2026.07.20

尾形乾山 やきものベスト&ベスト!

Img_0003_20260720230001   ‘色絵紅葉文透彫反鉢’(重文 18世紀 岡田美)

Img_0002_20260720230001   ‘色絵龍田川図向付’(18世紀 大和文華館)

Img_20260720230001   ‘銹絵染付松波図蓋物’(重文 18世紀 出光美)

Img_0001_20260720230001   ‘銹絵染付金彩絵替土器皿’(重文 18世紀 根津美)

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‘流水文手桶水指’(18世紀 逸翁美)

光悦同様、尾形乾山(1663~1743)のやきものに魅了され続けてい
る。斬新な形のアイデアに目が点になったのが箱根の岡田美が所蔵する‘色絵
紅葉文透彫反鉢’。鮮やかな紅葉の意匠に合わせて透かしを彫ったり、縁を切
り込んだりして、形と意匠が見事に調和している。こんもりと生い茂った紅
葉の樹を反鉢の形によって表現するという発想に驚かされる。

これを鉢から向付に替えて紅葉の文様をみせているのが‘色絵龍田川図向付’。
これは五客だが、MIHO MUSEUMで十客の組物にお目にかかった。ほかの向
付では菊や百合や藤を文様にしたものがある。食がぐんと進むにちがいない。

出光美にある‘銹絵染付松波図蓋物’はいくつかみた蓋物のなかでは一番気に
入っている。外面の松林は乾山が、内面のリズミカルな金の波は兄の光琳が描いたとされる。蓋の表と裏の意匠で松と波の景色を表現するデザ
インになっている。すごくセンスのいい創作である。乾山が光琳模様を使って絵付けした‘流水文手桶水指’もいい感じ。サントリー美の‘逸翁美展’(9/16~11/8)で再会することを強く願っているが、出品されるだろうか。

この春に根津美で開催された特別展‘光琳派’に乾山の傑作‘銹絵染付金彩絵替土器皿’が展示された。この土器皿が見たくて対面の時をずっと待っていたが、なかなか姿をみせてくれなかった。望みが叶ってだいぶ時が流れたが、この意匠の琳派的で現代アートにも通じるシャープな表現が再会するたびに気分をハイにしてくれる。つい‘乾山に乾杯!’と叫びたくなる。

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2026.07.18

たらしこみが好きな中村芳中!

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‘白梅図’(18∼19世紀 千葉市美)

Img_0002_20260718233401   ‘白梅小禽図屏風’(18∼19世紀 細見美)

Img_0003_20260718233401   ‘老松図’(18∼19世紀)

Img_0004_20260718233401   

‘光琳画帖 目隠し鬼’(1802年 千葉市美)

Img_20260718233401   ‘蝦蟇鉄拐図屏風’(18∼19世紀)

画家のなかには普通の一般市民のような名前のものがいる。たとえば、江戸
時代後期に大坂を中心に活動した中村芳中(なかむらほうちゅう ?~
1819)。この画家が尾形光琳(1658~1716)の画風に影響を受
けたことを知ったのは千葉市美が所蔵する‘白梅図’に遭遇したとき。

一見すると盆栽を絵にしたような感じだが、垂直に伸びる異様な形をした白梅の幹は小枝ともども琳派のたらしこみの技法を使って描かれており、強い存在感をみせている。幹の表面が滲みの広がりによって生まれる墨や群青などの小カオス的な模様によりが何かを主張しているよう。琳派好きだから、たらしこみはいろいろお目にかかったが、インパクトの強さではこれが筆頭かもしれない。

細見美にある‘白梅小禽図屏風’は金箔地にたらしこみで力強さを増した幹がぐっと浮き上がり、枝にとまった鳥の姿を引き立てている。構図がなかなかいいのでつい見惚れてしまう。何度も描き直しているうちに目にすっきり嵌る構図ができあがったのだろう。

芳中の絵には前衛的な力を感じる一方、のんびりした雰囲気があり肩の力がぬけるような画風も魅力のひとつ。‘老松図’は明るい青で表現された松の葉叢がもっこりした茸のよう。そして、‘光琳画帖 目隠し鬼’はじつに楽しい漫画チックな風俗画。頬は自然とゆるむ。こんなユーモラスな絵は中国の古典を題材にした‘蝦蟇鉄拐図屏風’にもつながっており、芳中が見る者を楽しませるエンターテイメントの心にあふれた画家であることを物語っている。

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2026.07.17

神坂雪佳 心底惚れるかわいい表現と巧みな構図!

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  ‘百々世草 狗児’(1909~10年)

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  ‘百々世草 巴の雪’(1909~10年)

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  ‘百々世草 樵夫’(1909~10年)

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  ‘金魚玉図’(20世紀)

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  ‘元禄舞図’(1907年頃 千總ホールディングス)

好きな絵画はすぐ手が届くところに置いておきたいという気持ちが強くある
ため、それをどの絵にするかは厳選に厳選を重ねるが、琳派では京都で活躍
した神坂雪佳(1866~1942)は外せない。まだ大規模な回顧展には
遭遇してないが、2006年日本橋高島屋で行われた‘京琳派 神坂雪佳展
 宗達、光琳から雪佳へ’は楽しい思い出として心に刻まれている。

もっとも惹かれているのが明治42年から43年にかけて、出版された木版
美術本の‘百々世草(ももよくさ)’。図録には掲載されている参考図版で紹介
されたものを含めて全部で35点が出てくるが、お気に入りはかわいさMAX
の‘狗児’。宗達の気持ちが感じられる子犬に近い感じなのでじっとみてしまう。

いい構図だなと感心させられるのが‘巴の雪’と‘樵夫’。雪が降るなか、坂の傾斜
がきついなかをともにしっかり足をふみだして歩いている様子をが巧みな構図
により描き出しているところがすごい。もし1点さしあげるといわれたら、
この3点をサイコロを振って選びたい。

とぼけた味を出しているのが‘金魚玉図’。夏の風物詩である金魚玉は軒先など
に吊るす丸いガラス容器のこと。なかで泳ぐ金魚を真正面から体を縮めてとら
えている。瞬間的にこんな風に金魚がみえることがあるだろうが、並みの画家
ならそれを絵画化するところにはいたらない。‘元禄舞図’は舞う人々の列が楕
円形になるように右端で曲げてるのがおもしろい。

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2026.07.15

酒井抱一 心を揺すぶる絶品花鳥図!

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Img_0003_20260715225301   ‘夏秋草図屏風’(重文 1821年頃 東博)

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Img_0001_20260715225301   ‘四季花鳥図屏風’(1816年 陽明文庫)

Img_0006_20260715225301   ‘四季花鳥図巻’(1818年 東博)

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Img_0007_20260715225301   ‘十二ヶ月花鳥図’(1823年 三の丸尚蔵館)

Img_0004_20260715225401   ‘柿図屏風’(1816年 メトロポリタン美)

数々の傑作を描いた琳派の絵師たちを作品に接する機会が多いという点から
親近感の度合いを比べてみると、酒井抱一(1761~1828)が一番親
しい関係になる。それは東博に代表作の‘夏秋草図屏風’と‘四季花鳥図巻’があ
り、通常展にローテーション展示されるから。この2点の鑑賞体験が積み重
なり、抱一の真骨頂は究極の美に達したような花鳥画にあるという思いが強
くなった。

抱一で‘最高の瞬間!’に加えたいのがもう一点ある。それは陽明文庫が所蔵
する‘四季花鳥図屏風’。長い琳派とのつきあいなのに、お目にかかったのは
2回しかない。金地に映える鮮烈な色彩で白鷺や雉や四季の花が装飾性豊か
に描かれている。気品があり、とてもいい花鳥画をみているという思いが強
く、琳派の枠を離れて日本画の表現のすばらしさを実感させられる。

‘十二ヶ月花鳥図’にはいろいろなヴァージョンがある。十二ヶ月揃いのセッ
トとしてこれまで縁があったのは三の丸尚蔵館、畠山記念館、出光美、プラ
イスコレクション(今は出光美)、ファインバーグコレクション。2008
年、東博で開催された‘大琳派展’ではファインバーグコレクションが飾られ
た。どれも出来栄えはいいので、みな存分に楽しめる。回数が多いのは三の
丸尚蔵館のもの。

10月の風物として描かれた柿は単独でも描かれており、メトロポリタン美が
所蔵している。これは‘大琳派展’に里帰りしたが、構図の良さを息を呑んでみ
ていた。

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2026.07.14

江戸琳派 鈴木其一 ベスト&ベスト!

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Img_0003_20260714233401    ‘夏秋山水図屏風’(重文 19世紀中頃 根津美)

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Img_0001_20260714233401   ‘朝顔図屏風’(19世紀 メトロポリタン美)

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‘群舞図’(19世紀 出光美)

Img_0005_20260714233501   ‘向日葵図’(19世紀 畠山記念館)

Img_0006_20260714233501   ‘百獣図’(1843年 キャサリン&トーマス・エドソンコレクション)

画家に対する思い入れの度合いは名画との出会いの積み重ねによって、だん
だん膨らんでいく。たとえば、江戸琳派の鈴木其一(1796~1858)
に関心が向うきっかけとなった絵が浮世絵風の‘群舞図’。これは今は出光美に
おさまっているが、以前は日本画コレクターのプライス氏が所蔵していた
もの。そのコレクションが披露されたとき、浮世絵肉筆画の名手の勝川春章
の絵がすぐ思い浮かぶほど魅了された。こんな美形の美人画で楽しませてく
れるのは春章と其一しかいない。

其一の絵には長く記憶に残るエピソード記憶がいくつもある。畠山記念館でお目にかかった‘向日葵図’にはびっくり仰天だった。ええー!?こんな心地いいひまわりを琳派の鈴木其一が描いていたのか。ゴッホ以外で心を打つひまわりはこの絵からはじまり、ぽつぽつ遭遇した。北斎、高島野十郎、そして3日前SOMPO美でみた山口華楊。

そして、其一が偉大な画家として心のなかにどーんと入ってくるのが3点ある。日本にあるのは根津美が所蔵する‘夏秋山水図屏風’だけでほかの2点はアメリカにある。‘夏秋山水図’は2020年重文に指定された。目を惹くのは鮮やかな金泥と目が覚めるほど強い力をもった群青で描かれた流水。見落としてならないのは右隻(上)の真ん中の檜にとまっている蝉。これで夏を200%感じることができる。

ポップアートをみるような感覚で絵が楽しめるのがメトロポリタン美のお宝になっている‘朝顔図屏風’。驚かされるのは朝顔の花の深くかつ鮮烈な青。花の中央部分から光が出ているように描写されているのが本当にすごい。METでみたときは感動したが、嬉しいことにサントリー美であった回顧展(2016年)で里帰りしてくれた。‘百獣図’は‘百鳥図’と一緒に2019年日本で披露された。美術本に載ってなかったので天にも昇るような気持で長く見ていた。

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2026.07.10

尾形乾山 絵画ベスト&ベスト!

Img_0003_20260710230301   ‘立葵図屏風’(18世紀)

Img_0004_20260710230301   ‘八橋図’(重文 18世紀 文化庁)

Img_0001_20260710230301   ‘紅葉に菊流水図’(18世紀 東博)

Img_20260710230401   ‘花籠図’(重文 18世紀 福岡市美)

Img_0002_20260710230401   ‘富士山図’(18世紀)

尾形光琳(1658~1716)の五歳年下の弟、尾形乾山(1663
~1743)は野々村仁清から作陶を学んだ京焼の代表的陶工であるが、晩
年は絵画制作も手がけた。二刀流のドジャース大谷のように、モチーフをと
てもモダンに洒落たデザインで表現した絵付けが評判をとったやきものだ
けでなく、いい絵をいくつも描いている。

絵画で‘最高の瞬間!’が訪れたのは2008年東博で開催された‘大琳派展’に
出品された‘立葵図屏風’。垂直に並ぶ立葵が金地の画面に光琳の‘燕子花図屏
風’で同じ花の形が繰り返され動勢をつくっているように、明るい赤や白が跳
びはねるイメージで描かれている。これをMy好きな乾山絵画の一番にラン
ク付けしているが、遭遇してからもう何年もたつが、再会のときがやって来
ない。絵画とのつきあいはまさに‘一期一絵’である。

‘八橋図’も‘燕子花図’とつながる絵。追っかけ絵画の期間が長く、みる機会が
なかなか訪れなかったがようやく2018年に思いが叶った。簡略化された
八橋とまわりに咲く燕子花の配置が絶妙で光琳のデザイン的な要素の強い作
品とはひと味違った情趣が感じられ‘伊勢物語’の話が思い浮かんでくる。

東博の通常展をみるためまめに通っていると、一定の期間を経てローテーション展示される‘紅葉に菊流水図’に遭遇するチャンスが生まれてくる。この絵で乾山が兄の光琳の作風に倣って描いているのは‘紅白梅図屏風’で表現された装飾的な流水模様。紅葉の赤、菊の白、流水の青が華麗に響き合っている。

和歌と絵画の一致を狙った趣向は‘花籠図’でも同じ。太い黒線で形がつくられた3つの花籠には桔梗、女郎花、薄など違う花が挿されているが、時間軸を入れた異時同図で描かれていると想像して楽しむこともできる。一見子どものお絵描きのようなペタッとした絵に映るのが‘富士山図’。えのき茸のような松の木があの雄大な富士と緑の色同様対等に立っているところがおもしろい。

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2026.07.09

光琳 やさしさと笑みがいっぱいの人物画!

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  ‘太公望図屏風’(重文 18世紀前半 京博)

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  ‘大黒天図’(18世紀前半)

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  ‘布袋図’(18世紀前半)

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  ‘寿老図’(18世紀前半)

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  尾形光琳・乾山の‘銹絵寒山拾得図角皿’(18世紀前半 京博)

絵画が趣味になると西洋画でも日本画でも、歴史画や宗教画とのつきあいが
長くなる。日本画は水墨画の影響を受けているから、画家が題材にする人物
のなかには古い中国の話にでてくる歴史上の人物が登場する。書物で知った
情報が絵画によってより理解が深まったのは、円山応挙や曽我蕭白とか琳派
の絵師たちのおかげかもしれない。

宗達とともに琳派のど真ん中にいる尾形光琳(1658~1716)の絵で
は、釣りの名人として有名な太公望を描いた作品が京博にある。ちょっと抽
象的な色面構成を感じさせる背後の崖の前で太公望は釣り糸を垂れて瞑想中。
魚が釣れようが釣れまいがどうでもよく、その顔はにやにや笑っているよう
にもみえる。なんとも羨ましい余裕である。

目をかっと開けて満面の笑みをみせるのは‘大黒天図’。こういう縁起のいい絵
をみると、お金がたまるのではないかとつい調子に乗ってしまう。左肩に担
いだ袋が右手に持った小槌を打つたびに大きく膨らんでくるのだから、大黒
天の顔はいい笑顔をなっていく。畠山記念館が所蔵する‘布袋図’に魅了され続
けている。こんなやさしくて可愛い布袋さんはほかにみたことがない。光琳
のやさしい心根をみるよう。

鶴と鹿を左右に従えた‘寿老図’は品が良くて誠実そうな寿老が目の前に立って
いる感じ。御変りはありませんか?と声をかけたくなる。ささっと筆を動かし、
気がついたら出来上がっていたような絵。松の幹を全部描かないところが光琳
流。弟の尾形乾山(1663~1743)の合作‘銹絵寒山拾得図角皿’は巻物
を広げ持つ人がよさそうな丸顔の寒山のほうに視線が集中する。

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2026.07.08

光琳が描いた人間の表情をする虎!

Img_20260708225401   尾形光琳の‘竹に虎図’(18世紀前半 京博)

Img_0002_20260708225501   土田麦僊の‘罰’(1908年 京近美)

Img_0001_20260708225501   ミレイの‘両親の家のキリスト’(1849~50年 テート美)

宗達の‘龍虎図’を横に並べてみたら作品の共通性やおもしろみが増すこと請
け合いなのが、尾形光琳(1658~1716)の‘竹に虎図’。これは京博
が所蔵している。竹藪のなかで座っている虎は機嫌が悪そうで目がつり上
がり、にらんでいる感じ。獰猛な虎の姿にはとても思えず、お母さんに叱
られ反抗的な態度をみせる子どもをイメージさせる。

この人間的な感情表現を虎の絵に取り込む精神は宗達と同じで、手本帖に
もとづいてモチーフを描く狩野派の絵師たちとは違い二人は旺盛な観察力
を使って自由にのびのび描き人々を楽しませた。絵に親しみを感じさせる
ところが琳派の大きな魅力である。

だから、後の時代に描かれた作品と時空を超えてコラボすることだっておき
る。おもしろいもので何の関係がない絵がくっついてしまう。京都で村上華
岳(1888~1939)らと新しい日本画の創作に挑戦した土田麦僊
(1887~1936)にとてもいい子どもの絵がある。それは悪ふざけしたのか、遅刻したのか先生に叱られて、その罰で立たされた3人の子どもを描いた‘罰’。視線が向うのが右の男の子。べそをかきながら悪ガキらしく上目遣いで何かを睨んでいる。この表情をみたとき、すぐ光琳の虎の目つきが重なった。

西洋絵画にも気になる絵がある。2008年、渋谷のBunkamuraでワールドクラスの‘ミレイ展’が行われ、目玉作品の‘オフィーリア’をはじめ主要作品がどどっと展示された。ミレイ(1829~1896)はラファエロ前派の画家で、20歳のときに描いた‘両親の家のキリスト(大工の仕事場)’は‘オフィーリア’同様、傑作。登場人物の中で長くみていたのは真ん中にいる聖母でも、手に怪我をした幼いキリストでもなく、右にいる水を持ってきた幼い洗礼者ヨハネ。その目の描き方が光琳の虎や麦僊の男の子と似ている。

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2026.07.06

現代琳派の傑作!

Img_20260706230301   加山又造の‘千羽鶴’(1970年 東近美)

Img_0001_20260706230301   福田平八郎の‘花菖蒲’(1934年 京近美)

Img_0002_20260706230301   山口蓬春の‘扇面流し’(1930年 山口蓬春記念館)

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Img_0005_20260706231201   川端龍子の‘新樹の曲’(1932年 東近美)

Img_0003_20260706230301   前田青邨の‘罌粟’(1930年 光記念館)

明治以降に活躍した日本画家が描いた作品のなかには装飾的な琳派様式を意
識したことがすぐわかるものが数多くある。心が晴れやかな気分にさせてく
れる傑作を現代に生きる人たちと一緒にワープした宗達や光琳が楽しむとこ
ろを想像すると、そのレベルの高さをみて裸足で逃げだしそうになることが
あるかもしれない。そんな絵をいくつか並べてみた。

まずは、加山又造(1937~2004)の‘千羽鶴’。琳派狂いはこの絵の前
に立ったら、瞬時に宗達・光悦の‘鶴下絵三十六歌仙和歌巻’を思い浮かべるだ
ろう。宗達は‘われわれの合作が生み出した飛翔する鶴たちの絵がこんな絢爛
豪華な作風に進化したのか、又造恐るべし!’と後ずさりするだろう。

横にいた光琳が同じ反応をしそうなのが福田平八郎(1892~1974)の‘花菖蒲’。光琳は‘俺も花菖蒲をいろんな構図で描いたが、お前はこの構図ですばらしい絵を生み出したな’と感心するに違いない。光琳の‘燕子花図屏風’に魅了され続けていると光琳の別ヴァージョンをみているような錯覚を覚える。

山口蓬春(1893~1971)の‘扇面流し’は大和絵と琳派の絶妙な調和がすばらしく、家にあれば毎日が楽しく過ごせる感じ。宗達の‘扇面散らし’の華麗さがリズミカルに揺れる背景の波により強く印象づけられる。そして、川端龍子(1885~1966)の‘新樹の曲’(5月の平常展に出品)と前田青邨(1885~1977)の‘罌粟’は品格のある琳派調の名画。とても静かで皇居におさまっているような作品である。

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2026.07.05

宗達 お気に入り水墨人物・動物画!

Img_20260705233401   ‘龍虎図’(17世紀 出光美)

Img_0002_20260705233401  

 ‘犬図’(17世紀前半)

Img_0001_20260705233401   ‘騎牛老子図’(17世紀前半 畠山記念館)

Img_0004_20260705233401   

‘達磨図‘(17世紀前半)

Img_0003_20260705233401   ‘四睡図’(17世紀前半 ギッターコレクション)

龍虎を題材にした絵はこれまで多くみてきたが、戦いを前にして怖い顔で相手を睨んでいるのがお馴染みの表現。虎の獰猛さがMAXの怖さを感じさせ迂闊に近寄れないのが狩野山楽の絵(重文 妙心寺)。これと対極にあるのがゆるキャラのような表情をみせる虎を描いた俵屋宗達。2011年、出光で開催された‘琳派芸術’ではじめてお目にかかったとき、ユーモラスな‘風神雷神’を登場させた宗達ならこれもありかな、と思った。

虎は下から見上げている龍をじっとみて、‘俺、喧嘩あまりしたくないんだよ、お前もその顔からすると荒っぽいのは嫌いなタイプだな。だったら、その長い歯で噛みつかれると痛いから止めとくか’、とかなんとか言い出しそう。唯一無二のおもしろい龍虎図。これなら有能なゆるキャラクリエーターとして、制作会社からすぐお声がかかる。

‘犬図’も長く記憶にとどまっている傑作。親犬を離れ、一人でゆっくり歩く子犬の愛くるしい姿は散歩中に出会う光景となんら変わらない。この絵がスゴイのは子犬の気持ちが伝わってくるところ。応挙や芦雪の犬の絵も楽しいが、犬の気持ちまで感情移入してみていない。手元の琳派図録に犬の絵は全部で二匹がじゃれ合うものなど7点載っているが、どれも肩の力を抜いて長くつきあっている。豊千禅師と寒山拾得が虎とともに眠る姿を描いた‘四睡図’でも、体の大きい虎はとても優しい顔で気持ちよく寝ている。この虎にしてはとぼけた寝姿が心を和ませる。

人物画で目を惹くのは牛に乘った体も顔も丸々の老子を描いた‘騎牛老子図’と、頑固で意志の強くそうな顔つきをしている‘達磨図’が忘れられない。この達磨は内面描写まで映しとっているが、どこか愛嬌のある人物に思えるところが宗達流。ほかの画家の描いた達磨よりは世間離れしすぎてないのがいい。

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