2024.03.21

日本の神話画 大国主命 伊邪那岐命!

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Img_20240321225701     因幡の白うさぎ

Img_0001_20240321225701    青木繁の‘大穴牟知命’(1905年 アーティゾン美)

Img_0002_20240321225701     ‘黄泉比良坂’(1903年 東芸大美)

Img_0003_20240321225801    安田靫彦の‘天之八衢’(1939年 福井県美)

古事記の本を読んでいてもっとも親しみを感じる神様は‘因幡の白うさぎ’で
知られる大国主命(おおくにぬしのみこと)。広島で仕事をしていたとき鳥
取に出張した際はクルマで白兎海岸を走り、ここが小さいころ親しんだ
昔話‘因幡の白うさぎ’の舞台かとしみじみ日本海をながめていた。

鮫をだまして隠岐の島からぴょんぴょん跳んで因幡の国にやってきた白う
さぎは最後になって悪事がバレて体の毛を1本残らずむしりとられてしま
った。そこに若い出雲の国の神様が大勢通りかかり、意地悪な処方箋を教え
てくれた。それを信じて海の水で体を洗ったところ、これが大ウソ、あま
りの痛さに泣きじゃくった。これをみた心優しい大国主命は‘兄貴たちの
悪ふざけはいつも度がすぎるなあー、まったく!うさぎちゃん、すぐ池の
水で体を洗って蒲の穂わたを体にまぶし、静かに寝ていなさい’。するとた
ちまち体は元の通りに良くなった。そして大国主命に‘あなたは偉いおかたで
す。きっと美しい八上姫(やがみひめ)様と結ばれるでしょう’と予言する。

お目当ての姫に嫌われた兄たち八十神(やそがみ)は頭にきて大国主命を殺める行動に出る。‘ここに赤猪がいる。山の上から追い出すから、下でしっかり捕まえろよ’と言って、猪そっくりの大石を赤々と焼いて頂上から転がり落す。これを受け止めた大国主命は体が焼け押しつぶされて死んでしまった。これを悲しんだ大国主命の母神は天に昇って‘息子を生き返らせてください’と懇願した。青木繁の‘大穴牟知命’(オオアナムチノミコト)は大国主命を生き返らせる場面が描かれている。キサガイヒメ(左 赤貝の女神)が体液をしぼりだし(これが火傷の治療にいい)、ウムガイヒメ(右 蛤の女神)が貝殻に受け、それを大国主命(大穴牟知命のこと)の体に塗ると火傷が治り、生き返った。この絵は数回みているが、青木繁の恋人福田たねがモデルになったウムガイヒメの強い目力に気をとられて、いつも中央で倒れている大国主命に視線が長くとどまらない。

青木にはもう一点、緊張感を強いられる作品がある。それは‘黄泉比良坂’。描かれているのは伊邪那岐命(イザナギノミコト)が亡くなった愛する妻伊邪那美命(イザナミノミコト)のいる死者の住む黄泉の国で体験した恐ろしい場面。その原因は妻から‘私の体を見ないでね’といわれたのにそれが守れず、ウジ虫が群がっている妻の凄惨な姿を目にしてしまった伊邪那岐命にある。怒った妻は醜女や雷神などに追いかけさせる。ほうほうの態で伊邪那岐命は追跡をかわし、光さす地上に帰還する。安田靫彦の‘天之八衢(あめのやちまた)’は天の神が高千穂峰に降臨するとき、随伴していた天鈿女命(アメノウズメノミコト)が地上での先導役を買って出た猿田彦命(サルタヒコノミコト)と対峙する場面が描かれている。二人は後に結婚する。

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2023.12.27

岸田劉生の‘麗子像’ベスト5!

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   ‘麗子微笑’(重文 1921年 東博)

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   ‘二人麗子図’(1922年 泉屋博古館東京)

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   ‘麗子座像’(1922年)

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   ‘麗子住吉詣之立像’(1922年)

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   ‘麗子弾絃図’(1923年 京近美)

わが家の本棚に収まっているの展覧会図録のなかで数が多い日本画家、洋画
家のグループに入っているのが岸田劉生(1891~1975)。現在5冊
ある。図録が多いのは回顧展がよく行われ、その度足を運んでいるからだが、
今年は東京ステーションギャラリーで開かれた‘春陽会誕生100年 それぞ
れの闘い’(9/16~11/12)に劉生の絵が全部で11点出品されていた。
出かける前図録はパスの予定だったが、劉生のはじめてみた作品がいくつ
もでてきたので購入せざるを得なかった。こういうときはやることは決まっ
ており、関心の高い劉生や萬鐵五郎らの図版だけを残しあとは処分すること
になっている。

この特別展に‘麗子像’ベスト5!に入れている‘麗子弾絃図’が登場した。前回
みたのが2009年だから、14年ぶりの鑑賞である。劉生はこの頃、歌舞
伎や長唄にのめり込んでいたから麗子に三味線を持たせて描いている。重文
の‘麗子微笑’のような顔に視線が集中する肖像画とは異なり演出を加えている。
この横顔の麗子以外の4点は‘麗子微笑’の顔が連続してでてくる感じ。大人の
ような神秘性を秘めた綺麗な表情に大変魅了されている。

‘二人麗子図’は意表を突く肖像画。シュール的なアイデアはどこから生まれて
きたのだろう。双子が生まれ同じ名前を付けて一緒に描こうと夢想した?
紫のセーターとチェックのスカート姿の麗子が描かれている‘麗子座像’も忘れ
られない一枚。確かこれは10年以上前、川村記念美で遭遇し、息を呑んで
みた。‘麗子微笑’と同じくらい感動した。

‘麗子住吉詣之立像’は残念ながらまだ縁がない。ずっと待っているが、ミュー
ズに願いを叶えてもらえない。個人蔵になっているが、これまで美術館に貸
し出されたことがあるのだろうか。この絵と藤島武二の‘芳蕙’、いつ目の前に
現れてくれるのか、諦めずその時を待ちたい。

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2022.09.29

埼玉県近美の‘田中保とその時代’展!

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 ‘黄色のドレス’(1925~30年 埼玉県近美)

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 ‘黒いドレスの腰かけている女’(1920~30年 埼玉県近美)

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 ‘キュビストA’(1915年 埼玉県近美)

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 ‘サン・べネセ橋’(1928年 埼玉県近美)

JR北浦和駅から歩いて5分くらいのところにある埼玉県近美で現在行われ
ている‘田中保とその時代’展(7/16~10/2)をみてきた。ここへは
何度も来ているが、この前は6年前の‘原田直次郎展’のとき。田中保
(1886~1941)のことは展覧会を一緒にみてまわる友人から教え
てもらうまで、まったく知らなかった。埼玉県の岩槻生まれで18歳でシ
アトルに渡り、働きながら絵をまなび、1920年にパリに移住している。
同時代を生きた画家としては藤田嗣治(1886~1968)やキスリン
グ(1891~1953)がいる。

肖像画は男でも女でもいいのがいくつもある。もっとも惹かれたのはチラ
シに使われている‘黄色のドレス’。この絵を名前を伏せてフランス人にみせ
たらヨーロッパの画家が描いたのでは、と応えるにちがいない。これは
黒田清輝の絵の前に立ったときと同じ思いである。そして、‘黒いドレスの
腰かけている女’も思わず足がとまった。こういう肖像画をみるとサロン・
ドートンヌなどの展覧会に出品し高い評価を受けたことはすぐ納得できる。
また、裕福な男性を描いたものはカイユボット(1848~1894)の
回顧展(2013年 旧ブリジストン美)でみた肖像画が頭をよぎった。

シアトルで描いた‘キュビストA’にハッとさせられた。同い年に生まれた
藤田嗣治のキュビスム風の作品よりインパクトがある。優れた色彩の感覚
のより色面を巧みに接合して人物をみせている。一見すると抽象絵画のイ
メージだが、じっとみているとキュビスムに手法で男性の上半身が表現さ
れている。田中保は天性のカラリスト、これとモチーフを分解し統合する
構成力が合体しこのユニークな作品が生み出された。

風景画の’サン・べネセ橋’はざざっと描いた感じだが、光があたっている
川面の描写に引きよせられる。ほかでは広重の浮世絵を意識したのか木の
太い幹が画面を分割するようにどーんと垂直に立ってるものが印象深い。
この展覧会のメインディッシュは田中保だが、この美術館が所蔵する藤田
嗣治、キスリングの名画も飾られている。みてのお楽しみ! 

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2022.03.31

ア―ティゾン美の‘はじまりから、いま’!(2)

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  藤島武二の‘黒扇’(重文 1908~09年)

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  藤島武二の‘東洋振り’(1924年)

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  山下新太郎の‘読書’(1908年)

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  青木繁の‘海の幸’(重文 1904年)

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  小出楢重の‘帽子をかぶった自画像’(1924年)

美術館にたいする愛着度というのはそこでしかみれない絵画が自分の好みに
ぴったり合っていると自然と高くなる。ア―ティゾン美ならやはり青木繁
(1882~1911)のあの有名な‘海の幸’と藤島武二(1867~
1943)の女性の肖像画と強く結びついている。2020年に新装オープ
ンしたとき、たしかコレクションをどっと披露したと記憶しているが、これ
にでかけた美術ファンは今回と違うものをみているのだろうか。そうだとし
ても、それは気にならない。藤島武二と青木繁が入っているのだから言うこ
となし。

チラシに大きく載っていてコレクションの魅力を印象づけているのが藤島武
二の‘黒扇’と‘東洋振り’、ここでおやっ?とする。‘東洋振り’はア―ティゾン美
の所蔵だった?2017年、練馬区立美であった回顧展でみたときは個人蔵
となっていた。この後どこかの時点でア―ティゾンが個人から手に入れたこ
とになる。重文の2点‘黒扇’と‘天平の面影’(出品)、‘チョチャラ’(お休み)
があって横向きの名画‘東洋振り’が加わったとなると武二の殿堂として一層輝
きを放つ。

浮世絵や日本画の美人画にも洋画の女性画にも目がないが、山下新太郎
(1881~1966)の‘読書’に大変惹かれている。久しぶりの対面でちょ
っと緊張した。西洋画では読書をする女性はよく描かれる題材になっているが、
もっとも印象深いのがワシントンのナショナルギャラリーに飾ってあるフラゴ
ナールの‘読書する娘’。日本にもこんないい絵を描く画家がいることがなんだ
か誇らしい。

青木繁も‘海の幸’、‘わだつみのいろこの宮’の重文2点の揃い踏み。武二と合わ
せて全部で4点の重文作品がでてくるのは滅多にないこと。予定になかった展
覧会で作品情報がなかったのに、運のいいめぐり合わせだった。
また、小出楢重(1887~1931)の‘帽子をかぶった自画像’も嬉しい展示。
20年くらい会ってなかったら、再会を喜んでいる。この画家の回顧展をずっ
と待っているが、果たして実現するだろうか。

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2020.06.19

Bunkamuraの‘超写実絵画の襲来’!

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   森本草介の‘未来’(2011年)

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  野田弘志の‘聖なるもの THE-Ⅳ’(2013年)

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   島村信之の‘夢の箱’(2017年)

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   五味文彦の‘いにしえの王は語る’(2018年)

美術館が再スタートとしたので昨日はBunkamuraへ行ってきた。東博や
西洋美は事前予約の客だけが入館できるシステムをとっているが、
Bunlamuraはその必要はなく出かければみれる。コロナ対策として検温
と住所氏名の登録がある。そして、中に入り困ったのはロッカーが使え
ないこと。そのため、エコバッグをずっと持って歩くはめになった。

現在ここで開催されている特別展は千葉市にあるホキ美のコレクション
を披露する‘超写実絵画の襲来’(6/21まで)。もともと3/18~
5/11の会期で予定されていたが、美術館自粛でいったん中止になった。
興味があったので事前に前売り券を購入していた。でも、おじゃんにな
りあるとき、これをびりっと破りゴミ箱へ。よく考えたら払い戻しとい
うことがあったが、そこまで気がまわらなかった。そうこうしているう
ちに6/21まで短期間展示するという情報が入ってきた。

久しぶりに渋谷をめざしたのは森本草介(1937~2015)の女性
画に関心があったから。今回でているのは‘未来’など3点。あと2点は
風景画。ホキ美はこの画家の作品を全部で何点所蔵しているのか、20
点くらい?3点のうち絵葉書は1枚のみ。肩透かしを食らった感じ。

ほかの画家で名前を知っているのはほんの数人。野田弘志(1936~)
は昔、日曜美術館によく登場していたので超リアルな画風は馴染み
がある。足がとまったのは2013年の作品‘聖なるものTHE-Ⅳ’、まだ
現役バリバリだった。

そして、クワガタの標本にもすぐ目が寄っていく。小さい頃、朝早く起
きスズメバチのとびかうなかクワガタ採りで山を奔走した。大きくて形
のいいクワガタを見つけたときは天にも昇る気持ち。だから、この昆虫
には特別の思い入れがある。描いたのは島村信之(1965~)、まっ
たく知らない。

五味文彦(1953~)の‘いにしえの王は語る’は絵のタイトルがなかな
かいい。これほど太古に存在した自然の命を感じさせる樹木をみせられ
るとつい後ずさりしてしまう。たしかに王の風格がある。

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2019.09.23

大盛況の‘岸田劉生展’!

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    ‘麗子八歳洋装之図’(1921年)

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     ‘自画像’(1913年 豐田市美)

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   ‘静物(手を描き入れし静物)’(1918年)

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    ‘ギヤマンのある静物’(1929年 岡山県美)

現在、東京ステーションギャラリーで‘岸田劉生展’(8/31~10/20)
が行われている。日本の洋画家のなかで回顧展に出くわす回数が一番多いの
が岸田劉生(1891~1929)。今回は没後90年を記念したものだが
、2009年没後80年ということで損保ジャパン東郷青児美で肖像画だけ
を集めた劉生展があった。

作品数は160点もありこれまで体験したもののなかでは最大規模。立派
な図録がつくられており、主要な作品は全部載っているといっても過言でな
い。というのも、この展覧会はほかの美術館にも巡回するので地域限定で展
示される作品も一緒に載っているのである。例えば、代表作の‘麗子微笑’
(重文 東博)は残念ながら東京ではみられず、東近美にある‘麗子五歳之像’
と‘道路と土手と堀’(重文)が目玉になっている。

岸田劉生の代名詞となってる麗子像は再会した‘麗子八歳洋装之図’を長くみ
ていた。描かれたのは‘麗子微笑’の2週間位前、だから顔の表情はあまり変
わらない。ちがうのは口元がゆるんでないのと洋服を着ていること。
そして、赤と黄色の縮緬絞りの細密描写が強く印象に残る‘麗子坐像’(ポー
ラ美蔵)にも魅了された。

自画像の多い画家というとすぐ思い浮かぶのはデューラー、レンブラント、
ゴッホ。劉生はデュラーに影響をうけたのか多くの自画像を描いている。
本人と対面しているような錯覚を覚えるほどリアルなのが豊田市美が所蔵す
るもの。劉生22歳のころだが、我の強そうな顔立ちは30代の男にみえる。

出品数がこれほど多いと初見の作品もぞろぞろ現れる。収穫だったのが画集
によく載っている‘静物(手を描き入れし静物)’。カーテンが左右に並べら
れた演劇の舞台にリンゴが役者として登場したような感じ。随分凝った演出
が施された静物画である。

サプライズの絵画があった。それは劉生が亡くなった1929年に描かれた
2点の静物画と1点の花鳥画。どうして急に色彩が輝き出したの?というく
らい赤、黄色、緑、紫、白は濃密で明るい。‘ギヤマンのある静物’を呆然と
してみていた。劉生にこんな色彩パワーがあったとは!

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2018.08.19

第24回 秘蔵の名品 アートコレクション展!

Img_0001     浅井忠の‘牛追い’(1904年 歌舞伎座)

Img      菱田春草の‘黒猫’(1910年 播磨屋本店)

Img_0002     山口華楊の‘望郷’(1980年 ウッドワン美)

Img_0004     葛飾北斎の‘武松候虎の図’(19世紀 日本通運)

2年連続でホテルオークラで行われている‘秘蔵の名品 アートコレクション展’(7/30~8/23)を楽しんだ。昨年は美人画にスポットが当てられたが今年は動物画がたくさん飾られている。

地下鉄銀座線の虎の門で下車して15分くらい歩くとホテルオークラに着く。急坂を登る途中足をとめてだいぶできてきた建設中の新しいホテルをみていた。来年の9月にオープンするときはどんな姿をみせるのか、なにしろ日本でトップのホテルのリニューアルだから常連客でもないのワクワクしている。

最初の部屋に一度見たことのある浅井忠(1856~1907)の‘牛追い’が現れた。これは京都大原の牛追いを描いたもの。強い光をあびてできた牛と大原女の影が印象深い。この影の強さはオルセーにあるコルモンの‘カイン’における群衆の影と同じ。浅井忠の画力は相当高い。

菱田春草(1874~1911)の‘黒猫’が2点でている。ひとつは個人蔵の‘柿に猫’、これは運よく見る機会があった。もう一点は播磨屋本店蔵の‘黒猫’、これはお目にかかったことがなく画集にも載っていないので大きな収穫。当初はパスのつもりだったが出かける気になったのはチラシにこの黒猫が載っていたから。春草は大観と同様、一生つきあっていこうと思っているので、‘一点買い’の展覧会となっても足は展覧会場に向かう。

日本画家で動物画の名手というと山口華楊(1899~1984)が真っ先にあげられる。そのため作品の数が最も多く5点くらいでていた。とくに心を奪われたのが地面に体をつけて休んでいる駱駝を描いた‘望郷’、馬や駱駝にが優しいイメージを感じるのに対し、寝そべる黒豹の獰猛さにはおもわず後ずさりしてしまう。

江戸絵画や浮世絵で目を惹いたのは北斎の‘武松候虎の図’、虎が単独で描かれたものはこれまでいくつかみみたが、これはまだ縁がなかった。所蔵しているのは日本通運、このチヤリテイーイベントのいいところは企業が所蔵している日本の絵や西洋絵画が出品されること。‘黒猫’のオマケが北斎ならいうことない。

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2018.04.17

東近美の洋画!

Img        原田直次郎の‘騎龍観音’(重文 1890年)

Img_0001     和田三造の‘南風’(1907年)

Img_0002     安井曾太郎の‘金蓉’(1934年)

Img_0003     瑛九の‘れいめい’(1957年)

クラシック音楽に何度聴いても飽きない曲があるように、美術でも作品の前にくるとつい見惚れてしまうものがある。そんな名画中の名画との出会いがだんだんかけがえのないものになってきた。

東近美にある作品をみる間隔が1年くらいにあいてくると名画の放つ磁力がとても強く感じられる。だから、前々から魅了されているものに会うといっそう感慨深くなる。原田直次郎(1863~1899)が27歳のとき描いた‘騎龍観音’ははじめてみたころは軽くみていたが、今ではその目を見張らせる構図と緻密な描写に息を呑んでみるようになった。

海好きには潮の香りがする絵はたまらないほど惹きつけられる。和田三造(1883~1967)の‘南風’は東近美の定番洋画のひとつ。とくに印象に残るのは立っている男の逞しい筋肉、舟の床にうつる影からもわかる強い陽の光をあびる姿は勝利した日露戦争後の世の中の気分を現わしている。

久しぶりに対面した安井曾太郎(1888~1955)の‘金蓉’、このチャイナドレスを着た女性が洋画の肖像画ではMyベスト1。絵画のモデルというとすぐこの女性を思い浮かべる。やはり安井曾太郎は肖像画の名手。足を組むポーズはセザンヌを意識したにちがいない。

抽象絵画のコーナーで思わず足がとまったのが瑛九(1911~1960)の‘れいめい’、最近は宇宙の話にのめりこんでいるので、無限がどこまでも続き宇宙のはじまりまで連れていってくれそうなこの絵にすぱっと嵌る。クプカがこれをみたら裸足で逃げるにちがいない。

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2017.08.12

‘藤島武二展’で思わぬ出会いが!

Img     ‘チョチャラ’(1908~09年 ブリジストン美)

Img_0001     ‘婦人と朝顔’(1904年)

Img_0003     ‘美人と音曲 鼓’(1905年)

Img_0002     ‘蒙古の日の出’(1937年 鹿児島県歴史資料センター黎明館)

現在、練馬区美で開催されている‘藤島武二展’(7/23~9/18)をみてきた。久しぶりに出かけた練馬区美はアクセスのいい美術館で西武池袋線の中村橋駅で下車して徒歩5分のところにある。これまで関心をもっている画家の回顧展をよく開催してくれるので高い好感度が続いている。2年前は浮世絵の小林清親展を存分に楽しんだ。

藤島武二(1867~1963)は黒田清輝とともに日本の洋画界におけるビッグネーム、だが、これほど有名な洋画家でも回顧展が行われる回数は意外にも少ない。6年前そごう美で待ち焦がれた回顧展に遭遇したが、このときは岡田三郎助との二人展。今回、はじめてとなる個展に出品されているのは160点。

当然、初見のものに期待が高まるが嬉しい出会いがあった。前回そごうでは展示されなかった‘チョチャラ’がひょいと目の前に現れた!これはブリジストン美が所蔵する藤島武二では最後まで残っていたワンピース。モデルはイタリアの地方出身の女性で花売り娘。イタリア人だが、こういう顔をした日本の女性もいる感じがするので親しみを覚える。

チラシにも図録にも使われている‘婦人と朝顔’は洋画家の描いた女性の肖像画としてはお気に入りの一枚。ベスト5に登録しているのはぞっこん惚れている歌手の藤あや子に似ているからかもしれない。これは個人コレクターの所蔵、毎日ながめられるのだから羨ましい。

‘美人と音曲 鼓’は絵はがき(6セット)のために描かれたもの。ほかに着物を着た女性が演奏しているのは笛、琵琶、三味線、ヴァイオリン、ピアノ、このなかでとくに魅了されたのが鼓をたたく女性。とてもチャーミングな笑顔をみてある女優を連想した。誰か?勝手な思い込みだが、昨年4月に放送されたNHKの土曜ドラマ‘トットてれび’で黒柳徹子を演じた女優の満島ひかり!

武二が描いた風景画は印象派的な画風が特徴、収穫は初見の‘蒙古の日の出’、日の出の赤の強さが一際輝いていた。

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2016.12.16

鎌倉で‘松本竣介展’!

Img     ‘立てる像’(1942年 神奈川県近美)

Img_0001        ‘自画像’(1941年 神奈川県近美)

Img_0002     ‘市内風景’(1941年)

Img_0003     ‘Y市の橋’(1944年)

今年は松本竣介(1912~1948)に縁があった。5月、東芸大美で宮城県美が所蔵する‘画家の像’という見ごたえのある肖像画をみた。そのとき、秋に神奈川県近美の鎌倉別館で‘松本竣介展’(10/8~12/25)が開催されるという情報をえていたかどうか記憶があやふやだが、出かける計画はたてていた。

神奈川県近美の本館は今年惜しまれながらクローズしたのに目と鼻の先にある鎌倉別館のほうは存続している。その理由がよくわからないが、チケットを買うときそのことを聞くときょとんとされた。当面は大丈夫そう。ここへきたのは久しぶりなので建物のレイアウト感覚がなくなっていた。2階が展示室だった。

‘画家の像’の1年後に描かれた‘立てる像’、ともに大きな絵で縦は1.6mもある。‘立てる像’を最初にみたのはどこだったかすっかり忘れたが、この絵によって松本竣介という洋画家を知った。刷り込まれたイメージは学生服を着た大きな男、今ふたたびみるとこの男のでかさはガリバー級、そしてある絵がオーバーラップする。

それはアンリ・ルソーの‘私自信、肖像=風景’(1890年 プラハ国立美)、図録の論考、作品に説明のどこにもルソーの名前がでてこないが、竣介はルソーのこの絵をみなかったのだろうか。こういうときは高い確率で影響を受けていると思ったほうがいい。

今回作成された図録の冒頭に竣介の写真が載っていた。‘自画像’を以前みたときイケメンのシテイボーイの感じがしていたが、実物はたしかに絵描きに思えないくらいすっきりした顔をしている。サラリーマンでいうとエンジニアのイメージ。

音がまったく聞こえてこないような橋や都会の風景を描いた作品が全部で5点でていた。描かれているのは東京や横浜の街の一角、本来なら都市の風景がこんなに静まり返っていることはないが、時は生きる希望や楽しみが消え去った戦時下、切れ切れになった都市の面影がじつに切なく描写されている。

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