2016.12.16

鎌倉で‘松本竣介展’!

Img     ‘立てる像’(1942年 神奈川県近美)

Img_0001        ‘自画像’(1941年 神奈川県近美)

Img_0002     ‘市内風景’(1941年)

Img_0003     ‘Y市の橋’(1944年)

今年は松本竣介(1912~1948)に縁があった。5月、東芸大美で宮城県美が所蔵する‘画家の像’という見ごたえのある肖像画をみた。そのとき、秋に神奈川県近美の鎌倉別館で‘松本竣介展’(10/8~12/25)が開催されるという情報をえていたかどうか記憶があやふやだが、出かける計画はたてていた。

神奈川県近美の本館は今年惜しまれながらクローズしたのに目と鼻の先にある鎌倉別館のほうは存続している。その理由がよくわからないが、チケットを買うときそのことを聞くときょとんとされた。当面は大丈夫そう。ここへきたのは久しぶりなので建物のレイアウト感覚がなくなっていた。2階が展示室だった。

‘画家の像’の1年後に描かれた‘立てる像’、ともに大きな絵で縦は1.6mもある。‘立てる像’を最初にみたのはどこだったかすっかり忘れたが、この絵によって松本竣介という洋画家を知った。刷り込まれたイメージは学生服を着た大きな男、今ふたたびみるとこの男のでかさはガリバー級、そしてある絵がオーバーラップする。

それはアンリ・ルソーの‘私自信、肖像=風景’(1890年 プラハ国立美)、図録の論考、作品に説明のどこにもルソーの名前がでてこないが、竣介はルソーのこの絵をみなかったのだろうか。こういうときは高い確率で影響を受けていると思ったほうがいい。

今回作成された図録の冒頭に竣介の写真が載っていた。‘自画像’を以前みたときイケメンのシテイボーイの感じがしていたが、実物はたしかに絵描きに思えないくらいすっきりした顔をしている。サラリーマンでいうとエンジニアのイメージ。

音がまったく聞こえてこないような橋や都会の風景を描いた作品が全部で5点でていた。描かれているのは東京や横浜の街の一角、本来なら都市の風景がこんなに静まり返っていることはないが、時は生きる希望や楽しみが消え去った戦時下、切れ切れになった都市の面影がじつに切なく描写されている。

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2016.05.10

とても気になる画家、高島野十郎!

Img     ‘御苑の春’(1948年以降 福岡県美)

Img_0001     ‘雨 法隆寺塔’(1965年)

Img_0002     ‘からすうり’(1948年以降)

Img_0004     ‘蝋燭’(1912~1926年 福岡県美)

久しぶりに目黒区美を訪問した。現在、ここでとても気になる画家、高島野十郎(1890~1975)の回顧展(4/9~6/5)が開催されている。

過去この画家の作品をみたの10年前、東芸大美で行われた‘日曜美術館30年展’のときだけ。お目にかかったのは3点ほど、それはドキッとする自画像とラ・トウールがすぐ思い浮か蝋燭を描いた小品、そしてカラヴァッジョの静物画のような驚異の写実力をみせつける‘からすうり’。

それ以来、高島野十郎はずっと気になっていた。回顧展の情報は突然入って来た。場所は目黒区美?普段は縁がないこの美術館は1988年に高島野十郎展を行っていた。だから、この画家を世間に知らしめることに一役買っていたのである。それで2回目の回顧展に合点がいく。

作品の数は140点以上、お蔭で高島野十郎に最接近することができた。‘御苑の春’は大きな樹の存在感と枝の太さがだんだん細くなってもなお写実の密度を保つ粘着的な描写力が強く印象に残る。画面をじっくりみていると加山又造の木々の描き方がダブってきた。

‘雨 法隆寺塔’は東芸大美には出品されなかった作品。広重の‘大はしあたけの夕立’を連想させる構成が鑑賞欲を刺激し続けてきたので、おおげさにいうと立ち尽くしてみていた。この雨の線をこれほど沢山ひくにはかなりの時間がかかり相当な集中力がいる。並みの画家ではとうていこのレベルに到達できない。

またみれて嬉しくてたまらないのが鮮やかな朱が目に焼きつく‘からすうり’、高島の描く果物の絵はどれもその驚くべきリアリズムが心を打つが、そのなかで群をぬいていいのがこのからすうり。この絵をみたら高島野十郎はもう心のなかにずっと居座る。

ラ・トウールのイメージがつきまとう蝋燭の絵、今回高島流の蝋燭が全部で19点も並んでいる。ゆらゆらと揺れる炎を1点々じっくりみていた。6月上旬、プラド美でラ・トウール展をみることになっているが、そのときは高島野十郎の蝋燭を思い出すことだろう。

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2016.04.25

東博の‘黒田清輝展’は想像以上の大回顧展!

Img_0001     ‘湖畔’(重文 1897年 東博)

Img     ‘読書’(1891年 東博)

Img_0002     ‘野辺’(1907年 ポーラ美)

Img_0003     コランの‘フロレアル(花月)’(1886年 アラス美)

現在、東博で開催中の‘黒田清輝展’(3/23~5/15)、出動するかどうかで迷っていたがやはり足を運んだ。それはある絵をどうしてもみたいという気持ちを捨てきれなかったから。そのため、館内にいたのは30分ほど。

入館して目が求めていたのは黒田清輝(1866~1954)の絵ではなく、黒田がフランスに留学していたときの師ラファエル・コランの‘フロレアル(花月)’、この草花のじゅうたんに寝そべる裸婦は黒田清輝物語が語られる場合必ず出てくる絵。

アラス美蔵のこの絵は現在オルセーに寄託されている。新しくなったオルセーはまだ訪問してないので、最新の展示状況がわからないが、おそらくこの絵は常時展示されてはいないと思う。記憶が定かでないが何年か前に横浜美?で展示された。気にとめていたのだがめぐりあわせが悪く絵の前に立てなかった。

その思いがようやく実現した。海外の美術館でコランの作品をみたことは一度もないので今回出品された6点はいずれも新鮮。そして、お目当ての‘フロレアル’は想像していた以上によかった。ポーラ美にある‘野辺は’はおそらくこの絵を意識して描いたのだろう。

長年気になっていた絵がみれたのであとはお気に入りの‘湖畔’、‘読書’などを重点的にみてまわった。作品の数は大変多い。その構成は東博蔵が中心になっているが、国内の美術館、ブリジストン美やひろしま美、ウッドワン美、ポーラ美などが所蔵するものもたくさん並べられている。まさに黒田清輝の作品まとめて全部みせます!という感じ。

さらに驚いたのはオルセーからルパージュのあの‘干し草’がやって来ていたこと。ミレーの‘羊飼いの少女’はチラシに載っていたから予定の鑑賞だったが、‘干し草’までみれるとは。大きなオマケに感謝!8年くらい前、平塚市美で黒田清輝展を体験していたお蔭で画業全体がスムーズに頭のなかに入った。そして、25歳のとき描いた‘読書’とその6年後日本で描いた‘湖畔’がMyベストに変わりないことも確認した。

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2016.03.07

原田直次郎展にサプライズの絵があった!

Img     ‘靴屋の親爺’(重文 1886年 東芸大美)

Img_0003        ‘高橋由一像’(1893年 東芸大美)

Img_0001     ‘風景’(1886年 岡山県美)

Img_0002     ‘上野東照宮’(1889年 岡山県美)

展覧会をみにでかけるときは朝早く始動し、4つか5つの美術館をまわっている。ここにちょっと遠くにある美術館が加わるときはひとつ減らして3つか4つになる。

その遠い美術館のひとつ、埼玉県近美では現在‘原田直次郎展’(2/11~3/27)が開催されている。ここへ来るのは久しぶりなので出かける前JRの下車駅を確認した。京浜東北線の北浦和駅、思い出した。駅に着いてしまえば西口から美術館までは急ぎ足で行けば5分だからアクセスはとてもいい。

36年しか生きられなかった洋画家、原田直次郎(1863~1899)の名前は強烈なイメージをもった二つの絵によって深く心に刻まれている。ひとつはドイツに留学しているときに描いた‘靴屋の親爺’、そしてもう一点は東近美を訪問するたびにお目にかかる‘騎龍観音’(ともに重文に指定されている)。

今回2点とも出品されていると思っていたが、‘靴屋の親爺’のみの展示だった。この絵をみているとある絵が目の前をよぎる、それはワイエスの描いた農民。思想家をも連想させる靴屋の男にしても直次郎の師匠である高橋由一の肖像にしても驚かされるのは顔のちょっとした動きまで伝わってくるような見事な写実描写、この精神性までとらえた高い技術は高橋由一をこえている。

ミュンヘンで描いた作品のなかにびっくり仰天の作品があった。岡山県美にある‘風景’、直次郎にこんないい絵があったとは。明るい陽射しのなかで遊ぶ子どもたちの姿が目にやきつくこの絵のイメージとむすびつくのはロシアの画家、ポレーノフとかシーシキンの風景画。この絵は忘れられない一枚になりそう。

いかにも油絵という作品のほかにも日本の光景を描いた‘上野東照宮’などにも足がとまった。たくさんの作品に遭遇し、原田直次郎という画家の豊かな絵心と高い技術に深く感動した。この回顧展にめぐり合わせてくれたミューズに感謝!

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2015.10.03

神奈川県歴博で‘五姓田義松展’!

Img     ‘朝暘の富士’(1903年 茨城県近美)

Img_0001     ‘土佐丸’(1896年 日本郵船)

Img_0002     ‘山の宿’(1897~1906年 神奈川県歴博)

Img_0003     ‘操芝居’(1883年 東芸大美)

横浜のJR桜木町駅から歩いて10分くらいのところにある神奈川県歴博で気になる画家五姓田義松(ごせだよしまつ 1855~1915)の回顧展がはじまった。会期は9/19~11/8。

この洋画家の名前は最初は読めなかった、ごせいだ?ごしょうだ?ごせだと読めるのに時間がかかったのはなにぶん作品との出会いが少ないから。これまでお目にかかったのは東京都現美にある‘清水富士’と義松がパリに滞在していたときに描いた‘操芝居’の2点のみ。だから、チラシに‘最後の天才’とあってもこれをそのままうけとめるにはサンプルが少なすぎる。でも、みた絵の出来からするとそうかなとも思う、だから長い間気になる存在だった。

関心の的は油彩、全部で33点でていた。みていくうちに‘最後の天才’は当たっているなと感じてきた。五姓田義松という画家をはじめて知ったのは富士山の絵。今回富士山が描かれた風景画は5点ある。どれもぐっと惹かれるが、Myカラーが緑&黄色なので‘朝暘の富士’を長くみていた。

日本郵船が所蔵している‘土佐丸’にも思わず足がとまった。豪華客船が入港すると大勢の人が集まってくるように大きな船というのは特別に心を高揚させる。この絵の写実性豊かに描かれた船をみると外国へのあこがれやロマンがいやがおうにもかきたてられる。

市井の女性を描いたものがいくつもあったが、お気に入りは‘山の宿’。後ろから光を受けた真ん中の女性が着ている着物の白が発光体のように輝いていた。これは大きな収穫。そして、再会した‘操芝居’、やはりこれが一番よかった。未完成だが、五姓田の代表作であることを実感した。

見終わって図録を購入しようと思ったら、まだ出来ていないという。ええー!? のんびりしていること。10月20日頃入荷するというから図録を手に入れようと思っている方はそのころ行かれるほうがいい。

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2014.02.17

‘森本草介展’にやっと遭遇!

Img_0002_2       ‘アンティーク・ドール’(2012年)

Img_0003_2       ‘女FORME’(1996年)

Img_0004_2       ‘初秋の川辺’(2006年)

Img_0005_2       ‘ペリゴールの村’(1999年)

先週の金曜、新聞の広告欄に日本橋の三越で行われている‘森本草介展’が載っていた。会期は2/5にはじまり今日17日まで。この画家の回顧展に遭遇することを長いこと願っていたのに迂闊にもこの情報は見逃していた。これはミューズのお告げ、幸運をかみしめて最終日にすべりこんだ。

出品作33点はすべて千葉市にあるホキ美が所蔵するもの。数年前この美術館が誕生したことは承知しており、写実画が多く揃っているという情報も入っていた。だが、その中核となっている森本草介(1937~)が36点もあることは知らなかった。国内最大の森本コレクションとのこと。これにもっと早く気づいていたら、現地へ足を運んでいたのに。

森本の作品で惹かれるのは女性を描いたものと風景画。といっても過去体験したのは3点のみ、その1点はびっくりするほど精緻に描かれた女性の肖像画、そのリアルすぎるほどリアルな肌の質感描写や髪1本々まで息を吞んでみた。今回そんな女性像と裸婦画が全部で20点ちかくあった。

どの作品の前に立っても画面に吸いこまれてしまうが、とくに長くみていたのが2年前に描かれた‘アンティーク・ドール’。そして、裸婦画では‘女FORME’の珍しいポーズが目にとまった。静謐なセピアトーンの空間のなかでこの女性はなにか思いつめたように視線を下にむけている。

同じセピア色で描かれた風景画、以前みた‘初秋の川辺’はホキコレクションの一枚だった。川面をきらきら照らす光やそこに映りこむ木々をみていると、手前からこの川の光景を実際にながめているような気分になる。これほど写実性の高い風景画を描く日本人画家を森本のほかにみたことがない。

フランスの田舎の情景が横長の画面に描かれた‘ベリゴールの村’は心がとても落ち着く風景画、前景いっぱいに広がる草花の静けさ、やさしさ、じっとみているとワイエスの‘クリスティーナの世界’(MoMA)が重なってきた。そうだ、森本草介は日本のワイエス!同じような横長の作品がほかにも3点ほどあった。

森本の作品は今号100万円、するとここにある33点の価値はうん十億円、ホキ美が所蔵する自慢のコレクションをみる機会が突然めぐってきたことを心から喜んでいる。

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2013.07.31

エンジョイ 海百景! 芳翠、由一、武二、繁

Img_0001     山本芳翠の‘浦島図’(1893~95年 岐阜県美)

Img_0002     高橋由一の‘江の島図’(神奈川県近美)

Img_0004     藤島武二の‘大王岬に打ちよせる怒濤’(1932年 三重県美)

Img_0003     青木繁の‘朝日(絶筆)’(1910年 佐賀県立小城高校)

日本の洋画家への思い入れは日本画家にくらべると少し弱くなるが、ビッグネームの回顧展は見逃さないようにしている。昨年はすばらしい‘高橋由一展’(東芸大美)があり、2年前には‘青木繁展’(ブリジストン美)が開催された。また、この年はそごう美で‘藤島武二・岡田三郎助展’も楽しんだ。

今期待している回顧展は山本芳翠(1850~1906)と梅原龍三郎、そして森本草介。はたしてその可能性はあるだろうか?このなかで山本芳翠については画集が手元にないので、画業全体がつかめてない。3年前、三菱一号館の開館記念展で芳翠の‘十二支’シリーズに出会った。はじめてこのシリーズを知ったが、鑑賞欲を強く刺激された。出品された3点を所蔵しているのは三菱重工業、ほかの9点もみたくなるが、一体どこにあるのだろうか?もし、回顧展に遭遇すれば望みが叶う可能性もでてくる。

そのときはもちろん代表作の‘浦島図’にも会える。この絵は‘前田青邨展’をみるため岐阜までクルマを走らせたとき、平常展示でみた。絵自体は何年も前から目に焼きついていたが、本物にはなかなか縁がなかった。体が引きこまれるのは亀の上に乗っている浦島太郎だが、戸惑うのがこの浦島太郎の顔、女性かいな!?長い髪、ぽちゃっした丸みのある顔、そして体をちょっとひねるポーズ、どうみても女性の姿。

まわりの侍女や童子のかわいらしさや柔らかそうな肌をみていると、なんだかブーシェの絵をみているよう。そして、心安まるのが穏やかな海。遠くにみえる水平線が画面の上のほうに引かれているので海が広々としている。こういう絵は年に一回はみたくなる。

風景画は自分の知っている場所だと身近な感じがする。高橋由一(1828~1894)の‘江の島図’はとても気に入っている。海が描かれているところは少ないがこの道を通り島に渡っているから、海は十分イメージできる。フランスのモンサンミッシェルへ行ったとき、すぐ江の島を思い出した。

三重県の大王岬がどこにあるかわからない。でも、藤島武二(1867~1943)の絵で岬の名前だけはずいぶん前からインプットされている。武二の風景画で魅せられているのは画面に動きのある‘大王岬に打ちよせる怒濤’と‘室戸遠望’(泉屋博古館分館)。‘大王岬’は両サイドの岩がつくるV字の間に描かれた波の激しいしぶきに緊張感がある。

青木繁(1882~1911)の絶筆‘朝日’は回顧展のとき息を呑んでみていた。そして、しだいにターナーとモネの絵が重なってきた。波の揺れが青木繁の波乱万丈の人生を象徴しており、その終わりのときを朝日が明るく照らしているようにみえた。

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2013.05.03

共演 洋画家の富士!

Img_0002_3     五姓田義松の‘清水富士’(1881年 東京都現美)

Img_0001_3         梅原龍三郎の‘朝陽’(1945~47年 大原美)

Img_0005_3     林武の‘富士’(1965年)

Img_0008_2     絹谷幸二の‘富嶽曙’(2002年)

昨年のちょうど今頃東芸大美で‘高橋由一展’があった。この回顧展のおかげで高橋由一の画業の全貌を知ることができた。代表作の大半は目のなかにおさまったと思うのだが、一部はほかの美術館(山形美、京近美)での展示のためみれなかった。

そのなかに富士を描いたものがあった。‘本牧海岸’(香川の金刀比羅宮の所蔵)。由一は政府から1872年にウイーンで開催された万国博覧会に出品する作品の制作を依頼され‘富嶽大図’を描いたが、この絵は第二次世界大戦中、失われた。

五姓田義松(ごせだよしまつ 1855~1915)の‘清水富士’は1882年の第2回内国勧業博覧会で洋画の最高賞を獲得した作品。これを6年前神奈川県美葉山館であった展覧会でみたときは美しい富士にみとれてしまった。どこかの美術館が世界遺産登録を記念して‘大富士山展’を企画してくれたら、再会できる可能性があるのだが、果たして?

富士山を描いた洋画家で思い浮かぶのはまず梅原龍三郎(1888~1986)、次が林武(1896~1975)、そして絹谷幸二(1943~)。といっても、みている作品の数はせいぜい片手くらいで10も20も体験しているわけではない。林武はまだ回顧展に縁がなく、梅原龍三郎だって日本橋三越で06年にあったものだけ。東近美が梅原の大回顧展をやってくれないかとずっと願っているのだが、なかなか実現しない。そのときは‘朝陽’のほかにも画集に載っている富士の絵がずらっと並ぶだろう。

フォーヴィスムの強烈な色彩で描かれた林武の富士に大変魅了されている。縦長の富士は下の広々とした裾野から頂上をめざして一歩一歩登っていくような気分。赤い富士は希望の光の象徴のようにみえる。

今年70歳をむかえた絹谷幸二、世の中に大勢いる熱狂的な絹谷ファンほど作品をみていないが、鮮やかな赤や青、ゴールドで彩られた陽気で目の大きな人物や仏像に昔から強く惹かれてきた。過去2回あった回顧展でお話をする機会があったが、笑顔を絶やさない気さくな人柄なので会話がはずんだ。お気に入りの富士は02年に制作されたもの。またみたくなった。

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2012.06.14

満足度200%の‘高橋由一展’!

3961_2                 ‘鮭’(重文 1877年頃 東芸大美)

3959_2         ‘日本武尊’(東芸大美)

3960_2     ‘山形市街図’(1881~82年 山形県)

3962_2     ‘鵜飼図’(1892年 ポーラ美)

出動がのびのびになっていた‘高橋由一展’(東芸大美 4/28~6/24)をみてきた。10日の日曜美術館で高橋由一が取り上げられたことが効いているのか、会場は大勢の人であふれかえっていた。‘鮭’人気恐るべし!

これまで高橋由一(1828~1894)の作品は両手くらいしかみてなかったので、画業全体をまとまった形でみる機会があればいいなとは思っていた。でも、回顧展が開かれることは正直いって予想してなかった。それがどういう風のふきまわしかわからないが、代表作の数々がどどーんと東芸大美に集結した。

お陰で琴平の金刀比羅宮が所蔵する作品や山形県にある有名な‘山形市街図’が現地に足を運ばないでみることができた。美術本に載っているものはほとんででており、まさに‘高橋由一、全部みせます!’という感じ。‘鮭’、‘花魁’の由一の重文2点を所蔵する東芸大美だからこそ実現した展覧会ではあるが、これほど多くの作品を全国から集めてくるのだから、その企画力、運営力は本当にスゴイ。

‘鮭’は3点でている。東芸大のものをみるのは3度目だが、隣の方ははじめて。山形美に寄託されているものは7年くらい前、現地でみた。もうひとつ、笠間日動美にあるものにお目にかかれたのは運がいい。

3つをくらべるとやはり真ん中の教科書に載っている‘鮭’に惹かれる。朱色の肉の下の皮に皺がよりでこぼこしているところは本物の鮭そっくり。この皮や銀色の鱗の驚くべき質感描写が由一の油絵の一番の魅力。ほかの静物画では桜の入った手桶を描いた‘桜花図’に足がとまり、木の質感に見入っていた。

この美術館が春と秋に行うコレクション展にでてくるのを長らく待っていたのに縁がなかったのが‘日本武尊(やまとたけるのみこと)’。やっとみることができた。黒々とした髪と奄美や沖縄の人のような太い眉毛をした日本武尊は図版でみるよりずっと迫力があった。

風景画でお好みは‘宮城県庁門前図’(宮城県美)、東博でよく展示される‘酢川にかかる常盤橋’、そしていつかみたいと思っていた‘山形市街図’。‘山形市街図’をみていい気持ちになっていたら、ほかにもサプライズがあった。それはポーラ美と東博が所蔵している‘鵜飼図’。由一は鵜飼も描いていた!しばらく息を呑んでみていた。

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2011.08.23

岡田三郎助の花の絵にびっくり仰天!

2987_2         ‘西洋婦人像’(1900年)

2988_2          ‘支那絹の前’(1920年)

2989_2          ‘野菊と薔薇’(1924年)

2990_2     ‘伊豆山風景’(1935年)

佐賀県に生まれた岡田三郎助(1867~1939)の作品をまとまった形でみるのは今回がはじめて。この洋画家ついては作品より名前のほうが先行。贔屓の竹久夢二の師匠として岡田三郎助の名前がインプットされた。これが15年くらい前のこと。そして、作品に遭遇したのは06年新橋の東京美術倶楽部で開催され多くの観客を集めた‘大いなる遺産 美の伝統展’。

このときの絵は今回の回顧展に出品されている‘あやめの衣’。この絵は同じ年東近美の‘揺らぐ近代 日本画と洋画のはざまに’展にも登場した。コレクター福富太郎が所蔵していたものだが、現在は箱根のポーラ美におさまっている。女性画で顔の見えない絵はロートレックの‘赤毛の女’を除いて心を動かされないので、これは拙ブログではとりあげない。

岡田三郎助の絵をみる機会はもう数回あった。07年の‘日展100年’展(国立新美)でみた‘萩’(兵庫県美)やなにかの展覧会にでていた‘西洋婦人像’(佐賀県美)、‘支那絹の前’(高島屋)、そしてブリジストン美の平常展に飾ってあった‘婦人像’。で、これまでみたのはわずか4点。

この展覧会にでているのは女性画、風景画など40点あまり。これで岡田三郎助の画業がおおよそつかめた。美術本に載っている作品がかなり集まっているので、藤島武二同様、質の高い回顧展であることはまちがいない。

女性画は一通りみたあともう一度少し離れてみたが、やはり惹かれたのはフランスに留学していたときに描かれた‘西洋婦人像’と衣裳の緻密な描写が群を抜いている‘支那絹の前’。

展示の最後のほうに驚愕の絵があった。それは‘野菊と薔薇’(鉄道博物館)。一瞬、昨年のグランパレにでていたモネの花の絵(拙ブログ10/12/3)をみているのではないかと錯覚した。また、あの輝くような色彩で描かれたルドンの花をも連想させる。しばらく立ち尽くしてみていた。この絵は摂政宮(のちの昭和天皇)の御料車に飾られていた絵。そういう特別の絵だから、岡田三郎助は渾身の力で描きあげたのだろう。これは一生の思い出になる。

風景画にも魅せられるものが多い。‘ローマの古橋’は小品だが印象派の絵のように画面に光が満ちあふれているし、岩が海に向かって手前から遠くまで連続的にせりだす雄大な‘伊豆山風景’にも惹きこまれる。

この2人展で関心の的は藤島武二だった。ところが出かけてみると大きな感動をもらったのはあまり期待してなかった岡田三郎助のほう。この画家がこれほどの画力をもっていたとは。これまでいだいていた洋画家の序列がいっぺんに変わった。

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