2012.12.23

満足のキメ手はリファレンス作品! 遠近法の名画(2)

4588_3          ユトリロの‘コタン小路’(1910~11年 パリ ポンピドー)

4587_3 ホッベマの‘ミッデルハレニスの並木道’(1689年 ロンドン ナショナル・ギャラリー)

4589_3           コローの‘ドウエの鐘楼’(1871年 パリ ルーヴル美)

4590_2     モネの‘オンフルールのバヴォール通り’(1864年 ボストン美)

4591_2     デ・キリコの‘イタリア広場’(1956年 ケルン ルートヴィヒ美)

日曜画家が街の風景をうまく描こう思えば遠近法を使った構図にするのがまず無難なところ。これだと下手くそだねとは言われない。

風景画の名画で遠近法とくっついてすぐ思い浮かべるのはユトリロ(1883~1955)の代表作‘コタン小路’、モンマルトルのあの急な階段を登った経験のある方なら、ここに描かれた情景に親近感を覚えるかもしれない。今でも大勢の人が道を歩いているわけではなく、昔ながらの静かな通り。

17世紀に活躍したオランダの風景画家ホッベマ(1638~1709)は絵の題材が宗教ではなく風景だから古い時代の画家という感じがしない。村の光景のなかで並木道ほど遠近法で描くのにうってつけなモチーフはない。道の脇に植えられた木をみると結構高い。こんなに高い木が中央の先の先ではあんなに小さく描かれている。この空間の広がりを感じられるのが遠近法構図の魅力。

コロー(1796~1875)の‘ドウエの鐘楼’は08年にあった‘コロー展’(西洋美)に出品された作品のなかでは強く印象に残っている一枚。手前の建物は左右とも画面にちらっと描かれるだけ。建物をこういう風に大胆にカットするのはなかなかできない。アカデミーではこういう構図はNGと決まっている。

道は鐘楼のあたりで左に曲がっているが、モネ(1840~1926)が24歳のとき描いた‘オンフルールのバヴォール通り’では建物の影が映った道は右にゆっくりカーブしている。向こう側に歩いている人たちの配置がじつに上手く、ついふらふらと後についていきそう。

デ・キリコ(1888~1978)とシュルレアリスムのデルヴォーの作品では遠近法で描かれた背景が特徴。90点以上描いたといわれるデ・キリコの‘イタリア広場’、建物や大理石彫刻の長くのびる影が謎めいた雰囲気を醸し出しており、不安な気持ちがじわーっと体を包み込んでくる。

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2012.12.22

満足のキメ手はリファレンス作品! 遠近法の名画(1)

4583 ダ・ヴィンチの‘最後の晩餐’(1495~98年 サンタ・マリア・デラ・グラツィエ修道院)

4585     マザッチオの‘聖三位一体’(1426~28年 サンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂)

4582     ファン・エイクの‘ドレスデンの祭檀画’(1437年 ドレスデン国立美)

4584          ラファエロの‘マリアの結婚’(1504年 ミラノ ブレラ美)

4586     ティントレットの‘聖マルコの奇蹟’(1562年 ミラノ ブレラ美)

西洋絵画の特徴のなかでまず思い浮かべるのは遠近法を使った構図。消失点が画面のどこにあるかがすぐわかる絵に出会うと奥行きを感じてなにか心が落ち着く。

この遠近法の安定感が心を打つ名画として最も有名なのがダ・ヴィンチ(1452~1519)の‘最後の晩餐’。6年前、ミラノで修復が終わったあとのこの絵と再会したが、はじめてみたときとは鑑賞方法ががらっと変わり、絵の前にいられるのは15分だけ。今でも予約をとるのが大変そう。

フィレンツェのサンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂内に飾ってあるマザッチオ(1401~1428)の‘聖三位一体’はイリュージョン絵画そのもの。磔になっているキリストの後ろの壁の凹みに驚愕した。

ファン・エイク(1390~1441)の精緻な描写はみればみるほど惹きこまれるが、遠近法の構図が強く印象に残っているのはドレスデン国立美でみた‘祭檀画’。この三連画はとても小さく、王座の聖母子が描かれた真ん中のパネルは縦33cm、横28cmしかない。小品だがその色彩の鮮やかさと人物の衣装や敷き物の緻密な筆使いには心を奪われる。

ミラノのブレタ美で出会ったラファエロ(1483~1520)とティントレット(1519~1594)の絵も画面構成が忘れられない一枚。‘マリアの結婚’は若きラファエロが師匠のペルジーノの画風を真似て描いた作品。広い広場の奥にはドーム式の建物がみえる。

ティントレットは消失点を画面の中心からずらし左の奥にもっていくのが特徴、これにより動きが生まれダイナミックな情景描画になっている。この人物の躍動感と大胆な構図がティントレットの一番の魅力。

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2012.12.17

満足のキメ手はリファレンス作品! 準ビッグネームの傑作(2)

4572     カイユボットの‘パリ、雨の日’(1877年 シカゴ美)

4571     シニャックの‘朝食’(1886~87年 オッテルロー クレラー=ミュラー美)

4575     シスレーの‘朝日を浴びるモレ教会’(1893年 スイス ヴィンタートゥール美)

4574     ドンゲンの‘画家の妻の肖像’(1911年 アムステルダム ゴッホ美)

4573     ドランの‘ロンドンブリッジ’(1906年 NY MoMA)

カテゴリーの‘印象派’のなかに入れている画家はマネやポスト印象派などを含めて15人くらい。野球でいうと1番から9番までの先発メンバーがビッグネームの画家で控えの選手が準ビッグネーム。

先発メンバーは一番からゴッホ、ルノワール、モネ、マネ、セザンヌ、ゴーギャン、ドガ、ロートレック、スーラ、そしてベンチにいるのはピサロ、シスレー、カイユボット、シニャック、レイセルベルヘ、モリゾ、カサット。

その準ビッグネームの作品でこれまで最も感激したのはカイユボット(1848~1894)の‘パリ、雨の日’。08年シカゴ美でこの絵をみた時は見事に描かれた都市風景に腰が抜けるほどの衝撃を受けた。図版ではイメージできなかったが、絵は縦2.12m、横2.76mもあるビッグサイズ。ガイドさんが事前の説明で‘必見の絵ですよ!’と言っていたことが即納得できた。

昨年訪問したクレラー=ミュラーでもサプライズの絵があった。シニャック(1863~1935)の‘朝食’。これまでみたシニャックの点描画は山の風景とか港の光景を描いたものばかり、これほど大きく描かれた人物画があったとは。200%KOされた。

シスレー(1839~1899)の作品をみる機会はこれまで多くあったが、モネのように体が震えるようなことがないというのが正直なところ。ただ1点、光をとても感じる絵があった。それは2,3年前世田谷美で開催された‘ヴィンタートゥール美展’に出品された‘朝日を浴びるモレ教会’。このくらい強く光がとらえられていると印象に残る。

オランダのフォーヴ派、ドンゲン(1877~1968)は関心を寄せている画家のひとり。国立新美であった‘大エルミタージュ美展’では幸運にも1点展示してあった。過去体験した作品は20点くらい。だから、まだまだ見たりない。ゴッホ美にある妻の肖像画はドンゲンを好きになるきっかけとなった一枚。今のところこれがベストワン。

同じフォーヴイズムのドラン(1880~1954)やブラマンクには惹かれてない。で、これまでとりあげてこなかった。といってもぐっとくるのがないわけではない。お気に入りはドランの‘ロンドンブリッジ’とポンピドーにある‘二艘の小舟’。この2点は例外、‘ロンドンブリッジ’に会ったのは20年前だからもう一度くらいはみておきたい。

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2012.12.15

満足のキメ手はリファレンス作品! 準ビッグネームの傑作(1)

4566  ジョルダーノの‘フィネウスを石に変えるペルセウス’(1680年 ロンドン国立美)

4569_2     グエルチーノの‘聖ペトロニラの埋葬’(1621~23年 ローマ カピトリーノ美)

4567     ホントホルストの‘大祭司の前のキリスト’(1617年 ロンドン国立美)

4568_2     ドメニキーノの‘ディアナの狩猟’(1616~1617年 ローマ ボルゲーゼ美)

西洋絵画の歴史のなかで名をなした画家、例えばダ・ヴィンチとかピカソのようないわゆるビッグネームの画家はその作品が美術の教科書にでてきたり、美術館で開かれる展覧会の目玉の絵になったりするから、絵画ファンだけでなく普通程度の関心で絵に接している人でも頭のなかに入っている。

美術館に展示されている作品は普通はこういう第一列にいる画家と次の二列にいる画家、準ビッグネームの作品まで。数でいうと二列の画家のほうが多いが、美術館めぐりをしていると時々準ビッグネームの作品でびっくりするような傑作と出くわすことがある。今日はそんなサプライズの作品をいくつか。

ロンドンのナショナルギャラリーで忘れられない体験があった。その絵はジョルダーノ(1634~1705)の‘フィネウスとその一味を石にするペルセウス’。美術館に飾ってある神話画のなかで一番大きい絵で縦2.75m、横3.66mある。

ジョルダーノはブランド美術館では展示されているので一応名前は知っている。だが、絵の前に長くいたことはなかった。ところが、この絵は違った。ええー、ジョルダーノにこんないい絵があったの!という感じ。メドゥーサの首を持つペルセウスの迫真のどや顔に視線が釘付けになる。

カラヴァッジョの影響を受けたグエルチーノ(1591~1666)もジョルダーノ同様、‘聖ペトロニラの埋葬’と出会うまではそれほど熱心にみない画家だった。2年前訪問したカピトリーニ美での一番のお目当てはカラヴァッジョの2つの絵だったが、同じ部屋に想定外のオマケがひょいと現れた。背景の空と衣装の目の覚めるような青、そして動きのある人物を斜めに配置する巧みな構成、これには200%参った。日本に帰って調べてみると、この‘聖ペトロニラの埋葬’は最高傑作だった。たまにはこんな大収穫がある。

ホントホルスト(1592~1657)はとても気になる画家。今年国立新美であった‘大エルミタージュ美展’で念願だった‘幼少期のキリスト’をみることができた。ロンドンのナショナルギャラリーにある‘大司祭の前のキリスト’とこの絵をみたから満ち足りた気分になる。ホントホルストはカラヴァッジョとラ・トゥールの光の描写をミックスし独自の作風をつくりだした。

予約をとってボルゲーゼ美に入館された人は用意した感動の袋が大きく膨らんだことにちがいないが、そのなかにはドメニキーノ(1581~1641)の傑作‘ディアナの狩猟’も多分入っているだろう。こんなに美しくて楽しいギリシャ神話の絵は滅多にない。

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2012.12.14

満足のキメ手はリファレンス作品! 黒の画家

4563     マネの‘すみれの花束をつけたベルト・モリゾ’(1872年 オルセー美)

4562          ルノワールの‘桟敷席’(1874年 ロンドン コートールド美)

4561        ゴヤの‘ドーニャ・イサベル・デ・ポルセール’(1805年 ロンドン国立美)

4564     ゴッホの‘じゃがいもを食べる人たち’(1885年 アムステルダム ゴッホ美)

4565     スーラージュの‘絵画 1985’(1985年 パリ ポンピドー)

近代に入ってから活躍した画家が描いた絵で黒が強く印象づけられる作品は3点がすぐ思いつく。黒の名手、マネ(1832~1883)のベルト・モリゾの肖像画、ルノワール(1841~1919)の‘桟敷席’、そしてゴヤ(1746~1828)のマハの衣装を着ている女性の肖像画。

2年前三菱一号館美で開館記念の‘マネ展’があり、モリゾを描いた作品を‘すみれの花束’など5点みた。モリゾの写真を過去みたかどうか記憶が定かではないが、絵をみるかぎりこの女性が多くの男性の心に火をつけるとびっきりの美貌の持ち主であったことが容易にわかる。そして、こういう知的な美女によく似合うのが黒い衣装。黒に引き立てられた白い顔がとても神々しく感じられる。

パレットから黒の絵の具を追放した印象派だが、ルノワールの初期の作品のなかには黒の傑作が1点ある。それがロンドンのコートールド美にある‘桟敷席’。これまで数回紹介したが、My好きなルノワールのベスト5に登録しており憧れの作品として不動の地位を築いている。

スペインの巨匠ゴヤ(1746~1828)の描く肖像画には名画が揃っているが、‘ドーニャ・イサベル・デ・ポルセール’も体が熱くなるくらい魅力に富んだ一枚。黒いレースから透けて見える肌のピンク色の輝きに思わず目が釘付けになる。

ゴッホ(1853~1890)がオランダにいた頃描いた作品のなかで群をぬいていいのが‘じゃがいもを食べる人たち’。働く人々を愛しつづけたゴッホは農家におけるつつましい食事の光景を見事に描写している。

‘黒のペインター’と呼ばれるフランスの抽象画家、スーラージュ(1919~)。黒の絵としてこれほどわかり易い絵はなく、大きな画面はピアノの鍵盤のような4つのパネルで構成されている。かすれぎみに走る白い線は決して整然と引かれていないが、それがかえって何か不気味なものの存在を暗示させる。

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2012.12.13

満足のキメ手はリファレンス作品! 魅了される紫

4556     ウェイデンの‘十字架降下’(1435年 マドリード プラド美)

4557     シャガールの‘ヴァイオリン弾き’(1923~24年 NY グッゲンハイム美)

4558     カンディンスキーの‘黄ー赤ー青’(1925年 パリ ポンピドー)

4559     モネの‘睡蓮 水のエチュード’(1916~26年 パリ オランジュリー美)

4560         ローランサンの‘シャネル嬢の肖像’(1923年 オランジュリー)

高貴なイメージの強い紫が多く使われた絵画に出会うことはとても少ない。だから、古典絵画でも近代絵画でも紫が印象的な作品はすぐ思い浮かぶ。

フランドルで活躍した画家ウェイデン(1399~1464)に開眼する気きっかけになった絵が‘十字架降下’。注目の紫は右端にいるマグダラのマリアの衣装の色。古典絵画でこれほど鮮やかな紫はほかにみたことがない。プラドでこの絵と遭遇したことは一生の思い出になった。

紫が最初に強く心のなかに入ってきたのはシャガール(1887~1985)、日本で行われた回顧展は見逃さずにみてきたが、画面には紫がよくでてくる。そのなかでとくに印象深いのは‘ヴァイオリン弾き’。顔と手が緑で服はメルヘンチックな紫。これはグッゲンハイムが所蔵するものだが、以前鹿児島の長島美を訪問したとき別ヴァージョンに出会った。

シャガール同様、紫の画面が連想されるのが抽象絵画のカンディンスキー(1866~1944)、画像は最も気にっている‘黄ー赤ー青’。これをはじめてみたときはその完璧な抽象美に体が200%震えた。中央の黄色や青で描かれた円や四角のフォルムをぼかしのきいた紫の色面が取り囲んでいる。これをみるたびにカンディンスキーは本当にスゴイなと思う。

この絵はポンピドーに展示してあるが、パリで紫を体全身で感じられるところがもう一つある。それはモネ(1840~1926)の大作‘睡蓮’とローランサン(1883~1956)の作品があるオランジュリー美。8の字型の二つの部屋に飾ってある壁画の前に身をおくと睡蓮や柳を引き立てる水面の濃い青や紫に体がつつみこまれ心がとても安らぐ。

ローランサンの描く女性のイメージは紫とうすピンク色。シャネルはこんな夢みるようなほわっとした女性とは違うが、このロココの近代版といった感じの肖像画にはぞっこん参っている。

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2012.12.05

満足のキメ手はリファレンス作品! 深く安らぐ緑

4533_2       グレコの‘受胎告知’(1596~1600年 マドリード プラド美)

4529_2   ファン・エイクの‘アルノルフィーニ夫妻の肖像’(1434年 ロンドン国立美) 

4531_2         モネの‘カミーユ(緑l衣の女)’(1866年 ブレーメン美)

4530_2     アンリ・ルソーの‘蛇使いの女’(1907年 パリ オルセー美)

4532_2     オキーフの‘ジャック・イン・ザ・プルピットⅣ’(1930年 ワシントン国立美)

今年も残り1ヶ月となり心は来年開催される西洋絵画の展覧会のほうへ向かっている。あと40数日ではじまるのが待望の‘エル・グレコ展’(1/19~3/31 東京都美)。これを皮切りに1ヶ月ごとにビッグな展覧会が続いていく。

ざっとあげてみると
‘クラーク・コレクション展’(2/9~5/26) 三菱一号館美
‘ラファエロ展’(3/2~6/2) 西洋美
‘ベーコン展’(3/8~5/6) 東近美
‘ルーベンス展’(3/9~4/21) Bunkamura
‘貴婦人と一角獣展’(4/25~7/15) 国立新美

グレコ展は1986年に西洋美で行われたグローバルクラスの大回顧展(作品数49点)を上回る作品が集結するというのだから、否が応でもテンションがあがる。じつはこの展覧会をみてグレコ(1541から614)に開眼し、緑がMyカラーになった。目玉の作品はプラドからやって来た有名な‘受胎告知’。大天使ガブリエルのまとった緑の衣を釘付けになってみた。

普通の回顧展だと同じ題材の作品は2点がいいとこだろうが、‘受胎告知’はほかに大原美にあるものなどが5点でていた。大原美の絵ではガブリエルの衣は黄色になっており、グレコはこの天使を二つの色で描いている。

ロンドンでみたファン・エイク(1390~1441)の‘アルノルフィーニ夫妻の肖像’も緑が印象深い作品。左にいる夫の顔は何度みても好きになれないが、妻の誠実そうな表情と緻密に描かれた緑の衣裳が心を安らかにしてくれる。

2年前みたモネ(1841~1926)の回顧展でサプライズの作品のひとつが‘緑衣の女’。これは図版では想像できない大きな絵で黒のストライプが縦にはいる緑の衣裳がやや後ろをむきかげんなカミーユの存在感をいっそう引き立てていた。この緑は忘れられない。

つい最近‘美の巨人たち’でとりあげられたルソー(1844~1910)の‘蛇使いの女’、この絵は2年前日本ではじめて公開され美術ファンをおおいに喜ばせた。ジャングルの生命力を表した緑のグラデーションには毎度々強く惹きこまれる。また、画面の構成が本当にすばらしい。

オキーフ(1887~1986)はホッパーやホーマーとともに大好きなアメリカの画家。4年前、アメリカの美術館を回った際ワシントンナショナルギャラリーで対面した‘ジャック・イン・ザ・プルピットⅣ’が特◎緑の絵リストに加わった。この美術館にはこのシリーズがほかにもあるので、次回はこれらがみれることを祈っている。

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2012.12.04

満足のキメ手はリファレンス作品! 赤の衝撃

4524_3          グレコの‘聖衣剥奪’(1577~79年 トレド大聖堂)

4526_2          モネの‘ラ・ジャポネーズ’(1875年 ボストン美)

4525_2     マティスの‘赤い部屋’(1908年 エルミタージュ美)

4527_2     ティツィアーノの‘聖母被昇天’(1516~18年 ヴェネツィア フラーリ教会)

4528_2     フーケの‘聖母子と天使たち’(1452年 アントワープ王立美)

色のなかで一番目立つのは赤、この色は膨張し飛び出してくるような感じがするので絵画をみたときに受ける衝撃度は最も大きい。

そうした赤の衝撃でとりわけ大きかった作品5点が体験した順に並んでいる。はじまりはトレドで遭遇したグレコ(1541~1614)の‘聖衣剥奪’。中央に描かれたキリストが身につけている真っ赤な衣の輝きとボリューム感に目を奪われた。言葉が出ず、ただただみつめていた。

モネ(1840~1926)が妻のカミーユに日本の赤の着物を着せ描いた‘ラ・ジャポネーズ’と出会ったのは今から20年前のこと。その後、08年にまたみる機会があった。その間に日本にもやって来たような気がするが?ちょっと記憶があやふや。この裾の大きく広がった着物は赤のインパクトが強いだけでなく描かれた武者の意匠にも目が吸い寄せられた。

99年エルミタージュ美を訪問したとき、マティス(1869~1954)はレンブラント、ゴーギャンとともに重点鑑賞画家だった。その一級のコレクションが展示されている部屋では‘赤の部屋’、‘ダンス’、‘音楽’、‘画家の部屋’など画面の多くを占める鮮やかな赤に圧倒されっぱなしだった。今年幸運なことに‘赤の部屋’とまた会うことができ、マティスが赤の画家であることを再認識した。

この年、もう一度サプライズの赤に遭遇した。それはヴェネツィアのサンタ・マリア・グロリオーザ・デイ・フラーリ教会の祭檀画‘聖母被昇天’。描いたのはティツアーノ(1490~1576)、美しい赤の衣服を纏ったマリアの姿をみるのが長年の夢だったので天にも昇るような気持ちでながめていた。

フーケ(1420~1481)の‘聖母子と天使たち’は1年前にみたばかりだから、その衝撃の余韻が体のなかにまだ残っている。視線が集中するのは聖母子よりまわりにいる天使たち。てかてか光る赤一色の体と翼に目が点になった。赤い塗料の入った大きな缶のなかに天使を一人ずつどぼっと漬けて引き上げたような感じ。この絵と対面したことは一生の思い出。

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2012.12.03

満足のキメ手はリファレンス作品! 吸い込まれる青

4519_2  ベリーニの‘聖カタリナとマグダラのマリアのいる聖母子’(1490年 アカデミア美)

4520_2  フェルメールの‘手紙を読む青衣の女’(1663~64年 アムステルダム国立美)

4521_2        アングルの‘ド・ブロイ公爵夫人’(1851~53年 メトロポリタン美)

4522_2     ゴッホの‘夜のカフェテラス’(1888年 オッテルロー クレラー=ミュラー美)

4523_2     クラインの‘海綿レリーフ’(1958年 セゾン現美)

海外にある美術館に何度も行くことはできないが、理想をいえば2回くらいは訪問したい。はじめてのときは興奮しているうえ、展示室のレイアウトがわからないので絵に対する集中力がどうしても少し落ちる。これが2度目となると、絵のある場所が頭に入っているので気持ちに余裕があり作品をじっくりみることができる。

10年ヴェネツィアのアカデミア美を再訪したとき、サプライズの絵があった。それはジョヴァンニ・ベリーニ(1434~1516)の‘聖カタリナとマグダラのマリアのいる聖母子’。この絵は一度みているのにこんなにすばらしい絵だったのか!というくらい気分が高揚した。画像では色がうまくでてないのが残念だが、真ん中のマリアの着ている衣服の青がもうすごい力をもっていて、吸い込まれそうになった。それ以来、ベリーニの絵に遭遇したときはこの傑作のことを思い出すようになった。

今年の1月、Bunkamuraでフェルメール(1632~1675)の作品が3点も公開された。日本ではフェルメールは特◎人気の画家だから、館内には大勢の美術ファンがおり息を呑んでみている。皆さんと同じようにじっくりみていたが絵にぞっこん惚れているからではない。関心を寄せているのは修復されオリジナルのフェルメールブルーを取り戻したという‘手紙を読む青衣の女’の青い衣服だけ。

フェルメール全作品をみて画面のなかで青の占める割合が多いのはこの絵と‘牛乳を注ぐ女’。‘牛乳’のほうはMy好きなフェルメールの上位に入っているのに対し、‘青衣の女’は関心の薄い作品だがこの青にはぐっと惹きつけられる。やわらかい光にあった青は詩的な雰囲気をかもし出しており心を揺すぶる。

アングル(1780~1863)の描いた夫人の青のドレスをみたときの感動は今でも忘れられない。絹のつやつやした質感描写がすばらしく、言葉を失なってみていた。こういう女性が目の前に現われたら気分がぐっと静まり、背骨がしゃんとするだろう。

青は広がりを感じさせる色、天体の青色という点ではゴッホ(1853~1890)の‘夜のカフェテラス’とクライン(1928~1962)の‘海綿レリーフ’に表現された青はつながっているかもしれない。ゴッホの夜景図はどれも魅力にあふれているが、この‘夜のカフェテラス’の夜空の青はとりわけ心をとらえて離さない。

クラインが創造する神秘的な青につつまれた深海や遠い星雲の世界に誘われていくと、その密度の濃い青で心のひだにたまった不純物がきれいに洗浄される感じがする。

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2012.12.02

満足のキメ手はリファレンス作品! 黄色の画家

4517_2     ゴッホの‘収穫’(1886年 アムステルダム ゴッホ美)

4518_2     ターナーの‘ノラム城、日の出’(1845年  ロンドン テートブリテン)

4516_2     モネの‘睡蓮の池’(1917~19年 パリ マルモッタン美)

4515_2     ルノワールの‘フェルナンド・サーカス’(1879年 シカゴ美)

Myカラーは緑&黄色、だから黄色が心を打つ絵には特別の展示室が用意されている。黄色を自分の色にしているのはゴッホが好きだからで、緑はエル・グレコの影響。

黄色の画家と呼ばれるゴッホ(1853~1890)、画風の特徴である黄色が最も輝いているのがアルル時代に描かれた作品、ゴッホがアルルにいたのは1888年の2月から1889年の4月、1年3ヶ月過ごし油彩だけで200点以上描いた。すごいスピードで描き続けたが、生まれてくる作品はどれもいい絵ばかり。

イエローパワー全開で描かれ画面の多くが黄色で占められ作品のうち200%KOされるのがゴッホ美にある最強トリオ、‘収穫’、‘黄色い家’、そして全部黄色の‘ひまわり’。また、日本に何度もやって来てゴッホファンを楽しませれくれた‘太陽と種まく人’(クレラー=ミュラー美)に描かれた太陽の輝く黄色も忘れられない。

ゴッホは変色しやすい絵の具であるクロムイエローにいろいろ工夫を加え、鮮やか黄色を駆使して自然や花の生命力を生き生きと描いた。このクロムイエローをゴッホより前に使った画家がいる。イギリスの国民的風景画家ターナー(1775~1851)。

ターナーも黄色の画家といっていいくらいその作品には黄色が印象深いものが多い。ターナーは新らしもの好きで、1809年にはじめて製造されたクロムイエローを早速作品に使った。そのなかでとくに気に入っているのが‘ノラム城、日の出’。

この絵をはじめてみたのは日本、今から14年前に東京都美で‘テート・ギラリー展’があり、‘海の怪物のいる日の出’などと一緒に展示された。ぼあーっと輝く丸い黄色がとても目に心地よかった。

モネ(1840~1926)の連作‘睡蓮の池’のなかで睡蓮が全部黄色で描かれたのが1点ある。パリのマルモッタン美を訪問したとき、有名な‘印象、日の出’を感慨深くみたあと絵の前で思わず足がとまったのがこの黄色の睡蓮、絵のインパクトの強さでは‘印象、日の出’を上回った。嬉しいことにこの絵は03年に日本で公開されたので、モネが好きな方はみられたかもしれない。

ルノワール(1841~1919)もモネ同様黄色の絵ですぐ頭をよぎるのは少なく、今のところ2点のみ。08年シカゴ美でみたサーカスの軽業師姉妹を描いた‘フェルナンド・サーカス’と黄色の衣服と明るい表情が魅力的な‘アリーヌ・シャリゴの肖像’(フィラデルフィア美)。数は少なくてもMyカラーの作品だからいつも別格扱いにしている。

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