2018.08.19

第24回 秘蔵の名品 アートコレクション展!

Img_0001     浅井忠の‘牛追い’(1904年 歌舞伎座)

Img      菱田春草の‘黒猫’(1910年 播磨屋本店)

Img_0002     山口華楊の‘望郷’(1980年 ウッドワン美)

Img_0004     葛飾北斎の‘武松候虎の図’(19世紀 日本通運)

2年連続でホテルオークラで行われている‘秘蔵の名品 アートコレクション展’(7/30~8/23)を楽しんだ。昨年は美人画にスポットが当てられたが今年は動物画がたくさん飾られている。

地下鉄銀座線の虎の門で下車して15分くらい歩くとホテルオークラに着く。急坂を登る途中足をとめてだいぶできてきた建設中の新しいホテルをみていた。来年の9月にオープンするときはどんな姿をみせるのか、なにしろ日本でトップのホテルのリニューアルだから常連客でもないのワクワクしている。

最初の部屋に一度見たことのある浅井忠(1856~1907)の‘牛追い’が現れた。これは京都大原の牛追いを描いたもの。強い光をあびてできた牛と大原女の影が印象深い。この影の強さはオルセーにあるコルモンの‘カイン’における群衆の影と同じ。浅井忠の画力は相当高い。

菱田春草(1874~1911)の‘黒猫’が2点でている。ひとつは個人蔵の‘柿に猫’、これは運よく見る機会があった。もう一点は播磨屋本店蔵の‘黒猫’、これはお目にかかったことがなく画集にも載っていないので大きな収穫。当初はパスのつもりだったが出かける気になったのはチラシにこの黒猫が載っていたから。春草は大観と同様、一生つきあっていこうと思っているので、‘一点買い’の展覧会となっても足は展覧会場に向かう。

日本画家で動物画の名手というと山口華楊(1899~1984)が真っ先にあげられる。そのため作品の数が最も多く5点くらいでていた。とくに心を奪われたのが地面に体をつけて休んでいる駱駝を描いた‘望郷’、馬や駱駝にが優しいイメージを感じるのに対し、寝そべる黒豹の獰猛さにはおもわず後ずさりしてしまう。

江戸絵画や浮世絵で目を惹いたのは北斎の‘武松候虎の図’、虎が単独で描かれたものはこれまでいくつかみみたが、これはまだ縁がなかった。所蔵しているのは日本通運、このチヤリテイーイベントのいいところは企業が所蔵している日本の絵や西洋絵画が出品されること。‘黒猫’のオマケが北斎ならいうことない。

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2018.04.17

東近美の洋画!

Img        原田直次郎の‘騎龍観音’(重文 1890年)

Img_0001     和田三造の‘南風’(1907年)

Img_0002     安井曾太郎の‘金蓉’(1934年)

Img_0003     瑛九の‘れいめい’(1957年)

クラシック音楽に何度聴いても飽きない曲があるように、美術でも作品の前にくるとつい見惚れてしまうものがある。そんな名画中の名画との出会いがだんだんかけがえのないものになってきた。

東近美にある作品をみる間隔が1年くらいにあいてくると名画の放つ磁力がとても強く感じられる。だから、前々から魅了されているものに会うといっそう感慨深くなる。原田直次郎(1863~1899)が27歳のとき描いた‘騎龍観音’ははじめてみたころは軽くみていたが、今ではその目を見張らせる構図と緻密な描写に息を呑んでみるようになった。

海好きには潮の香りがする絵はたまらないほど惹きつけられる。和田三造(1883~1967)の‘南風’は東近美の定番洋画のひとつ。とくに印象に残るのは立っている男の逞しい筋肉、舟の床にうつる影からもわかる強い陽の光をあびる姿は勝利した日露戦争後の世の中の気分を現わしている。

久しぶりに対面した安井曾太郎(1888~1955)の‘金蓉’、このチャイナドレスを着た女性が洋画の肖像画ではMyベスト1。絵画のモデルというとすぐこの女性を思い浮かべる。やはり安井曾太郎は肖像画の名手。足を組むポーズはセザンヌを意識したにちがいない。

抽象絵画のコーナーで思わず足がとまったのが瑛九(1911~1960)の‘れいめい’、最近は宇宙の話にのめりこんでいるので、無限がどこまでも続き宇宙のはじまりまで連れていってくれそうなこの絵にすぱっと嵌る。クプカがこれをみたら裸足で逃げるにちがいない。

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2017.08.12

‘藤島武二展’で思わぬ出会いが!

Img     ‘チョチャラ’(1908~09年 ブリジストン美)

Img_0001     ‘婦人と朝顔’(1904年)

Img_0003     ‘美人と音曲 鼓’(1905年)

Img_0002     ‘蒙古の日の出’(1937年 鹿児島県歴史資料センター黎明館)

現在、練馬区美で開催されている‘藤島武二展’(7/23~9/18)をみてきた。久しぶりに出かけた練馬区美はアクセスのいい美術館で西武池袋線の中村橋駅で下車して徒歩5分のところにある。これまで関心をもっている画家の回顧展をよく開催してくれるので高い好感度が続いている。2年前は浮世絵の小林清親展を存分に楽しんだ。

藤島武二(1867~1963)は黒田清輝とともに日本の洋画界におけるビッグネーム、だが、これほど有名な洋画家でも回顧展が行われる回数は意外にも少ない。6年前そごう美で待ち焦がれた回顧展に遭遇したが、このときは岡田三郎助との二人展。今回、はじめてとなる個展に出品されているのは160点。

当然、初見のものに期待が高まるが嬉しい出会いがあった。前回そごうでは展示されなかった‘チョチャラ’がひょいと目の前に現れた!これはブリジストン美が所蔵する藤島武二では最後まで残っていたワンピース。モデルはイタリアの地方出身の女性で花売り娘。イタリア人だが、こういう顔をした日本の女性もいる感じがするので親しみを覚える。

チラシにも図録にも使われている‘婦人と朝顔’は洋画家の描いた女性の肖像画としてはお気に入りの一枚。ベスト5に登録しているのはぞっこん惚れている歌手の藤あや子に似ているからかもしれない。これは個人コレクターの所蔵、毎日ながめられるのだから羨ましい。

‘美人と音曲 鼓’は絵はがき(6セット)のために描かれたもの。ほかに着物を着た女性が演奏しているのは笛、琵琶、三味線、ヴァイオリン、ピアノ、このなかでとくに魅了されたのが鼓をたたく女性。とてもチャーミングな笑顔をみてある女優を連想した。誰か?勝手な思い込みだが、昨年4月に放送されたNHKの土曜ドラマ‘トットてれび’で黒柳徹子を演じた女優の満島ひかり!

武二が描いた風景画は印象派的な画風が特徴、収穫は初見の‘蒙古の日の出’、日の出の赤の強さが一際輝いていた。

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2016.12.16

鎌倉で‘松本竣介展’!

Img     ‘立てる像’(1942年 神奈川県近美)

Img_0001        ‘自画像’(1941年 神奈川県近美)

Img_0002     ‘市内風景’(1941年)

Img_0003     ‘Y市の橋’(1944年)

今年は松本竣介(1912~1948)に縁があった。5月、東芸大美で宮城県美が所蔵する‘画家の像’という見ごたえのある肖像画をみた。そのとき、秋に神奈川県近美の鎌倉別館で‘松本竣介展’(10/8~12/25)が開催されるという情報をえていたかどうか記憶があやふやだが、出かける計画はたてていた。

神奈川県近美の本館は今年惜しまれながらクローズしたのに目と鼻の先にある鎌倉別館のほうは存続している。その理由がよくわからないが、チケットを買うときそのことを聞くときょとんとされた。当面は大丈夫そう。ここへきたのは久しぶりなので建物のレイアウト感覚がなくなっていた。2階が展示室だった。

‘画家の像’の1年後に描かれた‘立てる像’、ともに大きな絵で縦は1.6mもある。‘立てる像’を最初にみたのはどこだったかすっかり忘れたが、この絵によって松本竣介という洋画家を知った。刷り込まれたイメージは学生服を着た大きな男、今ふたたびみるとこの男のでかさはガリバー級、そしてある絵がオーバーラップする。

それはアンリ・ルソーの‘私自信、肖像=風景’(1890年 プラハ国立美)、図録の論考、作品に説明のどこにもルソーの名前がでてこないが、竣介はルソーのこの絵をみなかったのだろうか。こういうときは高い確率で影響を受けていると思ったほうがいい。

今回作成された図録の冒頭に竣介の写真が載っていた。‘自画像’を以前みたときイケメンのシテイボーイの感じがしていたが、実物はたしかに絵描きに思えないくらいすっきりした顔をしている。サラリーマンでいうとエンジニアのイメージ。

音がまったく聞こえてこないような橋や都会の風景を描いた作品が全部で5点でていた。描かれているのは東京や横浜の街の一角、本来なら都市の風景がこんなに静まり返っていることはないが、時は生きる希望や楽しみが消え去った戦時下、切れ切れになった都市の面影がじつに切なく描写されている。

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2016.05.10

とても気になる画家、高島野十郎!

Img     ‘御苑の春’(1948年以降 福岡県美)

Img_0001     ‘雨 法隆寺塔’(1965年)

Img_0002     ‘からすうり’(1948年以降)

Img_0004     ‘蝋燭’(1912~1926年 福岡県美)

久しぶりに目黒区美を訪問した。現在、ここでとても気になる画家、高島野十郎(1890~1975)の回顧展(4/9~6/5)が開催されている。

過去この画家の作品をみたの10年前、東芸大美で行われた‘日曜美術館30年展’のときだけ。お目にかかったのは3点ほど、それはドキッとする自画像とラ・トウールがすぐ思い浮か蝋燭を描いた小品、そしてカラヴァッジョの静物画のような驚異の写実力をみせつける‘からすうり’。

それ以来、高島野十郎はずっと気になっていた。回顧展の情報は突然入って来た。場所は目黒区美?普段は縁がないこの美術館は1988年に高島野十郎展を行っていた。だから、この画家を世間に知らしめることに一役買っていたのである。それで2回目の回顧展に合点がいく。

作品の数は140点以上、お蔭で高島野十郎に最接近することができた。‘御苑の春’は大きな樹の存在感と枝の太さがだんだん細くなってもなお写実の密度を保つ粘着的な描写力が強く印象に残る。画面をじっくりみていると加山又造の木々の描き方がダブってきた。

‘雨 法隆寺塔’は東芸大美には出品されなかった作品。広重の‘大はしあたけの夕立’を連想させる構成が鑑賞欲を刺激し続けてきたので、おおげさにいうと立ち尽くしてみていた。この雨の線をこれほど沢山ひくにはかなりの時間がかかり相当な集中力がいる。並みの画家ではとうていこのレベルに到達できない。

またみれて嬉しくてたまらないのが鮮やかな朱が目に焼きつく‘からすうり’、高島の描く果物の絵はどれもその驚くべきリアリズムが心を打つが、そのなかで群をぬいていいのがこのからすうり。この絵をみたら高島野十郎はもう心のなかにずっと居座る。

ラ・トウールのイメージがつきまとう蝋燭の絵、今回高島流の蝋燭が全部で19点も並んでいる。ゆらゆらと揺れる炎を1点々じっくりみていた。6月上旬、プラド美でラ・トウール展をみることになっているが、そのときは高島野十郎の蝋燭を思い出すことだろう。

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2016.04.25

東博の‘黒田清輝展’は想像以上の大回顧展!

Img_0001     ‘湖畔’(重文 1897年 東博)

Img     ‘読書’(1891年 東博)

Img_0002     ‘野辺’(1907年 ポーラ美)

Img_0003     コランの‘フロレアル(花月)’(1886年 アラス美)

現在、東博で開催中の‘黒田清輝展’(3/23~5/15)、出動するかどうかで迷っていたがやはり足を運んだ。それはある絵をどうしてもみたいという気持ちを捨てきれなかったから。そのため、館内にいたのは30分ほど。

入館して目が求めていたのは黒田清輝(1866~1954)の絵ではなく、黒田がフランスに留学していたときの師ラファエル・コランの‘フロレアル(花月)’、この草花のじゅうたんに寝そべる裸婦は黒田清輝物語が語られる場合必ず出てくる絵。

アラス美蔵のこの絵は現在オルセーに寄託されている。新しくなったオルセーはまだ訪問してないので、最新の展示状況がわからないが、おそらくこの絵は常時展示されてはいないと思う。記憶が定かでないが何年か前に横浜美?で展示された。気にとめていたのだがめぐりあわせが悪く絵の前に立てなかった。

その思いがようやく実現した。海外の美術館でコランの作品をみたことは一度もないので今回出品された6点はいずれも新鮮。そして、お目当ての‘フロレアル’は想像していた以上によかった。ポーラ美にある‘野辺は’はおそらくこの絵を意識して描いたのだろう。

長年気になっていた絵がみれたのであとはお気に入りの‘湖畔’、‘読書’などを重点的にみてまわった。作品の数は大変多い。その構成は東博蔵が中心になっているが、国内の美術館、ブリジストン美やひろしま美、ウッドワン美、ポーラ美などが所蔵するものもたくさん並べられている。まさに黒田清輝の作品まとめて全部みせます!という感じ。

さらに驚いたのはオルセーからルパージュのあの‘干し草’がやって来ていたこと。ミレーの‘羊飼いの少女’はチラシに載っていたから予定の鑑賞だったが、‘干し草’までみれるとは。大きなオマケに感謝!8年くらい前、平塚市美で黒田清輝展を体験していたお蔭で画業全体がスムーズに頭のなかに入った。そして、25歳のとき描いた‘読書’とその6年後日本で描いた‘湖畔’がMyベストに変わりないことも確認した。

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2016.03.07

原田直次郎展にサプライズの絵があった!

Img     ‘靴屋の親爺’(重文 1886年 東芸大美)

Img_0003        ‘高橋由一像’(1893年 東芸大美)

Img_0001     ‘風景’(1886年 岡山県美)

Img_0002     ‘上野東照宮’(1889年 岡山県美)

展覧会をみにでかけるときは朝早く始動し、4つか5つの美術館をまわっている。ここにちょっと遠くにある美術館が加わるときはひとつ減らして3つか4つになる。

その遠い美術館のひとつ、埼玉県近美では現在‘原田直次郎展’(2/11~3/27)が開催されている。ここへ来るのは久しぶりなので出かける前JRの下車駅を確認した。京浜東北線の北浦和駅、思い出した。駅に着いてしまえば西口から美術館までは急ぎ足で行けば5分だからアクセスはとてもいい。

36年しか生きられなかった洋画家、原田直次郎(1863~1899)の名前は強烈なイメージをもった二つの絵によって深く心に刻まれている。ひとつはドイツに留学しているときに描いた‘靴屋の親爺’、そしてもう一点は東近美を訪問するたびにお目にかかる‘騎龍観音’(ともに重文に指定されている)。

今回2点とも出品されていると思っていたが、‘靴屋の親爺’のみの展示だった。この絵をみているとある絵が目の前をよぎる、それはワイエスの描いた農民。思想家をも連想させる靴屋の男にしても直次郎の師匠である高橋由一の肖像にしても驚かされるのは顔のちょっとした動きまで伝わってくるような見事な写実描写、この精神性までとらえた高い技術は高橋由一をこえている。

ミュンヘンで描いた作品のなかにびっくり仰天の作品があった。岡山県美にある‘風景’、直次郎にこんないい絵があったとは。明るい陽射しのなかで遊ぶ子どもたちの姿が目にやきつくこの絵のイメージとむすびつくのはロシアの画家、ポレーノフとかシーシキンの風景画。この絵は忘れられない一枚になりそう。

いかにも油絵という作品のほかにも日本の光景を描いた‘上野東照宮’などにも足がとまった。たくさんの作品に遭遇し、原田直次郎という画家の豊かな絵心と高い技術に深く感動した。この回顧展にめぐり合わせてくれたミューズに感謝!

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2015.10.03

神奈川県歴博で‘五姓田義松展’!

Img     ‘朝暘の富士’(1903年 茨城県近美)

Img_0001     ‘土佐丸’(1896年 日本郵船)

Img_0002     ‘山の宿’(1897~1906年 神奈川県歴博)

Img_0003     ‘操芝居’(1883年 東芸大美)

横浜のJR桜木町駅から歩いて10分くらいのところにある神奈川県歴博で気になる画家五姓田義松(ごせだよしまつ 1855~1915)の回顧展がはじまった。会期は9/19~11/8。

この洋画家の名前は最初は読めなかった、ごせいだ?ごしょうだ?ごせだと読めるのに時間がかかったのはなにぶん作品との出会いが少ないから。これまでお目にかかったのは東京都現美にある‘清水富士’と義松がパリに滞在していたときに描いた‘操芝居’の2点のみ。だから、チラシに‘最後の天才’とあってもこれをそのままうけとめるにはサンプルが少なすぎる。でも、みた絵の出来からするとそうかなとも思う、だから長い間気になる存在だった。

関心の的は油彩、全部で33点でていた。みていくうちに‘最後の天才’は当たっているなと感じてきた。五姓田義松という画家をはじめて知ったのは富士山の絵。今回富士山が描かれた風景画は5点ある。どれもぐっと惹かれるが、Myカラーが緑&黄色なので‘朝暘の富士’を長くみていた。

日本郵船が所蔵している‘土佐丸’にも思わず足がとまった。豪華客船が入港すると大勢の人が集まってくるように大きな船というのは特別に心を高揚させる。この絵の写実性豊かに描かれた船をみると外国へのあこがれやロマンがいやがおうにもかきたてられる。

市井の女性を描いたものがいくつもあったが、お気に入りは‘山の宿’。後ろから光を受けた真ん中の女性が着ている着物の白が発光体のように輝いていた。これは大きな収穫。そして、再会した‘操芝居’、やはりこれが一番よかった。未完成だが、五姓田の代表作であることを実感した。

見終わって図録を購入しようと思ったら、まだ出来ていないという。ええー!? のんびりしていること。10月20日頃入荷するというから図録を手に入れようと思っている方はそのころ行かれるほうがいい。

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2014.02.17

‘森本草介展’にやっと遭遇!

Img_0002_2       ‘アンティーク・ドール’(2012年)

Img_0003_2       ‘女FORME’(1996年)

Img_0004_2       ‘初秋の川辺’(2006年)

Img_0005_2       ‘ペリゴールの村’(1999年)

先週の金曜、新聞の広告欄に日本橋の三越で行われている‘森本草介展’が載っていた。会期は2/5にはじまり今日17日まで。この画家の回顧展に遭遇することを長いこと願っていたのに迂闊にもこの情報は見逃していた。これはミューズのお告げ、幸運をかみしめて最終日にすべりこんだ。

出品作33点はすべて千葉市にあるホキ美が所蔵するもの。数年前この美術館が誕生したことは承知しており、写実画が多く揃っているという情報も入っていた。だが、その中核となっている森本草介(1937~)が36点もあることは知らなかった。国内最大の森本コレクションとのこと。これにもっと早く気づいていたら、現地へ足を運んでいたのに。

森本の作品で惹かれるのは女性を描いたものと風景画。といっても過去体験したのは3点のみ、その1点はびっくりするほど精緻に描かれた女性の肖像画、そのリアルすぎるほどリアルな肌の質感描写や髪1本々まで息を吞んでみた。今回そんな女性像と裸婦画が全部で20点ちかくあった。

どの作品の前に立っても画面に吸いこまれてしまうが、とくに長くみていたのが2年前に描かれた‘アンティーク・ドール’。そして、裸婦画では‘女FORME’の珍しいポーズが目にとまった。静謐なセピアトーンの空間のなかでこの女性はなにか思いつめたように視線を下にむけている。

同じセピア色で描かれた風景画、以前みた‘初秋の川辺’はホキコレクションの一枚だった。川面をきらきら照らす光やそこに映りこむ木々をみていると、手前からこの川の光景を実際にながめているような気分になる。これほど写実性の高い風景画を描く日本人画家を森本のほかにみたことがない。

フランスの田舎の情景が横長の画面に描かれた‘ベリゴールの村’は心がとても落ち着く風景画、前景いっぱいに広がる草花の静けさ、やさしさ、じっとみているとワイエスの‘クリスティーナの世界’(MoMA)が重なってきた。そうだ、森本草介は日本のワイエス!同じような横長の作品がほかにも3点ほどあった。

森本の作品は今号100万円、するとここにある33点の価値はうん十億円、ホキ美が所蔵する自慢のコレクションをみる機会が突然めぐってきたことを心から喜んでいる。

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2013.07.31

エンジョイ 海百景! 芳翠、由一、武二、繁

Img_0001     山本芳翠の‘浦島図’(1893~95年 岐阜県美)

Img_0002     高橋由一の‘江の島図’(神奈川県近美)

Img_0004     藤島武二の‘大王岬に打ちよせる怒濤’(1932年 三重県美)

Img_0003     青木繁の‘朝日(絶筆)’(1910年 佐賀県立小城高校)

日本の洋画家への思い入れは日本画家にくらべると少し弱くなるが、ビッグネームの回顧展は見逃さないようにしている。昨年はすばらしい‘高橋由一展’(東芸大美)があり、2年前には‘青木繁展’(ブリジストン美)が開催された。また、この年はそごう美で‘藤島武二・岡田三郎助展’も楽しんだ。

今期待している回顧展は山本芳翠(1850~1906)と梅原龍三郎、そして森本草介。はたしてその可能性はあるだろうか?このなかで山本芳翠については画集が手元にないので、画業全体がつかめてない。3年前、三菱一号館の開館記念展で芳翠の‘十二支’シリーズに出会った。はじめてこのシリーズを知ったが、鑑賞欲を強く刺激された。出品された3点を所蔵しているのは三菱重工業、ほかの9点もみたくなるが、一体どこにあるのだろうか?もし、回顧展に遭遇すれば望みが叶う可能性もでてくる。

そのときはもちろん代表作の‘浦島図’にも会える。この絵は‘前田青邨展’をみるため岐阜までクルマを走らせたとき、平常展示でみた。絵自体は何年も前から目に焼きついていたが、本物にはなかなか縁がなかった。体が引きこまれるのは亀の上に乗っている浦島太郎だが、戸惑うのがこの浦島太郎の顔、女性かいな!?長い髪、ぽちゃっした丸みのある顔、そして体をちょっとひねるポーズ、どうみても女性の姿。

まわりの侍女や童子のかわいらしさや柔らかそうな肌をみていると、なんだかブーシェの絵をみているよう。そして、心安まるのが穏やかな海。遠くにみえる水平線が画面の上のほうに引かれているので海が広々としている。こういう絵は年に一回はみたくなる。

風景画は自分の知っている場所だと身近な感じがする。高橋由一(1828~1894)の‘江の島図’はとても気に入っている。海が描かれているところは少ないがこの道を通り島に渡っているから、海は十分イメージできる。フランスのモンサンミッシェルへ行ったとき、すぐ江の島を思い出した。

三重県の大王岬がどこにあるかわからない。でも、藤島武二(1867~1943)の絵で岬の名前だけはずいぶん前からインプットされている。武二の風景画で魅せられているのは画面に動きのある‘大王岬に打ちよせる怒濤’と‘室戸遠望’(泉屋博古館分館)。‘大王岬’は両サイドの岩がつくるV字の間に描かれた波の激しいしぶきに緊張感がある。

青木繁(1882~1911)の絶筆‘朝日’は回顧展のとき息を呑んでみていた。そして、しだいにターナーとモネの絵が重なってきた。波の揺れが青木繁の波乱万丈の人生を象徴しており、その終わりのときを朝日が明るく照らしているようにみえた。

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