2019.05.27

クリムト、シーレだけじゃない‘ウィーン・モダン’!

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     クリムトの‘旧ブルク劇場の観客席’(1888年)

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  レンツの‘オペラ座付近のリングシュトラーセ’(1900年)

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     マカルトの‘女優シャルロッテ・ウォルター’(1875年)

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   クルツヴァイルの‘黄色いドレスの女性’(1899年)

パリ大改造と同じようにウィーンでも皇帝フランツ・ヨーゼフが都市改造を
おこない1860~90年にかけて環状道路(リングシュトラーセ)やその
沿道にオペラ座、ブルク劇場、美術史美術館などが出現した。国立新美で
開催中の‘ウィーン・モダン’(4/24~8/5)には当時のウイーンの活気や
人々の華やいだ気分を伝える作品がいくつも展示されている。

クリムト(1862~1918)は若い頃はこんなオーソドックスな絵を描
いていたのかと思わせるのが‘旧ブルク劇場の観客席’。オペラやバレエをヨ
ーロッパの劇場で楽しむという習慣がないので劇場の大きさやどんな構造に
なっているのか実感がないが、TVのオペラ番組ではこういう馬蹄形の観客席
がよくでてくる。

レンツが描いた‘オペラ座付近のリングシュトラーセ’はウィーンのベルエポッ
クの様子がストレートに伝わってくる。この街は2度訪れたが、自分の足で
歩いていないので、主要な建築物の位置と道路の流れが十分把握できてない。
そのため、オペラ座のまわりがどうなっているか記憶があやふや。ウィーン
フィルのニューイヤーコンサートへ毎年出かけているクラシック愛好家なら
このあたりは馴染みの場所かもしれない。羨ましい。

今回大変惹きつけられた女性画が2点あった。ネオ・バロックの画家、マカ
ルト(1840~1884)の‘メッサリーナ役の女優シャルロッテ・ウォル
ター’と分離派のクルツヴァイルの‘黄色いドレスの女性’。女優シャルロット
の肖像をみてボストン生まれのサージェント(1856~1925)が描い
た‘マクベス夫人に扮するエレン・テリー’(1889年、テート・ブリテン)
を思い出した。ともに堂々とした女優の姿に強いオーラを感じる。

‘黄色のドレスの女性’には思わず足がとまった。両手を真横にしてソファの縁
をつかむポーズは一度みたら忘れられない。そして、目に飛び込んでくる
黄色の衣装。腰から下は一瞬黄色の蛾を連想した。

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2019.05.25

国立新美の‘ウイーン・モダン’!

Img_0001_64      クリムトの‘エミーリエ・フレーゲの肖像’(1902年)

 

Img_66      クリムトの‘パレス・アテナ’(1898年)

 

Img_0003_57      シーレの‘自画像’(1911年)

 

Img_0002_61      シーレの‘イーダ・レスラーの肖像’(1912年)

 

現在、クリムト(1862~1918)に最接近できるもってこいの展覧
会が2ヶ所で開かれている。東京都美と地下鉄乃木坂駅で下車してすぐ着
く国立新美。東京都美はクリムトだけだが、国立新美ではクリムトのほか
にシーレ(1890~1918)やクリムトが画家としてビューしたころ
ウィーン画壇の帝王的な存在だったマカルトやココシュカらもずらっと
揃っている。そして、絵画に加えて世紀末のウィーンに花開いた装飾工芸、
建築、グラフィックアートにおける新しい潮流を表す作品が続々現れる。
2つの美術館をはしごするとウィーン世紀末芸術の通になれること請け
合い。

国立新美に出品されているクリムト、シーレは全部ウィーン・ミュージア
ムが所蔵するもの。これまで二人の回顧展は見逃さず足を運んでいるので
チラシに載っている絵はすでに鑑賞している。とはいっても名画はモーツ
ァルトの曲を聴くようなものだから、何度お目にかかっても心は昂ぶる。
クリムトの生涯の女のお友達エミーリエ・フレーゲㇽの肖像は青と紫を
基調にしたドレスの印象が強く胸に刻まれる。リアルな描写は顔とふわっ
とした髪のみ。背後にみられる蜂の巣のようなものと赤と緑の小さな三角
形をリズミカルに並べたモダンな模様が華やかなファッションの世界を
連想させる。

これに対し‘パラス・アテナ’は一瞬ドキッとするほど緊張感に満ちている。
このアテナ神はどうみても男を惑わすファム・ファタル、黄金の兜のすき
まからすざましい目力でこちらをみつめられるとすぐフリーズ状態になり
そう。そして、金の小片をたくさん張り付けた金ぴかの胸当てが視線を釘
付けにする。祭りの夜店にはこういう魚の鱗がザクザクゆれて音を出す
衣装がよく売られている。

クリムトは28歳年下のシーレの才能を高く評価しており、いろいろ支援
している。二人は同じ年に亡くなった。シーレの絵の特徴が思い切り出て
いるのが‘自画像’。一見するとペタッとした絵だが、首から上は立体感が
ある。冷めた目が気になり、どうしても目がいってしまうのが胸にあてた
手。2本の指をくっつけてVの字をつくっている。一体何を意味しているのだ
ろうか。

シーレのパトロンだった美術批評家レスラーの妻を描いた‘イーダ・レス
ラーの肖像’に思わず足がとまった。ほかにはゴッホに刺激されて描いた
‘ひまわり’と‘ノイレングバッハの画家の部屋’を長くみていた。

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2019.05.24

期待を上回る‘クリムト展’!

Img_65      ‘ユディトⅠ’(1901年)

 

Img_0001_63      ‘女ともだちⅠ(姉妹たち)’(1907年)

 

Img_0002_60      ‘女の三世代’(1905年)

 

Img_0004_28     ‘アッター湖畔のカンマー城Ⅲ’(1910年)

 

東京都美で行われている‘クリムト展’(4/23~7/10)をみてきた。
この前のGWに東芸大美のコレクション展に足を運んだ際、東京都美は大盛況
でたくさんのクリムトファンが押し寄せていた。それに比べると館内は楽だ
と思うが、外国人も多くかなり賑わっていた。

ゴッホやフェルメール同様、クリムト(1862~1918)は展覧会のキラ
ーコンテンツ。しかも今回は作品の数が25点以上というのだから申し分のな
いラインナップ。だから、入館するとクリムトをトコトンみるぞ、という気に
なる。そのなかで強い磁力を放っているのが妖艶なまなざしが心をざわつかせ
る‘ユディトⅠ’、黄金装飾を尽くして描かれたファムファタルにまた日本で会
えるのだから、クリムトは本当に日本との相性がいい。ユディトの顔ばかりみ
ていると右下にちょこっと描かれているホロフェルネスの首を見落とすので
注意が必要。

初見の作品は予想以上に多くあったが、もっとも惹かれたのが‘女ともだち
(姉妹)’。短冊を大きくしたような縦長の画面に口紅と頬紅が白い顔に浮き立つ女性が二人描かれている。ひとりは正面向きでもうひとりは横向き。艶やかなところは画面の上部のここだけ、ほかは濃いこげ茶の衣装と同じ色や白を
ベースにしたモザイク模様で占められている。この抑制気味の色使いはゾクゾ
クっとさせる官能的な雰囲気をバランスさせている。感心しながらみていた。

チラシで大きく扱われていた‘女と三世代’は所蔵しているローマ国立近美で
2度お目にかかった。1.7mの正方形の画面の中央に顔を横に曲げ幼子を抱
いている女性と髪で顔を隠したお婆さんが描かれている。視線がむかうのは三
人の姿だけでなく母親の髪にまであしらわれた小さな花びら模様と背後の沸き
立つようにでてくる紫、青、黄金の点々。そして、それ以外のところは‘女ともだち’と同様にこげ茶色がフラットに塗られている。

エロチシズムにあふれる裸婦図とはかけ離れた印象を与えるクリムトの風景画。4点あるなかで‘アッター湖畔のカンマー城Ⅲ’と嬉しい再会を果たした。かなり昔だが、はじめてウイーンを訪れたときベルヴェデーレ宮でみて大変感動した。正方形のキャンバスに描かれた風景画というのは印象派の風景画ではみない。興味深いのは湖畔に映る木々の葉と城がスーラの点描画のようにみえること。印象派好きだからこういう絵には敏感に反応する。

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2017.05.10

ココシュカの‘風の花嫁’!

Img_0002     ココシュカの‘風の花嫁’(1914年 バーゼル美)

Img     アルマ・マーラー(1879~1964)

Img_0001  アルマ・マーラー著‘グスタフ・マーラー’(1987年 中公文庫)

若いころスイスのジュネーブに住んでいたが、その頃は美術への関心度は人並みだったので質の高い作品を揃えるチューリヒ美やバーゼル美へ出かけようなどとは思ってもみなかった。

でも、隣の方はバーゼル美に行っている。一週間ほどジュネーブを離れてドイツに滞在したことがあり、そのとき日本人の奥さん仲間と連れ立ってバーゼルへ足をのばしたらしい。二人の西洋絵画の知識は観光客としてルーヴル美で楽しむほどのものだから、どんな絵があったかについては会話にならない。

このバーゼル美にはみたい作品がいくつかあるが、オスカー・ココシュカ(1886~1980)の‘風の花嫁’もそのひとつ。30年前にこの絵の存在を知り、どんないきさつで描かれたかもしっかりインプットされた。ココシュカは25歳のとき7つ年上の女性と恋に落ちた。

その女性はアルマ・マーラー(1879~1964)、23歳の時結婚したマーラーを1911年に亡くして1年くらいたったときだからまだ32歳の女盛り、その美貌に多くの男性が引き寄せられていた。彼女も風景画家だった父親の子どもだから芸術心は旺盛、若いココシュカとの愛にすぐ火がついた。

アルマは‘傑作が描けたら妻になってあげる’とココシュカにいうが、いい絵が出来上がったのに二人の愛は成就しなかった。アルマにとってココシュカは所詮短期間じゃれあった若いつばめ。1915年、アルマは建築家のグロピウスと結婚した。

口さがない人はアルマを世紀末ウィーンの‘ファム・ファタル(魔性の女)’と決めつける。際立つ美しさゆえ男もいちころで参ってしまう。そう呼ばれることをアルマは女の勲章と思っていたかもしれない。


 


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2015.06.08

心をザワザワさせるクリムトの‘ダナエ’!

Img     クリムトの‘ダナエ’(1907~08年)

Img_0001 ベラスケスの‘ヴィーナスの化粧’(1651年 ロンドン ナショナルギャラリー)

Img_0003 パルミジャニーノの‘弓を削るキューピッド’(1534年 ウイーン美術史美)

Img_0002 カラヴァッジョの‘ナルキッソス’(1599年 バルベリーニ宮美)

来年3月西洋美で行われるカラヴァッジョ(1571~1610)の回顧展のことを思うとアートと接する日々のくらしがいっそう楽しくなる。でも絵画に対する鑑賞欲は一人の画家にとどまっておらず、好きな画家であれば何人重なっても腹がいっぱいになることはない。だから、贔屓のクリムト(1862~1918)がまたやってこないかなと妄想する。

クリムト作品でずっとずっと追い求めているのが‘ダナエ’、この絵ほどギリシャ神話の話を生で感じさせてくれるものはない。変身術を駆使して狙った女性と交わるゼウス、このダナエと思いを果たすために変身したのが黄金の雨、牡牛ならわかりやすいが自然現象の雨とか雲に姿を変えるというのは??という感じ。

ベラスケス(1599~1660)の絵をだいぶみてきて、この画家の天才ぶりが理解できるようになってきた。ベラスケスの描く肖像画などもついみとれてしまうが、最も魅了されるのはベラスケスがスペインを離れてローマに滞在しているときに描いたもの。宮廷画家としてのしばりから解放されて芸術家心が刺激されるのか大胆すぎるほどの自由な筆使いで人物を描いている。

その傑作のひとつが‘ヴィーナスの化粧’、スペインでは裸婦はご法度、でもここはローマ。だから女性の描写も自由奔放、鏡を使って女性の顔をちらっとみせるという大サービスをしそのやわらかい肌を生感覚で表現していく。ベラスケスにとって、ローマは画家人生のなかで一番充実していた場所だったにちがいない。

この絵で鏡をもっているキューピッドが主役で描かれているのがパルミジャニーノ(1503~1540)の‘弓を削るキューピッド’、このキューピッドの綺麗な目が心を打つ。女の子のようにもみえる美少年、ヨーロッパを旅行しているとときどきこういうびっくりするほど美しい男の子に出会うことがある。別にそういう趣味があるわけではないが、ついみとれてしまう。

来年大きな楽しみをもたらしてくれるカラヴァッジョもギリシャ神話を題材にした作品を描いている。それはローマのバルベリーに宮国立古代美が所蔵する‘ナルキッソス’、自己陶酔に陥るナルキッソスの姿が映画とか舞台で演じられているような感じで描かれている。この絵をみるとあのイケメンの俳優も鏡の前にたってうっとりしているのかなとつい連想してしまう。こんなことを思わせるほどその描写がリアルなことがカラヴァッジョの大きな魅力。

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2013.12.26

今年はクリムトイヤー!

Img_0001 ‘メーダ・プリマフェージの肖像’(1912年 NY メトロポリタン美)

Img_0003  ‘アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像Ⅰ’(1907年 NY ノイエギャラリー)

Img_0004      ‘踊り子’(1916~18年 NY ノイエギャラリー)

一年間にみた絵画をふりかえってみて嬉しさがこみあげてくるのはやはり贔屓の画家のことを思い出すとき。今年わが家はクリムトイヤーだった。クリムト(1862~1918)にぞっこん惚れており画集に載っている作品をコンプリートすることを夢見ているので、アメリカの美術館と宇都宮美で15点もみれたことは一生の思い出。

1月に訪問したニューヨークのノイエギャラリー。06年にクリムトの‘アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像Ⅰ’が展示されるようになってから、このギャラリーはNYの人気のスポットになったという話を聞いていたので館内では心が踊った。

クリムト好きの女性は多くおられると思うが、その人たちにとってニューヨークはご機嫌な街かもしれない。ノイエギャラリーでは‘アデーレ’、‘踊り子’、‘黒い羽毛の帽子’の3点の肖像画と風景画3点、合わせて6点と対面でき、ここから5分も歩けば着くメトロポロタン美では‘メーダ・プリマフェージの肖像’と‘純白の婦人の肖像’と遭遇、そしてMoMAに寄ると‘希望Ⅱ’もみれる。しめて9点。これは本当に浮き浮きするラインナップ。

手元の画集をみると背景に中国人たちが描かれた‘フリーデリケ・マリア・ベーアの肖像’という作品がMET蔵となっているが、残念ながら姿を現してくれなかった。アメリカにはもう1点ある、それは4月宇都宮美で開かれたクリムト展にやって来たワシントンナショナルギャラリー蔵の‘赤子(揺りかご)’。

宇都宮美まで遠征して鑑賞したクリムトは‘アッター湖のほとり’(ウィーン、レオポルト美)が忘れられない一枚になった。この回顧展にでていた油彩は全部で6点。うち3点は日本の美術館にあるもの。お気に入りは名古屋に住んでいたときよくみた‘人生は戦いなり(黄金の騎士)’(愛知県美)。久しぶりに会ったので、しばらくいい気持でながめていた。 

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2013.05.26

クリムトの花オール・オーヴァー!

Img_0003     ‘けしの野’(1907年 ウィーン ベルヴェデーレ宮)

Img_0001     ‘ひまわりの咲く農家の庭’(1905~06年 ベルヴェデーレ宮)

Img_0005     ‘農家の庭’(1905~06年 プラハ 国立近代美)

Img     ‘りんごの樹Ⅱ’(1916年 ベルヴェデーレ宮)

オーストリアのウィーンは2003年に訪問した。はじめてこの街に足を踏み入れてから20年経っていたので、ウイーン美術史美やクリムトの‘接吻’があるベルヴェデーレ宮殿がとても新鮮に感じられた。ウィーンはヨーロッパではお気に入りの街、あと1,2回行きたいという気持ちを強く持っている。

そのときの楽しみ方はおおよそイメージできている。3つある楽しみの大半を占めているのがクリムト、シーレめぐり。あとは美術史美でチェッリーニの傑作彫刻‘フランソワ1世の塩入れ’をみることと昨年その素晴らしいコレクションが公開されたリヒテンシュタイン美を訪問すること。

クリムト(1862~1918)の作品が沢山あるベルヴェデーレ宮、2回の訪問と日本であったクリムト展などで画集に載っている名画にだいぶ済みマークがついている。でも、まだ9点も残っている。今、クリムト作品の展示についての生の情報がないが、とても一回では終わりそうにない。

そのなかでとくに関心の高いのが正方形の画面いっぱいに花が描かれた風景画。‘けしの野’や‘ひまわりの咲く農家の庭’は花をモチーフにした静物画とちがい、絵にとても力がある。数多くの花が画面全体にオール・オーヴァーに広がり、花の命の輝きを感じさせる。装飾的に描かれているのに花の存在感が強く印象に残るその生感覚、これが一番の魅力。‘ひまわり’と画面構成がよく似ているのがプラハの国立近代美が所蔵する‘農家の庭’、これも大変魅せられる。

‘りんごの樹Ⅱ’は15年くらい前日本にやってきた。大きなアフロヘアのような形をした木に赤や黄色のりんごが豊かに実っている。インパクトのある木のフォルムが今も忘れられない。ベルヴェデーレ宮にはりんごの木を描いた作品がもう1点あたったのだが、こちらは‘アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像’などと同様2006年競売にかけられ個人が所有することになった。これで対面の夢が完全に消えた。

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2013.05.25

もっとみたいクリムトの風景画!

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Img_2     ‘アッター湖畔のカンマー城Ⅰ’(1908年 プラハ 国立近代美)

Img_0001_2     ‘アッター湖畔のカンマー城Ⅲ’(1910年 ウィーン ベルヴェデーレ宮)

Img_0003_2  ‘アッター湖畔ウンターアッヘの家並み’(1916年 ウィーン ベルヴェデーレ宮)

若いころスイスのジュネーブに住んでいたとき、オーストリアのザルツブルクへクルマで行った。クリムト(1862~1918)が毎夏恋人のエミーリエ・フレーゲと一緒に避暑のため出かけたアッターゼー(ゼーは湖の意味)はザルツブルクからそう遠くないところにある。

このアッター湖畔で描いた風景画が全部で何点あるのかわからないが、手元の画集などには13点載っている。このうちお目にかかったのは以前ベルヴェデーレ宮にあり今は個人が所有している‘アッター湖畔ウンターアッヘの家並み’や宇都宮美でみた‘アッター湖のほとり’など5点ほど。残った8点の多くは個人蔵だから、今後本物に出会う可能性はきわめて少ない。

アッター湖はオーストリア国内では最大の面積を誇る南北約20㎞の細長い湖。クリムトが湖に浮かべたボートから望遠鏡も使って描いたカンマー城は湖の北にあるオーストリア王室の夏の離宮。‘カンマー城Ⅰ’を所蔵するプラハの国立近代美は10年前訪問したことがある。

この美術館ではとても残念なことがあった。クプカの美しい抽象絵画やミュシャの装飾性にあふれる人物画と出会ったのに、どういうわけかクリムトの‘乙女たち(処女)’と‘カンマー城Ⅰ’が姿をみせてくれなかった。なにしろはじめての美術館だから館内のレイアウトがよくつかめない。ぐるっとまわったつもりでも一部の展示室は見落としていたのかもしれない。監視員に英語が通じなくてとうとうクリムト作品に会えなかった。一体どこにあったのだろうか?

二度目のプラハはないから、この2点は夢のままで終わりそう。どこかの美術館で‘プラハ近代美展’があるかなと思ったりもするが、これは200%妄想。それに仮に実現しても(しないが)クリムトよりミュシャのいい絵をもってくるのだろう。かえすがえすもクリムトを見逃したことが悔やまれる。

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2013.05.22

クリムトを追っかけて宇都宮美へ!

Img_2     クリムトの‘黄金の騎士’(1903年 愛知県美)

Img_0003_2     クリムトの‘赤子’(1917~18年 ワシントンナショナルギャラリー)

Img_0001_2     クリムトの‘アッター湖畔’(1900年 ウィーン レオポルト美)

Img_0006     マッキントッシュ夫人の‘刺繍パネル’(1904年 グラスゴー美術学校)

宇都宮美で開かれている‘クリムト展’(4/21~6/2)をみてきた。宇都宮まで行っているJR湘南新宿ラインに乗ったのだが、美術館に着くまで3時間40分かかった。バス料金にびっくり。駅前から乗っている時間は20分なのに400円が料金箱に。

クリムト(1862~1918)の生誕150年を記念して企画されたこの回顧展は最初愛知県美でおこなわれ、そのあと東京をとびこして宇都宮へ巡回。クリムトを日本でみるのは3,4年ぶり。作品は愛知県美自慢のお宝‘黄金の騎士’を軸に油彩、素描、そしてウイーン世紀末芸術に集った作家たちによってつくられた家具、工芸品、ジュエリーなどが展示してある。

15年くらい前これと同じようなラインナップのクリムト展をみたが、作品の質はそのときと同じレベル。今回の追っかけ作品は‘黄金の騎士’ではなくワシントンナショナルギャラリーからやってきた‘赤子’とウィーンのレオポルト美にある‘アッター湖畔’。

‘赤子’は1月ワシントンを訪問した際はすでに名古屋へ出張していたため08年のときと同様お目にかかれなかった。だから、ようやくみれたという感じ。画面上のほうで顔をみせている赤ちゃんはぱっとみると端午の節句できれいな服を着せられた日本の男の子を連想させる。

期待通り心に響いたのは‘アッター湖畔’。正方形の画面にはひんやりとした静謐な空気が流れている。印象に強く残るのが波紋を表わす明るいうす緑の点々。その斜めに流れる波をじっとみていると色は違うが福田平八郎の‘漣(さざなみ)’が目の前をよぎった。昨年ウィーンで行われたクリムトの風景画を集めた特別展(レオポルト美)をみれなかったのは残念でならないが、この‘アッター湖畔’と対面できたのでもって瞑すべしの心境。

今年わが家はクリムトイヤー、アメリカ美術館めぐりでクリムト作品に全部で9点(そのうち初見が7点)出会い、宇都宮でも油彩6点(初見5点)が姿を現してくれた。それらはノイエギャラリーにある‘踊り子’(拙ブログ4/04)など画集に載っている作品が多く、クリムト狂いには心躍る鑑賞体験。こんなことは二度とないかもしれない。

クリムト以外の作品ではマッキントッシュの夫人の装飾意匠に大変魅了された。クリムトはエジプトの棺に描かれた目の模様を‘アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像’に使っているが、この‘刺繍パネル’にもこの目が上に描かれている。興味深くながめていた。

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2013.04.04

待望のノイエギャラリーでクリムト三昧!

Img_0003_2        ノイエ・ギャラリーの外観

Img_0001_2     クリムトの‘アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像’(1907年)

Img_0002_2         クリムトの‘踊り子’(1916~18年)

Img_0008_2     クリムトの‘黒い羽毛の帽子’(1910年)

Img_0005_2     シーレの‘緑樹に囲まれた町’(1917年)

5番街にあるノイエ・ギャラリーに関する情報がぐーんと増えたのは11年10月に放送されたBSプレミアムの美術番組‘極上美の饗宴’。おかげでギャラリーのある場所がイメージできた上、ここにあるクリムトは‘アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像’だけでなくほかにも2点あることがわかった。

ここへ是非とも足を運ぼうと思ったのはクリムトが3点もみれるから。でも訪問できる日は月曜日、だから開館してないだろうと半分あきらめていた。ところが、前日のNY観光を案内してくれた現地の男性ガイドさんに休館日を調べてもらったら、火曜&水曜だった。これは運がいい。開館時間は11時(夜6時まで)なので目と鼻の先にあるグッゲンハイムをみたあと寄ればいい。

好きな画家のことゆえ知ってることはもらさず伝えたくなる。ギャラリーは地下鉄4・5・6線86ST駅の前の通りを5番街に向かって7、8分歩くと到着する。ここからはMETへもグッゲンハイムへもすぐ行ける。館内に入ると料金は心づけでいいという。館全体が2月4日新装オープンする美術館のため準備の真っ最中、公開されているのはクリムトの作品が飾られている部屋だけ。急いで2階へ上がった。

ありました、ありました!クリムトの絵が、予定では3点だったが、なんと6点も、ええー、こんなにクリムトがあるの!もう天にも昇るような気分。そしてビッグなオマケがシーレ。これはたまらない。クリムトはここに紹介する3点、プラスTVで知った‘アッター湖畔ヴァイセンバッハの森番の家’(1912年)、‘カンマー城の公園’(1909年)、‘高いポプラの木’(1906年)

以前ウイーンでみたことのある‘アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像’の前ではどうしても2006年に落札された金額155億円のことが頭にちらつく。ウィーンの人たちにとってはこの黄金に輝くクリムトの傑作がベルヴェデーレ宮殿から姿を消したことは残念でならないだろうが、NYへよく出かける美術ファンには楽しみのスポットがひとつふえたことになる。

初見の5点をこころゆくまでみた。とくに長くみていたのは赤が印象的な‘踊り子’と魅力溢れる肖像画‘黒い羽毛の帽子’。そして、シーレの‘緑樹に囲まれた町’にも200%魅了された。わずか7点の鑑賞だったが、忘れられないノイエ・ギャラリーになった。NYへまた来ることがあったらもう一度行ってみたい。

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