2020.05.14

Anytime アート・パラダイス! 七変化の画家 カイユボット

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  ‘雨のヨーロッパ広場'(1877年 シカゴ美)

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  ‘ヨーロッパ橋'(1876年 ジュネーブ プティ・パレ美)

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  ‘床のかんなかけ'(1875年 オルセー美)

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  ‘ペリソワール'(1877年 ワシントンナショナルギャラリー)

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  ‘スタンドに並べられた果物'(1882年 ボストン美)

2008年に訪問したシカゴ美にはお宝中のお宝ともいえる絵が3点ある。
スーラの‘グランド・ジャット島の日曜日の午後'、ホッパーの‘夜ふかしをする
人たち'。さて、もう一枚の絵はどれか、それは印象派の画家カイユボット
(1848~1903)の‘雨のヨーロッパ広場'。カイユボットはあまりみた
ことないけど、そんないい絵がシカゴにあるの?と思われた方が多いかもしれ
ない。

ところが々、ここには仰天するほどすばらしいカイユボットがどーんと展示さ
れているのである。縦2.1m、横2.8メートルの大作で人々が行きかう
街路の様子が巧みな構図でとらえられており、見ているわれわれも向こう側に
むかって歩いているよう。そして目が点になるのが雨で濡れた路面の描き方。
その湿潤な感じがよくでており滑らないようにゆっくり歩こうという気になる。

この絵と似た雰囲気をもつのが2013年にブリジストン美で開催された‘カイ
ユボット展'に出品された‘ヨーロッパ橋'。ここで印象深いのは橋の鋼鉄製の橋桁
や真ん中の男女、そして犬の路に映る影、日差しが強いときみられる光景だか
ら絵の中にすっと入っていける。

タイトルの‘七変化の画家'はこの回顧展の副産物。有り難いことにブリジストン
の奮闘によって海外からいい絵画たくさん集まってきた。それらを一点々じっ
くりみながらほかのどの画家と描き方が似ているかいろいろ思い浮かべてみた。
すると、お馴染みの画家たちがでてくる。カイユボットはゴーギャンと同い年
だが、先達の画家たちの技法を吸収し独自の作風をつくっていったことがよく
わかる。例えば肖像画はドガ的なところがあり、オルセーにある‘床のかんなか
け'はどこかマネの絵に通じる。

ひとり乗りのカヌー(ペリソワール)を漕ぐ男たちを描いた作品はモネを彷彿
とさせるが、こちらにぐいぐい進んでくるカヌーを画面の真ん中にすえアッ
プで描くところはカイユボットならではの表現。川の水面に光がきらめきカヌ
ーを速いスピードで乗りこなす若い男がどんどん迫ってくる。これは映画の撮
り方でもある。本当にいい絵と出会った。

ボストン美で遭遇した‘スタンドに並べられた果物'はMy‘静物画ベスト5'に入れ
ている作品。果物の量感と赤や黄色の力に200%KOされた。マネもセザンヌ
もこの果物をみたら裸足で逃げたにちがいない。

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2020.05.13

Anytime アート・パラダイス! ロートレックの陽と陰

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   ‘寝台'(1892年 オルセー美)

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   ‘個室の中'(1899年 コートールド美)

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   ‘カフェ・ミー'(1891年 ボストン美)

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 ‘シミーズをまくる女'(1901年 オルブライト=ノックス美)

絵描きの創作意欲が画家の常日頃の感情の持ちようによって支配されている
のは間違いないが、陽気なときと精神が不安定なときの振れ幅がどれくらい
あるかは画家それぞれ。ロートレックは後年モンマルトルに入り浸って馴染
みの娼婦と会話を交わし酒をあおるという生活だったから、作品には娼婦が
たくさん登場する。

でも、こういう都会の底辺に生きる人々の陰の部分だけがロートレックの
表現のすべてではない。見る者に無邪気で底抜けに明るい気分をよびおこす
絵も描いている。その極めつきがオルセーにある‘寝台'と昨年のコートールド
美展に出品された‘個室の中'。‘寝台'はベッドで寝ている人はすごく親しみを
覚えるにちがいない。恋愛映画にはこういうシーンは必ずでてくる。
そして、‘個室の中'は真っ赤な口紅が印象的な高級娼婦のはじける笑顔がなん
ともいい。お客がひっきりなしにつくから余裕で気分は自然とおおらかにな
るのだろう。

ドガの‘アプサント'を意識して描いたのが‘カフェ・ミー'、ドガの絵と同様、
二人は心が通い合っていないことはすぐ察しがつくが、この状況は典型的な
中年離婚の症状。ぷいと横を向く女の心の中は‘もうあんたなんかの顔もみた
くないわ、ほとほと愛想がつきたよ。大人しくお前のいうことをきくよ、
なんて言ったってよりを戻す気はないからね'ということかもしれない。

‘シミーズをまくる女'は日本で30年くらい前開かれたアメリカのバッファ
ローにあるオルブライト=ノックス美の所蔵名品展でお目にかかった。当時
はまだロートレックのイメージがポスターで固まっていたから、リアルな
人物描写にドキッとした。

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2020.05.12

Anytime アート・パラダイス! ロートレックに乾杯

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  ‘ムーラン・ルージュにて'(1892年 シカゴ美)

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  ‘マルセル・ランデ'(1896年 ワシントンナショナルギャラリー)

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  ‘ムーラン・ルージュにて:踊り'(1890年 フィラデルフィア美)

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 ‘ムーラン・ルージュにて 踊る二人の女たち'(1892年 プラハ国立美)

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  ‘赤毛の女(化粧)'(1889年 オルセー美)

日本でロートレック(1864~1901)の回顧展が開かれた場合、展示
の中心は歓楽の街モンマルトルにある劇場の宣伝ポスターや踊り子たちを描
いた版画になることが多い。だから、ロートレックはインパクトのあるポス
ターを得意とした画家というイメージができあがってしまう。こういう作品
一度はみておきたいが、そのあとはパスでもいいかなという気になる。

これまでロートレックをとりあげるときはいつも述べているようにこの画家
の真骨頂は油絵のほう。ではその作品はどこに行けばみれるか。もちろん
パリのオルセーは外せないしいい絵画があるが、もっと楽しもうと思えば
アメリカの美術館をまわるのがいい。もっとも魅了されているのが2008年
に訪れたシカゴ美で遭遇した‘ムーラン・ルージュにて'。右端にアップで描か
れた女性の顔に度肝をぬかれた。額と目と鼻が薄青緑でほかの光があたった
ところは白の化粧を塗りたぐったようにみえる。この女性からのびる対角線
上に男性の客が並び向こうから2番目にいるのがロートレック自身。このは
っとさせる構図は明らかに浮世絵の描き方を意識している。

ワシントンのナショナルギャラリーにある‘シルぺリック劇場でボレロを踊る
マルセル・ランデ'は浮き浮きさせる絵。TASCHENのロートレック本の表紙
を飾っているのがこの絵。見たくてしょうがなかったが2008年のときは
なぜか姿をみせてくれなかった、思いの丈が叶ったのはその5年後。この美術
館にはロートレックはほかにも4,5点あるがこの絵が一番輝いていた。
踊りが入った絵はムーラン・ルージュのものがフィラデルフィア美とプラハ
国立美にある。こちらはマルセル・ランデと比べると踊りが派手でなく静か
な感じにみえ、手前の人物を大きく描きその向こう側に奥行き感をつくって
店の賑わいを表現している。

女性の絵にどっぷりはまっているのには後ろ向きで顔をみせないものはまった
く心が動かされない。でも、例外が一枚ある。それはロートレックの‘赤毛の女
(化粧)'。背中がこの娼婦の心情を語っているようで惹かれる。床に座ってい
るのがいいのかもしれない。

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2020.05.11

Anytime アート・パラダイス! パリのエンターテイメント

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  ドガの‘バレエの授業'(1876年 オルセー美)

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  ‘競馬場:アマチュア騎手たち'(1887年 オルセー美)

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  ‘田舎の競馬場で'(1869年 ボストン美)

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 ‘フェルナンド・サーカスのララ嬢'(1879年 ロンドン・ナショナルギャラリー)

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   ‘カフェ・コンセール'(1877年 リヨン美)

ドガはバレエがよほど好きだったのか踊り子の姿をスポットライトを浴びる
舞台、開演前のリハーサル、厳しい稽古場などいろいろな場面で描いた。
普通に発想すると観客の視線を一心にあつめる踊り子の晴れ姿を描けばそれ
で終わりとなる。ところが、ドガは舞台の裏側をなぜかこまごまとみせてく
れる。‘バレエの授業'はよくあるTVの芸能ドキュメント番組‘オペラ座踊り子
物語'をみているよう。

芸事に厳しい稽古は当たり前、一流になるためには足の曲げ方、手の動かし
方など体におぼえさせることはたくさんある。真ん中で杖を支えにして立っ
ている老教師の鋭い視線からはレッスンの厳しさが伝わってくる。指導がす
でに終わった子や順番を待っている子のなかには背中を掻いたり耳をさわっ
ている子もいる。ドガの目がいろんなところをみているのがおもしろい。

踊り子同様、ドガの競馬場の絵にはレースがはじまる前の光景がたくさんで
てくる。注目は馬の描き方。‘競馬場:アマチュア騎手たち'では左の1頭だけ
は緊張のためパワーが発散するのか入れ込んでいる。それを御するのが騎手
の手綱さばき。スタート前にはよくみられる光景だが、ドガはよくとらえて
いる。‘田舎の競馬場'は一家で競馬見物にでかけた情景が描かれている。
中景の左にレース中の2頭が疾走しているところがみえ。でもそこはちらっ
とみるだけで視線は手前の右隅に大きく描かれた量感たっぷりの馬車のほう
に長くとどまる。

小さい頃はサーカスへ連れていってもらうと嬉しくてたまらなかった。あの
木下サーカスを何度もみた。ところで、このサーカス団はまだ存在している?
ドガにはサーカスの舞台を描いた作品がある。‘フェルナンド・サーカスの
ララ嬢'。ララ嬢が口に食わえているのは一本のロープとつながった金属製の
もの。歯でくわえる力が少しでも弱くなると下へ落下する。いつも緊張して
みている。

‘カフェ・コンセール'はまだ縁がない。若い頃ジュネーブに住んでいたとき、
隣の方は日本人家族の奥さんたちと連れだってリヨンへでかけた。パステル
で描かれたダンサーの赤の衣装が印象深く目に焼きつくこの絵をなんとして
もみたい。ドガはこの絵をみるまでは済みマークがつけられない。リヨン美
は一級の美術館でほかにもいい絵は揃っていることはわかっている。リヨン
行きの夢は果たして叶うだろうか。

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2020.05.10

Anytime アート・パラダイス! 風俗画家ドガ

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  ‘アイロンをかける女たち'(1886年 オルセー美)

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 ‘アイロンをかける女性'(1887年 ワシントン・ナショナルギャラリー)

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  ‘婦人帽子店'(1882年 シカゴ美)

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  ‘アプサント'(1876年 オルセー美)

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  ‘菊のある婦人像'(1865年 メトロポリタン美)

画家の好き嫌いにはいろんなことが絡む。絵に対する先入観をあまりもたず
幅広くみることを心掛けているが、それでもはじめから心が向かわない画家
もいる。例えば、ルネサンスのあとに登場したマニエリスムとか幽霊を連想
させる描き方をするイギリスのビッグネーム、フランシス・ベーコン。
また、ある時期まで関心が薄かったが、なにかもめぐりあわせでグッとくる
作品に遭遇して気持ちが大きく傾く画家もいる。ドガ(1834~1917)
は後者。

ドガが最初ひっくりこなかったのはバレリーナの絵に心が動かなかったから。
絵にまだ熱心でないころはドガというとどうしてもステレオタイプ的に踊り
子の画家ととらえてしまう。このイメージが海外の美術館をまわって踊り子
ではない作品に接するようになってからだんだんほぐれてきた。その絵が
パリのカフェの光景やいろいろな店で働く人たちを描いたもの。

ブリューゲルが農村における人々の生活をおおらかに描いたのに対し、ドガ
は近代化を突き進む大都市パリの光と影をすごい観察力できりっと表現して
みせた。オルセーにある‘アイロンをかける女たち'をみたときはあくびをして
いる女に親しみを覚えた。どんなときにあくびがでるかわかっているから
アイロンがけに疲れた様子につい感情移入してしまう。一方、ワシントンに
ある同じアイロンがけの絵は山ほどある仕事をテキパキこなしている感じ。
忙しすぎてあくびもでないだろう。

シカゴ美でお目にかかった‘婦人帽子店'に大変魅了されている。売り物の帽子
をじっくりみている店員のさりげない一瞬のポーズがじつに上手い具合にと
らえられている。女の頭を並べた帽子であえて隠すところが憎い。ドガは
浮世絵にも興味をもっていたから真ん中、左右に帽子をどんともってくる
構図はその影響かもしれない。

‘アプサント'と‘菊のある婦人像'は近代化していくパリの影の部分が垣間見ら
れる作品。カフェでぼーっとしている女もエゾギクの横で晴れない顔してい
る婦人もどこか寂し気で不安を感じている様子。ドガの鋭い観察眼にはほと
ほと感心させられる。

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2020.05.09

Anytime アート・パラダイス! セザンヌ物語

Img_0001_20200509220601   ‘赤いチョッキの少年'(1890年 ビュールレ・コレクション)

 

Img_20200509220701    ‘りんごとオレンジ'(1899年 オルセー美)

 

Img_0003_20200509220701   ‘トランプをする人々'(1890~92年 オルセー美)

 

Img_0004_20200509220701  ‘大きな松のあるサント=ヴィクトワール山'(1887年 コートールド美)

 

Img_0002_20200509220701   ‘大水浴図'(1900~05年 フィラデルフィア美)

西洋絵画とのつきあいがはじまったのは成人になってからで、国内外の美術
館へ足を運ぶのがだんだん楽しくなりでかける回数が増えていった。だから、
大学生の頃までは中学・高校の頃の教科書やなにかの機会で目に入った美術
本に載っていた作品が画家が描いた絵のイメージのもとになっている。
セザンヌ(1839~1906)については最初にインプットされたのは
‘赤いチョッキの少年'、‘りんごとオレンジ'、そして‘トランプをする人々'。

おもしろいことにセザンヌに関しては、このころの印象がそのまま愛着度の
強さになっている。印象派の殿堂オルセーに訪れたとき、セザンヌのコーナ
ーで気持ちが高ぶったのはやはり‘りんごとオレンジ'。静物画はこの絵によっ
てうえつけられたから、もう最高に嬉しかった。これをみるたびに思い出す
のがある有名な絵画愛好家の言葉、‘この絵はモチーフが多視点から描かれて
いてこれがピカソやブラックのキュビスムに大きな影響を与えた。だから、
セザンヌはモネやルノワールより上なんですよ'。セザンヌ好きには理屈っぽ
い人が多くこういうつまらないことを平気で言う。新鮮でビビッドに表現さ
れたりんごやオレンジの楽しみ方がまるでわかってない。

昨年コートールド美が所蔵する‘トランプをする人々'が目を楽しませてくれ
た。これとオルセーにある別ヴァージョンを一緒に並べたミニセザンヌ展が
オルセーが大改修をしているときロンドンのコートールドで開催された。
運よくこれとめぐりあったが、ひとつひとつのの絵をみているとどちらも
グッとくるのに、二つが並んでいると画面のサイズに対して2人の男がより
大きく描かれているオルセーのものにどうしても目が寄っていく。貴重な
体験だった。

‘赤いチョッキの少年'と遭遇するのに長い時間がかかった。本物が姿を現し
たのは2年前の春、この絵を知ったころは少年の右手が異常に長いことなど
考えもしないから違和感などあろうはずがない。ふしぎなことに長い時を経
てみても昔同様、すっと絵の中に入っていける。これがセザンヌのマジック。
そして、永遠に目に焼きつけられる。

‘大きな松のあるサント=ヴィクトワール山'はセザンヌの風景画で一番心地
よく楽しめる作品。手前に松の枝で窓枠をつくるようにする構図は明らかに
浮世絵の描き方を意識している。でも、セザンヌはその事には一切触れない。
浮世絵の力を借りて創作したのではないと思っていたのだろう。

最後にたどり着いたビッグな作品が2度目のフィラデルフィア美訪問でお目に
かかれた‘大水浴図'。5年前のことだが、縦2m、横2.5メートルの大画面
に描かれた三角形構図に強い感銘をうけたことを今でも昨日のことのように
覚えている。そして、思った。この傑作をみたらロンドンナショナルギャラ
―、オルセー、そしてバーンズコレクションにある水浴図はみれないなと。

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2020.05.08

Anytime アート・パラダイス! ゴーギャンの悪魔的世界

Img_20200508222901   ‘死霊が見ている'(1892年 オルブライト=ノックス美)

 

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‘オヴィリ(野生)'(1894年 オルセー美)

 

Img_0003_20200508222901   ‘ぶどうの収穫(人間の悲劇)'(1888年 オードロップガード美)

 

Img_0002_20200508223001  ‘肘掛け椅子のひまわり'(1901年 ビュールレ・コレクション)

1891年タヒチに渡ったゴーギャンは西洋とは全く異なる野生の世界と真摯
に向き合った。そこからでてくる表現にはエキゾチックすぎて悪魔的な怖さを
感じてしまうほど力がある。‘死霊がみている'はそんな極めつきの一枚。いっ
しょに生活していた少女がおびえた顔をしてベッドに横たわっているのは左奥
に死霊がいるから。自然とともに生きるタヒチの原住人が一番恐れたのが死霊。
ゴーギャンも一度みたことがあると言っている。

オルセーにある女性彫像‘オヴィリ'は不気味なイメージがとても強い。オヴィリ
はタヒチ語で‘野生・未開‘を意味し、ゴーギャンは文献を読んで月の女神ヒナと
地の神ファトウを再生させた。彫刻はほかに自分を描いた壺が有名だが、女神
像の影が重なり緊張を強いられる。

ゴーギャンはタヒチに行く前から相当ワイルドライフにのめりこんでいたから、
‘ぶどうの収穫(人間の悲劇)'のようにかなり違和感のする女性が登場する。
異様につりあがった目はどこか小悪魔の姿を彷彿とさせる。このつりあがった目
の人物はよく登場し、プーシキンにある‘浅瀬'にでてくる馬に乗った死霊の目も
忘れられない。

複数のヴァージョンがある‘肘掛け椅子のひまわり'はじっとみるとドキッとさせ
られる。肘掛け椅子の上におかれたひまわりはゴッホとのかかわりを意識した
ことをうかがわせるが、関心の的はこのひまわりよりも椅子の背もたれにかけられた白い布の向こう。そこにルドンの眼球を連想させる花が浮かんでいる。これもタヒチの死霊や悪魔の存在を意味している?

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2020.05.07

Anytime アート・パラダイス! ゴーギャン ベスト5

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  ‘説教のあとの幻影'(1888年 スコットランド・ナショナルギャラリー)

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   ‘浜辺の二人の女'(1891年 オルセー美)

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   ‘アベマリア'(1891年 メトロポリタン美)

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   ‘果物を持つ女'(1893年 エルミタージュ美)

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  ‘我々は何処から来たのか、'(1897年 ボストン美)

好きな画家への思い入れが強くなればなるほど、究極の傑作を選んでみたく
なる。ゴーギャン(1848~1903)の場合、ここにあげたのがベスト
5。描かれた順番に並べてみた。

タヒチに行く前に滞在したブルターニュ地方のポン=タヴェンで描いた
‘説教のあとの幻影'は北斎漫画の影響が見られる作品としてよく紹介される
ので本物をみたくてしょうがなかった。でも、この絵があるのは遥か離れた
スコットランド・ナショナルギャラリーだからそう簡単にはみれない。
運がめぐって来たのは2010年、ロンドンのテート・モダンで大ゴー
ギャン展が開催されたので、これにあわせてパリ・ロンドン旅行を組み長年
の思いの丈を叶えた。

はじめてのオルセーでは美術の教科書に載っていた画家の代表作が次々目の
前に現れるのでテンションが上がりっぱなしだった。ゴーギャンは5,6点
あったがもっともインパクトがあったのは太い腕や足などが強い存在感を生
み出している‘浜辺の二人の女'。この絵によってタヒチのゴーギャンの
イメージができあがった。同じ年に描かれた‘アベマリア'にも大変魅了され
ている。アメリカの大きな美術館はどこもいいゴーギャンをもっているが、
数が多いのがメトロポリタンとワシントンナショナルギャラリー。METの
‘アベマリア'はまるで西洋の宗教画のよう。立ち尽くしてみていた。

20年前、サンクトペテルブルクのエルミタージュ美を訪問したのは生涯の
思い出である。モスクワのプーシキン同様、ゴーギャンが印象派・ポスト
印象派コレクションの目玉で15点ある。そのなかで200%心を奪われた
のが‘アベマリア'の2年後に制作された‘果物を持つ女'。どーんと大きく描か
れた美形のタヒチ女に呆然としてしまった。

絵のタイトルが哲学者や思想家が発する言葉のようになっているため小説や
演劇、映画など絵画以外でもよく使われる‘我々は何処から来たのか、我々は
何者か、我々は何処へいくのか'は2009年東近美で公開された。ボストン
美との相性の良さから実現したとはいえ、一生に一度の‘大事件'だった。
この大作にはゴーギャンの画家人生が全部つまっている。ゴーギャンに乾杯!

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2020.05.06

Anytime アート・パラダイス! もっとみたいゴーギャン

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  ‘神の子の誕生'(1896年 ノイエ・ピナコテーク)

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   ‘市場'(1892年 バーゼル美)

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   ‘アルルのカフェ'(1888年 プーシキン美)

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  ‘マンゴーとタヒチの女'(1896年 プーシキン美)

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  ‘マンゴーを持つ女'(1892年 ボルチモア美)

西洋美にやってくることになっていたゴッホの‘ひまわり'(ロンドンナショナ
ルギャラリー蔵)は新型コロナウイルスの感染の影響でロンドンナショナル
ギャラリー展自体が実現しそうにないので‘幻の展示'に終わりそう。ゴッホの
回顧展は昨年の秋から今年の1月まで上野の森美で開かれたように日本では
その人気の高さを反映して定期的に開催されることが多いので、なんらかの
リカバリーがあることを期待したい。

ゴッホとくればゴーギャン(1848~1903)のことも一緒に思い浮か
ぶ。でも、ゴーギャン展はゴッホの5分の一くらいの頻度でしか遭遇しない。
そのため、お目当ての絵をみるためにはどうしても海外へ出かけて行く必要
がある。ところが、今は海外旅行どころではない状況。アバウトな美術館巡
り計画にもうひとつアバウトがつきそうだが、まだあきらめてない。

2018年デンマークのコペンハーゲンにあるニューカールスベア美術館で
質の高いゴーギャンコレクションをみた。これでコンプリートの階段を1段も
2段も上がった感じ。そして、次にターゲットはミュンヘンのノイエ・ピナコ
テーク、バーゼル美、モスクワのプーシキンにある作品。

この3館にはほかの画家のいい絵がたくさん揃っているが、ゴーギャンは
所蔵品のなかでも自慢のひとつであることは間違いない。みる順番はどうな
るかわからないが、画集に必ず載っている‘神の子の誕生'、‘市場'の場合、
どうしても個人旅行になりそう。プーシキン美はアメリカのアンテロープ
キャニオン行の後に予定を組んでいるので、コロナウイルス次第だが数年の
うちに‘アルルのカフェ(ジヌー夫人)'と‘マンゴーとタヒチの女'とは対面で
きるかもしれない。

可能性が低いのがボルチモア美にある‘マンゴーを持つ女'。インパクトの強い
愛紫の衣装とタヒチ美人の顔立ちに心を奪われ続けているが、本物の鑑賞と
なると荷が重い。どうやってボルチモアまでたどり着くのか。NYに1週間
くらい滞在する個人旅行を組んで実現させるというエネルギーだあるかどう
か。でも、みたくてしょうがない。

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2020.05.05

Anytime アート・パラダイス! 目に心地いい点描風景画

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 スーラの‘ポール=アン=ベッサンの外港、満潮'(1888年 オルセー美)

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  シニャックの‘微風、コンカルノー'(1891年)

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  シニャックの‘マルセイユ港の入り口'(1911年 オルセー美)

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  ドランの‘ウォータールー橋'(1906年 テイッセン=ボルネミッサ美)

イギリスの著名な美術史家ケネス・クラークの著作のひとつに‘風景画論'
(1949年)というのがある。西洋画における風景画の位置づけを知るに
は丁度いいだろうと思って読んだのだが、気になることが書かれていた。
クラーク大先生は‘風景を絵にするのはおもしろくない'とおっしゃる。われ
われ日本人は水墨画や浮世絵があるので風景画を絵のジャンルとしては高い
ところにおいている。だから、この発言はちょっとショックだった。

この本を読んだ後、家のまわりの風景をじっくりながめてみた。たしかに
クラークのいうことがあたっているといえなくもない。いつもの見慣れた
光景に激しく心が揺すぶられることはない。立ち止まって感じ入る風景と
いうのは目を奪われるほど美しい街のなかを流れる川とか雄大な山々、
広々とした海の光景といったものに限られる。そのため、感情が深く入っ
ていく風景画に遭遇することは少ないし、人物が描かれていないものはなお
さらそうなる。

こうした目の前の光景をリアルにとらえて画面をつくっていくものと比べる
と、スーラ(1859~1891)やシニャック(1863~1935)が
はじめた点描を用いた風景画は色彩の力が強くなり装飾性があり意匠的な
表現がみられるようになる。スーラは人物のいない静謐なイメージの海景画
をいくつも描いている。お気にいりのひとつがノルマンディーのポール=
アン=ベッサン。目を細めてみると小説が書けそうな風景にみえてくる。

色の点々の大きさがスーラより少し大きいシニャックの点描風景画。最も魅
了されているのが‘微風、コンカルノー'、風が相当強く吹いているためたくさん
いるヨットの帆が大きく傾いている。なんだか海のポスターをみているよう。
‘マルセイユ港の入り口'とドラン(1880~1954)の‘ウォータール―橋'
は斑点の効果で色彩がいっそう浮きたち強烈な陽の光が目に突き刺さってくる。

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