2020.03.12

Anytime アート・パラダイス! オーヴェールのゴッホ

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    ‘自画像’(1889年9月 オルセー美)

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  ‘パイプをくわえた包帯の自画像’(1889年1月)

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   ‘オーヴェールの教会’(1890年6月 オルセー美)

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  ‘ドービニーの庭’(1890年7月 バーゼル美)

数多く描かれたゴッホ(1853~1890)の自画像のなかで気に入って
いるのはオルセーにあるもの。薄青で塗られた背景には渦巻きまじりの曲線
がありその流れが上着の皺にも連動しているが、顔の描き方はとても写実的
でゴッホは当時こんな顔をしていたのかとついじっとみてしまう。

耳切り事件のあと、右の耳に包帯をした姿で描いた作品は2点ありひとつは
質の高い印象派のコレクションが昨年日本で公開されたコートールド美にあ
るが、展覧会には残念ながら含まれてなかった。もう一点は個人コレクター
が所蔵している‘パイプをくわえた包帯の自画像’。ゴッホ全集ではよくながめ
ているけれども本物との対面は実現しそうにない。でも、みたい、とっても
みたい!

ゴッホの絵を最初まとまった形でみたのはアムステルダムのゴッホ美とパリ
のオルセー。どちらでも絵の前では大興奮。ここからゴッホとの長いつきあ
いがはじまった。オルセーで大変魅了されたのはゴッホがサン・レミから
移ってきたパリ郊外のオーヴェール・シュル・オワーズで描いた‘医師ガシ
ェの肖像’と‘オーヴェールの教会’。オーヴェールにある小さな教会が人物の
ような感じで深い青に浮かび上がるようにどーんと建っている。手前に
オランダの女性を描きこんだのは故郷にいるころよくモチーフにした教会を
この教会と重ね合わせたかったのかもしれない。

バーゼル美にある‘ドービニーの庭’はゴッホの追っかけリストの第一列にあげ
ている作品。ひろしま美が所蔵する2作目の別ヴァージョンでバーゼルの絵に
は描かれている猫が消されていることを確認しているので、この猫をみない
わけにはいかない。ところで、ゴッホはどうして猫を描いたのか?同じ頃描
いた麦畑には鴉を何羽も飛ばしているので、死の間際になり急に生き物づい
たのだろうか。

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2020.03.11

Anytime アート・パラダイス! ゴッホの部屋へのこだわり

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  ‘じゃがいもを食べる人たち’(1885年4月 ゴッホ美)

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  ‘レストランの内部’(1887年7月 クレラー=ミュラー美)

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  ‘夜のカフェ’(1888年9月 イェール大美)

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  ‘寝室’(1888年10月 ゴッホ美)

建物を風景のなかにひとつの構成要素として描くのはごく自然な表現行為で
あるが、建物の内部をとらえるとなるとそこに人物にいないとどこか殺風景
な感じがするのはいなめない。だから、肖像画ではなく風俗画の色合いを
こめて室内を描くときはそこにいる人物の数は多くなる。ゴッホ(1853
~1890)にはオランダにいたときに描いた‘じゃがいもを食べる人たち’
という白黒絵画の傑作がある。

ゴッホはパリに住んでいたときスーラ(1859~1891)と交流があり、
その影響を受けて‘レストランの内部’を点描法で描いた。客がいないので部屋
のなかは静かなイメージだが、ゴッホの点描画はスーラとちがって元気がい
いので明るく客を誘い込むような華やかさだ漂っている。

これに対し‘夜のカフェ’はどこか寂し気な雰囲気につつまれ、ドガの描いた
カフェのイメージが重なる。真ん中に置かれたビリヤードは客に遊ばれるこ
となくランプの光により床にできた大きな影を広げている。そのまわりをよ
くみると数組の客が一日の疲れを癒すかのように静かに座っている。

3点制作された‘寝室’はゴッホ美にあるこの絵が最初に描かれたもので、もう
2点(オルセーとシカゴ美)はサン・レミで描かれたレプリカ。この絵の
ベッド、椅子、物置は静物画で描かれる花や果物と何ら変わりない。だから、
セザンヌのリンゴやオレンジの絵をみる感覚と同じ。そして、床の上でベッ
ドや椅子がなにか主張しているように思えてくる。

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2020.03.10

Anytime アート・パラダイス! ミレーを敬愛したゴッホ

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   ‘真昼の休息’(1889年1月 オルセー美)

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  ‘種まく人’(1888年6月 クレラー=ミュラー美)

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   ‘種まく人’(1888年11月 ゴッホ美)

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   ‘麦を束ねる人’(1889年9月 ゴッホ美)

ゴッホ(1853~1890)はどの国でも多くのファンがいる絵画界の大ス
ターだが、日本ではその人気に拍車をかけていることが二つある。それはゴッ
ホが農民画家のミレー(1814~1875)を敬愛しミレーのモチーフを
模写していること。日本には有名な‘種まく人’(山梨県美)にあり、ミレーが
好きな人たちが多くいる。さらにゴッホが浮世絵から強く刺激を受けたことも
日本人の心をくすぐる一因になっている。

ミレーの作品をベースに描いた農民画のなかでもっとも惹かれているのは
‘真昼の休息’。はじめてオルセーでみたときすごく幸せな気持ちになった。
ミレーの静かな光景とはちがいここには働く農民たちの力強さが感じられる。
また、ゴッホ美にもミレーの連作‘畑仕事’を自分流にアレンジした‘麦を束ねる
人’などが7点ある。

日本に何度もやって来たクレラー=ミュラー美蔵の‘種まく人’はもうミレーを
離れまったくゴッホ流。背景に描かれた大きな太陽の眩しいほどの日ざしが
強く印象に残る。普段の生活で太陽をこんな姿でみることはないが、最近は
天文学に関心がむかっているので以前とはこの絵をみる目が変わってきた。
ゴッホに太陽の崇高さを教えてもらっている。

2作目の‘種まく人’は浮世絵好きにはたまらない絵。木を大胆に画面の真ん中
に置くのは従来の西洋絵画ではNGとなる構図。ところが、モネやゴッホは
このようにどーんと木を配置して横にいる種まく人や後ろの大きな太陽を引
き立てる。2018年、チューリヒのビューレ―コレクションが披露された
ときこの絵の別ヴァージョンが登場した。2点ともみれたのは幸運だった。

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2020.03.09

Anytime アート・パラダイス! アルルのゴッホ

Img_20200309221001    ‘アルルの跳ね橋’(1888年3月 クレラー=ミュラー美)

 

Img_0001_20200309221001   ‘夜のカフェテラス’(1888年9月 クレラー=ミュラー美)

 

Img_0002_20200309221001     ‘収穫’(1888年6月 ゴッホ美)

 

Img_0003_20200309221001     ‘黄色い家’(1888年9月 ゴッホ美)

 

Img_0004_20200309221001   ‘ローヌ川の星月夜’(1888年9月 オルセー美)

ゴッホ(1853~1890)が南仏のアルルに住んでいた頃描いた作品には
傑作が多い。ゴッホに関心向くようになったのはいつごろだったかはっきりし
ない。ゴッホの絵は中学生のころ刷り込まれたと思う。でも、この頃はバレ
ーボールに夢中になっていたので絵画への興味はごく普通のレベル。だから、
美術の教科書に載った作品が唯一の絵画の窓。ゴッホで覚えているのは‘ひま
わり’と‘アルルの跳ね橋’、この二つによってゴッホのイメージができあがっ
た。

‘アルルの跳ね橋’をオッテルローのクレラー=ミュラー美でみたのは2011年12月。絵の前に立ったときはこれが少年の頃みたゴッホの絵かと、感慨深かった。この絵はクレラー=ミュラーのお宝中のお宝。いつも言っているが美術館は所蔵の美術品にランクをつけていてほかから貸し出しの依頼があったらランク1位の作品はまず出さない。内規で貸し出さないと決めていることもある。クレラー=ミュラーから何度も所蔵品が日本にやって来たが、これはまだ実現していない。たぶん、何年待ってもダメのような気がする。2番のランクがついているのが‘夜のカフェテラス’。こちらは嬉しいことに2005年のゴッホ展(東近美)に出品された。この絵画みれて本当に幸せだった。

アムステルダムのゴッホ美にある作品で心を打つのは‘収穫’と‘黄色い家’。ゴッホの‘イエローパワー’を200%実感させてもらった。ゴッホは‘収穫’についてテオへの手紙で‘この絵に比べると、ほかの絵はみんな負けてしまう’と言っている。自分が住んでいた家を描いた‘黄色い家’もじっとみてしまう。この場所に行ってみたいとずっと思っているが、その機会がめぐってくるだろうか。

‘ローヌ川の星月夜’はとてもロマンチックな風景画。星の光が川の水面にたくさん映る光景が心を揺すぶる。昼間は太陽の光を存分に表現し、夜になると満天の星をネオンサインがちらつくように描いてみせる。絵画の力が星をさらに輝やかせ人々に幸福をもたらす。ゴッホに乾杯!

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2020.03.08

Anytime アート・パラダイス! ゴッホの肖像画ベスト5

Img_0003_20200308220901    ‘ルーラン夫人’(1889年1月 シカゴ美)

 

Img_0001_20200308220901    ‘郵便配達夫ルーラン’(1888年8月 ボストン美)

 

Img_0002_20200308220901    ‘医師ガシェの肖像’(1890年6月 オルセー美)

 

Img_0004_20200308220901    ‘タンギー爺さん’(1887年秋 ロダン美)

 

Img_20200308220901   ‘本のあるジヌー夫人’(1888年11月 メトロポリタン美)

ゴッホ(1853~1890)の絵がつくづくいいなと思うのは静物画、肖像画、そして風景画のどれをとっても心を揺さぶる作品があるから。ひまわり、アイリスときたので次は肖像画のお気に入りを。これまでみた作品のなかであえて順位をつけベスト5を選んでみた。

1位 ルーラン夫人
2位 郵便配達夫ルーラン
3位 医師ガシェの肖像
4位 タンギー爺さん
5位 本のあるジヌー夫人

ゴッホ好きの人とこのランキングがどのくらい共有できるだろうか。1位と2位に入ったのがゴッホがアルルでうまのあった郵便配達夫ルーランとその夫人。シカゴ美が所蔵するルーラン夫人はじつは最初に描かれた原画のレプリカ(模写)、その原画はボストン美にあり数年前開かれたボストン美展に夫と一緒に来日した。ゴッホはレプリカを4点制作しシカゴにあるのは1作目。

ゴッホには原画とレプリカのあるモチーフがいくつもあるが、原画とレプリカを較べてどっちがいいか。これは原画に軍配があがるケースもあれば逆の場合もある。5点描かれたルーラン夫人についてはシカゴにあるものがとってもいい。運よく全部みたが、美人度でいうと目がきりっとしたこれが一番。手元にあるTASCHENのゴッホの油彩画全集(2冊)でも、これだけ大きな図版を載せている。

旦那のルーランをはじめてボストン美でみたとき息を呑んでみていた。これが
一番好きだという人が多いかもしれない。制服の青がどんと目に広がる感じで
ルーランの表情がしゃんとした堂々たる肖像画。ボストン美は日本で何回も
名品展を開催しているのになかなかこの絵を貸し出してくれなかった。ようやく数年前登場したのでゴッホ狂にとっては最高の展覧会だった。

ルーラン同様、1回目のオルセー訪問で視線を釘づけにしたのが医師ガシェの
肖像画。ここでもガシェの着ている衣服と背景の青が強いインパクトをもって
おり、斜めに切られたテーブルの赤により一層引き立っている。4位はゴッホがパリにいる頃いろいろ世話になった絵具商人タンギー爺さん。これを所蔵しているのはロダン美。タンギーの背景に浮世絵がいっぱい描かれているので日本人には親しみやすく頬がつい緩む。

5位は糸杉などをもっているメトロポリタンにある‘アルルの女、本のあるジヌー夫人’。女性の肖像画は何点もあるが、ルーラン夫人の次にあげたいのがこのジヌー夫人。この女性はカフェの所有者でゴッホとゴーギャンは気乗りしない彼女をおだててポーズをとらせた。背景の黄色がすごく効果的で強く印象に残る。

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2020.03.07

Anytime アート・パラダイス! ゴッホのアイリス

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    ‘アイリス’(1889年5月 ポール・ゲッティ美)

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    ‘アイリス’(1890年5月 ゴッホ美)

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   ‘薔薇’(1890年5月 ワシントン・ナショナル・ギャラリー)

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   ‘西洋夾竹桃’(1888年8月 メトロポリタン美)

‘耳切り事件’(1888年12月23日)のあとゴッホは翌年の5月8日、
病気療養のためアルルの近くのサン・レミに移った。そして、最初に描いた
作品のひとつが‘アイリス’。このすばらしい絵をもっているのはLAのポール
・ゲッティ美。じつはまだLAに行ったことがなく、この街で美術館めぐりを
するのが当面の大きな目標になっている。そのとき真っ先に駆けつけたい
のが‘アイリス’と出会えるゲッティ。絵の前に立ったら体が震えそう。

サン・レミに滞在して1年が経ち病気が落ち着いたため療養所からでること
になった1890年5月、ゴッホは最後の作品を仕上げた。それがゴッホ美
とメトロポリタンにある花瓶に入った‘アイリス’とワシントン・ナショナル
・ギャラリー蔵の‘薔薇’。ゴッホ美のアイリスは10年前日本にやって来た。
光琳の燕子花を見慣れているのでよく似たアイリスにもぐっと惹きこまれ
る。花瓶におさまった見事な静物画に乾杯!

1月の上野の森美の回顧展に展示された‘薔薇’も見栄えのする作品。おもし
ろいのは緑の背景に咲き誇る白の薔薇に調子をあわせるように白の曲線が
リズミカルには描かれていること。病気が治ったからゴッホは気分がハイに
なっていたのかもしれない。‘星月夜’では空の雲の激しい渦巻き模様に尋常
ではない心の動きがあらわれていたのに対し、この表現は軽やかな感じ。

メトロポリタンにある‘マジョルカ壺の西洋夾竹桃’もお気に入り。METの
ゴッホコレクションは質が高く、糸杉、アイリス、夾竹桃といいのが揃っ
ている。

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2020.03.06

Anytime アート・パラダイス! ゴッホのひまわり

Img_20200306221001     ‘ひまわり’(1888年8月 ロンドン・ナショナル・ギャラリー)

 

Img_0001_20200306221101     ‘ひまわり’(1889年1月 損保ジャパン美)

 

Img_0002_20200306221101     ‘ひまわり’(1889年1月 ゴッホ美)

 

Img_0003_20200306221101     ‘ひまわり’(1889年1月 フィラデルフィア美)

西洋美で3/3から開幕するはずだった‘ロンドン・ナショナル・ギャラリー展’は新型コロナウイルス感染拡大の防止のため3/16まで延期されている。まだ再延期の情報がないのでもうしばらくするとナショナル・ギャラリーが誇る名画の数々が姿をあらわす。

今回の出品作は古典絵画からゴヤあたりまでを中心に選別されているが、嬉し
いことに印象派のルノワールとゴッホも含まれている。ゴッホ(1853~
1890)はあの‘ひまわり’が展覧会の目玉として登場する!そこで、多くの
ゴッホファンが待ち望んでいるひまわりの絵をほかの美術館にあるものと一緒
に並べてみた。

ゴッホがアルルにやって来たのは1888年の2月。そして、日差しの強い夏
の8月に4点の‘ひまわり’を描きあげる。その1点がナショナル・ギャラリーにあるもの。ほかの3点のうち1点は1945年消失し、2点は個人とミュンヘンのノイエ・ピナコテークが所蔵している。この2点は背景が黄色と補色をなす青であるのに対し、ナショナル・ギャラリーのものは地も黄色。明色の上に明色が重なり、まさにゴッホの真骨頂である‘イエローパワー’が黄色のグラデーションとなって炸裂している。

この4点を描いたところでひまわりの季節は終わってしまった。秋に入り10
月23日に待ち望んだゴーギャンがアルルに到着する。ところが、ゴッホの思
惑とは違って2人はうまくやっていけない。そして、12月23日あの耳切り
事件がおきる。年が変わった1889年1月、パリに戻ったゴーギャンから
ひまわりの絵が欲しいという手紙がきたことなどから、ゴッホは1月中に3点
のひまわりを仕上げる。

ナショナル・ギャラリーの原画を模写した(レプリカ)のが損保ジャパン美と
アムステルダムのゴッホ美にあるもの。最後に描いたフィラデルフィア美蔵の
ひまわりは背景が青のノイエ・ピナコテークのレプリカ。7年前運よく現地で
お目にかかった。これをみたのだから、まだ縁のないノイエのものをなんとし
ても目のなかに入れようと思った。

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2020.03.05

Anytime アート・パラダイス! ゴッホの糸杉(2)

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   ‘糸杉のある緑の麦畑’(1889年6月 プラハ国立美)

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   ‘糸杉のある麦畑’(1889年6月)

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   ‘糸杉のある麦畑’(1889年9月 ロンドン・ナショナル・ギャラリー)

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  ‘ヌエネンの古い教会の塔’(1884年 クレラー=ミュラー美)

ゴッホ(1853~1890)がサン・レミで描いた糸杉はもう3点ある。
いずれも小麦畑との組み合わせで描かれている。最初がプラハでお目に
かかった‘糸杉のある緑の麦畑’。6月の中頃仕上げたあと次にとりかかったの
がチューリヒの個人コレクターが所蔵する‘糸杉のある麦畑’。そして、この
絵のレプリカが3ヶ月後に誕生した。

プラハにある糸杉は存在感がちょっと弱い。麦畑を手前の草木と向こう側の
糸杉に挟まれた川の流れのようにどんと表現しているため、このイエロー
パワーにまわりの家などと同様糸杉も負けている。一方、糸杉が右側に移動
した2点はまとまった糸杉の形をしているため、視線がすっと向かっていく
。さらに大きく描かれた空の白い雲はうねるように流れており、‘星月夜’の
前触れを感じさせる。

ゴッホは弟テオに宛てた手紙で糸杉のことをこんな風に語っている。
‘糸杉のことを私はいつも考えている。ひまわりの絵のような何かを描きた
い。私が糸杉をみたとき誰もまだその絵を描いていないことに驚いた。線と
いい、形といい、エジプトのオベリスクのように美しい。そして緑がなんと
も特別なすばらしい色である。糸杉は太陽がいっぱいの景観のなかでは黒い
印象があるが、それはもっともおもしろい黒色のひとつであるし、とらえる
のが大変だったので、ほかのどんな色も考えられない。青にむかって、正確
に言うなら青のなかで糸杉はみられなくてはならない’

日曜美術館に出演していた美術史家がゴッホは糸杉のイメージを教会の尖塔
にも重ねていたと指摘していた。とりあげられた‘ヌエネンの古い教会の塔’は
クレラー=ミュラー美でみたが、細い尖塔と糸杉は結びつかなかった。

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2020.03.04

Anytime アート・パラダイス! ゴッホの糸杉(1)

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     ‘糸杉’(1889年6月 メトロポリタン美)

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      ‘星月夜’(1889年6月 MoMA)

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 ‘二人の女性のいる糸杉’(1889年6月~90年2月 クレラー=ミュラー美)

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  ‘星月夜と糸杉のある道’(1890年5月 クレラー=ミュラー美)

NHKの‘日曜美術館’は2週連続で好きな画家が続いた。ヤン・ファン・エイク
(1390~1441)とゴッホ(1853~1890)。今どうしてこの
二人?だったが、ゴッホについては今年1月上野の森美でみた回顧展が現在、
神戸の兵庫県美に巡回していることを知り即納得。

日本のみならずゴッホはどの国でも人気の画家。兵庫県美でも大勢のファン
が集まっているにちがいない。番組の後半はゴッホがサン・レミの療養所で
描いた糸杉を深堀りしていた。ゴッホの絵で見慣れている気分になっている
が、ヨーロッパを旅行していて糸杉をみたという実感がない。南フランス以
外ではどのあたりに行けばみれるのだろうか。スペインには糸杉がある?

1889年の6月頃描かれたのが今回やって来たメトロポリタン美蔵の‘糸杉’
とMoMAにある有名な‘星月夜’、そのあと‘二人の女性のいる糸杉’が続き、
最後に‘星月夜と糸杉のある道’を描き上げた(人物入りの糸杉はともにクレラ
ー=ミュラー美の所蔵)。そして、2ヶ月後にオーヴェル・シュル・オワー
ズでピストル自殺する。

ゴッホの激しい感情のありようが糸杉の揺れ動く描写や背景の空の雲の渦巻
きに強くでているのがMETとMoMAの絵。ここから出ている磁力は強力。こ
れに対し、クレラー=ミュラーにある糸杉は女性や男性が一緒に描かれてい
るので風景の写実的な表現のなかにおさまっている感じがする。そのため、
落ち着いてこの糸杉がみられる。

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2020.03.02

Anytime アート・パラダイス! 子ども絵(17)

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  デ・キリコの‘通りの神秘と憂愁’(1914年)

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  ダリの‘病める子供’(1923年 サルバドール・ダリ美)

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  コールの‘無題(べベ・マリア)’(1940年代初め MoMA)

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  クレーの‘玄関先の階段に立つ少年’(1923年)

非常事態宣言が出された北海道では街から人の姿が消えた。閑散とした札幌
の光景をみてある絵が重なった。それは形而上派のデ・キリコ(1888~
1978)が1914年に描いた‘通りの神秘と憂愁’。音が消えた街角で目
につくのは建物と銅像の長い影。そして、強い陽がさしているところの左下
に目をやると輪回しをして走っている少女がいる。この少女も影のように
みえる。見慣れた街の光景なのにどこか不安で落ち着かない気分になって
くる。どうも現実とは違う夢の世界に迷いこんだみたい。

ダリ(1904~1989)の初期の作品‘病める子供’はダリの自画像。
卵形の顔と大きな目はダリのイメージとすぐにはむすびつかないが、いいと
この坊ちゃんだったことはわかる。ダリは小さい頃、仮病をつかって両親を
驚かせ自分に注意を向かせていた。これは精神的な病。

NYのMoMAには近現代アートの傑作が数多く飾られているが、ジョセフ・
コーネル(1903~1972)の‘無題(べベ・マリア)’のところにくる
と一瞬ドールハウスに紛れ込んだのかと錯覚する。これは玩具の立体コラー
ジュ。小さな箱のなかに女の子の人形がたくさんの小さな木に囲まられる
ようにおさまっている。お好みの少女をとじこめる空間をつくりノスタルジ
ックで幻想的な気分にひたるのはオタク族のフィギュア集めと変わらない。

小学生低学年の子どもたちがお絵かきで描いたような印象を与えるのが
クレー(1879~1940)の‘玄関先の階段に立つ少年’。子どもは立体
感覚を表現することがまだできないのでモチーフはペタッと平板な形になる
。玄関の前の階段を少年はこれから上がるところ。大きな頭が重たいのか
体が横に傾いている。

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