2018.11.01

美術館に乾杯! ケンウッド・ハウス

Img     レンブラントの‘自画像’(1663~65年)

Img_0001     フェルメールの‘ギターを弾く女’(1673~74年)

Img_0002  ハルスの‘ピーテル・ファン・デン・ブロッケの肖像’(1633年)

Img_0003     フラゴナールの‘サクランボを摘む人々のいる風景’(18世紀)

2010年、ロンドンの中心部から少し離れ北の方向にあるハムステッド・ヒースへ地下鉄ノーザンラインに乗って出かけた。めざすはこの美しい公園の一角に建つ白い館、ケンウッド・ハウス。最寄りのハムステッド駅からタクシーで10分くらいで到着する。ここにお目当ての絵が2点ある。

若い頃ロンドンに3ヶ月語学研修で滞在した。住んでいたのはノーザンラインの終点エッジウェア―駅の近く、そのためハムステッド駅は英語学校から帰ってくるときよく途中下車した。久しぶりのノーザンラインだったのですごく懐かしかった。

ケンウッド・ハウスは典型的な邸宅美術館。こういう館で絵画をみるのは特別の体験。美術品鑑賞の趣味がなければ一生縁がない場所に来ている、と思うとちょっと心が豊かになる。さて、名画との対面、みたくてしょうがなかったレンブラント(1606~1669)の‘自画像’とフェルメール(1632~1675)の‘ギターを弾く女’はもとダイニングルームだったところに飾られていた。

レンブランが描いた自画像ではここにあるのが一番いいかもしれない。不機嫌そうな表情は本人そのままという感じで近寄り難いほどの存在感がある。これを見れたのは生涯の思い出。そのあと、この自画像の話を絵画好きの人と会うたびにした。

カラヴァッジョとちがってフェルメールは200%のめりこんでいるわけではなく‘真珠の耳飾りの少女’や今上野にやって来ている‘真珠の首飾り’、‘水差しを持つ女’など‘好きなタイプのフェルメール’だけに魅せられ続けている。‘ギターを弾く女’は好きなタイプの一枚。卵形の顔をした明るい女性がつまびくギターの音色を気持ちよく聴いている。

笑顔の人物を描かせたら右にでる者がいないハルス(1581~1665)、自信にあふれ生き生きとした姿が印象的な‘ピーテル・ファン・デン・ブロッケの肖像’も心に残る絵。この人物はオランダの植民地で大儲けした東インド会社の幹部。

このほかで目にとまったのはヴァン・ダイクと4点あったフラゴナール(1732~1806)の‘サクランボを摘む人々のいる風景’。作品の数は多くはないが大きな満足感が得られる美術館だった。

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2018.10.31

美術館に乾杯! ヴィクトリア&アルバート美 その三

Img_0004     ロセッティの‘白日夢’(1880年)

Img        バーン=ジョーンズの‘愛の車’(未完 1870年)

Img_0001  モリス&バーン=ジョーンズの‘ステンドグラス’(1880~90年)

Img_0002     ブレイクの‘反抗する天使に怒るサタン’(1808年)

ここは世界に冠たる装飾美術の殿堂なので、刀剣や宝飾品、陶器、ロダンの彫刻などもみたが記憶に深く刻まれているのはやはり絵画。コンスタブルのいい風景画とともに心を揺るがすのがラファエロの前派の作品。

そのなかで息を呑んでみたのがロセッティ(1828~1882)の‘白日夢’、モデルはあの‘プロセルピナ’のジェイン。これまでみたロセッテイのなかでこの2点がベストワン。だから、もうロセッティは済みマークをつけてもいいのだが、あと1点どうしても見たいのがある。それはリヴァプールのウォーカー・アート・ギャラリーが所蔵する‘ダンテの夢’、来年の三菱一号館の展覧会にやって来る?と勝手に妄想したくなるがダメだろうな。

バーン=ジョーンズの‘愛の車’は運がなく姿を現してくれなかった。未完成の絵だが、裸体の男性が乗る大きな車輪をつけた移動台を大勢の男女が引っぱっている。次はなんとしてもリカバリーしたい。また、ここにはモリス(1834~1896)と一緒に制作したステンドグラスもある。

テイトを訪問するとターナー同様数多くみることができるブレイク(1757~1827)、V&Aの自慢は‘反抗する天使に怒るサタン’。ブレイクの回顧展に遭遇することを夢見ているが今のところその気配はまったくない。そのため、テイト製作のブレイク本を手にしてその大胆な身振り手振りで感情を強く表出する人物を凝視している。

その大半はテイトのコレクションで占められているが、アメリカのボストン美にも2点鑑賞欲をそそるのがある。開拓の余地がまだまだある画家なので、作品をもっている美術館はひとつでも多く訪問したい。

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2018.10.30

美術館に乾杯! ヴィクトリア&アルバート美 その二

Img_0001     ボッティチェリの‘ズメラルダ・ブランデイーニの肖像’(15世紀)

Img    ドナテッロの‘キリストの昇天と鍵の授与’(15世紀)

Img_0002   コンスタブルの‘主教の庭からみたソールズベリー大聖堂’(1823年)

Img_0003  コンスタブルの‘舟造り フラットフォードの製粉所付近’(1815年)

ヴィクトリア&アルバート美にはラファエロのほかにルネサンス美術の有名な作品が二つある。ボッテイチェリ(1445~1510)の初期の肖像画‘ズメラルダ・ブランディ―ニの肖像’とドナテッロ(1386~1466)の浮彫り彫刻‘キリスト昇天と鍵の授与’。

ともに作品の前にたどりつくのに時間がかかった。はじめての美術館の場合、館内のレイアウトがよくつかめないのでいくつもの部屋を行ったり来たり。ボッテイチェリの描いた女性はスッキリ顔で15世紀ころに生きたイタリア人という感じがせず、現在の服を着ていたらフィレンツェの街を歩いている女性と変わらない。だから、ボッティチェリの女性にはいつも親しみを覚える。

ドナテッロの彫刻をイタリア以外の国でお目にかかれるのは幸運なこと。ここには3点あり、精神性の高さを感じさせる‘キリストの昇天と鍵の授与’を食い入るようにしてみていた。フィレンツェにあるドナテッロをまだ全部みてないのでまたイタリアに縁があったら追っかけるつもり。

テイト・ブリテンにはターナーがこれでもかというほど展示してあるが、V&Aではコンスタブル(1776~1851)が存分に楽しめる。もっとも惹かれるのが‘主教の庭からみたソールズベリー大聖堂’。主教の依頼で描かれたこの風景画は6点あるが、これは最初に描かれたもの。陽光に白く輝く大聖堂の天にのびる塔が目に焼きついている。手前に並ぶ木と木の間に聖堂を入れる構図はここに立てば誰でも考えそうだが、明るい空や強い生命力を思わせる木々の細かい描写は簡単には真似できない。

‘舟造り、フラットフォードの製粉所付近’は2年後に描かれたテイトにある‘フラットフォードの製粉所’とペアになる作品。コンスタブルは人がいる川の光景を描くのがとても上手く、製作中の舟のまわりをよくみると3人の男性が忙しく働いている。一連の川の絵に200%魅了されている。

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2018.10.28

美術館に乾杯! ヴィクトリア&アルバート美 その一

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Img     ラファエロの‘奇跡の漁り’(1515~16年)


Img_0001     ‘タペストリー・奇跡の漁り’(1516~21年)

Img_0002     ラファエロの‘聖ペテロへの鍵の授与’(1515~16年)

Img_0003     ラファエロの‘アナニアスの死’(1515~16年)

2010年に訪問したヴィクトリア&アルバート美は世界最大級の装飾美術館。世界中から集めてきた工芸、デザイン、ファッションなどの装飾美術がどさっと展示されている。とにかくいろんなものがあるのでじっくり見たら何日もかかりそう。

ここへやって来た最大の目的は有名なラファエロ・カルトンをみるため。カルトンはタペストリーの下絵、ラファエロ(1483~1520)は1515年レオ十世からシスティーナ礼拝堂の下部壁画に飾られるタペストリーの絵を依頼された。1517年に10枚の下絵は完成しブリュッセルにあるタペストリーの工房に送られた。

そのタペストリーのひとつが3番目の画像の‘奇跡の漁り’、2番目がその下絵。タペストリーとは左右が逆になっている。この原寸大の下絵は7枚が現存しているが、すべてV&Aにある。いずれも縦3m、横3~5mの大きなもの。下絵といってもラファエロの絵画だから見ごたえ十分、しかもビッグサイズ、ヴァチカン美にある‘ラファエロの間’にいるような気分になる。

描かれているのはペテロとパウロの物語だが、その構成や描写には激しい動きがみられ新たな絵画バロック様式に一歩も二歩も踏み出した感じ。とくに‘アナニアスの死’のドラマチックで誇張的な表現はバロックそのもの。こうした激しい感情の動きがリアルに描写された人物に目を奪われると宗教画の荘厳さはどこかへとんでしまう。

ラファエロ・カルトンにお目にかかれたのは生涯の思い出。ミューズに感謝!

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2018.10.27

美術館に乾杯! ロイヤル・アカデミー

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Img_0003    ピカデリーサーカスのすぐ近くにあるロイヤル・アカデミー

Img_0001     コンスタブルの‘水門を通過する舟’(1826年)

Img_0002     コンスタブルの‘跳ねる馬’(1825年)

Img     ミケランジェロの‘聖母子と幼児聖ヨハネ’(1503~05年)

若い頃ロンドンに2ヶ月くらい住んでいたことがあり、ピカデリーサーカスにはよく出かけた。そこからハイドパークの方へ向かって5分も歩くとロイヤル・アカデミーに着く。ここではパリのグラン・パレと同じように大きな展覧会が定期的に開催される。

はじめてここへ入ったのは1990年、イギリスに出張することになり運よくモネの連作作品を80点も集めた大回顧展に遭遇した。モネの人気はどこでも高く3ヶ月の会期中に50万人が押し寄せるという盛況ぶり。そのため出かけた日曜日は入館するのに2時間もかかった。苦労してみたモネ展が海外で体験した最初の展覧会となった。

2度目の訪問は2010年、このとき9つの美術館を回ったが、ロイヤル・アカデミーでは企画展はなく必見リストに載せていた2つの作品を見ようと意気込んで出かけた。ところが、コンスタブル(1776~1837)の代表作のひとつ‘跳ねる馬’はどういうわけか姿をみせてくれなかった。絵を修復中とのこと、ガックリ!

もう一つの傑作‘水門を通過する舟’は2003年六本木の森美術館が開館したとき、その記念展に出品された。コンスタブルは1998年にあったテイトギャラリー展(東京都美)で開眼したが、この絵をみて思い入れ度Aランクの画家が決定的となった。

‘跳ねる馬’との対面は叶わなかったが、ミケランジェロのレリーフ‘聖母子と幼児聖ヨハネ(トンド・タッデイ)’はしっかり目のなかにおさめた。この彫刻をみたことでミケランジェロの彫刻のコンプリートが達成できた!最後のピースにたどり着くのに長い月日が流れたので感慨深い。

さて、‘跳ねる馬’のリカバリーはいつになるか、イギリス旅行の優先度が上がると実現するのだが、予定は他の場所で数年先までうまっているのでまだ時間がかかりそう。

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2018.10.26

美術館に乾杯! テイト・ブリテン その十四

Img    ペップワースの‘ぺラゴス’(1946年)

Img_0001     ニコルソンの‘1935(白いレリーフ)’(1935年)

Img_0003     ナッシュの‘メガリスの等価物’(1935年)

Img_0002     クラッグの‘北からみたイギリス’(1981年)

名の知れた女性の現代ア―ティストですぐ思いつくのは絵画ならアメリカのオキーフとフランケンサーラー、メキシコのフリーダ・カーロ。そして、彫刻の世界ではイギリスのバーバラ・ヘップワース(1903~1975)とフランスのニキ・ド・サンファル。

テイト・ブリテンにあるヘップワースの‘ぺラゴス’は丸い造形がとても印象的な彫刻。これは作家のアトリエからながめた大西洋から霊感をうけてつくられた。穴の開いた部分の海をつつみこむように伸びた腕の先から反対側にむかって弦が張られている。この弦がなんともユニークで癒される。

モンドリアンから強い影響をうけたベン・ニコルソン(1894~1982)は幾何学的抽象の創作に大きな足跡を残した。コートールド美にはモンドリアン風の彩色画もあるが、ニコルソンのイメージはホワイトレリーフでできあがっている。アッシリアの獅子とかミケランジェロの聖母子などレリーフには魅力を感じているので、この浅くへこんだ円に強く惹かれる。

ポール・ナッシュ(1889~1946)の‘メガリスの等価物’は現代的な風景画だが、中央の円柱や壁はストーンサークルがモチーフになっている。ナッシュはこの巨石に魅惑されたらしい。幾何学的なフォルムで構成された画面だが、冷たい感じがなく太古の人類の営みに想像が膨らむ。ホックニーもみてて心が休まる抽象的な風景画を描いており、ターナー、コンスタブルという風景画の巨匠を輩出したイギリス絵画の力を感じさせる。

トニー・クラッグ(1949~)の‘北からみたイギリス’は作品に最接近してみないとその突飛なアイデアが楽しめない。左にいるクラッグも大きなイギリスの地図もじつは街で拾った色つきプラスティックのゴミで描かれている。イギリスの国土を見慣れた角度からのものにせず横に寝かせる発想は普通の人からはでてこない。

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2018.10.25

美術館に乾杯! テイト・ブリテン その十三

Img_0003  ホックニーの‘シャワーを浴びる男、ビバリー・ヒルズ’(1964年)

Img     ハミルトンの‘クライスラー社賛’(1957年)

Img_0001     ピーター・ブレイクの‘バッジをつけた自画像’(1961年)

Img_0004     ギルバート&ジョージの‘イングランド’(1980年)

ホックニー(1937~)に興味をいだくきっかけになった絵はボストン美にある‘ギャロービー・ヒル’(1998年)、2008年にアメリカ美術館巡りをした際、久しぶりにでかけたボストン美の展示案内のパンフレットにこの絵が使われていた。

明るい色彩にあふれる現代的な風景画だったので大変惹かれたが、現代アートの展示室が改築工事のため対面が叶わなかった。そして、3年前に再訪したときはサージェントやホーマーの作品に時間をとられ再度みる機会を逃した。ようやくお目にかかれたのは昨年あったボストン美展。リカバリーに9年もかかってしまった。

イギリスにもポップ・ア―ティストは何人も現われたが、最も関心が高いのはホックニー。親近感をおぼえるのは日本の富士山などを描いていることも大きい。‘シャワーを浴びる男、ビバリー・ヒルズ’はイギリス人がまったく消えてしまうほどのアメリカンポップ調全開といった感じ。

ハミルトン(1922~2011)の‘クライスラー社賛’も黄金のアメリカ文化にどっぷりはまっている。当時はクライスラーだってアメ車の象徴の一端を担っていた。懐かしい大型車をみると、アメリカの生活スタイル、エンターテイメントが日本にもどんどん入って来たことが思い出される。

ベースボールや映画、音楽、ジーンズ、コーラ、マグドナルドのハンバーガー、、ピーター・ブレイク(1932~)の‘バッジをつけた自画像’にはプレスリーが載った雑誌やバッジをたくさんつけたデニムのジャケットが描かれており、イギリスでもアメリカ文化が若者たちに大きな影響を与えたことを物語っている。

ポップ・アートをふたたび蘇らせた感のあるのがギルバート&ジョージ(1943~、1942~)の大きな写真作品‘イングランド’、画面の下では伝統的なイギリススーツでビシッときめた二人がバラをはさんでどや顔で立っている。そして、上では背景を暗くしてユーモアと怒りを体で表現している。

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2018.10.24

美術館に乾杯! テイト・ブリテン その十二

Img_0001    ベーコンの‘座った人物’(1961年)

Img_0002     フロイドの‘女と白い犬’(1950~51年)

Img     バラの‘スナック・バー’(1930年)

Img_0004     ギルマンの‘朝食をとるモンタ―婦人’(1917年)

アート市場に作品が出ると高値がつくベーコン(1909~1992)は相性の悪い画家。その理由は描かれる人物が幽霊みたいで気持ちが悪いから。テートモダンにも三連画があるのだが、首の長い不気味な生き物なのでとりあげなかった。

ベーコンでみておられるのはゴッホを描いたものとベラスケスの‘法王イノセント十世’を引用したシリーズだけ。‘座った人物’は法王と同じく白い線で枠をつくってそのなかに男性を配置している。この枠をつくるというアイデアはなかなか思いつかない。

1998年東京都美でテイトギャラリー展があったとき、ルシアン・フロイド(1922~2011)の‘女と白い犬’はロセッティの‘プロセルピナ’と同じくらい心がザワザワした。女性の姿にすごく生感覚があり、その強い目力が強く印象に残っている。この絵によって画家があのオーストリアの精神病理学者フロイトの孫であることを知った。

バラの‘スナック・バー’は一度見たら忘れられない絵。似たような絵で思いつくのドイツのグロスとかキルヒナー、そしてメキシコの画家たちが描く人物像の匂いもちょっとする。アクの強い独特の描写は場末のスナックバーの風景をを切り取るにうってつけ。こういう絵をみるとアートはキャラが立たないとうけないなとつくづく思い。

ゴッホの影響をうけたギルマン(1876~1919)の‘朝食をとるモンタ―婦人’は厚塗りの画面にインパクトがあり白のハイライトを多用した婦人の顔とテーブルの白いティーポットが目に焼きついている。

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2018.10.23

美術館に乾杯! テイト・ブリテン その十一

Img_0003  ホイッスラーの‘シシリー・アレキサンダー嬢’(1872~74年)

Img   サージェントの‘マクベス夫人に扮するエレン・テリー’(1889年)

Img_0001    ティソの‘船上の舞踏会’(1874年)

Img_0002          ムーアの‘花’(1881年)

大人の女性を描いた肖像画には心を奪われる作品は数多くあってベスト10を選べといわれるといろいろ悩む。これに対して子どもがモデルだとベスト5くらいはすぐでてくる。ホイッスラー(1834~1903)が描いた‘シシリー・アレキサンダー嬢’はランクインしている一枚。

はじめてみたのは日本であったテイトギャラリー展(1998年 東京都美)、ホイッスラーはテムズ川の絵と肖像画でその名を知られた画家だが、肖像画にはぐっとくるものが多い。そのなかで最も惹かれているのがこの8歳の女の子。

ホイッスラーはこの子を描くのに70回もポーズをとらせたという。ふつうだったらもう嫌だといってダダをこねてもおかしくないが、シシリーちゃんは銀行家の父親のしつけがよかったのかなんとか頑張った。でも、限界にきていたことはそのふくれ面をみるとよくわかる。

サージェント(1856~1925)の‘マクベス夫人に扮するエレン・テリー’は等身大の肖像画なので目の前に本人がいるような錯覚を覚える。もう心を200%吸いこまれる見事な肖像画。女の役者を描いた絵ではこれとミュシャのサラ・ベルナールの上演ポスターが双璧。サージェントの回顧展に遭遇することを夢見ているがそのときは再会できると勝手に妄想している。

ティソ(1836~1902)は本籍はフランスで現住所はイギリス。これまでお目にかかったのは片手にすぎないが、作品はどれも上流階級の女性たちが社交場に集う光景が華やかに描かれている。‘船上の舞踏会’はメディアのカメラクルーが撮った映像が流れている感じ。真ん中のスペースがあき通り道のようになっていてそのまわりを囲むように正装をした男女たちが陣取っている。

ホイッスラーとうまがあったムーア(1841~1893)は唯美主義と古典主義を融合させた画家。描く女性のポーズはギリシャ彫刻を彷彿とさせる。日本の展覧会では見る機会がほとんどないので、イギリスへ行くとレイトンとともに新鮮な刺激が味わえる。

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2018.10.21

美術館に乾杯! テイト・ブリテン その十

Img_0001     モリスの‘麗しのイズー’(1858年)

Img_0002     ポインターの‘アンドロメダ’(1869年)

Img_0004     ドレイパーの‘イカロス哀悼’(1898年)

Img_0005     アルマ=タデマの‘お気に入りの習慣’(1909年)

ラファエロ前派の第二世代の中心人物はイギリスにおける装飾芸術の礎を築いたウィリアム・モリス(1834~1896)とバーン=ジョーンズ(1833~1898)。モリスが唯一描いた油絵が‘麗しのイズ―’。モデルは妻のジェイン。ジェインのこの肖像画が描かれて16年後、ロセッティは愛人ジェインを‘プロセルピナ’に変身させた。

‘麗しのイズ―’のみどころは画面に現れたモリスの卓越したデザインセンス。イズ―の衣装、カーテン、置台の装飾性の高い花柄模様などが画面を華やかに彩っている。

ギリシャ神話を題材にしたポインター(1836~1919)の‘アンドロメダ’やドレイパー(1863~1920)の‘イカロス哀悼’は神話好きにはたまらない絵かもしれない。海獣への生贄として岩につながれたエチオピア王の娘、アンドロメダ、このお話は救出にやってくる英雄ペルセウスや怖い獣と一緒に描かれることが多いが、ポインターは女性のヌードをみせたくてアンドロメダだけにしている。ヌードへの人気が高かったヴィクトリア朝の気分を反映している。

ドレイパーにはもう一点‘ユリシーズとセイレーン’(1909年 ハル市美)という刺激的な絵があるが、横浜美で開催された‘ヌード展’で久しぶりにみた。日本には2回目の登場。‘イカロス哀悼’のほうはイカロスの異様に大きな翼に度肝をぬかれる。‘おいおい、これほど大きな翼があるのに落っこちてしまうとは、よっぽどへまをやらかしたのだね’と、ツッコミをいれたくなる。

アルマ=タデマ(1836~1912)はオランダ出身で後にイギリスに帰化した画家。得意技はリアルな細密描写、とくに大理石の質感描写は神技的に上手い。古代ローマ都市の風俗画を熱心に描いた‘お気に入りの習慣’でもポンペイの浴場に使われている大理石に目は吸いこまれる。

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