2018.07.17

美術館に乾杯! ティッセン・ボルネミッサ美 その五

Img_0001     モネの‘チャリング・クロス橋’(1899年)

Img_0002     ドガの‘ある風景の中の競馬’(1894年)

Img_0003     ゴッホの‘オーヴェルのレ・ヴェスノ’(1890年)

Img     ゴーギャンの‘マタ・ムア(むかしむかし)’(1892年)

多くの愛好家がいる印象派は美術館へ出かけるときの大きな楽しみ。それはティッセンでも同じ。アメリカの大きな美術館と較べると作品の数ではかなわないが、強く惹かれる作品が揃っている。数で最も多いのがモネ(1840~1926)、4点あったがそのうち2点は2010年パリのグラン・パレで行われたモネ展にも出品された。

‘チャリング・クロス橋’はモネがロンドンを旅行して描いた連作(36点)の一枚。冬の午後の光景だが、右にかすかにみえる国会議事堂がシルエットで描かれ霞のかかるテムズ川の水面に光がきらきら映る光景が目に焼きついている。

ドガ(1834~1917)は踊り子をモデルにしたものよりカフェにいる冷え切った関係の男女などを描いた風俗画タイプや動きのある競馬のほうに惹かれている。この絵に登場する馬は全部で10頭、これまでみたなかでは最も多い。

ゴッホ(1853~1890)もいいのがある。緑と黄色で画面がおおわれている‘オーヴェルのレ・ヴェスノ’。色彩がとても鮮やかなので思わず足がとまり、うわっと声が出た。こんないいゴッホがあるのだから流石という感じ。ほかに若い頃の暗い横長の絵があった。

ゴッホとくればゴーギャン(1848~1903)、3点みたが‘マタ・ムア(むかしむかし)’がすばらしい。これは2010年秋ロンドンであったゴーギャン展(テートモダン)に出品された。縦長の画面はちょっと前に終了したプーシキン美展に展示された‘孔雀のいる風景’(1892年)がダブってくるが、女性たちを二分する中央の大きな樹の幹が強く印象に残っている。

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2018.07.16

美術館に乾杯! ティッセン・ボルネミッサ美 その四

Img     ハルスの‘風景の中の家族の肖像’(1648年)

Img_0003    ヴァトーの‘満足なピエロ’(1712年)

Img_0002     ゴヤの‘パケーテ親爺’(1820年)

Img_0001     フリードリヒの‘復活祭の朝’(1828~1835年)

西洋美術史に登場する画家が生存した時期を頭のなかに入れるのには時間がかかる。気になる画家については生まれた年や亡くなった年をインプットされていても、作品をみる機会が少ない画家の場合はそのつどメモの助けをかりることになる。

例えば、オランダのハルス(1582~1666)、印象派以前のオランダ出身の画家のなかでレンブラント、フェルメール、ホントホルストとともにお気に入りの画家なのに、いつからいつまで生存したか正確に覚えていない。レンブラントより24年前に生まれている。

ティッセンにあるハルスは家族の肖像を描いた大きな絵。ハルスの絵に登場する人物は笑ったりくだけた表情をしているので肖像画というより風俗画を楽しんでいる感じ。妻に笑顔で話しかけている夫の姿がじつにいい。ついそばにいって会話の内容を聞いてみたくなる。

フランスにはピエロを描く伝統がある。そのはじまりはロココのヴァトー(1684~1721)、これを受け継ぐのがルオーとあのピカソ。この雅宴画ではピエロを挟んで着飾った4人の男女が横に並んで座っている。女性の奏でるギターにあわせてピエロはひょうきんに踊りだすのだろうか。

この美術館のコレクションはドイツ人実業家が蒐集したものなので、プラドとはちがいスペイン絵画は少ない。ベラスケスはなくお目にかかったのはエル・グレコ、リベラ、ゴヤ(1746~1828)だけ。ゴヤは2点みたが、一度みたら忘れられないのが画面いっぱいに盲人を描いた‘パケーテ親爺’。黒い絵に近くゴヤがフランスへ亡命する前に仕上げたもの。

ドイツロマン派のフリードリヒ(1774~1840)はイギリスのターナー(1775~1851)やコンスタブル(1776~1837)とほぼ同じ時代を生きた画家。3人とも風景画を得意としたが、フリードリヒの描く風景はどこか宗教的でロマン派特有の崇高さにつつまれている。この画家の回顧展に遭遇することを密かに願っているが、今のところその気配はない。

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2018.07.15

美術館に乾杯! ティッセン・ボルネミッサ美 その三

Img     カラヴァッジョの‘アレクサンドリアの聖カタリナ’(1598年)

Img_0001     ルーベンスの‘ヴィーナスとキューピッド’(1611年)

Img_0002     レンブラントの‘自画像’(1643年)

Img_0003     ジョルダーノの‘ソロモンの裁判’(1665年)

カラヴァッジョ(1571~1610)の作品を全点コンプリートしようと意気込んでいコアなファンにとってマドリードは訪問が欠かせない街かもしれない。ここに3点ある。先般紹介したプラドの絵、そしてティッセン・ボルネミッサにある‘アレクサンドリアの聖カタリナ’、そして王宮が所蔵する‘サロメ’。

まだ縁がない‘サロメ’の展示情報がしっかり押さえられてないのに対し、‘聖カタリナ’は二度もみてしまった。この絵が飾られている部屋では皆食い入るようにみている。やはり、カラヴァッジョは人気があり明暗のコントラストを強くきかせた画風は多くの人の心をとらえている。

ルーベンス(1577~1640) にはティツィアーノの作品を模したものがいくつかあるが、‘ヴィーナスとキューピッド’もそのひとつ、模写といってもワシントンのナショナルギャラリーにある本画と遜色のない仕上がりなのでルーベンスの作品として存分に楽しめる。ヴィーナスの白い肌を浮き上がらせる衣装の濃い赤が目に焼きつく、

生涯を通して数多く描かれたレンブラント(1606~1669)の自画像、世界中の美術館におさまっている一点々にはそれぞれレンブラントの内面が色濃くでており、圧倒的な存在感がある。この自画像は帽子をかぶり二本の金鎖をつけており、37歳くらいのレンブラント。ヨーロッパやアメリカの人はだいたい実年齢より歳をとっているイメージだが、この顔は30代にはみえない。

ナポリ生まれのジョルダーノ(1634~1705)はこの街で活躍したカラヴァッジェスキのリベラから刺激を受けており、その強い写実主義はこの大作でいかんなく発揮されている。ソロモンの裁判のハイライトを動きのある人物配置と明暗のコントラストでみせる表現力はこの画家が高い画力をそなえていたことを如実に示している。

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2018.07.14

美術館に乾杯! ティッセン・ボルネミッサ美 その二

Img     デューラーの‘博士たちの中のキリスト’(1506年)

Img_0001     ホルバインの‘ヘンリー8世’(1537年)

Img_0003     エル・グレコの‘受胎告知’(1576年)

Img_0002     カナレットの‘ヴェネツィアのサンマルコ広場’(1724年)

ドイツルネサンスのど真ん中にいたデューラー(1471~1528)はヴェネツィアへ行きイタリアで才能を輝かせていたダ・ヴィンチやヴェネツィア派の大親方ベリーニから多くのことを学んだ。天才は天才を知るといわれる通り、デューラーは先達たちの画法を貪欲に吸収し、独自の画風を生み出していく。

‘博士たちの中のキリスト’に登場する博士たちの表情にはダ・ヴィンチから刺激を受けた性格描写がみられ、また女性のような顔だちをした12歳のキリストにはどこかベリーニが描く静かな聖母の雰囲気を感じてしまう。こういう作品をみると絵画の歴史というのは画法の受け渡しによって新しいものが生まれてくることがよくわかる。

フランドル絵画やドイツのデューラーやホルバイン(1497~1543)が心を惹きつけてやまないのは対象の描写がおどろくほど精緻だから。人物であれば髪や肌のリアルな再現、そして金属や衣装の生地などの質感をそのまま感じさせる筆使いはまさに神業的。

ホルバインの‘ヘンリー8世’はじつは縦28cm、横20cmの小さな肖像画。だから、ホルバインに関心がないと見逃してしまう。でも、ホルバインの肖像画に心酔していると画面の大きさは気にならない。顔を画面に目いっぱい接近させると国王の豪華な衣裳が目に焼きつく。半端ではない特技をホルバインは持っていたからこそ、このアクの強い国宝の宮廷画家がつとめられた。

スペインのトレドへやって来る前ヴェネツィアでティツィアーノ、ティントレット、ヴェロネーゼから色彩表現を学んでいたエル・グレコ(1541~1614)、‘受胎告知’はイタリア時代に描かれたもの。床の奥にのびるモザイク模様は明らかにティントレットの影響。

イタリア観光でフィレンツとともに人気のあるヴェネツィア、この街でいつも大勢の人で賑わっているのがサン・マルコ広場、カナレット(1697~1768)はじつに見事な風景画を残した。ヴェネツィアは2010年に足を運んで以来、ご無沙汰している。旅先の優先順位に変化がなければ、数年後にはビバ!イタリアモードになりそうだが、果たして。

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2018.07.13

美術館に乾杯! ティッセン・ボルネミッサ美 その一

Img_0001

Img_2     ギルランダイオ‘トルナブオーニの肖像’(1448~1494)

Img_0002    ファン・エイクの‘受胎告知’(1437年)

Img_0004     クリストゥスの‘枯れ木の聖母’(1450年頃)

Img_0003     カルパッチョの‘風景の中の若い騎士’(1510年)

日本の美術館で行われる展覧会のひとつに海外の美術館が所蔵する作品をごそっともってくる美術館名品展がある。定番のように開かれるのがルーヴル、オルセー、プラド、ボストン、エルミタージュ、プーシキンといった世界的に名の知られたブランド美術館。

何度も開催されるこうした美術館がある一方で、何十年に一度そのコレクションが披露されることもある。プラドのすぐ近くにあるティッセン・ボルネミッサ美はまだ作品がスイスの私設美術館にあったころ自慢の絵がやって来たようだ。そのとき(随分前だが)、ダリの有名な魚の口から虎が飛び出してくるシュール画が出品されたらしい。それ以降は2度目の公開には至っていない。

7年前この美術館に足を踏み入れたときは一番のお目当てはダリの絵とカラヴァッジョの‘アレクサンドリアの聖カタリナ’だった。目を奪われる作品はこれくらいかと思っていたが、これが大間違い。古典絵画から印象派、近現代アートまで揃っており、こんないい美術館がマドリードにあったの!という感じ。

ルネサンス絵画で目を楽しませてくれたのはギルランダイオ(1448~1494)の‘トルナブオーニの肖像’。目が点になるのが巻き毛の金髪や身につけている黄橙色の衣装の精緻な描写。あまり大きくない肖像画だが、これほど画力がすごいと横向きの女性に釘づけになる。

同様な緻密さで描かれたファン・エイク(1390~1441)の‘受胎告知’は典型的なだまし絵、まるで彫刻をみているよう。近づくと立体の大天使や聖母マリアの造形ではなく、二次元の画面に描かれた人物画。小品だが、あのファン・エイクを今みているのだ、と夢中になってしまう。

ファン・エイクの技法の継承者のひとりがクリストゥス(1410~1475)、‘枯れ木の聖母’は似たような絵はほかにお目にかかったことがない異色の聖母子像、潅木の輪のなかに聖母子がおり木の枝から垂れ下がる15個のaの文字は‘アヴェ・マリア’の頭文字。

フランドル絵画から大きな影響を受けたヴェネツィア派、その一人カルパッチョ(1460~1526)のとてもいい絵がある。縦2.18m、横1.51mの大作‘風景の中の若い騎士’。アカデミア美でカルパッチョに開眼したので、この絵にも敏感に反応する。

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2018.07.12

美術館に乾杯! プラド美 その十四

Img  ラ・トゥールの‘ハーディガーディを弾く盲人’(1610~30年)

Img_0003     ブーエの‘敗北した時’(1624年)

Img_0002     レンブラントの‘アルテミシア’(1634年)

Img_0001     ティエポロの‘アブラハムのもとに現れた天使たち’(1770年)

美術館へでかけて大きな満足を感じるのは好きな画家の絵が飾ってあるとき。嬉しいことにプラドでは思い入れの強いカラヴァッジョ(1571~1610)とラ・トゥール(1593~1652)に出会える。この二人を楽しめる美術館は3つしかない。ルーヴル、メトロポリタン、そしてプラド。

プラドが所蔵するラ・トゥールは‘ハーディガーディを弾く盲人’と‘手紙を読む聖ヒエロニムス’の2点。手元にいい作品があると回顧展の開催にも積極的になる。2016年の2月から6月にかけてここで超一級のラ・トゥール展が開催され、世界中から主要作品が集結した。画集で魅了された作品がいっぺんにみれたのだからテンションが上がりっぱなしだった。

シモン・ブーエ(1590~1649)はラ・トゥールとほぼ同時代を生きたフランスの画家。‘敗北した時’は時が流れて歳をとるのが嫌いな‘希望’と‘美’の女神が擬人化された‘時’に勝つという話が描かれている。時を演じるのは髭をはやしたサトゥルヌスで砂時計と鎌をもっている。二人の女神は‘私たちにはいつも希望がありはじける若さがあるのだからね、わかったでしょう、時のおじいちゃん’とかなんとか言ってるのだろうか。

オランダでさっそうと登場した天才レンブラント(1606~1669)の絵は豪華な衣裳と宝石を身につけた女性‘アルテミシア’、黒の背景に生感覚で描かれた人物が浮かび上がると思わず画面に惹きこまれる。こうしたかぎりない美につつまれるというよりは堂々とした姿の女性を描かせたらレンブラントの右に出る者はいない。

18世紀に活躍したヴェネツィア出身の画家、ティエポロ(1699~1770)は晩年にマドリードを訪問し、ここで‘アブラハムのもとに現れた天使たち’を描いた。みどころは天から降りてきた中央の天使の上半身が光をうけて輝いているところ。片方の足を上にあげているのでアブラハムもとに今駆けつけてきたという感じ。この動的描写が幻想的な雰囲気を醸し出している。

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2018.07.11

美術館に乾杯! プラド美 その十三

Img_0003     ルーベンスの‘レルマ公騎馬像’(1603年)

Img_0002     ルーベンスの‘愛の園’(1633~34年)

Img      ヴァン・ダイクの‘茨の冠のキリスト’(1618~20年)

Img_0001  ジョルダーノの‘平和のアレゴリーを描くルーベンス’(1660年)

ヨーロッパの美術館をまわるとどこでもルーベンス(1577~1640)にお目にかかる。だから、慣れてくると忙しいから今回はパスということもおこる。でも、ここのルーベンスは数だけでなく完成度の高いものが揃っているからまたみておこうかという美術館もある。ルーヴル、ロンドンのナショナルギャラリー、ミュンヘンのアルテ・ピナコテーク、そしてプラド。

プラドのルーベンスとは深い縁がある。2010年ここを訪れたとき運よく所蔵品によるルーベンス展に遭遇し、なんと89点もみることができた。まだ少しは残っているだろうが主要な作品は全部見せますという感じ。大賑わいだった。やはり、ルーベンスはヨーロッパでは絶大な人気がある。

そのなかで長くみていたのが‘レルマ公騎馬像’、この堂々とした肖像はルーベンスがスペインに滞在したとき描いたもの、レルマ公は政治の実質上のトップだった人物。絵を依頼されたルーベンスは人馬がこちらにむかってくるという大胆なポーズで見事に仕上げた。これを後の画家たちが真似たため騎馬像の新しいタイプになった。

ウィーン美術史美にある‘ウエヌスの祭り’同様、画面に釘づけになるのが‘愛の園’。目を見張らされるのは優雅な女性たちや恋を成就させようと熱い思いを告白する男性貴族の身につけている衣装の鮮やかな色彩、赤、青、金色、、ロココの雅宴画より人物たちを密集させて大きい描かれているので気分も華やぐ。

ヴァン・ダイク(1599~1641)というとかなり脚色して王や貴族の見栄えのする肖像を描いたイメージだが、‘茨の冠のキリスト’は宗教画の傑作。ぱっとみると師であるルーベンスよりカラヴァッジョの描き方のほうを連想する。カラヴァッジョがこれをみたら裸足で逃げるかもしれない。

ナポリ生まれのジョルダーノ(1634~1705)はロンドンのナショナルギャラリーにある‘フィネウスとその一味を石に変えるペルセウス’をみて開眼した。こういう画家の見方を一変させる絵に出会うとそれ以降作品への反応が変わる。プラドにも思わず足がとまる‘平和のアレゴリーを描くルーベンス’がある。

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2018.07.10

美術館に乾杯! プラド美 その十二

Img     デューラーの‘自画像’(1498年)

Img_0001     クラナハの‘聖母子と聖ヨハネと天使’(1536年)

Img_0003     プッサンの‘パルナッソス山’(1631~33年)

Img_0002   ロランの‘聖女パウラの乗船とオスティア港風景’(1640年)

フィレンツェからはじまりヨーロッパ全体に広がったルネサンス、ドイツではデューラー(1471~1528)とクラナハ(1472~1553)がその中心にいた。プラドにあるドイツルネサンスの作品は多くはないが、この二人の絵は見逃せない。

26歳のとき描いたデューラーの自画像。どや顔で貴族になりきっているデューラー、その整った容姿はたしかに現代なら確実に人気の映画スターになれる。群を抜く緻密な描写と誰もが振り返るイケメン、天は二物も三物も与える。はじめてみたとき金髪をリアルに実感させる描き方に200%KOされた。

2年前に大きな回顧展を体験したクラナハ、ドイツ人の好みに合わせて変化を加えた聖母子像やチャーミングな女性の肖像をみてこの画家に対する評価が変わった。どこか親しみのある画風は‘聖母子と聖ヨハネと天使’でも同じ。聖ヨハネが幼子イエスに渡すぶどうは死の予兆を表しているが、この可愛い赤ちゃんをみたらそれを忘れてしまう。

プッサン(1594~1665)とロラン(1600~1682)は本籍地フランス、現住所イタリアの画家で活躍の舞台はローマにあった。西洋美はここ数年バロックに照準を合わせているが、今年は秋にルーベンス展(10/16~1/20)が行われる。

グエルチーノ、カラヴァッジョ、ルーベンスとくればどうしてもプッサン展を期待したくなる。ハードルはとても高いが挑戦してもらいたい。プラドにはプッサンが8点あるが、最も見ごたえがあるのが‘パルナッソス山’、同じ画題をラファエロが描いているが、この絵もすばらしい。

ロランはルーヴルやロンドンのナショナルギャラリーで数多く楽しめるが、プラドも10点所蔵している。歴史や宗教の話を雄大な風景を背景にして描くのがロランがはじめた新機軸の風景画。縦長の画面に描かれているのは聖女パウラの物語。ほかに同じサイズの絵が3点ある。

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2018.07.09

美術館に乾杯! プラド美 その十一

Img_0003     ボスの‘快楽の園’(1503年頃)

Img_0004     ボスの‘干し草車’(1510~15年)

Img     ブリューゲルの‘死の勝利’(1562年頃)

Img_0005   ブリューゲルの‘聖マルティンのワイン祭り’(1560年代中期)

Img_0001       中央上のワイン樽に群がる人々

プラドのお宝中のお宝はどれか、ここを複数回訪問した方ならたぶん同じ絵を口にすると思う。ベラスケスの‘ラス・メニーナス’、ゴヤの‘裸のマハ・着衣のマハ’、そしてボスの‘快楽の園’。

ここ2年、幸運なめぐりあわせでボス(1450~1516)とブリューゲル(1525~1569)との相性がすこぶるいい。2016年5月31日から9月25日までプラドで開催されたボスの大回顧展(60万人をこえる来館者、プラド美の新記録)をみることができ、昨年はロッテルダムのボイマンス美にあるブリューゲルの‘バベルの塔’がやって来てくれた。この二人の絵をコンプリートすることを夢見ているので天にも昇る気分だった。

ボス展で多くの作品にお目にかかれたが、プラドで人気の‘快楽の園’が最高傑作であることを再認識した。16世紀のはじめにこんな怪奇でグロテスクな世界と明るくて甘い香りのする楽園が一緒に描かれた絵画が存在していたとは。

‘快楽の園’も‘干し草車’も世の中を風刺したり警鐘を鳴らす寓意画、人間がいだく欲望や求める快楽はどこまでも膨らんでいくが、その果てに落とし穴があり地獄が待っている。快楽と地獄は表裏一体、これを胸に刻み‘メメントモリ(死を忘れるな)!’今を生きるわれわれにだってこの教えはあてはまる。

5点あるボスに対してブリューゲルは2点、昔からある怖い絵‘死の勝利’と2010年にプラドが発見した‘聖マルティンとワイン祭り’。どちらもボスの強い影響がみられる絵でブリューゲルはボスの弟分のような関係にある。作品の数が少ないボスとブリューゲルを同じ部屋で7点もみられるのだからテンションはぐんとあがる。

西洋美術が好きな人には口ぐせのように‘プラドへ行ってボスとブリューゲルをみたら絵画のイメージが変わるよ、ダ・ヴィンチやラファエロがぶっ飛ぶから!’と言っている。

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2018.07.08

美術館に乾杯! プラド美 その十

Img_0004     カラヴァッジョの‘ゴリアテを負かしたダヴィデ’(1600年)

Img     カラッチの‘ヴィーナス、アドニスとキューピッド’(1590年)

Img_0001     レーニの‘アタランテとヒッポメネス’(1612年)

Img_0002     グエルチーノの‘スザンナと長老たち’(1617年)

思い入れが強く一生つきあっていこうと決めている画家だと世界のどの美術館が作品を所蔵しているかはおおよそ頭のなかに入っている。ぞっこん惚れているカラヴァッジョ(1571~1610)の場合、スペインのマドリードに3点ある。

プラドに飾ってあるのが‘ゴリアテを負かしたダヴィデ’、キリストやギリシャ神話などを題材にした宗教画はカラヴァッジョあたりから登場する人物はぐっと身近に感じられるようになり、舞台で演じられる芝居の一場面をみているような感じになってくる。だから、緊張感を強いられたり圧倒されてしまう宗教画をみているというより風俗画をみているのと同じ。

こうして宗教臭さが抜けてくると絵画との距離が一気に縮まり、描かれている出来事の瞬間や人物の内面性に感情移入することも多くなる。そして画家の描き方にも明暗のコントラストを強調したり事件のハイライトを劇的な構図でとらえるといった変化が生まれ、表出する感情をリアルに表現した生々しい人物描写や動きのある画面構成が見る者の心をつかんでいく。

ここにはカラヴァッジョだけでなく、ルネサンス絵画やマニエリスムとは違う新しい絵画に挑戦したアン二―バレ・カラッチ(1560~1607)やレーニ(1575~1642)、グエルチーノ(1591~1666)のとてもいい絵が揃っている。とくに魅せられているのがカラヴァッジョもその実力を高く評価していたカラッチの絵。これまでみたカラッチは多くはないが、そのなかではこれに最も惹かれている。アドニスとヴィーナスが対面する瞬間の構図がじつにいい。

レーニの大作‘アタランテとヒッポメネス’は一度みたら忘れられないほどのインパクトをもっている。ナポリのカポディモンテ美にあるサイズの小さい別ヴァージョンが日本で公開されたが、プラドでは大きな画面なので立ち尽くしてみていた。

西洋美が回顧展を開催してくれたので親近感がぐっと増したグエルチーノ。カラヴァッジョの描き方に影響を受けた‘スザンナと長老たち’にはどうしても体が寄っていく。これが回顧展に出品されたらよかったが、ものごとそううまくはいかない。いい作品にはOKを出したがらないのが美術館の性。

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