春日八郎の歌謡曲と結びつくカズオ・イシグロの小説づくり!
ノーベル文学賞受賞者 カズオ・イシグロ
日本の歌謡曲や演歌を聴くのはクラシック、オペラ同様、昔から大きな楽し
みとなっており、美術と音楽に関しては食べ物とちがって好みの幅を広くと
り、分野を限定しないように心がけている。最近手に入れてものはMY図録
づくりなどの軽作業のとき、音量を下げてバックグラウンドとして流してい
るので、いい曲だと脳を心地よく連続的に刺激し続けている。
そのお陰で心の琴線にふれるメロディだけでなく歌詞にも感情を揺すぶられ
ることが多くなった。それを何度も感じるのが春日八郎のベスト&ベストが
選曲されたCD。たとえば、♪♪‘別れの波止場’は映画のワンシーンを観てい
るような歌詞になっている。
♪♪そんなに泣きたきゃ 泣くだけお泣き
あとで笑顔に 変るなら 変るなら
俺とおまえにゃ
これが別れだ 最後の夜だ
ああ やがて霧笛の 鳴る夜だ
そんなに行きたきゃ 行こうじゃないか
いつも歩いた 波止場道 波止場道
俺とおまえにゃ
これが別れだ 愛しい道だ
ああ きょうは出船の 待つ道だ
そんなに飲みたきゃ たんまりお飲み
飲めばつらさも まぎれよう まぎれよう
俺とおまえにゃ
これが別れだ 淋しい酒だ
ああ あかの他人に なる酒だ
この歌に200%嵌り、歌手というのは偉大な存在だなと思いながら、
2017年にノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロが受賞の記念講演
で語った小説の創作秘話が重なってきた。若い頃ロックスターを夢見たイシ
グロは作品を書くときの心構えについてこう言っている。‘いろんな場面で
歌手の歌声から重要な教訓を学んできた。歌うときの人間の声は、底知れな
いほど複雑に絡みあった感情でも表現できるものです。影響を受けた歌手は
ボブ・ディラン、レイ・チャールズ、ブルース・スプリングスティーンら’。
‘歌唄から何かを感じたとき、私は自分に「そう、これだ」と言います。
「あの場面にこれをーこれに近い何かをー取り込まねば・・・」と。それは
言葉では表現しきれない感情ですが、歌手の歌声にはちゃんとあって、私は目
指すべき何かをもらったと感じます’
イシグロは英国人執事が主人公の‘日の名残り’を書き終えたものの、何か欠け
ていると思っていた。で、米国のミュージシャンが唄うタフガイを貫いてきた
男の心が悲しみで崩れる歌を聴き、感情の壁をつくり鎧をまとっていた執事が
一瞬鎧にひびが入る場面を最後につくり、書き直したという。
♪♪‘そんなに泣きたきゃ 泣くだけお泣き’、今、春日八郎節に聴き惚れている。

































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音楽はクラシック、オペラだけでなくジャズ、演歌なども楽しんでいるが、普段はTVの歌番組をみたり、CDで日本人歌手の歌を聴くことがほとんどない。

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