2017.06.30

本当にダリの遺体を掘り起こすの!?

Img     ダリ(1904~1989)

Img_0001   ダリの遺体が埋葬されている‘ダリ劇場美’の地下祭室

スペインから興味をそそる話が飛び込んできた。26日、スペインの裁判所がダリの娘という人物の主張をDNA鑑定により確かめるため、ダリの遺体を掘り起こすことを命令したというのである。

報じられるところによると娘を名乗るこの女性は61歳の霊媒師、いかにも怪しいが、母親はダリの家政婦として働いていたとき関係ができて生まれたという。話としてはありそうなことだから、そういうことがあったのか!とまあ受け入れられる。

1989年、85歳で亡くなったたダリの遺骸が埋葬されているのはダリの生まれ故郷、スペインカタルーニャ州のフィゲラスにある‘ダリ劇場美術館’(1974年開館)、この美術館を運営しているガラダリ財団にとってはえらいことがふっかかってきた。当然NO,すぐ上訴した。

仮にDNA鑑定でダリの娘ということになれば、この霊媒師は今財団が管理している遺産の25%が相続できることになる。だから、彼女としては黙っているのはもったいないと思ったとしても誰も文句は言えない。61歳というと生まれたのは1956年。ダリ52歳の頃の子どもということになる。

この頃、ダリとガラの愛は冷めきっていて、ガラは若い燕たちと遊びまくっていた。それでもダリは何も言えなかった。可哀想なくらいガラにほったらかしにされていた。

二人はそんな関係だったから、ダリが愛人をつくったとしてもおかしくはない。でも、ダリは性不能者だったということも聞いているので、子どもがつくれたかどうかは甚だ疑問。さて、この話どう転んでいくのか。

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2016.09.16

期待が大きすぎた国立新美の‘ダリ展’!

Img_0003     ‘子ども、女への壮大な記念碑’(1929年 ソフィアセンター)

Img_0001    ‘見えない人物たちのいるシュルレアリスム的構成’(1936年)

Img_0004     ‘ポルト・リガトの聖母’(1950年 福岡市美)

Img     ‘ラファエロの聖母の最高速度’(1954年 ソフィアセンター)

東京都美のポンピドーセンター展は遅い出動だったのに、‘ダリ展’(9/14~12/12)は開幕日に足を運んだ。場所はこのところヒットを連発している国立新美。ダリ(1904~1989)に魅せられた人は世の中には大勢いることはわかっているが、観客の多さをみるとダリはやはりピカソとともに特別な存在であることを思い知る。

展示されている作品はフィゲラスのガラ=サルバドール・ダリ財団、マドリードのソフィア王妃芸術センター、アメリカのフロリダ州、セント・ピーターズバーグにあるサルバドール・ダリ美、そして国内のダリで評判をとっている美術館が所蔵しているもので構成されている。油彩、オブジェ、ジュエリーなど250点、チラシには日本では過去最大規模のダリ展をうたっている。

この文句に期待して初日に動いたのだが、どうも期待しすぎだった。主要3館の作品でほとんど占められていると思っていたが、これがハズレ大きな作品は皆日本の美術館がもっているものだった。これらは日本にあるダリのビッグ3と勝手によんでいるもの。まさに日本にあることが信じられないほどの傑作、だからこの揃い踏みをみるだけでも出かける価値はあると思うが、すでにみているので心のなかではフィゲラスの大作がみたかったのに、と泣いている。

そのビッグ3とは‘ポルト・リガトの聖母’(福岡市美)、‘幻想的風景’(横浜美)、‘テトゥアンの大会戦’(諸橋近美)、諸橋近美からはもう2点強く印象に残る作品がでている。みてのお楽しみ!

ソフィア王妃センターのダリコレクションでまず足が止まるのは‘子ども、女への壮大な記念碑’、このようにダリは作品を長いタイトルをつけてくれるから画面にすっと入っていけそうな気がするが、シュルレアリスムはそう簡単には近づけない。上のほうに鳥の頭やライオンがみえ、左に裸婦をみつけたが、子どもは一体どこにいるの?これをみるのは2度目だが、ダブルイメージの男の顔を数えるので精いっぱい。

収穫は‘ラファエロの聖母の最高速度’、最近はビッグバンや量子力学などにどっぷり嵌っているから、素粒子や核分裂に関心を寄せていたダリに以前にもまして親近感を覚えるようになった。そして、初期の‘見えない人物たちのいるシュルレアリスム的構成’(ガラ=サルバトーレ・ダリ財団)にハッとした。それは椅子とベッドにできた人型の窪み。これはタイトルの通り。でも、この表現はダリにしか思いつかないとわかってすぐ突き放される。

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2015.06.22

夢の絵画 ミロの‘星座シリーズ’!

Img_2    ミロの‘真夜中のナイチンゲールの歌と朝の雨’(1940年)

Img_0004    ミロの‘暁の目ざめ’(1941年)

Img_0002         マティスの‘イカロス’(1943年)

Img_0003    ポロックの‘彗星’(1947年 ヴィルヘルム=ハック美)

近代西洋絵画のなかで印象派とともに一生のつきあいと決めているのがシュルレアリスム、画面に描かれたものがわかろうがわかるまいがあまり気にしない。意表を突き発想でモチーフが組み合されたり不思議な世界がでてくるだけで心はハイになる。

若いころからずっと関心を寄せているミロ(1893~1983)、これまでバルセロナにあるミロ美へ足を運んだし、国内で行われた回顧展は見逃さず出かけてきた。だから、多くの作品が目に入ったはずだが、まだ縁のないものがある。それは23点描かれた‘星座シリーズ’、ミロ美でそのうちの1点をみたがほかは画集でながめているだけ。その多くはギャラリーや個人が所蔵している。

いつかこの目でと願っている‘真夜中のナイチンゲールの歌と朝の雨’と‘暁の目ざめ’はNYのギャラリー、個人のコレクション。ほかの作品もパリのギャラリーなどにある。対面できる可能性があるのはMoMAが所有する正面を向いたライオンの顔が印象深い‘恋人たちに未知の世界を明かす美しい鳥’。でも2年前MoMAへいったときこれは展示されていなかったから、次の訪問が幸運に恵まれるかどうかはまったく見当がつかない。この‘星座シリーズ’はタイトル通りはるかかなたの銀河のような存在であり続けそう。

マティス(1869~1954)が晩年に制作した切り紙絵で高い人気を誇るのが‘ジャズ’、その一枚‘イカロス’は忘れがたい作品。空から落下するイカロスのまわりを青に浮かびあがった星々がとりかこんでいる。黒で表現されたイカロスのシンプルな造形が目にやきつく。

アクションペインティングの旗手、ポロック(1912~1956)にも星の絵がある。抽象絵画全開の作品ではあるがなんとなくイメージできる‘彗星’、斜めに走る細長い白の線なら氷の塊の彗星とわかる。ポロックは星座や銀河をみるのが好きだったのかもしれない。

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2015.03.26

わかるマグリットと謎のマグリット!

Img_0001      ‘光の帝国Ⅱ’(1950年 NY MoMA)

Img_0003     ‘白紙委任状’(1965年 ワシントンナショナルギャラリー)

Img     ‘透視’(1936年) 

Img_0002     ‘恋人たち’(1928年 NY MoMA)

シュールな作品で西洋絵画の歴史にその名を刻んだ画家は何人もいるが、マグリット(1898~1967)は表現の深い意味はかっこにいれるならまあわかりやすい画家。そして、みる者にとってマグリットの絵にはそこに描かれたものから勝手にイメージを膨らませられる自由さがある。作品が開かれていることがマグリットの人気を支えている理由のひとつかもしれない。

‘光の帝国’をマグリットは何点も描いた。このMoMAが所蔵するのは2作目のもの、これまで4点みたが、どれもシュルレアリスム絵画をみているという感じがしない。描かれているのは夜の屋敷とその前に広がる池、不思議なことといえば空が昼であること。

でも、今の時間が夕暮れ時だとしたら、こんな光景はよく目にする。空の白と家の周りの黒のコントラストを少しゆるくすると、いい風景に遭遇したという気分になる。このようにマグリットは現実の光景が時間の移行のなかでみせるよじれやずれの断面を大胆に表現し意表を突く空間を出現させる。だから、シュールな絵だといって構えてみないで素直に対面するとすっと入っていけることもある。

‘白紙委任状’も同じタイプの作品。タイトルは白紙委任状となっているが、マグリットとつきあうとき題名はかえって邪魔になることがあるから、あの絵にはそんな名前がついていたな、くらいの調子でいたほうがいい。心にとどめるべきは絵の内容とイメージ。

マグリットが好きな方はこの絵を何度もみられているはず。Bunkamuraのだまし絵展には2回ともやって来た。だから、2年連続の登場。女性の乗った馬が森のなかを疾走するとき、木々が数多く並んでいたら馬の胴体や足は一部がこの絵のように分断されてみえるかもしれない。まさに木の間をすりぬけるように移動していく感じ。

‘透視’はじっとみているとなるほどね、と得心がいく。卵がかえって鳥になる、マグリットは時間という要素を画面のなかに描き入れている。モチーフの形をキャンバスに写し取るのが画家にとって絵を描くという行為だが、マグリットがみているのは鳥がその姿になる前の卵。本当におもしろい作品。

画集では何度もお目にかかっている‘恋人たち’、ようやく本物に会えた。今回2点でている。わかりにくいのが2人が顔に布をまきつけて素顔を隠していること。これはなぜ?デ・キリコの影響を受けたマグリット、ひょっとするとデ・キリコの描いたマネキンから霊感を得たのかも。

お気に入りのマグリットがこれほど沢山みれて腹の底から喜んでいる。ミューズに感謝!

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2015.03.25

大マグリット展に乾杯!

Img_0003     ‘ゴルコンダ’(1953年 メニル・コレクション)


Img_0002     ‘終わりなき認識’(1933年)


Img     ‘不思議の国のアリス’(1946年)

Img_0001     ‘自然の驚異’(1953年 シカゴ現美)

今日から国立新美ではじまった‘マグリット展’(3/25~6/27)を早速みてきた。前回みたマグリット(1898~1967)の回顧展は2002年、Bunkamuraで行われたもの。その前はというと、これは出かけていないのだが、27年前の1988年にもあった。場所は東近美、そのときの図録を古本屋で偶然見つけ手に入れた。

今回の回顧展は全部で125点でている。この特別展を監修したのはブリュッセルのベルギー王立美のなかにあるマグリット美(2009年オープン)、だから、出品作には現地でみたものが多く含まれているのだろうと思っていた。ところが、予想がはずれた。目立ほどでもない。

日本の美術館にあるものはシュルレアリスムというタイトルのつく展覧会ではお馴染みの定番作品がずらっとそろっている。これらををみると日本にある西洋絵画ではマグリットが一番充実しているかもしれない。オールスター級のラインナップだから見ごたえがある。

そして、海外からは12か国から美術館や個人が所蔵するものが並んでいる。このうち過去やってきたのは40点くらい。マグリットの作品を130近く集めてくるのだから、二度目のお目見えがこれくらいあるのは仕方がない。全体の2/3は新規の作品でしかもぐっとくるものがここにもあそこにもあるという感じだから、豪華この上ない一級の大回顧展であることはまちがいない。

まずは、これまで体験したことがなくマグリットワールドに200%魅了された作品から。‘ゴルコンダ’はアメリカのヒューストンにある有名なメニル・コレクションのひとつでTASCHENのマグリット本にも掲載されている。この絵をみると戦争映画に映し出されるシーンを連想する。それは兵士たちは空からパラシュートで落下している光景。

ここで空中を埋め尽くしているのはシルクハットを被りコートを羽織った紳士たち。みな同一人物で背丈が3つに分類されているだけ。地上近くにいるのは最も背が高いのと真ん中のグループ、そして上にいくにしたがって背の低い人物になっていく。この計算されたグルーピングにより空は無限に広がる感じになり画面は同じ人物が異様に密集するという不思議な世界に変わる。

ハッとする作品はいくつもあったが、最も驚いたのは‘終わりなき認識’、正面は部屋の壁のはずだが、ここだけは窓になり外の風景をみせている。その風景はすぐ近くにみえるものではなく遠くの峻厳な山々、そして谷間の上には白い巨大な球が浮かんでおりそのてっぺんに男性が立っている。どうやらそこからこちらを眺めているよう。これはおもしろい。

ニヤニヤしっぱなしだったのが‘不思議の国のアリス’、隣の女子大生も笑ってみていた。太い幹の一部は人間の顔になっているのはじつにシュール、この幹人間、あまり違和感がなくすっと近づいていける。そして、幹の色彩表現が目に焼きつく。ルノワールの筆致によく似ている。

この底抜けに楽しい絵に対して、ちょっと緊張感を強いられるのがシカゴからやってきた‘自然の驚異’、海上に浮かぶ帆船や空は晴れ晴れした明るい色調で描かれているのに浜辺では岩のベンチに不気味な姿をした魚人間が2人肩を寄せ合っている。このアンバランスな取り合わせが強く心に刻まれる。

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2014.12.13

謎だらけのデ・キリコの世界!

Img_0001     ‘謎めいた憂愁’(1919年 パリ市近美)

Img     ‘不安を与えるミューズたち’(1974年 デ・キリコ財団)

Img_0002     ‘神秘的な動物の頭部’(1975年 パリ市近美)

Img_0003     ‘田園風景のなかの静物’(1948年 パリ市近美)

汐留ミュージアムで行われている‘デ・キリコ展’(10/25~12/26)、出かけるかどうか迷ったが、日曜美術館でおもしろい話が聞けたので訪問することを決めた。

デ・キリコ(1888~1978)の絵というと人気のない街の一角に建物の影が長くのびている作品というイメージがこびりついている。描かれているのはものだけ、人物は一人もでてこない。街のモデルとなったのがトリノ、一度訪問したことがあり街中につくられているアーケードも体験した。絵とはちがって通りを進むと多くの人に出会った。

ところが、日曜美術館に登場した地元の美術史家が興味深いことをしゃべっていた。デ・キリコがトリノに滞在していたころは街にはフィアットなどのいくつもの工場がつくられれ工業都市をして発展していた。多くの人は工場に働きに行き昼間街には人がほとんどいなかったという。

だから、デ・キリコの絵に人が登場しないのは街の静寂さをつくるためにそうしたのではなく当時の実際の光景だった!そういうことだったのか、という感じ。これだから美術番組はやめられない。これまで読んだデ・キリコ本にはこんな話は一切出てこなくて形而上絵画についての理屈っぽい解説ばかり。

4年前ローマを旅行したとき幸運にも大規模なデ・キリコ展に遭遇し、分厚い図録(イタリア語)もしっかり手に入れた。今回の回顧展は数こそ少ないが展示されている作品の質の高さは同じレベル。じつはチラシに大きく使われている‘古代的な純愛の詩’や初期の作品‘謎めいた憂愁’、そして画業の後半に描かれた‘エブドメロスの帰還’、‘神秘的な動物の頭部’などはローマでもお目にかかった。

初見で収穫だったものが予想外に多かった、これはこの展覧会が一級の回顧展であることの証、だからものすごく得した気分。ローマでみたと完璧に思ったのが‘不安を与えるミューズたち’、初期の作品とほとんど変わらないから、日曜美術館をみていなければこれ前みたよ、となったにちがいない。50年後に描かれたリメイク版からは地面に遠近法を示す線が消えている。

静物画は3点、どれも長くみていた。お気に入りは風景を背景にして果物を描いた‘田園風景のなかの静物’。これも一種のシュールな絵。また、デ・キリコの作品?というくらい写実性豊かな風景画もある、みてのお楽しみ!

日曜美術館に背中を押された格好になったが、出かけたのはいい選択だった。

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2014.08.27

納得の‘進化するだまし絵展’!

Img_0002     アンチンボルドの‘司書’(1566年 スコークロステル城)

Img ダリの‘海辺に現れた顔と果物鉢’(1938年 ワズワース・アテネウム美)

Img_0004     マグリットの‘白紙委任状’(1965年 ワシントン国立美)

Img_0001     ヒューズの‘生き写し’(2013年)

Bunkamuraで開催中の‘進化するだまし絵展’(8/9~10/5)を楽しんだ。世田谷美のジャポニスム展は2点買いの展覧会で、こちらのだまし絵展は1点買い、お目当ての作品が1,2点しかなくてもそれが特別魅せられるものであれば俄然でかける、美術鑑賞は量より質を重視するのが昔からの基本スタンス。

だまし絵展での期待はただ一点、アンチンボルド(1526~1593)が1566年ころ描いた‘司書’。多くの本を使って人間の上半身を形づくったこのへんてこな絵の存在を知ったのはTASCHENのアートシリーズを手にいれたとき。鬼才アンチンボルトには大いに関心があるから、この本に載っているものは1点でも多く対面したい。

しかし、この作品ははなから諦めざるをえない。なにしろ絵があるのはスウェーデンのスコークロステルというお城。どう考えても行けない。前回のだまし絵展に登場した‘ルドルフ2世’もこの城の所蔵だったが、Bunkamuraが抜群の企画力を発揮してくれ日本での鑑賞が実現した。そして、思った。‘2度目の奇跡は起こらないな、司書は本だけで楽しもう’

ところが、奇跡がまた起こった。目の前に本を抱えた‘司書’がいる。この絵で200%感心するのが頭の髪に開いた本を用いていること。一頁々が髪らしくみえるから不思議。また、下の付箋を手の指にみせているところもおもしろい。

ここでも大きなおまけがあった。アンチンボルドがなんともう1点でている。TASCHENに収録されてない‘ソムリエ’、大阪市がこの作品を手に入れていたとは!美術館は何年経ってもできないのに作品だけはせっせと買い込んでいる。

作品の前で思わず声がでたのがダリ(1904~1989)の‘海辺に現れた顔と果物鉢’、これは驚いた。Bunkamuraは本当にいい美術館。この絵はダリの追っかけ画リストに入れているが、本物に出会う可能性は極めて小さい。そんな絵がダリの回顧展でなくだまし絵に現れた。ミューズに感謝、真ん中の顔と右上の犬はすぐわかったが、左のうさぎは何度見てもダメだった。

マグリット(1898~1967)は3点あったが、‘白紙委任状’が再登場。これはお気に入りの作品。木々の間を女性を乗せた馬が走っているが、目の錯覚でこういう風にみえることがあるかもしれない。マグリットのシュールな絵はダリの夢の世界とは違ってこういう錯覚から生まれてくることも多い。

今回不思議でならなかったのがヒューズ(1939~)の‘生き写し’、どんなナゾかはみてのお楽しみ!

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2013.12.15

植田正治の写真はこんなに楽しかったの!

Img_0002     ‘パパとママとコドモたち’(1949年)

Img_0003     ‘ボクとわたしのお母さん’(1950年)

Img_0004     ‘砂丘モード’(1883年)

Img_0005     ‘幻視遊間’(1987~92)

絵画や彫刻に較べて写真は関心が薄いので、これまで写真展をみるために展覧会に足を運んだことはない。ところが、植田商正治という写真家の回顧展(10/12~1/5)が東京駅ステーションギャラリーが行われるという情報に接し、心がちょっと揺れた。行くか行くまいか迷っていたら、2週間前日曜美術館に登場した。写真についての知識がないぶんすごく新鮮でおもしろかった。これで決心がつき東京駅まで出かけてきた。

写真のことはほとんど知らない。木村伊兵衛や土門拳や林忠彦、篠山紀信、荒木経惟、杉本博司くらいは知っているがそのほかの写真家となると誰だっけ?という感じ。植田正治(1913~2000)の名前はインプットされているが、お目にかかった写真は6、7年前横浜美であった展覧会でみた3点のみ。でも、その中の一枚‘パパとママとコドモたち’がそれ以来ずっと気になっていた。

その後、この写真家が生まれ故郷の鳥取の境港市で写真館を営みながら写真を撮り続けていたことや伯耆町(ほうきちょう)に植田正治写真記念館があることを知った。植田正治についての情報はこれくらいしかない。だから日曜美術館にでてきた話は興味深く、写真界の動き、技法、そして植田正治の写真のスタイルと撮り方などがすこしばかりわかった。

植田の作品は世界中の写真家の間ではUEDA-CHOとして絶賛され、1978年にフランス国立図書館から作品14点が買い上げられた。そして、1980年代フランスのファッションブランドの広告写真の撮影を依頼される。家族を撮った演出写真の舞台だった鳥取の砂丘で30年後ファッション写真のためにカッコいいモデルたちがポーズをとっていたとは!ところでファッションブランドってどこ?シャネル、ピエール・カルダン、カルチェ、ルイ・ヴィトン、エルメス?

今回の回顧展で沢山収穫があった。筆頭は‘ボクとわたしのお母さん’、お母さんの優しい笑顔がすばらしい、200%感動した。‘砂丘モード’のシリーズのなかで外人のモデルを撮った作品をみてすぐ連想したのがマグリット。‘パパとママとコドモたち’のときはその不思議な感覚はマグリットのシュールな絵に結びつかなかったが、お面をつけた男性と宙に浮く帽子は完璧にマグリットの世界をイメージした。

また、赤や青や緑で殻の先が彩られた落花生が暗い空を浮遊している‘幻視遊間’もマグリットの得意とするシュール表現と似ている。植田正治はマグリットの絵が好きだったのだろうか?これについてはまったく情報がないが、マグリットをかなり意識していたように思える。当たっている?

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2013.07.26

エンジョイ 海百景! クールベ、クレイン、マグリット

Img_0003     クールベの‘波’(1870年 西洋美)

Img_0005     クレインの‘ネプチューンの馬’(1892年 ミュンヘン ノイエピナコテーク)

Img_0008     マグリットの‘大家族’(1963年 宇都宮美)

Img_0006     マグリットの‘誘惑者’(1951年)

フランスの画家クールベ(1819~1877年)が気になりだしたのは西洋美で海岸に打ち寄せる波の絵をみてから。波をモチーフにした作品はその後日本の大原美にあるものや08年の大回顧展(パリ、グランパレ)に出品されたものなどを含めて10数点みたが、西洋美にある波の形に最も魅せられている。

波がこのくらい大きいとサーファーはすぐにでも海にとびだしていくのだろう。水の動きを描くのは大変難しい、波の形はできては消えるから、この形を目に焼きつけるのは至難の業。クールベが写真も活用して表現した波はじつに真に迫っている。暗い海辺に白い波頭ができそして崩れていく光景は大波警報を知らせる気象ニュースの映像を見ているよう。どの絵も足をとめさせるが、今年の1月はフィラデルフィアとメトロポリタンで2点みた。

クレイン(1845~1915)の‘ネプチューンの馬’はまだ縁がないが、思い入れの強い作品。はじめてみたときハッとしたのは波と馬の姿が重ね合わさっているところ。おもいろいアイデア、シュルレアリストのダリがこのダブルイメージをみたら裸足で逃げるにちがいない。左端ではまだ波と馬がまじりあい輪郭はぼやけているが、右にみえる海の神ネプチューンは波が変身した美しい白馬にまたがっている。この絵を所蔵しているのはミュンヘンにあるノイエピナコテーク。この絵のほかにもマネ、ゴッホなどのいい絵があるから、いつか足を運びたい。

マグリット(1898~1967)の‘大家族’はクリムト展をみるためでかけた宇都宮美で久しぶりに会った。絵の存在を知ったのは30年くらい前で、そのときは個人蔵となっていた。不思議な絵だなとは思ったが、意外にもそのシュールさはダリの作品のようにどぎまぎという感じでもなかった。

巨大な鳩にあっけにとられるものの広重の名所江戸百景にも大きな鷲がでてくるから、想像力をふくらませたマグリットが海の上の鳩を置いたことにそれほど違和感を感じなかった。下の波の描き方はクールベタイプ、違いは画面のなかに明るい空を暗い空を同居させていること。そして、マグリットの真骨頂は白い雲と鳩の頭がつくるダブルイメージ。

‘誘惑者’も絵のなかにすっと入っていける。帆船の帆も船体もみな波の模様というのは確かに変だが、遠くでみれば船は小さくなるから波が船全体におおいかかるイメージがする。で、船も海も一緒の模様にしてしまおう、となったのかもしれない。マグリットはイメージがちょっと跳ねるところを表現するのが天才的に上手い。

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2013.03.29

MoMA(7) シュルレアリスム エンターテイメント!

Img_0003_2     マグリットの‘光の帝国Ⅱ’(1950年)

Img_0002_2     マグリットの‘偽りの鏡’(1928年)

Img     クレーの‘魚のまわりで’(1826年)

Img_0001_2     クレーの‘猫と鳥’(1928年)

美術本に載っている有名な絵と対面するときは特別な感情が湧き上がってくる。MoMAにはそんな絵が4点ある。ピカソの‘アヴィニョンの娘たち’、シャガールの‘私と村’、ダリの‘記憶の固執’、そしてモンドリアンの‘ブロードウェイ・ブギウギ’。

1990年、1993年にここへ来た時この4点は2回とも揃い踏みだった。ところが、今回はちがった。展示してあったのは‘アヴィニョンの娘たち’と‘ブロードウェイ・ブギウギ’、シャガールとダリはローテーションのため倉庫でお休みなのか、それともたまたま他館へ貸出し中なのかわからないが、定番の名画がないと面食らう。

フィラデルフィア美でシャガールは数点みることになっていたが、時間に追われパニック状態になり展示室をひとつとばすという決定的なミスと犯したため対面のチャンスが消えてしまった。そして、MoMAでも‘私と村’と遭遇できず、悪い流れが2日続いた。

シュルレアリスムは代表格のダリは1点も展示してなかったが、マグリット2点、ミロ4点、タンギー2点、エルンスト1点のラインナップ。そして、半分シュルレアリストのクレーが‘魚のまわりに’や‘猫と鳥’など5点。このなかでとくに印象深いのがマグリットとクレー。

ここにあげた4点はすでにみているものだが、こういういい絵は何度みても楽しい。展示室のなかで一際輝いているのがマグリット(1898~1967)の‘光の帝国Ⅱ’、ブリュッセルの王立美にあるものは縦長のカンバスなのに対してこちらは横長。この絵はぱっとみるとどこがシュールなの?という感じ。夕暮れ時は昼間の残像があるのでこんな光景に出くわすことはままある。

‘偽りの鏡’もなんとか絵のなかにはいっていける。画面いっぱいに描かれた目が強いインパクトをもっているが、瞳と雲のダブルイメージはまあわかりやすいし、瞳のむこうに大空が広がっていることもイメージできる。マグリットのシュール画はダリの夢の世界とはちがっていつも見慣れている光景がモチーフに使われているので、エンターテイメント感覚で楽しめるのが特徴。

クレー(1879~1940)の作品のなかで最も好きな絵‘魚のまわりで’と再会した。魚や丸は小学生の子どもでも描けそうだが、お皿の青やまわりの黄色の配色には天性のカラリスト、クレーならではの豊かな才能が発揮されている。しばらくいい気持でみていた。

絵の前でニヤニヤしていたのが‘猫と鳥’、額のところに描かれた鳥はこの猫がこれから食べてしまおうと考えている鳥が頭にちらついていることの表現だろう。猫の気持ちがこれほど伝わってくる絵を歌川国芳がみたら裸足で逃げるにちがいない。

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