2022.05.21

テニスン ‘シャロット姫’!

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 ウォーターハウスの‘シャロットの女’(1888年 テートブリテン)

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 ウォーターハウスの‘シャロットの女’(1915年 オンタリオ美)

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 ウォーターハウスの‘シャロットの女’(1894年 リーズ美)

今年はロンドンのテート・ブリテンが所蔵するラファエロ前派やブレイクら
の名画との密着度がぐんと増している。きっかけは今年の2月からみている
BSプレミアムの‘シャーロック・ホームズの冒険’(水曜9時)。このTV
映画にはよく知っている絵画がたびたびでてくる。たとえば、ラファエロ
の‘小椅子の聖母’、ブレイク、つい最近はロンドンのナショナルギャラリー
に飾ってあるベリーニの‘ヴェネツィア総督レオナルド・ロレダン’やクリム
トの女性の肖像画をそっくり真似たものが登場した。

41話あるシリーズ全体のうちまだ24話残っているから、またまたびっく
りする絵に遭遇するのではないかと期待している。この美術の演出は監督の
趣味なのか美術担当の好みかわからないが、イギリスの映画だから、テイト
・ブリテン所蔵のグレイクをだすのだったら、ロセッティやミレイ、そして
ラファエロ前派の影響をうけたウォーターハウスがみれるのではとつい思っ
てしまう。

ウォーターハウス(1849~1917)の代表作‘シャロットの女’はテー
ト・ブリテンでお目にかかった。テートのコレクションは何度も日本で披露
されているが、この絵は残念なことに一度も姿をみせてくれない。理由は
ウォーターハウスが日本であまり知られてないから、あるいは美術館側が
貸し出したくないお宝絵画だから。たぶん後者。何点もあるロセッティや
バーン=ジョーンズ、ミレイと違ってウォーターハウスは数が少ない。しか
も、‘シャロットの女’のほかにみた2点は出来映えがいまいち。落差があり
すぎて正直言ってウォーターハウスの評価がぶれるほど戸惑った。

イギリス・ヴィクトリア朝の詩人、テニスン(1809~1892)の詩集
に入っている‘シャロット姫’(1842年)を題材にして描かれた‘シャロッ
トの女’はミレイの‘オフィーリア’とイメージが重なるところがある。オフィ
ーリアが気がふれて溺死するのに対し、シャロット姫は禁を破って円卓の
騎士、ランスロット卿の姿をみたため呪いをかけられ死ぬ運命に。小舟の
舳先の近くにある3本のローソクうち2本は火が消えている。死が近いこと
を暗示している。この絵のヴァージョン‘影の世界にはもううんざり、と
シャロットの女は言う’(1915年)と‘ランスロットを見つめるシャロッ
トの女’(1894年)と遭遇することを夢見ている。

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2022.05.09

アーサー王伝説の絵画!

Img_20220509214701 バーン・ジョーンズの‘アヴァロンにおけるアーサー王の眠り(1881~98年 ポンセ美)

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バーン・ジョーンズの‘聖杯堂の前で見る騎士ランスロットの夢’(1896年 サウサンプトン市美)

Img_0002_20220509214701  ワッツの‘サー・ガラハッド’(1862年 フォッグ美)

Img_0003_20220509214801  ロセッティの‘アーサー王の墓’(1860年 テートブリテン)

ラファエロ前派でロセッティ(1828~1882)と同様に大変惹かれて
いるのがバーン=ジョーンズ(1833~1898)。待望の回顧展が10
年前三菱一号館美で開催され、ロンドンに行ったときゲットしたこの画家の
本(テートブリテン監修の英語版)に載っている主要作品のいくつかをみる
ことができた。こういう鑑賞体験をすると、次はあの絵、この絵と作品の
コンプリートへの関心がたかまっていく。

ロセッティなら‘ダンテの夢’を何とかこの目でという強い願いがあるように、
バーン=ジョーンズにもみたくてしょうがない絵がある。でも、この夢は叶
いそうにない。その絵とはプエルトリコのポンセ美が所蔵する‘アヴァロンに
おけるアーサー王の眠り’。この横幅6mもある最晩年の傑作がどうしてプエ
ルトリコへ流失したのだろうか。イギリスの美術館におさまっているのなら
対面の可能性はあるが、遠い々島国プエルトリコだともう絶望的。

騎士たちの戦いの物語や不思議なファンタジーがまじりあっているアーサー
王の伝説は2005年に制作されたBBSの‘アーサー王’をNHKのBSでみ
たのでおおざっぱには頭に入っている。多くの詩人や作家たちによって長い
間語り継がれてきたこの物語にはアーサー王や騎士たちの武勇伝に加え、
様々な象徴的な品々が登場する。最後の晩餐で使われた聖杯、丸いテーブル
円卓、魔法の剣・エクスカリバー。この剣にはちょっとした思い出がある。
1995年、ラスベガスで遊んだとき泊ったホテルの名前が‘エクスカリバー’。
そのときはホテルのゴージャスな雰囲気に浮き浮き気分だったが、この剣が
アーサー王の物語における重要な場面を構成していることなど知る由もなか
った。

‘聖杯堂の前で見る騎士ランスロットの夢’はめぐりあわせがよく三菱一号館美
の回顧展にサウサンプトン市美からやって来た。ワッツ(1817~
1904)の‘サー・ガラハッド’はランスロットの子どもで父が果たせなかっ
た聖杯探索を実現する場面が描かれている。イギリスでは騎士道は‘ジェント
ルマン’の模範として称賛され、武勇に優れ信仰心の篤い騎士に成長したガラ
ハッドは青少年の目標となった。ロセッティもアーサー王が好きで‘アーサー
王の墓’を描いている。

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2022.05.07

ダンテに魅了された画家!

Img_0003_20220507230401  ロセッティの‘ダンテの夢’(1871年 リヴァプール美)

Img_0002_20220507230401  ロセッティの‘べアタ・ベアトリクス’(1864~70年 テートブリテン)

Img_20220507230401   ドラクロアの‘ダンテの小舟’(1822年 ルーヴル美)

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ブレイクの‘戦車の上から語りかけるベアトリーチェ’(1827年 テートブリテン)

Img_0001_20220507230401  ボッティチェリの‘神曲素描’(1480~95年 ベルリン素描版画館)

またヨーロッパに行けるのを心待ちにしているが、実現するのは最短でも
まだ2年くらいかかりそう。最近は毎週楽しみにしているBSプレミアムの
‘シャーロック・ホームズの冒険’(水曜日夜9時)のせいでぐんとイギリス
づいている。物語の舞台がどこかをイメージするため手元にイギリスの地図
をおいてホームズとワトスンの活躍ぶりを固唾を呑んでみている。

イギリスででかける街はおおよそリストアップされている。北の遠くにあ
るエジンバラをもう一度訪問したいのは今、東京都美ですばらしいコレク
ションが公開されているスコットランド国立美がお目当て。じつは、ベラス
ケスの‘卵を料理する老婆’同様すごくみたい絵がここにはある。それは‘三世
代の寓意’など4,5点あるティツィアーノの絵。これは日本にはなかなかや
って来ない。今回の名画展でも姿をみせてくれなかった。これらをなんとし
てもみようと思っている。

もうひとつ出かけたいのはリヴァプール。その理由はリヴァプール美にある
ロセッティ(1828~1882)の‘ダンテの夢’がみたいから。これを美
術本で知ったときいっぺんに魅せられてしまった。鑑賞欲を200%刺激
される傑作でこれをみないとロセッティに済みマークはつけられない。絵の
前に立ったら体が震えるかもしれない。

ロセッティは名前からして(ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ)ダンテと縁があり、最愛のリジーをモデルにして‘ベアタ・ベアトリクス’を描いているから、ダンテとのむすびつきのイメージはとても強い。ほかの画家ですぐ思い浮かぶのは怖い顔をした人物が強く印象に残る‘ダンテの小舟’のドラクロア(1798~1863)。これに対して柔らかい感じのするダンテの絵としてはブレイク(1757~1829)の‘戦車の上から語りかけるベアトリーチェ’とボッティチェリ(1445~1510)の‘神曲素描 ヴェールをぬぐベアトリーチェ’がある。

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2022.05.06

ロセッティと歌麿の共通性!

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Img_20220506225301  ロセッティの‘青い部屋’(1865年 バーバー美)

Img_0001_20220506225301   ‘シビュラ・パルミフェア’(1866~70年 リヴァプール美)

Img_0002_20220506225301   ‘ヴェロニカ・ヴェロニス’(1872年 デラウェア美)

Img_0004_20220506225301   

‘トロメイのピア’(1868~80年 スぺンス美)

これまで美術関連の本をたくさん購入したが、ひとりの画家の話が詳しく書
かれたものはどっさりというほどないが、注目している西洋画家はそこそこ
手に入れた。たとえば、2001~02年にかけて出版された‘岩波 世界の
美術’シリーズ(値段はちょっと高めの3800円)は全部揃えた。ミケラン
ジェロ、ピエロ・デッラ・フランチェスカ、ルーベンス、レンブラント、
ゴヤ、クールベ、モネ、セザンヌ、シャガール、ダリ。これは画家本のバイ
ブルのようなものだから、何度も読んでいる。

ほかで読みごたえのあるのが古本屋でゲットした‘ロセッティ’(ラングラード
著 1990年 みすず書房)と‘バーン=ジョーズの世界’(ビル・ウォー
ターズ&マーティン・ハリスン著 1997年 晶文社)。この2冊によっ
てラファエロ前派のことがかなりわかった。画家物語としておもしろいのは
ロセッテイ本。モデルをつとめた女性との関係がピカソ同様、いろいろでて
くるので恋愛小説を読んでいる気分になる。

ロセッティ(1828~1882)の描く女性は浮世絵師の喜多川歌麿と似
たところがある。歌麿の代名詞となっている大首絵美人画に登場する寛政の
三美人、豊雛、おきた、おひさはぱっとみるとみな同じ顔にみえる。それと
同じように圧の強い濃厚な女性美が強く感じられるロセッティのモデルは同
じ人物ではないかと錯覚してしまうほど似た顔をしている。

‘青い部屋’のモデルは長い関係にあった娼婦のファニー・コーンフォース。本の表紙に使われている‘モンア・ヴァンナ’と‘シビュラ・パルミフェア’と‘ヴェロニカ・ヴェロニス’は赤毛の髪がロセッティのお気に入りだったすばらしい美女、アレクサ・ワイルディング。そして、‘トロメイのピア’は代表作の‘プロセルピナ’で有名なジェイン・モリス。ロセッティはその作品をコンプリートすることを目標にしているが、それが叶わなくても同じような美形に描かれているので一枚、2枚欠けてもそう残念がることもないかなとも思っている。

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2019.04.12

三菱一号館美の‘ラファエロ前派の軌跡展’!

Img_0001_22 ロセッティの‘魔性のヴィーナス’(1863~68年 ラッセル=コーツ美)

 

Img_25 ロセッティの‘廃墟の礼拝堂のガラハッド卿’(1859年 バーミンガム美)

 

Img_0003_20    バーン=ジョーンズの‘赦しの樹’(1882年 リヴァプール国立美)

 

Img_0002_23     ヒューズの‘クリスマス・キャロル’(1879年 バーミンガム美)

 

7年前、すばらしいバーン=ジョーンズ展を開催した三菱一号館美では
現在‘ラファエロ前派の軌跡展’(3/14~6/9)が行われている。入館し
てラスキンの絵が続くがこれには興味がないのでお目当ての作品をめざし
てどんどん進む。美術館のなかで最も広い部屋に着くとラファエロ前派の
大スター、ロセッティ(1828~1882)が何点も並んでいた。これ
は心が踊る。ここは‘ラファエロ前派ならお任せ下さい!’の美術館だから、
作品の見せ方が本当に上手い!

お目当てはチラシに大きく載っている‘魔性のヴィーナス’、じつはこの絵
はどこだったか記憶が戻ってこないのだが一度みている。でもそんなこと
はどうでもよくはじめて対面する気持ちでじっくりみた。ロセッティの描
く女性は歌麿のようにみな同じような顔立ち。このヴィーナスも目鼻立ち
の整った美形で顔全体の圧がとても強い。

そのため、みるのを途中でたじろいでしまうのだが、それでも画面に惹き
つけられるのはヴィーナスがまわりをバラやスイカズラで取り囲みまれ
その魔性が花の装飾性によって引き立てられているから。ヴィーナスは愛
や美人を意味する持ち物にも抜かりない。右手には黄金の矢、左手には
リンゴをもっている。ロセッティに乾杯!

初見の収穫はバーミンガム美から出品された‘廃墟の礼拝堂のガラハッド
卿’、これは初期の作品で以前手に入れたテート美が出版したロセッティ本
にしっかり載っている。こういうのを展示してくれると嬉しく反応する。

もう一点チラシで気になっていたのがラファエロ前派第二世代のバーン=
ジョーズ(1833~1898)が描いた‘赦しの樹’、このモチーフには
数点のヴァージョンがあるが、これははじめてお目にかかった。印象深い
のは互いに顔をみつめる裸の男女の異常とも思える体の密着度。そして、
じっとみているとミケランジェロ彫刻の筋肉人体が目の前をかすめる。
女性だって胸の下は脂肪を搾り取った筋肉がよくついている。

ハント、ブラウン、ミレイにはグッとくるのがなかったが、そのかわり
ヒューズ(1832~1915)が目を楽しませてくれた。思わず足がと
まったのが‘音楽会’とどうしてこんなに可愛くて綺麗なのとびっくりする
‘ブラッケン・ディーンのクリスマス・キャロルージェイムズ・リサート
家’。子どもたちの幸せが一番!

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2019.01.05

‘初夢’展覧会! その一

Img  ロセッティの‘ダンテの夢’(1871年 ウオーカーアートギャラリー)

Img_0001     ロセッティの‘リリス嬢’(1864~68年 デラウエア美)

Img_0003 バーン=ジョーンズの‘アヴァロンのアーサー王の眠り’(1898年 ポンセ美)

Img_0002 クノップフの‘私は私自身に扉を閉ざす’(1891年 ノイエ・ピナコテーク)

年の初めは常日頃見たいなと思っている絵との出会いを夢想している。で、とびっきりの‘初夢’展覧会をお見せしたい。

今年開催される展覧会を特集した雑誌をいくつか立ち読みして期待の‘ラファエロ前派’(3/14~6/9 三菱一号館美)に出品されるラインナップが少しわかった。イギリスのレイディ・リーヴァー美が所蔵するバーン・ジョーンズの‘赦しの樹’が目玉になるようだ。これはまだみてないので楽しみ。

ロセッティ(1828~1882)やバーン=ジョーンズ(1833~1898)に魅了され続けており、これまで画集を集めたり古本屋で手に入れた‘D.G ロセッティ’(1990年 みすず書房)や‘バーン=ジョーンズの芸術’(1997年 晶文社)を読んだりして関心の度合いを高めてきた。

だから、まだ縁はないが見たい度の強い作品はぎゅっと絞り込まれている。ロセッティについては何としてもこの目でというのが2点ある。リヴァプールにある‘ダンテの夢’、これをエーコ著の‘美の歴史’ではじめてみたときは体が震えた。もう一点はアメリカのボルチモアにあるデラウエア美が所蔵する‘リリス嬢’。

どちらも実際お目にかかるとなると遠い存在だが、イギリス旅行の優先度の順番が上がってくると‘ダンテの夢’のほうは夢が叶うかもしれない。では、ボルチモアはどうやって行くか。こちらはNYへ1週間くらい滞在して足をのばすというのがアバウトなイメージ。果たしてそのときが来るだろうか。

バーン=ジョーンの‘アヴァロンのアーサー王の眠り’はみたくてしょうがないが、これは200%無理。なにせ、絵があるのはプエルトリコのポンセ美。プエルトリコへは一体どうやっていく?中米にはまったく疎い。西海岸のLAなどを経由してプエルトリコに入るのだろうか。

ラファエロ前派の画風と重なるベルギーの象徴派クノップス(1858~1921)の‘私は私自身に扉を閉ざす’、これはミュンヘンのノイエ・ピナコテークに展示されているのでチャンスはある。今えがいている旅の段取りはいつか実現しようと思っているスイス美術館巡りの際に滞在する予定のチューリヒからミュンヘンへ飛ぶ。さて、どうなることやら。

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2015.12.29

期待通り質の高い‘ラファエロ前派展’!

Img   ミレイの‘いにしえの夢ー浅瀬を渡るイサンブラス卿’(1857年)

Img_0002    ロセッティの‘シビラ・パルミフェラ’(1865~70年)

Img_0003     バーン=ジョーンズの‘レバノンの花嫁’(1891年)

Img_0001     ムーアの‘夏の夜’(1890年)

渋谷のBunkamuraでは現在‘英国の夢 ラファエロ前派展’(12/22~3/6)が行われている。昨年1月、森アーツセンターであったビッグなラファエロ前派展はテートのコレクションだったが、今回公開されているのはリバプール国立美の所蔵作品。

はいってすぐミレイ(1829~1896)の‘いにしえの夢-浅瀬を渡るイサンブラス卿’が出迎えてくれた。これはミレイの画集には必ず載っている作品、今回ミレイはこの中世的な騎士が2人の子供を馬に乗せて進むという物語性を感じさせる傑作のほか‘春’や‘ブラック・ブランズウイッカーズの兵士’も含まれている。

2008年にBunkamuraは質の高い作品を集めたミレイ展を行っているが、今回出品された8点はそのときに欠けていた主要なピースをもってきた感じ。おそらくこれで‘ミレイのいい絵は全部おみせしました!’という思いだろう。すばらしい。

ロセッティ(1828~1882)の‘シビラ・バルミフェラ’もラファエロ前派ファンにとっては嬉しい一枚。理想をいえばウォーカーアートギャラリーにある‘ダンテの夢’をみたかったが、これは強欲というもの。イギリスを訪問する機会がまたあればロンドンから高速鉄道に乗ってリバプールをめざしたい。

リバプールにあるバーン=ジョーンズ(1833~1898)は手元の画集に載っている2点を期待していたが、出品されていたのはこれではなく水彩画の大作‘レバノンの花嫁’、昨年は森アーツセンターで‘愛に導かれる巡礼’に出会い、今年はボストン美でも‘希望’と再会した。一歩々コンプリートの道を進んでいると思えるのが嬉しい。

日本ではなかなかみることができない耽美主義派のムーア(1841~1893)、これまでみたのは1人の女性を描いたものだったが、目の前に現れたのは横に並んだ4人の群像画。絵をみているというより古代ギリシャの大理石彫刻をみているような気分。

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2014.02.28

ターナーやコンスタブルとは違う風景画!

Img     ミレイの‘安息の谷間’(1858年)

Img_0002     ブラウンの‘干し草畑’(1855年)

Img_0003      コリンズの‘5月、リージェンツ・パークにて’(1851年)

Img_0005     ダイスの‘ペグウエル・ベイ、ケント州’(1858~60年)

ラファエロ前派で関心の大半を占めているのはロセッティ、ミレイ、そしてバーン=ジョーンズ、だから正直言ってハントとかブラウン、ヒューズの作品の前に立っている時間は長くない。

ロセッティの描く女性画は歌麿の大首絵の美人画のようにどっと迫ってくる感じだが、ミレイ(1829~1896)の女性肖像画は子どもでも大人の女性でも全身像によりその美を完璧に表現しているイメージが強い。とにかく肌合い、髪の毛、衣装がびっくりするほど精緻に描かれているので強く印象に残る。

1858年に制作された‘安息の谷間’は2008年にBunkamuraでお目にかかったとき、右の尼僧の目力に圧倒された。夕暮れ時の墓場、左ではもうひとりの尼僧が腕まくりをして墓を掘り起こしている。この手前の二人とその向こうに立ち並ぶ糸杉とポプラは並行的に描かれているので、画面はとてもみやすい。だから、よけいにこの右の女性の目が気になる。

はじめてみたブラウン(1821~1893)の風景画が新鮮だった。イギリスの画家の風景画というとコンスタブルとターナーをすぐイメージするが、ラファエロ前派のブラウンにも風景を描いたものがあった。モチーフは干し草畑、モネの有名な連作積み藁やミレーの農村の絵とはちがい、ここでは月が輝いている。これは農村のイメージが変わる幻想的な光景。小さな絵なのに強く印象付けられた。

もう2点足がとまった風景画がある。コリンズ(1828~1873)とダイス(1806~1861)の作品。どちらもすごく奥行きを感じさせる絵。共通しているのは視線が横に動くこと。手前をまず左右にみてだんだん上にあがっていく。こういう風にみていくと遠近法とはちがって人物でも木々や草花、そして断崖でもじっくり目が追っていける。そのため、描かれた人物がなにをしているのかよくイメージできる。

‘ペグウェル・ベイ、ケント州’はモネやクールベが描いたエトルタの海岸を連想した。テートブリテンが作った図録(英語版)にこの絵は載っており目にとまっていたが、本物は見ごたえのあるいい絵だった。これでイギリスの風景画に対する見方が変わった。

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2014.02.27

名作揃いのミレイと仰天のバーン=ジョーンズ!

Img_0001_2     ミレイの‘オフィーリア’(1851~52年)

Img_0002_2     ミレイの‘両親の家のキリスト’(1849~50年)

Img_0003_2     スタンホープの‘過去の追想’(1858~59年)

Img_0004_2     バーン=ジョーンズの‘愛に導かれる巡礼’(1896~97年)

昨年7月テレビ東京の人気番組‘美の巨人たち’でターナーの‘戦艦テメレール’がとりあげられたとき、興味深い話が盛り込まれていた。それは2005年にBBCラジオが行ったアンケート結果。

質問は‘イギリスでみることのできる最も偉大な絵画は何か?’というもの。ベスト10のなかで6つがイギリスの画家の作品。その顔触れの半分はなるほどと思ったが、半分は意外なものだった。ランキングの上からあげてみると、

1位 ターナーの‘戦艦テメレール’
2位 コンスタブルの‘干し草車’
5位 ホックニーの‘クラーク夫妻とパーシー’
7位 レイバートンの‘ウォーカー師’
8位 ブラウンの‘イギリスの見納め’
10位 ホガースの‘放蕩息子一代記’

ターナーやコンスタブルがイギリス国民に大変愛されている画家であることはよくわかる。わからないのはここにミレイ(1829~1896)の‘オフィーリア’もロセッティ(1828~1882)の‘プロセルピナ’も入ってないこと。同じラファエロ前派のブラウンの名前があるのに。

‘オフィーリア’はイギリス人にとっては偉大な絵画ではないのだろうか?イギリス国内で長いことミレイの回顧展が行われなかったのはこの画家の愛され度が関係しているのかもしれない。

今回ミレイの作品は6点、いずれも魅力的な作品だが08年Bunkamuraであった回顧展でも展示された。何度対面しても言葉を失いじっとみてしまうのが‘オフィーリア’、こんな傑作がベスト10にあがってこないのが不思議でならない。

‘両親の家のキリスト’もお気に入りの一枚。視線が向かうのは中央の左手を釘で傷つけたキリストではなく、右端で傷を洗うために水をもってきたヨハネ少年。その目がじつにいい。こういう少年はどこにでもいる。この絵は宗教画ではあるが日本の浮世絵でいう見立て絵と同じ発想。普通の人たちの日常生活に置き換えて描いているので宗教臭さがなくすっと入っていける。

スタンホープ(1829~1908)の‘過去の追想’は非常に気になる絵。この気持ちは東京都美ではじめてみたときと同じ。女性の表情はどうも冴えない、感情の起伏が激しそうにはみえず、どちらかというと内向的な性格でなにか気の晴れないことをずっと引きずっている感じ。この絵をみるたびにドガの‘アプサント’を思い浮かべる。

今回でていた作品のなかで一番のサプライズはバーン=ジョーンズ(1833~1898)の描いた‘愛に導かれる巡礼’、縦1.57m、横3.05mの大作、美術本では見慣れた絵だがこれほど大きな絵だったとは!左に描かれた頭巾を被った巡礼者はちょっと不気味。横を向き腰を老人のように大きく曲げているのでぱっとみると悪魔と見まがう。この絵を日本でみれたのは幸いだった。ミューズに感謝。

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2014.02.26

魅力いっぱいの‘ラファエロ前派展’! ロセッティ

Img_0001       ‘プロセルピナ’(1874年)

Img_0002        ‘ベアタ・ベアトリクス’(1864~70年)

Img_0003_2       ‘モンナ・ヴァンナ’(1866年)

Img_0004       ‘聖なる百合’(1874年)

現在、六本木ヒルズにある森アーツセンターで開催中の‘ラファエロ前派展’(1/25~4/6)をみてきた。この展覧会は4/6までのロングラン興行、作品を所蔵するテートブリテンは自慢のお宝であるロセッティ(1828~1882)の‘プロセルピナ’やミレイ(1829~1896)の‘オフィーリア’をこれほど長いこと不在にしていいのだろうかと、つい余計な心配をしてしまう。

イギリスの美術館でナショナルギャラリーの作品は日本で一度も名品展を体験してないのに、テートブリテンのものは幸運なことに鑑賞する機会が多い。1998年には東京都美で名画がごそっと公開され、念願だった‘プロセルピナ’と‘オフィーリア’を今回のようにロンドンではなく日本でみることができた。このときからラファエロ前派の虜になった。

そして、2008年Bunkamuraがなんと‘ミレイ展’を主催、‘オフィーリア’がまた登場した。このようにターナー、コンスタブルとともにイギリス絵画の中核的な存在であるロセッティやミレイの代表作が何度もお披露目されるということは日本でラファエロ前派の人気が高いことの証。そのためか会場の森アーツセンターには予想をこえる大勢の人たちがつめかけていた。

お目当てのロセッティは油彩、水彩があわせて19点でている。圧巻なのが最後の部屋に飾られた7点。これはすごいラインナップ。まさにロセッティのいい絵、全部みせちゃいます、という感じ。一番の収穫はアヘン中毒がもとで亡くなった妻のシダルを回想して描いた‘ベアタ・ベアトリクス’。

ロセッティは長い時間をかけてこの油彩を仕上げたあと、すくなくとも6枚のレプリカを制作している。これまでフォッグ美蔵の水彩ヴァージョンと日本で遭遇し、08年にはシカゴ美で油彩のものに出会った。ところが、最初に描かれた油彩を08年訪問したテートブリテンでみる予定だったの不運にも展示されてなかった。

だから、残念な気持ちを引きずっていたが、6年経ってようやくお目にかかることができた。素直に嬉しい。金髪のまわりに日があたり神秘的な雰囲気につつまれたシダルの姿を息を吞んでながめていた。

黄色の豪華な衣装を身につけたワイルディングがモデルとつとめた‘モンナ・ヴァンナ’は見栄えのする見事な女性画。東京都美の名品展にも展示されたので今回で3度目の対面となったが、その強すぎる魅力のためいつも近くに寄っていけない。

初見の‘聖なる百合’は日本でみたことのある‘祝福されし乙女’(フォッグ美)のための習作、金箔が施された背景と衣装、そしてふさふさとした金髪に吸いこまれていく。瞬時にクリムトの絵が頭をよぎった。

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