2016.04.23

生誕300年記念 若冲展!

Img_0001_2      ‘孔雀鳳凰図’(1755年 岡田美)

Img_0005     ‘動植綵絵 老松鸚鵡図’(1761年以前 三の丸尚蔵館)

Img_0004      ‘花鳥版画 雪竹に錦鶏図’(1771年 平木浮世絵財団)    

Img_0002     ‘蟲菜譜’(部分 重文 1792年 佐野市立吉澤記念美)

カラヴァッジョ同様、伊藤若冲(1716~1800)は一生つきあっていく画家だから東京都美ではじまった‘生誕300年記念 若冲展’(4/22~5/24)にすぐ出かけた。開館は10時と思っていたので、初日の10時半ならそんなに待たず入館できるとふんでいた。ところが、すでに結構な数の人が並んでいて展示室に着くのに30分くらいかかった。開館時間は9時30分、1時間も経つとやはり混雑してくる。さて、今日、土曜の混み具合はどうだったのか。

今回の作品数は全部で93点(このうち6点は5/10~5/24の展示)、数はびっくりするほど多くはないが一点々は大リーグのオールスターゲームに出場するスター選手みたいに若冲本にはお馴染みのものばかり。最大の目玉の‘動植綵絵 30幅’(これは国宝みたいなもの)に加え重文はすべて揃っている。

事前に出品作をチェックしたところ、新規のものは数点。世の中に数多くいる若冲ファンならたぶん、2009年の‘若冲ワンダーランド’(MIHO MUSEUM)、2010年の‘伊藤若冲アナザーワールド’(千葉市美、静岡県美)、そして昨年サントリー美で行われた‘若冲と蕪村’は出かけられているはず。また、6,7年前東博でも‘動植綵絵’が全部飾られている。

だから、チラシでいっている‘ひと月限りの、この世の楽園’は確かにそうではあるが、これが久しぶりにある特別な回顧展というものでもないから混雑が嫌な人はパスするのも一つの選択。率直ないい方をすると苦労していままででてこなかったいい作品を集めてきたという感じではない。

ちょっと気になったのは監修者の小林氏が館長をしている岡田美(箱根)から83年ぶりに発見されたという‘孔雀鳳凰図’をはじめ6点がでていること。うがった見方をするとこの展覧会を岡田美のPRに使っているのではないかと思ってしまう。秋には箱根で‘若冲と蕪村’を開催し‘孔雀鳳凰図’を展示するというから商売の匂いがする。

もう二つ安易な集め方がある。それは好感度の悪い美術館のリストに入れている細見美(京都)から4点、エツコ&ジョープライスコレクションから9点が展示されていること。細見美は2009年のMIHO MUSEUMのときは1点も出さず、2010年の千葉市美・静岡県美ではわずか1点ですませたのに、東京で若冲展があるというと4点も大盤振る舞い。これも商売がかっていていい気持がしない。

そして、またあのモザイク画‘鳥獣花木図屏風’をだしてきたプライスコレクション、日本画初心者でもこの絵の下手くそな描写に気づくのにまだ若冲作として展示する厚かましさ、そしてそれを若冲工房作としないで若冲作として展示することを認めている辻氏や小林氏のなあなあ体質。本当にうんざりするし日本美術史家というのは楽な職業だなとつくづく思う。

プライスコレクションは以前にも6点くらいやって来た。また9点も並べる必要がどこにあるのか、国内にはほかにいい絵がいくつもあるというのに。

作品の感想は新規のものが少ないので‘孔雀鳳凰図’とこれまでみたなかで好きな作品をピックアップしてみた。‘孔雀鳳凰図’の横に三の丸尚蔵館蔵の‘旭日鳳凰図’が飾ってあり、見比べながらみるといい気分になる。鳳凰の羽の色はこの2点は多くの茶色と部分的に白で彩色されているが、‘動植綵絵’の‘老松白鳳図’では白一色、この胡粉のインパクトの強さに目を奪われる。胡粉の魅力がいろいろな鳥で感じられるが‘老松鸚鵡図’もじつに楽しい。

平木浮世絵財団が所蔵する花鳥版画に200%魅了されている。とくにぐっとくるのが背景の闇に錦鶏を大きく浮かび上がらせた‘雪竹に錦鶏図’。カラリスト若冲の卓越した色彩感覚が冴えわたる名品。

最後にでてくる蛙の姿に思わず笑みがこぼれる‘菜蟲譜’は毎度々夢中になって昆虫や野菜をみてしまう。最近この絵をコレクションしている吉澤家は野州石灰の会社を経営していることがわかった。そんなこともあり長くみていた。

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2015.04.20

二度目の‘若冲と蕪村’展!

Img 伊藤若冲の‘河豚図’(1793年)  与謝蕪村の‘鯉図’(18世紀)

Img_0001     伊藤若冲の‘双鶴・霊亀図’(18世紀 MIHO MUSEUM)

Img_0002           与謝蕪村の‘双馬図’(1760年)

Img_0003     与謝蕪村の‘倣銭貢山水図’(1766~68年)

サントリー美で二度目の‘若冲と蕪村’(3/18~5/10)を楽しんだ。出品作を全部みるためには三回の出動が必要だが、今日は二回目のタイムリミット。朝10時半くらいに入館すると、すでに大勢の人がいた。伊藤若冲(1716~1800)、そして与謝蕪村(1716~1783)、江戸絵画のスター絵師の絵が一緒にみれるのだからこれほど贅沢な展覧会はない。誰だって足を運んでおこうという気になる。

図録で狙いの作品はあたりをつけていた。一番みたかったのは若冲の‘河豚図’、府中市美で河豚と蛙が相撲をとっている絵にお目にかかったばかりなので、この河豚にもぐっと引き込まれる。河豚がどんな泳ぎ方をするかは水族館に縁がないためイメージがわきにくいが、河豚は上のほうへ泳いでいる。こういう丸い形だから、ゆらゆらと動くのだろう。隣に飾ってある蕪村の‘鯉図’もなかなかいいので、二つを交互にみていた。

すでにみたことのある若冲で思わずじっくりみたのは‘双鶴・霊亀図’、視線が集中するのは正面を向いた亀の鋭い目と鶴の卵型の胴体、亀はみどころが多い。目のほかにも尻尾の黒の強さ、甲羅の六角形、内側はどれも筋目描きにより無数の六角形ができている。そして、指をつつんでいる皮膚の描写がなんとも細かい。丸い墨の点は手前は大きくし奥にいくほど小さく描いている。若冲は感心するほど生き物をしっかりみている。

蕪村は複数の馬がたわむれるところをよく描く。はじめてお目にかかった‘双馬図’は二頭の馬と木々を造形として響き合わせるというおもしろい絵。じっとみていたら誰でも気づくが、首を互いに絡み合わせている馬の上では二本の木はX字のようにクロスしている。そして、左に立っている木でも一部の枝を無理やり曲げ枝と枝が交差する形をつくっている。蕪村は形の面白さを馬と木でコラボさせてみせたかったのかもしれない。これははっとさせるほどモダンな発想。

何年か前京博でみた‘倣銭貢山水図’にも大変魅せられた。とくに見入ってしまうのは何か安心してみていられる構図のよさと木々の細かな筆致、そして目に心地いいい濃淡のきいた緑。何度みても足がとまる。

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2015.04.10

若冲の‘河豚と蛙の相撲図’にご機嫌!

Img     伊藤若冲の‘河豚と蛙の相撲図’(18世紀後半)

Img_0001     谷文晁の‘猿蟹図’(1836年)

Img_0002     司馬江漢の‘猫と蝶図’(18世紀後半 府中市美)

Img_0003     長沢蘆雪の‘遠望松鶴図’(18世紀後半)

練馬区美のあと目指したのは‘動物絵画の250年’の後期(4/7~5/6)がはじまった府中市美。この日はとても寒く雨も降っていたのでバスがよかったのだが、乗り継ぐタイミングが悪かったため美術館まで歩いた。

お目当てはズバリ伊藤若冲(1716~1800)の‘河豚と蛙の相撲図’!図録で200%KOされみたくてしょうがなかった。がっぷり四つに組んだ蛙と河豚、力士が相撲をとっている姿と変わらない。若冲がこんなユーモラス動物戯画を描いてくれた、拍手々!この絵は2013年ここで開催された‘かわいい江戸絵画’がはじまる直前に発見され、急遽出品されたらしい。そして今回再登場となった。府中市美は本当に愛すべき美術館。

谷文晁(1763~1840)の‘猿蟹図’も夢中にさせる一枚、猿蟹合戦は桃太郎などとともに小さい頃インプットされた定番の物語。肥満児のように太った猿はこれから蟹とずる賢い交渉をするのだろう。蟹はいかにも気が弱そう。

司馬江漢(1747~1818)は後期に府中市美にある3点が出品されたが、‘猫と蝶図’を長くみていた。振り返る猫がじっと見ている蝶の細密な描き方に視線が集まる。中国や朝鮮で猫が蝶との組み合わせで描かれた理由がつかめないが、女性のイメージからきたのだろうか。じっとみていると加山又造の猫の絵にも蝶が舞っていたのを思い出した。

長沢蘆雪(1754~1799)がよく描いた動物や鳥というと、仔犬、虎、亀、雀、鶴。後期のお目当てはグライダーのような鶴を描いた‘遠望松鶴図’、立っている鶴はどうもぐっとこないが、飛翔する鶴の形は爽快感がある。でも、二羽はちょっと寂しい、もう一羽いてもよかったかなと思う。

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2015.03.30

プラスαがいろいろあった若冲!

Img     ‘象と鯨図屏風’(1797年 MIHO MUSEAM)

Img_0002     ‘雪竹に錦鶏図’(1771年 平木浮世絵財団)

Img_0004     ‘白梅錦鶏図’(18世紀 MIHO MUSEUM)

Img_0003             ‘蓮図’(1796年)

伊藤若冲(1716~1800)の回顧展をみるのは2010年に開催された静岡県美と千葉市美のジョイント展以来のこと。それから5年たったので新規に発見されたものがいろいろでてくるだろうと期待してサントリー美に向かった。

今回の‘若冲と蕪村’(3/18~5/10)にでてくる作品を全部みるためには3回も足を運ばなければならない。展示期間を細切れにするのはサントリーの得意とするところ。スッキリ展示にする気持ちがまったくないので、もうこの美術館には愛想をつかしているが、一生つきあうと決めている若冲の作品をみるためだからやむを得ない。

まずお気に入りの作品から、会期中を通して展示される‘象と鯨図屏風’、若冲はどんな気持ちでこの組み合わせを思いついたのだろうか?象は鯨をみつめる目がなかなかいい。そしてダンボを連想させる大きな耳。愛嬌のある姿は人気のゆるキャラにすぐ変身できる。そして左の鯨、しぶきをあげて豪快に前進するこのパワー、何時間でもこの屏風の前にいたくなる。

平木浮世絵財団が所蔵する‘花鳥版画’は6点全部が3/18~3/30と4/1~4/6に展示される。このすばらしい花鳥画が全点揃ってみられるのは滅多にないこと。だから、目をかっと開いてみた。とくに魅了されているのが‘雪竹に錦鶏図’、背景の黒の地に美しく映える錦鶏の胸と首のまわりの橙色と黄土色。羽の色調全体にみられる微妙なグラデーションはまるで京友禅のぼかしをみているよう。

収穫のひとつは手元にある若冲全集では個人蔵となっている‘白梅錦鶏図’、現在これはMIHO MUSEUMのコレクション。MIHOは若冲作品を着々と増やしている。象と鯨もあるからMIHOは今や若冲の大事なピースを揃える主力美術館になった。

初見の‘蓮図’にも思わず足がとまった。あと2回新規の作品との出会いが待っている。本当に楽しみ。

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2012.05.16

京画壇のスター 若冲・応挙・芦雪の共演!

3856_2                伊藤若冲の‘旭日松鶴図’(18世紀)

3855_2     伊藤若冲の‘寿老人、孔雀、菊図’(18世紀)

3854_2     円山応挙の‘秋月雪峡図屏風’(1786年)

3853_2     長澤芦雪の‘花鳥蟲獣図巻’(1795年)

千葉市美で開かれている蕭白展(4/10~5/20)はメインディッシュの蕭白作品でお腹は満腹になるが、最後のコーナーに展示してあるサイドメニューの京の画家たちの絵も目を楽しませてくれる。後半の展示は11点。

この美術館が所蔵する京画壇のスター、伊藤若冲(1716~1800)、池大雅(1723~1776)、円山応挙(1733~1795)、長澤芦雪(1754~1799)は前後期で全部でてきた感じ。若冲の‘旭日松鶴図’はほかの美術館のものだが、あとの3点はみな千葉市美のもの。

‘旭日松鶴図’でおもしろいのは首が手前にでてきた鶴。よくまあこんなに曲がるな!というくらい細い首が横に曲がっている。鶴はもう何年もみていないが、じっさいこのくらい曲がるものなのだろうか?また、松の木の表面にじつに奇妙な模様がみえる。まるで蛸の足の吸盤のよう。

若冲の三幅の掛け軸でヘンな感じがするのは真ん中の寿老人。頭が異様にデカイ寿老人はすぐにでもゆるキャラとしてイベントに出演できるのに、その姿が後ろ向きでは楽しみようがない。若冲の水墨画でとくに目が吸い寄せられるのが筋目描き。孔雀の羽と菊の花びらで墨の面のにじみと重なり具合をじっくりみた。

応挙の‘秋月雪峡図’をみるのは久しぶり。これは右隻の‘秋月’のほう。はじめてお目にかかったとき目が点になったのが塗り残しで表現された月の位置。月を描いた絵は沢山あるが月をこんな低いところに描いたものはあまりみない。左右にゆるく蛇行しながら流れていく川と墨の濃淡で描かれた木々により画面に奥行きができ、静寂な秋の風情が広がっている。しばらく無心にながめていた。

芦雪の可愛い犬や雀がでてくる‘花鳥蟲獣図’は大好きな絵。前期は赤い鸚鵡が描かれているところだったが、今回は犬が戯れている場面。横向きの犬と竹の笹に隠れるようにしてこちらをじっとみている犬がとくに印象深かった。

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2012.05.13

蕭白パワー全開 ‘群仙図屏風’登場!

3846_2     ‘群仙図屏風’(重文 1764年 文化庁)

3847_2     ‘群童遊戯図屏風’(18世紀 九博)

3845_2     ‘唐獅子図屏風’(18世紀 加島美術)

3844_2     ‘月夜山水図屏風’(重文 18世紀 近江神宮)

‘曽我蕭白と京の画家たち’展(4/10~5/20)の後半に登場する作品をみるため再度千葉市美へ足を運んだ。曽我蕭白(1730~1781)は前半(拙ブログ4/19)と後半あわせると59点をみることができる。東博のボストン美展に出品されている蕭白11点をみてここの回顧展もみたら、‘蕭白倶楽部’の会員になれること請け合い。

‘群仙図’をみるのは4年ぶり。東博であった‘対決ー巨匠たちの日本美術展’(08/7/13)のときより、今回のほうが気持ちがぐっとのめりこんでいる。これはこの回顧展の前にボストン美蔵の‘雲龍図’と‘風仙図’をみているから。

目の覚める青い衣裳を着た人物が乗っている龍の鼻の大きな穴は‘雲龍図’の鼻とよく似ている。そして、二つの渦巻きや猛烈に吹き上げる風はすぐ‘風仙図’を連想させる。では、波はどうか、ちょっと違っている。この‘群仙図’の波はずいぶん丁寧に描かれている。波頭が下にカールする部分が細かいうえ、水が勢いよくせりあがっていくところを細い線を横に何本も引くことにより表現している。なんだかレースのカーテンをみているよう。

‘群童遊戯図’は2年前板橋区美であった展覧会(10/10/6)ではじめてお目にかかった。これは左隻のほう。真ん中で鰻と格闘する子どもや左端で捕まえた亀をめぐって喧嘩している二人の男の子に目がすーっと寄っていく。こういう子どもたちの遊んでいる姿を描いた絵は心が安まる。

初見の絵で一番の収穫は‘唐獅子図’。とくに右の獅子の子落としを夢中になってみた。背中の輪郭線が濃い墨で描かれた親獅子の下をみつめる目が威厳に満ちている。‘おっ、また落ちたな、そう簡単にはここまでは上がってこれないのだ。情けない顔をするんじゃない。でもあいつ、相当参っているからちょっと心配だな、ううーん、がんばって上がってきてくれよな’

山水画は大変魅了されている‘月夜山水図’と‘山水図押絵貼屏風’(京博)の前に長くいた。府中市美で開催された‘山水に遊ぶ’展に出品された‘月夜山水図’(09/4/30)は花を描いた胡粉の小さな白い点や建物の一部に塗られた赤がじつに印象深い。また、金泥の横線で描かれた霞にも目が吸い込まれる。

一見すると岩や滝、塔の垂直性が強くイメージされるが、画面全体をゆっくりみていくと下のほうには円い形の石橋があり、また滝のまわりの山々はもっこりしたフォルムで量感豊かな姿をしているので、角々した感じと柔らかい雰囲気が悠然と溶け合った感じになっている。

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2012.04.21

蕭白ここがスゴイ! 波濤フォルムと静寂山水

3762_3     ‘波濤群禽図襖’(部分 重文 1764年 三重県美)

3761_3     ‘捨得図屏風’

3763_3         ‘富嶽清見寺図’

3764_3     ‘瀟湘八景図屏風’(右隻)

曽我蕭白(1730~1781)の作品で特別時間をかけてみているモチーフがある。それは波濤。この荒々しいフォルムで描かれた波は今、東京と千葉で響き合っている。

現在東博で開かれている‘ボストン美 日本美術の至宝展’(6/10まで)で夢中になってみたのが展覧会の目玉のひとつになっている蕭白の‘雲龍図’(拙ブログ3/23)。ここに描かれた波濤の描写がとにかくスゴイ。これとよく似た波が千葉市美で展示されている作品にもいくつかみられる。

‘波濤群禽図襖’は05年の蕭白展(京博)のとき展示替えで見逃した作品のひとつだったので、目をこらしてみた。鶴と波濤の組み合わせは応挙も描いているが、波の描き方は蕭白のほうが型破りに荒々しい。優雅な鶴とうねる海にはちっと違和感があるが、鶴はよくみると鋭い目をしているから、その思いも消える。

スローモーションの映像をみているような感じになるのが正方形の画面に描かれた‘捨得図’にでてくる滝。雲間をぬって滝が垂直にドドーッと落下している。滝つぼから飛び散る迫力ある水の形、そしてこちらにまで聞こえてくる音。左の箒(ほうき)をもつ捨得の姿に目はあまりいかず、この滝ばかりみていた。

蕭白が晩年に描いた山水画は北宋の絵画のように山々や峻厳な岩が垂直線で表現された角々した画面というイメージができているが、‘富嶽清見寺図’は四角のフォルムが少しうすれ、上の富士山やその周りの山は反対にもこもこしている。強く惹きこまれるのが富士山の山頂。白が一段と輝いている。見てのお楽しみ!

初見の大きな絵‘瀟湘八景図’を長くみていた。これは右隻だが、余白の多い画面は静寂な空気につつまれている。

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2012.04.19

蕭白展のショック度はどのくらい?

3755        ‘雪山童子図’(1764年頃 三重 継松寺)

3756               ‘鷹図’(香雪美)

3758     ‘鷹図屏風’(部分 1758~61年)

3757_2          ‘蹴鞠寿老図’(京博)

千葉市美で現在‘曽我蕭白と京の画家たち’展(4/10~5/20)が行われている。サブタイトルに‘蕭白ショック!!’をつけ、開幕の随分前からPRをしていた。

たしかに曽我蕭白(1730~1781)の絵をみると相当ショックを受ける。今回もこれまでみたものでも初見のものでも頭がクラクラするのがいくつもある。作品の大半は白黒の墨の絵だが、濃い色使いの作品のなかには一度みたら忘れられないものが多い。その筆頭は蕭白が35歳のときに描いた‘群仙図屏風’だが、これは5/2からの展示。

濃彩の作品でお気に入りは‘雪山童子図’。木の太い枝のところに立ってい童子はどうみても女。その衣と口びるの目の覚めるような赤が中国の京劇の役者を連想させる。そして、強く印象に残るのは白い肌を浮き上がらせるこの赤と地べたに座り込んでいる鬼の体の青が生み出す強烈なコントラスト。これほど色彩に力を感じる絵はそうない。

神戸にある香雪美が所蔵する‘鷹図’も傑作。鳥としては優雅さは微塵もない鷹なのにこうして美しく彩られた草花に囲まれるとなんだか安心してみていられる。鷹の存在感ばかりに気をとられると下にいる二羽の鶉や枯れた花びらを見落とす。

本来の鷹の獰猛さが200%描かれているのが‘鷹図屏風’。これははじめてみる絵。画面には鷹が二羽描かれており、これは右の鷹。ぱっとみると何を捕まえているのがよくつかめないが、目をこらしてみるとこれが猿であることがわかってくる。鶴を追っかけている鷹はみたことがあるが、猿までものにしていたとは!自然界の厳しい現象とはいえ、このように絵画になると体が一瞬フリーズするほど緊張する。

‘蹴鞠寿老図’で感じるのは心地よいショック!この老人どうなっているの?えらくあごの長い坊さんだなと最初は思うのだが、よくみると鼻の下に目があるからちょっとヘン。となると、そうかこれは頭で首が折れるくらい曲げて空中の蹴鞠をながめているところかと、姿がちゃんとみえてくる。本当に楽しい絵をみた。

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2012.03.27

ヒットが続く府中市美の‘三都画家くらべ’展!

3677_3                伊藤若冲の‘垣豆群虫図’(1790年)

3679_3              曽我蕭白の‘虎図’(18世紀後半)

3676_3     狩野探幽の‘四季花鳥図’(1672年)

3678_3     宋紫石の‘柳汀双禽図’(18世紀後半)

府中市美の‘三都画家くらべ’展(3/17~5/6)を楽しんだ。この展覧会は1年前から開幕を心待ちにしていたので、どんな作品がでてくるのか事前にHPで調べた。そうすると期待をもたせる絵が2点あった。

伊藤若冲(1716~1800)の‘垣豆群虫図’(展示は前・後期)が展覧会に登場するのは82年ぶりだそうだ。こういう腹の底から嬉しくなる作品をみせてくれるのだから、ここの江戸絵画展はレベルが高い。この絵に描かれた虫や垣豆は‘菜虫譜’(拙ブログ06/4/7)とよく似ている。単眼鏡と使いながら虫を確認すると、クモ、モンシロチョウ、ナミアゲハ、キリギリス、クマバチ、バッタ、カマキリ、ショウジョウトンボ、ムカデ

若冲はほかに猿と鷹の絵がある(前期:3/17~4/15のみ)。後期(4/17~5/6)にはもう一点、定番の鶏がでてくる。若冲同様期待していたのは曽我蕭白(1730~1781)だったが、今回は‘虎図’一点。この虎は人間ぽい虎で年齢をずいぶん重ねた老虎という感じ。‘ご機嫌はどう?虎の世界でも仲間とのつきあいとかいろいろあるのだろうネ’とかなんとか声のひとつもかけたくなる。

HPをチェックをしたとき目を見張ったのが狩野探幽(1602~1674)の‘四季花鳥図’。これは6年前京博であった‘京焼展’のとき展示替えで見損なった絵。永平寺が所蔵しているので、もうみる機会はないかなと諦めていた。大きな絵で画像は春の梅、夏の柳。余白を充分とった画面に花や鳥を配する構成は目にやさしく気品のただよう描写が心を打つ。

今回の収穫のひとつは宋紫石(1715~1786)。4点あった。なかでも絵の前に長くいたのがキンケイを横から描いた‘柳汀双禽図’(前期)。また、広重の手前に大きく対象を描く絵を思い出させる‘蓮池水葵図’(前期)にも足がとまった。

後期も出動の予定。

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2012.03.26

スーパー展覧会!‘ボストン美 日本の至宝’ その四

3672_3     祥啓の‘山水図’(15世紀末~16世紀初)

3674_2          伊藤若冲の‘鸚鵡図’(18世紀後半)

3675_2     伊藤若冲の‘十六羅漢図’(18世紀後半)

3673_2        橋本雅邦の‘騎龍弁天’(1886年)

室町後期に関東で活躍した禅僧画家祥啓の描いたいい絵が根津美にあるが、この展覧会に出品されている‘山水図’も思わず足がとまる絵。横長の画面の中央に水面が大きく広がり、両サイドに描かれた岩組の間をぬけて視線は遠くの山々にすうーっと進んでいく。これほどみてて心地のいい山水画にそうはお目にかかれないので、じっくりみた。

伊藤若冲(1716~1800)の作品が何点やってくるか気になっていたが、ふたをあけてみると2点。手元の大きな若冲の画集に載っているのは4点、そのなかの‘鸚鵡図’と‘十六羅漢図’が公開されるのだから上々である。‘鸚鵡図’は日本にも一見すると同じ絵では?とみまがうのが和歌山県の草堂寺と千葉市美にある。

ボストンの鸚鵡と向きが同じなのは草堂寺のものだが、レースのような羽毛の輝きはボストンのほうがぐっといい。08年現地を訪問したとき、‘松に鸚鵡図’(拙ブログ08/4/20)と運良く対面することができた。いい鸚鵡の絵を2つともみれたから上機嫌。

4点飾られた‘十六羅漢図’は羅漢の着ている衣裳の墨の輪郭線がじつに印象的。若冲の水墨作品をみる楽しさのひとつがこの墨色。濁りのない濃い墨でのびやかに表現することで人物の強い個性が引き出されている。予想を大きく上回る羅漢図だった。

フェノロサのコレクションだった橋本雅邦(1835~1908)の‘騎龍弁天’をみるのは2度目。6年前東近美であった展覧会同様、弁天の乗った龍を吸い込まれるようにみていた。右上にみえる洞窟のようなところからでてきて、波打つ海面の上を堂々と飛んでいる感じ。弁天の後ろに座らせてもらいたくなった。

スーパー展覧会の感想記はこれで終わり。ボストン美の所蔵する日本美術の超一級品を存分に楽しめた喜びをかみしめている。

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