コロッセオと剣闘士!
古代コーマ時代、民衆の一番の楽しみといえば剣闘士競技と戦車競争。ローマでは80年に完成したコロッセオでくりひろげられる剣闘士の真剣勝負が観客を熱狂させた。5万人を収容したというこの巨大な円形闘技場のなかに入ると、観客たちの興奮した声がまわりから聞こえてくるような錯覚にとらわれる。
コロッセオは落成した後もいろいろ追加工事が行われ、アリーナの地下には3層の奈落ができた。これによりせりだし装置を使って猛獣やグラディエーターたちを素早く登場させるといったサプライズの演出も可能になった。また、観客席をおおう天幕もつくられた。この天幕の素材は美しいシルクだったという。
剣闘士の多くは現在のセルビア、ブルガリアにあたるモエシアやトラキアの出身。BC73年に起こったスパルタカスの乱のリーダー、スパルタカスもトラキアからローマに連れてこられた奴隷といわれる。剣闘士の試合で目に焼きついているのは古い映画ではカーク・ダグラスが演じた‘スパルタカス’(1960年)、そして大ヒットしたラッセルクロウ主演の‘グラディエーター’(2001年)。これは映画館に足を運びみたが、腹の底から楽しんだ。
剣闘士の誕生はBS3世紀の終わり頃。有力者が死んだとき追悼するために捕虜たちを戦わせたのがグラディエーターのはじまり。剣闘士の試合が民衆の最大の娯楽になると、強い剣闘士はローマ人にとってスターだった。3000万円くらいで取引されたという。食事も十分に与えられ、ケガをすると優秀な医師が治療した。
剣闘士はただのスターではなく男らしさの象徴。ローマの女性たちは彼らの魅力に夢中になったという。でも、筋肉隆々の体ではなく、実際は炭水化物中心の食事を大量に与えられたため、かなり太っていた。太らされたのは剣で刺されても厚い脂肪で体を守り、多くの試合にでられるから。興行師は金勘定をちゃんとしている。
いろいろタイプの違う剣闘士がいた。網を手にしたレティアリウス、魚の兜をかぶったムルミッロ、槍を持つホプロマスク、曲がった剣を持つトラーク、古代ローマ軍の兵士の格好をしたプロボカトール、、、戦い方としては剣と同じくらい楯を武器として使った。
おもしろい話は網と槍をもって対戦相手から逃げ回るレティアリウスは観客から軽蔑される存在で、剣闘士の訓練所でも彼らは片身の狭い思いをしていたという。逃げ回る姿は堂々と真正面から戦うことを美学とするローマ人には受け入れがたかったにちがいない。
剣闘士の彫像はこれまでみたことがないが、ボクサーの拳闘士はローマの国立博でお目にかかった。疲れきった表情をみていると激しく戦ったグラディエーターも試合のあとはこんな姿だったのではと思えてくる。へこんだ鼻や体のあちこちにできた傷など写実的な描写に息を呑んでみていた。こんなすばらしい彫像をみれたことは一生の思い出である。
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