2023.10.06

美術で‘最高の瞬間‘! 崎山隆之 市野正彦 今泉今右衛門

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    崎山隆之の‘扁壺 「聴涛」’(2007年)

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     ‘花器 「聴涛」’(2010年)

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   市野雅彦の‘Untitled’(2007年)

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    ‘丹波赤ドベ采器’(2010年)

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   十四代今泉今右衛門の‘色絵薄墨はじき時計草文鉢’(2010年)

現在、青磁で人気の高い陶芸家を選んだとき、個展の機会をこれからみつけ
だしていくことを述べたが、ほかにも同じ思いの作家がいる。崎山隆之
(1958~)、市野雅彦(1961~)、十四代今泉今右衛門(1962~)
。いずれも鑑賞した作品は片手ほどで最後にみてからだいぶ間隔があている
ため、現在どんな作品群が出来上がっていのかまったく情報がない。だから、
余計に鑑賞意欲が湧いている。来年は刺激を求めて積極的に動いてみようと
思っている。

崎山のテーマとなっている‘聴涛’は2点お目にかかった。2010年菊池寛実
記念 智美術館で開催された‘現代の茶 造形の自由’でこのシリーズをみたと
き、二つのイメージが交錯した。一つはアフリカのサハラ砂漠では局所的に
こういう砂の造形ができるのかなと想像した。もう一つは蛇の通った跡。今も
‘聴涛’は制作され続けているのだろうか。そうであれば、個展でどっと並んだ
のをみてみたい。

丹波焼の市野雅彦は日本民藝館へ通っていたころ作品を知った。TVのやき
もの番組でも見た覚えがある、その造形と強い色彩はとても気になっていた。
ロシアのマトリョーシカを連想させる‘Untitled’はおもしろいアイデアだし、
智美術館で遭遇した窯からでたばかりの灼熱の赤が強烈なパワーを生んでい
る‘丹波赤ドベ采器’にも心を奪われる。

2002年に十四代を襲名した今右衛門は‘色絵薄墨墨はじき時計草文鉢’が気
に入っている。これをみたのは2015年でちょうど宇宙への関心が深まった
時期と重なるので、大宇宙空間に星々が自然法則にしたがって均整のとれた形
で回転しているように映った。この連作は果たしてあるのだろうか?そろそ
ろこの目で確かめたい。

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美術で‘最高の瞬間‘! 十五代楽吉左衛門

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    ‘焼貫黒楽茶碗 銘 砕動風鬼’(1990年 楽美術館)

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    ‘焼貫黒楽茶碗 銘 陽谷’(1989年)

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    ‘焼貫黒楽茶碗 銘 吹馬’(1993年 楽美術館)

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    ‘焼貫黒楽茶碗’(2004年 楽美術館)

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    ‘焼貫黒楽茶碗 銘 一犂雨’(2005年 楽美術館)

2019年に隠居し現在は直入を名乗り作陶を続けている十五代楽吉左衛門
(1949~)の茶碗に大変魅了されている。だから、個展の情報は見逃さ
ないようにしているが、最近は残念ながら縁がない。はじめて十五代の作品
をまとまった形でみたのは2005年、菊池寛実記念 智美術館で15年ぶ
りに開催された‘楽吉左衛門展’。これが2度目の個展というので幸運なめぐ
りあわせだった。そして、2017年の‘茶碗の中の宇宙 楽家一子相伝の
芸術’(東近美)でも十五代の作品を存分に楽しませてもらった。

NHKでやきもの番組が放送されるときはビデオをとってみていたが、これま
で楽吉左衛門は2度登場し、轆轤を使わず手びねりで茶の湯の茶碗の形をつ
くっていくところから釉がけ、焼成という制作の現場をみせてくれた。その
ため、素人ながら十五代のあのすばらしい茶碗がどうやって生まれてきたか
はおおよそイメージができるようになった。

‘焼貫’は徹底的に火にさらし高い温度で焼く貫く技法で窯の炎や墨が直接作品
にあたり肌が荒々しくなるという特徴がある。これにより新たな‘楽’の世界を
つくりだした。いろんなヴァリエーションがあるのは陶芸家、楽吉左衛門の
技術の高さと表現の強さを反映している。‘焼貫黒楽茶碗 銘 砕動風鬼’は
焼貫茶碗にさらに金銀彩が用いられており、装飾性という要素をつけ加え
十五代流の楽茶碗を創作した。

茶碗の形としては本阿弥光悦の国宝‘不二山’や‘加賀’を連想させる角造りの
茶碗に惹かれている。これには数えきれないほど名品が揃っている。赤と黒
の鮮やかなコントラストが印象的な‘陽谷’、ダイナミックな黒の太い線が馬を
おもわせる‘吹馬’、雨だれのような緑と青が深く響きあっている2004年の
黒楽茶碗、そして、大きくゆがんだ形と群青色や黒、緑が心を打つ‘一犂雨
(いちりう)’が忘れられない。十五代楽吉左衛門に乾杯!

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2023.10.05

美術で‘最高の瞬間’! ハンス・コパー

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    ‘ポット’(1954年)

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    ‘ポット’(1962年)

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    ‘ポット’(1965年)

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    ‘スペード・フォーム’(1971年)

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    ‘キラクデス・フォーム’(1972年)

2010年は今から振り返るとイギリスの有名な陶芸家に出会ったエポック
的な年だった。4月国立新美で‘ルーシー・リー展’があり、その2ヶ月後に
パナソニック電工 汐留ミュージアムで‘ハンス・コパー展ー20世紀陶器の
革新’に遭遇した。ドイツ人のハンス・コパー(1920~1981)は
1939年19歳のときイギリスに渡り、26歳のとき18歳年上のルーシ
ー・リーの工房で働きはじめる。2人は第二世代の陶芸家として多くのファ
ンの目を惹きつける作品を次々と制作し、世界的に名が知られる陶芸家に
なった。コパーは1958年イギリスに帰化している。

1954年の作品‘ポット’は上下2つの丸い形を合接してつくられている。
この安定感がよく暖か味のある丸さにとても引き込まれる。同様に安心し
て見られる1965年のポットはすっきりした対称形のフォルムに限りな
い愛着を覚える。1962年のポットは一見すると中南米に起こった
古代文明でつくられたやきものとかアフリカにおける部族の宗教行事に使わ
れたシンボルのようなものを連想する。3つのパーツで構成されているが、
上は茶碗で真ん中は円盤、そして下が筒にみえる。

‘スペース・フォーム’は力強いフォルムがだんだん洗練されていく感じ。
上半分が鋭角的な印象の強い農工具とか手提げバッグのイメージで、それ
を柔らかい円筒がしっかり支えている。一度みたら忘れない形である。こ
のタイプはほかに上部が3倍くらい大きな円筒と合体したものもある。

コパーの作品でもっとも魅了されるのが‘キクラデス・フォーム’。
前3000年紀にエーゲ海のキクラデス諸島で栄えた文明の遺品が目の前
に現れたような錯覚にとらわれる。アテネの国立考古学博でみたものが
現代に蘇った感じ。いろんなヴァージョンがあるが、ロケットが宇宙に飛
び出すイメージが湧いてくるこの作品に惹かれている。

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2023.10.03

美術で‘最高の瞬間‘! ルーシー・リー

Img_20231003230001     ‘線文鉢’(1970年頃 東近美)

Img_0001_20231003230001     ‘鎬文花器’(1976年頃 東近美)

Img_0002_20231003230001     ‘青釉鉢’(1978年頃 東近美)

Img_0003_20231003230001     ‘ピンク線文鉢’(1980年頃)

Img_0004_20231003230001     ‘溶岩釉花器’(1980年代 アサヒビール大山崎山荘美)

イギリスの女性陶芸家、ルーシー・リー(1902~1995)の作品をは
じめてお目にかっかたのは東近美工芸館。竹橋にある東近美へ出かけたとき
は時間に余裕があれば、歩いて10分くらいで到着する工芸館へも寄り平常
展に並んでいる作品をみるというのがルーティンの流れだった。ここで
板谷波山のやきものとか着物などいろいろな工芸の分野に親しんできたが、
ときどき情報がまったくなかったのにみた瞬間に虜になるような作品に遭遇
することがある。

目の前に現れたルーシー・リーの‘線文鉢’はそんなやきものだった。説明書きを
読むと陶芸家はウィーン生まれで活動の拠点をイギリスに変えて活躍し、93
歳で亡くなったとある。イギリスの陶芸家としてインプットされている民藝派
のバーナード・リーチを第一世代とするとルーシー・リーは第二世代にあたる
人気の陶芸家のひとり。これでやきものの世界が広がったという思いを強く
もった。

‘線文鉢’は茶褐色の高台の上で乳白色に切り替わり、細い茶色の線がリズミカ
ルに走っている。このすっきり感のある軽やかな文様に大変魅了される。この
形がさらに変化したのが鮮やかな青が目とびこんでくる‘青釉鉢’。これはルー
シー・リーを代表する朝顔型の器形。口縁の直径に比べて高台が小さめにつ
くられているが、不安定な感じはしない。これは強い磁力を放っている。そし
て、さらにインパクトのある色が登場した。‘ピンク線文鉢’。陶芸の色彩に
ピンクがでてくるとは!

ルーシー・リーの作品に大変魅了されるのは形の美が楽しめること。朝顔型のほかで思わず足がとまるのが‘鎬文花器’。鎬文の上は首がぐっと細くなり視線をさらにあげるとラッパのように大きく開いた口作りがみえる。古代ギリシャにやきものでこんな形をみた記憶がある。晩年の作品‘溶岩釉花器(マーブル)’は形は古代の器というイメージが強いのに、色合いは薄土色と淡い青が絶妙に溶け合い上品な雰囲気を漂わせている。すばらしい!

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2023.10.02

美術で‘最高の瞬間‘! 金城次郎 島岡達三

Img_0001_20231002230401    金城次郎の‘線彫魚文抱瓶’(1968年 日本民藝館)

Img_0004_20231002230401     ‘線彫海老文大皿’(1970年 日本民藝館)

Img_0005_20231002230401     ‘貼付文藍飴差厨子甕’(日本民藝館)

Img_20231002230401    島岡達三の‘塩釉象嵌縄文皿’(1999年 茨城県陶芸美)

Img_0003_20231002230401     ‘象嵌縄文三筋大丸壺’(1955年 日本民藝館)

日本民藝館へ通っていた頃は民藝派のやきものをみるのが大きな楽しみだ
った。富本憲吉、河井寛次郎、濱田庄司、バーナードリーチの作品に目が慣
れたいったのもここで名品の数々に出会ったから。そして、沖縄出身の金城
次郎(1912~2004)の生き々した魚文のやきものを目にしたのも
忘れられない思い出になっている。リーチの作品にもタコがでてきたりする
が、金城のやきものは海に囲まれた沖縄らしいモチーフが躍動している感じ
がする。

‘線彫魚文抱瓶’は力強い線彫りで表現された魚が器面一杯にどーんと描かれて
いる。抱瓶は沖縄特有の酒瓶の一種で、紐を通して肩からぶら下げて携帯す
る。本来は小ぶりだが、金城は大型化した抱瓶を独自につくりだした。成形
した後、器面にへらなどで線を彫り込み存在感のある魚文をかたどっていく。
体を大きく曲げた魚の闊達な表現は沖縄の豊かな海洋文化を象徴している。

魚文だけでなく海老文もぴちぴちしている。‘線彫海老文大皿’はお茶目な海老
の大きな目が愛嬌があり親しみを覚える。金城はいろんな器物に向き合っており、厨子甕(蔵骨器)では‘貼付文藍飴差厨子甕’が強く印象に残っている。このタイプのものは見たことがなかったのでその形にひきつけられた。

濱田庄司に師事した島岡達三(1919~2007)は金城次郎と同じく日本民藝館通いで存在を知った。もっとも魅了されているのは‘塩釉象嵌縄文皿’。皿の中心からぐるぐる回っている線は組紐を転がしてつけたもので、鮮やかな青の釉薬と塩でできたソーダの釉のかけ合わせによって縄目模様が引き立てられている。また、中国の越州窯の青磁壺を連想させる‘象嵌縄文三筋大丸壺’も心を鎮めてくれる。

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2023.10.01

美術で‘最高の瞬間‘! 十二代・十五代沈壽官

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 十二代 沈壽官の‘錦手松竹鶴図花瓶’(1880~1900年 沈家伝世品収蔵庫)

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    ‘錦手菊花浮上総飾三足香炉’(1870年代 三の丸尚蔵館)

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  十五代 沈壽官の‘薩摩蝶乗花瓶’(2010年 沈家伝世品収蔵庫)

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    ‘薩摩獅子乗大香爐’(2010年 沈家伝世品収蔵庫)

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    ‘薩摩七宝伏香爐’(2010年 沈家伝世品収蔵庫)

薩摩焼をまとまった形でみる機会があったのは広島からクルマで九州大旅行
をし鹿児島にある長島美を訪問したとき。シャガールの絵同様、感激したの
が薩摩焼のコレクション。これが西洋人に人気のあったSATSUMAか、と息
を呑んでみたいた。ここから薩摩焼への興味が膨らんでいくが、幕末から
明治にかけて活躍した十二代 沈壽官(1835~1906)の作品を実際
にみたのは三の丸尚蔵館にある‘錦手菊花浮上総飾三足香炉’。

この時代たくさん制作された装飾品としての大型の香炉にまずびっくりする
が、器面に立体的な造形を貼り付けるその装飾に目が点になる。精巧な彫刻に
よる竹籠の器面に丸い小さな菊が咲き乱れ、香りに誘われてまわりを蝶が舞っ
ている。全体が茶褐色なので一見するとグロテスク感もあるが、じっくりみ
ると高い技術が駆使された名品であることを実感する。

‘錦手松竹鶴図花瓶’は2011年日本橋三越で開催された‘薩摩焼 桃山から
現代へ 歴代沈壽官展’でお目にかかった。色絵金彩の手法である錦手の名品
中の名品である。金彩で描かれた華やかな花鳥画はまるで屏風絵をみている
よう。やきものだからその輝きが永遠に失われないのがいいところ。

薩摩焼に特別の関心を向けさせるのが十五代 沈壽官(1959~)の存在が
大きい。三越で2010年につくられた作品をみて大変魅了された。これは
スゴイ才能を持った人が沈家を継いだと思った。やきものの蝶をあしらった
ユニークな‘薩摩蝶乗花瓶’にガツンとやられ、‘薩摩獅子乗香爐’と‘薩摩七宝伏
香爐’のすばらしい出来栄えにも感心させられる。

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2023.09.30

美術で‘最高の瞬間‘! 十四代酒井田柿右衛門 吉田美統

Img_0003_20230930230001   十四代酒井田柿右衛門の‘濁手山つつじ文鉢’(1986年)

Img_0002_20230930230001    ‘濁手つつじ草花地文蓋物’(2005年)

Img_0004_20230930230101    ‘濁手桜文八角鉢’(2000年)

Img_0001_20230930230101    吉田美統の‘釉裏金彩鉄線文鉢’(1992年 文化庁)

Img_20230930230101     ‘釉裏金彩更紗文花器’(2012年)

有田で焼かれた‘柿右衛門様式’は日本の陶磁器のイロハのイのようなものだ
から、米のとぎ汁のようにやわらかい乳白色の素地のことをいう‘濁手’をTVのやきもの番組で夢中になってみた。話をしてくれるのは十四代
酒井田柿右衛門(1934~2013)。この知識を頭に入れ人間国宝展などで本物の作品をみた。この濁手によって赤が美しく映えるのを感じるのが十四代柿右衛門の作品の一番の楽しみ。

十四代はつつじが好きで絵付によくでてくる。‘濁手山つつじ文鉢’は濁手の
素地に旋回する山つつじの模様がとても軽やかな印象をうける。やはり
視線は赤に集中する。‘濁手つつじ草花地文蓋物’は丸い形が目の心地いい蓋
に二つの大きなつつじが向きあい、のびのびとした姿をみせている。器の
側面には更紗文様や花菱の地紋が帯状にめぐらされている。‘濁手桜文八角
鉢’は型打ち成形による八角の鉢に赤が引き立つ桜が明快に表現されている。
品の良さを感じる鉢である。

九谷焼にも金箔の輝きが使われている作品がTVで紹介された。その陶芸家は釉裏金彩の人間国宝に認定されている吉田美統(よしだみのり 1932~ 小松市の生まれ)。代表作の一つが‘釉裏金彩鉄線文鉢’。釉裏金彩は陶磁器の器胎に金箔や金泥などの金彩を用いて文様を描き、その上から釉薬を施して焼成する技法。金彩が釉薬の下にあるのが特徴で、この技法は中国や日本の古陶磁にはなかった。吉田はこれに挑戦し、緑のグラデーションのかかった鉢を背景に鉄線の花を金箔で格調高く描いている。

‘釉裏金彩更紗文花器’は金箔の更紗文が縦方向に連続模様で表現され、二つのフォルムがぐるっとまわっている。銀ねずみ色の地に優美に浮き上がる更紗文がとても雅で古の日本がイメージされる。これまで少数の陶芸家しかやってなかった技法にのめりこみさらに進化させ荘厳な雰囲気を漂わせるのだから、背筋をしゃきっと伸ばしてみてしまう。

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2023.09.29

美術で‘最高の瞬間‘! 十三代今泉今右衛門

Img_0001_20230929223401     ‘色絵かるかや文鉢’(1969年 東近美)

Img_0003_20230929223401     ‘色絵薄墨露草文大鉢’(1981年 佐賀県九州陶磁文化館)

Img_0004_20230929223401     ‘色絵薄墨珠樹文蓋付瓶’(1987年 東近美)

Img_20230929223401     ‘色絵吹重ね草花文鉢’(1996年 東博)

Img_0002_20230929223501     ‘色絵吹重ね珠樹草花文鉢’(2001年)

NHKのやきもの番組を熱心にみていたとき、十三代今泉今右衛門
(1926~2001)が登場し新たな技法をつかって生み出した現代の色鍋
島を披露してくれた。興味深く映ったのが霧吹きで酸化ウラニウムを噴霧状に
吹き付ける‘薄墨’の技法。絵画と違ってやきものは作品ができあがる過程がみれ
るので理解が促進する。当時、有田焼では今右衛門の作品と井上萬二の白磁に
もっとも惹かれていた。

回顧展になかなか遭遇しなかった間は日本工芸展の特別展や人間国宝展で今右
衛門の作品に散発的にお目にかかっていた。東近美蔵の‘色絵かるかや文鉢’では
思わず足がとまった。かるかやの小気味よいリズム感が目を楽しませてくれる。
江戸中期の鍋島にみられる口縁の赤と青の組紐を連想させる。

‘色絵薄墨露草文大鉢’は初期に薄墨作品の代表作。薄墨でできた灰色の釉色に
露草が緩やかに踊っているような印象をうける。身近にみられる露草をシャー
プな形にデザインし、動的表現をみせる感性に驚かされる。‘色絵薄墨珠樹文蓋
付瓶’は見ごたえのある大型作品。区画された8面には珠樹文と丸文が交互に描
かれている。丸文を浮かび上がらせる雲地文もよく絡み合っている。

‘色絵吹重ね草花文鉢’は藍色の呉須を吹き付ける‘吹墨’と‘薄墨’を重ね合わせたもの。藍色と灰色が見事に吹き分けられ、二種類の草花文は中心部から放射線状に渦をまくように広がっている。同じ技法の‘珠樹草花文鉢’は最晩年の作品。力強い構図に大変魅了される。

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2023.09.28

美術で‘最高の瞬間‘! 加藤卓男 藤本能道

Img_0004_20230928225401     加藤卓男の‘三彩花器「爽容」’(1996年 東博)

Img_0005_20230928225401      ‘藍彩彫花文四方鉢’

Img_0003_20230928225401      ‘ラスター彩芥子文六方器’(2000年 茨城県陶芸美)

Img_20230928225501   藤本能道の‘草白釉釉描加彩翡翠図四角隅切筥’(1985年 東芸大美)

Img_0001_20230928225501    ‘草白釉釉描色絵金彩渓流紅葉図長四角筥‘(1990年)

Img_0002_20230928225501    ‘雪白釉色絵金銀彩合歓双雀図六角筥’

陶芸家の作品に接する機会はTVの美術番組と美術館で行われるやきもの展。
絵画とちがって陶芸などの工芸展はそうは開かれないので、陶磁器に目を
慣らすのは美術番組をみるのが役立つ。加藤卓男(1917~2005)
はやきものの番組にはよく登場していたので、どんな作風かは作品の数は
少ないがそこそこインプットされた。

2014年東博で開催された大規模な‘人間国宝展’に加藤卓男の‘三彩花器
「爽容」’が出品された。横で一緒に飾られているのが‘奈良三彩壺’(奈良
時代・8世紀 九州博)。加藤は正倉院三彩の復元を依嘱され、7年間を費やし‘三彩鼓胴’を完成させた。これで会得した緑、褐、白の3色の釉薬を生かして新しい三彩に挑戦したのが‘爽容’。奈良三彩の硬い表現とは異なるほわっとした柔らかさと動きが感じられる三彩である。

‘藍彩彫花文四方鉢’は色が藍一色になり白の地に藍の細い流れが‘爽容’と同
じような調子で描かれている。みずみずしい釉薬の色調が心をとらえて離
さない。ペルシャ陶器のラスター彩を復元した‘ラスター彩芥子文六方器’
も見事な作品。藤本能道(1917~1992)はやきもので絵画表現をおこなった陶芸家。だから、どの作品もぐっと近くに寄ってみてしまう。

作品にはとても長いタイトルがついている。横をむく翡翠に視線が集中する筥には‘草白釉釉描加彩翡翠図四角隅切筥’。勢いよく水がながれる渓流の上を鳥が飛ぶ姿が俯瞰の視点で描かれた四角筥はちょっと蒔絵の硯箱を連想させる。花をつけた合歓にとまる雀が雪白釉によっていっそう引き立てられている筥は鳥や草花の意匠と器面が一体化した見事な絵画的な表現でまさに神業的。本当にすごい!

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2023.09.27

美術で‘最高の瞬間‘! 川瀬忍 神農巌 志賀暁吉

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    川瀬忍の‘青磁大鉢’(2010年)

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     ‘青磁花入 銘「参星」’(2014年)

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    神農巌の‘堆磁線文壺’(2012年)

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     ‘堆磁線文壺’(2012年)

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    志賀暁吉の‘青瓷壺’(2007年)

関心を寄せている青磁の陶芸家の回顧展を見逃すことのないよう定期的に手
持ちの情報源にアクセスをしているが、思うようにグッドニュースが入って
こない。また、以前ほど展覧会へでかける回数が減っているため、‘犬も歩け
ば棒に当たる’ことが少なくなっていることも影響している。今、個展に巡り
合わないかと期待をかけているのは‘青磁のいまー受け継がれた技と美 南宋
から現代まで’(2014年 東近美工芸館)に登場した陶芸家たち。

神奈川県大磯生まれの川瀬忍(1950~)はTVの美術番組で知り、その
ハッとする作品が目に焼き付いているが、まだ回顧展には縁がない。
2011年に菊池寛実記念智美術館で‘川瀬忍の青磁 天青から静かなる青へ’
が開催されたようだが、このときはまだ開眼してなかった。
東近美で全部で6点お目にかかった。とくに惹かれたのが曲線の柔らかな美
しさが左右非対称の造形により際立つ‘青磁大鉢’と縦にのびる細身のフォルム
に吸い込まれる‘青磁花入 銘「参星」’。

川瀬とともに忘れられない出会いとなったのが神農巌(1957~)の青磁。
いっぺんでファンになった。視線を釘付けにしたのが‘堆磁線文壺’。口縁や胴
に盛り上がりがみられ、どこか神秘的な造形に惹かれる。これは神農が毎日、
工房からながめている琵琶湖の湖面の情景を表現するために生み出した‘堆磁’
と呼ばれる技法が使われている。泥状にした磁土に筆を含ませ何度も塗り重
ねて線文を描きだしている。こんな強いインパクトをもつ線文がついた壺は
みたことがない。同じ2012年に制作された壺も息を呑んでみていた。
本当にすばらしい!

志賀暁吉(1977~)は福島県の出身で地元で作陶をしている期待の陶芸
家。2007年に行われた第19回日本陶芸展で見事、実力日本一の大賞・
桂宮杯に輝いた。その作品が‘青瓷壺’、花入のような縦長の壺で大まかな貫入
がとても心地がいい。南宋官窯青瓷の釉を彷彿とさせる色彩と貫入に200
%KOされた。大賞を受賞したのは37歳のとき(史上最年少)で今年46
歳。いつか回顧展をみてみたい。

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