2023.12.26

徽宗と岸田劉生の猫図!

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   徽宗の‘猫図’(北宋12世紀)

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   岸田劉生の‘猫図’(1926年)

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   岸田劉生の‘長与善郎「或る人々」見返し’(1920年)

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   岸田劉生の‘「棋道」表紙原画 後庭春昼’(1929年)

いい絵との出会いの仕方は2つある。その多くは予定通り満を持してお目当
ての展覧会へ足を運び、対面が叶えられる場合。そして、もうひとつ稀なこ
とだが出かけた展覧会でまったく予想してなかった名画に遭遇することもあ
る。今年は根津美で行われた‘北宋書画精華’(11/3~12/3)でそれが
おこった。運よくお目にかかれた絵は徽宗(1082~1135)が描いた
‘猫図’。展示はわずか3日だったので、この機会を逃したら二度と縁はない
ことは容易に想像できる。

この猫と出会ったことは今年一番の収穫だったかもしれない。なにしろ徽宗
の絵がみれるなんてことは一つの‘事件’だから、とても嬉しい。そして、猫図
をさらに横展開させるおもしろい連鎖反応が生まれてきた。ルーティンの
図録整理をして、棟方志功物語、竹久夢二物語を腹にストンと落としたので
次は岸田劉生をスタートさせようと5冊ある図録をざあーとみていた。すると、
そのなかに徽宗の絵がでてきた。一瞬模写かと思った。

正確に言うと劉生は徽宗の猫図を参考にして尾っぽを逆に右から左にむかって
曲げるようにして足の前に持ってきている。そして、猫の顔を真正面から描
いている。原画の構図がすごくいいので、劉生流の猫図も惹きこまれる。この
絵が展示されたのは2007年うらわ美で開催された‘画家 岸田劉生の軌跡’。
16年前の鑑賞なので、この猫のことはすっかり忘れていた。

この展覧会にはもう1点同じような猫がでていた。それは猫図の6年前に描か
れた‘長与善郎「或る人々」見返し’。この猫は体を丸めて寝ている。小品だが
思わず足が止まる猫である。4年前東京ステーションギャラリーであった‘没後
90年記念 岸田劉生展’に日本棋院の機関紙‘棋道’の表紙を飾る絵が出品され
たが、そのひとつ‘後庭春昼’では猫と蝶々が戯れるところが描かれている。この
生気あふれる猫はよく覚えている。

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2023.12.03

猫図ベスト10!

Img_0001_20231203223501     徽宗の‘猫図’(北宋11世紀)

Img_20231203223501    毛益の‘蜀葵遊猫図’(南宋12世紀 大和文華館)

Img_0002_20231203223501    竹内栖鳳の‘班猫’(重文 1924年 山種美)

Img_0003_20231203223501    菱田春草の‘黒き猫’(重文 1910年 永青文庫)

Img_0004_20231203223601    加山又造の‘華と猫’(1973年)

日本の絵や伝来した中国の山水画や花鳥画とのつきあいが長くなるとを、
ときどきエポック的な鑑賞体験となる絵画との出会いがある。11/29、
根津美で‘北宋書画精華’に出品された徽宗(1082~1135)の‘猫図’に
遭遇したのもそのひとつ。今その余韻をしみじみ味わっている。猫を飼う習
慣がないのでこういう丸々した姿をよくみせるのかわからないが、圧倒的な
存在感があり人を寄せ付けないほどの神秘的なパワーさえ感じさせる。風流
天子といわれた徽宗の凄さを真に見せつけられた。

2004年に開催された‘南宋絵画’(根津美)でお目にかかった毛益の‘蜀葵
遊猫図’も忘れられない猫の絵。親猫と4匹の子猫がいるが、右にいる大きな
白い親猫とその右隣にいる子猫の目がじつに印象的。この目力の強さにちょ
っと驚く。画面左上に視線を移すと蝶がひらひら舞っているのに気づく。

明治以降に活躍した日本画家で有名な猫の絵を描いた画家は二人いる。竹内
栖鳳(1864~1942)の‘班猫’と菱田春草(1874~1911)の
‘黒き猫’。ともに重文に指定されている。栖鳳は沼津の八百屋でこの猫をみた
とき、一瞬徽宗皇帝の猫を思い浮かべたといい、もらい受けて帰って京都で
この絵を描いた。春草は猫の絵を全部で15点くらい描いているが、もっと
もいいのが永青文庫にある‘黒き猫’、鋭い目とふわふわした毛に視線が釘付け
になる。

大の動物好きだった加山又造(1927~2004)はなかでもとくに猫が
好きだった。そのため、自宅でシャム猫、ペルシャ猫などを長年飼い続けて
いた。これまで5点くらいみたが、牡丹の花と猫の組み合わせが多い。お気に
入りは‘華と猫’、猫と牡丹のダブル主役で仕上げるのが加山流。

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2023.01.31

松岡美の‘中国明清絵画展’!

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  沈南蘋の‘鴛鴦図’(清18世紀 松岡美)

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  伊東深水の‘仕舞熊野’(1962年)

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  ‘粉彩八桃文盤’(清18世紀)

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  ‘黄地粉彩牡丹文’(清17~18世紀)

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  ‘五彩花鳥文盤’(清17~18世紀)

昨年、三井記念美で大蒔絵展をみたとき、帰り際他館で行われる展覧会のチ
ラシが目にとまった。それはもう何年も足が遠のいている松岡美の‘松岡コレ
クション めぐりあうものたち’(11/1~2/5)。とても気になる絵は
中国清時代の画家、沈蘋南(しんなんぴん 1682~1762以後)が描
いた‘鴛鴦図’。12/13~2/5の展示期間が終了しそうなので東京都美の
あと白金台にある松岡美をめざした。

何年か前に美術館はリニューアル工事をしているが、その新装ぶりをみるの
はじめて。でも、関心の的は沈南蘋の華やかで精緻な花鳥画なのでキョロキ
ョロしないで2階の企画展の部屋に急いだ。鳥のなかでもとりわけ惹かれる
のが鴛鴦。若冲も描いているが、この縦長の画面に配された鴛鴦もなかなか
いい。この絵を含めてコレクションのひとつとなっている中国明清絵画はこ
こへは何度も通っているのに、どういうわけかまったく縁がなかった。蒐集
は1983年から87年の5年間に行なわれ、全部で40点になるという。
今回運よくめぐりあえた。

沈南蘋は享保16年(1731)に江戸幕府の招聘を受け長崎に来日し、
2年間滞在した。この間、長崎の唐通詞の家に生まれた熊斐(ゆうひ)に絵
の指導をした。これをきっかけに沈南蘋は日本の絵師たちに大きな影響を与
え、円山応挙もその画芸を高く評価している。これまでみた沈南蘋は濃密で
迫真的な印象が強い鶴や猿の絵によってイメージができあがっていたが、こ
の鴛鴦はモチーフによるのかとても優しい感じ。本当にいい絵をみた。

絵はこの一枚しか頭になかったのでほかはさっとみて、隣の部屋に進み、目
に馴染んだ明清陶磁の名品を楽しんだ。久しぶりなので粉彩の‘八桃文’、‘牡
丹文’、五彩の‘花鳥文’を前のめりになってみた。そして、嬉しい再会が続い
た。能面が飾ってある部屋になんと伊東深水(1898~1972)の‘仕舞
熊野’が現れた。2011年、平塚美であった回顧展でみて以来の対面。美し
い舞の姿を息を呑んでみていた。

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2017.05.22

極上の中国絵画!

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Img_0001     牧谿の‘遠浦帰帆図’(重文 南宋時代13世紀 京博)

Img_0002  伝趙昌の‘茉莉花図’(重文 南宋時代12~13世紀 常盤山文庫)

Img_0003    伝馬麟の‘梅花双雀図’(重文 南宋時代13世紀 東博)

Img_0004     伝梁楷の‘六祖破経図’(南宋時代13世紀 三井記念美)

‘茶の湯’展(4/11~6/4)には数々の名碗のほかに南宋時代に描かれた唐絵のオールスターがずらっと展示されている。かつては‘南宋絵画展’や‘東山御物展’でみたものがこの度は茶の湯に欠かせないものという本来の姿で現れた。これは深く楽しめる。

牧谿(もっけい)の絵がいくつかでている。そのなかでとくに魅了されるのは瀟湘八景図のひとつ‘遠浦帰帆図’。これまで幾度となくみたが、みるたびに感動する。心をとらえるのは何といっても風に乗ってスピードをあげて岸辺に進む帆舟の姿。陸地に立つ木々の曲がり具合をみると相当強い風が吹いている。

墨の濃淡を使って表現された動的描写は見事というほかない。画面全体をもやがかかったようにして光や大気の変化がとらえられており、風の強い緊張をはらんだ天候の気配がストレートに伝わってくる。3年前にみたときと同じように風の音が聞こえてきた。

この瀟湘八景図を含めてとりあげた4点ははじめてみるものではないが、足が自然にとまったもの。‘茉莉花(まつりか)図’は目に優しいきれいな緑色が印象的、そして馬麟が描いたとされる梅と雀の絵は巧みな構図のとりかたに心を打たれる。日曜画家でもこういう構図はつい真似てみたくなるにちがいない。

三井記念美が所蔵する伝梁楷の‘六祖破経図’も長くみていた。速い筆さばきで六祖和尚がお経をびりっと破るところが描かれている。お経を破るなんてことしていいの?禅の教えは言葉で会得するものではない、むしろそんなものはないほうがよい。この境地に至れば体で禅の悟りをえたことになる。

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2014.11.22

やっと会えた‘桃鳩図’!

Img_0001     徽宗の国宝‘桃鳩図’(北宋時代・1107年)

Img     李安忠の国宝‘鶉図’(南宋時代・12~13世紀 根津美)

Img_0003     牧谿の国宝‘漁村夕照図’(南宋時代・13世紀 根津美)

Img_0004     故直夫の国宝‘夏景山水図’(南宋時代・12世紀 山梨・久遠寺)

三井記念美にでかけ待望の‘桃鳩図’をみてきた。今ここで開かれている‘東山御物の美ー足利将軍家の至宝’(11/24まで)がはじまったのは10/5なのに、この時期まで出動を遅らせていたのはひとえにこの絵の展示を待っていたから。

10年前根津美であった南宋絵画展で‘桃鳩図’が展示されたのはわずか5日、当時広島にいてこのタイミングで上京の日程を調整できなかったので見逃してしまった。そのあといつみれるか見当がつかなかったが、ようやく対面の機会がめぐってきた。

10時ちょっとすぎに入館したが、チケット売り場にはつぎつぎと人がやってくる。‘桃鳩図’に熱い思いをいだいているひとたちが多くいるのだろう。最初の部屋の茶入なども気にはなったが、それはさらっとみてどんどん進んでいった。

2人が単眼鏡を使ってみていた。まさに桃鳩フィーバー真っ最中といったところ。思ってたよりは小さい絵。美術本では大きな図版になっているため羽の精緻な線描までみえるが、本物ではそれを肉眼で確認するのはむつかしい。単眼鏡の助けを借りないと図版のイメージにはとても近づけない。

しっかりみたのはこの絵をはじめてみたときから魅了され続けている鳩の頭のうす緑、そして目、また桃の花びらを彩る胡粉の白にもしっかり単眼鏡の焦点をあわせた。鳩の足はちょっと紛らわしい、枝をつかんでいる足なのか、足は羽の裏に隠れみえているのは枝なのか。単眼鏡でみると足だろうな、という感じ。

この絵がいい気分でみられるのは構図がとてもいいから。ふっくらとした鳩は右向きで横に寝かせたVの字のような形になっている枝と枝の間にぴったりとおさまっている。ちょっと左寄りでもまたちょっと右寄りでも目の心地よさを奪いそうなちょうどいいところに描かれている感じ。噂にたがわず傑作中の傑作だった!

展覧会の入館料1300円はこの一枚でもとをとったのであとはお気に入りの作品を気楽に楽しんだ。なんだか南宋絵画展のデジャブがおきているかのよう。根津美からはお宝の‘鶉図’と‘漁村夕照図’がきているし、強い風が吹き荒れる様を巧みに描いた‘夏景山水図’もある。ミューズに感謝!

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2014.06.27

中国絵画の楽しみ!

Img      徽宗の‘渓山秋色図軸’(北宋時代 11~12世紀)    

Img_0001     馬遠の‘杏花図頁’(南宋時代 13世紀)

Img_0003_2        高克恭の‘雲横秀嶺図軸’(元時代 14世紀)

Img_0002        王蒙の‘具区林屋図軸’(元時代 14世紀)

24日からはじまった‘台北 国立故宮博物院展’は9/15までの会期中、一部の絵画を除いていつ行っても全部見ることができる。絵画は前期(6/24~8/3)24点でている。

中国絵画は関西に住んでいる人は大阪市美でよくみられると思うが、東京では東博の東洋館が定番。以前足繁く通い図録に載っているものはほとんど目のなかにいれた。だから、東博コレクションのことを思い浮かべながら故宮からやってきた作品をみた。

徽宗(1082~1135)の山水画ははじめてお目にかかった。この風流天子の描く絵というと鳥や梅の花が印象深いが、こんな霞が漂う詩情あふれる風景もてがけていた。単眼鏡と使ってしばらくみていた。

南宋の画家馬遠の‘杏花図頁’に思わず足がとまった。馬遠はこういう花の木や松の木を横にのばして見る者の視線をひきつける画面をつくるのが得意。このため杏の生命を感じついじっとみてしまう。息子の馬麟も同じように梅の枝と笹を右から真横に描いている。

元初の文人高克恭(1248~1310)が米法山水の画風で描いた‘雲横秀嶺図軸’、目は自然に上のもこもこした山にいく、そしてすぐ池大雅の絵が頭に浮かぶ。この絵の主役はこの青緑がかった山々、下からみあげると安定した三角形構図になっており堂々としている。中央が威厳のある父親でそのまわりに母親と子どもたちが寄り添っているよう。

朱に染まる葉が目を惹く王蒙(1308~85)の‘具区林屋図軸’を心地よくみていた。視線が向かうのはところどころ丸い穴の開いた岩、その奇岩ぶりは周囲の密に描き込まれた木々や切り立った岩肌によってちょっと目立たなくなっているが、ほかのものを消してみるとかなりアヴァンギャルドな形をしている。

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2013.10.13

李在の‘琴高乗鯉図軸’と再会!

Img_0005          倪さんの‘漁庄秋せい図’(1355年)

Img_0002          李在の‘琴高乗鯉図軸’(明時代・15世紀)

Img_0003             雪舟の‘琴高仙人’

Img_0006     雪村の‘琴高・群仙図’(重文 京博)

東博で行われている‘京都展’をみたあと、東洋館へ足を運び特別展‘上海博物館 中国絵画の至宝’(10/1~11/24)を大急ぎでみた。

上海博の中国絵画コレクションは25年くらい前お目にかかった。東博だったかほかの美術館だったか忘れたが、絵画だけでなく陶磁器、仏像、工芸なども公開するいわゆる中国美術展として開催された。そのときチラシに載っている倪さん、李在、そして後期(10/29~11/24)に展示される王蒙の絵もやってきた。だから、この至宝展はサプライズ感の強い鑑賞というわけではない。

倪へいの‘漁庄秋せい図’は構図が印象深い。手前の土坡の上にすっきりとした木を数本大きく描き、そこに見る者の視線を集めそのあと川の向こうの裾野の広い山々へ誘う。この妙な遠近感がおもしろい。

絵の前に長くいたのは李在が描いた仙人が鯉に乗っている絵。これは水中から仙人が現れたところ。この琴高という仙人、あるとき龍の子をとってくるといって川のなかに潜っていった。弟子たちは身を清めて待っておれといわれたものだから、ずっと待機していた。そうすると仙人がド派手に現れた、なんと赤い鯉に乗って帰ってきた!

李在は中国に渡った雪舟(1420~1506)が影響を受けた画家。で、雪舟も琴高仙人を描いている。この絵は原画に較べインパクトがない。李在の絵よりもっとおもしろく描いたのが雪村。京博にある‘琴高・群仙図’とはじめて出会ったときは度肝を抜かれたという感じ。まるで西部劇にでてくるロデオのシーンをみているよう。鯉がこんなに仙人と相性よく描かれていると馬や牛以上に親しみを覚える。

こういう奇抜な絵を李在が描き、それを雪村がまたとびっきりおもしろい絵に仕上げた。絵画は時代を超えてコラボしわれわれを楽しませてくれる。

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2012.01.21

二度目の‘清明上河図’鑑賞!

3453_3      ‘虹橋’

3451_3      ‘虹橋’(拡大図)

3452_3     ‘城門’

3454_2     ‘魚を見る人々’

昨日、東博の‘北京故宮博物院200選’展(1/2~2/19)に特別出品されている‘清明上河図’(北宋時代 12世紀はじめ)をみるためまた上野に足を運んだ。

1/6にでかけたとき(拙ブログ1/6)は9時に門の前に並んだが、これでは列に大勢の人が並んでいると思ったので、30分早め8時半に着くことにした。これが上手くいき絵をみはじめたのは前とほぼ同じ10時15分ころ。雪は降ってこなかったものの厳しい寒さのなか1時間も立っているのはキツかったが、開館して45分でみれたのだから上々。見終わった10時半の時点で待ち時間は240分になっていた。この絵の人気は本当にスゴイ。

風俗画をみるのが好きなので、これまで有名な‘洛中洛外図屏風’2点を徹底的にみた。永狩永徳の国宝‘上杉本’は米沢市の上杉博物館へ出向き2時間くらいかけて屏風の隅から隅までみた。東博にある‘舟木本’(重文)についても、3回でかけ奥平俊六著‘洛中洛外図舟木本’(小学館 01年)に解説されている場面をすべて確認。この作業はもう大変、単眼鏡を使い屏風をなめるようにみていった。

日本にある風俗画でも地獄絵でもこういうふうにじっくりみてきたので、情報のいっぱいつまった‘清明上河図’がわずか10分程度の短い鑑賞で終わってしまうのはとても心残り。1/6のときはせかされるなか興奮状態でみたから、こまかい人物描写の目への焼き付け方は半焼き。だから、今回は‘虹橋’のところに全神経を集中させてみた。

前回不覚にもしっかりみなかったのが手前の河岸にある家の屋根に立ち手を前にあげている男。で、まずこの男の動きのあるポーズを目に焼きつけた。そのつぎがマストをおろして虹橋にさしかかっている船のまわりにできている水流のうずまき模様。図録の拡大図のようにはいかなかったが、単眼鏡を使いがっとみた。最後が橋桁から身を乗り出し大声をだしたり、布を下に投げている男たち。水夫たちの必死の形相で舵を取る姿とそれを固唾をのんでみている人々、活気にあふれる見事な場面である。

思いの丈を果たしたが、そのあとの場面も気がぬけない。城門のところまでに占い師の話をじっと聞いている男たちがいた。そして、下の河にいる魚をみている人たちの場面。せかされて単眼鏡が使えなかったが、なにやら魚のような細い々線がみえた。

最後は城門を通りすぎる駱駝の一行に視線をあわせた。前回同様あっというまの鑑賞だったが、みたいところがしっかりみれたので満ち足りた気分。2回もこの絵に導いてくれたミューズに感謝!

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2012.01.06

一生の思い出 ‘清明上河図’!

3405_2     ‘清明上河図’(部分 北宋時代・12世紀)

3404_2     ‘水村図巻’(元時代 1302年)

3406_2            ‘出水芙蓉図冊’(南宋・13世紀)

3407_2     ‘乾隆帝大閲像軸’(清時代・18世紀)

東博で1/2からはじまった‘北京故宮博物院 200選’展(1/2~2/19)をみてきた。お目当ては誰しも心がはやる中国美術の至宝中の至宝、‘清明上河図’(せいめいじょうかず 展示は1/24まで)。

昨日、みどりがめさんからとても有難い情報が入ってきた。10:15の時点でこの‘清明上河図’の待ち時間が210分とのこと、開館直後の9:35では70分だったそうだから、40分の出足の差がこんな長い待ち時間になっている。今日出かけることは決めていたが、東博に着くのはみどりがめさんと同じくらいの時間をアバウト考えていた。

いい情報をもらったので9時東博着で出動した。ほぼ予定通り9:05に門の前、まあこれくらいの列だったら上出来という人数、それから10分経ち同じくらいの数のチケットを持っている人の列ができた。当日のチケットを買う人は発売所が9:30でないと開かないから、この列に入れない。

9:25に門が開き、誘導係りに先導されてゆっくり進む。平成館は9:30にオープン。
10分くらい待って入館できた。そして、早足で前の人に続いて‘清明上河図’が展示されているところへ。ここからは2列になって5mの図巻との対面を待つ。1列になり巻のはじめにたどりついたのは10:15ころ。

ざっと待ち時間を整理すると、
9:05着→45分(館がオープンしてから)
9:15着→90分
9:25着→135分

これは平日の話だが、開館の時間あたりで入っても2時間待ちというまったくスゴイことになっている。明日からは9日が休みだから連休。8日の日曜美術館でこの絵が取り上げられるとさらに大勢の人が押し寄せるだろう。待ち時間をすこしでも少なくするためにはやはり、朝早く開館前にチケットを握り締めて並ぶしかないかもしれない。

絵の前ではどんどん進んでくれといわれるので細部を単眼鏡で頻繁にみるというわけにはいかない。画面はところどころ木々の緑が残っているところはあるが、全体としては土褐色で細部はみずらい。しかも、時間があまりないからあそこもここも集中してみれないので、どこをしっかり見るかを事前に決めておくほうが後で記憶によく残る。

2列で待っているとき、右の壁に図巻がどういう構成になっているのかを解説した同じ大きさのコピーがある。だから、まずこれを頭に入れておく。そして左の4つある映像モニターから流れてくる図巻の具体的な場面を目にやきつける。しかし、モニターの画像は拡大されているので、絵の前にくるとひとつかふたつが目にとまればいいほう。

‘清明上河図’の有名な場面は真ん中あたりの‘虹橋’。橋にいる大勢の人をみて浮世絵に描かれた‘両国橋の花火見物’を思い出した。橋にさしかかる船の上で水夫たちが大声で叫んでいるのが聞こえてくるよう。動きのある構図で人々の喧騒ぶりを見事にとらえている。この絵をみれたのは一生の思い出になる。

ほかの絵画で魅せられたのは静寂さが漂う情景が日本人の心情に合う‘水村図巻’、最後にでてくる波頭の描写が光琳や抱一の絵を思い出させる‘長江万里図巻’、精緻な筆使いが心を打つ図冊の‘出水芙蓉’、‘蛛網擒猿’、そして‘乾隆帝大閲図軸’。‘乾隆帝’の肖像画は1992年東京都美でみたのだが、絵の大きさはすっかり忘れていた。見てのお楽しみ!

この度はすべての美術品をしっかりみるのには相当なエネルギーがいる。絵画のほかにも書、陶磁器、彫刻、工芸など盛り沢山。でも、30年に一度の大展覧会だから目に気合をいれてがんばった。中国美術のすばらしさを再認識したので、いつか北京の故宮博物院を訪問してみたい。

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2010.11.01

もっと見たい中国美術の名品! 絵画

2086_2             郭熙の‘早春図’(北宋時代 1072年)

2087_2             范寛の‘谿山行旅図’(北宋時代 11世紀)

2088_2            梁楷の‘仙人図’(南宋時代 13世紀)

2089_2       蘇漢臣の‘秋庭戯嬰図’(部分 南宋時代 12世紀)

昨年のはじめ‘もう一度見たい台北故宮の名品!’(拙ブログ09/1/30)を書いたときは、08年に大改築した故宮博物院へ行こうという気分はかなりあったのだが、今は欧州旅行の優先順位を上げているためトーンダウン。でも、小松で発見された堆黒盆のお宝を目の当たりにすると、中国美術への関心がむくむくとわいてくる。

92年の故宮博訪問で強く印象に残っているのはやきものと玉の名品と珍玩。水墨画はみたことはみたが、惹きつけられて鑑賞したイメージが薄く、名画の価値がわかっていなかった。中国絵画に開眼したのは10年くらい前。東博の平常展で水墨山水画を鑑賞したり、根津美であった‘南宋絵画展’(04年)や‘明代絵画と雪舟展’(05年)を体験し、少しずつ目が慣れてきた。

日本の美術館には北宋時代(960~1127)に描かれた作品をみる機会はほとんどない。東博にあるのは南宋時代(1127~1279)以降のものがほとんどで、北宋の絵はあった?という感じ。大阪市立美に北宋の絵がいくつかあることは知ってはいるが、まだお目にかかってない。

故宮にある北宋の絵で最も有名なものは郭煕(かくき)の‘早春図’と范寛(はんかん)の‘谿山行旅図’。図版をみているだけでも岩山が垂直に切り立つすごい絵だなと感じられるのだから、本物の前では相当圧倒されそう。日本では味わうことのできない北宋の絵なのでじっくりみてみたい。

中国には南宋時代に活躍した牧谿の絵はあまりないが、馬遠や馬麟、夏珪、梁楷(りょうかい)の絵はちゃんと揃っている。これらはお馴染みさんだから、リラックスして楽しめるだろう。期待の絵は梁楷の‘仙人図’。にこっとした目がMOAにある‘寒山捨得図’(07/2/14)のそれにそっくり。

可愛い子供の絵‘秋庭戯嬰図’は‘週間 世界の美術館 国立故宮博物院’(講談社、09/12/3)に載っていた。同じくみたくてしょうがないのが美人群像画‘宮楽図’(唐時代 8~9世紀)。この絵は故宮の図録に載っているのに、みたことをすっかり忘れているのだからなんとも情けない。次回の訪問ではしっかり目に焼きつけるつもり。

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