2015.06.04

日本の美! 紫陽花

Img     今が見ごろの紫陽花

Img_0002     葛飾北斎の‘紫陽花と燕’(1833~34年)

Img_0003 酒井抱一の‘立葵紫陽花に蜻蛉図’(1823年 三の丸尚蔵館)

Img_0001     速水御舟の‘翠台緑芝’(左隻 1928年 山種美)

梅雨時になると立ち止まってしみじみ見てしまうのが紫陽花、我が家の周りでも2,3か所でメロンパンのような愛嬌のある丸い花を咲かせている。色はうす青の花と白の花があるがお気に入りはうす青のほう。

紫陽花をよく描いた画家ですぐ思い出すのが山口蓬春(1893~1971)、過去にも何度かとりあげたが、東近美、山種美、そして葉山の山口蓬春記念館に心を奪われる作品がある。この紫陽花の画家、蓬春についで紫陽花好きなのが江戸琳派の酒井抱一(1761~1828)。

三の丸尚蔵館が所蔵する絶品の花鳥画のひとつを飾る‘立葵紫陽花に蜻蛉図’をはじめとても品のいい紫陽花が数点ある。生き生きとした立葵の赤とちょっと控えめな紫陽花のうす青が見事に融和しすっきりとした花鳥画に仕上がっている。

抱一よりひとつ年上の葛飾北斎(1760~1849)が描いた傑作が‘紫陽花と燕’、これは天保初年(1833~34)頃描いた大判花鳥シリーズのなかでもとくに惹きつけられる一枚。中央にどんとおかれた大きな紫陽花の脇に燕が急降下してくるいう意表を突く構図が心をとらえて離さない。

速水御舟(1894~1935)の紫陽花の描き方も忘れられない。北斎とはちがって御舟は紫陽花を兎と組み合わせた。御舟は兎が好きだったのだろうか?モチーフはともかくこの絵には琳派的な装飾性を狙った表現が強くでている。平面的に描かれた紫陽花はデザインのような印象をうける。

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2014.12.17

心にとまった言葉! ‘見飽きない光景 見やすい光景’

Img       ‘洛翠庭園’(京都南禅寺界隈別荘群)

Img_0001          ‘流響院’

Img_0002          ‘對龍山荘’

世の中にはお寺巡りや庭園巡りをするのが楽しみという人がたくさんいる。こういう人にとって京都や奈良は自分の庭みたいなもので、世間にはあまり知られていない穴場的なところにも精通している。

京都へは毎年1回くらいは出かけており、訪問した寺院の数も増えてはいるがみたい名所旧跡はまだいっぱい残っている。例えば予約をとらないとみれない桂離宮や修学院離宮、そして苔寺などもまだ縁がない。さらに夢の空間もある。それは南禅寺界隈の別荘群。

今年この南禅寺界隈別荘群がNHKと‘美の巨人たち’でとりあげられた。NHKは2010年にも同じテーマで番組を制作しており、今回はパート2、3月と7月2回放送された。‘美の巨人たち’がスポットをあてた庭園は明治に活躍した庭師小川治兵衛(七代目 1860~1933)が作庭した‘洛翠庭園’。

南禅寺界隈にある庭園は一般公開されてないので、これからもまず見る機会はない。だから、その庭園の様子はこうしたTVの美術番組で映像として目にするだけ。実際に庭を体験しなくてもTVの画質はとてもいいから、その絶景の光景を間接的でも楽しめる。

‘洛翠庭園’で心にとまる話がでてきた。庭を構成する石、水、樹木、芝、苔などはすべて視線を下に向けるようにつくられている。十一代小川治兵衛さんはその理由をこういう。

‘見飽きない光景をつくりたいということと同時に見やすい光景とつくろうと思っているから。斜め上をみているとしんどくなる。で、まっすぐ直線を見る、これもしんどい。一番リラックスして見える目線というと、ちょっと斜め下で見ていると長く見ていられるしリラックスでき心が落ち着くんです’

この‘洛翠庭園’を1909年に作った小川治兵衛の言葉、これが味わい深い。
‘人間は困ったとき目線が自然と下がり足元をみる。すると例えば、蟻のような細かい生き物や土やそんなものが目に入り観察できる。それは自然の摂理がわかることであり、人の気持ちもわかることに結びつく’

庭づくりは奥が深い。‘洛翠庭園’やほかの‘流響院’や‘對龍山荘’といった名園をみることは叶わず夢のままに終わりそうだが、小川治兵衛の作庭の精神にふれることができたのは大きな収穫。これからどこかで庭をみたときはこの話が頭をよぎるだろう。

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2014.12.01

日本の美! 秋の紅葉 光琳 乾山 抱一 其一の楓図(7)

Img_0001      尾形光琳の‘十二カ月歌意図屏風 九月’(17世紀)

Img_0002           尾形乾山の‘楓図’(18世紀)

Img     酒井抱一の‘朱楓図屏風’(1818年)

Img_0003     鈴木其一の‘四季花木図屏風’(左隻部分 19世紀 出光美)

日本の花の美しさをモチーフにして描かれた美術品をシリーズ化した‘日本の美!’、秋の定番紅葉はこれまで6回とりあげた。お気に入りのものはまだある。新たに4点を琳派から選んでみた。

琳派といえば今日の新聞に雑誌‘和楽’の大きな広告がでていた。1.2月号の特集は琳派、‘なぜ琳派はこんなに人気なのか!?’ときた、琳派狂いにはたまらないフレーズ、興味をそそる内容のひとつが‘2015年 琳派展覧会カレンダー’。

来年は琳派が生まれて400年、また光琳没後300年の節目の年なので大規模な展覧会が行われる(京博?)ことはチラッと聞いたが正確な情報はつかんでいない。完全網羅したとあるから複数の美術館で琳派展があるのだろう、早速本屋へ行って確認したい。

尾形光琳(1658~1716)の楓の絵は2年前根津美であった光琳展ではじめてお目にかかった。縦長の画面に上から垂れさがってくる楓の枝振りがなかなかいい。弟乾山(1663~1743)の楓は光琳とは逆に上のほうにむかってのびている。紅葉のグラデーションがよく表現されていてとても魅了される。2点はともに個人のコレクション、だから二度目の鑑賞はないだろう。

金地の背景に描かれた楓の赤、川の群青、そして土坡の緑青が鮮やかに映える‘朱楓図屏風’、酒井抱一(1761~1821)が描いたこの屏風をはじめてみたときは立ち尽くして言葉がでなかった。太い幹の楓をどんとまんなかに配置するという意表をつく構図が心を突き動かす。

師匠のこの構図を意識したようなの鈴木其一(1796~1858)の‘四季花木図屏風’も魅力いっぱい。抱一の紅葉がかたまっているのに対し、其一は一枚々を離し濃淡をつけスッキリみせている。出光がこの屏風を所蔵し、根津美がもう一つの傑作‘夏秋山水図屏風’をもっている。ブランド美術館にはやはりいい絵がある。

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2013.10.02

日本の美 萩! 平安から描き継がれてきた秋の定番モチーフ

Img_0002     国宝‘源氏物語絵巻 御法’(復元模写 12世紀前半 五島美)

Img     長谷川等伯の‘萩芒図屏風’(右隻 17世紀初期 京都・相国寺)

Img_0005     酒井抱一の‘四季花鳥図巻’(部分 1818年 東博)

Img_0001     鈴木其一の‘萩月図襖’(19世紀 東京富士美)

風に吹かれる萩やすすきをみると秋の到来を実感する。萩もすすきも平安時代のころから描かれてきた。

名古屋にある徳川美と東京の五島美が所有する国宝‘源氏物語絵巻’、その復元模写19図が2005年11月徳川美でオリジナルと一緒に展示された。この模写は200%大拍手の労作、以来定期的にながめいい気持ちになっている。‘宿木三’と‘御法(みのり)’に心を揺すぶる萩がでてくる。

光源氏の妻、紫の上が亡くなる場面が描かれている‘御法’、桔梗とともに咲き誇る萩は茎が風に吹かれて大きくまがっているのが印象的。死がそこまで忍び寄っている紫の上のはかない命を暗示しているよう。

長谷川等伯(1539~1610)は六曲一双の金地の屏風に萩(右隻)とすすき(左隻)を装飾的に描いている。沢山描かれた萩は右から左へだんだんと横に傾いていく。背景の残された金地の部分のとりかたが絶妙なのでゆたっりとした気分で眺められる。こういう構成は並みの絵師には描けない。右の上では萩のてっぺんをあえて画面からはみださせ、広がりのある萩の姿にみせている。

酒井抱一(1761~1828)の‘四季花鳥図巻’は東博の‘秋の特別公開’(9/18~29)に展示されていたから楽しまれた方も多いかもしれない。大きな月と萩の組み合わせはこの図巻の見どころのひとつ。月にかかるように上から垂れさがる紅白の萩、そこに鈴虫がいる。まさに秋モード全開といったところ。

鈴木其一(1796~1858)も師匠に倣って襖に萩月図を描いた。ラグビーのボールのような月と紅白の萩の安定感を感じさせる配置がなんともすばらしい。この絵の前ではいつも隣の方と‘いいねえ!’を連発しながらみている。

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2013.10.01

日本の美 菊! 江戸絵画にみる菊図

Img_0002     円山応挙の‘花鳥図’(18世紀 大英博)

Img_0007                  伊藤若冲の‘菊花図’(18世紀)

Img_0005       酒井抱一の‘菊に小禽図’(19世紀 山種美)

Img_0004     鈴木其一の‘菊図’(左隻 19世紀 ボストン美)

小さい頃秋になると父親に連れられて恒例の菊の花の品評会に行った。このため、菊には愛着がある。特賞のリボンがつけられた菊の前ではいつも目をまるくしてみていた。現在でもこういう催しが開かれているのだろうか?

円山応挙(1733~1795)が中国の花鳥画に影響されて描いた作品は今は大英博の所蔵。10年前大阪市美で応挙の大回顧展があったときに里帰りした。二幅のすばらしい花鳥画で菊と小鳥をうっとりながめていた。応挙の描いた花鳥画のなかで孔雀は横におくとして最も魅かれているのはこの絵と三井記念美にある‘紅梅鶴図’。

インパクトのある菊の絵としてすぐ思い浮かぶのは伊藤若冲(1716~1800)の‘菊花図’。若冲の高度なテクニックである筋目描をじっくりみれるのがこの菊の花弁。墨のにじみが広がる面と面の重なりによって菊の質感が見事に表現されている。だから、菊図は若冲の展覧会では楽しみの一つ。いくつかみた菊のなかでこの筋目描が一番いい。

琳派の絵師たちも秋を代表する花として菊をよく描いた。酒井抱一(1761~1828)の‘菊に小禽図’はお気に入りの一枚、スッキリした構図のうえバランスよく配置された白、黄色、赤の菊がじつに印象深い。これは元は十二ヶ月花鳥図として描かれたもので、ほかにもファインバーグコレクションの‘柿に目白図’などがある。

鈴木其一(1796~1858)の‘菊図’は20年くらい前に開催されたボストン美日本画名品展で公開された。当時、まだ鈴木其一の作品をみる回数は少なかったのでこの菊に出会ったときはすごく感激した。いつかまた会いたい。

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2013.09.28

日本の美 薄!  琳派のすすき

Img_0005    光悦・宗達の‘金銀泥薄下絵古今集和歌巻’(17世紀 畠山記念館)

Img_0004     尾形光琳の‘秋草図屏風’(左隻 18世紀 サントリー美)

Img     酒井抱一の‘秋草鶉図屏風’(19世紀 山種美)

Img_0002     鈴木其一の‘芒野図屏風’(19世紀 千葉市美)

琳派の画家たちが繰り返し描いた秋草図、その定番のひとつがすすき。ほかには菊、萩、桔梗(ききょう)、女郎花(おみなえし)、撫子(なでしこ)など、これから秋が深まれば目にとまるようになる。

秋の風情を感じさせるすすきが単独で描かれた巻物というと俵屋宗達が下絵を描き、本阿弥光悦(1558~1637)が古今和歌集を墨書した‘金銀泥薄下絵古今集和歌巻’がある。4.5年前まで畠山記念館へよく通い、珠玉の琳派コレクションをいい気分で鑑賞していた。薄が沢山描かれたこの巻物も心に響く一枚。

尾形光琳(1658~1716)の‘秋草図屏風’はMOAとサントリー美で体験した。サントリーのものは主役のすすきと菊が目立つように構成されているので、秋草図の屏風に描かれたすすきというとすぐこれを思い出す。光琳は宗達や宗雪の画風を受け継いでいるが、その画面構成は装飾性がより豊かになりデザイン的な表現になっている。

江戸琳派の酒井抱一(1761~1828)と鈴木其一(1796~1858)にもとても魅せられてすすきがある。正方形の画面が印象的な‘秋草鶉図’は屏風の前に立つたびに立ち尽くしてみてしまう。ハッとするのが低い位置に描かれた月、その配置にひっかかりをもちながら視線は月をとりかこむようにすっとのびるすすきに釘づけになる。可憐なすすきという感じ。すすきにばかり目を奪われて鶉はよくみてない。

‘芒野図’は画面いっぱいにうめつくされたすすきに目が慣れるまでちょっと時間がかかる。しばらくするとこのすすき野にはS字の道はできていることがわかる。土色のグラデーションをきかせて描かれた野原一面のすすき、一度みたら忘れられないほど強い存在感がある。

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2013.09.27

日本の美 薄!  近代日本画家のすすきコラボ

Img     菱田春草の‘武蔵野’(1898年 富山県近美)

Img_0004     東山魁夷の‘秋富士’(1955年 静岡県美)

Img_0001     小野竹喬の‘あかあかと日は難面もあきの風’(1976年 京近美)

Img_0003     徳岡神泉の‘薄’(1966年 東近美)

このところぐっと秋らしくなった。半袖で散歩していると寒さを感じるようになったから、そろそろ長袖に切り替えようと思う。散歩の時間は1時間、以前は1時間半くらい歩いていたが、足首とか腰に少し痛みがでてきたのでコースを短縮して1時間にとどめることにした。

秋の風物詩すすきは散歩コースで出くわす。すすきは山の近くとか田んぼがあるようなところへ行かないとみれないと思いがちであるが、ぶらぶら歩いてみると家のまわりでも結構目にする。すすきのイメージは垂れた稲穂と同じで先のほうがいい具合にカーブしているところ。今は穂を手でさわってみることはないが、小さい頃はそのやわらかい手触り感が心地よかっ記憶がかすかに残っている。

日本画とつきあっていると画家が描いた作品によっても季節感じることができる。夏が終わって秋が来たことを強く思わせるすすき、菱田春草(1874~1911)がとてもいいすすきを描いている。‘武蔵野’は明治神宮で4年前ようやく出会った。この絵を所蔵しているのは富山県近美なので何度もみるとこは叶わないが、もう2回くらいはみておきたい。

東山魁夷(1908~1999)が富士山を描いたものはこれまで3点みた。その2点は朱を基調にした色彩豊かな作品、もう一枚は‘秋富士’。これをみるたびに魁夷は春草の絵を意識したのだろうか、と思ってしまう。ちょっと不思議なのがすすきの丈の長さ、こんなに背が高かった?

小野竹喬(1889~1979)の絵は‘奥の細道句抄絵’(10点)の一枚、すすきのフォルムが様式化されデザインのように描かれている。明るい色彩とポップな感じのする画面はまるでポスターをみているよう。竹喬の手にかかると平凡なすすきが洒落た模様になる。晩年の竹喬の作品に200%心を奪われている。

徳岡神泉(1896~1972)の薄は東近美にあることはわかっているのだが、なかなか現れてくれない。背景を写実的に描かないこういう花の絵は外国人の目からするとは抽象画の部類に入る。薄の生命力だけを抽出したようなこの作品にいつか会ってみたい。

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2012.02.03

日本の美 椿! 御舟 麦僊 古径 靫彦の共演

3495_3     速水御舟の‘名樹散椿’(重文 1924年 山種美)

3496_4     土田麦僊の‘春’(部分 1920年 講談社野間記念館)

3498_2     小林古径の‘椿’(1933年 敦井美)

3497_2         安田靫彦の‘紅白椿’(1964年 滋賀県近美)

‘日本の美’シリーズはこれまで季節にあわせて桜、紅葉、梅をとりあげてきた。4回目は今が見ごろの椿。

梅や桜は花が咲く頃には散歩の途中でも出くわすが、椿はあまり縁がない。10数年前当時住んでいた広島からクルマを走らせ萩へ行ったとき、椿の名所にも寄った。見ごろの時期としては終わりかけていたので花は半分くらい落ちていたが、赤や白の椿を楽しむことができた。が、それからあとの冬は生の椿をみたかな?という感じですごしている。

近代日本画で椿の絵というとすぐ思い浮かぶのは速水御舟(1894~1935)が描いた‘名樹散椿’。それまで御舟は徹底した写実で日本画に新風を送っていたが、この絵では一転して琳派にみられるような装飾性の強い描き方で椿の美しさを表現している。緑の草地に落ちている紅白の花びらをみていると、ボッティチェリの‘ヴィーナスの誕生’でゼフュロスが吹き散らす花々が目の前をよぎる。

東京の美術館では山種のほかにもうひとついい椿の絵がみられるところがある。それは目白の講談社野間記念館。ここに土田麦僊(1887~1936)の‘春’がある。この大きな絵に大変魅了されている。

画像は左端の扇を除く3扇だが、真ん中に描かれた母と女の子の右に印象深い椿が描かれている。花に囲まれた母子の表情はとても穏やかでまるで西洋画の聖母子像をみているよう。

小林古径(1883~1957)と安田靫彦(1884~1978)の椿の絵も心をとらえて離さない。余分なものを描き込まず濁りのない鮮やかな赤や白で椿の美しさを際立たせている。こういう絵が家にあったらどんなにか心が安らぐことだろう。

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2011.03.08

日本の美 紅白梅! 現代琳派の梅コラボ(7)

2457_2           前田青邨の‘水辺春暖’(1973年)

2455_2     加山又造の‘紅白梅’(1965年)

2456_2               安田靫彦の‘紅梅’(1961年)

2454_2     福田平八郎の‘梅と竹’(1941年)

日本画において現代琳派という特定の画家集団が存在しているわけではないが、装飾性豊かな琳派の画風を意識して制作された作品は数多くみられる。そのなかでも琳派の象徴的なモチーフである紅白梅の絵は名作揃い。梅シリーズの最後は現代の感性で表現されたコンテンポラリー琳派の共演。

前田青邨(1885~1977)は紅白梅を何点も描いているが‘水辺春暖’(大松美)に最も惹かれている。これをはじめてみたとき小さい頃祭でよく買った風車を連想した。日本画の花鳥画は象徴的に描かれているから、こうした夢想的なイメージを目いっぱい感じさせる紅白梅のフォルムは抽象画と案外近いところでつながっている。画面のバランスをとっているのが水辺の鴨。紅白梅のリズミカルな楕円運動を止めないため、4羽は中央に固まって描かれている。

‘現代版紅白梅図’という感じなのが加山又造(1927~2004)の絵。尾形光琳も‘又造はん、すごい感性してまんな!’と感心しているにちがいない。この絵をみる度に琳派のDNAを受け継ぐ若手画家が現われ、また新たな画法と感性で紅白梅図を描いてくれないかなと思う。そんな現代アーティストがはたしているだろうか?

梅をこよなく愛した安田靫彦(1884~1978)は昨日の‘羅浮仙女’をはじめてとして梅の絵を沢山描いている。この絵に描かれた紅梅は大磯にあった自宅に植えていたもの。梅の造形としてはとてもユニーク。斜めに枝が垂れ下がる様に引き寄せられる。その先をよくみると緑の若枝が上向きにのびている。くすんだ金箔地は加山同様、光琳の紅白梅図に倣っている。

‘羅浮仙女’と‘紅梅’のほかに魅了されているのは梅が花瓶に生けられた‘紅梅高麗扁壺瓶’と‘梅花窯瓶’、そして梅の花を手にする秀吉が茶室で座っているところを描いた‘伏見の茶亭’。また、泉屋博古館にも小品ながらとても可愛らしい紅白梅がある。

カラリスト福田平八郎(1892~1974)はお気に入りの画家。最も好きな絵は琳派的というより琳派そのものといっていい‘花菖蒲’(京近美)。4,5点ある梅では‘梅と竹’が目を楽しませてくれる。心が自然に暖かくなるような絵で京都の香りがする

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2011.03.07

日本の美 紅白梅! 梅&弱法師、梅の精、木菟(6)

2450_2       下村観山の‘弱法師’(上が右隻・下が左隻 1915年)

2452_2              安田靫彦の‘羅浮仙女’(明治末~大正初期)

2453_2     小林古径の‘木菟’(1929年)

2451_2               小茂田青樹の‘春の夜’(1930年)

明治以降活躍した日本画家の多くが梅を描いている。そのなかで梅を体中で感じさせてくれるのが画壇の第一世代ともいうべき下村観山(1873~1930)の代表作、‘弱法師’(よろぼし、重文 東博)。今年の1月平常展に展示されていたから、記憶に新しいところ。

この絵は謡曲の俊徳丸の悲話を題材にしており、描かれているのは四天王寺をさまよう盲目の弱法師(俊徳丸)が極楽浄土へ行けることを願って西に沈む夕日を拝んでいる場面。枝が横に広がる見事な臥龍梅につつまれ、一心に日想観を行う姿が胸を打つ。

安田靫彦(1884~1978)の‘羅浮仙女’を所蔵しているのは松岡美。この画家の大きな回顧展を過去2回体験したのだがどういうわけかこのすばらしい絵は登場せず、2年前の茨城県美のときは別ヴァージョン(個人蔵)が出品された。そして、昨年ニューオータニ美であった安田靫彦展でみたのも個人蔵。

この‘羅浮仙女’を十何年前にどこかの展覧会でみたときは思わず足がとまった。みてわかるように中国の女性。でも人間ではなく梅の精。梅の名所で知られていた広東省にある羅浮山に住み、ここへやってくる男たちを酒席に誘う。こんな美女と杯を交わせばすぐ酔いがまわり、ついうとうとっとなる。目がさめるとあの美女はいない、‘梅の精だったのか!’美女に会えただけでも幸せというもの、羅浮山へ行ってみたいィー!

幻想的な雰囲気の漂うのが小林古径(1883~1959)の‘木菟’(みみずく、大倉集古館)。この絵に大変魅せられている。紅梅を水平的にみせるというのが意表をついているし、枝にとまっているのが鶯でなく木菟というのも新鮮。これは1930年ローマで開かれた展覧会に大観や青邨らの作品とともに展示されたが、イタリア人の心を惹きつけたにちがいない。

小茂田青樹(1891~1933)の‘春の夜’(埼玉県近美)でも木菟が梅の香りを楽しんでいるが、こちらは可愛い木菟ちゃんという感じ。獲物を口にくわえた猫がこっそり歩いているのをじいーっとみている。春信の‘夜の梅’に小茂田は着想を得ているが、叙情的な香りは消え、装飾性の強い琳派風の味付けで表現されたやさしい梅と漫画チックな猫の登場する楽しい絵に変容させている。

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