徽宗と岸田劉生の猫図!
いい絵との出会いの仕方は2つある。その多くは予定通り満を持してお目当
ての展覧会へ足を運び、対面が叶えられる場合。そして、もうひとつ稀なこ
とだが出かけた展覧会でまったく予想してなかった名画に遭遇することもあ
る。今年は根津美で行われた‘北宋書画精華’(11/3~12/3)でそれが
おこった。運よくお目にかかれた絵は徽宗(1082~1135)が描いた
‘猫図’。展示はわずか3日だったので、この機会を逃したら二度と縁はない
ことは容易に想像できる。
この猫と出会ったことは今年一番の収穫だったかもしれない。なにしろ徽宗
の絵がみれるなんてことは一つの‘事件’だから、とても嬉しい。そして、猫図
をさらに横展開させるおもしろい連鎖反応が生まれてきた。ルーティンの
図録整理をして、棟方志功物語、竹久夢二物語を腹にストンと落としたので
次は岸田劉生をスタートさせようと5冊ある図録をざあーとみていた。すると、
そのなかに徽宗の絵がでてきた。一瞬模写かと思った。
正確に言うと劉生は徽宗の猫図を参考にして尾っぽを逆に右から左にむかって
曲げるようにして足の前に持ってきている。そして、猫の顔を真正面から描
いている。原画の構図がすごくいいので、劉生流の猫図も惹きこまれる。この
絵が展示されたのは2007年うらわ美で開催された‘画家 岸田劉生の軌跡’。
16年前の鑑賞なので、この猫のことはすっかり忘れていた。
この展覧会にはもう1点同じような猫がでていた。それは猫図の6年前に描か
れた‘長与善郎「或る人々」見返し’。この猫は体を丸めて寝ている。小品だが
思わず足が止まる猫である。4年前東京ステーションギャラリーであった‘没後
90年記念 岸田劉生展’に日本棋院の機関紙‘棋道’の表紙を飾る絵が出品され
たが、そのひとつ‘後庭春昼’では猫と蝶々が戯れるところが描かれている。この
生気あふれる猫はよく覚えている。
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