2007.08.16

もっとみたい応挙・芦雪の名画!

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今、五浦美術館でみた円山応挙の“保津川図屏風”の余韻に浸っている。やっと見れた絵が期待通りの傑作だったので喜びもひとしお。

日本画の場合、美術館へ行くとすぐ対面できる西洋絵画と違い、図録や画集に載っている名画に魅せられたとしても、その絵がすぐ美術館で見られるわけではない。アートコレクション展で見た鏑木清方作、“雨月物語”のように“リーチ一発ツモ”なんてことは極めて稀なことで、大抵は思いの丈をとげるのにながい時間を要する。だから、せっかちな人には日本画の鑑賞はむかない。

特定の作品を意識しはじめると、一応5年スパンで追っかけモードに入ることにしている。別にのんびりした性格ではないが、日本画を好きになった以上これくらいの辛抱は当たり前。5年以内に見れれば御の字である。“保津川図”は応挙の大回顧展(03年9月、大阪市立美術館)で展示替えのため見逃してから、リカバリーに4年弱かかった。昨年奈良であった“応挙と芦雪展”に出品されるのではと期待したが、叶わず、横浜からクルマで3時間半もかかる五浦美でやっと対面できたというわけである。

念願の絵をみたので、応挙も若冲同様済みマークをつけたいところ。だが、なんとしても見たい絵があと2点残っている。上の“百蝶図”(水戸、水府明徳会徳川博物館)と昨年、仙台の宮城県立博物館に出品されたのに日程の調整がつかず見れなかった“群獣図屏風”(三の丸尚蔵館)。象や虎などさまざまな動物が登場する“群獣図”は見る機会がまた遠のいた感じだが、“百蝶図”の方は運が向いてきた。

“保津川図”を見た後、図録とにらめっこして、“よし、百蝶図が展示される予定があるかどうか聞いてみよう”と思い立ち、徳川博物館に電話したところ、なんと、近々展示されるという! しかも、嬉しいことに水戸ではなく、東博で秋に開催される“大徳川展”
(10/10~12/2)。ただし、展示期間は開幕日の10/10から11/4まで。“大徳川展”は鑑賞予定に入っているが、“百蝶図”が含まれているとなると見る眼が違ってくる。ミューズに感謝である。

長澤芦雪の絵についても、奈良の回顧展と今年の3月、府中市美で開かれた“動物絵画の100年展”でほぼ済みになった。また、五浦美では府中市美でみた“朝顔図”(重文、草堂寺)のようにイタチが登場する“花鳥図屏風”が展示してあり、感激した。

下はひたすら展示の機会を待っている“唐子睡眠図”(三の丸尚蔵館)。東博の“皇室の名宝展”(99年12月)に出品されたのに展示期間が合わず、見逃して以来、なかなか現れてくれない。追っかけリストの絵で最後になったこの絵といつか会えることを夢見ている。

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2007.08.10

円山応挙の保津川図屏風

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茨城県にある五浦美術館で念願の円山応挙作、“保津川図屏風”(重文)を見てきた。ここで今、千總(ちそう)コレクション、“京の優雅~小袖と屏風~”(7/28~9/2)が開かれており、応挙の絶筆であるこの屏風が展示されているのである(全期間)。

千總は1555年に創業した京友禅の老舗で、05年に創業450年を迎えた。で、これを機に優れた染織作品をつくるためにコレクションされた江戸時代から明治にかけての小袖や絵画をまとめて展示する特別展が京都(京都文化博物館、05年6月)からスタートした。昨年は富山、福岡で行われ、今年は五浦のあと、仙台市博物館(9/14~
10/21)、豊橋市美術博物館(10/31~12/1)を巡回する。

この展覧会が2年前からはじまり、全国6ヶ所を回ることは図録で知った。偶然、“保津川図”の展示を館のHPで見つけ、大興奮だったが、こういう巡回展だったら、05年6月に京都で見る機会は充分あった。京都には美術旅行でよく行くが、京都文化博物館はこれまで訪問したことがなく、定点観測の対象にしてなかった。これは迂闊だった。

応挙の追っかけで最後に残っていたのがこの“保津川図”。応挙が亡くなる一ヶ月前(1795年、63歳)に描かれた。八曲一双の横に長い屏風で、上が右隻、下が左隻。右には瀑布、左には渓流が描かれており、真ん中で水流が平たいV字になっている。

目を奪われるのが水流のうす青色と右の瀑布から続く急流の大きく波打つフォルム。ウェーブの底にできるあの水飛沫は右に4つ、左に2つ描かれている。応挙が得意とする瀑布や波濤の絵では、この蛸の足みたいに踊り狂う波頭にいつも吸い込まれる。

それにしても、応挙は水を描くのが神業かと思うくらい上手い。形が複雑に変化するから、水のイメージが形となって定着するには徹底した写生を重ねたのであろう。臨場感豊かに描かれた水流からは激しさと同時に自然の崇高さが伝わってくる。この心に響く傑作を見れたのは一生の思い出になる。

昨年は奈良で“大瀑布図”(拙ブログ06/11/25)と再会し、今年はサントリー美術館の“青楓瀑布図”(8/4)と“保津川図”をみた。これほど幸せなことはない。今、いくつかの美術館で応挙のいい絵が展示されているので、ご参考までに紹介したい。

★千葉市美術館:若冲とその時代展(8/7~9/17)ー“鉄拐蝦蟇仙人図”(東博の禅の文化展に応挙が参考にした絵がでている)、“群鳥・別離・鯉図”(左の鯉図はサントリーの青楓瀑布図に似ているのでびっくりした。また、群鳥は芦雪の百鳥図はこの絵を参考にした?と一瞬おもったほど。これはサプライズの三幅図)、“秋月雪峡図”(これもお気に入りの名画)

★泉屋博古館分館:花鳥礼讃展(8/4~9/24)ー“双鯉図”(二匹の鯉のからみがおもしろいフォルムになっている。見てのお楽しみ!)

★サントリー美術館:水と生きる展(8/1~8/19)ー“青楓瀑布図”

★東芸大美:金刀比羅宮 書院の美展(7/7~9/9)ー“遊虎図”など、“瀑布古松図”(本物ではなく精巧な複製プリントだが、保津川図の右隻とこの一年前に描かれた本画は構図がよく似ている)

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2007.08.04

サントリー美術館の水と生きる展 その三

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円山応挙の滝の絵をみるため、“水と生きる展”(後期:8/1~19)をやっているサントリー美術館へ出かけた。これで3回目。前期に応挙の上の“青楓瀑布図”が展示されておれば、2回くらいで済んでたところ。

チラシに載せてる作品を後期に展示するとは観る者の気持ちがわかってない!マーケティングに長けているサントリーとは思えない展示の仕方である。また、作品を3回に分けるのはどうみても多すぎる。前期、後期2回の総入れ替えのほうがよかったのではないか。ガラスや陶磁器(会期中展示)は前期にみているから、中後期にまた同じ料金(1000円)を払うのは割高感が残る。作品が違う前後期2回のほうがすっきりする。こういう鑑賞者の率直な気持ちがどうしてわからないのだろうか?

根津美術館なども会期を3回にわけて料金の割引をしない特別展をよく行うが、サントリー美も同じことをやっている。アートエンターテイメントといった考えがでてきて、最近は昔と比べものにならないくらい多くの若い方が日本美術を見るため美術館へ足を運んでいるのに、美術館の中にいるひとはまだ旦那衆に見せているという感覚が抜け切らない。だから、若い人たちに多く来てもらうために割安の通し券をつくろうという発想は生まれてこない。若い人でもシニアの人でも一回来てもらえればいいという考え。全部見たい人のニーズは無視している。

美術館関係者は心が豊かで、優しいなんて思ったら大間違い。振る舞いはそうだが、画商や美術館関係者、美術評論家は権威主義(要するにお高くとまっている)で保守的な人が多いことは常識(全部とはいわないが)。で、料金とか展示の方法については、昔から愛想をつかしている。サントりーの企画力、展示品がいいだけに、ちょっと運営にも注文をつけたくなっただけ。

さて、応挙の絵のことである。予想以上のすばらしい瀑布図だった。サントリーがこの絵を所蔵していることはまったく知らなかった。これは応挙56歳のころの作で、金刀比羅宮の障壁画に描かれた“瀑布古松図”(現在、東芸大美に複製が展示)の6年前に描かれている。

40歳のときに描いた墨画、“大瀑布図”(拙ブログ06/11/25)では右上から松の木が垂れているのに対し、ここでは楓のうす緑の葉がとても優雅な感じでのびている。滝壷のところは左のほうが白の輝きが強い。目を奪われるのが北斎の絵を思い起こさせる激しい波しぶきや前後左右に盛り上がる水面の立体的な造形。そして、画面全体を引き締めている真ん中の黒い岩と上の楓の葉を呼応させ、動のなかに静をつくる構成にしびれる。

下は展示の順番としては最初にでてくる英一蝶の“田園風俗図屏風”。これは左隻のにわか雨に皆があわてふためく場面。右端には転んだ男の子がみえる。“雨だ雨だ、あそこの小屋へ急ごうぜ!”と大人の男の叫ぶ声が聞こえてくるようである。僧侶は破れ傘を風で飛ばされたのであろうか?この展覧会で英一蝶の絵が2点(これと前期の吉原風俗図巻)みれたのは大きな収穫。

広重の浮世絵が後期に沢山みられる。期待していた“江戸高名会亭尽”の5点と“東海道五十三次”の15点。“東海道五十三次”の雨の描写で有名な“庄野 白雨”や雪景色の“蒲原 夜之雪”を“水の流れ”の表現のひとつとしてみるのも味わい深い。最後の章の“道成寺縁起絵巻”にはぎょっとする場面がでてくる。ストーカー女の執念がすごい。日本の絵巻にはファンタジーがいっぱ詰まっている。

次回の“屏風 日本の美展”(9/1~10/21)も楽しめそう。

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2007.04.07

動物絵画の100年展

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府中市美術館で行われている“動物絵画の100年”(3/17~4/22)は期待値の高い展覧会だったので、初日にでかけた。

学芸員の頭のなかに今、注目の集まる江戸の絵師、円山応挙、長澤芦雪、伊藤若冲が描いた絵があってこの企画をイメージしたのか、それとも18世紀後半から19世紀前半までの100年に制作された動物画を通覧してこれはおもしろい展覧会になると確信をもったのかは外部の人間にはわからない。が、いずれにせよ、いい作品を沢山集めてくれた府中市美に拍手を贈りたい。

日本画は花鳥風月を主たる対象にして制作されるから、絵師たちは昔から動物の絵は広義の花鳥画として描いてきた。なかでも龍や虎、鷹などがよくでてくる。今回はその描き方が西洋画の影響などにより写実的かつ個性的になった江戸時代の中期から後期に焦点を当て、約80点を展示している。4/10からは一部は展示替えになり、別の作品が登場する。

ビッグネーム絵師が揃っているので見ごたえがある。My動物画の楽しみ方はユーモラス&可愛いタイプ、超写実タイプ、デフォルメ&シュール型の3つ。ユーモラスタイプのお気に入りが長澤芦雪の上の“一笑図”(個人蔵)。こんな楽しい絵に会えて嬉しくてたまらない。これを毎日みられるコレクターが羨ましい。右のごろんと横になった黒と白の犬の後ろ姿と左の童子に首根っこを持たれてだらっとしている白い犬をみていると肩の力が自然に抜けてくる。

芦雪が描いた下の“群雀図”(重文、部分)は今回最も見たかった絵。雀がとまっているのは電線ではなくて、横に長く伸びる細い竹。そこに可愛い雀君が全部で12羽とまっている。芦雪が可愛い雀を描くのは前から“花鳥虫獣図”(千葉市美、拙ブログ07/1/25)などで知っているが、この電線にはびっくり仰天!芦雪ならずともほかの絵師でも確かにしなった竹に雀が何羽もとまる光景を見たかもしれない。でもこの構図に仕上げられるのは芦雪だけ。芦雪はだれも気づかない視点から対象をとらえる。構図の天才としかいいようがない。

超写実タイプの極め付きがやはり芦雪の絵、“虎図”。いくつかある虎の絵のなかでは群をぬいていい。虎の鋭い目と毛の質感に一瞬たじろぐ。これはエポック的な虎の絵となった。デフォルメ&シュールな絵では若冲の“鯉図”、国芳が描いた猫の戯画“風流けん合”、芦雪の“亀図”が印象深い。

若冲の“鯉図”は“鶴図”、“親子鶏図”とで構成する三幅対の一枚だが、頭を垂直の角度で上に向ける姿にハッとする。静岡県立美術館で見た“鹿図”もこのユニークな姿態で描かれていた。この3つの絵は若冲の水墨画のなかでは上位に入る名品。とくに鶴の胸、鯉の頭、鶏の尾っぽにみられる濃い墨は吸い寄せられるくらい輝いている。

後期に再度訪問するかどうか思案中。魅力いっぱいの展覧会である。

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2006.12.02

戸方庵井上コレクション名品展

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板橋区立美術館で行われている“戸方庵井上コレクション名品展”(07/1/14まで)は期待値をはるかに上回る良質の展覧会だった。群馬県立近代美術館にはコレクター、井上房一郎氏(1898~1993)の蒐集した中国絵画、日本絵画の質の高い作品が230点(寄贈)があり、今回そのなかから69点が展示されている。

数年前、ある美術本に掲載されていた応挙の上の“青鸚哥図”(あおいんこず、部分)で、戸方庵コレクションの存在を知った。奈良であった“応挙・芦雪”でこの絵が見られるかなと期待していたが、これはなかった。後知恵だが、出品されなかったのは11/25からはじまった板橋区立美の展覧会と重なったためではないかと思う。この展覧会の作品についての情報がまったく無かったのだが、応挙の絵は出てくるものだと信じ、遠山美術館のあと、ここに立ち寄った。

果たして、お目当ての“青鸚哥図”はあった。有難い。口ばしと足の鮮やかな朱色、緑の羽根の細かい描写を夢中でみた。が、驚いたことにこの絵は目玉の一つに過ぎなかった!ほかにもいい絵が沢山ある。構成は中国画が11点、日本画が58点。入ってすぐの中国画のコーナーでは、牧谿の“芦雁図”や因陀羅の“芦葉達磨図”がある。“ええー、牧谿まで集めているの!” のっけからコレクションのすごさを見せつけられた感じである。その隣に銭永の“墨梅図”といういい絵があった。大阪の正木美術館に如拙の同名の名画があるが、画面中央、下から上にまっすぐのびる若枝や横に曲がる枝が梅という木の特徴とよくとらえているこの絵にも魅せられる。

日本画も名品ぞろい。唸ってしまうのが蛇足、雪村、海北友松の水墨山水画。墨の濃淡で雲海や霞のなかに浮かんでいるように一部しか描かれない山や木々、海はまさに中国山水画の世界。あれもこれもいいなと興奮状態でガラスケースの前を進んでいたとき、わあー!と思わず声が出そうになったのが真ん中の尾形乾山の“富士山図”と下の葛飾北斎の肉筆画、“鯉図”(部分)。大収穫の絵である。

乾山にこんな明快に美しい絵があったとは。頂上の白と裾野の緑の対比が素晴しい。右のほうに大きな松が3本立っているが、これがシュールな感じに見えないのは、多分この絵を茶碗の色絵装飾のように受け止めるからだろう。北斎の“鯉図”にも息を呑む。昨年あった北斎展にも同じように描かれた鯉の絵(拙ブログ05/11/17)があったから、鯉自体は新鮮ではないが、一匹の鯉が上にほうに向かって泳いでいるという構図にびっくりする。美術館もこの絵がお気に入りのようで、展覧会のポスターにこれを使っている。

ほかで足が止まるのは中村芳中の“梅図”、谷文晁のスケールの大きな風景画、“隅田川両岸図”、一度みたことのある白隠の“座頭渡橋図”、ユーモラスな仙厓の“万才図”。応挙の絵をみるために行ったのに、プラスαが二乗でついていた。こんなに腹の底から嬉しくなる展覧会も久しぶり。今、その余韻に浸っている。

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2006.11.25

応挙と芦雪展 その二 応挙

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後期にでている応挙の作品も見所いっぱい。中でも、上の“牡丹孔雀図”(重文)、真ん中の“雲龍図”(重文)、下の“大瀑布図”が一緒に見られるのだから、これほど幸せなことはない。すでに見ている絵であるが、応挙の代表作として画集に必ず収録されている傑作なので、観ててワクワクする。

今年は応挙の孔雀図に縁がある。ブリジストン美(拙ブログ4/10)、三の丸尚蔵館でもみた。今回出ている相国寺蔵の“牡丹孔雀図”は応挙の写生画を象徴する文化記号。3年前大阪で見たとき同様、大変感動した。応挙は“写形純熟ののち、気韻生ず”と言っている。つまり、形を正確に写し取る(写形)ことが出来れば、対象の本質(気韻)がおのずと出てくるという。

緑色の首に魚の鱗のような紋様が金泥の細い線で精緻に表現されているところや、ゴージャスな黄金の丸文様がいくつも連続する雄の尾羽を観ていると、確かに目の前にいる孔雀からはつよい生命力が伝わってくる。そして、絵として目を楽しませてくれるのは真ん中の羽にみられる美しい青のグラデーション。装飾的な色彩表現は本物の孔雀をこえている。

03年にあった大回顧展で龍の迫力に圧倒された“雲龍図”は今年1月、京博の平常展でもみた。そのとき時間をかけてじっくりみたので、今回も同じように目を動かした。真ん中は右隻(部分)で上空に昇る龍が、左隻には玉を持つ龍が描かれている。応挙は龍図をいくつも制作しているが、この龍の絵はとびぬけていい。他の絵師が描いた龍でこの絵に見劣りしないのは国内では海北友松の“雲龍図”(重文、建仁寺、ここで12/3まで開催している“大桃山展”に展示中)しかない。ちなみに、雲龍図屏風のビッグ4は国内にある応挙と友松の絵、そしてアメリカにある宗達作(ワシントンフリーア美)と曽我蕭白作(ボストン美、辻氏が“ギョッとする江戸絵画”で紹介していた)。

応挙の龍がほかの3点と違うのは墨に金泥で彩色されていること。頭の上や口のまわりの髭、胴体、足からはえる毛はキラキラと光り、そしてゴールドの鱗文。これほど見栄えのする龍は見たことがない。さらに驚くのは龍の体や渦巻く雲、波濤の量感表現。しなやかな筋肉を思わせる龍の胴、むくむくとした白い雲の塊、激しく飛び散る波頭や岩の立体感が観る者を圧倒する。この感じは絵の前に立たないとわからない。

下の“大瀑布図”は4m近くある大きな掛け軸。制作の由来が面白い。これは応挙の支援者、円満院の祐常門主の依頼で描かれた。円満院の庭には滝がなく、祐常門主が日頃からそれを残念がっていたので、応挙は絵に滝を描いて贈ったという。で、門主はそれを庭の木につるして大喜び。これは今で言うとインスタレーション。現代アーティストと同じ発想の作品を応挙は18世紀後半すでにつくっていた。あまりに大きな掛け軸なので滝つぼあたりで手前に折れている。じっとみていると下の岩にかかる水しぶきがこちらにもとんでくるのではと錯覚を覚える。水の落下するゴーという音を聞きながら、時間がたつのも忘れて眺めていた。

ほかの作品で魅了されたのはこれまで見たことない大きな布袋図。しかも体中毛だらけ。口、顎、鼻、胸の毛だけでなく腹、足の甲、腕まで毛がはえている。布袋さんはこんなに毛深かった!?“墨は五彩を兼ねる(墨だけで多彩な色を表現できる)”というのを実感するのが“破墨山水図”。濃い墨が輝いている。また、“朝顔図”の目の覚めるような青い花に感動した。

03年の回顧展で展示替えのため観れなかった作品はこの展覧会で相当数リカバリーできたから、応挙は済みマークがつけられる。奈良県美に感謝。

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2006.11.24

応挙と芦雪展 その二 芦雪

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展示品が入れ替わった応挙と芦雪の回顧展(奈良県美、後期:11/7~12/3)をみるため、また奈良を訪れた。前期同様(拙ブログ10/2410/25)、人物、花鳥、山水のくくりで43点でている(応挙20点、芦雪23点)。今回も鑑賞エネルギーの配分は応挙よりも芦雪のほうに厚い。で、期待の芦雪から。

人物で見ごたえがあるのはなんといっても上の“山姥図”(重文)。広島にいるとき、この絵を所蔵する厳島神社でみた。誰がみても山姥の強烈なイメージは長く体内に残るであろう。絵に力がある典型的な例である。またまた釘付けになったのが、画面いっぱいを占める山姥。鋭い目、大きな鼻、三本しかない歯はまさに妖怪の面相。そして、手に較べて足の大きいこと!衣装に隠れて一部しか見えないが、これから想像すると相当デカイ足である。喜多川歌麿が描く山姥は妖艶な姿をしているのに、芦雪の表現はかなり怪奇的。

これとは対照的に“唐子琴棋書画図”は子供の愛嬌のあるしぐさに口元が自然にゆるむ絵。金地に映える赤の衣装が印象深い。はじめてみた絵で惹きこまれたのがNHK教育で現在放映中の“ギョッとする江戸の絵画”で講師の辻氏が取り上げていた“絵変わり図屏風”。和尚のポーズや顔を見せない牛など普通でないフォルムや構図に面食らう。とくに左から2番目の絵は“何が描いてあるの?”。説明を聞いても、実際にみてもよくわからない。観てのお楽しみ。

真ん中はお目当ての屏風、“群猿図”(右隻)。親子プラス三匹の猿が描かれた左隻はよくみられる動物画なので、さらっと観てしまうが、右隻はユニークな構図にハットする。三角山のてっぺんに猿が腰をかけて、下のほうを眺めてるような画面構成は並みの絵師には思いつかない。芦雪は三角というか鋭角的なフォルムの上に対象を配置するのが好きだ。前期に出品された“百鳥図”では大鷲がとがった岩にとまっていたし、今回でている“薔薇図”でも雄鶏が三角岩の上にいる。観る者に大小の対比の面白さをみせるための工夫だったのかもしれない。

花鳥画のコーナーでは、鶏冠の赤が美しい“雪中双子鶏図”、画面から体がはみ出すところが面白い“猛虎図”、たっぷりとった余白が絵の魅力をいっそう高めている“花鳥図”が目を楽しませてくれた。最後の山水のところに大倉集古館で感激した“方広寺大仏殿炎上図”(拙ブログ4/9)があった。これは嬉しい展示。上から落ちてくる火の粉の感じがよくでている。

下は芦雪という絵師のすごさを一番感じさせてくれる絵、“海浜奇勝図屏風”。日本にはなく、NYのメトロポリタン美術館が所蔵している。この奇岩の表現をいつか目の中に入れたいと思っている。現在、東京でみられる芦雪作品をひとつ。東博の平常展では“蝦蟇仙人図”というなかなか面白い絵を展示中(12/6まで)。

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2006.10.25

天才 円山応挙のスーパー写生力

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円山応挙と長澤芦雪の代表的な作品を集めた回顧展につけられたキャッチコピーは“天才と鬼才の師弟”。応挙の天才というのは、写生という新しい描き方を画壇に持ち込み、どんな絵でも観る者を唸らせるほど上手に描いたスーパー写生力のことである。

03年の大回顧展(大阪市立美術館)でそれを見せつけられた。今回の“人物”、“花鳥”、“山水”に分けられた作品のなかにも高い腕で描かれた傑作がいくつもある。作品の数は通期で36点、前期には19点でている。応挙の大作に凄さを感じる人は後期のほうが満足度は高いかもしれない。龍の絵では一番いいと思われる“雲龍図”(重文)、高さが3.6mもある“大瀑布図”(相国寺)、孔雀図の傑作、“牡丹孔雀図”(重文、相国寺)は後期に展示される。

この3点は鑑賞済みなので、個人的には前回、展示替えで見れなかった作品が比較的多く含まれている前期への期待が高い。是非観たかった絵が花鳥画のなかに数点ある。上の“紅梅鶴図”と“薔薇文鳥図”。“紅梅鶴図”を所蔵する三井記念美術館が昨年、日本橋に移ってきたので、すぐにでもお目にかかれるとふんでいたが、予想外に姿を見せず、東京ではなくて奈良での対面となった。

感激したのは構図のとり方と白梅と紅梅の花弁の精緻な描写。花の描写は伊藤若冲の“動植綵絵”とさほど変らない。そして、目を奪われるのが左上から斜め右に伸びる紅梅の枝と左の白梅とで丹頂鶴と真鶴をとりかこむ画面構成。予想以上の素晴らしい絵だった。また、金地に緑の葉が映える“薔薇文鳥図”の静かな空間にも吸い込まれそうになる。“紅梅鶴図”のように、つがいの文鳥がとまる枝を左のほうから斜め下に垂れさせ、余白をたっぷりとっているので、奥行きのある空間に鳥と木が浮遊しているように見える。

03年のとき、興味深くみた真ん中の“七難七福図巻”をガラスケースに顔を近づけ熱心に観た。前期の展示は世の中の避けがたい“七難”の巻で、これは“天災”の一場面。地震で家が倒れ、人々は揺れる地面に這いつくばり、恐怖に慄いている。このリアルな人物表現が見事。あわてているのは人間だけでなく、左上にいる2匹の犬もでんぐり返しになり、その下の鳥もびっくりして羽根をばたばたさせている。

“難”のなかには、追いはぎに遭い、女が着物をはがされ裸で泣くところや、子供が木にくくりつけられる、また男が穴に突き落とされる場面を描いた“人災”の巻もある。追いはぎはよくみるといかにも悪党の顔。こんなワルにつかまるほど災難なことはない。

応挙は怖い場面を真に迫るほどリアルに描くが、可愛い子犬を描くのもとびっきり上手い。今回でている“狗子図”は下の1点のみ。これまで応挙の可愛い子犬の絵は10点くらいみたが、これははじめてみるヴァージョン。下の眠っている犬の無垢な姿がいい。前期の応挙に大満足。後期には見ごたえのある大作3点がでる。これも楽しみだ

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2006.10.24

奇才 長澤芦雪の魅力

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関西にある美術館は江戸絵画の展覧会で主導的な役割を果たしている。昨年の“曽我蕭白”(京博)に続き、今年は奈良県立美術館が大規模な“円山応挙・長澤芦雪展”を10/7から開催中。奈良県美は県庁のすぐ裏にある。

総出展数(80点あまり)はほぼ同じくらいの数で、前期(10/7~11/5)と後期(11/7~12/3)に分けて展示される。通期出ずっぱりの作品はなく、総入れ替え。代表作や目玉の作品がどちらか一方に偏らないように、うまくバラされているから、この展覧会へは2回、足を運ばなくてはならない。関西の人が羨ましい。

応挙は03年の大回顧展(大阪市立美)でワンラウンド消化しているので、多少は肩の力を抜いて鑑賞できる。が、芦雪については、代表作の“虎図”(無量寺、拙ブログ05/2/13)やプライスコレクションの“象と牛図屏風”、“白象図”(金閣寺、06/7/29)を観たとはいえ、過去あった回顧展には縁がなく、また代表作を収録した画集も手許にないので、目の前の作品とは前のめり状態で対面することになる。まず、数も44点と応挙より多い芦雪から。

会場を進むにつれて、体が熱くなってくる。芦雪の絵で一番惹かれるのはハットする構図と対比の面白さ。だから、最大の関心はこうした作品がいくつ観られるかであった。後期の作品は残しているが、前半は期待通りで、満足度は高い。

芦雪の頭がすごく柔軟だということに気づいたのが上の作品、“富士越鶴図”。4年前、岡山県美であった展覧会でこの絵をはじめてみたとき、その斬新な構図に驚愕した。実景とはかなり違う切り立った富士山の右中腹後方から、グライダーが編隊を組んで飛んでいるように鶴がこちらに向かってくる。鶴が飛ぶ姿をこんな風に描ける絵師は芦雪のほかにはいない。意表をつく絵画構成では、蕭白も若冲も芦雪には叶わない。今回も構図の面白さを満喫した。ぐぐっと引き込まれる構図の絵がもう1点ある。それは二本の足で地面を思いっきり踏ん張り、体を反り返らせているように見える“白梅図”。即座に、尾形光琳作、“紅白梅図屏風”の紅梅を連想した。

大小の対比や形の大きさが頭から離れない絵がある。真ん中の“百鳥図”は図版でも見たことがなかった。右隻の主役、孔雀と左隻の主役、大鷲がペアリングになっている。水面のうす青、右隻の鳥の鮮やかな赤、そして孔雀の羽根の深い青が目にとびこんでくる。一見、目に心地よい見事な花鳥画である。でも、大鷲とまわりの水鳥たちの大きさを較べてみるとかなり不自然。岩をつかんでいる大鷲の足はまわりの水鳥の足に対して、異常に大きい。この足からイメージするとこの大鷲はガリバー級の巨大さになる。大鷲の巨大さがぱっと見てそう感じられないのは限られた天地のなかに収まっているから。

大きさをドンと体感するのが下の“牛図”。これは前々から追っかけていた作品。正面からとらえた黒い牛の体は画面から横にとびだしている。プライスコレクションの“象と牛図”と同じ描き方である。画面構成にハットさせられるだけでなく、ここには色彩美がある。黒の輝きと目の青。これほどインパクトのある牛の絵は見たことがない。前期の狙いはことごとく当たった。後期は“群猿図屏風”に期待したい。

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2006.07.29

長澤芦雪の白象図

4482回目のプライスコレクション展(東博、8/27まで)は最後のガラスケースがないコーナーからみた。

前回(拙ブログ7/7)じっくりみたので、展示作品のおおよそのイメージは覚えている。でも、はじめてみる絵というのは観ているようで画面全体をとらえる目が弱かったりで、2回鑑賞の効用も結構ある。

絵の表情が光のあて方でいろいろ変わるのをみると感激する。この見せ方は本当に有難い。最初に飾ってある酒井抱一の“佐野渡図屏風”では明るい光が画面にあたると金箔の地から雪が現れる。そして、暗くなるとその雪が消えていく。その隣にある鈴木其一の“柳に白鷺図”はしばらくみていると、白鷺の白い羽がまぶしいくらい輝いてくる。

其一の大きな屏風、“群鶴図”も気分が高揚する。これはワシントンのフリーア美術館にある尾形光琳の作品を模写したもの。光琳との違いは左右の流水文の描き方と鶴の羽の色。其一が腹側と背中の羽を黒とねずみ色ではっきり分けているのに対し、光琳は尾っぽの白でまるく輪郭線をとった部分は同じなのに黒を腹側の羽だけでなく、背中の三分の一くらいまで使っている。好みとしては其一の鶴のほうがいい。ねずみ色の羽のところに光があたると金地に美しく映える。不思議なのは尾っぽの白は光沢を増すのに、首のところの白はそれほどでもないこと。これはなぜ?

長澤芦雪の巨大な黒牛と白象をまた楽しんだ。牛の顎とか鼻の上には髭がある。象も牛も背中が画面からはみだしている。こうした意表をつく構図はどのようにして生まれるのだろう?展覧会に登場する作品の中には必ず、普通の頭では思いつかない視点で対象を捉えたのが1,2点ある。こういう経験を何回かすると、ほかに絵師にはない奇抜な構成力が芦雪の作品の大きな魅力となって体のなかに入っていく。もうひとつ芦雪の絵で惹くつけられるのがかわいらしさ。師匠応挙の“かわいい”描写をちゃんと受け継いでいる。黒い牛の腹のところにいる子犬のかわいいこと。

芦雪は子犬のほか猿も描いているが、かわいい子供を描いた絵が忘れられない。それは04年、京都の金閣寺でみた右の“白象遊童図”。京都市観光協会は寺院とタイアップして毎年、非公開文化財の特別公開を実施しており、バスツアーで回った金閣寺方丈にこの絵があった。子供たちが白象の頭や鼻にのったり、腹から滑り台のように下に降りたりして、楽しく遊んでいる。右のほうにいる子供は象にのる順番を待っているところ。

南紀串本町の無量寺にある“虎図”(拙ブログ05/2/13)も観てると肩の力がぬけてきて、ほんわかする絵。この猫のような虎と較べると、プライス氏が所蔵する芦雪の虎(猛虎図)は頭がやけに小さいが、かなり怖い。芦雪の描く虎はかわいい虎だけではなかった。

芦雪に興味がある方に参考情報を。現在、パウル・クレー展を行っている川村記念美術館の常設展示に屏風絵、“牧童図”が出ている。牛の背中に乗っている童や木のまわりで遊ぶ童士たちのユーモラスな表情に心が和む。

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2006.04.10

ブリジストン美の円山応挙

3574/8からはじまったブリジストン美術館の“雪舟からポロックまで展”(6/4まで)はおやっと思わせるタイトル。

ブリジストン美は大原美術館とともに民間が運営する美術館としては誰もが知る西洋美術の殿堂なのになぜ、雪舟があるのか?その理由はこう。

石橋財団が所蔵するコレクションは現在、久留米市にある石橋美術館と東京のブリジストン美の2箇所で公開されている
が、今年は財団の設立50周年にあたり、これを記念して開催されるのが今回の展覧会。雪舟の絵など日本・東洋美術品があるのは石橋美術館で、ここの名品がブリジストン美にやってきたというわけである。久留米の石橋美術館には行ったことがないので、ブリジストン美と日本画が結びつかなかったが、これで納得した。

今回は記念展だから、通常は一度には展示されないものを現地に行かず見られる
のは大変有難い。大体見ている洋画や彫刻よりは当然ながら、お目当てはこちらの
日本美術。とくに絵画と陶磁器に感動した。雪舟の“四季山水図”(重文)は過去、
2,3回見たことがある。最近では、昨年あった根津美術館の“明代絵画と雪舟展”
にでていた。いくつかある四季山水図のなかでは保存状態が良く、一番気に入っ
ている作品で、力強く、のびやかな筆さばきで描かれた切立った山々と松からは四季
折々の情趣と空気が伝わってくる。

この絵以上に新鮮だったのが江戸絵画。ここでもまた円山応挙と江戸琳派の鈴木
其一のいい絵に出会った。“18世紀京都画壇展”から展覧会同士が響き合うかの
ように江戸絵画の名画が目の前に現れる。其一のは六曲一双の屏風絵、“富士筑
波山図”。金地に富士山、筑波山が墨で描かれている。印象深いのがところ々に使わ
れる木々の緑と筑波山の群青。筑波山を青で彩色するとはなんと大胆!其一は
ドイツ表現主義の先駆けではないかと錯覚する。

この群青で驚愕させられるのが右の応挙作、“牡丹孔雀図”。03年にあった“円山
応挙展”(大阪市立美術館)にでてた孔雀図で味わった感動が蘇ってきた。じっとみて
ると、本物の孔雀がいまにも動き出すのではないかと思えてくる。羽根一枚々を繊細
克明に描写する応挙の真摯な姿勢にただただ感服するばかり。応挙の緻密な描き
方はていねいすぎて、若冲の遊び心をもった超細密描写にくらべると優等生的かも
しれないが、これはこれで見る者に深い感銘を与える。二本足の上の部分の緑青の
輝きが本当に素晴らしい。首のところの羽根やとさかを単眼鏡でみると金の極細の
線がひいてある。大阪でみた“牡丹孔雀図”(重文、萬野美術館)ではここまでは気づ
かなかった。

こんなすごい孔雀図が石橋美術館にあったとは夢にも思わなかった。この絵だけでも
入場料を払う価値がある。なお、宮内庁三の丸尚蔵館にも応挙の孔雀図があり、これ
が嬉しいことに現在開催中の“花鳥ー愛でる心、彩る技展”の5期(8/12~9/10)に
登場する。前回、展示替えで見逃したこの孔雀図でまた感動が再生産できるのでは
ないかと期待している。

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2006.04.09

大倉集古館の長澤芦雪

252_2江戸絵画の鑑賞が続いている。京都、名古屋のあと、ホテルオークラの隣にある大倉集古館でも“播磨ゆかりの江戸絵画展”(5/28まで)を観た。作品の数は57点なので、“18世紀京都画壇展”よりは少し多い。

この企画展を思いついた人は大変豊かな発想の持ち主。播磨の国、現在の兵庫県の旧家に若冲や芦雪などの作品が多く所蔵されてるのに気づき、播磨をキーワードにしてこれらを一度まとめてみようと思い立ったのかもしれない。

江戸時代、絵師たちが播磨とどんな縁があったのか正確なことはわからないと思うが、この頃活躍した絵師の作品を兵庫在住の個人がこれだけ所有しているということは、当時、この地を多くの文人墨客たちが訪ねたためであろう。この展覧会のお陰で画集や図録に載ってない佳品をいくつも見ることができた。

大倉集古館ではわりあい若冲の絵を見る機会がある。過去にも京都の細見美術館
所蔵の若冲を展示していた。今回は“羅漢図”、“鶴図”、“双鶏図”の3点。面白い
のは胴体がまんまるの鶴に顔がないこと。東博でも同じようなユーモラスな鶴の絵
をみたことがある。17歳年下の円山応挙の描く鶴は本物そっくりなのに対して、
若冲の鶴はぐっとくだけた姿態で奇抜なポーズをとっている。若冲は鶴や鶏が好きで、
自分もこれらに変身して、戯れたかったのだろうか。普通の絵師では太った鶴や鶏
を思いつかない。応挙は小ぶりの“雲龍図”と品格のある花鳥画“梅に鶯(うぐいす)
図”の2点。

この展覧会で一番の収穫は芦雪の絵が見れたこと。7点あり、ハットする絵がいくつ
かあった。右の“方広寺大仏殿炎上図”(部分)はそのひとつ。建立後、すぐに地震
に遭い壊れた方広寺を秀頼が復興させるも、今度は落雷で焼失する。背景をなにも
描かず、方広寺が炎上する様を墨の煙と朱色の炎が上空にのぼっていく縦長の画面
構成で表現している。上から落ちてくる大きな炎が滅びる豊臣家を暗示するかのよう
で、印象深い。芦雪の絵の魅力はハットさせられる構図。沢山の鶴が群れをなして飛
んでいる“千羽鶴図”の左右の鶴の配置には“おおー”と思わず声が出そうになる。

この柔らかい発想からくる奇抜な構図や対比の上手さが芦雪の真骨頂。若冲の作品
は残っていた“菜虫譜図巻”を見たので一休み。これからは芦雪に鑑賞のエネルギー
をシフトしようと思う。期待は7月、東博にやってくるプライスコレクション。見たくてたま
らない芦雪の大作、“象と牛図”が含まれていること切に願っている。

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2006.01.02

東博の初もうで展

261東京国立博物館の初もうで展(1/29まで)を観てきた。会場でばったりおけはざまさんと会い、一緒に美術談義をしながら、楽しく回った。

いつ頃からやっているのかわからないが、ここは正月、その年の干支にちなんだ絵画などの美術品を展示している。今年のテーマ“犬と吉祥の美術”には、犬が描かれたものと吉祥を表した作品が二つのコーナーに50点あまり展示されている。

いの一番にみたかったのは、円山応挙が寺の書院の杉戸に描いた右の“朝顔
狗子図杉戸”。円山応挙は可愛い子犬の絵を何点も描いているが、これはその代表
作。03年、大阪であった円山応挙の大回顧展では展示替えでみれず、残念な思
いをしたが、やっとリカバリーできた。清少納言ではないが小さいものは何でも可愛い。
日本画のなかで心を和ます子犬を描いてくれたのは琳派の俵屋宗達、尾形光琳
と円山応挙と応挙の弟子、長澤芦雪。

宗達や光琳の子犬は墨で描かれているのに対し、応挙が描くのはどこにでも見か
ける白や茶色の毛をした子犬。当然ながら、こちらのほうが和み度は大きい。それに
犬のしぐさが実にリアル。一番左の犬のように後ろ足をあげて顔をかく姿はまこと
に微笑ましくて、ほんわかする。江戸時代に入ってから犬は絵画だけでなく、工芸作品
にも多く出てくるようになる。安産や子供の健やかな成長を祈願して犬をあしらった工
芸品では、雪の上で遊ぶ14匹の子犬が刺繍された見事な帯や犬張子があった。

“吉祥”のところのお目当ては、雪村の“松鷹図”(重文)と伊藤若冲の“松樹・梅花・
孤鶴図”。“松鷹図”は追っかけていた絵。松の葉はさっさと筆を動かして描いた感じ
で、粗さもあるが、鋭い目をした二羽の鷹の体を少しひねった姿は威厳があり、画面
に緊張感をもたらしている。これと対照的なのが若冲の絵。真ん中に描かれた鶴の
体は異常に円く、超肥満鶴。こんな鶴は見たことがない。昨年ここでみた太った鶏の
ように漫画のような絵である。若冲にはユーモラスな絵がいくつもあるが、この絵
もそのタイプ。

若冲ほど多彩な技をもった絵師はいない。これらを使ってサイケデリックな細密花鳥画、
正統的な鶴や松の絵、モザイク風の鳥獣花木図屏風、点描風の石燈籠、漫画チック
な鶏、鶴、犬、野菜の絵を描いた。また、若冲にやられてしまった。

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2005.11.18

円山応挙の雲龍図

218三井記念館の名宝展では展示替えがあったので早速出かけた。後期の展示は11/17~12/25。

陶磁器類は後期も同じ作品がでているが、絵画は別の作品を並べている。そして、前期、漆工芸品があったところには中国の碑文などが飾られ、最後のコーナーは能面から刀剣類に変っている。絵画のお目当ては“日月松鶴図屏風”(重文)、円山応挙の“雲龍図”、中国の絵師、梁楷(りょうかい)が描いた
“六祖破経図”。

“日月(じつげつ)松鶴図屏風”は室町時代に制作された屏風であるが、この頃、
吉祥的な鶴と松の背景に太陽と月を描くのが流行った。面白いのは太陽と月に
金属板を使っていること。このため、横から見ると屏風の表面がぽこっと膨らんで
いる。図録からは金箔の地に松や岩の緑青と河の水の群青がもっと鮮やかに
でているのをイメージしてたが、それほど深い色ではなかった。鶴の配置が凝って
いて、左隻ではわざわざ松の太い幹の後ろにいて体の大半が見えない鶴もいる。
鶴の首周りや羽の白が薄くなっているが、制作されたときは美しい姿だったの
ではなかろうか。

円山応挙作、右の“雲龍図”はよく観る龍とは一味も二味も違っている。この龍は
ぱっと見てすぐ龍の形が頭に入らない。顔はまあ分かるが、胴体、あの手や足の長
い爪はどこへ消えたのという感じである。これまで龍の絵はいくつも見たが、これ
ほど分かりにくい龍は見たことない。また、技法も革新的で、右にある雲は墨の
滲みで表し、波濤の白は塗り残しによるもの。応挙は伝統的な雲龍図から離れ、
技巧を凝らし、現代感覚でいえばシュールなタッチで海中から雲間を抜けて天へ
と昇る龍を描いている。2年前、大阪であった円山応挙の大回顧展ではこの雲龍図
が展示替えで観れなかったので、ここでリカバリーできたのは嬉しい限り。

これで、代表的な雲龍図でまだ観てないのはワシントン、フリーアギャラリーにある
俵屋宗達の“雲龍図屏風”くらいになった。ボストン美術館にある日本画は日本に
やってきたが、まだここの名品は見る機会がない。東博あたりが、なんとか働きかけ
て展覧会を開いてくれないかといつも思っているのだが。因みに、本日の世界美術
館紀行でこの美術館の日本画コレクションが紹介される。

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2005.10.14

円山応挙の雪松図

188この秋、日本画が好きな人にはご機嫌な日が続く。根津美術館で“燕子花図”を鑑賞したあとは、日本橋に新たにオープンした三井記念館の“三井家名宝展”に出品されてる円山応挙作、右の“雪松図”(国宝)が待ってくれている。

どっちを先に見るかは好み次第だが、近世日本絵画を代表する2点に会えるのだから、こんな贅沢なことはない。二つの展覧会は同じ日、10/8にはじまった。
“三井家名宝展”の会期は前期が10/8~11/13、後期が11/17~12/25.

見所はいろいろあるが、茶道具類も楽しみのひとつ。通期を通して、陶磁器の
お宝が出ずっぱり。和様茶碗で国宝は2点しかないが、その1点を三井家が所蔵
している。それは志野茶碗の名品、“銘卯花墻”(うのはながき)。志野茶碗を
愛する陶芸ファンの誰もが絶賛する茶碗である。仁清の色絵茶壷もいいが、淡い
ピンクと白、口縁の赤い焦げが深い味わいをみせるこの志野茶碗にも感動する。
まだ3回しかみてないが、こんな名器を毎年、見せてくれたらなといつも思う。
ほかにも光悦の“黒楽茶碗 銘雨雲”、長次郎の“黒楽茶碗 銘俊寛”、仁清の
香合や乾山の銹絵の蓋物などが目を楽しませてくれる。

前期における絵画の目玉は応挙の“雪松図”。後期にはまだ見てない“日月松鶴
図屏風”(重文)が展示される。“雪松図”に会うのは今回で3度目。右は雄松
を描いた右隻。左隻は雌松。松の描き方は狩野派とは明らかに違う。権力の象徴
として松を表現したのとは異なり、応挙の松は綿密な写生をもとに品高く描かれ
ている。中央に、力強い太い幹を右上に傾斜させ、そこからリアリティーのある枝を
伸ばし、葉にこんもりと雪をのせている。背景の薄い金地はけばけばしく無く、
光を反射して雪が輝く様が美しい。

技法的には、いろいろ工夫がある。ひとつは輪郭線を用いず、墨面で幹や枝の形を
出してること。もう一つの注目点は紙面の塗り残しで表された雪。雪を白色で描い
てないのである。おおよそ頭のなかで、雪のつもり具合をイメージし、葉の線を描き
ながら紙面を残していく。これは高い力量をもつ画家でしかなしえない描き方。
この“雪松図”はパトロンであった三井家の依頼で制作されたもの。同じく注文に
より描かれた“郭子儀祝賀図”という優品が隣にある。これも見逃せない。

高い満足度の得られる名宝展であった。後期にでる“日月松鶴図屏風”に期待し、
また日本橋に出かけようと思う。

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2005.05.14

円山応挙とマグリッド

70太田美術館でみた歌川広重のちょっとシュールな“日光山裏見ノ滝”に刺激されて、日本画で他にもないかと画集や図録をぱらぱらめくっていると、なんと円山応挙の作品にはっとするのがあった。

その絵の前に、応挙の研究者に関することを少々。今度、京都国立博物館の館長に佐々木丞平京都大学教授が就任することが新聞に載っていた。

佐々木氏は日本画の奥さんと共に応挙研究の第一人者。03年9月から04年
3月まで大阪、福島、東京で開かれた大規模な円山応挙展を監修したのがこのお
二方。レベルの高い応挙研究が今、美術関係者の注目をあびている。

そこで、佐々木夫妻が執筆している芸術新潮2月号の円山応挙特集をなんとなく
見ていると、右の作品にであった。この絵を大阪の展覧会で見て、シュールな絵
だなと感心したのをすっかり忘れ、広重の絵からは北斎の鯉の滝登りしか想い浮
かばなかった。画題は北斎と同じで“龍門鯉魚図”という名前がついている。兵庫
の大乗寺の所蔵。応挙は鯉の絵を何枚も描いたようで、福岡市美術館でも同じ
ような作風の絵をみた。

マグリッドの絵を連想させるこの絵の不思議な感覚は、応挙の優れた技巧から生
み出されている。鯉に描かない部分をつくり、そこを塗り残すことで水の流れを表現
している。垂直に落ちる滝のむこうに鯉が全力で上昇しようとする様がよく描かれ
ている。02年、Bunkamuraでみたマグリッドの作品にこの絵と同じ描き方のものが
あった。森のなかを走っている女性の乗った馬の一部が垂直にカットされ、その
部分がまわりの木の葉っぱで埋められる。また、ほかの箇所では緑の木が馬の
胴体に描かれている。

マグリッドによれば、森を馬にのって通りぬける人は幹の谷間に見え隠れし、こんな
絵のような錯覚が起きるという。シュルレアリスト、マグリッドの感じた錯覚を応挙
は鯉の滝登りに見たのかもしれない。マグリッドの絵を先取りするような作品を
1789年ごろ描いたというのが凄い。応挙の頭はちょんまげだが、美的感覚は現代
人と変わらないかもしれない。

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2005.05.07

円山応挙の藤花図

65青山にある根津美術館では明日まで“唐絵の屏風展”をやっている。根津美術館は東京国立博物館、五島、出光美術館などと共に日本画の名品を所蔵している。

昨年は南宋絵画展を開催し、多くの愛好家が押し寄せた。出展数はスペースの関係で沢山はないが、作品の質が高いので、どうしても定期的に訪問したくなる。

今回は日本の絵師たちが中国の画題で描いた屏風絵を中心に展示している。
六曲一双の屏風が10点ある。ビッグネームとしては、雪村が2点、伝狩野元
信が2点、狩野探幽が1点。ひとつ〃がどこの展覧会にだしても目玉になる
一品である。雪村の“龍虎図”は迫力一杯。粗い墨法で雲をよぶ龍の躍動感
とじっと身構える虎を左右の屏風に描いている。

伝狩野元信の“養蚕機織図”は四季山水図として構成され、春と冬に行なわ
れる養蚕、機織の作業が細密に表現されている。元信は構図のとり方がうま
い。細部をキッチリ描き込みながら、遠景の雄大な山々、岩は余白を充分に
とり、さらっと仕上げている。東博の平常展で元信の作品をみることが最近多
いので、この絵師の画風が分るようになった。探幽の“両帝図”も見ごたえが
ある。

唐絵の屏風の他に見逃せない絵が2点でている。常設コーナーにある円山
応挙の“藤花図”と長澤芦雪の“赤壁図”。赤壁図ははじめてだが、藤花図は
ここで一度観た。師匠と弟子の作品が一緒に並んでいる。

右の藤花図は応挙44歳のときの作品。金地の背景に描かれた藤の紫が鮮や
か。写生を徹底してやった応挙だが、この藤花図では見たままをかいてはい
ない。面白いのは幹や蔦の描き方。鮮やかな藤の花に対して、幹はたらしこみ
技法で墨を薄く滲ませている。そして、この幹や蔦は生き物のように縦、横に
大きく折れ曲がり、蔦同士が絡みあう。藤の花を沢山描かず、余白をとってるの
も魅力のひとつ。

GWのニュースに春日部にある藤の名所が出てきた。いつか、訪ねてみたい。

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2005.02.13

長澤芦雪の虎図

291昨日の美の巨人たちは長澤芦雪だった。南紀串本町の無量寺にある応挙芦雪館にカメラが入ったのをみるのははじめて。

ここは昨年の7月に訪れたので、まだ記憶に新しい。目玉は長澤芦雪が描いた襖絵“龍虎図”。6面毎に龍と虎が描かれている。とくに有名なのが右の“虎図”。この絵は重要文化財に指定されている。虎は今にも飛び出してきそうにみえる。でも、この虎は怖くない。そう、猫のように描かれた虎なのである。虎の瞳孔は丸いのに、縦になっている。猫の証拠。猫であろうがこの襖絵には感動する。

なぜこんな構図にしたのか?美術史家の山下祐二さんが謎解きをしていた。この
襖の裏には猫が池の魚を捕まえようとして、構えている絵がある。この魚になって
猫をみると猫はこんなに形に見えるという。実際みたときにはこんな解説はない
ので、裏の絵と虎図との関連はわかりようがないが、言われてみると納得する。

芦雪という人は面白い発想をする。この龍虎図が描かれたのは1787年、33歳の
頃である。他の作品を画集でみると、奇抜な構図が目を引く。これがこの画家の
最大の魅力。普通の絵師が気がつかないようなアングルで風景を捉えている。
芦雪の頭の中で視点が自由に動いてるようだ。まだ見たこと無いが、メトロポリタン
美術館にある“海浜奇勝図屏風”や根津美術館所蔵の“赤壁図屏風”などは意表
をつく、奇抜な構図で奇勝が描写されており、シュルレアリスムの絵をみるようだ。

無量寺がわかりにくく、道が狭いのでクルマの運転に気を使ったが、この虎図との
出会いは楽しいひと時であった。交通の便があまりよくないので、なかなか行けな
いが、いつかまた訪ねてみよう。

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2005.01.03

円山応挙の双鶏図

643_1今年の干支は鶏。日本画には鶏を描いた絵がいくつもある。極め付きは伊藤若冲の鶏。超リアルに色鮮やかに鶏を描いている。

写生画の一方の雄、円山応挙も鶏を手がけている。右の作品は京都の八坂神社にある“双鶏図”。衝立に雌雄の鶏がかかれている。背景がない。本物の鶏が目の前にいるようだ。

この絵が描かれた時(1776年頃、応挙43歳)、そのリアルさが評判になり、
鶏が逃げ出さないよう、長らく画面を金網で覆っていたという。それくらい、描
かれた鶏が生きている鶏にそっくりだったということである。若冲の写実性は
幻想的な空間のなかでスーパーリアルを出しているのにたいし、応挙の対象
物の捉え方は見たままを描いたという感じ。

美術家の森村泰昌さんが面白い言い方をしている。“絵には匂う絵と匂わな
い絵がある。曾我蕭白や伊藤若冲は独特の匂いを発散させるが、円山応挙
の絵は匂わない”

昨年、芸大美術館で開催された“版画東西交流の波”に宋紫石が作った画譜
(草花、生き物、昆虫などの写生帖)が出品されていた。中国人、沈南ぴん
(しんなんぴん)が日本にもたらした写生的な画風が大流行し、宋紫石(日本
人)が作ったこの写生画のマニュアル本が手本となった。

写生画には好き嫌いがある。あまり写真ぽくなると、学校や図書館にある図鑑
に出てくる絵のようで、見てて楽しくない。実際、細かいところまで忠実に描き
すぎると、絵が重くなる。やはり、絵のなかに雰囲気や情感がないと絵としての
魅力がない。応挙はこのあたりのことは心得ており、実と虚をうまくバランスさ
せた絵を描いている。

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