2015.07.02

待望の‘田能村竹田展’!

Img_0001           ‘梅花書屋図’(重文 1832年)

Img           ‘山陰訪戴図’(1826~30年)

Img_0002     ‘琵琶行図’(部分 1833年)

Img_0003          ‘春園富貴図’(1801~1818年)

帝国劇場の隣にある出光美はサントリー美同様、今年から来年にかけて訪問する回数が多くなる美術館。2月‘小杉放菴展’を楽しんだが、回顧展の第二弾は‘田能村竹田展’(6/20~8/2)。

田能村竹田(1777~1835)の作品が出光に沢山あることは昔から知っているが、これまでは散発的な鑑賞にとどまっていた。だから、18年ぶりに開かれる回顧展は竹田に最接近する絶好の機会となった。作品は全部で54点でている。頁替えは数点あるが会期中いつ行ってもすべてみられる。こういう展示方法は美術館への好感度が増す。

竹田の絵は中国の文人画を踏襲している。そのため縦長の掛け軸が多い。最初に展示されているのが代表作の‘梅花書屋図’、亡くなる3年前の作品。縦に長い画面だから視線は当然下から上にあがっていく。S字をふたつくらい意識するともこっとした山に遭遇する。

この絵で圧倒的な存在感をみせているのは騾馬に乗った3人の旅人が進んでいく道を覆うようにのびる木々、丁寧に描かれた細い枝が変幻自在に曲がる姿はまるで生き物が小さく暴れているような感じ。このちくっと痛みを覚えるような木の動きが穏やかな山村風景にうまく溶け合っているのがこの絵の最大の魅力。

もう一点画面に惹き込まれるのがやはり木が主役になっている‘山陰訪戴図’、雪が降り積もった切り立った山々を背景にして力強く立つ木が雄々しく縦にバランスよく配置されている。

池大雅(1723~1776)の愛嬌のある人物像を彷彿とさせる‘琵琶行図’の前にも長くいた。そして、波を表す小さな山形が繰り返されるのをみてふと思い出したのが今村紫紅の‘熱国之巻’に描かれた海、紫紅は文人画に惹かれていたから大雅や竹田の画風からも影響を受けたにちがいない。

異色の作品が一枚あった。それは極彩色で描かれた‘春園富貴図’、中国の絵にでてくるモチーフ、牡丹と太湖石がうすピンクと強い緑青で彩られている。描くのが難しいといわれる牡丹をこれほど質感豊かに表現できるのだから竹田の画技は抜きん出ている。

待ち続けた田能村竹田の回顧展、それが叶い満ち足りた気分で館を後にした。

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2015.03.29

生誕300年 ‘若冲と蕪村’! 蕪村

Img     ‘蜀桟道図’(1778年)

Img_0002     ‘鳶・鴉図’(重文 18世紀 京都・北村美)

Img_0003     ‘風虎図屏風’(18世紀)

Img_0001     ‘仔犬図襖’(18世紀)

今年はサントリー美へ足を運ぶことが多くなりそうだが、春の楽しみは‘若冲と蕪村’(3/18~5/10)、二人は同じ年1716年に生まれた。 今年は生誕300年の節目の年。豪華なコラボ展を思いついたのはサントリー美と滋賀県にあるMIHO MUSEUM。東京の後、MIHOでの開催は7/4~8/30

これまで二人の回顧展は運よく体験しているので、今回はプラスαとどのくらい会えるかで満足度の度合いが決まる。一番期待していたのは昨年92年ぶりにシンガポールで発見されたという与謝蕪村(1716~1784)の‘蜀桟道図’。今も残っている蜀の桟道の跡を映像でみたことがあるが、足がすくむような険しい道。

馬と人物が進むこの桟道を下から追っかけると中央で途切れる。その上にでてくる道とはどこでつながっているのか?画面に立体感を強く感じるのは道がもこっと盛り上がった山をぐるぐるまわりながら上へあがっているから。そして、ところどころにみえる鮮やかな胡粉の白が視線をとめる。何度もお目にかかりたい傑作だが、これを所蔵しているのはシンガポールの会社。残念なことだがこれも海外流出のひとつと割り切るしかない。

再会を楽しみにしていたのが‘鳶・鴉図’、この絵は本当に心を揺すぶる。鳶は激しく吹く風のなか木の枝にとまり、二羽の鴉はしんしんと降る雪に体を寄せ合うようにしてじっとしている。この絵といい‘夜色楼台図’といい蕪村が晩年にたどり着いた描き方は日本人の心情にはぴったりくる。蕪村はやっぱりスゴイ絵師!

‘風虎図屏風’にはちょっと驚いた。蕪村にこんな虎の絵があったのかという感じ。もう一つのサプライズはMIHO MUSEUMであった回顧展(2008年)でもみた‘仔犬図襖’、この仔犬は円山応挙や長沢蘆雪が描く仔犬とまったく変わらない。肩の力が自然にぬけしばらくいい気持でみていた。

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2013.11.11

東博の‘描かれた風景’展で全国旅行!

Img      風景画に描かれた名所(拡大で)

Img_0001     司馬江漢の‘総州利根河今井渡’(江戸時代・19世紀)

Img_0003               池大雅の‘那智濺瀑図’(江戸時代・18世紀 東博)

Img_0004     谷文晁の‘彦山真景図’(江戸時代・1815年 東博)

東博で二度目の‘京都展’を見終わったあと、本館に寄り所蔵作品を軽くみた。ほかの美術館で開催されている展覧会へも急がなくてはならないから、1階はパスして2階の江戸絵画や浮世絵がお楽しみの中心。通常はこれで退館するのだが、このたびは浮世絵が展示してある部屋の前の特別1室・2室で興味深いオマケに遭遇した。

‘描かれた風景ー憧れの真景・実景への関心ー’(10/28~12/8)というタイトルのついたミニ企画展、出品作38点は大半東博が所蔵するものだが、個人や九博蔵のものもまじっている。惹かれる作品があったので目にしっかり焼きつけようと思っていたら、薄い冊子風の図録(600円)がちゃんと用意されていた。これは気が利いている。

江戸時代、人気の名所や人々にとってなじみの深い風景は池大雅や谷文晁などの画才抜群の絵師や浮世絵師たちによって数多く描かれた。今回でている作品に描かれた名所は図録に掲載された地図(拡大)でみてわかるようにかなり広い範囲にわたっている。

旅好きだった池大雅が絵にしたところは東北の松島、浅間山、熊野の那智の滝。‘浅間山真景図’は体験済みだが、松島と那智の滝は初見。一番長くみていたのは那智の滝、大雅の描くうす緑と朱で彩られたもこもこ山をみるといつも気が休まるが、そのボリューム感たっぷりの山の真ん中からドラム缶に穴が開いたように大量の水が流れ落ちている。隣に飾られている文晁の描いた那智の滝のほうが実景に近いが、絵としての魅力は大雅のほうに軍配が上がる。

文晁の大きな絵‘彦山真景図’は迫力満点、福岡県と大分県にまたがる英彦山はまだ縁がないが、山々はこの絵のように濃い墨で強く印象づけるほどインパクトのある姿をしているのであろうか、近くの耶馬溪は一度訪問したことがあるので、英彦山とも対面してみたい。

名所図で欠かせないのが霊峰富士山が描かれたもの、4点でている。そのなかで足がとまったのが司馬江漢の絵。富士山を遠くにとらえている場所は江戸川区にある江戸川今井橋あたり。江戸川にこんなに多くの帆船が浮かんでいた?見る者を喜ばすためにこういう構成にしたのだろう。

みている時間は長くなかったが旅心を刺激するいい企画展だった。学芸員のなかに旅好きがいるのかな?

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2013.08.07

一回だけの‘谷文晁展’!

Img_0003_2        ‘青緑山水図’(1822年 東京富士美)     

Img_0004_2             ‘米法山水図’

Img_2             ‘弁材天図’

Img_0001_2         ‘富嶽図屏風’(上野記念館)

サントリー美で行われている‘谷文晁展’の後期(7/31~8/25)をみてきた。谷文晁(1763~1840)の大規模な回顧展ははじめてのことだし、注目していた展覧会であることは確かにそうなのだが、一回で十分ということにしていた。で、図録を入手することを主たる目的としてさらさらとみた。

文晁の山水画には北宋風の山が垂直にきり立ってる絵と池大雅を思わせるもこもこ山の二つがあるが、好みとしては黒で量感豊かに描かれたもこもこ山のほうに惹かれている。この黒が強いインパクトを持っている山水で一番のお気に入りは東博にある‘彦山真景図’。‘米法山水図’は板橋区美で6年前にあった‘谷文晁とその一門’で遭遇し魅了された作品。

東京富士美はまだ訪問してないが、そのコレクションは西洋絵画から日本画まで幅が広い。文晁のこんな緑と青が強く印象づけられる山水画を持っていたとは。北宋タイプは板橋区美でも数点みたが、この絵が最もいいかもしれない。

今回の収穫は‘弁財天図’、参考として酒井抱一の‘妙音天像’の図版があったが、どちらも甲乙つけがたいほどいい出来。この‘弁財天図’は山谷にあった有名な料理屋‘八百善’に伝来したものらしい。文晁は画家であると同時に趣味人、大田南畝、山東京伝、酒井抱一らと文化サークルをつくり八百善で集っていた。

文晁の富士山はこれまで2点ほどみたが、別ヴァージョンの‘富嶽図屏風’も悪くない。静岡県美にあるものは日曜美術館の‘富士山 10選’にとりあげられていたので期待していたが、やはり前期のみの展示だった。惜しいことをしたが、‘大富士山展’(どこかの美術館が企画している!?)があればみる機会があるだろう。

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2012.04.22

目を楽しませてくれる京の画家たち!

3765_2                伊藤若冲の‘月夜白梅図’

3768_2                  伊藤若冲の‘鷹図’

3766_2                    池大雅の‘関羽図’

3767_2     与謝蕪村の‘寒山捨得図’(1781年 重文 文化庁)


千葉市美の蕭白展では最後のコーナーに曽我蕭白と同時代に活躍した絵師たちの絵が展示してあり、目を楽しませてくれる。

数の多いのが伊藤若冲(1716~1800)。前後期でなんと11点。ミニ若冲展をみているよう。前期に展示してあるのは‘月夜白梅図’や‘鷹図’など7点。お気に入りの‘白梅図’は会期中出ずっぱり。この絵を心行くまで楽しむには単眼鏡が欠かせない。花びらの小さな小さな黄色の点やつぼみの根元のえんじ色をいい気分でみていた。

今年は蕭白が大当たり!だから、蕭白の龍や波、そして京劇役者の化粧を連想させる強烈な赤や青が心のなかを占領しているが、もうひとりの人気絵師、若冲の作品も結構楽しんでいる。

ボストン美展では‘鸚鵡図’と‘十六羅漢図’に遭遇したし、府中市美で行われている‘三都画家くらべ展’(5/6まで)でも85年ぶりに登場した‘垣豆群虫図’など4点が姿を現してくれた。まさに江戸絵画の花盛り。

若冲のほかでは池大雅(1723~1776)が4点、与謝蕪村(1716~1784)2点、円山応挙(1733~1795)4点、長澤芦雪(1754~1799)1点。前期に登場した作品で足がとまったのがはじめてみる大雅の‘関羽図’。大雅の描く人物は顔も体も丸々しているのが特徴。強い武将というよりは徳の高い大人物と対面している感じ。

蕪村の‘寒山捨得図’をみるのは二度目。4年前、MIHO MUSEUMでみたときと違いこの度はどうでもいいことだが、箒(ほうき)をもっている捨得が民主党の輿石幹事長にみえて仕方がなかった。

千葉市美が所蔵している応挙作品のなかでは‘秋月雪峡図屏風’(後期)が一番のお気に入り。これまで図版がなく残念な思いをしていたが、やっとこの絵が載った図録を手に入れることができた。これもこの展覧会の収穫のひとつ。

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2011.11.07

ニューオータニ美の‘池大雅展’に感激!

3239_2     ‘瀟湘勝概図屏風’(重文 右隻)

3241_2     ‘東山清音帖・洞庭秋月’(重文)

3242_2     ‘曲江行楽図巻’(部分)

3240_2     ‘洞庭赤壁図巻’(重文 部分)

ニューオータニ美(ホテル内)で行われている‘池大雅展’(10/18~11/20)に大変感激した。作品の数は12点と小規模の回顧展なのだが、このなかには重文が4点あり名品が揃っている。この文人画家の回顧展がみたいみたいと言いつづけているから、ミューズが微笑んでくれたのかもしれない。

今年の後半はここ数年重点鑑賞絵師にしている池大雅(1723~1776)の当たり年。9月、板橋区美の‘実況中継 EDO’展で‘比叡山真景図’(練馬区美 拙ブログ10/9/16)と‘児島湾真景図’(細見美)に出会い、つい先だっても出光美で‘秋社之図屏風’(10/16)など10点が目を楽しませてくれた。

今回は9点が横長あるいは四角の画面。掛軸より屏風や図巻のほうがやはり大雅のあこがれた中国の山々や川の情景をゆったり、そしてしみじみ感じることができる。いずれも墨の調子は穏やかでところどころ薄い色で着色された画面にはやわらかな雰囲気が漂っている。‘瀟湘勝概図’は3年前の‘対決 巨匠たちの日本美術’でもみたが、うす黄色や藍の点描をじっくりながめていた。

‘瀟湘八景’がとてもシンプルに表現された‘東山清音帖’に魅了された。これまで数点みたことがあるが、全部みるのははじめて。お気に入りは‘洞庭秋月’。細い横線で表されたさざ波のなか体を横に倒して笛を吹く男に心が強く揺すぶられる。また、どこか長沢芦雪の絵のような抽象性を感じさせる‘江天暮雪’にも足がとまる。

‘曲江行楽図巻’はペン画風の絵。ここでは俯瞰の視点から四方にながれていく川の景観と川岸を進む旅人や釣り人が描かれている。対象を多く描き込まず空間を大きくとるおおらかな筆使いがなんともいい。

大谷コレクションの目玉のひとつ‘洞庭赤壁図巻’は過去2回みたが、07年に解体修理されたのは知らなかった。久しぶりの対面と思ったら、修理後の初披露だった。左部分の横に広がる緑や青のまるっこい木々とそれに囲まれるようにして建つ家々や楼閣の壁の朱色が目を虜にする。単眼鏡で楼閣の周りを行き交う人々や馬を発見、こんなに小さくよく描けるものである。これほど腹の底から楽しめる風景画はそうない。

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2011.10.16

出光美のゆるーい文人画展!

3176_2               池大雅の‘瓢鯰図’

3177_2     池大雅の‘秋社之図屏風’(右隻の部分)

3178_2     与謝蕪村の‘山水図屏風’(重文)

3175_2            浦上玉堂の‘雙峯挿雲図’(重文)

出光美では現在、とてもゆるーい展覧会が行われている。‘大雅・蕪村・玉堂と仙厓ー笑いのこころ’展(9/10~10/23)。

これは日本の美・発見シリーズの第5弾。1~4弾は皆勤してないが、これは見逃さないようにしていた。お目当ては与謝蕪村(1716~1783)の‘山水図屏風’(重文 
1763年)。出光は文人画のいい絵があることで有名だが、10数年前これらがどっと公開されたとき、運悪く展示替えでみれなかった。その後MIHO MUSEUMであった回顧展(08年)などでみる機会はあったのに、いずれもすれ違い。

やっと会えたのでじっくりみた。画像は右隻だが、左隻に比べるとこちらのほうに惹かれる。山水画を数多く体験してきたが、山々に心がこれほど強くむかうのはそうない。中央と右に量感のある山々が斜めの方向に大きなビスケットを並べるように描かれている。真ん中の向こうにはこれまた形のいい山が霞のなかにそびえている。期待値以上にいい絵だった。

会場に入ってすぐおもしろい絵が登場する。池大雅(1723~1776)の‘瓢鯰図’。これははじめてみた。じっとみてしまうのは下のなんとも可愛い鯰。瞬間的に鯰というより大山椒魚をイメージした。これなら鯰のゆるキャラとしてすぐデビューできる。

10点ある大雅のなかで嬉しい再会があった。それは5年前京博であった‘18世紀 京都画壇の革新者たち’展で楽しんだ‘秋社之図屏風’。これは右隻で祭りに心ウキウキの唐子たちが門からどどっと出ているところ。大雅の描く人物は大人でも子どもでもみなまるっこくてやさしい顔をしている。この人物描写をみていると気分は自然とゆるゆるモードになる。

今回の展覧会ですごくいいなと思うことが二つある。ひとつは展示作品は全点会期中でていること。所蔵品だからできることとはいえ、展示替えなしははじめてのことではないか。100%スッキリ展示(勝手に京博方式と呼んでいる)をやっと実現してくれた。

もうひとつは図録のつくり方。拡大図のところにつけられたキャプションがじつに楽しい。京博で曽我蕭白展(05年)があったとき、狩野博幸さん(現在、同志社大教授)は図録の表紙に‘円山応挙が、なんぼのもんぢゃ!’と入れて江戸絵画ファンをハッとさせた。この主催者による遊び心にとんだフレーズづくりが板橋区美に飛び火し、そして出光美にも浸透してきた。

巧みな表現に絵をみるのがいっそう楽しくなったものをいくつか紹介したい。
★上の‘秋社之図’では ‘浮かれ騒いでコロコロ、おもちゃの仔馬もコロコロ’ 
★大雅の‘江上笛声図’では ‘ピョーン、、、、水面を揺らす笛の音’
★仙厓の‘百寿老画賛’では ‘踊る酔狂、笑う酔狂’

浦上玉堂(1746~1820)も重文2点を含む15点を展示する豪華なラインアップ。お気に入りは大作で見ごたえがある‘雙峯挿雲図’。しばらく息を呑んでながめていた。‘笑い’のこころとくれば、これはそのまま仙厓の絵。お馴染みの‘鯛釣恵比須画賛’などが心を和ませてくれる。

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2010.09.16

池大雅の‘比叡山真景図’とビッグなオマケ!

1961_2     池大雅の‘比叡山真景図’

1962_2     稲垣稔次郎の壁掛‘ソング・オブ・グリーン’

1963_2        稲垣稔次郎の‘木綿地型絵染壁掛 虎’

1964_2     稲垣稔次郎の‘一力の舞妓’

練馬区立美で池大雅(1723~76)が描いた掛け軸‘比叡山真景図’が半世紀ぶりに公開されるという記事が8/29の朝日新聞に載った。展示期間は9/14~10/24、回顧展の開催を心待ちにしている池大雅の絵がみられるとあらば、たとえ1点でも出かけるしかない。昨日さっそくみてきた。

この絵はあの‘柳生武芸帳’で知られる小説家、五味康祐が所蔵していたものだという。遺族から寄贈された練馬区美は2年かけて修復しこのたび公開にこぎつけた。この記事だけで足が動いたので、同時期に‘稲垣仲静・稔次郎兄弟展’が行われていることはTakさんの感想記を読むまで知らなかった。

掛け軸は企画展が終了する部屋の次に1点だけ展示してある。一目みてこれはいい絵だなと思った。たぶん、同じ感想をもたれる方が多いだろう。左が比叡山でその向こうが琵琶湖。水墨画だがところどころ薄い朱がみえる。手前から琵琶湖までには霧が木々を縫うように横にながくのびており、その穏やかな光景が心を深く静めてくれた。

池大雅の絵をみるのが目的だったから、すご帰ってもいいのだが、折角だから‘稲垣兄弟展’もみた。25歳の若さで亡くなった稲垣仲静(ちゅうせい、1897~1922)の日本画‘軍鶏’と‘太夫’(ともに京近美)を昔から知っているが、稲垣や岡本神泉、甲斐庄楠音らが描くデロリ系の女性画は好みでないので、いつもさらっとみて終わり。

この兄の絵に比べると5歳年下の弟、稔次郎(としじろう、1902~1963)の型絵染による着物、壁掛、屏風にはぐっと惹きこまれる。東近美の工芸館に2年前まではよく通っていたが、ここで稔次郎の着物や紙本額面をちょくちょくみていた。今回、予期せぬことに多くの作品を体験できたのは大きな喜びである。

ずいぶんシュールな感性に目を見張ったのが‘ソング・オズ・グリーン’。大勢の細長い人間と木の枝々がダブルイメージになっており、木全体が大きく左右に揺れている。下の階段をのぼって木のなかに入った人々はまん中あたりの幹からでてきて、上の枝に飛び移ったり、下へジャンプしたりしている。これは楽しい絵をみた!

虎をモティーフに使った3点組の壁掛の前に長くいた。画面のまわりに描かれた意匠は平板的なのに、中央の虎は対称性を少しズラし、奥行き感をもたせている。持って帰りたいような衝動に襲われた。欲しいなぁー!こういう壁掛。

京都の風景や風物を描いたシリーズにとても魅せられる。‘北野天神の市’、‘八坂の塔’、‘伏見稲荷’、‘一力の舞妓’、‘祇園祭’、‘夜の街’、‘桂川の風趣’などなど、どれも動きのある人物描写、豊かな色彩感覚が発揮された色使いが目を楽しませてくれる。ビッグなオマケに遭遇したから、足取りも軽い。

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2010.09.06

東博平常展に予期せぬ追っかけ作品が!

1928_3              与謝蕪村の‘山水図’

1929_3               浦上玉堂の‘山中結慮図’(重文)

1926_3             富岡鉄斎の‘二神会舞’

1927_3      今村紫紅の‘熱国之巻(朝之巻)’(重文、部分)

東博の平常展へ定期的に出かけているが、各部屋に対する気持ちの入り方は少しずつ変わってきている。今も熱い視線を送り続けているのは浮世絵コーナー、次が書画、そのあとが1階の近代美術といった具合。

この順番は出品作のなかに占める初見のものの多少によっている。浮世絵の場合、もう6年近く通っているのにまだみてないものがいっぱい登場してくる。1ヶ月弱で展示替えになるが、次はどんなサプライズがあるか?これを楽しみにせっせと足を運んでいる。

浮世絵に比べると、同じ2階のすぐ近くに展示されている書画は鑑賞済みの絵が多いのでだいぶ余裕のゆうちゃん。ところが、今回の展示(8/10~9/20)に思ってもいなかった追っかけ画があった。それは与謝蕪村(1716~1783)の43歳ころの作、‘山水図’。

昨年の10月に展示された‘山野行楽図屏風’(重文)はこれまで2度くらいお目にかかったのに、‘山水図’は6年間縁がなかった。これは蕪村が好みの南宋画を自分流に描いた絵。岩はごつごつしており、濃い墨で描かれた木々とともにぐっと押しでてくる感じだが、うす青でさらっと描かれた遠景の山に目をやるとすこし気持ちが和らぐ。

隣にある同じ文人画の浦上玉堂(1745~1820)の絵は久しぶりにみた。前回の展示は06年で、この年千葉市美で開催された‘浦上玉堂展’にも出品された。こういう戯画っぽい絵は‘筆に慣れれば自分にも描けそう’とつい思ってしまう。このあたりが素人のあつかましさ。南画は奥が深く、くだけたなかに見る者の心を揺すぶるものが漂ってこなければ絵にならない。玉堂の絵を時どきみたくなるが、いいタイミングで遭遇した。

1階の近代美術の部屋になかなかいい絵がでていた(展示は9/12まで)。ユーモラスな人物描写が魅力の富岡鉄斎の‘二神会舞’、河鍋暁斎の‘山姥’、鏑木清方の‘黒髪’(拙ブログ07/10/30)、そしてぞっこん惚れている今村紫紅の‘熱国之巻’。‘山姥’は4年ぶりの展示だが、ほかの絵はだいたい2年サイクルで登場。

‘熱国之巻’は嬉しいことに‘朝之巻’と‘夕之巻’(09/7/17)は一年おきに展示される。昨年インドを旅行したのでこの絵に描かれている牛や頭に物をのせて歩く人々に見入ってしまう。この絵の見所のひとつは金粉の装飾。前田青邨の‘唐獅子図’同等、場面の展開に切れ目なく使われた金粉に目を奪われる。

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2009.03.22

与謝蕪村の‘夜色楼台図’が国宝に!

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文化審議会によって指定される国宝、重文の美術品をいつもチェックしているわけではないが、今年の作品リストは感慨深かった。で、その中から注目の作品を4点ピックアップした。
(国宝)
★与謝蕪村の‘夜色楼台図’:兵庫県、個人(上の画像、拙ブログ08/5/6
(重文)
★伊藤若冲の‘菜蟲譜’:栃木県佐野市立吉澤記念美(真ん中、部分)
★長次郎の‘ニ彩獅子’:楽美術館(下)
★光悦の‘赤楽茶碗 銘乙御前’:東京都、個人(08/10/8

蕪村の国宝の絵はこれで2点になった。もう一つは
★‘十宜図’:川端康成記念会(05/6/19

同じ文人画の池大雅の作品で国宝に指定されているのは3点ある。
★‘十便図’:川端康成記念会
★‘楼閣山水図図屏風’:東博(07/1/8
★‘山水人物図襖絵・山亭雅会図’:和歌山、遍照光院

1999年、栃木県葛生町の吉澤家で発見された若冲の‘菜蟲譜’(さいちゅうふ)が重文になったのは喜ばしい。3年前、京博ではじめて見たときは鮮やかな色で描かれた野菜や果物、虫、ユーモラスな蛙が目を楽しませてくれた(06/4/7)。若冲のほかの重文作品は次の3点。

★‘鹿苑寺大書院障壁画’:鹿苑寺(金閣寺)(07/5/16
★‘仙人掌群鶏図’(さぼてんぐんけいず):西福寺
★‘蓮池図’:西福寺

若冲には国宝の絵がないの?と思っておられる方がいるかもしれないが、ご心配なく。最高傑作‘動植綵絵’(06/3/2807/5/15)は天皇家のもの(御物)だったから国宝の指定を受けないだけで、狩野永徳の‘唐獅子図屏風’同様、まぎれもなく国宝。

長次郎作品で重文は今回指定された‘ニ彩獅子’のほかに3点ある。
★‘黒楽茶碗 銘大黒’:個人(06/10/31
★‘黒楽茶碗 銘俊寛’:三井記念美(08/7/9
★‘赤楽茶碗 銘無一物’:頴川美

人気の光悦は現在ある国宝(1点)・重文(4点)に名碗‘乙御前’が加わった。
★‘白楽茶碗 銘不二山’:国宝 サンリツ服部美
★‘黒楽茶碗 銘雨雲’:三井記念美
★‘黒楽茶碗 銘時雨’:名古屋市博(08/10/8
★‘赤楽茶碗 銘加賀’:相国寺(08/7/9
★‘赤楽茶碗 銘雨峰’:畠山記念美(06/1/11

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