わってしまうのだが。

再会した‘座禅蛙’を楽しんだ。この蛙は目にとても力がある。そして、ちゃんと座禅の姿勢になっているところがエライ。悟りを開けたらなおエライのだが。でも、人間だって仏になれるのはごくわずか。蛙流の悟りだってあるだろうから、そう案ずることはない。

はじめてお目にかかる‘橋上人物画賛’をみていて、池大雅の同じような絵を思いだした。恐る恐る丸太の橋を進む僧は太っているのでとても渡れそうにない。さらさらっとひいた描線はじつにのびやかで、緊張した僧の姿がとてもユーモラスにみえる。

‘堪忍柳画賛’は腹にグッとくる絵。賛は‘気に入らぬ風もあろうに柳哉’。誰しも世の中そう思い通りにはいかないことはわかっている。気持ちのよい風が吹いてくることもあれば、気にいらぬ風に心が滅入ることもある。

柳はこの絵のように枝を曲げて激しい風に耐えているが、われわれは忍耐にも限度がある。心が折れるような不条理な風に吹きとばされることがないことをいつも願っている。

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2010.04.10

心を揺すぶる根津美の特別展‘胸中の山水・魂の書’!

1444_2                夏珪の‘風雨山水図’

1443_2     牧谿の‘漁村夕照図’

1445_2          賢江祥啓の‘山水図’

1446_2   因陀羅の‘布袋蒋訶問答図’

根津美では現在、新創記念展の第4弾‘胸中の山水・魂の書’(3/13~4/18)が行われている。1年間は所蔵の名品がそれこそ全部でてくる感じなので毎回、大きな満足が得られる。

今回スポットが当てられるのは中国の山水画とそれに影響を受けた日本の禅僧たちの絵、そして書。最初の頃、馬麟の‘夕陽山水図’(重文)が登場したが、馬麟の父、馬遠と南宋の同時期に活躍したのが夏珪。

ざざっと描かれたような‘風雨山水図’(重文)はその粗い筆跡がかえって雨が激しく降り、風の強い情景をよく伝えている。傘をすぼめ腰をかがめて橋を渡る男の動感描写は心憎いばかりに上手い。

牧谿(もっけい)の有名な絵、瀟湘八景の一枚‘漁村夕照図’(国宝)はこの美術館の誇るお宝の一つ。04年にあった‘南宋絵画展’以来だから、6年ぶりの対面。八景のなかで最も気に入っているのがこの絵。

目の前の景色は全体に霞がかかり、時間の経過とともに湖辺の大気や光が微妙に変化していく様子がうかがえる。中央には釣り舟が4隻、右端の漁師は投網をしている。シルエットになってみえるその姿が心を揺すぶる。

昨年、畠山記念館で公開された同じく国宝の‘煙寺晩鐘図’をみられた方はこれも是非。牧谿の八景はどの美術館でも展示される機会が少ないから、南宋絵画の真髄にふれるにはもってこいの流れである。

日本の禅僧が描いた山水もいいのがある。周文の‘江天遠意図’(重文)と賢江祥啓の‘山水図’(重文)。周文の絵はやっとお目にかかった。3年前、東博であった‘京都五山 禅の文化’展に周文の名画がかなり揃ったのだが、残念ながらこれは展示されなかった。これで周文も済みマークがつけられる。

祥啓の絵は墨の画面のなかに松の木などを青緑で彩色しているのが特徴。また、角々した岩の塊を横にのばして四角のフォルムにしているのもほかの山水画と異なるところ。以前展示された芸阿弥の‘観瀑図’(重文)は視線が縦に動くのに対し、この絵は横の広がりがあるのでゆったりみられる感じがする。

因陀羅の国宝の問答図は毎度、布袋の笑顔に心が和む。‘文は人なり’といわれるが、こういう人物画をみると‘絵も人なり’を実感する。これを描いたインドの僧、因陀羅の心根の良さが手にとるようにわかる。

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2010.03.13

等伯のここが好き!

1354           ‘善女龍王像’

1353       ‘日通上人像’

1355   ‘寒江渡舟図’

1356   ‘松林図’(右隻)

長谷川等伯展(東博)の後期(3/9~3/22)をみてきた。当初は16日の予定だったが、平日でも相当混雑しているという情報が入ってきたので、急遽昨日に変更。

会場には10時に着いたのだが、もう30分待ち。この時間帯でこのくらいの人が集まっているのだから午後になるとかなりの待ち時間になるだろと思われた。果たして、12時ごろは70分待ち。この調子だと土日は2,3時間待ちになるかもしれない。これはすごい人気!

後期にでてくるのは4点、肖像画1点、金地にお猿さんの絵‘竹林猿猴図屏風’(重文、相国寺)、‘松に鴉・柳に白鷺図屏風’(出光美)、‘烏鷺図屏風’(川村記念美、拙ブログ06/1/15)。このうち肖像画と‘竹林猿猴図’は初見。

‘烏鷺図’は6日、マリー・ローランサン展で川村へ行ったら平常展示で飾ってあった。ここへ出すのだったら、等伯展に通期展示すればいいのに。‘国宝2点が出ずっぱりなのに、重文の絵がどうして出せないの?’どうもこの美術館にたいする好感度は昔から悪い。
 
‘竹林猿猴図’はそれほどぐっとこなかった。もともと金地の絵は東博蔵の‘瀟湘八景図’にしても‘山水図襖’(重文、隣華院)にしても墨一色に較べるとあまり響かない。で、お気に入りの仏画や肖像画をもう一回みた。等伯は人物描写がとても上手い。はじめてみる‘善女龍王像’(七尾美)の女姓の顔のきれいなこと。また、‘釈迦多宝如来像’(大法寺)の金で彩色された如来も心を打つ。

肖像画でお気に入りは‘日通上人像’(重文、本法寺)。03年、東博であった‘大日蓮展’で遭遇したが、等伯は上人の内面を見事に描いている。これは西洋の肖像画と並べても遜色の無い傑作である。

前期(3/3)同様、絵の前に長くいたのが‘寒江渡舟図’。横に‘山水図’があるが、構図はこの絵のほうがいい。男がつけている蓑の白が輝いているのが印象的。中国画でない日本の絵師が描いたこの手の絵ではこれが最も心を打つ。忘れられない絵になりそう。

‘松林図’をまたじっくりみながら、結局、等伯は墨の濃淡だけで描いた水墨画に取り組んでいるときが一番心が落ち着くのだなと思った。好きなモティーフは柳、竹、松。人物画は名人だが、ボリュームのある馬とか虎は平凡であまりおもしろくない。巨大な‘仏涅槃図’の左下にいる馬はどうなっているのかよくわからないし、‘牧馬図’で多数描かれている馬の形もなんだか変。

小鳥とか猿(09/1/23)とか鶴はお手本があるから描けるが、虎や馬などはじっくり動きを観察しないとちゃんとした形にならない。思うに等伯は柳や松の葉とかススキといった直線をすっとのばせるモティーフが好きで、まるいものを形にするのは性に合わなかったのかもしれない。

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