2015.11.05

久隅守景の‘鷹狩図’は風俗画の傑作!

Img_0001      ‘鷹狩図屏風’(部分 17世紀 日東紡績)

Img     ‘四季耕作図屏風’(部分 17世紀)

Img_0003     ‘賀茂競馬・宇治茶摘図屏風’(部分 重文 17世紀 大倉集古館)

Img_0002     ‘許由巣父図屏風’(17世紀 東博)

サントリー美で開催されている‘久隅守景展’は今日から後期の展示、早速みてきた。今回のお目当てはチラシで大変興味をそそられた‘鷹狩図’。手元にある久隅守景に関連する本にこの絵は載っているのだが、色がついてるのはその一部だけ、だから、手に入れたチラシをみて鑑賞欲を強く刺激されていた。

これは八曲一双の大きな屏風、食い入るようにみてしまうのは鷹匠たちが鷹を使って鳥を捕まえる場面、緊迫感があり獲物を追っかけて人、鷹、犬が一体となり機敏に動く様子が濃彩で生き生きと描かれている。鷹とか鷲が鳥をよらえるところを絵のしたものは曽我蕭白と河鍋暁斎の作品が記憶に強く残っているが、蕭白のものは鶴が鷹に襲われている。

このときの鶴はまさに悲鳴をあげて逃げている感じ。それに較べると守景の描いた鶴のあわてぶりはだいぶゆるい、それでも鶴が鷹につかまる場面はあまり見たくない。鶴がこういう状況に陥ることは普通はイメージしないから可哀想という気分が先にたち心が痛む。

後期にも‘四季耕作図’は4点でていた。そのなかで思わず足が止まったのが人々が雨宿りをしているところ、すぐ東博にある英一蝶の絵が頭に浮かんだ。こういうわれわれでもよく遭遇する出来事がでてくると絵に対する親しみがわき画面に体がぐっと寄っていく。

‘賀茂競馬・宇治茶摘図’を久しぶりにみた。競馬はスピード感があり、人馬一体となって疾走する姿がカッコよく美しいのでみんなこのイベントが毎年楽しみだったにちがいない。スタート地点ちかくの柵に子どもがのぼりはしゃいでいるのが印象的。

中国の伝説の高士を描いた‘許由巣父図’にでてくる教訓話は絵画が趣味にならなければインプットされなかったこと。物欲がちょっとあったり上昇志向がふつうにあるくらいでないと生きていけないが、許由と巣父にとってはそれすらとんでもないこと。やはり凡人のほうがいい。

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2015.10.15

待望の‘久隅守景展’!

Img     国宝‘納涼図屏風’(17世紀 東博)

Img_0001     ‘鍋冠祭図押絵貼屏風’(17世紀)

Img_0003     ‘四季耕作図屏風’(右隻部分 17世紀 東博)

Img_0004     ‘賀茂競馬図屏風’(部分 17世紀 神奈川・馬の博物館)

先週の土曜日からサントリー美ではじまった‘久隅守景展’(10/10~11/29)は今年行われる日本美術関連の展覧会ではもっとも期待していたもの。チラシには代表作の国宝‘納涼図’のほか鑑賞欲を駆り立てる作品が載っているから、東博の平常展とくらべたら楽しみは大きい。

風俗画はとても好きなので‘納涼図’や初見の‘鍋冠祭押絵貼屏風’を夢中になってみてしまう。瓢箪の下で両親と子供が夕涼みをしている光景を描いた‘納涼図’、視線がながくとどまっているのは右手の肘を筵につけほおずえをついている男の姿。この格好があまりに印象深いので女と後ろにいる子どもの存在感がだいぶ薄くなる。

今回もっともみたかったのはおかめ顔の女が気を引く‘鍋冠祭図’、15年くらい前、サントリー美がホテルニューオータニの近くにあったころ行われた展覧会に登場した。ところが運悪く、展示替えで見逃した。それから、リカバリーを望んでいたが、その機会に恵まれずこんなに時が流れた。そして、奇しくも同じサントリーが主催する久隅守景展でお目にかかれることになった。素直に嬉しい。

これは絶対外せないので前期に出かけたが、もうひとつみたくてしょうがない鷹狩の絵は残念ながら後期の(11/5~11/29)の展示、一回で済ましたいがなかなか思い通りにはいかない。この‘鍋冠祭’、左の女はおもしろい恰好をしている。一体どうして鍋をかぶっているの?しかもひとつではなく五つも?

女たちはいい仲になった男の数だけ鍋を被って神社に参詣する。もし偽って数を申告すると神様からひどく怒られる。女の顔はみえないが鍋が五つもあるから男がほっておかないほどいい女なのだろう。それにくらべみじめなのは器量の悪い右の女、毎年鍋は必要ないかもしれない。

‘四季耕作図’は今回全部で7点でてくる。東博蔵のものはときどき平常展示でお目にかかる。時間は左隻から右隻に流れていて、これは右隻の皆で行っている脱穀などが描かれた部分。こういう農村の風景を目にするのはじつに楽しい。

はじめてみた‘賀茂競馬図’も目に力が入る一枚。後期に登場する大倉集古館にあるものと比べると疾走する馬の数が多く、レースの最後のところで二頭は後ろ足を大きくあげ激しく前のめりになっている。馬の絵はみているとこちらの体もつい左右に動く。

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2013.04.19

山雪の描く龍や虎はゆるキャラ系!

Img_0002_2     ‘松梟竹鶏図’(部分 17世紀 根津美)

Img_0003_2     ‘出山釈迦・龍虎図’(部分 17世紀)

Img_0005_2     ‘龍虎図’(17世紀 佐賀県博)

Img_0001_2     ‘虎図屏風’(部分 17世紀)

今、先週京都でみた‘狩野山楽・山雪展’(3/30~5/12)の余韻に浸っている。この回顧展には特別の思い入れがあった。というのは、‘狩野永徳展’(07年)や‘河鍋暁斎展’(08年)などをみるため京博へ行ったときは必ずアンケート用紙に‘山楽・山雪展の開催を強く期待します’と書いていたから。学芸員がずっと前から構想しそれが漸く実現したのだと思うが、こちらの願いと美術館の心意気がピタッとシンクロしたことは素直に嬉しい。

図録をみていて画面に釘づけになるのはこれまで画業の全貌に接することがなかった山雪(1590~1651)。足がとまった作品で意外な感じがしたものがあった。それはゆるキャラ系の龍や虎。これにびっくりする前に現れたのが梟。この横にらみの梟、すぐにでもゆるキャラ祭りのイベントに出演できそう。根津美の所蔵だが、こんな絵があったとは!

つづいてニヤニヤしたのが龍と虎、これも相当ゆるい。今回みた‘龍虎図’は3点。龍はちっとも怖くない、真ん中に釈迦のいる三幅対に描かれた龍はとても痩せていてそのキャラは赤塚不二夫のニャロメタイプ、これは笑える。また、佐賀にある‘龍虎図’も気の弱そうな龍、こんな迫力のなさで虎に勝てるの?という感じ。

この龍の顔をみていると昨年ボストン美から里帰りした曽我蕭白の‘雲龍図’(拙ブログ12/3/23)が目の前をよぎった。山雪の140年後に生まれた曽我蕭白はひょっとすると山雪が描いたゆるキャラの龍をみたのかもしれない。山雪と蕭白の結びつきはこの龍の顔だけでなく波の表現にもみられる。山雪のDNAは蕭白に受け継がれた!?これは俄然おもしろくなった。

この龍虎図の虎と一番下の単独で描かれた虎は同じような格好で川の水を飲んでいる。この虎だけ描かれたものは何年か前、森美であった展覧会でみたもの。どちらの虎も山楽の虎と比べれば猛獣と猫ちゃんという感じだが、回顧展に展示されている虎のほうがすこし強そう。これに対し、下の虎はなにかでれっとした感じで強さはみじんも感じられない。横をみる目には落ち着きのなさが如実に現れている。この虎をゆるキャラに仕立て子どもたちの人気者にするのは容易いこと。

山雪が生きたのは17世紀、ほかの狩野派が永徳から受け継いだ画風で虎や龍を描いていたのに山雪は人間の内面を映したような表情豊かな龍や虎を描いた。モチーフに合わせて多面的に反応する絵心にただただ感服するばかり。

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2013.04.13

パワーにあふれ工芸的な香りのする山雪ワールド!

Img_0002_2     ‘老梅図襖’(1646年 NY メトロポリタン美)

Img_0001_2     ‘群仙図襖’(1646年 ミネアポリス美)

Img_0003_2     ‘雪汀水禽図屏風’(重文 右隻 17世紀前半) 

Img_0004_2     ‘雪汀水禽図屏風’(左隻)

狩野山雪(1590~1651)に開眼する機会が過去に3回あった。そのひとつが08年NYのメトロポリタン美を訪問したときお目にかかった‘老梅図襖’。日本館のなかに小さな座敷がつくられ奥に飾ってあった。全体が暗く襖に最接近できないので細かいところはよくつかめないが、角々と曲がる太い梅の枝に強い衝撃を受けた。と同時にこんな梅が実際に存在するの?ということに気が回りだした。

この‘老梅図襖’が展示されている。‘妙心寺展’のときにも出品されたが、今回の里帰りには嬉しい演出がなされていた。この襖絵はもともと妙心寺塔頭 天球院にあったもの。そして裏側にあったのが現在ミネアポリス美にある‘群仙図’。アメリカに渡る前までは二つは一緒に所蔵されていた。アメリカの東部と中部にあるこの二つの襖絵がこの展覧会で同時にみれることになった。流石、京博、やってくれました!二つが表裏の状態になるのは50年ぶりという。これが回顧展の醍醐味。

3度目の対面となる‘老梅図’、この度時間かけてみたのは強いインパクトを持った太い幹や枝より細い枝のほう。よくみると脇役の細い枝が横や斜めさらには真下、垂直にのび、これにより画面に奥行きを与え立体的な空間が生まれている。

最後に飾ってある屏風‘雪汀水禽図’は7年前この回顧展が開かれている京博の平常展で遭遇した。このとき山雪のスゴさに体が震えた。再び対面していろんなことが思い浮かぶ。まず、右隻の松に積もった雪の描写、蒔絵箱に施された意匠をみているような感覚になる。とても気になるのが中央の岩。いく層にもできた穴はとてもモダンでシュールな造形、日本の伝統美である装飾性とシュールな前衛表現が一枚の絵のなかに同居しているのに違和感を感じない不思議さ。こんな体験はこれまでなかった。

右隻でも左隻でも目を奪われるのが銀が輝く波、このてかてか光る波の線は柴田是真が得意とした青海波塗をイメージさせる。そして、波のうねりかたはトポロジーの柔らかな曲面をみているよう。こういう装飾性豊かで洗練された波は宗達や光琳の‘松島図’とか加山又造の‘千羽鶴’で表現された波濤と合い通じるものがある。ほとほと感心する山雪の造形感覚、言葉を失ってみていた。

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2013.04.12

サプライズの細密描写! 山雪の‘長恨歌図巻’

Img_2     上巻 ‘玄宗と楊貴妃 情を交わす’

Img_0001_2     上巻 ‘安禄山の乱 長安城壁へ進軍’

Img_0002_2     下巻 ‘蜀の難所 剣閣山の急峻な山道を登る’

Img_0004_2     上の部分

2年前、夢の‘日本美術里帰り展’でとりあげた作品(拙ブログ11/10/4)がなんと実際に京都にやって来た!それは狩野山雪(1590~1651)の描いた‘長恨歌図巻’(江戸初期 17世紀前半)。アイルランドのダブリンにあるチェスター・ビーティー・ライブラリーが所蔵するこの絵の存在を知ったのは今から13年前、朝日新聞の日曜版に‘名画日本史’という連載があり、これが一冊の本になった。

わが家ではこの本は西洋版の‘世界名画の旅’とともに傑作絵画を知るバイブル、だから追っかけ画の鑑賞計画を立てるときはいの一番にここにでている作品をチェックするのがルーチン。‘長恨歌’は裏彩色が施され色彩の鮮やかな絵巻というのでいつか対面したいと願っていた。その絵が今目の前にある。上巻と下巻があり、別々の部屋で会期中展示される。いつ行ってもみられるのでご安心を、長さは両方とも10m、そのため上巻については前後期で巻き替えされ場面が変わる。

体を屈め気味にみることになるのでちょっと腰が痛くなるが、目を見張らされる色彩の鮮やかさや木々とか楼閣とか人物の衣装の精緻な描写をみればそんなことは吹っ飛び玄宗と楊貴妃の悲恋を描いた場面展開を夢中になってみていた。これほど脳を本気にさせる絵巻をみるのは久しぶり。山雪、恐るべし!

上巻に蛍がでてくる。どのあたりかは見てのお楽しみ!前期(3/30~4/21)にでている上巻の場面は安禄山の乱が勃発し、反乱軍が長安城壁を目指して進軍するところまで。風に揺れる赤い旗が印象深く躍動感あふれる馬の描写が見事。後期(4/23~5/12)に出動される方は最後に描かれた楊貴妃が処刑される場面に立ち会える。

下巻の見どころは都を追われた玄宗とおつきのものたちが蜀の難所を進んでいくところ。急峻な山道を登り、崖沿いの桟道を恐る恐るわたっていく。TVの映像で蜀の桟道の跡をみたことがあるが、こんな切り立った崖の横にどうやって道をつくったの?という感じ。足を踏み外して下の川に落ちた者が少なからずいたに違いない。

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2013.04.11

圧巻 ‘狩野山楽・山雪展’!  山楽

Img_2     ‘龍虎図屏風’(重文 右隻 17世紀初 京都・妙心寺)

Img_0001_2     ‘龍虎図屏風’(重文 左隻)

Img_0002_2     ‘紅梅図襖’(部分 重文  17世紀初 京都・大覚寺)

Img_0003_2     ‘文王呂尚・商山四皓図屏風’(部分 重文 右隻 17世紀初 京都・妙心寺)

4年ぶりに京都を訪れ京博で開催中の‘狩野山楽・山雪展’(3/30~5/12)をみてきた。これは日本美術の展覧会では最もみたかったものだから、ワクワク気分で入館した。

出品作は83点、大半が通期の展示で一部、前期(3/30~4/21)と後期(4/23~5/12)に登場する。そのうち山楽(1559~1635)は17点、そして山楽と山雪の合作が2点、残りが山雪(1560~1651)。なにしろはじめて体験する山楽・山雪の回顧展だから収穫は多い。手元に画集がある山楽はまだお目にかかってないのが4点、そして山雪は初見の作品があれもこれも、テンションはどんどん上がっていく。

最初の部屋に山楽の傑作がずらっと並んでいる。これは圧巻!運よく過去みたものだが、こうして一堂に会すると山楽の技量の高さを再認識する。やはり見入ってしまうのが妙心寺にある‘龍虎図’。これは09年東博であった‘妙心寺展’でも公開された。

数多く描かれた龍虎図、獰猛さではこの虎の右にでるものはいない。足を大きくひろげてふんばり顔を横に向け龍を威嚇する姿は迫力満点、こんな怖い虎には危険すぎて近づけない。一方、龍のほうも画面の構成が印象的、その胴体は多くが二つの雲の渦巻と斜めにのびる3本の光の帯に隠れている。稲妻で虎を幻惑させようという作戦か、かっと見開いた目で虎を睨み返している。どちらも強い生命力がまわりの空気をびりびり振動させている感じ。何度見ても惹きこまれる。

‘紅梅図襖’(前期展示)は永徳を彷彿とさせる豪快な樹木とピンクの梅に魅了される堂々たる金碧画。09年の京都美術巡りのときは最後に行った大覚寺でじっくりみた。横に広がる紅梅、細い枝がリズミカルにのび美しいつぼみを咲かせている。動きを感じさせる大きな幹、そしてそのダイナミズムを柔らげる花の繊細な描写。動と静を優雅に溶け合わせた山楽独自の世界。心ゆくまでみていた。

‘文王呂尚’の魅力は鮮やかな色彩、文王やおつきのものが着ている衣服の白や緑、うす青の発色の良さ。これまでみた山楽の屏風では一番色が輝いている。

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2009.05.04

東博平常展の名画! 芸愛・山楽・春章

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東博の平常展をいつものように気軽に楽しんだ。今回のお目当ては4/28~5/10に展示される平成21年新指定国宝(2点)・重文(37点)の美術工芸品。

拙ブログ3/22で取り上げた蕪村の国宝‘夜色楼台図’ともう二つは写真パネルだが、若冲、岩佐又兵衛の絵、長次郎、光悦のやきものなどは皆でている。興味深々だった
国宝の‘土偶’(縄文時代、青森県八戸市風張1遺跡出土)は思っていたのとは違って小さかった。でも、その座った形はすごくインパクトがあるから、昔から国宝だったような気になる。

重美から重文になった岩佐又兵衛の‘弄玉仙図(摘水軒記念文化振興財団)を見るのは04年千葉市美であった大回顧展以来。めでたし々!上は昨年、徳川美の‘室町将軍家の至宝を探る展’で遭遇した芸愛の‘山水図巻’(室町時代、文化庁、部分)。じっと見てしまうのが連続して描かれているシャープで力強い岩肌と松の緑。見ごたえ十分の山水画である。

若冲の‘菜蟲譜’(栃木県佐野市立吉澤記念館)は実に楽しい巻物。若冲は昆虫やカエルなどが本当に好きだったのだろう。描かれているのはカブトムシ、背中の青いとかげ、蝶、コオロギ、毛虫、蜂、カマキリ、蟻、赤トンボ、蝉、蜘蛛、沢山のオタマジャクシ、ユーモラスな顔をしたカエル、げんごろう、水すまし、赤い腹をしたイモリ、人参、かぼちゃ。時間が経つのも忘れて見ていた。

目的の作品を見たのであとはいつものコースをゆるりと回った。真ん中は定期的に登場する狩野山楽作、‘車争図屏風’(重文)。単眼鏡の助けを貸りながら、画面左で始まっている従者たちの大ゲンカに最接近。相手の頭をたたいたり、顔をげんこつで殴ったり、長い棒で腹をどんと突いたりしている。ケンカの原因は?自分たちの牛車を止める場所を激しく争っているのである。

六条御息所の従者:‘やい、葵の上様の者ども、お前らあとからやって来たくせに、いい場所を確保しようって横暴すぎるじゃあねえーか、許せねえー’、

葵の上の従者:‘ふん、六条御息所様は源氏の君の愛人じゃあねえーか、俺たちの葵の上様は正妻だぞ。賀茂の斎院になられる女三宮様を光源氏様が先導されるのを葵の上様がいい所で見られるのは当たり前じゃあーないか、早く牛車を向うへ移動させろ!’、、 こんな怒鳴り合いをしているのであろう。

今、でている浮世絵の展示期間は4/21~5/17。3年ぶりに登場したのが鳥居清倍の‘市川団十郎の竹抜き五郎’(06/3/23)。これは元気がでる絵。下は昨日のベルギーロイヤルコレクションでも取り上げた勝川春章の肉筆美人画、‘遊女と燕図’。東博にある春章の美人画では最も有名な絵。

元々肥前平戸藩の松浦家が所蔵していたもので、明治のはじめ家臣の志自岐家に下賜された。遊女の白い顔や着物の鮮やかな色、そして精緻に描かれた文様に釘付けになった。春章の美人画はいつもいい気持ちにさせてくれる。こういう絵をみると、当時の洒落本に‘春章一幅千両’と書かれたことがよくわかる。

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2009.03.28

東本願寺の至宝展

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現在、日本橋高島屋では‘東本願寺の至宝展’(3/18~30)が行われている。チラシを手にしたことき、気になったのは狩野元信と円山応挙、そして棟方志功の絵。ほかはあまり心が動かないから、今回は3点買いと割り切って会場に入った。

上は元信作、‘唐人物・花鳥図’。この人物は中国宋代の詩人・蘇東坡。保存状態がとてもよく、最近、元信の絵として確認されたらしい。元信の人物画では、東博の平常展で定期的にお目にかかる‘禅宗祖師図’が一番馴染み深いが、こういう三幅に描かれたものははじめてみた。

先の妙心寺展で‘四季花鳥画’や‘瀟湘八景図’などの名品を楽しんだが、巡回する京博にもでかけ、東博に展示されなかった作品と対面しようと思っている。そうすると、元信もおおよそ済みマークがつく。

真ん中と下は狩野永岳の‘寿老人・寒山捨得図’(三幅)の‘寒山’と‘寿老人’。永岳(1790~1867)は山楽・山雪で知られる京狩野派の9代目。

この絵師の作品を見たのはまだ数点しかない。最初の経験は3年前、京都で春と秋の観光行事になっている‘非公開文化財特別公開’で訪問した妙心寺・隣華院の襖絵‘四季花鳥図’と‘紅葉図’。永岳の作とわかったのは14年前とのことだが、鮮やかな金地極彩色が目に焼き付いている。

絵全体の印象、色使いは妙心寺展に出品された‘西園雅集図襖’(隣華院)と同じ。今回お目にかかったのはよく知っている画題。横向きの寒山にとても惹きつけられた。こういう絵を見せられると永岳には要注意マークをつけたくなる。

お目当てだった円山応挙は‘稚松図’、‘竹雀図’、‘老梅図’、‘雪中松鹿図’。なかでも余白をたっぷりとった‘老梅図’に魅了された。最後のコーナーにあった棟方志功の肉筆襖絵‘天に伸ぶ杉木/河畔の呼吸’は期待していたのだが、色のインパクトは想像していたものの半分だった。

はじめから3点買いだから、棟方志功と永岳が入れ替わったと思えば気は楽。大満足とはいかないが、3つも収穫があればOK。

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2009.02.16

サントリー美術館の国宝 三井寺展に大満足!

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今年もサントリー美術館へ足を運ぶ回数が多くなりそう。感激の蒔絵展の次は‘国宝 三井寺展’(2/7~3/15)。昨年11月、大阪市美ではじまったこの展覧会を首を長くして待っていた。

お目当ては二つある。1990年以来の公開となる秘仏、‘不動明王像(黄不動尊)’
(国宝、平安時代)と狩野光信が描いた‘勧学院客殿障壁画’(重文、桃山時代)。‘黄不動尊’は2/25からの展示で会えなかった。2回来ることははじめから想定しているから、そうあせることもない。

出品作の数は180点、このうち国宝・重文が60点。現在、東博で開催されている妙心寺展同様、内容の充実したビッグなお寺展を東京へもってきてくれたサントリー美に大きな拍手を送りたい。

三井寺(園城寺)は一度訪問したことがある。でも、秘仏は当然見れず、勧学院も中には入れず外からチラッと眺めただけ。前々から見たいと願っている客殿の金碧画が公開されるのは年1回(いつ?)と聞いていたから、これとの対面はまだ先だなと思っていた。その襖絵が大阪市美にでていることをmemeさんのアップで知り、さらに嬉しいことにサントリー美に巡回することがわかった。よくぞ、東京まで出張していただいた。感謝!

入館してすぐ三井寺を中興した智証大師円珍(814~891)の2体の像(ともに国宝、全期間展示)と対面した。頭のてっぺんがこのようにとがっているお坊さんはこれまでみたことがない。誰かに似ている?!ううーん、この三角おむすび頭はどうみても南伸坊!

ゆるキャラの円珍像のあと、気がぐっと引き締まるのが上の‘不動明王立像’(重文、鎌倉時代、全期間)。公開されることが少ないせいか像のコンディションがとてもいいから、その鋭い目線に射すくめられても、迫力ある姿をじっと見入ってしまう。これは2/25から登場する‘黄不動尊’の模刻像。絵と像ふたつを一緒にみれるのが今から楽しみ。

今回、衝撃的な像があった。‘新羅明神坐像’(国宝、平安時代、全期間)。新羅明神(しんらみょうじん)は異国の神様。円珍が唐から帰国するとき、船中に現われ、円珍の教法を守護すると告げたという。

この像は三井寺新羅善神堂の主神。目にとびこんでくるのが白い顔に浮かびあがる真っ赤な唇、そして下がった目尻。これまで見た仏像・神像のなかで衝撃の強さは、これが一番かもしれない。この異相は一生忘れることはないだろう。

4階の階段を降りたところに狩野光信(1565~1608)の襖絵が飾ってある。下は最も長く見ていた‘四季花木図(一之間)’(左隻、全期間)。幹のゆるく曲がるフォルムが心を揺すぶる杉や檜の木立が画面に奥行きをつくり、対角線上にある枝ぶりのいい梅と響き合っている。

父、永徳の絵が見る者を圧倒するような華麗で力強い画風であるのに対し、これは余白をたっぷりとった安定感のある構成がとても優美で、花木の洗練された描写には気品が感じられる。予想以上の見事な金碧画だった。

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2008.07.30

対決ー巨匠たち日本美術 永徳・蕪村の新発見絵画!

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前期の展示では感動した作品を7組の“対決”スタイルで紹介したが、後期はこれをはずして、別の切り口で並べてみたい。本日取り上げるのはここ2,3年に新たに発見された作品3点。狩野永徳の描いた“松に叭叭鳥・柳に白鷺図屏風”(上の画像、右隻)と“洛外名所遊楽図屏風”(真ん中、右隻)、そして与謝蕪村の“山水図屏風”(下、右隻、MIHO MUSEUM)。

“松に叭叭鳥”と“山水図”は美術史家の辻惟雄氏(MIHO MUSEUM館長)が、“洛外名所遊楽図”は狩野博幸氏(元京博学芸員、現在同志社大教授)が発見した。今年
5/24の朝日新聞の記事で知った“松に叭叭鳥”は目の鋭い黒の叭叭鳥(右)と白鷺(左)が沢山描かれているので、画面に活気がある。とくに惹きつけられるのが右の滝。滝壺に飛び散るしぶきとその下に続く渦巻きが縦に重なったような水流はなにか生き物がうごめているみたい。

また、形よく曲がった太い幹の松と柳を力強く描き、左右に絶妙に配置する構成にも感心する。この屏風はもとは原三渓が所蔵していたが、久しく消息不明だったらしい。どういう経緯でまた姿をあらわしたのかわからないが、タイミングよくこうしたエポック的な大展覧会でお目にかかれるのだから、ラッキーというほかない。

“洛外名所遊楽図”は昨年あった永徳展で対面し、じっくり見た(拙ブログ07/11/10)。真ん中は天龍寺や渡月橋、嵯峨・嵐山が描かれた右隻のほう(部分)。右端が嵯峨の釈迦堂(清涼寺)で中央にみえるのが天龍寺。釈迦堂門前では、男たちが馬から米俵をおろすところや竹馬で遊ぶ子供たち、琵琶法師を追っかける犬がみえる。単眼鏡を使うと渡月橋の近くに描かれたおもしろい一行がよく見える。鷹匠たちが一仕事終えて家路についている。後ろにいる男の仕留めた鳥をさした棒を肩にかついで歩く姿が誇らしげ。

下の“山水図”は5月の“与謝蕪村展”(MIHO MUSEUM、5/6)でみたばかりだから、まだ記憶に新しい。蕪村が描いた銀地の屏風を一度、京博であった“18世紀京都画壇の革新者たち”(06年3月)でみたことがある。今回出ているのと同じ名前で画面構成がよく似ているのでまごついたが、二つは別物だった。また、もう一点、“秋景山水図屏風”というのがあるらしいが、現在行方知れず。

辻氏を驚愕させたこの山水図は蕪村が亡くなる一年前に描かれた。コンディションがいいのに加え、光の当たった銀地は白く輝く感じ。そんな金地とは別の雰囲気が漂う画面に東屋、湖、舟、人物、丸っこい岩や山、家、木々が墨でしっかり描かれている。右から左へ一本の道が続いており、ところどころ人が立話をしたり、てくてく歩いているのが印象深い。俳句の世界をイメージする絵とは趣の異なる蕪村の強い精神性がうかがえる作品である。

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