2019.04.12

三菱一号館美の‘ラファエロ前派の軌跡展’!

Img_0001_22 ロセッティの‘魔性のヴィーナス’(1863~68年 ラッセル=コーツ美)

 

Img_25 ロセッティの‘廃墟の礼拝堂のガラハッド卿’(1859年 バーミンガム美)

 

Img_0003_20    バーン=ジョーンズの‘赦しの樹’(1882年 リヴァプール国立美)

 

Img_0002_23     ヒューズの‘クリスマス・キャロル’(1879年 バーミンガム美)

 

7年前、すばらしいバーン=ジョーンズ展を開催した三菱一号館美では
現在‘ラファエロ前派の軌跡展’(3/14~6/9)が行われている。入館し
てラスキンの絵が続くがこれには興味がないのでお目当ての作品をめざし
てどんどん進む。美術館のなかで最も広い部屋に着くとラファエロ前派の
大スター、ロセッティ(1828~1882)が何点も並んでいた。これ
は心が踊る。ここは‘ラファエロ前派ならお任せ下さい!’の美術館だから、
作品の見せ方が本当に上手い!

お目当てはチラシに大きく載っている‘魔性のヴィーナス’、じつはこの絵
はどこだったか記憶が戻ってこないのだが一度みている。でもそんなこと
はどうでもよくはじめて対面する気持ちでじっくりみた。ロセッティの描
く女性は歌麿のようにみな同じような顔立ち。このヴィーナスも目鼻立ち
の整った美形で顔全体の圧がとても強い。

そのため、みるのを途中でたじろいでしまうのだが、それでも画面に惹き
つけられるのはヴィーナスがまわりをバラやスイカズラで取り囲みまれ
その魔性が花の装飾性によって引き立てられているから。ヴィーナスは愛
や美人を意味する持ち物にも抜かりない。右手には黄金の矢、左手には
リンゴをもっている。ロセッティに乾杯!

初見の収穫はバーミンガム美から出品された‘廃墟の礼拝堂のガラハッド
卿’、これは初期の作品で以前手に入れたテート美が出版したロセッティ本
にしっかり載っている。こういうのを展示してくれると嬉しく反応する。

もう一点チラシで気になっていたのがラファエロ前派第二世代のバーン=
ジョーズ(1833~1898)が描いた‘赦しの樹’、このモチーフには
数点のヴァージョンがあるが、これははじめてお目にかかった。印象深い
のは互いに顔をみつめる裸の男女の異常とも思える体の密着度。そして、
じっとみているとミケランジェロ彫刻の筋肉人体が目の前をかすめる。
女性だって胸の下は脂肪を搾り取った筋肉がよくついている。

ハント、ブラウン、ミレイにはグッとくるのがなかったが、そのかわり
ヒューズ(1832~1915)が目を楽しませてくれた。思わず足がと
まったのが‘音楽会’とどうしてこんなに可愛くて綺麗なのとびっくりする
‘ブラッケン・ディーンのクリスマス・キャロルージェイムズ・リサート
家’。子どもたちの幸せが一番!

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2019.01.05

‘初夢’展覧会! その一

Img  ロセッティの‘ダンテの夢’(1871年 ウオーカーアートギャラリー)

Img_0001     ロセッティの‘リリス嬢’(1864~68年 デラウエア美)

Img_0003 バーン=ジョーンズの‘アヴァロンのアーサー王の眠り’(1898年 ポンセ美)

Img_0002 クノップフの‘私は私自身に扉を閉ざす’(1891年 ノイエ・ピナコテーク)

年の初めは常日頃見たいなと思っている絵との出会いを夢想している。で、とびっきりの‘初夢’展覧会をお見せしたい。

今年開催される展覧会を特集した雑誌をいくつか立ち読みして期待の‘ラファエロ前派’(3/14~6/9 三菱一号館美)に出品されるラインナップが少しわかった。イギリスのレイディ・リーヴァー美が所蔵するバーン・ジョーンズの‘赦しの樹’が目玉になるようだ。これはまだみてないので楽しみ。

ロセッティ(1828~1882)やバーン=ジョーンズ(1833~1898)に魅了され続けており、これまで画集を集めたり古本屋で手に入れた‘D.G ロセッティ’(1990年 みすず書房)や‘バーン=ジョーンズの芸術’(1997年 晶文社)を読んだりして関心の度合いを高めてきた。

だから、まだ縁はないが見たい度の強い作品はぎゅっと絞り込まれている。ロセッティについては何としてもこの目でというのが2点ある。リヴァプールにある‘ダンテの夢’、これをエーコ著の‘美の歴史’ではじめてみたときは体が震えた。もう一点はアメリカのボルチモアにあるデラウエア美が所蔵する‘リリス嬢’。

どちらも実際お目にかかるとなると遠い存在だが、イギリス旅行の優先度の順番が上がってくると‘ダンテの夢’のほうは夢が叶うかもしれない。では、ボルチモアはどうやって行くか。こちらはNYへ1週間くらい滞在して足をのばすというのがアバウトなイメージ。果たしてそのときが来るだろうか。

バーン=ジョーンの‘アヴァロンのアーサー王の眠り’はみたくてしょうがないが、これは200%無理。なにせ、絵があるのはプエルトリコのポンセ美。プエルトリコへは一体どうやっていく?中米にはまったく疎い。西海岸のLAなどを経由してプエルトリコに入るのだろうか。

ラファエロ前派の画風と重なるベルギーの象徴派クノップス(1858~1921)の‘私は私自身に扉を閉ざす’、これはミュンヘンのノイエ・ピナコテークに展示されているのでチャンスはある。今えがいている旅の段取りはいつか実現しようと思っているスイス美術館巡りの際に滞在する予定のチューリヒからミュンヘンへ飛ぶ。さて、どうなることやら。

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2015.12.29

期待通り質の高い‘ラファエロ前派展’!

Img   ミレイの‘いにしえの夢ー浅瀬を渡るイサンブラス卿’(1857年)

Img_0002    ロセッティの‘シビラ・パルミフェラ’(1865~70年)

Img_0003     バーン=ジョーンズの‘レバノンの花嫁’(1891年)

Img_0001     ムーアの‘夏の夜’(1890年)

渋谷のBunkamuraでは現在‘英国の夢 ラファエロ前派展’(12/22~3/6)が行われている。昨年1月、森アーツセンターであったビッグなラファエロ前派展はテートのコレクションだったが、今回公開されているのはリバプール国立美の所蔵作品。

はいってすぐミレイ(1829~1896)の‘いにしえの夢-浅瀬を渡るイサンブラス卿’が出迎えてくれた。これはミレイの画集には必ず載っている作品、今回ミレイはこの中世的な騎士が2人の子供を馬に乗せて進むという物語性を感じさせる傑作のほか‘春’や‘ブラック・ブランズウイッカーズの兵士’も含まれている。

2008年にBunkamuraは質の高い作品を集めたミレイ展を行っているが、今回出品された8点はそのときに欠けていた主要なピースをもってきた感じ。おそらくこれで‘ミレイのいい絵は全部おみせしました!’という思いだろう。すばらしい。

ロセッティ(1828~1882)の‘シビラ・バルミフェラ’もラファエロ前派ファンにとっては嬉しい一枚。理想をいえばウォーカーアートギャラリーにある‘ダンテの夢’をみたかったが、これは強欲というもの。イギリスを訪問する機会がまたあればロンドンから高速鉄道に乗ってリバプールをめざしたい。

リバプールにあるバーン=ジョーンズ(1833~1898)は手元の画集に載っている2点を期待していたが、出品されていたのはこれではなく水彩画の大作‘レバノンの花嫁’、昨年は森アーツセンターで‘愛に導かれる巡礼’に出会い、今年はボストン美でも‘希望’と再会した。一歩々コンプリートの道を進んでいると思えるのが嬉しい。

日本ではなかなかみることができない耽美主義派のムーア(1841~1893)、これまでみたのは1人の女性を描いたものだったが、目の前に現れたのは横に並んだ4人の群像画。絵をみているというより古代ギリシャの大理石彫刻をみているような気分。

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2014.02.28

ターナーやコンスタブルとは違う風景画!

Img     ミレイの‘安息の谷間’(1858年)

Img_0002     ブラウンの‘干し草畑’(1855年)

Img_0003      コリンズの‘5月、リージェンツ・パークにて’(1851年)

Img_0005     ダイスの‘ペグウエル・ベイ、ケント州’(1858~60年)

ラファエロ前派で関心の大半を占めているのはロセッティ、ミレイ、そしてバーン=ジョーンズ、だから正直言ってハントとかブラウン、ヒューズの作品の前に立っている時間は長くない。

ロセッティの描く女性画は歌麿の大首絵の美人画のようにどっと迫ってくる感じだが、ミレイ(1829~1896)の女性肖像画は子どもでも大人の女性でも全身像によりその美を完璧に表現しているイメージが強い。とにかく肌合い、髪の毛、衣装がびっくりするほど精緻に描かれているので強く印象に残る。

1858年に制作された‘安息の谷間’は2008年にBunkamuraでお目にかかったとき、右の尼僧の目力に圧倒された。夕暮れ時の墓場、左ではもうひとりの尼僧が腕まくりをして墓を掘り起こしている。この手前の二人とその向こうに立ち並ぶ糸杉とポプラは並行的に描かれているので、画面はとてもみやすい。だから、よけいにこの右の女性の目が気になる。

はじめてみたブラウン(1821~1893)の風景画が新鮮だった。イギリスの画家の風景画というとコンスタブルとターナーをすぐイメージするが、ラファエロ前派のブラウンにも風景を描いたものがあった。モチーフは干し草畑、モネの有名な連作積み藁やミレーの農村の絵とはちがい、ここでは月が輝いている。これは農村のイメージが変わる幻想的な光景。小さな絵なのに強く印象付けられた。

もう2点足がとまった風景画がある。コリンズ(1828~1873)とダイス(1806~1861)の作品。どちらもすごく奥行きを感じさせる絵。共通しているのは視線が横に動くこと。手前をまず左右にみてだんだん上にあがっていく。こういう風にみていくと遠近法とはちがって人物でも木々や草花、そして断崖でもじっくり目が追っていける。そのため、描かれた人物がなにをしているのかよくイメージできる。

‘ペグウェル・ベイ、ケント州’はモネやクールベが描いたエトルタの海岸を連想した。テートブリテンが作った図録(英語版)にこの絵は載っており目にとまっていたが、本物は見ごたえのあるいい絵だった。これでイギリスの風景画に対する見方が変わった。

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2014.02.27

名作揃いのミレイと仰天のバーン=ジョーンズ!

Img_0001_2     ミレイの‘オフィーリア’(1851~52年)

Img_0002_2     ミレイの‘両親の家のキリスト’(1849~50年)

Img_0003_2     スタンホープの‘過去の追想’(1858~59年)

Img_0004_2     バーン=ジョーンズの‘愛に導かれる巡礼’(1896~97年)

昨年7月テレビ東京の人気番組‘美の巨人たち’でターナーの‘戦艦テメレール’がとりあげられたとき、興味深い話が盛り込まれていた。それは2005年にBBCラジオが行ったアンケート結果。

質問は‘イギリスでみることのできる最も偉大な絵画は何か?’というもの。ベスト10のなかで6つがイギリスの画家の作品。その顔触れの半分はなるほどと思ったが、半分は意外なものだった。ランキングの上からあげてみると、

1位 ターナーの‘戦艦テメレール’
2位 コンスタブルの‘干し草車’
5位 ホックニーの‘クラーク夫妻とパーシー’
7位 レイバートンの‘ウォーカー師’
8位 ブラウンの‘イギリスの見納め’
10位 ホガースの‘放蕩息子一代記’

ターナーやコンスタブルがイギリス国民に大変愛されている画家であることはよくわかる。わからないのはここにミレイ(1829~1896)の‘オフィーリア’もロセッティ(1828~1882)の‘プロセルピナ’も入ってないこと。同じラファエロ前派のブラウンの名前があるのに。

‘オフィーリア’はイギリス人にとっては偉大な絵画ではないのだろうか?イギリス国内で長いことミレイの回顧展が行われなかったのはこの画家の愛され度が関係しているのかもしれない。

今回ミレイの作品は6点、いずれも魅力的な作品だが08年Bunkamuraであった回顧展でも展示された。何度対面しても言葉を失いじっとみてしまうのが‘オフィーリア’、こんな傑作がベスト10にあがってこないのが不思議でならない。

‘両親の家のキリスト’もお気に入りの一枚。視線が向かうのは中央の左手を釘で傷つけたキリストではなく、右端で傷を洗うために水をもってきたヨハネ少年。その目がじつにいい。こういう少年はどこにでもいる。この絵は宗教画ではあるが日本の浮世絵でいう見立て絵と同じ発想。普通の人たちの日常生活に置き換えて描いているので宗教臭さがなくすっと入っていける。

スタンホープ(1829~1908)の‘過去の追想’は非常に気になる絵。この気持ちは東京都美ではじめてみたときと同じ。女性の表情はどうも冴えない、感情の起伏が激しそうにはみえず、どちらかというと内向的な性格でなにか気の晴れないことをずっと引きずっている感じ。この絵をみるたびにドガの‘アプサント’を思い浮かべる。

今回でていた作品のなかで一番のサプライズはバーン=ジョーンズ(1833~1898)の描いた‘愛に導かれる巡礼’、縦1.57m、横3.05mの大作、美術本では見慣れた絵だがこれほど大きな絵だったとは!左に描かれた頭巾を被った巡礼者はちょっと不気味。横を向き腰を老人のように大きく曲げているのでぱっとみると悪魔と見まがう。この絵を日本でみれたのは幸いだった。ミューズに感謝。

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2014.02.26

魅力いっぱいの‘ラファエロ前派展’! ロセッティ

Img_0001       ‘プロセルピナ’(1874年)

Img_0002        ‘ベアタ・ベアトリクス’(1864~70年)

Img_0003_2       ‘モンナ・ヴァンナ’(1866年)

Img_0004       ‘聖なる百合’(1874年)

現在、六本木ヒルズにある森アーツセンターで開催中の‘ラファエロ前派展’(1/25~4/6)をみてきた。この展覧会は4/6までのロングラン興行、作品を所蔵するテートブリテンは自慢のお宝であるロセッティ(1828~1882)の‘プロセルピナ’やミレイ(1829~1896)の‘オフィーリア’をこれほど長いこと不在にしていいのだろうかと、つい余計な心配をしてしまう。

イギリスの美術館でナショナルギャラリーの作品は日本で一度も名品展を体験してないのに、テートブリテンのものは幸運なことに鑑賞する機会が多い。1998年には東京都美で名画がごそっと公開され、念願だった‘プロセルピナ’と‘オフィーリア’を今回のようにロンドンではなく日本でみることができた。このときからラファエロ前派の虜になった。

そして、2008年Bunkamuraがなんと‘ミレイ展’を主催、‘オフィーリア’がまた登場した。このようにターナー、コンスタブルとともにイギリス絵画の中核的な存在であるロセッティやミレイの代表作が何度もお披露目されるということは日本でラファエロ前派の人気が高いことの証。そのためか会場の森アーツセンターには予想をこえる大勢の人たちがつめかけていた。

お目当てのロセッティは油彩、水彩があわせて19点でている。圧巻なのが最後の部屋に飾られた7点。これはすごいラインナップ。まさにロセッティのいい絵、全部みせちゃいます、という感じ。一番の収穫はアヘン中毒がもとで亡くなった妻のシダルを回想して描いた‘ベアタ・ベアトリクス’。

ロセッティは長い時間をかけてこの油彩を仕上げたあと、すくなくとも6枚のレプリカを制作している。これまでフォッグ美蔵の水彩ヴァージョンと日本で遭遇し、08年にはシカゴ美で油彩のものに出会った。ところが、最初に描かれた油彩を08年訪問したテートブリテンでみる予定だったの不運にも展示されてなかった。

だから、残念な気持ちを引きずっていたが、6年経ってようやくお目にかかることができた。素直に嬉しい。金髪のまわりに日があたり神秘的な雰囲気につつまれたシダルの姿を息を吞んでながめていた。

黄色の豪華な衣装を身につけたワイルディングがモデルとつとめた‘モンナ・ヴァンナ’は見栄えのする見事な女性画。東京都美の名品展にも展示されたので今回で3度目の対面となったが、その強すぎる魅力のためいつも近くに寄っていけない。

初見の‘聖なる百合’は日本でみたことのある‘祝福されし乙女’(フォッグ美)のための習作、金箔が施された背景と衣装、そしてふさふさとした金髪に吸いこまれていく。瞬時にクリムトの絵が頭をよぎった。

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2012.07.05

期待を大きく上回る‘バーン=ジョーンズ展’!

4043_2   ‘連作・ペルセウス 果たされた運命’(1882年頃 サウサンプトン市立美)

4040_2     ‘連作・いばら姫 眠り姫’(1872~74年  ダブリン ヒューレイン美)

4042_2     ‘「怠惰」の戸口の前の巡礼’(1884年 ダラス美)

4041_2   タペストリー‘東方の三博士の礼拝’(1894年 マンチェスター・メトロポリタン大)

三菱一号館美で開催されている‘バーン=ジョーンズ展’(6/23~8/19)をおおいに楽しんだ。‘いつか行きたい美術館’シリーズでバーミンガム美(拙ブログ11/11/17)とサウサンプトン市立美(11/11/19)をとりあげたとき、バーン=ジョーンズの作品を
5点入れていた。その絵が果たしてこの回顧展にやってくるか?

わくわくしながら展示室をまわった。そして、だんだん興奮してきた。なんと‘魔法使い’(バーミンガム美)と‘果たされた運命’、‘聖杯堂の前で見る騎士ランスロットの夢’(ともにサウサンプトン市立美)の3点が飾ってあるではないか!

サプライズはまだ続く。バーミンガム美からは連作‘ピグマリオンと彫像’(4点)や‘巡礼を導く「愛」’が描かれたすばらしい布地がやってくるし、代表作のひとつ‘眠り姫’、そして色鮮やかで見事な出来栄えのタペストリー‘東方の三博士の礼拝’まである。なんとも豪華なラインナップ。本当にスゴイ回顧展。日本でバーン=ジョーンズ(1833~1898)の傑作がこれほど多くみられるなんて思ってもいなかった。グローバルクラスの回顧展に遭遇したことを心から喜んでいる。

‘果たされた運命’はペルセウスの鋭い目がとても印象的。これに対してドラゴンはすでに戦意喪失気味、開いた口は弱々しくイルカの体を連想させるそのながい長い胴体は草月流の生花みたいに装飾的なフォルムをつくっている。

大作‘眠り姫’をみているとボッティチェリの‘春’に描かれた花々がダブってくる。‘春‘に登場する女性たちが立ち姿ですがすがしい表情をみせているのとはちがい‘眠り姫’の横たわって眠る姫君と待女たちはロマンと神秘的な雰囲気につつまれているが、画面全体に装飾的な描写がみられる点で二つの絵はよく似ている。

今回びっくりしたのがアメリカのダラス美から出品された‘「怠惰」の戸口の前の巡礼’。‘夢の美術館’に選んだダラス美がバーン=ジョーンズのこんないい絵を所蔵していたとは!若い女性と青年を画面いっぱいに横から描くところは‘ランスロットの夢’の構成と同じ。これは記憶にずっと残りそうな絵。

最後の部屋に飾ってあったタペストリーを気持ちよくながめていた。日本でこんな目の覚めるような赤や青や黄金で彩られたタペストリーを体験できるなんて夢のよう。
満足度200%のバーン=ジョーンズ展だった。

尚、この展覧会は次の美術館にも巡回する。
・兵庫県立美:9/1~10/14
・郡山市美:10/23~12/9

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2010.12.16

ロセッティの傑作‘白日夢’と対面!

2204_2           ボッティチェッリの‘婦人の肖像’

2203_2            ロセッティの‘白日夢’

2202_2      バーン=ジョーンズの‘水車小屋’

美術館に入館すると館内の展示地図を一応手に入れるが、はじめてのときはこれがあまり役立たない。世の中には街の地図をみて自分の今いる場所と目的の場所の位置関係がすぐイメージできる人がいる。こういう人をいつも羨ましく思っている人間だから、慣れない美術館では体だけはやたらと動くがその流れは行き当たりばったりが多い。

ヴィクトリア&アルバート美はとても大きな美術館で、展示室の数が多いからお目当ての場所にたどりつくのに時間がかかる。ボッティチェッリ(1445~1510)の初期の作品‘婦人の肖像’を見つけるのに一苦労。

ある係員は‘これは2階の絵画のコーナーにある’といい、別の係員に聞くと‘あの階段を上がって右に進め’とかいろいろ案内してくれるのだが、どこへ行っても姿をみせない。もう、嫌になってルネサンスの彫刻の展示室へ先に行きドナテッロの浮彫りで思いの丈をとげ、さてほかへ移動しようとしていたら、ひょいと現れた。隣の方と顔を見合わせて‘ここにあるじゃない!’ まったく疲れる。

‘婦人の肖像’はボッティチェッリの20代後半の作品。初期の肖像画では、ボッティチェッリは光と陰により顔を生き生きと描いているが、この婦人にもそれがみられる。ボッティチェッリは大好きな画家だから、ラファエロのように全点鑑賞をライフワークにしている。残り2点のラファエロに比べると少し遅れをとっているが、一歩一歩追い上げたい。

狙いのルネサンスが済んだので、次はラファエロ前派のロセッティ(1828~1882)とバーン=ジョーンズ(1833~1898)の絵(拙ブログ09/5/17)。これらは3階のルーム81にあった。途中に目がくらくらするジュエリーの部屋があったが、時間がないので今回はパス。

‘白日夢’はロセッテイが亡くなる2年前に描かれた。期待通りのすばらしい絵だった。あの代表作‘プロセルピナ’(08/2/9)同様、女性から発せられる官能的な香りはまさに生唾もの。それもそのはず、モデルは‘プロセルピナ’同様ジェインで、彼女は同じ絹のドレスを着てポーズをとっている。

ロセッティは‘白日夢’にこんな詩を添えている。
‘女は夢見る、忘れられた書物のうえに
その手から忘れられた花が落ちるときまで’

女性を単独で描いた絵でこれまで体験したものや画集で知っているものをざっとレビューしてみると、‘プロセルピナ’と‘白日夢’はやはり特別な感じがする。傑作2点をみれたのだから、これ以上の幸せはない。

バーン=ジョーンズは期待していた‘愛の車’とは会えず、何年か前日本にやってきた‘水車小屋’が展示されていた。ロセッテイでもバーン=ジョーンズでもみたい絵がまだいくつも残っている。願いを叶えるため、いつかイギリスにある日数滞在して所蔵する美術館、例えば、テート・ブリテンとかマンチェスター市美とかアシュモリアン美を訪問してみたい。

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2009.05.01

日本の美術館名品展は夢の競演?

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東京都美で開催中の‘日本の美術館名品展’(4/25~7/5)を見た。テーマ設定型の企画展にはあまり関心がなく、ひとりの作家の回顧展とか‘自慢のお宝見せます!’という美術館名品展のほうが目に力が入る。だが、この名品展への期待値は普通。

チラシは東京都美のいつもの悪い癖で‘夢の競演 公立100館のコレクション’、‘選りすぐりの名品を一堂に公開します’などPRしまくり。がっかりするような展覧会では決してなく○だが、美術館が宣伝していることのまあ半分がいいところ。夢の競演にわくわくするほどの名品がそれほど沢山ある?という感じ。

公立美術館のネットワーク組織、美術館連絡協議会というのがあってその創立25周年を記念するイベントあるいはお祭りと思ったほうがわかりやすい。だから、数はやたらと多い。協議会から美術館へ‘ご自慢の名品を出品してください。こちらからは指定しませんので、貴美術館の選択にお任せします’という業務連絡メールが入り、100の美術館が応じ、220点が集まったのだろう。

テーマがあるわけではないから、美術館側も楽といえば楽。こういうNO指定の場合は美術館の顔になっているような絵は絶対出さない。だから、夢の競演にはならない。いくつか例をあげると、名古屋市美からの出品はユトリロの‘ノルヴァン通り’で、有名なモディリアーニの‘お下げ髪の少女’ではない。

宮崎県近美にはマグリットの‘白紙委任状’とか‘現実の感覚’といった一級のシュルレアリスム絵画があるのに、でているのはこれではなくてシニャックの絵。シニャックもいい絵だが、やはりマグリットを見たい。山梨県立美だって、‘ミレーの種まく人はとてもとても、ポーリーヌ・V・オノの肖像で回答しとこう’といった具合だろう。

日本の美術館で西洋絵画のいい絵があるのは大原美、ひろしま美、ブリジストン美、国立西洋美、ポーラ美、損保ジャパン美、大阪市立近美準備室、村内美、川村美。また、日本の洋画コレクションで質の高さを誇るのは東近美、東博、ブリジストン、ウッドワン。資金力に制約のある公立の美術館が人気の西洋画を手に入れるのはそう簡単なことではなく、有名な美術館にくらべると数が少ない。

だから、こういう記念展のとき上にあげたような名画がでてくると、この展覧会は気合いが入っているなということになる。だが、実際は予想していた通り。手元にある美術本をいろいろみてみると、100の美術館のうち規模の大きなところでランキング1位の絵を出品したのは少ないのではないか。あまり期待しすぎてもいけないのだが。

が、サプライズの絵が二、三あった。その筆頭が上のバーン=ジョーンズの‘フローラ’。これを所蔵しているのは郡山市美。最近、読み終えた‘バーン=ジョーンズの芸術’(ビル・ウォーターズ著、晶文社、1997年5月)にこの美術館が‘アヴァロンのアーサー王の眠り’のための大型スケッチの所有者としてでてくる。油彩までもっていたとは!どういう縁でこの絵を手に入れたかは知らないが、とにかくすばらしい。これまで日本で見たラファエロ前派の作品は西洋美にあるロセッティの‘愛の杯’しかないから、感心しながら見ていた。

もう一点、初見の絵で足がとまったのがある。エゴン・シーレの大きな絵‘カール・グリュンヴァルトの肖像’(豊田市美)。これは相当の資金を要したであろう。再会を楽しんだのは日本にあるミロ作品で一番いいと思っている福岡市美蔵の‘ゴシック聖堂でオルガン演奏を聞いている踊り子’、イブ・クラインの‘人体測定ANT66’(いわき市美)、バルラッハの‘母なる大地Ⅱ’(愛知県美)、ブランクーシの抽象彫刻‘空間の鳥’(滋賀県近美)。

日本画は例によって前期(4/25~5/31)、後期(6/2~7/5)に分けて展示される。西洋画に較べると当たり前のことだが、質のいいのが揃っている。でも、秘かに期待していたのは全部ダメだった。普段は行けそうにない佐久市近美にある横山操の‘雪原’とか鹿児島市美蔵の西山英雄作、‘噴煙’とか和歌山県近美の稗田一穂作、‘帰り路’など。やはり、どこも西洋画同様、自慢の代表作は出したがらない。

真ん中は竹内栖鳳の‘絵になる最初’(京都市美)。ここへ足を運んだのは実はこの絵と対面するため。女性画を見るのは絵画鑑賞の大きな楽しみだから、西洋画でも日本画でも女性を描いた絵には目がない。この左手で顔を隠すしぐさをする女性が気になって仕方がなかったが、これまで展示替えとかで縁がなかった。やっと会ったが、こういう女性はあまりじっとはみれない。でも、それで満足。

下の小杉放庵の‘金太郎遊行’(栃木県美)と遭遇したのは幸運だった。出光美にもいい金太郎の絵があるが、これにもすごく魅了される。下期に狩野芳崖のお目当ての絵がでてくるので、また出かけるつもり。

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2008.12.17

08年感動の美術鑑賞プレイバック! テート・ブリテン

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つい最近、ふと立ち寄った古本屋でいい本が目にとまったので即購入し、一気に読んだ。それはラングラート著‘D.G.ロセッティ’(90年9月、みすず書房)。この本は以前どこかの本屋で手にとったことはあるが、価格が4944円と高く、また画家のモノグラフを読む基準としている‘本物の絵7割鑑賞’に届いてないので、買うのをやめていた。

ところが運よく、2000円の格安で立派なロセッティ本が手に入った。1月、テート・ブリテンでこの画家の作品を沢山みたから、本に書かれていることが真綿に水が染み込むように頭の中に入っていく。で、テート・ブリテンで見た感動の絵画プレイバック!はロセッティとこの本により理解が進んだミレイ、ホイッスラーの作品を取り上げることこにした。

★ロセッティの‘受胎告知(見よ、われは主のはした女なり)’(上の画像)
★ミレイの‘両親の家のキリスト(大工の仕事場)’(真ん中)
★ホイッスラーの‘ノクターン:青と金色ーオールド・バタシー・ブリッジ’(下)

ロセッティ(1828~1882)がミレイ(1829~1896)らと共にラファエロ前派を結成したのは1948年、ロセッテイが20歳のとき。ラファエロ前派の活動はわずか3年で終わるが、このとき描かれた代表作が‘聖母マリアの少女時代’(1849)と‘受胎告知’
(1850)。‘受胎告知’のマリアのモデルをつとめたのはロセッテイが女神として恋するエリザベス・シダルで、‘ベアタ・ベアトリクス’(拙ブログ9/15)もこのエリザベス。

ダンテにとってのベアトリーチェのような存在がエリザベスなのに対し、‘プロセルピナ’(2/9)をはじめロセッティが数多く描いた女性が魔性的な美貌のジェイン・バーデン。ジェインはウィリアム・モリスの妻なのだが、ロセッティはエリザベスが死んだのちはジェインの虜になる。

ロセッテイにはこの二人のほかにも最後の最後まで縁が切れなかった娼婦ファニー・コンフォースや最高傑作‘モンナ・ヴァンナ’(テート・ブリテン)のモデルになったアレクサ・ワイルディングなどの愛人がいるが、これらの女性画は歌麿の美人画のように一見すると皆同じ女性に見える。

ふさふさした金髪にはウエーブがかかり、透けるような白い肌が口紅の赤を印象づけ、衣装の緑や赤はステンドグラスのような輝きを放っている。驚愕するのはロセッテイは麻薬中毒で健康状態が終始不安定だったのに、作品は死ぬ間際までしっかり描いていること。やはり、この画家は天才。

真ん中のミレイの絵はテート・ブリテンには展示されてなく、Bunkamuraの回顧展(9/12)ではじめて対面した。‘マリアナ’や‘木こりの娘’同様、マリアやヨセフ、キリストの肉体の精緻な描写と木の質感の見事さにしばらく立ち止まってみていた。この絵で忘れられないのが右にいる幼い洗礼者ヨハネの目つき。日本画家の土田麦僊の絵に、女の子を泣かせた男の子が申し訳なさそうにその女の子を横目にみている絵があるが、これがヨハネがキリストを横目でみるところとそっくり。

ホイッスラー(1834~1903)の絵は日本であった展覧会でもみたから二度目の鑑賞。構図は広重の‘江戸名所百景・京橋竹がし’を参考にしているのは明らか。青一色の背景に光る黄金の点々が視線を引き付け、対象のぼやけた描写や船頭や上の橋を渡る人々のシルエットはノククターンの題名がぴったりの詩情を漂わせている。

ラスキンの侮辱的な批評を訴えた裁判で裁判官からは橋の上の影をさして‘これは人間なのか?’と尋ねられ、ホイッスラーは‘お好きなようにお考えください’と答えている。何であれ先駆者の心は普通の人にはなかなかわかってもらえない。

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