2010.04.18

話題のチューリヒ歌劇場の‘トスカ’を観た!

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16日(金曜)のNHK芸術劇場はチューリヒ歌劇場の‘トスカ’(プッチーニ、全3幕)をやっていた。昨年4月の公演。最近は美術のほうへエネルギーを注いでいるため、TVでオペラを聴くことがめっきり少なくなった。だから、たまに観る人気の演目がすごく新鮮。

昨年の11月か12月に放送されたミラノ・スカラ座の‘アイーダ’(バレンボエム指揮)はアイーダ役のヴィオレッタ・ウルマーナ(ソプラノ)の美しい歌声にとても感激したが、この‘トスカ’にもすばらしいテノール歌手が出演していた。

画家カヴァラドッシを演じているのはミュンヘン生まれのヨナス・カウフマン(上の画像)。今、ウィーン国立歌劇場やメトロポリタン歌劇場などで引っ張りだこのテノールだそうだ。イタリア語、フランス語、スペイン語がしゃべれ、ドニゼッティ、ヴェルディ、プッチーニと幅広いレパートリーをもっているという。はじめてその歌声を聴いたが、なかなかいい。しかも、すごいイケ面。人気が出て当たり前だなと思った。

警視総監スカルピアのトーマス・ハンプソンはしばらくみないうちに、髪には白いものがみえ恰幅のいい中年男になっていた。バリトンというとホアン・ポンスをすぐ思い浮かべるが、ハンプソンのスカルピアのほうがポンスより凄みがあり残忍な性格がよくでている。

嫉妬深いトスカ役のエミリー・マギーははじめてみた。瞬間的に脂肪のついた松坂慶子を連想した。ワルのスカルピアと美貌の歌姫トスカの裏切り合いについてはゲーム理論との関連で拙ブログ07/7/10でふれた。

この公演では二人のやりとりが観客の心にぐさっとくるような演出になっている。琴線にふれる‘歌に生き、恋に生き’をトスカが悲しみのはてに歌うのをスカルピアは壁にもたれかかり聴いている。上半身には強く光が当たり、その迫真的な明暗描写はまるでカラヴァッジョの絵をみているよう。

残念だったのがカウフマンが歌う名アリア‘星はきらめき’(05/1/2)。マイクの設置がうまくいかなかったのか声をよくひろってなく、音量が落ちていた。このオペラ一番の聴かせどころを楽しみにしていたのに、ちょっと拍子抜け。でも、これはご愛嬌。

こういうすばらしいオペラをみると、ヨーロッパに住んでいる人が羨ましくなる。魅力のテノール、カウフマンと話題の演出で注目をあつめるチューリヒ歌劇場がしっかりインプットされた。オペラ戻りに拍車がかかりそう。

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2007.09.07

ルチアーノ・パバロッティ 死去

1026パバロッティがすい臓がんのため亡くなった。まだ71歳というのに。

あの美声がもう聴けなくなると思うと悲しくてたまらない。心からご冥福をお祈りしたい。合掌!

パバロッティとのつきあいは90年、ドミンゴ、カレーラスとともにローマのカラカラ浴場で行った野外コンサートあたりから。ワールドカップ決勝戦の前に開催されるこの3大テノールの競演は94年、98年、
02年と4回行われた。いずれもビデオ収録し、Myクラシック・オペラビデオコレクションのなかの貴重な一本になっている。

そのなかでもカラカラ浴場での3人の歌声がいちばん印象深い。パバロッティはこのとき55歳。ときどき聴いているが、高音がよくでており、歌い終わったあとは思わず会場にいる人たちと一緒に手をたたきたくなる。また、あの人懐っこい笑顔がたまらなくいい。

持ち歌はナポリ民謡からヴェルディ、プッチーニまで幅広く、いい曲ばかり歌ってくれる。“帰れソレントヘ”、“オーソレミオ”、、、そして最後にパバロティの代名詞となった“トゥーランドット”の名アリア“誰も寝てはならぬ”を熱唱。このアリアの名曲を希代の名テノール、パバロッティがのびやかな美声で歌い上げる。沢山聴いたオペラやガラコンサートのなかで、感激度いちばんはこのシーン。

3大テノールは日本で2回公演している。96年と02年のワールドカップのとき。96年のパバロッティが面白かった。美空ひばりの名曲“川の流れのように”をカレーラスとドミンゴは歌詞をしっかり覚えて歌っているのに、パバロッティはずるして日本語がでてこない。ご愛嬌である。02年、再度3人で競演したときは、ドミンゴ、カレーラスに較べパバロッティの声は明らかに元気がなかった。

96、7年くらいから生地モデナではじめた“パバロッティ&フレンドコンサート”(孤児救済チャリテイ、2度BS2で放映)には豪華なゲスト歌手が登場する。オペラとロック、ポップスとのクロスオーバーだからメチャクチャ楽しい。とくに99年はスパイクリー監督が撮影を指揮しただけにカメラワークが秀逸。

BBキングのギター演奏やジョー・コッカー、リッキー・マーチン、マライア・キャリー、ライオネル・リッチーなど大御所や人気の若手の歌声に会場全体が大興奮。こういうビッグネームを集められるのだからパバロッティの人脈はすごい。今、多くの仲間たちが彼の死を悲しんでいることだろう。

愛蔵のビデオを流して、パバロッティを偲びたい。

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2007.07.10

歌劇「トスカ」と囚人のジレンマ

920ウィンブルドンの決勝戦は勝負がつくまで時間がかかるので、最初の1、2セットはゲームとゲームの間、BS2の“3大テノールのガラコンサート”をみていた。

昔は“3大テノール”というと、パヴァロッティ、ドミンゴ、カレラスだったが、この日本の管弦楽団の演奏でオペラの名アリア(拙ブログ05/1/2)を歌っていた3人はあまり馴染みのない歌手だった。

テニスからこちらにスイッチしたとき、運よく聴けたのが“トスカ”(プッチーニ作曲)の三幕で歌われる“星は光りぬ”。これはアリアのなかでは最も好きな曲である。3人のうち年長の歌手が熱唱するこの名アリアを聴き、いつものようにいい気分になったが、今回は以前とはちょっと違ったことを頭のなかにえがきながら聴いていた。

そのちょっと違うことを述べる前に、“トスカ”のあらすじのことから。このオペラはかなり過激で、とくにラストは胸をかきむしられる。人気のオペラはハッピーエンドより、登場人物が死ぬといった悲劇的な終わり方が多いが、最後のシーンではこのトスカが一番衝撃的。美貌の歌姫、トスカがローマのサンタンジェロ城の胸壁から身を投げる場面で劇は終わり、幕が下りたあとしばらく重い空気につつまれる。

根っからの悪役、スカルピア(警視総監)に従うふりをして裏切ったトスカは恋人の画家、カヴァラドッシと幸せを手に入れるはずだったのに、逆に騙されて地獄に突き落とされる。この悲劇の文が織りなす息もつかせぬ緊張感と美しいアリアがこのオペラの最大の魅力である。

で、以前と違う思いでこのオペラの名アリアを聴いたというのはゲーム理論の“囚人のジレンマ”との関連を知っていたから。バラシュ著“ゲーム理論の愉しみ方”(河出書房新社、05年12月)のなかに、トスカとスカルピアの裏切り合いが“囚人のジレンマ”と同じ図式として出てくるのである。ゲーム理論の本にオペラの話しが登場するとは意外だったが、理論家アナトール・ラパポートがトスカに囚人のジレンマの要素があると最初に指摘していた。

ごく簡単に論点をまとめると。ワルの警視総監、スカルピア(左の画像の右)はトスカ(左)を自分の女にしようと、卑劣にもトスカに取引をもちかける。“自分の女になるなら、銃殺刑が決まっているお前の恋人カヴァラドッシを生かすため、銃殺隊に空砲を撃つように命じよう”。トスカには2つの選択肢がある。スカルピアに身をまかせるか、従うとみせかけて、すきをついて刺し殺すか。一方、スカルピアも腹黒く考えている。約束通り、銃殺隊に空砲を命じるか、それともトスカを裏切り、実弾を撃たせ、憎い恋敵を葬り去って、トスカを自分のものにするか。

ここで二人が選択したのは自分本位の裏切り。トスカは偽の処刑の後に、二人で国外に逃亡できるよう通行証を要求し、スカルピアがそれを書いている間に彼を刺し殺す。そして、処刑に引き出されたカヴァラドッシに段取りを説明し、うまく死んだふりをするように言い残して、物陰に隠れる。銃声が鳴り響き、倒れたカヴァラドッシに駆け寄ると、カヴァラドッシは演技でなく本当に血で染まっていた。

よく知られているように囚人のジレンマでは、共犯者二人はともに黙秘すれば1年の軽い刑ですむのに、“裏切って自白すると捜査に協力した返礼として無罪放免にしてやる。相棒は30年刑務所暮らし”と検察官から囁かれるとお互いに自白してしまう。結果、二人とも10年の刑をくらう。黙秘するか、自白するか厳しいジレンマに陥るが、悲しいことにここでは裏切りは最も合理的なのである。

トスカとスカルピアのゲームの場合、トスカにとって、最良の結末はスカルピアを裏切って殺し、恋人のカヴァラドッシが助かること。最悪はスカルピアの言いなりになったのに、恋人の命が奪われること。スカルピアにとって一番いいのは、トスカを奪い、カヴァラドッシが死んでくれることで、最悪の結末は自分が殺され、カヴァラドッシが生き残ること。で、二人とも裏切ることになる。あまり硬い話しになってもいけないから、この辺で。

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2006.01.03

モーツァルトのフィガロの結婚

262今年はモーツァルト生誕250年にあたる。昨年からこれにあわせ、モーツァルトの演奏が多くなっており、年末恒例のベルリンフィル・ジルヴェスターコンサートで演奏された曲も全部モーツァルトだった。

クラシックあるいはオペラのビデオ収録は以前に較べ、回数が少なくなっているが、サイモン・ラトルが指揮するベルリンフィルの演奏だけは欠かさず録画するようにしている。今回はモーツァルト尽くしなので、元旦からいつも以上に楽しい気分で聴いている。

演奏されたのは“フィガロの結婚序曲”、“ピアノ協奏曲変ホ長調K.271”(ピアニ
スト、アックス)、“交響曲38番・プラハ”、“フィガロの結婚、第4幕最終場面”。
“フィガロの結婚”はモーツァルトがつくった人気オペラ・ブッファというだけでなく、
全てのオペラを代表する作品のひとつ。その軽やかな序曲が流れてくると、一気に
モーツァルトモードになり、じわじわとでてくるα波で気分が爽快になってくる。
やはりこの“フィガロの結婚”はザ・モーツァルト。

聴きどころのアリアや重唱がいくつもある。中でも伯爵の小姓ケルビーノが歌う“恋と
はどんなものかしら”はアリアの名曲として名高い。このアリアとモテット“踊れ、喜べ、
幸いなる魂よ”を聴くといつも心が洗われる。まだ、このオペラを劇場で聴いたことは
ないが、Myベストオペラビデオで楽しんでいる。これまでモーツァルトのオペラは何回と
なく収録したが、今はベストを残し定期的に聴いている。

★フィガロの結婚(アバド指揮ウィーン国立歌劇場、91年、アルマヴィーヴァ伯爵を
            ライモンディ、伯爵夫人をスチューダーが演じている)
★ドン・ジョヴァンニ(ムーティ指揮ミラノスカラ座、87年、トーマス・アレン、クルベロ
             ーヴァ)
★コシ・ファン・トゥッテ、女はみんなこんなもの(アルノンクール指揮ウィーン国立
              歌劇場、89年、クルベローヴァ、フルラネット、ストラータ)
★魔笛(ムーティ指揮ミラノスカラ座、95年/パリオペラ座、01年)
★後宮からの誘拐(ザルツブルグ音楽祭、97年)

今年は内外でモーツァルト関連の演奏会が色々企画されてるようだ。モーツァルト好
きにとっては楽しい一年になりそう。また、2,3年前のようにビデオ録画が忙しくなる。
最近、タイミングよく堀内修著“モーツァルト オペラのすべて”(平凡社新書、05/12)
という本がでた。出版社も抜け目がない。堀内氏の本は2冊目だが、この本も読みや
すくて面白い。

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2005.07.29

ワーグナー

2,3日前の新聞に、ドイツのバイロイト音楽祭で日本人の指揮者、大植英次
さんがはじめて登場し、“トリスタンとイゾルデ”を指揮し、聴衆から盛んな
拍手を浴びたという記事がでていた。ワグネリアンの聖地、バイロイトでは
毎年7月末~8月末に上演されるワーグナーの楽劇を聴きに世界中から
ファンが集まってくるという。

ワグネリアンではないが、ワーグナーや同じロマン派のR.シュトラウスの
オペラはよく聴く。NHK,BS2で放送されたこの二人のオペラを長年
かけてビデオ収録した。

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2005.02.20

歌劇「ヘンゼルとグレーテル」とアンチンボルド

16普段は紳士淑女が集まる歌劇場に子供たちの入場が多いオペラがある。フンパーディンクの“ヘンゼルとグレーテル”。

物語がグリム兄弟の童話を素材にしてつくられ、主役が子供たちである。ストーリーや曲は大略分かっているが、肝心のオペラは前にビデオを撮ったままにしていたので、時間をさいて見てみた。98年12月、チューリッヒ歌劇場での演奏。

歌い手をみると、ヘンゼルは男の子だが、女性が扮し、魔女は逆に男性が
女装している。演奏時間は前奏曲と3幕で1時間半くらいの短いオペラ。
3幕の森の中がハイライト。菓子の家をみつけ、そのお菓子を食べて楽しい
気分のヘンゼルとグレーテルだが、魔女に捕らえられてしまう。
やがて魔女に食べられそうになるが、二人で助け合い、難を逃れ、魔女を
やっつける。魔法が解けて、捕らえられていた他の子供たちも自由になり、
魔女は焼かれてクッキーに変わる。そこに、探し回ってた両親が現れ、喜びの
再会となる。最後は皆で、神を讃える歌を歌い、幕がおりる。

演奏される曲は明るくて、いいメロディーで、子供たちの歌声も伸び伸びして綺麗。
年齢を問わず楽しめる。この歌劇場の舞台セットに面白いものをみつけた。
菓子の家が顔になっているのである。そして、その顔をよく見ると、右の
アンチンボルドの“夏”を参考にして作っている。一番目に付く大きな鼻は西洋梨
、ほっぺたは桃、目の瞳は野いちごで出来ている。これには驚いた。

ウイーン美術史美術館にある奇画、果物と野菜を組み合わせて顔を描いた
“夏”を下敷きにするとはセンスがいい。オペラと共に舞台美術でも楽しませて
貰った。

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2005.01.02

オペラの名アリア

正月はオペラを聴いて過ごすことが多くなった。とくに、有名歌手の
ガラコンサートのビデオを楽しんでいる。全盛時のパヴァロティ、ドミンゴ
の歌を聴くと本当にしびれる。テノールではホセ・クーラ、アラーニャら若手実力
歌手が主役に躍り出ている。アリアのなかでも、ソプラノの名手が唄う
美しい曲を聴くとうっとりした気分になり、お酒がすすむ。今は
マリア・グレギーナが一番気に入っている。01年の11月、日本で
コンサートを開いたが、一曲々歌い終わると大拍手だった。

Myアリアをテノールからみてみると。。。。

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2004.12.10

ミラノスカラ座

オペラファンなら一度はミラノスカラ座にいってみたいと思う。その
憧れのスカラ座の改修が終わり、公演を再開したそうだ。今回の改修費
は84億円。最新鋭の舞台装置になり、座席数も増え、座席の
背に英語などの字幕がみえる小画面が設置されているという。
ロンドンのコヴェントガーデンオペラ劇場も1、2年前にリニューアル
を完了している。

スカラ座でオペラを楽しんだことはないが、かわりにビデオを集めてきた。

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