日本の美術館名品展は夢の競演?



東京都美で開催中の‘日本の美術館名品展’(4/25~7/5)を見た。テーマ設定型の企画展にはあまり関心がなく、ひとりの作家の回顧展とか‘自慢のお宝見せます!’という美術館名品展のほうが目に力が入る。だが、この名品展への期待値は普通。
チラシは東京都美のいつもの悪い癖で‘夢の競演 公立100館のコレクション’、‘選りすぐりの名品を一堂に公開します’などPRしまくり。がっかりするような展覧会では決してなく○だが、美術館が宣伝していることのまあ半分がいいところ。夢の競演にわくわくするほどの名品がそれほど沢山ある?という感じ。
公立美術館のネットワーク組織、美術館連絡協議会というのがあってその創立25周年を記念するイベントあるいはお祭りと思ったほうがわかりやすい。だから、数はやたらと多い。協議会から美術館へ‘ご自慢の名品を出品してください。こちらからは指定しませんので、貴美術館の選択にお任せします’という業務連絡メールが入り、100の美術館が応じ、220点が集まったのだろう。
テーマがあるわけではないから、美術館側も楽といえば楽。こういうNO指定の場合は美術館の顔になっているような絵は絶対出さない。だから、夢の競演にはならない。いくつか例をあげると、名古屋市美からの出品はユトリロの‘ノルヴァン通り’で、有名なモディリアーニの‘お下げ髪の少女’ではない。
宮崎県近美にはマグリットの‘白紙委任状’とか‘現実の感覚’といった一級のシュルレアリスム絵画があるのに、でているのはこれではなくてシニャックの絵。シニャックもいい絵だが、やはりマグリットを見たい。山梨県立美だって、‘ミレーの種まく人はとてもとても、ポーリーヌ・V・オノの肖像で回答しとこう’といった具合だろう。
日本の美術館で西洋絵画のいい絵があるのは大原美、ひろしま美、ブリジストン美、国立西洋美、ポーラ美、損保ジャパン美、大阪市立近美準備室、村内美、川村美。また、日本の洋画コレクションで質の高さを誇るのは東近美、東博、ブリジストン、ウッドワン。資金力に制約のある公立の美術館が人気の西洋画を手に入れるのはそう簡単なことではなく、有名な美術館にくらべると数が少ない。
だから、こういう記念展のとき上にあげたような名画がでてくると、この展覧会は気合いが入っているなということになる。だが、実際は予想していた通り。手元にある美術本をいろいろみてみると、100の美術館のうち規模の大きなところでランキング1位の絵を出品したのは少ないのではないか。あまり期待しすぎてもいけないのだが。
が、サプライズの絵が二、三あった。その筆頭が上のバーン=ジョーンズの‘フローラ’。これを所蔵しているのは郡山市美。最近、読み終えた‘バーン=ジョーンズの芸術’(ビル・ウォーターズ著、晶文社、1997年5月)にこの美術館が‘アヴァロンのアーサー王の眠り’のための大型スケッチの所有者としてでてくる。油彩までもっていたとは!どういう縁でこの絵を手に入れたかは知らないが、とにかくすばらしい。これまで日本で見たラファエロ前派の作品は西洋美にあるロセッティの‘愛の杯’しかないから、感心しながら見ていた。
もう一点、初見の絵で足がとまったのがある。エゴン・シーレの大きな絵‘カール・グリュンヴァルトの肖像’(豊田市美)。これは相当の資金を要したであろう。再会を楽しんだのは日本にあるミロ作品で一番いいと思っている福岡市美蔵の‘ゴシック聖堂でオルガン演奏を聞いている踊り子’、イブ・クラインの‘人体測定ANT66’(いわき市美)、バルラッハの‘母なる大地Ⅱ’(愛知県美)、ブランクーシの抽象彫刻‘空間の鳥’(滋賀県近美)。
日本画は例によって前期(4/25~5/31)、後期(6/2~7/5)に分けて展示される。西洋画に較べると当たり前のことだが、質のいいのが揃っている。でも、秘かに期待していたのは全部ダメだった。普段は行けそうにない佐久市近美にある横山操の‘雪原’とか鹿児島市美蔵の西山英雄作、‘噴煙’とか和歌山県近美の稗田一穂作、‘帰り路’など。やはり、どこも西洋画同様、自慢の代表作は出したがらない。
真ん中は竹内栖鳳の‘絵になる最初’(京都市美)。ここへ足を運んだのは実はこの絵と対面するため。女性画を見るのは絵画鑑賞の大きな楽しみだから、西洋画でも日本画でも女性を描いた絵には目がない。この左手で顔を隠すしぐさをする女性が気になって仕方がなかったが、これまで展示替えとかで縁がなかった。やっと会ったが、こういう女性はあまりじっとはみれない。でも、それで満足。
下の小杉放庵の‘金太郎遊行’(栃木県美)と遭遇したのは幸運だった。出光美にもいい金太郎の絵があるが、これにもすごく魅了される。下期に狩野芳崖のお目当ての絵がでてくるので、また出かけるつもり。
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