2017.11.18

美術館に乾杯! フィラデルフィア美 その十

Img     ピカソの‘三人の音楽師’(1921年)

Img_0002     ラウシェンバーグの‘地所’(1963年)

Img_0003     デ・クーニング

Img_0001     フランケンサーラーの‘白いサルビア’(1962年)

ワシントンのナショナルギャラリーにはピカソ(1881~1973)が若い頃描いたいい絵があるが、フィラデルフィアで思わず足がとまるのは‘三人の音楽師’。とても大きな絵で三人のアルルカンがヴァイオリン、縦笛、アコーデオンを陽気に奏でている。

アメリカでピカソというと、NYのMoMAの‘アヴィニョンの娘たち’やグッゲンハイムのあるものがすぐ思い起こされるが、‘三人の音楽師’も忘れられない作品。このほかに2点みたが、そのひとつが珍しい花の静物画だった。ピカソがこんな絵がを描いていたとは!

ネオダダのラウシェンバーグ(1925~2008)はピカソのコラージュのように日常の風景を切り取った写真を自由に重ねて画面をつくっていく。‘地所’は200%即物的でTVに流れるニュースの断片を視覚がしっかりとらえていくような感じ。左の下に‘自由の女神像’がみえる。

オランダ生まれのデ・クーニング(1904~1997)は作品をみるたび関心度が増していく作家、惹かれるのは抽象的な形のなかに生気が感じられるところ。青と赤の布切れがひらひら舞っているイメージがするこの作品はダンサーの競演や疾走する野生動物の群れを連想させる。

あくまで夢の話だが、どこかの美術館で二人の女性画家の回顧展と遭遇することを願っている。アメリカのジョージア・オキーフ(1887~1986)と抽象表現主義で独自の画風を築いたヘレン・フランケンサーラー(1928~2011)。フランケンサーラーのしみ込ませ技法で表現された花や風景にはリアルな描写以上に心を癒す効果がある。

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2017.11.17

美術館に乾杯! フィラデルフィア美 その九

Img_0001     ポロックの‘男と女’(1942年)

Img_0003       ロスコ

Img_0002      ニューマン

Img        フランシス

美術館で企画展を催されるとき、見逃したくないのは1人の作家の作品をどーんと集めてくる回顧展。日本で頻繁に開催されるのはやはり印象派関連のもの。毎年どこかの美術館でやっている。今、東京都美ではゴッホ展が行われている。

これに対し近現代アートの場合、画集が必ずあるビッグネームの作家でさえ、まとまった形で作品を楽しめる回顧展となると滅多にしかお目にかかれない。そのため、2012年にみたポロック展(東近美)などはめぐり合わせ良さをずっと感じ続けている。

一度回顧展を体験すると、画風のイメージや作品の流れにひとつのコアができるのでまたどこかで作品をみたとき敏感に反応することが多くなる。フィラデルフィアでポロック(1912~1956)の‘男と女’をみたのは、回顧展の1年後。やはり生の絵は図版でみる以上にポロックの表現したいことが伝わってくる。

一見すると家の柱に子どもが落書きしたような感じだが、左は明らかに女。上のほうで目玉のようなものが縦に並んでいるのがおもしろい。右の男はイメージのふくらみは少しばかり。黄色の部分が鼻で口を大きくあけている?

ワシントンのナショナルギャラリー同様、ロスコ(1903~1970)とニューマン(1905~1970)が揃っているのは流石というほかない。二人とも川村記念美で回顧展があったからすぐ絵のなかに入っていける。また、あまりみる機会のないサム・フランシス(1923~1994)が姿を現してくれたのも大きな収穫。

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2017.11.16

美術館に乾杯! フィラデルフィア美 その八

Img_0001     レジェの‘都会’(1919年)

Img_0003_2     ドローネーの‘エッフェル塔’(1911~12年)

Img     クプカの‘ニュートンの円盤’(1912年)

Img_0002     ピカビアの‘キャッチ・アズ・キャッチ・キャン’(1913年)

フィラデルフィア美の作品をみて感心するのは印象派だけでなく近現代絵画が大変充実していること。NYのMoMAやグッゲンハイムのコレクションが日本で数多く公開されたことや現地に足を運んだことが重なり、アメリカではこの2つの美術館とメトロポリタンに展示されているものが現代アートの美を心に植え付けてくれた。

そして、そうした作品の楽しみをさらに広げてくれたのが、シカゴ美、ワシントンのナショナルギャラリーとハーシュホン、フィラデルフィア美。ピカソやダリ、ポロック、ロスコ、、輝けるスターアーチストたちの作品が続々でてくる。本当にアメリカは美術大国!

フィラデルフィアにも思わず足がとまる抽象絵画の傑作がいくつもある。レジョ(1881~1955)の‘都会’とドローネー(1885~1941)の‘エッフェル塔’は隣り合わせで飾られている。必見リストに入れていたのは‘都会’のほうだが、ドローネーの代名詞となっているエッフェル塔に遭遇したのは大きな収穫だった。

日本で回顧展をみたのはレジェとクプカ(1871~1957)。名古屋で仕事をしているとき運よくであったのがククプカ展、そこに‘ニュートンの円盤’も出品されていた。だから、20年ぶりの再会となった。最近は宇宙の話に夢中だから、こういう銀河ワールドを連想させる作品には以前より2倍も3倍も反応する。

ダダとキュビスムを混合させた画風で知られるピカビア(1879~1953)、この作品のタイトルはレスリングのフリースタイルの名称。突拍子なイメージのいだきかたかもしれないが、ここに描かれた白や土色の細長い断片は大工がカンナで木材を削るときでる削りかすにみえてしょうがない。

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2017.11.15

美術館に乾杯! フィラデルフィア美 その七

Img   ダリの‘茹でた隠元豆のある柔らかい構造―内乱の予感’(1936年)

Img_0005     ミロの‘月に吠える犬’(1926年)

Img_0001     デュシャンの‘大ガラス’(1915~23年)

Img_0002デュシャンの‘与えられたとせよ、落ちる水、照明用ガラス’(扉部分 1966年)

Img_0003    デュシャンの‘同上’(扉からの景色)

2013年、フィラデルフィア美にでかけたとき最もみたかったのはセザンヌの‘大水浴図’、‘サンク=ヴィクトワール山’、ダリ(1904~1989)の‘茹でた隠元豆のある柔らかい構造’、そして美術館自慢のコレクションであるデュシャン(1887~1968)の作品。

ところが、ヒット率は20%。お目にかかれたのは‘サント=ヴィクトワール山’のみ、‘大水浴図’もダリもなぜか展示されてなく、デュシャンは展示室の修復でまったくみれなかった。これは大ショックだった。だが、リカバリーは意外に早くやってきて2年後の2015年に長年の願いが叶った。後押ししてくれのがワシントンのフリーア美で開催された‘宗達展’、この回顧展のおかげでフィラデルフィアにまた縁があった。

ダリの絵には副題に‘内乱の予感’とあるが、描かれた運動会の組み体操を連想させる人物表現からはすぐスペインにおける激しい争いとはむすびつかない。ただ、下からみあげた男の顔は日本の落武者のようにみえなくもないから、祖国が今混乱状態にあることはなんとなく感じられる。なにより嬉しいのはダリをコンプリートするのに欠かせない大事なピースが埋まったこと。ミューズに感謝!

ミロ(1893~1983)の‘月に吠える犬’はミロの魅力がたっぷりでたユーモラスな絵。夜を表すのに地平線の上の黒は当たり前として、感心するのは大地の茶色、カタルーニャの風景にはピッタリの色。そして、左に梯子を垂直に立て、右では赤ん坊が楽しむビニール製のおもちゃのような犬がパラシュートが横になった感じの月をながめている。やはりミロはいい。

デュシャンの熱狂的なコレクターが集めた作品がフィラデルフィア美にはこれでもかというほどある。その数30点以上。だから、ここはデュシャンの聖地になっている。その代表作が通称‘大ガラス’、‘彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁さえも’。

一見するとデパートのショーウィンドウのイメージ、8年かけてつくられたが、上半分が花嫁、下半分は独身者たちの欲望を表現している。こんな情報がインプットされてなければ博物館に飾ってある機械装置の模型と何ら変わりない。まさにレデイ・メイドの集合体。

‘与えられたせよ(1)落ちる水(2)照明用ガラス’は心がザワザワしてくる作品。空っぽの部屋があり、壁にレンガで囲まれた木製の扉がある。真ん中をよくみると小さな穴が二つある。この作品のことを知らないとそのまま通りすぎるかもしれない。

ここから中をのぞくとギョッとする光景が現れる。猟奇殺人の現場に居合わせたよう。草が生い茂った空地に裸婦が火のともったガスランプを左手にもち横たわっている。デュシャンはこの‘覗き穴’を20年にもわたってNYで秘密裏に制作していた。

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2017.11.14

美術館に乾杯! フィラデルフィア美 その六

Img    アンリルソーの‘カーニヴァルの夕べ’(1886年)

Img_0003     マティスの‘青い衣装の婦人’(1937年)

Img_0002     モディリアーニの‘青い瞳’(1917年)

Img_0001     シャガールの‘三時半(詩人)’(1911年)

ヨーロッパのブランド美術館では鑑賞後に寄るミュージアムショップに日本語に翻訳された美術館のガイドブックがだいたい置いてある。ルーブル、オルセー、プラド、ロンドンナショナルギャラリー、エルミタージュ、ウイーン美術史美、、、

ところが、アメリカは違っている。手元にあるのはメトロポリタンとワシントンのナショナルギャラリーだけ。日本で美術館展を何度も行っているあのボストンでさえ日本語版がない。シカゴ、フィラデルフィアも同様。2013年にはじめてフィラデルフィアに行ったとき、当然のこととして図録を購入する予定だったが、販売されていたのは分厚い英語版。専門書すぎたので買うのはやめた。だから、館内で写真撮影したものが図版代りになっている。

幸いなことに手元の美術書にはフィラデルフィア美蔵の作品が頻繁にでてくる。アンリ・ルソー(1844~1910)の‘カーニヴァルの夕べ’は初期の傑作としてTASCHEN本の最初にでてくる。ここにはルソーは3点あるはずだが、展示されていたのはこれとライオンの絵の2点。2回とも同じ組み合わせだったから、残る1点は倉庫に眠っているのかもしれない。

マティス(1869~1954)の‘青い衣装の婦人’は日本でも公開されたが、マティスの描いた女性画ではもっとも華やかで心を奪われる一枚。アメリカにはほかに2点いいのがある。‘音楽’(オールブライト・ノックス・アート・ギャラリー)とまだ縁がない‘桃色の裸婦’(ボルティモア美)。ボルティモアにはこのマティスとゴーギャンのいい絵があるので一度訪問したいのだが、はたして。

モディリアーニ(1884~1920)もアメリカのコレクターはしっかり集めている。シカゴ、MET、ワシントンナショナルギャラリー、フィラデルフィア、MOMA、グッゲンハイム、クリーブランド、デトロイト。‘青い瞳’は日本にもやって来た。

2015年に対面が叶ったのがシャガール(1887~1985)の‘三時半(詩人)’。胴体に逆さにくっついた緑の顔、普通にみるとギョッとする絵だがマグリットのシュール表現とも重なり不思議な魅力がある。

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2017.11.13

美術館に乾杯! フィラデルフィア美 その五

Img    モネの‘鉄橋 アルジャントゥイユ’(1874年)

Img_0002     ルノワールの‘浴女たち’(1887年)

Img_0001     マネの‘エミール・ベローの肖像’(1873年)

Img_0003     ゴッホの‘花瓶の12輪のひまわり’(1889年)

人気の美術館を訪問したとき展示室でするルーチンは決まっている。必見リストに載せている作品をまず優先してみること。そして、関心の高い画家については作品が何点あるかカウントすること。とにかく忙しい。

2013年にメモした印象派の作品をみてみると、モネ18点、セザンヌ8点、ルノワール6点、マネ5点、ゴッホ3点、ロートレック、ドガ、カサット、モリゾ1点ずつ。圧倒的に多いのがモネ(1840~1883)、モネの作品は手元にある画集や図録から沢山目の中に入っているが、そこに載ってないものがぞくぞくでてくる。モネの大ファンだから天にも昇る気分だった。

そのなかでとくに魅せられているのが‘鉄橋 アルジャントゥイユ’。この絵は2010年にパリのグラン・パレで開催された大モネ展にも出品された。列車の煙や鉄橋を支える柱の白が発光体のように輝く様が目に焼きついている。この光の描写をみたら、もうモネから逃れられない。

ルノワール(1841~1919)の‘浴女たち’は対面を心待ちにしていた作品。ところが、左手を後ろにおいて座っている裸婦のお尻のところにかなり目立つ傷があった。これは想定外!修復で消せないのだろう。残念でならないがこういうのは一度みると傷物という感じがして、どうしてもテンションが下がる。

マネ(1832~1883)は海洋画なども印象に残ったが、お気に入りは‘エミール・ベローの肖像’、こういうでっぷりした体格の人物はビールがよく似合う。横にすっといって一緒に飲みたくなる。調子に乗ってこの銅板画家の作品を褒めると、まあ一杯やれ俺のおごりだ、とご機嫌になるかもしれない。

ゴッホ(1853~1890)の‘ひまわり’は大きな収穫だった。これをみたので残るひまわりはミュンヘンのノイエピナコテークにあるもの。いつかコンプリートを達成したい。

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2017.11.12

美術館に乾杯! フィラデルフィア美 その四 

Img_0002    セザンヌの‘大水浴図’(1906年)

Img_0003     セザンヌの‘サンク=ヴィクトワール山’(1890年)

Img_0001     ロートレックの‘ムーラン・ルージュの踊り’(1890年)

Img     ドガの‘踊りのレッスン’(1881年)

アメリカの大きな美術館ではどこへ行っても質の高い印象派・ポスト印象派の作品が目を楽しませてくれるが、フィラデルフィア美にもすばらしい絵がここにもあそこにも飾ってある。

では、美術館一番の自慢の絵はどれか、シカゴ美だったらそれはスーラの‘グランド・ジョット島の日曜日の午後’だが、ここで別格の扱いを受けているのはセザンヌ(1839~1906)は‘大水浴図’、2度目の訪問で長年の夢を叶えた。

稀代のコレクター、バーンズが水浴図の別ヴァージョンを手に入れたとき、自分のもっているほうがフィラデルフィア美のものよりいい、と言い放ったいうが、この大作の前に立ったとき‘感情にまかせてずいぶん盛ったな!’と思った。この絵に会えたことは生涯の喜び。

セザンヌのもうひとつの傑作は強い緑や黄色を使ってモザイク画のように描いた‘サンク=ヴィクトワール山’、この絵も‘大水浴画’同様、画集には必ず載っている美術館の宝だから、日本の展覧会に貸し出されることはまずない。フィラデルフィア美訪問はつくづく大仕事だったなと思う。

最近、セザンヌに関するいい話が入って来た。東京都美は来年春に‘プーシキン美展’(4/14~7/8)をやるようで、出品作にセザンヌの‘サンク=ヴィクトワール山’が含まれている。これも長く気になっていた作品。国立新美の‘至上の印象派展 ビュールレ・コレクション’(2/14~5/7)に‘赤いチョッキの少年’が登場するから、楽しみが2つ重なる。

美術館に入館するとき現地ガイドから配られる‘フロアガイド’に使われているのがロートレック(1864~1901)の‘ムーラン・ルージュの踊り’、これはアメリカの美術館におさまっている珠玉の油彩のひとつ。大変魅了されている。

そして、ロートレックが師事していたドガ(1834~1919)の‘踊りのレッスン’も印象に強く残っている一枚、西洋美の‘北斎とジャポニスム’にドガの‘観覧席前の競争馬’(オルセー美)がでていたが、この絵の人物の配置にも浮世絵の影響がでている。

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2017.11.11

美術館に乾杯! フィラデルフィア美 その三

Img_0002     シャヴァンヌの‘聖人のフリーズ’(1879年)

Img     ミレーの‘松明での鳥の猟’(1874年)

Img_0003     ホーマーの‘ライフライン’(1884年)

Img_0001     サージェントの‘リュクサンブール公園にて’(1879年)

長く続けている絵画鑑賞をふと振り返ってみてよくこの画家の回顧展が実現したなということがある。例えば、3年前、Bunkamuraで行われたシャヴァンヌ展。

フランス人にとって、シャヴァンヌ(1824~1898)は日本でいうと東山魁夷のように多くの人が知っている偉大な画家だろうが、日本人の西洋画愛好家のあいだではその知名度は印象派の画家とくらべるとだいぶ低いのではなかろうか。

日本での回顧展の開催は‘事件’ともいえる幸運なめぐり合わせだったが、アメリカの美術館ではワシントンのナショナルギャラリーとフィラデルフィアでは3点ずつみることができた。Bunkamuraにはフィラデルフィアから‘聖人のフリーズ’、ナショナルギャラリーから‘休息’が出品された。

2013年はじめてフラデルフィア美で必見リストに赤丸をつけていたのがミレー(1814~1875)の‘松明での鳥の猟’、ミレーというとあの安らぎの光景‘晩鐘’のイメージがこびりついているから、この黄金の輝きをみせる松明で鳥をつかまえる場面には200%衝撃をうけた。ミレーにこんな絵があったとは!

アメリカのホーマー(1836~1910)の‘ライフライン’もみたくてしょうがなかった作品。描かれているのは救難隊員が難破船から女性を救い出すところ。まるで災害映画の一シーンをみているよう。ホーマーは激しい波の描写が群を抜いて上手い。息を呑んでみていた。

女性の肖像画を得意としたサージェント(1856~1925)だが、若いころはこんな群像画を描いていた。パリのリュクサンブール公園を歩いたのは何年前だったか、今も変わりないだろうか。

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2017.11.07

美術館に乾杯! フィラデルフィア美 その二

Img    ルーベンスの‘鎖につながれたプロメテウス’(’1612年)

Img_0001     プッサンの‘海神ネプチューンの勝利’(1635年)

Img_0004     ターナーの‘国会議事堂の火災’(1834年)

Img_0003     クールベの‘海辺に横たわる裸婦’(1868年)

ヨーロッパの美術館をまわるとルーベンス(1577~1640)の大きなバロック絵画と定番のようにでくわすが、アメリカにはそんな大作は存在せずルーベンスで熱くなることは少ない。印象の残る作品というとワシントンにあるのライオンの絵と女性の肖像画、そしてフィラデルフィアにある‘鎖につながれたプロメテウス’くらい。

‘プロメテウス’は静物画と動物画を得意とするスネイデルスとの共同制作。ルーベンスがプロメテウス、スネイデルスが鷲を担当している。短縮法で描かれたプロメテウスにおおいかぶさる鷲は何をしているのか。肝臓をついばんでいるのである。プロメテウスに罰をあたえるために。

ではプロメテウスはどんな悪いことをしたのか、神々を怒らせたのはプロメテウスが火の秘密を盗み人間に教えたから。そのため岩にしばりつけられ鷲に肝臓を食べられるはめに、肝臓はすぐ再生するからこの罰は未来永劫にわたって続く。これも‘怖い絵’の一枚。

プッサン(1594~1665)の‘海神ネプチューンの勝利’はみごたえのある神話画。ぱっとみてどこかでみたような気がするのはローマでラファエロの‘ガラテアの勝利’が胸に強く刻まれているため。プッサンはラファエロを意識したにちがいない。

息を呑んでみてしまうのがターナー(1775~1851)の‘国会議事堂の火災’、この火災は実際に1834年10月16日の夜に発生した。火災の現場を描くというのはターナーが世間の動きや事件にすごく関心があり新聞社の社会部の記者の心持ちになっていたからであろう。日本画では川端龍子が同じくジャーナリスティックな感性で炎につつまれた金閣寺を描いている。

クールベ(1819~1877)の‘海辺に横たわる裸婦’は日本で開催されたフィラデルフィア美名品展に出品された。波の描写があまりにリアルなので帆の下にいる裸婦に視線が集中しないのが正直な感想。裸婦を人魚に重ねてみてもまだ落ち着かない。裸婦はやはりベッドの上に寝ているとか森の草花に囲まれている姿のほうがぐっとくる。

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2017.11.06

美術館に乾杯! フィラデルフィア美 その一

Img        フィラデルフィア美

Img_0003  ウエイデンの‘聖母と聖ヨハネと十字架上のキリスト’(1460年)

Img_0001      ボスの‘東方三博士の礼拝’

Img_0002    ファン・エイクの‘聖痕を受ける聖フランチェスコ’(1440年)

アメリカの大きな美術館のなかで訪問に長い時間がかかったのがフィラデルフィア美。2013年1月ようやく夢が叶った。そして、2015年宗達の‘松島図’をみるためワシントン行きを決行したためまたこの美術館と縁があった。

団体ツアーに参加しアメリカ東海岸の旅を楽しんだ方はご存知のように、以前はフィラデルフィアでは‘自由の鐘’のあるところへ行くのがおきまりのコースでフィラデルフィア美に入るツアーは皆無だったが、最近は美術鑑賞が好評なのかここを訪れる旅行会社が増えてきた。

フィラデルフィア美の見どころはやはり印象派の絵画。美術の本に載っている傑作がここにもあそこにもあるという感じ。これに対し、古典絵画はメトロポリタンやワシントンのナショナルギャラリーと較べるとかなり差があり、足がとまるものは限られている。

だが、すごいのがひとつある。ウェイデン(1399~1464)の‘聖母と聖ヨハネと十字架上のキリスト’。これまでみたウェイデンで大きな感動をおぼえたのはプラドにある‘十字架降下’だったが、この絵も思わず声がでるほどの傑作、フィラデルフィアにこんないいウェイデンがあったとは!

ボス(1450~1516)のコレクションも美術館の自慢かもしれない。工房作を含めて4点くらいあった。手元のTASCHEN本に載っているのは‘この人をみよ’と昨年プラドで開催された大ボス展にも登場した‘東方三博士の礼拝’。アメリカでボスがみれるのは4つの美術館、そしてフィラデルフィアふだけが複数もっている。

ボス同様、貴重なのがファン・エイク(1390~1441)の作品、‘聖痕を受けた聖フランチェスコ’はトリノにあるほとんど同じ図柄の絵のさらに小さいヴァージョン。縦13cm、横15cmの小品なのでうっかりすると見逃してしまうが、チェックリストに入れてるのでしったり目にとまった。

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