2021.04.28

美術館に乾杯! 東京国立博物館 その二十五

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        岸田劉生の‘麗子微笑’(重文 1921年)

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     黒田清輝の‘湖畔’(重文 1897年)

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        黒田清輝の‘舞妓’(重文 1893年)

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        青木繁の‘日本武尊’(1906年)

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     藤島武二の‘静’(1916年)

明治以降、数多く描かれた日本の洋画でもっとも魅了されているのは岸田劉生
(1891~1929)の‘麗子微笑’。劉生の高い人気を反映して回顧展はよ
く開催される。そのとき、この7歳の麗子像は目玉の作品として出品されるが、
お出ましの回数は少ない。広島にいたころふくやま美の‘麗子展’(2003年)
で運よく遭遇した。会場は大勢の人でいっぱい、みんな麗子の微笑を息を呑ん
でみている。こういう名画は言葉はいらない。ただじっとみているだけで心
が揺すぶられる。2019年東京ステーションギャラリーであった大回顧展に
も出品された。

では、東博の平常展で何度お目にかかったかというと意外に少ない。2017
年にみたのはよく覚えているが、その前となると1回はみたような気がするが、
記憶はあやふや。油絵の具で描かれた人物像だからもっと鑑賞の機会があって
もよさそうだが、重文指定の制約もあるため、なかなか展示されない。オルセ
ーへ行くといつもでルノワールの代表作‘ムーラン・ド・ラ・ギャレット’がみ
れるのに、日本のモナリザはいつも楽しめないというのは変な話である。油絵
の場合は重文のしばりは必要ないと思っている。

黒田清輝(1866~1924)の‘湖畔’と‘舞妓’もお宝中のお宝。フランスか
ら帰国した年に描かれた‘舞妓’は油絵らしい色彩の強さが印象的で舞妓の顔が
溌剌としているのに対し、この4年後に制作された‘湖畔’は静かな湖の光景と
みるからに美形の優しい女性がほわっと溶け込むように日本画を思わせる淡い
色調で表現されている。ここは箱根の芦ノ湖でモデルは黒田の妻照子夫人。
彼女はこのとき23歳だったが、大女優のような風格がある。

黒田があれば藤島武二(1867~1943)もみたくなる。横幅が2.2m
もある‘静’は一見するとスーラやシニャックの点描画を彷彿とさせる。そして、
虹に美しい色彩がじつの印象的で湖面に映る山々や岩の影はスイスのホドラー
の静謐な風景画とのコラボもイメージさせる。こんな装飾的な光景が描ける
のだから日本人画家の枠組みを大きく超えている。
青木繁(1882~1911)の‘日本武尊’はモデルのイケメンぶりが目に焼
きついている。武運だけでなく女のような綺麗な顔貌にも恵まれた日本武尊は
青木の豊かな感性からしか生まれてこない。

これで‘美術館に乾杯!’シリーズのパートⅡ(日本の美術館)は終了です。
2019.8.3の大原美からスタートし、全部で226の美術館(お寺・
神社・城も含む)を紹介してきました。お楽しみいただけましたでしょうか。        

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2021.04.26

美術館に乾杯! 東京国立博物館 その二十四

Img_0001_20210426224601      高橋由一の‘酢川にかかる常盤橋’(1881~82年)

Img_0002_20210426224601      浅井忠の‘春畝’(重文 1888年)

Img_0004_20210426224601         曽山幸彦の‘武者試鵠’(1890年)

Img_20210426224601      チャールズ・ワーグマンの‘飴売’(1870年代)

Img_0003_20210426224601      アントニオ・フォンタネージの‘不忍池’(1878年)

東博へ出かけたときは本館1階の日本画の大作が飾られている部屋は必ず寄
ることにしている。だから、日本画だけでなく洋画や高村光雲の‘老猿’にも
目がよく慣れている。高橋由一(1828~1894)の絵で展示される
頻度が高いのは‘酢川にかかる常盤橋’、常設展示の印象があるほどよくでて
いる。この橋は山形市内を流れる酢川にかかる石橋。橋をとらえる構図に
安定感があり、リアルさの増す欄干や石垣の細密描写に惹きつけられる。

京都出身の浅井忠(1856~1907)は日本のミレーのような存在で
農村風景を得意とした。この‘春畝’と東近美にある‘収穫’はともに重文に指定
されている。東博通いのはじめのころは‘春畝’への関心は弱かったが、足を
運ぶ回数がふえるにつれ‘常盤橋’同様じっくり眺めるようなった。美術品は
視覚体験の積み重ねが大事だということを教えてもらった。曽山幸彦
(1859~1892)の‘武者試鵠’は画家の名前は覚えられなくても、武士
が弓を引くというインパクトのある姿が油絵の具で描かれていることはしっ
かり脳にインプットされる。

初期の日本の洋画家に油絵の技法を教えたチャールズ・ワーグマン
(1832~1891)は1861年に挿絵記者としてやってきたイギリ
スの画家・漫画家。ポンチ絵のもとになった日本最初の漫画雑誌‘ジャパン
・パンチ’を創刊した。‘飴売’は大変興味をそそる絵。飴を自在にものの形に
かえていく職人の技に小さいころ目を白黒させてみていたが、ここにはそ
れを思い出させる光景が描かれている。こういう風俗画が一番楽しい。

イタリアの画家、アントニオ・フォンタネージ(1818~1882)がお
雇い外国人教師として来日したのは1876年。滞在したのは2年と短かっ
たが、浅井忠、五姓田義松、山本芳翠らが指導を受けている。‘不忍池’は
バルビゾン派の田園風景画を連想させる。この暗褐色の色彩が受け継がれ、
のちに‘脂派(やには)’と呼ばれた。

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2021.04.25

美術館に乾杯! 東京国立博物館 その二十三

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     高村光雲の‘老猿’(重文 1893年)

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     鈴木長吉の‘鷲置物’(重文 1893年)

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        初代宮川香山の‘黄釉銹絵梅樹図大瓶’(重文 1892年)

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     並河靖之の‘七宝花蝶文瓶’(1892年)

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     濤川惣助の‘七宝富嶽図額’(重文 1893年)

東博本館の1階は入館し導線を左へ時計回りに進んでいくとまずミュージア
ムショップがあり、そこを抜け右手に曲がったところが洋画や日本画、美術
工芸が飾られている部屋。東博巡りがスタートしたころ、ここにある高村
光雲(1852~1934)の‘老猿’には思わず足がとまった。まるで生き
ているような猿が目の前に現れたのである。これがあの美術の教科書に載
っていた高村光雲の木彫か!という感じ。東博や東近美、東芸大美が特別な
美術館という位置づけに自然となるのはこういうエポック的な美術鑑賞体験
が生まれるから。

鈴木長吉(1848~1919)の‘鷲置物’(青銅製)は1885年のニュ
ルンベルク万国金工博覧会で金賞を受賞した。そして、この8年後の
1893年にはこれと東近美にある‘十二の鷹’がシカゴ万国博覧会に出品さ
れ多くのアメリカ人を喜ばせた。東博にはもうひとつ忘れられない作品があ
る。それは1900年のパリ万博で披露された‘岩上双虎置物’。高い金工の
技術をもってすれば猛禽類だけでなく虎だって高いレベルで表現できる。

東博が所蔵する美術作品は膨大な数にのぼるため、館の図録では名作の一部
がもれてしまう。それをカバーしてくれるのがミュージアムショップ販売さ
れている絵葉書。気に入った作品に遭遇したときは念のため絵葉書が用意さ
れているかチェックすることにしている。ところが、何年待っても作成され
ないものもある。そのひとつが大変魅了されている初代宮川香山(1842
~1916)の‘黄釉銹絵梅樹図大瓶’。でも、嬉しいことに2年前所蔵の
名品展があり図録に図版が載った。これで瓶の美しい形と枝の巧みな配置に
より一層映える梅がいつでもみられる。

このミニ特別展には七宝の優品が2つ出品された。並河靖之(1845~
1927)の‘花蝶文瓶’と濤川惣助(1847~1910)の‘富嶽図額’。
平常展にはときどきでてくるが、絵葉書はなし。並河のものは回顧展があっ
たから図版はおさえているが、濤川の無線七宝の技が冴える富嶽はずっと
記憶のなかだけにとどまっていた。やっとこれが解消し、まるで富士山の
風景画のような濤川の傑作をみたいときに楽しんでいる。ミューズに感謝!

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2021.04.24

美術館に乾杯! 東京国立博物館 その二十二

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    国宝‘片輪車蒔絵螺鈿手箱’(平安時代12世紀)

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     ‘花鳥堆朱長方形箱’(南宋時代13世紀)

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     ‘浜松図真形釜’(重文 室町時代15世紀)

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       国宝‘太刀 銘吉房’(鎌倉時代13世紀)

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       国宝‘刀 金象嵌銘正宗’(鎌倉時代14世紀)

東博にある工芸のお宝でとくに気に入っているのが蒔絵の手箱や硯箱。つい
夢中になってみてしまうのは光悦と光琳の硯箱だけではない。もうひとつ
気分をハイにしてくれるのがある。平安時代につくられた‘片輪車螺鈿蒔絵手
箱’。工芸一般に使われた日本の文様のなかで平安時代の後期から貴族たちが
乗った牛車が文様化された。‘片輪車’はそのひとつで牛車の車輪が乾燥して
木組みが崩れるのを防ぐため水に浸した情景を表現している。車輪を意匠と
して蒔絵に螺鈿を交えて美しくみせるという創作心が本当にスゴイ。

堆朱はふだんは見る機会がなく、以前よく開催された中国展とか東博やMOA
の平常展示くらいしか縁がない。南宋時代に制作された‘花鳥堆朱長方形箱’は
光沢のある朱漆で覆われた長箱に一対の鳳凰と牡丹、菊、睡花など様々な花
が丁寧にしっかり刻まれている。漆を彫る作業は硬いため大変な労力と多く
の時間を必要とする。だから、出来上がったものは軽い気持ちではみれない。

‘浜松図真形釜’は古来から茶の湯釜の名産地として有名な福岡県遠賀川河口の
芦屋を代表する釜のひとつ。東博では同じ芦屋でつくられた胴回りにみられ
る小粒の霰(あられ)文が印象深い‘園城寺霰釜’よく一緒に飾られているが、
‘浜松図’のほうは胴に鎧をつけたイメージでさらにボリューム感がある。はじ
めてみたときは動物のアルマジロを思い出した。

2年前までは海外からの観光客が東博でもどんどん増えていたが、彼らが熱
心にみていたのは刀のコーナー。英語の説明書きに目をやり真剣なまなざし
で名刀にむきあっていた。よく耳にしていた日本刀をコレクションしている
海外の愛好家の話から今は一般の外人にまで日本の刀の魅力が浸透している。
また、昔はみなかったグループが目立つようになった。それは日本の若い
女性、備前福岡一文字派を代表する名工の吉房の‘太刀’(国宝)や鎌倉時代
末期の相州鍛冶、正宗の傑作‘刀 金象嵌’(国宝)が展示されるときは万難を
排して駆けつけるにちがいない。そして、美しい刃文をみて胸がキュンとな
っていることだろう。

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2021.04.23

美術館に乾杯! 東京国立博物館 その二十一

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     野々村仁清の‘色絵月梅図茶壺’(重文 17世紀)

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     ‘色絵花鳥文大深鉢’(重文 江戸時代17世紀)

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     ‘色絵飛鳳図輪花大皿’(江戸時代17世紀後半)

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     ‘染付雪景山水図皿’(江戸時代18世紀)

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  ‘信楽一重口水指 銘柴庵’(重文 桃山~江戸時代16~17世紀)

野々村仁清の色絵茶壺は東博でみた月と梅の樹を描いたものが最初の体験だ
ったかもしれない。そのあと、出光の‘罌粟文’、福岡市美の‘吉野山図’、MOA
の‘藤壺文’といった傑作にのめりこんでいった。仁清の卓越した意匠感覚は
‘月梅図’でも際立っており、立体なのに構成力が上手いため月や梅がまるで絵
に描かれた花鳥画のような感じがする。

伊万里・柿右衛門様式の‘色絵花鳥文大深鉢’は1600年代にヨーロッパへの
輸出物としてつくられた色絵磁器。運よく日本に里帰りした。柿右衛門の
魅力は純白の白磁に花や鳥が簡潔に表現されているところ。赤、緑、青、黄
の明るい色合いが目に心地いい。これに対して色彩の圧を強く感じるのが
五彩手古九谷様式の‘色絵飛鳳図輪花大皿’、濃くて密度の高い色調は中央に描
かれた鳳凰とは相性がよく思わず足がとまる。こんなに羽を広げた鳳凰はみ
たことがない。

肥前鍋島藩の藩窯でやかれた鍋島焼はみるものをうならせる高い技巧が特徴。
‘染付雪景山水図皿’は中国の山水水墨画そのもの、はっとさせるモダンな意匠
が心を虜にさせる色鍋島だけでなく、グラデーションをきかせた青を微妙に
重ねてモノクロの風景を連想させる染付の優品もみせてくれる。すばらしい!

‘信楽一重口水指 銘柴庵’は詫びの茶席にぴったり嵌る水指の名品。古くてど
っしりした存在感。胴に生じるヒビ割れと自然釉の流れは備前と似た景色で
焼き締め陶ならではの味わいとなっている。2017年、東博で開催された
茶の湯展では備前筒花入や伊賀耳付花入などと並んで飾られた。

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2021.04.22

美術館に乾杯! 東京国立博物館 その二十

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     ‘大井戸茶碗 銘有楽’(朝鮮時代16世紀)

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     ‘彫三島茶碗 銘木村’(朝鮮時代17世紀)

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     ‘志野茶碗 銘振袖’(桃山時代16~17世紀)

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     ‘鼠志野鶺鴒文鉢’(重文 桃山時代16~17世紀)

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     ‘織部扇形蓋物’(桃山時代17世紀)

やきもの鑑賞は絵画、彫刻とともに展覧会訪問の楽しみのひとつ。そのため、
どこの美術館でやきもの展があるかは入念にチェックしている。でも今は新
型コロナ感染の影響で美術館へでかけること自体が極端に減っているので、
出動の日程調整どころの話ではない。こういう状況下では図録や美術本に
掲載されている名品を以前に増してしみじみ愛でる心境になる。

‘茶の湯展’が開催されるときは美術館自慢のお宝がどどっと出品される。そう
した茶の湯オールスターともいうべき定番茶碗が東博にはいくつもある。
展示されている場所は本館1階を入館して反時計回りで進むと二つ目の角の
部屋。ローテーションされてでてくるが、何度も通っているとだいたいお目に
かかれる。大好きな志野や織部は東博でまず目を馴らしたからこの部屋には
愛着がある。

‘大井戸茶碗 銘有楽’や‘彫三島 銘木村’は茶人たちが好んだ朝鮮のやきもの。
茶碗には歴史上の人物が登場する。大井戸茶碗は織田信長の弟有楽斎が所持し
ていたことからこの名前がついている。斜めの白い線が横に連続した桧垣文が
印象深い彫三島はここで覚えた高麗茶碗。あわせて日本からの注文によってつ
くられたことも知った。

さて、志野、織部である。‘志野茶碗 銘振袖’と‘鼠志野鶺鴒文鉢’の前にくると
ニコニコ顔になる。角いような丸のようなフォルムと白の釉薬に鮮やかに映え
る緋色が目を楽しませてくれる。一羽の鶺鴒(せきれい)が描かれた鼠志野。
鳥をどんともってくるという大胆な発想に感心する。Myカラーの緑がぐっと迫
ってくる‘織部扇形蓋物’も時代を突き抜けてる意匠感覚が心をとらえて離さない。

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2021.04.21

美術館に乾杯! 東京国立博物館 その十九 

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        ‘白磁鳳首瓶’(重文 唐時代7世紀)

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        ‘三彩龍耳瓶’(重文 唐時代8世紀)

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     ‘青磁輪花鉢’(重文 南宋時代12~13世紀)

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     ‘青花魚藻文壺’(重文 元時代14世紀)

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     ‘粉彩梅樹文皿’(重文 清時代1723~35年)

やきもの優品を集めた企画展を開催する美術館ですぐ思い浮かぶのは五島美、
根津美、出光美、銀座松屋。そして、所蔵するやきものが平常展示で楽しめ
るところは東博、静嘉堂文庫美、松岡美、畠山記念美、戸栗美、熱海のMO
A,箱根の岡田美。東博のやきものコレクションは数も多く日本、中国、
朝鮮、東南アジアの質の高い陶磁器がずらっと揃っており、何度も通うと
やきものへの興味が増すことは請け合いである。

銅製の‘竜首水瓶’と胴の膨らみがコラボする‘白磁鳳首瓶’は唐時代の初期につ
くられた白磁の傑作。蓋に龍や鳳凰の首を象るというのはおもしろいアイデ
アだが、これはシュルレアリスムのダブルイメージと同じ発想。ただの生き
物を使ってもびっくりさせられないので龍や鳳凰といった権威や吉祥の象徴
を用いて洗練した器や瓶に仕上げている。

東博の楽しみのひとつは唐三彩がみれること。Myカラーが緑&黄色なので
これには特別な思い入れがある。東京では東博と永青文庫と静嘉堂文庫が唐
三彩のメッカ。‘三彩龍耳瓶’は見事な瓶で龍耳のフォルムと胴の三方に貼り
つけられた宝相華のメダイオンに強く惹かれる。横に飾られている綺麗な丸
い壺‘三彩梅花文壺’もみるたびに心がときめく。

中国の陶磁器では抜群の人気を誇る青磁にもいいのがある。南宋時代につく
られた‘青磁輪花鉢’は縦横に走る貫入が磁力を放っている。名品はまだある。
青磁展には定番のワンピース‘青磁茶碗 銘馬蝗絆’。底のひび割れをかすがい
でとめたものが大きな蝗(いなご)にみえることでこの名がついている。

青磁よりもっと魅了されているのが‘青花魚藻文壺’。青花は日本の染付のこと。
この青の輝きは心を打つ。日本伝世の元の青花磁器は珍しく、大阪市東洋陶
磁美にある‘青花蓮池魚藻文壺’(重文)とともに青花の最上位にランクされる
一品である。おおげさにいうとこの2つを青花の発色具合を目にしたらほか
はみれなくなる。そして、清時代の‘粉彩梅樹文皿’は一幅の花鳥画をみるよう。
日本にある琺瑯彩ではこれがベストワン。本当に美しい!

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2021.04.20

美術館に乾杯! 東京国立博物館 その十八

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        国宝‘竜首水瓶’(飛鳥時代 7世紀)

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     国宝‘海礒鏡’(奈良時代 8世紀)

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     ‘如来坐像’(重文 飛鳥時代7世紀)

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        康円の‘四天王眷属立像’(重文 鎌倉時代1267年)

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     ‘伝源頼朝坐像’(重文 鎌倉時代13世紀)

美術品のお宝はバラエティに富んでおり、古い時代の日本では中国やペルシ
ャなどからの影響にみられるものが数多く存在する。‘竜首水瓶’は横から
見たときの形がとてもいい。注ぎ口に象られた龍の頭は一瞬カモノハシが
浮かぶ。そして、下膨れの胴体にもつい視線が集中する。東博では法隆寺
献納宝物を展示する特別の部屋が設けられているが、この水瓶や‘海礒鏡’は
とくに目を奪られる。この大型鏡は均等の配置された山形の島と埋め尽く
された渦巻きの波文に夢中になってみてしまう。

‘如来坐像’は法隆寺金堂にある‘釈迦三尊像‘の中尊の連想させる形をしてい
る。高さ30銭cmほど小さな像だが、存在感があり大きくみえるのが飛鳥
像のマジックかもしれない。横に並んでいる20~40cmくらいの‘菩薩半
跏像’や‘観音菩薩立像’、‘十一面観音立像’にも大変魅了される。

本館1階で‘遮光器土偶’同様、目に焼き着いているのが運慶三代目の世代を
代表する康円(1207~?)が1267年に造立した‘四天王眷属立像’の
持国天と増長天、これは持国天のほう。手や足に動きがあり、個姓の強い
表情は一度みると忘れられない。もう2体は静嘉堂文庫と熱海のMOAに
ある。

‘伝源頼朝坐像’も記憶によく残っている武士の肖像彫刻。これは鎌倉の鶴岡八
幡宮に安置されていたもので、鎌倉時代以降に流行した武士が俗体形をとっ
た姿。頭にかぶる烏帽子、狩衣、指貫によって安定感のある美しい三角形
坐像が誕生した。同じスタイルでつくられた北条時頼と上杉重房の坐像が
それぞれ建長寺、明月院にある。

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2021.04.19

美術館に乾杯! 東京国立博物館 その十七

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     ‘遮光器土偶’(重文 縄文時代晩期 前1000~前400年)

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     国宝‘袈裟襷文銅鐸’(弥生時代 前2~前1世紀)

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        国宝‘埴輪 挂甲の武人’(古墳時代 6世紀)

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     ‘饕餮文瓿’(商時代後期 前13~11世紀)

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     ‘龍濤螺鈿稜花盆’(重文 元時代14世紀)

縄文時代の遺跡から出土した土偶の人気は近年世界的に高くなっており、
2009年の秋に文化庁海外展‘土偶’がロンドンの大英博物館で開催された。
嬉しいことにその年の暮れにそれらが特別展が披露された。東博にある
‘遮光器土偶はもちろん出品された。本館1階でお馴染みとなっているこの
土偶は大きな目がとてもユーモラス。これくらい愛嬌があるとゆるキャラ
で売り出せばTVの子ども番組やイベントには引っ張りだこになること請け
合いである。

古墳時代のスターは‘埴輪 挂甲の武人’。埴輪で国宝に指定されているのは
これだけ。映画‘大魔神’(知っている人は知っている)ではこの優しい顔の
埴輪がだんだん怖い大魔神に変身していく。当時の武人はこのように冑を
かぶり脛あて、腕の籠手などで完全武装していた。カッコいい姿なら誰で
も形にして残したいと思うだろう。

香川県で出土した国宝の‘袈裟襷文銅鐸’は弥生時代につくられた絵画銅鐸と
して有名。レリーフ状に描かれているのはスッポン、トンボ、カマキリな
ど7つの生き物。ラスコーも洞窟壁画でも銅鐸でも特徴をシンプルにとら
えた原始的な描写は生命の力が強く感じられる心を突き動かす。

青銅器で惹かれるのは日本では銅鐸で中国のものは饕餮文の文様が刻みこ
まれた各種の容器。古代中国の商時代につくられた瓿(ほう)は横幅が高
さより大きい壺型の容器で儀式に使う酒や水を蓄えたもの。丸く膨らんだ
真ん中の身の部分には目を開いた獣の顔のような文様が描かれている。
元の時代に制作された螺鈿の龍のお盆も忘れられない。五爪の龍が朱や緑
を生み出す貝を見事に使い分けて表現されている。これに遭遇したのは
生涯の思い出。

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2021.04.18

美術館に乾杯! 東京国立博物館 その十六

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        上村松園の‘焔’(1918年)

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        速水御舟の‘京の舞妓’(1920年)

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        安田靫彦の‘御産の祷’(1914年)

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     小林古径の‘異端(踏絵)’(1914年)

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        前田青邨の‘竹取’(1911年)

東博が所蔵する近代日本画には強く印象に残る2点の女性画がある。
上村松園(1875~1949)の‘焔’と速水御舟(1894~1935)の
‘京の舞妓’。画家には一般的なイメージから外れる作品が1点や2点あること
がある。あの優しい美人画を描いた松園の場合、‘焔’がそれにあたる。はじめ
てみたときすぐ思い浮かんだのが怖い幽霊、髪の端を噛んで感情を異常に昂
ぶらせているこの女は光源氏の正妻である葵上に激しく嫉妬する年増の六条
御息所。女性の嫉妬は一度発火すると手が付けられないほど燃えさかる。

御舟の‘京の舞妓’で目が点になるほどの磁力を放っているのは舞妓の着物の青
の輝きと畳の超リアルな描写。畳の目が緻密描かれているので本物の畳をみ
ているよう。畳のショックはもう一回あった。石田徹也が親爺の卓袱台返し
を描いた絵にでてくる畳も御舟のように畳そのものだった。

東博にある安田靫彦(1884~1978)は‘御産の祷’と‘夢殿’が平常展に
ときどきでてくる。みてて楽しいのは‘御産の祷’、安田には珍しく漫画チック
な味わいのある作品で松園の‘焔’にあたる絵ともいえよう。描かれているのは
藤原道長の娘、中宮彰子の御産の安全を願う儀式。おもしろいのが御産の
苦しみを肩代わりする女官の迫真の演技。几帳の奥で阿闍梨が護摩を焚いて
加持祈祷するのにあわせて半裸でトランス状態に入っている。女性が子ども
を産むというのは大変なことだった。だから、祈りにも熱が入る。

小林古径(1883~1957)は6点くらいあるが、お気に入りは‘異端
(踏絵)’。踏絵が時代劇のワンシーンにでてくると可哀想でまともにはみれ
ないが、この絵は緊張しないように描かれている。3人の清楚な女性信者が
順番を待っている。‘桜ちゃんのあと私ね。そのあとが梅ちゃん、さらっと
キリスト様を踏んで平気でいようね。大丈夫だから’、なんて中央の霧子は心
のなかでつぶやいているのだろうか。

主要作品が7点もある前田青邨(1885~1977)は平常展の顔かもし
れない。いずれも大きな絵や長く横にのびた絵巻で繰り返し展示されるので
目に焼きついている。‘切支丹と仏徒’、‘大同石仏’、‘花売’、‘京名所八題’、
‘竹取’、‘御輿振’、‘朝鮮之巻’。魅了され続けているのが‘竹取’。かぐや姫を迎
えに来た天人たちをなんとか邪魔しようと屋根の上まであがって警護する役
人たちだが、天人たちのオーラの前ではなにもできず、ただただ昇天する
かぐや姫を驚き戸惑いながらながめているだけ。この群像表現は信貴山縁起
絵巻の飛倉をみる人々の姿、表情を連想させる。

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