2019.06.16

美術館に乾杯! ルーヴル美 その二十四

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     ‘ミロのヴィーナス’(前130~前100年)

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     ‘サモトラケの二ケ’(前190年)

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     ‘ランパンの騎士’(前550年)

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     ‘夫婦の棺’(前520~前510年)

ルーヴルの2大看板は絵画の‘モナ・リザ’と彫刻の‘ミロのヴィーナス’。
西洋でつくられた彫刻のなかで知名度は‘ミロのヴィーナス’が一番有名かも
しれない。両腕が無い彫刻なのにそれがまったく気にならないのは愛と美
の女神ヴィーナスとしては完璧に美しい形をしているから。小さな頭と
S字を描くような均整の取れた理想的なプロポーション、このヴィーナス
を目に焼きつけたらほかの女性の彫像がみれなくなる。

ドゥノン翼2階への階段をのぼりきったところに飾られている‘サモトラケ
の二ケ’は船の舳先に降り立つ勝利の女神ニケを表現したもの。翼の動感
描写や風に吹かれて衣装が体に巻きつくさまは力強く躍動感に満ちたヘレ
ニズム期の彫刻の特徴。これをみると映画‘タイタニック’のあの有名な
シーンが目に浮かび歌姫が歌う名曲が聞こえてくる。

アテネのアクロポリス博にたくさん展示されているアルカイックスマイル
の彫像がルーヴルでも楽しめる。頭の部分だけが本物の‘ランパンの騎士’、
アーモンド形の瞳と微笑みの表情がつくる典型的なアルカイックスマイル
は心をぐっと和らげてくれる。女性だけでなく男性もこんな笑う姿で描く
ことが流行った理由は何だったのだろう。

古代エトルリアでつくられた陶棺でも宴会用の寝椅子に横たわる夫婦は
アルカイックスマイルをみせている。ローマの博物館でも同じ姿をした
夫婦の棺をみたが、ルーヴルにも質の高いエトルリア・コレクションが
ある。流石、世界のブランド美術館。

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2019.06.15

美術館に乾杯! ルーヴル美 その二十三

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   ルーヴルへの入場口になっているガラスのピラミッド

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    ‘書記坐像’(前2600~前2350年)

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    ‘アメンヘテプ4世’(前1365~49年)

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   ‘監督官エビ・イルの像’(前2400年)

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   ‘バビロン王ハンムラビの法典碑’(前1792~前1750年)

ルーヴルには何度か訪れているが、古代文明の彫刻や美術工芸を一通りみた
のは最初と二度目のときだけ。そのあとは絵画の追っかけに専念したので、
今では美術品が展示されている場所や導線の流れがどうなっていたかは記憶
があやふや。

とはいっても、‘ミロのヴィーナス’や‘サモトラケのニケ’のような美術館の
至宝中の至宝などは忘れようがないし、それぞれの古代文明の発掘品のなか
で強い磁力を放っていたものは胸に深く刻まれている。古代エジプトでは目
の前に本人が座っているような感じの‘書記坐像’が強く印象に残っている。
顔がとても写実的なので4500年前のエジプト人は現在の人々とまったく
変わらないなと思ってしまう。一方、唇が厚く馬面の‘アメンヘテプ4世’は
本人をかなりいじくって神格化した姿にうつる。顔だけでなく女性のような
大きな腰にも違和感を覚える。

メソポタミア文明の展示室で思わず足がとまるのは石膏でつくられた‘監督官
エビ・イルの像’。フランス人形を連想させる大きな目が印象的。柔らかく
細工のしやすい石膏に施された綺麗なあご髭や腰から下の衣装の葉のような
模様に視線が釘づけになる。また、分厚い円筒帽を被った石像‘祈る王グデア
の像’にも魅了される。

そして、最大の見どころはメソポタミアを統一したバビロン王ハンムラビが
つくらせた‘ハンムラビの法典碑’。硬い玄武岩の表面に楔形文字がびっしり刻
まれた石柱の上部にはハンムラビ王(左)と神の姿が描かれている。歴史の
教科書にでてくる法典の碑を目の前にするとちょっと歴史力があがったよう
な気がしてくる。


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2019.06.14

美術館に乾杯! ルーヴル美 その二十二

Img_0001_82   コローの‘モントフォンテーヌの想い出’(1864年)

 

Img_0002_76     ドービニーの‘沼、ロンプレの近く’(1870年)

 

Img_0003_75      ミシャロンの‘滝、ティヴォリ’(19世紀初頭)

 

Img_86     フリードリヒの‘カラスの木’(1822年)

 

ルーヴルで絵画を見る場合、限られた鑑賞時間をドゥノン翼、リシュリュ
ウ翼、シェリー翼にどう割り振るかはあらかじめ決めておく必要がある。
そうしないと、作品の数が多いため一点々の見方が散漫になり感激度が薄
れる。ルネサンス絵画を中心にみるならメインストリートのドゥノン翼の
2階に居座るのが無難。団体ツアーで入館するときはだいだいこのコース
が多い。

フランスの画家が描いた作品を堪能するオプションを選択した方は動きま
わる範囲が広くなる。ドラクロワの‘民衆を率いる自由の女神’やダヴィッ
ドの‘ナポレオンの戴冠式’などをドゥノン翼の大展示室でみたあとはすぐ
シェリー翼の3階に移動し正方形の建物をぐるっと一周すると人気の
ラ・トゥール、華やかなロココ絵画やシャルダン、アングル、ドラクロワ、
ジェリコーのパート2が楽しめる。

コロー(1796~1875)の風景画がみれるのはピラミッドの入口の
前方にあたる部屋。2008年と2010年、ここをまわったはずなのに
詩情あふれる光景に心を癒される‘モントフォンテーヌの想い出’をみたと
いう実感がない。この絵をじっさいにみたのは2008年にあったコロー
展(西洋美)でのこと。ルーヴルではラ・トゥールの部屋からスタートし
たので、コローにたどり着いたころは鑑賞エネルギーが無くなっていた
のかもしれない。そうでなければ霞がかかる池の手前に描かれた枝ぶりが
しっかりした大きな木と幸せそうな母子を見逃すはずがないのだが、、

今月のはじめ、新宿でみたドービニー(1817~1878)の‘沼、ロン
プレの近く’は日本で開催された展覧会でお目にかかった。こうして師匠の
コローの絵と並べてみると画風がよく似ている。川の光景をとらえるの
はこういう横に長い画面がもってこい。なんだか川に沿って歩いているよ
うな気がする。

ミシャロン(1796~1822)の‘滝、ティヴォリ’は3年間ローマに
滞在しイタリアの自然を写実的に描く技術をみがいた成果がよく出てい
る作品。滝が勢いよく岩を流れ落ちる様子がダイナミックに描写されて
いる。海上の波の動きや川の水を描くのは大変難しいが、才能に恵
まれたミシャロンは水しぶきから立ち上る蒸気まで描いて驚かす。

ドイツ・ロマン派のフリードリヒ(1774~1840)の絵はドイツ
以外の美術館ではほとんどみることがないので、ルーヴルで遭遇した
‘カラスの木’は貴重な体験。退廃的な面と静寂をきわめる神秘的な雰囲気
が入り混じる画面はどこか気になる。フリードリヒ展にめぐりあうことを
密かに願っているが、今のところその気配はまったくない。

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2019.06.13

美術館に乾杯! ルーヴル美 その二十一

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     アングルの‘グランド・オダリスク’(1814年)

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   シャセリオーの‘風呂から上がるムーア人の女’(1854年)

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    ゴヤの‘ラ・ソラーナ女侯爵’(1795年)

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    コローの‘青い服の婦人’(1874年

‘動’のドラクロワ(1798~1863)に対する‘静’のアングル
(1780~1867)、ともにフランスを代表する画家として美術本に
は必ず登場する。アングルのもっとも有名な絵は‘グランド・オダリスク’。
はじめてルーヴルにやって来たときこの絵は‘モナ・リザ’や‘民衆を導く
自由の女神’とともに二重丸がつく必見名画だった。ルーヴルのような大き
な美術館で画家の代表作がみれるというのは特別な鑑賞体験である。

ぱっとみて振り向いた女性の胴が異常に長いという印象はなかった。それ
はベッドに横たえた体が大きな円におさまるように滑らかに曲がっている
から。解説文を読むと確かにそうだなとなるが、絵の前では興奮していた
こともあり、背骨の長さより女性の強い目力のほうが気になった。
そして、期待の絵の前では絹地のカーテンの精緻な描写をじっくりみる
余裕がなく視線はひたすら柔らかそうな裸体に張りついている。

16歳でパリの画壇にデビューしたシャセリオー(1819~1856)
のはじめての回顧展が2年前西洋美で開催された。これまでルーヴル所蔵
のものしかみてないので画業全体を知るにはいい機会だった。‘風呂から
上がるムーア人の女’は1846年に滞在したアルジェリアの体験がもとに
なっている。中央のムーア人の女の長い髪ときりっとしたまなざしが目に
焼きつく。シャセリオーが尊敬したドラクロワにも‘ハーレムのアルジェの
女たち’(1834年)があるが、なぜか風呂上がりのムーア人の女のほう
に惹かれる。

スペイン絵画が飾ってあるコーナーで立ち尽くしてみるのがゴヤ
(1746~1828)の‘ラ・ソラ―ナ女侯爵’、頭につけたピンクのリボ
ンが強く印象に残る。だが、どこか元気がない。彼女は絵ができあがった
あと38歳で病死した。美人薄命のとおりになった。

コロー(1796~1875)に開眼したのは2008年西洋美でおこな
われた大回顧展のおかげ。魅了される風景画にたくさんお目にかかったが、
もうひとつ心を揺すぶる女性の肖像画のことも忘れられない。その筆頭が
‘青い服の婦人’、現地でみた実感がなく日本で楽しむというのもおかしなこ
とだが、運良く回顧展にめぐりあいMy好きな女性画がまたひとつ増えた。

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2019.06.12

美術館に乾杯! ルーヴル美 その二十

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   ドラクロワの‘民衆を率いる自由の女神’(1830年)

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      ドラクロワの‘ダンテの小舟’(1822年)

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   ジェリコーの‘メデュース号の筏’(1819年)

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    ジェリコーの‘エプソンの競馬’(1821年)

フランス絵画の大作がずらっと展示されているドゥノン翼の2階へ足を運ん
でもっとも感激するのはロマン派のドラクロワ(1798~1863)が
7月革命を描いた‘民衆を率いる自由の女神’。三色旗を振りかざす女神が勢い
のある姿で力強く表現され、脇で短銃を上にあげる少年と左にいる銃をもつ
黒い帽子の男(ドラクロワの自画像)が女神と一緒につき進む。革命の熱気
をこの三角形の構図に凝縮させる構成力が見事。この絵をみるたびに自由
を勝ちとるフランスの民衆のパワーは本当にスゴイなと思う。

1822年ドラクロワがサロンにはじめて出品した‘ダンテの小舟’もお気に
入りの作品。小舟に乗るダンテとウェルギリウスは地獄に落とされ奇怪な
風貌をした亡者たちに囲まれ恐怖心がつのる。ダンテだけでなく見てるわれ
われもこんなおぞましい光景に何度も遭遇しないようウエルギリウスに手を
あわせてしまう。

フランスのロマン主義絵画はドラクロアより7歳年上のジェリコー(1791
~1824)からはじまった。心を打つのは傑作‘メデュース号の筏’。‘ダン
テの小舟’はこの絵の構図や色調から影響をうけている。画面は縦4.9m、
横7.1mの大きさ。ご承知のように1816年実際におこったフランス
海軍の海難事故にもとずいて漂流を余儀なくされた筏の乗組員の情景が描か
れている。筏の上にいるのは死体を含めて20人。はじめは147人いたが、
救助されたときは15人しか生存してなかった。こういう時事ネタを絵に
するというのはジェリコーの画家としての感性。まさに腹にしみる絵とは
このこと。

競馬の光景を絵にした画家というとすぐドガやマネが思い浮かぶがジェリコ
ーの‘エプソンの競馬(1821年のダービー)’も忘れられない。前足と後
足が水平にのびるほど疾走する馬の躍動美がすばらしい。幼少のころから馬
が好きだったジェリコーはなんと落馬して32歳で亡くなった。惜しい!

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2019.06.11

美術館に乾杯! ルーヴル美 その十九

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    ダヴィッドの‘ナポレオン1世の戴冠式’(1807年)

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    ダヴィッドの‘レカミエ夫人の肖像’(1800年)

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     ダヴィッドの‘ホラティウス兄弟の誓い’(1785年)

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  グロの‘ペスト患者を見舞うナポレオン’(1804年)

ドゥノン翼の2階がルーヴルのなかでは人気のフロア。お目当てのダ・ヴィ
ンチの‘モナ・リザ’をみたあと圧倒的な大画面に息を呑むのがダヴィッド
(1748~1825)の代表作‘ナポレオン1世の戴冠式’。縦6.9m、
横9.3mの巨大なキャンバスに描かれているのは1804年、ノートル
ダム寺院で行われた実際の戴冠式の様子。といっても、ナポレオン
(1769~1821)が妻のジョセフィーヌに冠を授ける場面。これは
ナポレオンが教皇から冠をかぶせられるのを嫌ったため。そのため、権力
をみせつける構成になった。後ろにいる教皇は右手をあげ祝福のポーズを
とっている。

ダヴィッドの肖像画で200%魅了されるのが‘レカミエ夫人の肖像’。
彼女の美貌は多くの男たちを虜にし社交界の花形だった。皇帝ナポレオ
ンもいい寄ったが彼女の答えは‘ノン’。そのことで後に‘危険思想の持ち主’
として一時パリから追放される。権力者の報復は容赦ない。

プッサン同様ダヴィッドは歴史画の名手。古代ローマを題材にした‘サビニ
の女たちの略奪’と‘ホラティウス兄弟の誓い’が目を惹く。日本には毛利
元就が3人の息子にいいきかせた‘3本の矢’という話があるが、‘ホラティ
ウス’はこれと似たような感じ。3兄弟は剣をもつ父親に敵国の兄弟に打ち
勝つことを誓う。男たちはこんなに勇ましいのに、母親や姉妹たちは別れ
を嘆き悲しんでいる。いつの世でも戦争は女性たちをつらいめにあわせる。

アントワーヌ=ジャン・グロもナポレオンを多く描いた。‘ヤッファのペス
ト患者を見舞うナポレオン’、‘アイラウのナポレオン’が印象深い。いずれ
も病気にかかった人々や戦い傷つき死に至った兵士の痛ましい姿がドラク
ロワ風に重っ苦しく描かれている。


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2019.06.10

美術館に乾杯! ルーヴル美 その十八

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     ブーシェの‘ディアナの水浴’(1742年)

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     フラゴナールの‘かんぬき’(1780年)

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     シャルダンの‘食前の祈り’(1740年)

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     シャルダンの‘桃の籠’(1768年)

フランスのベルサイユ宮殿物語からすぐ思い浮かぶ人物は太陽王のルイ14
世、ルイ15世の籠姫ポンパドゥール夫人、そして首を刎ねられたマリー・
アントワネット。18世紀、宮廷文化に花開いたロコロ絵画の寵児となった
ブーシェ(1703~1806)のパトロンだったのがポンパドゥール夫人。
もちろんルーヴルにも夫人の肖像画が飾られているが、ブーシェの作品で
最も惹かれるのは‘ディアナの水浴’。

裸婦図や女性画の鑑賞には大きなエネルギーを割いてきたが、このディアナ
は眩しいくらい甘美で優しい。ブーシェの描く女性はとてもピュアな感じで
天真爛漫な感情に満ち溢れている。官能的なイメ―ジではない。ギリシャ
神話にでてくる狩人の女神ディアナは本来怖い存在。水浴の場面を王子アク
タイオンに見られたのに逆上し、王子を牡鹿に変えてしまう。でも、この絵
からはそんな激しいリアクションがおこることは想像もできない。だから、
左足を右の太ももにのせて従者をみつめるディアナをじっとみてしまう。

ブーシェの30年後に生まれたフラゴナール(1732~1806)はロン
ドンのウォレス・コレクションでみた代表作‘ブランコ’(1767年)が
一生の思い出。この画家は愛に燃える男女を芝居の一場面を演じている役者
のように描くのが得意。若い貴族がブランコを揺すぶっている美女に下から
求愛のポーズをみせたり、‘かんぬき’ではベッドの前で寄りかかる女性を左手
でぐっとかかえながら右手はぬかりなくドアにかんぬきをかけている。
これほど芝居がかっているとつい心がザワザワしてしまう。絵画にはいろん
楽しみ方がある。

9年前三菱一号館美でワールドクラスのシャルダン(1699~1779)
の回顧展が開かれた。このときルーヴルからも出品された。お気に入りは
‘食前の祈り’。立ち姿のお母さんが2人の娘をみつめるやさしいまなざしが
じつにいい。同世代のブーシェが‘ディアナの水浴’やポンパドール夫人の
肖像を描いていた頃、シャルダンはこんな庶民の生活のひとこまに筆を走
らせていた。

静物画でぞっこん参っているのはカラヴァッジョとシャルダンとセザンヌ。
シャルダンの‘桃の籠’も大変魅了される。コップの水とテーブルの端から下
に落ちそうにみえるナイフの質感描写がどこかカラヴァッジョを連想させる。

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2019.06.08

美術館に乾杯! ルーヴル美 その十六

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     レンブラントの‘バテシバの水浴’(1654年)

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     レンブラントの‘皮を剥がれた牛’(1655年)

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     フェルメールの‘レースを編む女’(1670年)

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    ハルスの‘リュートを弾く道化者’(1626年以前)

ヨーロッパやアメリカの名の知れた美術館を訪ねるとレンブラント
(1606~1669)に出会うことが多い。だから、美術本に載って
い主要作品はかなりみることができた。ボス、ブリューゲル、カラヴァッ
ジョほどコンプリートにこだわっていないが、今はあと3点くらいで済
マークがつくところまできている。

ルーブルには7点くらいあるが、強く印象に残っているのは‘バテシバの
水浴’、レンブラントが描く裸婦は光が部分的にあたった暗い空間にその肢
体を浮き上がらせるという演出によって物語性を深めている。ダヴィデ王
にみそめられたバテシバの姿はどこか運命の流れに身をまかすしかないと
いう諦めの境地。この感情表現がすばらしい。

‘皮を剥がれた牛’はレンブラントの作品のなかでは異色の一枚で、強い衝撃
波が体にむかってくる。レストランの厨房を連想させる解体された牛に目
が向いたのは何がきっかけだったのだろうか。この絵とすぐ重なる絵があ
る。それはエコール・ド・パリのスーチンが描いた‘皮を剥がれた野うさ
ぎ’や同じように棒につるされた‘牛肉と子牛の頭’、スーチンはレンブラント
の絵をみたにちがいない。

昨年12月から今年1月にかけて上野の森美で開催されたフェルメール展
には大勢のファンが押し寄せた。今回はルーブルの2点はお呼びがかから
なかった。小品の‘レースを編む女’と‘天文学者’が飾られているのは館内で
はあまり混んでないリシュリュウ翼の3階のオランダ絵画のところ。静か
にじっくりみれるのでフェルメール(1632~1675)の名画をみる
にはうってつけの鑑賞空間である。‘レース編みの女’で目が点になるのは
クッションからでている糸の色彩。粘り気をおびた白と赤が異様に輝いて
いる。

古典絵画では悲しんだり苦痛に顔をゆがめる人物はでてきても笑っている者
はまず描かれない。このスタイルに変化がおとずれるのはカラヴァッジョが
笑う少年をアモールに見立てて描いた‘勝ち誇るアモール’あたりから。これに
続いたのはオランダのフェルネールやフランス・ハルス(1580~
1666)たち。‘リュートを弾く道化者’ははじける笑顔がミラーニューロン
を刺激する。

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2019.06.07

美術館に乾杯! ルーヴル美 その十五

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    エル・グレコの‘キリストの磔刑’(1579年)

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   ベラスケスの‘王女マルガリータの肖像’(1654年)

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     リベラの‘羊飼いの礼拝’(1650年)

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     ムリリョの‘乞食の少年’(1650年)

マドリードのプラドへ行きエル・グレコやベラスケス、ゴヤらを存分にみる
とほかの国の美術館でスペイン絵画はスルーしてもいいかなという気になる。
でも、天才画家たちの作品は貪欲にみたほうがいい。とくに、ルーヴル、
メトロポリタン、ロンドンおよびワシントンのナショナル・ギャラリーのコ
レクションは数ではプラドには叶わないがとてもいい作品が目を楽しませて
くれる。

ルーヴルのエル・グレコ(1541~1614)は2点、大作の‘キリストの
磔刑と2人の寄進者’はプラドにいるような感じ。エル・グレコの58年後に
生まれたベラスケス(1599~1660)はお得意の‘王女マルガリータの
肖像’に大変魅了される。マルガリータはご存知のように代表作の‘ラス・メニ
ーナス’をはじめとして何枚も描かれた。‘ラス・メニーナス’は5歳のときの
ものだが、これは3歳のマルガリータ。この頃が一番かわいい。ウィーン
美術史美には同じく3歳の肖像画があるが海外にはなかなか貸し出さない。
日本に来たのは一度だけ。何度も出品されるのは8歳の‘青衣の王女マルガリ
ータ’のほう。今秋また登場する。

バレンシア生まれのリベラ(1591~1652)は17世紀初頭にイタリア
に渡りカラヴァッジョの影響を強くうけたあとナポリを拠点にして宗教画を
描いた。とくに惹かれるのはとびっきりの美女が扮した聖母マリアと幼子
キリストが描かれた‘羊飼いの礼拝’。プラドにある‘マグダラのマリア’同様、
その美しさに200%KOされる。

ラファエロとともに‘聖母子の画家’と呼ばれるムリリョ(1617~
1682)はベラスケスと同じセビリアの出身。プラドにあるすばらしい
‘無原罪のお宿り’や聖母子の絵に心を奪われ続けているが、セビリアの貧し
い子どもたちを描いた風俗画にもぐっとくる。その最高傑作が左から差し込
む強い光が腰を下ろした丸坊主の少年にあたる‘乞食の少年’。この絵をみて
ムリリョが心根の優しい人物であることがいっぺんにわかった。

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2019.06.06

美術館に乾杯! ルーヴル美 その十四

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   ルーベンスの‘マリー・ド・メデイシスのマルセイユ上陸’(1625年)

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    ルーベンスの‘フランドルの村祭り’(1638年)

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     ヴァン・ダイクの‘チャールズ1世’(1635年)

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     ヴァン・ダイクの‘若い貴族の肖像’(1637年)

ルーヴルの絵画を展示している部屋で最も人が集まっているのはダ・ヴィン
チの‘モナ・リザ’などがあるドゥノン翼の2階。ここの賑わいに較べると
ピラミッドの入口の向こう側にあるリシュリュウ翼の混雑度はぐんと落ちる。
そのため、マイペースでじっくり作品と対面できる。ルーベンス(1577
~1640)の24枚の連作‘マリー・ド・メディシスの生涯’はこのリシュリ
ュウ翼の3階にドドーンと展示されている。

バロックの王、ルーベンスの場合、大きな画面の絵を見ないとルーベンスの
絵を見たという気がしない。その点、この連作はどれも申し分ない大きさな
ので気分は否が応でも昂ぶる。‘マリー・ド・メディシスのマルセイユ上陸’は
有名な一枚。アンリ4世に嫁ぐためフィレンツェから到着した場面が描かれ
ている。視線が向かうのは青いマントの人物(擬人化されたフランス)に
迎えられるマリーよりも祝典に集まり躍動する海神やニンフたちのほう。
とびちる波の間にいる豊満な肉体の裸婦と逞しい筋肉をもつ男たちの競演は
まさにルーベンスの人体描写。

ルーベンスが晩年力をいれて描いたのが農民画。これは敬愛していた故郷の
先輩ブリューゲルの影響。多くの農民が登場する‘フランドルの村祭り’はお酒
も入り男も女もだいぶはめをはずし祭りを楽しんでいる。画題がギリシャ
神話やキリストの物語から素朴な農村の光景に移っても踊りなど人の動きを
描写するのはお手のもの。その描写にはいつものように激しさと躍動感がみ
なぎっている。

ヴァン・ダイク(1599~1641)のみどころはなんといっても‘チャー
ルズ1世’。狩りの途中一休みした国王の決まったポーズが印象的。これほど
優雅に描いてくれると王も気分が悪かろうはずがない。そして、若い貴族
だってヴァン・ダイクの前では安心して立ち続けられる。完璧な肖像画に仕
上げるヴァン・ダイクには依頼が殺到するので大忙し。そして、女性の期待
に応えるためには脚色も必要で実際の容姿をだいぶ盛って描くことはもう当
たり前になった。

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