2018.09.18

美術館に乾杯! ポンピドー・センター その二十七

Img     ラウシェンバーグの‘オラクル(神託)’(1962~65年)

Img_0003 カバコフの‘自分のアパートから空へ飛び去った男’(1981~88年)

Img_0002     ぺノーネの‘息吹6’(1978年)

Img_0001     キーファーの‘至高の存在’(1983年)

ピカソの作品のひとつに画面に新聞紙などを張り付けるコラージュがあるが、ネオ・ダダのラウシェンバーグ(1925~2008)はさらに進化させ絵画と彫刻を融合した‘コンバイン’を生み出した。くっつけるものは身の回りのあるものや既製品、廃品。仕上がりが未完にみえてもそれにはこだわらず自由な創作を大切にする。

‘オラクル(神託)’でオブジェは煙を出すものだったり、自動車のドア、踏み台、、ひとつ々元の形から変化しラジオ受信機が内蔵され群となってつながっている。さて、どんな神託がくだるのか、その意味を読み取るのは一筋縄ではいきそうにない。

インスタレーションは物語仕立てだとおもしろい。ソビエトのアーティスト、イリヤ・カバコフ(1933~)の作品にはとてもわかりやすくポエチックなタイトルがついている。‘自分のアパートから空へ飛び去った男’。天井の大きな穴は男が発射機の助けを借りて勢いよく飛び出した様子をうかがわせるし、床に散らばる天井の板の破片がその瞬間のエネルギーの大きさを物語っている。

イタリアの現代彫刻家ペノーネ(1947~)の‘息吹6’はテラコッタの壺で作家の体が残した痕跡が3つの形でつながっている。ぱっとみると火山の噴火によって吹きでてきた溶岩のかたまりのようにみえる。イタリアというと周期的に大爆発するシチリアのエトナ火山がすぐ思い浮かぶ。

ドイツのキーファー(1945~)の大画面の作品をアメリカの大きな美術館は熱心にコレクションしている。シカゴ美、MoMA、グッゲンハイムでお目にかかった。ポンピドーにある‘至高の存在’も縦2.8m、横3.7mの大作。まるで廃墟になった建物のなかに立っているよう。主題や意味がつまったキーファーの作品は心の奥底にずしっとくる。そして、藁などが入った大きな画面に描かれた原始的で荒々しい風景にじわーと心をかきむしられる。

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2018.09.17

美術館に乾杯! ポンピドー・センター その二十六

Img_0003     ステラの‘マス・オ・メノス’(1964年)

Img_0001     ジャッドの‘積み重ね’(1972年)

Img     ウォーホルの‘10人のリズ’(1963年)

Img_0002     オルデンスバーグの‘ゴースト・ドラム・セット’(1972年)

戦後のアメリカではポロックらを中心に抽象表現主義のスーパーハリケーンが吹き荒れたたが、激しい感情表現は性分に合わないという作家が現れる。ネオ・ダダのジョーンズが登場し、このジョーンズに影響を受けたステラ(1936~)はモチーフをぐっと単純化し最小限の表現によって作品をつくるミニマル・アートを生み出した。

ステラに目が慣れているのは千葉の川村記念美がもっているコレクションのおかげ。お好みは赤や緑などの明るい色彩に心を奪われる‘分度器’シリーズ。ポンピドーにあるのは‘ランニングV’シリーズ、ストライプが角々と折れ曲がるので日本の屏風をみているような気になる。

ジャッド(1928~1994)の‘積み重ね’もミニマル・アートのひとつ、壁にくっつけられた直方体のブロックが等間隔で配置されている。こうした作品でヴァリエーションをつくるならこちらにつきでている面の色の変化しかない。赤になったり緑になったり。これは建築物の軽いアクセントとしてつくられた装飾と同じ。ここには感情も物語もない。あるのは小さなブロックの連続体のみ。

日常的な現実をアートの世界にどどーんと持ち込んだのがポップ・アートの旗手、ウオーホル(1928~1987)。マリリン・モンローの写真を自在に色をつけて一枚々ちがう表情に変えてみせる。どういうわけか違和感がなく、人々は新しいモンローがまたスクリーンに戻って来たのではないかと興奮させられる。ウォーホルはエライやっちゃ!人気がでるはず。エリザベス・テーラーだって10変化。魔性の女にみえてくる。

オルデンスバーグ(1929~)は日用品を色や材質を変えて並べ見慣れたものとは異なる風景をつくりだす。目の前にあるのは白一色の‘ゴースト・ドラム・セット’、まるでドラムセットが雪を被ったかのよう。ポップ・アートは気軽にモノを変容しその風景を素直に楽しむ。難解な抽象アートとは無縁な世界。

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2018.09.16

美術館に乾杯! ポンピドー・センター その二十五

Img_0003     デ・クーニングの‘女’(1952年)

Img_0001     ゴーキーの‘風景ーテーブル’(1945年)

Img     フランシスの‘魅力的な青の中で’(1955~57年)

Img_0002  トゥオンブリーの‘パトロクロスの死を悼むアキレウス’(1962年)

デ・クーニング(1904~1997)の‘女’シリーズをはじめてみたのは1993年上野の森美で開催されたMoMA名品展。激しい線で表現された女はまるでギャク漫画にでてくる人物のよう。抽象画といっても顔はすぐイメージできるのでとっつきは悪くない。大きな目と突き出た歯は一度みたら忘れようがないほど強烈なインパクトをもっている。

アルメニアに生まれ迫害を逃れてアメリカに移ったゴーキー((1904~1948)はアメリカの美術館をまわるとよく遭遇する。その画風は抽象表現主義とシュルレアリスムが合体したような感じ。‘風景ーテーブル’は色彩に目をそらさせないほどの強さがみられるが画面のところどころにミロを思わせるコミカルなモチーフがでてくるので緊張とリラックス感が半々といったところ。

サム・フランシス(1923~1994)の回顧展にめぐりあうことを夢見ているがなかなか実現しない。出光美や東京都現美に大きな作品があるからこれに海外の美術館が所蔵するものを加える、国立新美あたりは展示室が広いのでうってつけの美術館なのだが、、このときポンピドーの大作‘魅力的な青の中で’はもちろん含まれる。ポロックのドリッピングやスティルの抽象表現の影響をうけただけでなく、日本に滞在し余白や墨のにじみなども吸収したフランシス。まとまった形でみれるようミューズにお願いし続けている。

サイ・トゥオンブリー(1928~2011)の作品にはプッサンの絵のような名前ががついている。題材はホメロスのイリアスからとった‘パトロクロスの死を悼むアキレウス’。この作家の絵にでてくる落書きのような頼りない線は島の岩場にゆらゆら漂う海藻のイメージ、それにたいそうなタイトルをつけるのがトゥオンブリー流。死がもたらす果てしない悲しみがじわーと伝わってくる。

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2018.09.15

美術館に乾杯! ポンピドー・センター その二十四

Img_0003     ポロックの‘絵画(黒、白、黄、赤とシルバー)’(1948年)

Img_0001    ロスコの‘No.14(暗色の上のブラウン)’(1963年)

Img     ニューマンの‘エリコ’(1968~69年)

Img_0002     ケリーの‘イエロー・レッド・カーブ’(1972年)

2008年からはじまったアメリカの美術館めぐり、主要な美術館を訪ねる回数が増えるとともにアメリカ人作家が生みだした現代アートにもだんだん目が慣れてきた。彼らの作品の特徴のひとつが画面のサイズがとても大きいこと。

その代表が抽象表現主義のポロック(1912~1950)。アクションペインテイングのイメージは落ち着いてみれないほど荒々しくカオス的。ところが、不思議なもので何度もこの大画面の前に立つとドロッピングによって生まれた細い線の重なりが局地的にきりっとした色彩美を生み出していることに気づく。ポンピドーにある‘絵画(黒、白、黄、赤とシルバー’もそれを感じさせてくれる。

ポロック同様、人気の高いロスコ(1903~1970)は輪郭がぼんやりした四角形の色面を地の色に重ねるのが特徴。それによって浮き上がってくる色はいろいろあり、ここでは重たい色にブラウンの組み合わせになっている。画家の気分によってこの色面は変わるが、ロスコ芸術に嵌るのはこういう暗色系かもしれない。

ロスコの色面は画面の上下に並んでいるのに対し、ニューマン(1905~1970)の画面はいろんな色で描かれた垂直の縞模様(ジップ)で左右に分けられる。画面の形は横か縦にのびる長方形だが、ポンピドーにあるのは珍しく三角形。その頂点から下にまっすぐ引かれた赤の線の強いこと。この赤により画面に崇高さが生まれている。

アメリカの美術館に足を運んだことでそれまで知らなかった才能豊かな画家たちに遭遇した。ケリー(1923~2005)もそのひとり。‘イエロー・レッド・カーブ’は明るい黄色と赤が目に沁みる作品。逆三角形を黄色と赤にわける境界線がわずかに弧を描いているため立体的な形になり動きがでている。これが楽しい。

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2018.09.14

美術館に乾杯! ポンピドー・センター その二十三

Img     ぺヴスネルの‘世界’(1947年)

Img_0003     フレイヴィンの‘タトリンのための記念碑’(1974年)

Img_0001     スタルクの‘タブレットW.W’(1990年)

Img_0002     ヴェランの‘サイ’(1999~2000年)

20世紀に入ってアートの表現世界はどんどん広がっていき絵画、彫刻、建築それぞれの垣根がとっぱらわれいろんな融合の形が生まれてきた。そして、テクノロジーとアートの結びつきも強くなった。彫刻家ぺヴスネル(1884~1962)の‘世界’では金属の薄片が素材に使われており、彫刻というより建築的な造形性を感じさせる作品。

フレイヴィン(1933~1996)はライト・アート(光の芸術)に独自の表現をみいだした作家。‘タトリンのための記念碑’は明るい蛍光管を何本も縦に置いただけだが、日常生活に光は満ち溢れているからアートを別に意識しなくても気軽に作品を受けとめられる。

タトリンはテクノロジーとアートとのコラボを唱えロシア構成主義を生み出した。この活動はレーニン率いる新生ロシアの理想社会にも適っており、建築、デザインで国づくりに貢献した。蛍光管がつくる形はロシアではよくみられる建築スタイル。

2010年にポンピドーへ行ったとき、新規の作品で大変魅了されたのがデザインの世界的スター、フリップ・スタルク(1949~)のオブジェ‘タブレットW.W’とヴェラン(1963~)の赤い‘サイ’、二人ともフランス人。‘タブレット’は色あいが新進気鋭の陶工がつくる青磁の作品を思わせる。これと遭遇したのは大収穫。

ヴェランの赤いサイにも200%KOされた。重量感のあるサイが目の覚める赤で彩られて目の前にいる。今にものっしのっしと動きだしそう。こんな楽しいつくりものがあると子どもたちは喜ぶ。次はどんな動物がどんな色で現れるのだろうか。期待したい。

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2018.09.13

美術館に乾杯! ポンピドー・センター その二十二

Img_0001    クラインの‘青い時代の人体測定(ANT82)’(1960年)

Img レイスの‘メイド・イン・ジャパンーグランド・オダリスク’(1964年)

Img_0002     ニキ・ド・サンファルの‘花嫁’(1963年)

Img_0003     メサジュの‘槍’(1992~93年)

ヌーボー・レアリスムの象徴的な存在だったクライン(1928~1962)は柔道も強く講道館から6段をもらっている。34歳で亡くなったのは残念というほかないが、残した作品は今も強い磁力を放っている。

‘青い時代の人体測定(ANT82)’は公開パフォーマンスによって生まれた。裸の女性の身体に青の絵の具を塗りカンヴァスに押しつけてその跡を残す。中国の魚拓と同じことをやっている。その姿はぱっとみると横に並んだ赤ちゃんを連想するが、じつは大人の女性。これをみると金粉を体に塗った芸人を思い出す。

若いころアルマンの助手だったレイス(1936~)は代表作‘メイド・イン・ジャパンーグランドオ・ダリスク’でその名が知られた。アメリカでウォーホルがポップ・アートのトップランナーなら、フランスにはレイスがいるという感じ。ウォーホルが女優マリリン・モンローをモデルにしたのに対し、レイスはアングルの名画‘グランド・オダリスク’を引用する。

この裸婦の色使いはマティスを超えている。赤の背景に緑の肌。この色彩対比がピタッと嵌った。さらにこの絵にはおもしろいものが描き込まれている。オダリスクの頭上にはなんと蠅がいる。メトロポリタンにクリストゥスが描いた修道士の肖像があるが、ここにも蠅が枠の上にいる。レイスはこの絵を意識したのかもしれない。レイスに乾杯!

3年前、国立新美で回顧展が行われたニキ・ド・サンファル(1930~2002)。彼女は肝っ玉のすわった前衛ア―ティストで‘射撃絵画’という物騒な表現で一躍注目された。ティンゲリーやクラインからも影響をうけたが、‘花嫁’や‘出産’のような女性の根源的な存在を強烈に表現するオブジェをつくり続けた。

サンファルの再来ではないかと思わせるのがフランスのメサジュ(1943~)。日本にはじめて登場したのは2008年の森美でも回顧展。なぜこの展覧会に足を運んだのか忘れたが、予想外にその作品に嵌りめぐりあわせの良さをミューズに感謝したほど。ポンピドーの図録にも載っている‘槍’は勿論出品された。

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2018.09.12

美術館に乾杯! ポンピドー・センター その二十一

Img_0001     デュシャンの‘泉’(1917年)

Img_0004     ボイスの‘グランドピアノへの同質の浸透’(1966年)

Img     アルマンの‘ホーム、スイート・ホーム’(1960年)     

Img_0002     セザールの‘圧縮・リカール’(1962年)

ピカソがキュビスムの誕生をつげる‘アヴィニョンの娘たち’を描いたのは1907年、その10年後、今度はニューヨーク・ダダイズムのデュシャン(1887~1968)が現代美術のシンボルとなった‘泉’を発表する。アートは新しい地平をもとめて加速度的に進化していく。

白い陶器の男性用便器に偽名のサインをして、‘これはどこにでもあるもの(レディメイド)だが、私が選んでアートにした’といきなり言われても、アートの専門家だって‘おいおい、それってあり?’と面食らうのだから普通の美術ファンはとても話の輪のなかに入れない。笑えるのは便器を‘泉’とする表現力。やはりデュシャンのもつパロデイ的な感覚は半端ではない。

ドイツのボイス(1921~1986)は‘グランド・ピアノへの同質の浸透’をはじんめてみたとき、頭をよぎったのはアフリカ象。ピアノを覆うフェルトの色が象に似ていてしかも3つの足とペダルがあるので直感的に象のイメージと重なった。そのため、この作品には親しみを覚える。不思議なのは赤十字のマーク。ピアノと赤十字がどうして結びつくのか。

ヌーヴォー・レアリスムの中心メンバーとしてイブ・クライン(1928~1962)とともに活躍したアルマン(1928~2005)とセザール(1921~1998)。強い衝撃をうけるのがアルマンの作品、木箱にたくさんのガスマスクがびっしり集積されている。ガスマスクには戦争の悲惨さ残虐性がつきまとうので長くはみていられない。

彫刻家セザールは大理石像をつくりたかったが資金がなかったので金属を溶接する作品をつくった。これがきっかけになり廃品を圧縮して形を整えたオブジェが生まれた。一見すると大型の冷蔵庫の感じ。このほかにMoMA
でアメ車のビュイックを押しつぶしてこんな形にしたものをみた。

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2018.09.11

美術館に乾杯! ポンピドー・センター その二十

Img     カルダーの‘魚の骨’(1939年)

Img_0002_2     ソトの‘開かれた空間’(1967年)

Img_0004_2     ティンゲリーの‘部分 地獄、小さなはじまり’(1984年)

Img_0001     ビュリの‘9平面上の81個のボール’(1966年)

抽象美術に目を慣らしてくれた展覧会が1990年代に2度あった。最初は1991年の池袋のセゾン美(今はない)で開催されたグッゲンハイム美術館名品展、そして1997年にも東京都美でポンピドー・コレクション展が行われた。

グッゲンハイム展でとても親しみを覚えたのがカルダー(1898~1976)の動く彫刻、‘モビール’。彩色されたいくつもの金属板が針金で軸の棒に結びつけられて天井から吊り下げられている。じっとみているとゆるやかに動いている。同じものを子どもたちにつくらせたら喜んで手を動かすにちがいない。ポンピドーでもカルダーは楽しめるがそのひとつが‘魚の骨’。たしかに猫が食べ終えた魚の形に似ている。

ベネズエラ出身のソト(1923~2005)のつくったキネティック・アートも印象に強く残る。‘開かれた空間’は平面の前に無数のピアノ線がでており、これがびよんびよんと振動している。これはピアノ線が長いのはミソ。長いほど振動が大きくなるのでみていておもしろい。

ポンピドー展で作品の衝撃度が大きかった作家のひとりがティンゲリー(1925~1991)、ポンピドーセンターに着いて建物のまわりを歩いていると‘噴水彫刻’が目にとびこんでくるがこれはティンゲリーの作品。‘地獄、小さなはじまり’は巨大な動くオブジェ。電動モーターで動くのはどれも廃材。その数30以上。機械いじりが好きな人には恰好の遊び場となるにちがいない。

ベルギーのビュリ(1922~2005)の‘9平面上の81個のボール’は子どもから大人まで楽しめる玩具のたぐい。角々と曲がる斜めの木の板に木製の小さな球体が珠の裏側に仕込まれたモーターによって上から下へと落ちていく。角度のついた坂でもざーっとすべることなく一歩ずつ進む様子はまるで尺とり虫が動いているよう。息を呑んでみていた。

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2018.09.10

美術館に乾杯! ポンピドー・センター その十九

Img_0003     ドゥ―スブルフの‘純粋絵画’(1920年)

Img     ヴァザルリの‘夢’(1966年)

Img_0002     アガムの‘ダブルメタモルフォーゼⅡ’(1969年)

Img_0004     グルスキーの‘99C’(1997年)

モンドリアンとひと回り若いドゥ―スブルフ(1883~1931)がはじめた‘新造形主義’は絵画だけでなく建築など生活のなかで目にするものを水平線や垂直線をもちいて抽象的な様式しようという芸術運動。

ドゥ―スブルフの‘純粋絵画’は横と縦で交錯する色の帯はモンドリアンの青、赤、黄の三原色にさらに緑、紫と白、灰色、黒を加えている。これにより画面の複雑性が増しひとつ々の色面に目の錯覚から凹凸を感じるようになった。ドゥ―スブルフはこの絵の4年後、動きをだすため45度の斜線を入れたのでモンドリアンと決裂してしまう。

錯視効果を利用した作品を生み出したのはオプ・アートのヴァザルリ(1908~1997)、‘夢’は正方形の画面から小さな円と四角がイルミネーションによって文字や形が連続的に出てくるように横や縦、斜めから自在に飛び出してくる。

これと同じような作品がイスラエル生まれのアガム(1928~)の‘ダブルメタモルフォーゼⅡ’。見る位置によって画面が変わるので、だんだん嵌り長くとどまるはめになる。立体彫刻やオブジェでもこうした動くキネティック・アートがカルダーやティンゲリーらによって生みだされたが、アガムのは錯覚により平面のものが動くようにみえる。

旧東ドイツ出身の写真家グルスキー(1955~)の‘99C’はディスカウントストアの棚の列を撮影したもの。カラフルな色のパッケージにつつまれた商品が棚に大量に存在する光景はアガムの画面に現れた何色も使われた細い色の帯と変わらない。アートと日常の垣根が一瞬に消えてしまった。

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2018.09.09

美術館に乾杯! ポンピドー・センター その十八

Img_0003     カンディンスキーの‘黄ー赤ー青’(1925年)

Img_0002     カンディンスキーの‘空色’(1940年)

Img_0001     クレーの‘リズミカルなもの’(1930年)

Img     モホリ=ナジの‘コンポジションA××’(1924年)

絵画作品には分野別ごとにMy傑作ランキングがついている。様々なタイプがある抽象絵画のなかでトップグループを走り続けているのがカンディンスキー(1866~1944)の‘黄-赤―青’、はじめてこの絵をポンピドーでみたとき200%心を奪れた。こんな美しい抽象画があったのか!

左側は黄色の地に幾何学的な半円や小さな円、四角が緩い緊張感で構成されているのに対し、右側は赤や青紫で彩られた円や四角が柔らかくぎゅっと固められのびやかなフォルムをつくっている。そして、そのまわりを蛇のように黒い帯がとり囲む。抽象画の金字塔ともいえるこの作品はカンディンスキーがバウハウスで教鞭をとっている時代に誕生した。

亡くなる4年前パリで描かれた‘空色’はミロを連想させるとてもユーモラスな絵。空に舞う奇妙な物体はミトコンドリアとかアメーバの微生物のイメージ。生まれたばかりの稚魚がとびはねる姿もこんな感じ。晩年になってカンディンスキーがこんな緩い絵を描いてシュルレアリスムのミロとコラボした。冷たい抽象を得意としたカンディンスキーが漫画チックなシュルレアリスム、ミロとつながるのを誰が想像しただろうか。

クレー(1879~1940)の‘リズミカルなもの’も形態を探求したバウハウス時代の成果がでた作品。白、黒、灰色でつくられた縞模様はタイトルの通り前後左右に揺れ動いている。作品を見たあとでは自分でも描けそうな気になるが、これは素人の後知恵。何枚も習作を描くなかどこかでピタッとくる動きが生まれてくる。そこにたどりつけるのはほんの一握りの天才だけ。

モホリ=ナジ(1895~1946)の‘コンポジションA××’は透明感のある空間に大小の円と立体的に形づくられた四角い面がうまく配置されている。ロシアの前衛芸術、構成主義の一人であるモホリ=ナジはこんな透明で滑らかな面を使って光を表現した。じっとみていると空間が描かれたモチーフによって上手い具合に区切られているのがわかってくる。

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