2017.07.29

二度目の‘アルチンボルド展’!

Img_0001     アルチンボルドの‘大気’(スイス 個人蔵)

Img     アルチンボルドの‘火’(スイス 個人蔵)

Img_0002  ホラーの‘擬人化された風景’(1662年以前 アシュモリアン美)

Img_0003    カンピの‘魚売り’(16世紀 ブレラ美)

先月、西洋美で今話題の‘アルチンボルド展’をみたとき、四大元素のうち‘大気’と‘火’(ともにスイスバーゼルの個人の所蔵)がまだ展示されてなかった。とんだ肩透かし。また出かけるか迷ったが折角の機会なのでみておくことにした。

アルチンボルド(1527~1593)は‘四季’(1563年)に続いて3年後‘四大元素’を描いた。その4点のうち‘水’(今回展示)と‘火’はウィーン美術史美にあるが、残りの‘大地’と‘大気’はいまだ行方不明。だから、今展示されている4点はオリジナルの‘水’と後に制作された別ヴァージョンを組み合わせた形になっている。

たくさんの鳥で顔を構成した‘大気’はとってもわかりにくい。とくに鼻の部分。そして、口も鶏をそのままとらえるので口の形にならない。致命的なアンマッチなのが頭の髪、細い髪の毛を鳥の頭や嘴を密集させてもイメージがわかない。

これに比べると‘火’はアルチンボルドの意図が読みとれる。髪が激しく燃え盛っているのこの人物(皇帝マクシミリアン2世)の権力の大きさをそのまま表現しているのだろうとか。鋭い目とこの炎が一体化しているところがおもしろい。

‘擬人化された風景’をじっとみているとダリの絵が頭をよぎった。ひょっとするとダリの得意としたダブルイメージはこういう昔からある絵から影響を受けたのかもしれない。マグリットだって美術書でみた風景を人や動物に見立てる擬人化の手法がヒントになった可能性がある。

魚に興味があるとカンピの‘魚売り’のような作品は見てて楽しいだろう。いかにも魚屋の店先という感じで魚の匂いと海の塩のかおりが食を求めてやってきた人たちをどんどん吸い込んでいるよう。

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2017.06.25

来年1月 またアルチンボルドの‘ルドルフ2世’がやって来る!

Img   ‘ウェルトゥムヌスとしてのルドルフ2世’(1590年 スクークロスター城)

Img_0002     ‘夏’(1572年 デンヴァー美)

Img_0001     ‘ソムリエ’(1574年 大阪新美建設準備室)

花や魚や動物などで人物の横顔を象った肖像画を描いたアルチンボルドが宮廷画家として活躍したのは16世紀後半、日本は室町時代のころ。このユニークな肖像画をはじめてウイーンでみたときはあっけにとられた。

誰もが好きになるという絵ではない。これだけ規格外だと好き嫌いがはっきり分かれる。代表作の‘四季’と‘四大元素’についていえば、‘冬’と‘大地’は正直グロテスクすぎて長くはみれない。お気に入りは今回アメリカのデンヴァー美から出品された‘夏’と初見の花で埋め尽くされた‘春’

もう1点魅了されているのがある。2009年Bunkamuraでお目にかかった‘ウェルトゥムヌス(四季の神)としてのルドルフ2世’、アルチンボルドがミラノに引っ込んだときに描いたこの正面向きのルドルフ2世が最高傑作だろう。所蔵しているのはスウェーデンにあるお城だから一生縁がないと思っていたら、幸いなことに日本でみることができた。

その絵がまたやって来るらしい。美術館はアゲインBunkamura、来年1月からはじまる‘ルドルフ2世の驚異の世界展’(1/6~3/11)の目玉として再度公開される。まさに現代のアーチストが手がけたような新鮮なつくりものというかオブジェという感じ。

当時としてはかなり時代をとびこえた感性をもっていたアルチンボルドがこうした寓意画を描いたのは20数点。その1枚が日本にある。いつ開館するのかまったく目途がたってない大阪新美の準備室がもっている‘ソムリエ’。今回の回顧展にも展示されている。

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2017.06.24

嵌ると逃れられないアルチンボルドの怪奇!

Img  アルチンボルドの‘四大元素 水’(1566年 ウィーン美術史美)

Img_0001    アルチンボルドの‘四季’(1590年 ワシントンナショナルギャラリー)

Img_0003    HMの版画家の‘擬人化された風景’(16世紀末 アシュモリアン美)

Img_0002     ロマッツォの‘自画像’(1568年 ブレラ美)

日本の展覧会シーンにアルチンボルド(1526~1593)が登場したのは過去3回あった。10数年前に開催されたハプスブルク家展ではウィーン美術史美にある‘四季 冬’と‘四大元素 水’が飾られ、そのあとは2回Bunkamuraのだまし絵展(2009年、2014年)にはスウェーデンから傑作‘ウェルトゥムヌス(ルドルフ2世)’と‘司書’がやって来た。

風の便りによると来年の1月からBunkamuraで行われる展覧会(1/6~3/11)にまたあの‘ルドルフ2世’がお目みえするらしい。だから、1年くらい日本はアルチンボルドイヤー、まだこの怪奇画家に縁がなくても西洋美とBunkamuraに足を運べばアルチンボルドに最接近できることは請け合い。

今回の回顧展でこれほど多くのアルチンボルドが出品されているとは想像してなかった。入ってすぐワシントンナショナルギャラリーが所蔵している‘四季’に遭遇、ええー、ワシントンにアルチンボルドがあったの!?ナショナルギャラリーは5回訪問したが、顔の輪郭がはっきりせず不気味さがただようこのお化けには一度もお目にかかったことがない。普段は展示しないのだろう。

この絵はアルチンボルドが生まれ故郷のミラノに帰ってから描いたもの。その時期は‘ルドルフ2世’と同じ1590年頃、これが大きな収穫だったのに一方で残念なことがあった。

スイス在住の個人コレクターが所蔵する‘四大元素 大気’と‘火’は24日(土)からの公開だった。ありゃー、手持ちのチラシにはこの2点は載ってなく、HPでも出品リストをチェックしてないため折角の作品を見逃してしまった。知っていたら24日以降に出動したのに。今、再訪問するかどうか迷っている。

版画で足がとまったのが‘擬人化された風景’、これをみるとダリが得意とするダブルイメージは16世紀のころからもう表現されていた!ボスの絵にもこれと似たような場面がでてくる。こういう元々の構成要素とはちがうものを使ってモチーフを形にしていく方法がこの時代に存在していたのがおもしろい。

ミラノのブレタ美でみたロマッツォ(1538~1600)の自画像がどうしてここに展示してあるのか?だが、インパクトのある肖像画なので長くみていた。

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2017.06.23

待望の‘アルチンボルド展’!

Img_0001     ‘春’(1563年 王立サン・フェルナンド美術アカデミー美)

Img_0002     ‘秋’(1572年 デンヴァー美)

Img_0003     ‘司書’(16世紀 スコークロステル城)

Img     ‘庭師・野菜’(16世紀 クレモナ市美)

ウィーン美術史美に出かけると他では味わえない二人の画家の作品と遭遇する。ひとりはブリューゲル、もうひとりはアルチンボルド(1527~1593)、そのアルチンボルドの回顧展(6/20~9/24)が上野の西洋美ではじまった。今年行われる西洋絵画展ではブリューゲルの‘バベルの塔’とともに大きな期待を寄せていたのでわくわく気分で乗り込んだ。

最も有名な‘四季’と‘四大元素’が全部揃ってみられるのだから、つくづく日本は美術大国だなと思う。この8点のうち一番のお目当てはマドリードの王立サン・フェルナンド美術アカデミー美からやって来た‘春’、今回登場した4点のうちこの‘春’はウイーン美術史蔵の‘冬’とともに1563年に描かれた最初のヴァージョン。

以前マドリードで美術館めぐりをしたとき、どういうわけか姿を現してくれなかった。まさか日本でリカバリーできるとは思ってもいなかった。素直に嬉しい! 横向きの顔や衣装には白百合や白薔薇など花で埋め尽くされているが、手元の美術本には80種が詳細に載っている。花だけに集中すると博物図鑑をみているよう。

第一ヴァージョンでは行方不明になっている‘秋’の別ヴァージョンがみれたのも大きな収穫。ルーヴルにも‘四季’があることは前から知っているが、いつ行ってもこれが飾ってあったためしがない。だから、この秋がみれて‘四季’はコンプリート、唇に栗を使っているのがおもしろい。

‘司書’は2014年Bunkamuraで開催された‘だまし絵パート2’で仰天した作品、頭を開きっぱなしの本で表現するところが最高にいい。髪の感じがピッタリ。これをみたらダリでもマグリットでも裸足で逃げるにちがいない。アルチンボルドは元祖シュルレアリスト!そして、この絵の面白さが当時の宮廷人に支持されるというのも驚き。

今回新規にお目にかかった作品の中でぐっときたのが‘庭師・野菜’、この絵を逆さまににみると野菜の鉢になる。はじめ野菜をくっつけて鼻や唇をつくり顔全体をととのえたあとひっくり返し微調整して野菜の盛られた鉢に仕上げたのではないか、こう推測すると野菜の鉢にみられる不自然な構成が理解できる。

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2008.02.04

その三 パルミジャニーノ  ブロンツィーノ  カラッチ

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ナショナル・ギャラリーはトラファルガー広場の後ろ側にある。広場のシンボルとなっているのが高さ50mの円柱の上に立つイギリス艦隊を率いたネルソン提督の像と下の4頭のライオン像。大半の観光客はこのライオン像を背景に写真を撮る(三越のライオン像はこれがモデル)。美術館の開館時間は10時。ここはルーヴルのように入館時、バッグの検査がなく、無料。ロンドンにある国立の美術館は大英博物館をはじめどこもお金はとらない。名画の数々が無料で見られるのだから、ほんとうに嬉しくなる。

作品は4つの時代区分にまとまえられて展示してある。1250~1500年(入って左側の一番奥)、1500~1600(入ってすぐの左側)、1600~1700(正面一番奥)、
1700~1900(入って右側)。部屋の数は全部で65。ここは有名な名画があちらにもこちらにもという感じで、とにかく息がぬけない。

今回紹介する絵は前回まったく知らなかったもの。上はパルミジャニーノ(1503~
1540)の“聖母子と洗礼者ヨハネと聖ヒエロニムス”で、真ん中はブロンツィーノ
(1503~1572)の“ヴィーナスとキューピットのいるアレゴリー”。いずれもマニエリスム絵画の傑作である。同じマニエリスムでもポントルモやサルトが描く作品に惹かれることはないが、この二人にはとても関心がある。

パルミジャニーノの“聖母子”はダビンチの“岩窟の聖母”と同じ部屋(左側の最初)にある。図録でみる以上に縦長の大きな絵。視線が集中するのがなんといっても左足をこちらのほうへ突き出し、右腕を後ろの幼児キリストに向かって曲げている洗礼者ヨハネ。このポーズを図録で見て“こんないい絵を見逃したなのは惜しいことをしたな”とここ5年くらいは思ってきたから、感慨深い。ウィーン美術史美での回顧展、ウフィツィ美にある“長い首の聖母”(拙ブログ06/5/28)、そしてこの絵をみたからパルミジャニーノは終了。

ブロンツィーノの“アレゴリー”にもメロメロ。青紫の布に浮かびあがるヴィーナス、キューピット、右の笑っている子供の白い肌に目を奪われる。この3人のまわりには髪をかきむしる怖い顔をした老女がいたり、仮面が置かれたりしてマニエリスムの匂いがするが、この白い肌と子供の笑顔のお陰でこの絵の前にながく立っていられる。この絵はアレゴリーの意味をあれこれ読み解く前に、まずユーモラスとエロチシズムの入り混じった不思議な空間と色の輝きを楽しむのが一番。愛の快楽には危険がつきものと教えるこのマニエリスム絵画の傑作と対面できたことは一生の思い出になる。

下の絵はマニエリスムに反発し、写生を重視したアンニーバレ・カラッチ(1560~
1609)が描いた“アッピア街道で聖ペテロに現れるキリスト”。カラッチの絵を見る機会はあまりないから、今回の美術旅行ではこの画家も重点鑑賞のひとり。これはこれまで見たなかでは最も印象深い絵。“主は何処へ行かれるのですか?”と問うペテロがキリストに“ペテロが信者を見捨てたので再び十字架に掛けられに行くところだ”と切り返えされ、あたふたとする様子がよく伝わってくる。

カラヴァッジョとの関連でカラッチの作品にたいして興味が涌いているので、次回のローマ旅行ではカラヴァッジョと共にカラッチのファルネーゼ宮殿天井画を目のなかにいれることをターゲットにしている。

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2007.03.26

トレドのエル・グレコ

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マドリードの南、約70kmに位置するトレドへは高速道路を利用すると一時間くらいで着く。この日は春のような陽気。巨大な岩山にのっかったような旧市街と町をぐるりと囲むタホ川が一望できる高台からの眺めはまさにエル・グレコが描いた“トレド風景”(メトロポリタン美)そのまま。大聖堂やアルカサルを背景に心もはずんで記念写真を撮る。24年前トレドへ来たときはここに寄らなかったので、いい思い出になった。

トレドは起伏の多い町で路地は迷路のように入り組んでいる。こういう町ではイヤホンがかえってマイナスになることがある。ガイドさんからすこし離れていても声だけはよく聞こえるから、安心してぼやっと歩いていると突然姿が見えなくなり、すごくあせる。知らない町ではあまりキョロキョロしないにかぎる。

トレド観光の目玉はエル・グレコ(1541~1614)の絵画鑑賞。まず、大聖堂で“聖衣剥奪”(拙ブログ05/8/26)を観て、そのあとサント・トメ教会にある上の“オルガス伯の埋葬”を見学する。大聖堂では宝物室に飾られた高さ2.5mの金銀、宝石で作られている“聖餅顕置台”に目を奪われる。前回写真を撮っているのにすっかり忘れていた。その隣にはイサベル女王の王冠がある。

お目当ての“聖衣剥奪”は聖器室の正面に飾ってあった。ユダに裏切られた後、キリストが兵士たちに捕らわれ、不用となる外衣を剥ぎとられる場面が描かれている。前回感動した外衣の真紅が昔のように輝いていない。時の経過とともにやはり色がすこしずつ落ちていくからだろうか?それとも昔と今の色の鮮やかさに変化はなく、前はこちらの感情が昂ぶりすぎて強い赤が見た目以上に印象づけられたのだろうか?赤色の強さは横においてもこの絵には魅せられる。

これはグレコがローマからトレドにやってきた直後の1577年に依頼された。完成したとき、注文主の大聖堂側から“群集の位置がキリストの頭より高い、左のマリアたちが聖書の記述にない、だから描き直してくれ、でないと金は支払わない”とクレームがつく。でも、こんな指摘にひるむようなグレコではない。このギリシャ人は訴訟を起こしてまでも、権力に屈することがなかった。グレコは若い頃、あのユダヤ商人が跋扈するヴェネツィアに住み、絵の修行をしたから、タフな金銭感覚が身についたのかもしれない(04/12/11)。以後グレコの絵画制作は頻繁に訴訟沙汰になる。

最高傑作といわれる“オルガス伯の埋葬”とも感動の再会である。この絵は教会の右翼の奥にある。画面は二つの部分にわかれていて、下のほうにオルガス伯の埋葬が、上方にオルガス伯が天国の法廷に迎えられる様子が描かれている。金が象嵌された立派な鎧をつけたオルガス伯の遺体を両腕にかかえて持ち上げようとしているのが奇跡の聖人、アウグスティヌス(右)とステファヌス(左)。聖ステファヌスの前で死せる伯爵を指差す黒衣の少年はグレコの息子。

グレコは260年前に亡くなったオルガス伯爵の葬儀を自分と同時代の出来事として描いた。二列目に黒の喪服を着てびっしり隙間なく立っている参列者はこの絵が描かれた1586年頃実在した貴族、司祭、修道僧たちである。左から7人目がグレコの自画像といわれている。人々を当世風の衣装で描くのは日本の浮世絵師、鈴木春信が得意とした歴史的事実や物語から題材をとり当世風の人物や風俗に置き換えて描いた“見立絵”と同じ発想である。埋葬の場面では人物は写実的に描かれ、悲しみの気配が漂い、厳粛な気持ちになるのに対し、寒色の色調、ひき伸ばされた人体、不自然に体をよじる姿勢といったグレコ独特の画風で構成されている上の場面は、精神性の高い神秘的な世界である。

マニエリスム様式を受け継ぐ異様にひきのばされた人体や群像を画面の下から段々に積み重ねて見る者の視線を上方に引き上げていく構図が、真ん中の“受胎告知”(プラド美術館、部分)や下の“羊飼いの礼拝”(プラド)にも顕著に見られる。“受胎告知”はほかの画家の構成とは異なり、グレコは滑降する聖霊の鳩によって発せられた神の光により、マリアがキリストを受胎した瞬間を描いている。最晩年に制作された“羊飼いの礼拝”には心を揺すぶられる。まわりは洞窟を思わせるように真っ暗。白いヴェールの上の幼児キリストを源とする聖なる光がマリア、ヨセフ、そして上のほうで舞い踊る天使に広がっていく画面に吸い寄せられる。

エル・グレコに魅せられてから随分時が経つが、今回の鑑賞でグレコの絵がさらに近くなった。グレコが愛した町、トレドをいつかまた訪れたい。

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2006.05.08

パルミジャニーノのマニエリスム

462ウフィツィのようなルネサンス絵画を中心に教科書に必ず載っている名画が沢山ある有名な美術館を訪問したからといって、展示されてる絵画のすべてに通じているわけではない。

前回見たときは関心の薄かった作品だが、その後の海外の美術館などでの鑑賞体験がきっかけとなり注目するようになった絵もある。

ここは2度目の訪問だった1999年のとき、時間をかけてじっくりみて、おおよそ展示されている作品群を頭に入れたので、今回は1999年以降目覚めた画家の絵や見逃した作品を丁寧にみることにした。

そのひとつがマニエリスムの絵。ここはマニエリスム絵画の宝庫。中にはちょっと精神を病んでいるのではないかと思われる絵もあるが、プラス評価ができる名画もちゃんとある。昔からマニエリスムの評価はなかなか定まらない。何度みても、これはいいやという絵もある。例えば、サルトやポントルモの描く人物は目の周りに黒い隈があり、体が異様に長く、そして特徴である捻ったS字ポーズも無理やりとってる感じ。こうした絵を見ているとこちらまで精神が不安定になってくる。

同じマニエリスム様式の画家、ブロンツィーノ(1503~1572)については、最近はマイナスイメージが少なくなり、逆に魅力を感じるようになった。で、“トリプーナ”と呼ばれる八角形の部屋に飾られてる肖像画の数々を熱心にみた。中でも惹きつけられるのが赤の衣装と端正な顔が印象的な“ルクレツィア・パンチアティキの肖像”と子供の肩に右手におき、豪華なスペイン風紋様の衣装を着たコジモ一世の妃を描いた“エレオノーラと息子ジョヴァンニの肖像”。

ブロンツィーノよりもっと関心の高い画家がパルミジャニーノ(1504~1540)。03年、ウィーン美術史美術館を訪れた際、たまたま見た“パルミジャニーノ回顧展”でその画技の高さに驚愕し、すっかりこの画家の作品にはまった。ウフィツィにはいい絵が2点あり、右は代表作の一つ、“長い首の聖母”。首も長いがそれ以上に手が異常に長い。顔は卵型が特徴。髪の毛一本々のウエーブや衣装の襞の滑らかな質感が見事に表現されている。

盛期ルネサンスが求めた均衡や自然らしさだけでなく、パルミジャニーノの絵にみられる自然を超える洗練された表現や高い芸術的な技巧にも心が揺すぶられる。パルミジャニーノが描くマニエリスムの絵が今、人気が高いということは、時代がこうしした人体を自然な比例とはちがって極端に長くしたり、色彩は鮮やかだけどどこか冷たい感じのする絵を求めているのかもしれない。そんなことを考えながらこの絵を眺めていた。

拙ブログは5/9,10はお休みいたします。

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2005.08.26

トレドのグレコ

324NHKの番組、探検ロマン・世界遺産でスペインのトレドが取り上げられた。トレドを訪れたのはもう20年くらい前になるので、記憶がだいぶ薄れている。で、スペインにまた行く機会があれば、トレドを再訪しようと決めている。

トレドの町で一番印象深いのが大聖堂とエル・グレコの絵。ここにはグレコの傑作中の傑作がある。それは右の“聖衣剥奪”と“オルガス伯の埋葬”。中でも“聖衣剥奪”における光輝くキリストの
真紅の衣装が目に焼きついている。

これほど心を揺す振られた赤は他には、ティツィーノが描いた“聖母被昇天”のマリアの衣装くらいしかない。グレコは若い頃、ヴェネツイアでティツィアーノやティントレットから色彩効果や構図を学んでおり、ここでの成果とミケランジェロの人物表現により独自の画風を作り出した。

トレドで観たグレコの絵で忘れられないのがもう一点ある。“改悛する聖ペテロ”。
ペテロの目から今にも涙がこぼれそう。キリストの弟子であることを否認したペテロ
が悔悛して涙を流す場面である。油絵の威力をこれほど感じた絵はない。今、森
アーツセンターギャラリーで開かれているフィリップス・コレクション展にグレコの同名
のいい絵がある。この絵をみてトレドでの感動が蘇った。

エル・グレコ好きを決定的にしたのが1986年、国立西洋美術館で開催された
“エル・グレコ展”。もうだいぶ前の展覧会であるが、大回顧展だった。大原美術館
やプラド美術館他所蔵の“受胎告知”などの名作が目白押しで、会場に入って
から出るまで興奮状態だったのを覚えている。

プラド美術館にも傑作がいくつもあるが、最近では03年、ブタペスト国立美術館で
グレコのいい絵をみた。ここにはプラドについでグレコの作品が多くあるそうだ。そして、
昨年はギリシャ国立美術館でグレコの若い頃の作品に出会った(拙ブログ04/12/
11)。

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2004.12.12

ジュリオ・ロマーノ

東京12チャンネルの<美の巨人たち>は毎週欠かさず見ている。
12/11の放送はジュリオ・ロマーノだった。マントヴァにあるという天井壁画
“巨人の間”はいつか見たい絵だ。この画家についてはあまり
情報がない。乏しい資料によると、1499年ごろペルージアに生まれて
いる。ラファエロと同じ出身。ラファエロが制作していたヴァチカンの
火災の間の壁画“ボルゴの火災”を彼の死後、ひきついでいる。

続きを読む "ジュリオ・ロマーノ"

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2004.12.11

ヴェネツィアのエル・グレコ

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昨日の世界美術館紀行はトレドのエル・グレコだった。Myカラーが緑と黄色となったのはグレコの緑とゴッホの黄色
に魅せられたからに他ならない。エル・グレコは大好きな画家だ。

今年10月、ギリシャを旅行した時、アテネでグレコの作品を観た。ギリシャ
国立美術館に3点ある。そのひとつが右の絵。エル・グレコの本名はドメ
ニコス・テオトコプーロス。1541年、クレタに生まれ、1567年このギリシャ
人はヴェネツィアに移住している。そして1570年の11月までここで絵の
修行をする。<キリストの埋葬>という題名のこの絵はエル・グレコが修行
時代に描いた絵だ。サイズは51×43cm。木の板に油彩とテンペラで描い
ている。あのグレコ様式の片鱗がみえるが、20代後半の初期の作品なの
で大感激とはいかない。色の深さが足りない。

他の2点は聖人画と大きめの画面に天使が楽器を奏でるところを描いたも
ので、どちらもトレドでの作品。

美術館紀行で取り上げていた代表作<聖衣剥奪>に描かれたキリストの
衣装の赤のなんと鮮やかなことか。トレドでこの絵の前に立ったときの感動
がよみがえった。この色彩感覚はヴェネツィアの画家から学んだものだろう。
グレコは当時80代のティツィアーノの弟子になっている。また、ティントレット、
ヴェロネーゼの画法からも刺激をうけている。

エル・グレコは人生の大半を異郷の地、ヴェネツィア、ローマ、トレドですごし
たが、ギリシャ人であることに拘り、ドメニコス・テオトコプーロスという名前を
改めなかったそうだ。そのため、トレドのスペイン人には発音しづらい名前の
かわりに、スペイン語でギリシャ人を意味する“エル・グレコ”というあだ名
で呼ばれたのである。

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