2018.04.21

カラリスト 池大雅!

Img_0002     ‘四時烟景図 秋’(18世紀)

Img_0003          ‘帰去来図’(18世紀)

Img_0001     ‘蘭亭曲水図屏風’(重文 部分 1763年 静岡県美)

Img     ‘垂柳報芳菲図’(1766年)

池大雅の7年後に生まれた曽我蕭白(17301781)が35歳のとき描いた‘群仙図屏風’、はじめてお目にかかったときそのどぎつい色彩表現に200%驚いた。龍に乗った男の青の衣装、童子やブロテスクな蝦蟇仙人の真っ赤な唇、そして黄色い鶴。

蕭白が発したこの強烈な色彩に対し、大雅の色は柔らかくて綺麗。まるで近代の水彩画をみているよう。日本の絵師は皆中国の絵画をお手本にするから水墨画が基本、これにどのくらい色彩を散りばめるかは絵師の色彩表現への思い入れで決まる。

大雅は若いときから意欲的に色を表現してきた。三十歳のころの‘四時烟景色図 秋’には大雅のカラリストぶりがよくでている。柳を薄青で描き舟や家は淡い朱色。そして遠くの草木は薄緑。世の中に多く存在する日曜風景画家ならこんな色合いの水彩画は得意かもしれない。

のどかな田園の風景を描いた‘帰去来図’のやさしい色使いにも心が和む。こういう画題だとほかの絵師なら色彩を使ってもせいぜい薄緑のグラデーション、大雅は3倍も4倍もカラフル。だから、お手本の枠をこえ自然のなかで自由に生きる陶淵明の心情をそのまま画面のなかにうつしとっている。

蕭白同様、大雅も赤のもっている力をよく心得ている。静岡県美が所蔵する自慢の大雅作品‘蘭亭曲水図屏風’では、部屋にある長い台の赤が美しいアクセントを放っている。また、‘垂柳報芳菲図’でも庵でおしゃべりする高士たちが囲んでいる台の赤にまず視線が向かう。

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2018.04.20

心温まる池大雅の人物描写!

Img_0001     ‘五百羅漢図’(重文 18世紀 萬福寺)

Img_0003     ‘東山清音帖 洞庭秋月’(重文 18世紀)

Img     ‘柳下童子図屏風’(重文 18世紀 京都府)

Img_0002     国宝‘十便図 釣便図’(1771年 川端康成記念会)

画家への関心がひとつの作品との出会いによって一気に高まることがある。池大雅(1723~1776)の場合、川端康成が所蔵していた国宝‘十便図’をみたことが決定的となり、大雅とは離れられなくなった。

京博の展示(通期)では最後の部屋に与謝蕪村(1716~1783)の‘十宜図’とペアで飾ってある。でているのは1組だけ、期間を10にわけて全部みせることになっている。十便図は‘課農便図’をみたが、最も気に入っている‘釣便図’との対面はならなかった。もうでたか、あるいはこれからかもしれない。

今回長くみていたのは普段は萬福j寺にある‘五百羅漢図’、2年前東博であった禅展に出品されたが、このときみたのは展示替えのため4幅のみ。残りを含め8幅がみれたので最高の気分。愛嬌のある丸顔の羅漢たちが象や虎などに乗って集結。波の描き方も柔らかく心が鎮まる。

瀟湘八景を扇面に描いた‘東山清音帖’では‘洞庭秋月’がいい。舟に乗った男は体をちょっと傾けて横笛を吹いている。この微妙に体を動かす表現が心を揺すぶる。すぐにも瞬間移動して湖のほとりにかけつけたくなる。

‘柳下童子図屏風’を久しぶりにみた。橋の真ん中にいる子どもの姿に自然と肩の力が抜ける。一人は腹這いになって小魚やエビを捕ろうと夢中になっているが、どうやらそれが叶わないらしい。この童子の顔も羅漢同様丸々している。こういう人物表現をみると池大雅は本当に心根が優しかったのだろう。


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2018.04.19

待望の‘池大雅展’!

Img     ‘瀟湘勝概図屏風’(重文 18世紀)

Img_0002     ‘洞庭赤壁図巻’(重文 1771年)

Img_0003     ‘浅間山真景図’(1760年)

Img_0001     ‘嵐峡泛査図屏風’(18世紀)

京博で開催されている‘池大雅展’(4/7~5/20)をみてきた。長いこと実現しなかった池大雅(1723~1776)の回顧展にやっと遭遇した。85年ぶりのことらしい。今回出品されるのは150点。5/2からの後期に展示されるのものがあるので全部はみれなかったが、見ごたえのある掛幅、屏風、襖絵が次々とでてくるので高揚しっぱなしだった。

過去に大きな回顧展は体験しなかったが、3点の国宝やいくつもある重文の作品は幸運にもほとんどみることができた。そういう鑑賞が重なって池大雅という日本の文人画家のイメージができあがった。とくに惹かれるのが愛嬌のある人物描写と山々のもこもことした形。

そして、風景画では点描画法と印象派を思わせる明るい色彩表現が強く印象に残る。同時代を生きた与謝蕪村(1716~1783)が晩年、深い精神性をみせる画風に到達したのに対し、池大雅は最後までカラリストの才能を随所に発揮し明るくのびのびとした表現を極めた。まさに比類ない天才だった。

瀟湘八景を一隻に全部描いた‘瀟湘勝概図屏風’はお気に入りの一枚。7年前、ニューオータニ美であった‘池大雅ー中国へのあこがれ’ではじめてお目にかかり大変魅了された。構図のつくり方がじつに巧みなのでうす緑や淡い橙色が目に沁みる木々の変化をゆったりした気分で追っかけられる。

風景画のなかで最も心を打たれるのが‘洞庭赤壁図巻’、これは大谷コレクションだったはずだが京博蔵となっていた。ニューオータニ美が手放したのかもしれない。青や緑で彩られたもこもこした木々の塊が横に広がる様、そして家の壁の朱色をアクセントのように組み合わせる色彩表現。どこまでものどかで軽やかな風景、つい隅から隅までみてしまう。

生涯にわたって日本各地を旅した大雅、‘浅間山真景図’は38歳のとき友人と一緒に白山、立山、浅間山を登った体験をもとに描かれたもの。これをみるといつもトルコのパムッカレでみた真っ白な石灰棚を思い出す。また、細胞膜でかこまれた細胞の集まりにもみえてくる。

今回大きな収穫だったのが‘嵐峡泛査図屏風’、大雅にこんな琳派風の絵があったの?!という感じ。光琳様式を思わせる渓流の曲線に目が点になった。木がみな左側に傾き、筏はリズミカルに川を下っている。画面にすいこまれるように長くみていた。

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2015.07.02

待望の‘田能村竹田展’!

Img_0001           ‘梅花書屋図’(重文 1832年)

Img           ‘山陰訪戴図’(1826~30年)

Img_0002     ‘琵琶行図’(部分 1833年)

Img_0003          ‘春園富貴図’(1801~1818年)

帝国劇場の隣にある出光美はサントリー美同様、今年から来年にかけて訪問する回数が多くなる美術館。2月‘小杉放菴展’を楽しんだが、回顧展の第二弾は‘田能村竹田展’(6/20~8/2)。

田能村竹田(1777~1835)の作品が出光に沢山あることは昔から知っているが、これまでは散発的な鑑賞にとどまっていた。だから、18年ぶりに開かれる回顧展は竹田に最接近する絶好の機会となった。作品は全部で54点でている。頁替えは数点あるが会期中いつ行ってもすべてみられる。こういう展示方法は美術館への好感度が増す。

竹田の絵は中国の文人画を踏襲している。そのため縦長の掛け軸が多い。最初に展示されているのが代表作の‘梅花書屋図’、亡くなる3年前の作品。縦に長い画面だから視線は当然下から上にあがっていく。S字をふたつくらい意識するともこっとした山に遭遇する。

この絵で圧倒的な存在感をみせているのは騾馬に乗った3人の旅人が進んでいく道を覆うようにのびる木々、丁寧に描かれた細い枝が変幻自在に曲がる姿はまるで生き物が小さく暴れているような感じ。このちくっと痛みを覚えるような木の動きが穏やかな山村風景にうまく溶け合っているのがこの絵の最大の魅力。

もう一点画面に惹き込まれるのがやはり木が主役になっている‘山陰訪戴図’、雪が降り積もった切り立った山々を背景にして力強く立つ木が雄々しく縦にバランスよく配置されている。

池大雅(1723~1776)の愛嬌のある人物像を彷彿とさせる‘琵琶行図’の前にも長くいた。そして、波を表す小さな山形が繰り返されるのをみてふと思い出したのが今村紫紅の‘熱国之巻’に描かれた海、紫紅は文人画に惹かれていたから大雅や竹田の画風からも影響を受けたにちがいない。

異色の作品が一枚あった。それは極彩色で描かれた‘春園富貴図’、中国の絵にでてくるモチーフ、牡丹と太湖石がうすピンクと強い緑青で彩られている。描くのが難しいといわれる牡丹をこれほど質感豊かに表現できるのだから竹田の画技は抜きん出ている。

待ち続けた田能村竹田の回顧展、それが叶い満ち足りた気分で館を後にした。

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2015.03.29

生誕300年 ‘若冲と蕪村’! 蕪村

Img     ‘蜀桟道図’(1778年)

Img_0002     ‘鳶・鴉図’(重文 18世紀 京都・北村美)

Img_0003     ‘風虎図屏風’(18世紀)

Img_0001     ‘仔犬図襖’(18世紀)

今年はサントリー美へ足を運ぶことが多くなりそうだが、春の楽しみは‘若冲と蕪村’(3/18~5/10)、二人は同じ年1716年に生まれた。 今年は生誕300年の節目の年。豪華なコラボ展を思いついたのはサントリー美と滋賀県にあるMIHO MUSEUM。東京の後、MIHOでの開催は7/4~8/30

これまで二人の回顧展は運よく体験しているので、今回はプラスαとどのくらい会えるかで満足度の度合いが決まる。一番期待していたのは昨年92年ぶりにシンガポールで発見されたという与謝蕪村(1716~1784)の‘蜀桟道図’。今も残っている蜀の桟道の跡を映像でみたことがあるが、足がすくむような険しい道。

馬と人物が進むこの桟道を下から追っかけると中央で途切れる。その上にでてくる道とはどこでつながっているのか?画面に立体感を強く感じるのは道がもこっと盛り上がった山をぐるぐるまわりながら上へあがっているから。そして、ところどころにみえる鮮やかな胡粉の白が視線をとめる。何度もお目にかかりたい傑作だが、これを所蔵しているのはシンガポールの会社。残念なことだがこれも海外流出のひとつと割り切るしかない。

再会を楽しみにしていたのが‘鳶・鴉図’、この絵は本当に心を揺すぶる。鳶は激しく吹く風のなか木の枝にとまり、二羽の鴉はしんしんと降る雪に体を寄せ合うようにしてじっとしている。この絵といい‘夜色楼台図’といい蕪村が晩年にたどり着いた描き方は日本人の心情にはぴったりくる。蕪村はやっぱりスゴイ絵師!

‘風虎図屏風’にはちょっと驚いた。蕪村にこんな虎の絵があったのかという感じ。もう一つのサプライズはMIHO MUSEUMであった回顧展(2008年)でもみた‘仔犬図襖’、この仔犬は円山応挙や長沢蘆雪が描く仔犬とまったく変わらない。肩の力が自然にぬけしばらくいい気持でみていた。

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2013.11.11

東博の‘描かれた風景’展で全国旅行!

Img      風景画に描かれた名所(拡大で)

Img_0001     司馬江漢の‘総州利根河今井渡’(江戸時代・19世紀)

Img_0003               池大雅の‘那智濺瀑図’(江戸時代・18世紀 東博)

Img_0004     谷文晁の‘彦山真景図’(江戸時代・1815年 東博)

東博で二度目の‘京都展’を見終わったあと、本館に寄り所蔵作品を軽くみた。ほかの美術館で開催されている展覧会へも急がなくてはならないから、1階はパスして2階の江戸絵画や浮世絵がお楽しみの中心。通常はこれで退館するのだが、このたびは浮世絵が展示してある部屋の前の特別1室・2室で興味深いオマケに遭遇した。

‘描かれた風景ー憧れの真景・実景への関心ー’(10/28~12/8)というタイトルのついたミニ企画展、出品作38点は大半東博が所蔵するものだが、個人や九博蔵のものもまじっている。惹かれる作品があったので目にしっかり焼きつけようと思っていたら、薄い冊子風の図録(600円)がちゃんと用意されていた。これは気が利いている。

江戸時代、人気の名所や人々にとってなじみの深い風景は池大雅や谷文晁などの画才抜群の絵師や浮世絵師たちによって数多く描かれた。今回でている作品に描かれた名所は図録に掲載された地図(拡大)でみてわかるようにかなり広い範囲にわたっている。

旅好きだった池大雅が絵にしたところは東北の松島、浅間山、熊野の那智の滝。‘浅間山真景図’は体験済みだが、松島と那智の滝は初見。一番長くみていたのは那智の滝、大雅の描くうす緑と朱で彩られたもこもこ山をみるといつも気が休まるが、そのボリューム感たっぷりの山の真ん中からドラム缶に穴が開いたように大量の水が流れ落ちている。隣に飾られている文晁の描いた那智の滝のほうが実景に近いが、絵としての魅力は大雅のほうに軍配が上がる。

文晁の大きな絵‘彦山真景図’は迫力満点、福岡県と大分県にまたがる英彦山はまだ縁がないが、山々はこの絵のように濃い墨で強く印象づけるほどインパクトのある姿をしているのであろうか、近くの耶馬溪は一度訪問したことがあるので、英彦山とも対面してみたい。

名所図で欠かせないのが霊峰富士山が描かれたもの、4点でている。そのなかで足がとまったのが司馬江漢の絵。富士山を遠くにとらえている場所は江戸川区にある江戸川今井橋あたり。江戸川にこんなに多くの帆船が浮かんでいた?見る者を喜ばすためにこういう構成にしたのだろう。

みている時間は長くなかったが旅心を刺激するいい企画展だった。学芸員のなかに旅好きがいるのかな?

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2013.08.07

一回だけの‘谷文晁展’!

Img_0003_2        ‘青緑山水図’(1822年 東京富士美)     

Img_0004_2             ‘米法山水図’

Img_2             ‘弁材天図’

Img_0001_2         ‘富嶽図屏風’(上野記念館)

サントリー美で行われている‘谷文晁展’の後期(7/31~8/25)をみてきた。谷文晁(1763~1840)の大規模な回顧展ははじめてのことだし、注目していた展覧会であることは確かにそうなのだが、一回で十分ということにしていた。で、図録を入手することを主たる目的としてさらさらとみた。

文晁の山水画には北宋風の山が垂直にきり立ってる絵と池大雅を思わせるもこもこ山の二つがあるが、好みとしては黒で量感豊かに描かれたもこもこ山のほうに惹かれている。この黒が強いインパクトを持っている山水で一番のお気に入りは東博にある‘彦山真景図’。‘米法山水図’は板橋区美で6年前にあった‘谷文晁とその一門’で遭遇し魅了された作品。

東京富士美はまだ訪問してないが、そのコレクションは西洋絵画から日本画まで幅が広い。文晁のこんな緑と青が強く印象づけられる山水画を持っていたとは。北宋タイプは板橋区美でも数点みたが、この絵が最もいいかもしれない。

今回の収穫は‘弁財天図’、参考として酒井抱一の‘妙音天像’の図版があったが、どちらも甲乙つけがたいほどいい出来。この‘弁財天図’は山谷にあった有名な料理屋‘八百善’に伝来したものらしい。文晁は画家であると同時に趣味人、大田南畝、山東京伝、酒井抱一らと文化サークルをつくり八百善で集っていた。

文晁の富士山はこれまで2点ほどみたが、別ヴァージョンの‘富嶽図屏風’も悪くない。静岡県美にあるものは日曜美術館の‘富士山 10選’にとりあげられていたので期待していたが、やはり前期のみの展示だった。惜しいことをしたが、‘大富士山展’(どこかの美術館が企画している!?)があればみる機会があるだろう。

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2012.04.22

目を楽しませてくれる京の画家たち!

3765_2                伊藤若冲の‘月夜白梅図’

3768_2                  伊藤若冲の‘鷹図’

3766_2                    池大雅の‘関羽図’

3767_2     与謝蕪村の‘寒山捨得図’(1781年 重文 文化庁)


千葉市美の蕭白展では最後のコーナーに曽我蕭白と同時代に活躍した絵師たちの絵が展示してあり、目を楽しませてくれる。

数の多いのが伊藤若冲(1716~1800)。前後期でなんと11点。ミニ若冲展をみているよう。前期に展示してあるのは‘月夜白梅図’や‘鷹図’など7点。お気に入りの‘白梅図’は会期中出ずっぱり。この絵を心行くまで楽しむには単眼鏡が欠かせない。花びらの小さな小さな黄色の点やつぼみの根元のえんじ色をいい気分でみていた。

今年は蕭白が大当たり!だから、蕭白の龍や波、そして京劇役者の化粧を連想させる強烈な赤や青が心のなかを占領しているが、もうひとりの人気絵師、若冲の作品も結構楽しんでいる。

ボストン美展では‘鸚鵡図’と‘十六羅漢図’に遭遇したし、府中市美で行われている‘三都画家くらべ展’(5/6まで)でも85年ぶりに登場した‘垣豆群虫図’など4点が姿を現してくれた。まさに江戸絵画の花盛り。

若冲のほかでは池大雅(1723~1776)が4点、与謝蕪村(1716~1784)2点、円山応挙(1733~1795)4点、長澤芦雪(1754~1799)1点。前期に登場した作品で足がとまったのがはじめてみる大雅の‘関羽図’。大雅の描く人物は顔も体も丸々しているのが特徴。強い武将というよりは徳の高い大人物と対面している感じ。

蕪村の‘寒山捨得図’をみるのは二度目。4年前、MIHO MUSEUMでみたときと違いこの度はどうでもいいことだが、箒(ほうき)をもっている捨得が民主党の輿石幹事長にみえて仕方がなかった。

千葉市美が所蔵している応挙作品のなかでは‘秋月雪峡図屏風’(後期)が一番のお気に入り。これまで図版がなく残念な思いをしていたが、やっとこの絵が載った図録を手に入れることができた。これもこの展覧会の収穫のひとつ。

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2011.11.07

ニューオータニ美の‘池大雅展’に感激!

3239_2     ‘瀟湘勝概図屏風’(重文 右隻)

3241_2     ‘東山清音帖・洞庭秋月’(重文)

3242_2     ‘曲江行楽図巻’(部分)

3240_2     ‘洞庭赤壁図巻’(重文 部分)

ニューオータニ美(ホテル内)で行われている‘池大雅展’(10/18~11/20)に大変感激した。作品の数は12点と小規模の回顧展なのだが、このなかには重文が4点あり名品が揃っている。この文人画家の回顧展がみたいみたいと言いつづけているから、ミューズが微笑んでくれたのかもしれない。

今年の後半はここ数年重点鑑賞絵師にしている池大雅(1723~1776)の当たり年。9月、板橋区美の‘実況中継 EDO’展で‘比叡山真景図’(練馬区美 拙ブログ10/9/16)と‘児島湾真景図’(細見美)に出会い、つい先だっても出光美で‘秋社之図屏風’(10/16)など10点が目を楽しませてくれた。

今回は9点が横長あるいは四角の画面。掛軸より屏風や図巻のほうがやはり大雅のあこがれた中国の山々や川の情景をゆったり、そしてしみじみ感じることができる。いずれも墨の調子は穏やかでところどころ薄い色で着色された画面にはやわらかな雰囲気が漂っている。‘瀟湘勝概図’は3年前の‘対決 巨匠たちの日本美術’でもみたが、うす黄色や藍の点描をじっくりながめていた。

‘瀟湘八景’がとてもシンプルに表現された‘東山清音帖’に魅了された。これまで数点みたことがあるが、全部みるのははじめて。お気に入りは‘洞庭秋月’。細い横線で表されたさざ波のなか体を横に倒して笛を吹く男に心が強く揺すぶられる。また、どこか長沢芦雪の絵のような抽象性を感じさせる‘江天暮雪’にも足がとまる。

‘曲江行楽図巻’はペン画風の絵。ここでは俯瞰の視点から四方にながれていく川の景観と川岸を進む旅人や釣り人が描かれている。対象を多く描き込まず空間を大きくとるおおらかな筆使いがなんともいい。

大谷コレクションの目玉のひとつ‘洞庭赤壁図巻’は過去2回みたが、07年に解体修理されたのは知らなかった。久しぶりの対面と思ったら、修理後の初披露だった。左部分の横に広がる緑や青のまるっこい木々とそれに囲まれるようにして建つ家々や楼閣の壁の朱色が目を虜にする。単眼鏡で楼閣の周りを行き交う人々や馬を発見、こんなに小さくよく描けるものである。これほど腹の底から楽しめる風景画はそうない。

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2011.10.16

出光美のゆるーい文人画展!

3176_2               池大雅の‘瓢鯰図’

3177_2     池大雅の‘秋社之図屏風’(右隻の部分)

3178_2     与謝蕪村の‘山水図屏風’(重文)

3175_2            浦上玉堂の‘雙峯挿雲図’(重文)

出光美では現在、とてもゆるーい展覧会が行われている。‘大雅・蕪村・玉堂と仙厓ー笑いのこころ’展(9/10~10/23)。

これは日本の美・発見シリーズの第5弾。1~4弾は皆勤してないが、これは見逃さないようにしていた。お目当ては与謝蕪村(1716~1783)の‘山水図屏風’(重文 
1763年)。出光は文人画のいい絵があることで有名だが、10数年前これらがどっと公開されたとき、運悪く展示替えでみれなかった。その後MIHO MUSEUMであった回顧展(08年)などでみる機会はあったのに、いずれもすれ違い。

やっと会えたのでじっくりみた。画像は右隻だが、左隻に比べるとこちらのほうに惹かれる。山水画を数多く体験してきたが、山々に心がこれほど強くむかうのはそうない。中央と右に量感のある山々が斜めの方向に大きなビスケットを並べるように描かれている。真ん中の向こうにはこれまた形のいい山が霞のなかにそびえている。期待値以上にいい絵だった。

会場に入ってすぐおもしろい絵が登場する。池大雅(1723~1776)の‘瓢鯰図’。これははじめてみた。じっとみてしまうのは下のなんとも可愛い鯰。瞬間的に鯰というより大山椒魚をイメージした。これなら鯰のゆるキャラとしてすぐデビューできる。

10点ある大雅のなかで嬉しい再会があった。それは5年前京博であった‘18世紀 京都画壇の革新者たち’展で楽しんだ‘秋社之図屏風’。これは右隻で祭りに心ウキウキの唐子たちが門からどどっと出ているところ。大雅の描く人物は大人でも子どもでもみなまるっこくてやさしい顔をしている。この人物描写をみていると気分は自然とゆるゆるモードになる。

今回の展覧会ですごくいいなと思うことが二つある。ひとつは展示作品は全点会期中でていること。所蔵品だからできることとはいえ、展示替えなしははじめてのことではないか。100%スッキリ展示(勝手に京博方式と呼んでいる)をやっと実現してくれた。

もうひとつは図録のつくり方。拡大図のところにつけられたキャプションがじつに楽しい。京博で曽我蕭白展(05年)があったとき、狩野博幸さん(現在、同志社大教授)は図録の表紙に‘円山応挙が、なんぼのもんぢゃ!’と入れて江戸絵画ファンをハッとさせた。この主催者による遊び心にとんだフレーズづくりが板橋区美に飛び火し、そして出光美にも浸透してきた。

巧みな表現に絵をみるのがいっそう楽しくなったものをいくつか紹介したい。
★上の‘秋社之図’では ‘浮かれ騒いでコロコロ、おもちゃの仔馬もコロコロ’ 
★大雅の‘江上笛声図’では ‘ピョーン、、、、水面を揺らす笛の音’
★仙厓の‘百寿老画賛’では ‘踊る酔狂、笑う酔狂’

浦上玉堂(1746~1820)も重文2点を含む15点を展示する豪華なラインアップ。お気に入りは大作で見ごたえがある‘雙峯挿雲図’。しばらく息を呑んでながめていた。‘笑い’のこころとくれば、これはそのまま仙厓の絵。お馴染みの‘鯛釣恵比須画賛’などが心を和ませてくれる。

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