2016.12.24

メリークリスマス!

Imgボスの‘東方三博士の礼拝’(1495~1516年 フィラデルフィア美)

Img_0002     ラ・トゥールの‘生誕(新生児)’(17世紀 レンヌ市美)

Img_0003    ラ・トゥールの‘羊飼いの礼拝’(1640年以降 ルーヴル美)

今日はクリスマスイブ、今年も残りわずかとなった。23日が天皇誕生日のため3連休になる人もいるだろうが、その流れで28日までは会社に行かなてはならないご主人を残して、子どもを連れてさっさと実家に帰ってしまう奥さんたちもいるにちがいない。そのとき‘あなた、家を出るとき電気ちゃんと消しておいてよ!’なんていっているかも。

クリスマスイブといっても夕食に特別豪華な食事がテーブルにならぶわけではないが、例年ステーキを食べることになっている。いつもは赤ワインだが、もらいものの缶ビールが相当残っているので今年はワインにかわってビールで乾杯した。

そのあとのスイーツは定番のショートケーキ、今年は宴会やパーティーに参加することが少なかったのでこういうショートケーキを食べる回数は年にほんの数回。4,5年前はミッドタウンのサントリー美へ出かけたとき有名なパティシエがいる‘よろいづか’で創作ケーキを買って帰っていたが、今はケーキへのこだわりが消えかかっている。

じつは一年前から週3回昼と夜にもうけていた食後のスイーツを無しにしている。だから、クリスマスとか正月、そしてGWのときを除いてカステラ、菓子パン、シュークリームとかは口にしてない。この習慣と土日の水泳の効果により体重が7キロ減少した。2か月前に目標の体重に到達したのでもうスイーツ断ちはしなくてもいいのだが、全面解禁には少し躊躇している。

キリスト誕生を描いた作品は数多くあるが、今年はマドリードのプラドでみた‘ボス展’(5/31~9/25)と‘ラ・トゥール展’(2/23~6/12)でも遭遇した。フィラデルフィア美が所蔵しているボスの‘東方三博士の礼拝’は現地に2回足を運んだのになぜか姿をみせてくれなかったもの、そして、ラ・トゥールの描くキリストの誕生はまさに生まれたばかりの赤ちゃん。これは宗教画というよりはすばらしい風俗画、このリアリティのある描写を立ち尽くしてみていた。

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2016.12.14

2016年 感動の西洋絵画 ベスト10!

Img_0001  ラ・トウールの‘楽士たちのいさかい’(1630年 ポール・ゲッテイ美)

Imgブリューゲルの‘聖マルティンのワイン祭り’(部分 1567年 プラド美)

Img_0002     ワイエスの‘遥か彼方に’(1952年)

カラヴァッジョ(1571~1610)とラ・トウール(1593~1652)に強く惹かれているのは二人がとびっきりいい風俗画を描いてくれたから。プラド美で行われたラ・トウール展(2/23~6/12)にはその風俗画の傑作がずらっと揃った。まったく夢の絵画館に迷いこんだみたいで期待した作品がここにもあそこにも飾ってある。

‘楽士たちのいさかい’はLAのポール・ゲッティ美の自慢のコレクション、まだ縁のないLAで美術館めぐりをするときは追っかけリストの一番上にくるはずだったのがこの絵。よもやマドリードで対面するとは思ってもいなかった。人生何がおこるかわからない。

風俗画は描かれた世界が身近に感られるほど画面に引き込まれる。右の男は‘しょうがないなー、また喧嘩しちゃって。やめとけ、やめとけ’といっているようだし、左の老女は‘うちの父ちゃん大変なことになっちまったよ、痛めつけられないように、どうか神様助けて下さい!’と体をふるわせて祈っている。

プラドの常設展示室で真っ先に目指したのが1階の56A室、ここに2010年9月に発見されたブリューゲル(1525~1569)の‘聖マルティンのワイン祭り’が飾ってある。幅2.7mの大作。画像は新酒のワインを大勢の男たちがわれ先にと争って飲んでいる場面、ギリシャ神話のバッカスの話と同じようにお酒のピッチがあがると陽気な空気はだんだん乱暴になっていきはては喧嘩がはじまる。今、街では忘年会のまっさかり、この絵と似たような光景がときどきおこっていそう。

プラドのすぐ近くにあるティッセンボルネミッサ美は2度目の入館、前回見逃した作品をリカバリーできればいいなと軽い気持ちだったが、地下の展示室でサプライズの特別展が開かれていた。なんとあのワイエス(1917~2009)の回顧展。これですぐ‘見るぞ’モードのスイッチが入った。

最も心をゆすぶったのがワイエスが35歳のときに描いた‘遥か彼方に’、NYのMoMAにある‘クリスチーナの世界’にみられる描写と同じように大地の草の一本々が丹念に描かれている。小児マヒで足が動かなかったクリスチーナは後向きの座った姿、そしてこの少女は膝頭を抱えて真正面をみすえている。こんないい絵をみれたのは幸運だった。ミューズに感謝!

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2016.05.09

カラヴァッジョの‘バッカス’へのこだわり!

Img_0002  カラヴァッジョの‘バッカス’(1597~98年 ウフィッツイ美)

Img_0001     フラスコに描かれた自画像

Img  シモン・ヴ―エの‘女占い師’(1620年 フィレンツェ ピッティ宮)

Img_0003     ジャコモ・マッサの‘聖ヒエロニムス’(ローマ バルベニーニ宮)

西洋美で開催されている‘カラヴァッジョ展’(3/1~6/12)をまた見に行った。これで3度目。足が何度も向かうのはカラヴァッジョに腹の底から参っているからだが、もうひとつは20代の作品‘バッカス’に描かれた自画像をどうしてもつきとめたいから。

4月に放送された日曜美術館でその自画像の場所がはっきり示された。2回目のときなんとか確認したはずだった人の顔とはまったくちがっていた。大カラヴァッジョ展(2010年 ローマ)の図録をみていてふと気がついたところはフラスコの右下の白くなっている部分。確かに顔が左斜め前から描かれた男が映っているのだが、、

番組をみたあと、件の図録で拡大された図版をみてみたが解説されたところには何もうつってない。だから、この絵をまたみたときちゃんと確認できるか心配だった。でも、絵の前に立ったらその心配はすぐ消えた。これでスッキリしたが、あの右下の男の顔は何だったのか? 忘れることにした。

この展覧会が終わると、カラヴァッジョをまとまった形でみるのはだいぶ先になる。そう思うと今回でているカラヴァッジョへの思い入れは一段と強くなる。そこで入口のところへもどって‘女占い師’から一点ずつ時間をかけてみた。

また、カラヴァッジェスキの作品にも気持ちがぐっと入っていく。そのなかでシモン・ヴ―エ(1590~1649)の活気のある風俗画‘女占い師’とラ・トウールの光の表現がダブってみえるジャコモ・マッサの‘聖ヒエロニムス’を長くみていた。

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2016.04.14

ビッグニュース!フランスにカラヴァッジョの絵があった

Img

Img_0001   トゥールーズの住居の屋根裏から見つかったカラヴァッジョの絵

Img_0002  ‘ホロフェルネスの首を斬るユディット’(1599年 バルベリーニ国立古典美)

フランスからカラヴァッジョ(1571~1610)の絵が住居の屋根裏からでてきたというビッグニュースが飛び込んできた。場所はフランス南西部のトゥールーズ(拡大地図で)、ここに150年くらい眠っていたとのこと。そのため保存状態がとてもいい、2014年に見つかって専門家たちがいろいろ鑑定して真作という確信を得たことで発表された。

描かれているのは‘ホロフェルネスの首を斬るユディット’、画像が鮮明ではないが本物のようにみえる。ローマのバルベリーニ国立古典美に同じ場面を描いたものがあるので、カラヴァッジョは2点仕上げていたことになる。俄然みたくなった。

イタリアのことを教えてもらっているローマ在住のcucciolaさんの記事によるとフランス政府はすぐに国宝に指定したようでそのため国外への持ち出しは禁止されている。こういうビッグネームの作品がでてくるとその価値が気になるところ。美術史家のテュルカン氏は最高で1億2000万ユーロ、150億円くらいの値がつくと予想している。

現在、フランスの美術館あるいは個人が所蔵するカラヴァッジョはルーヴルにある‘聖母の死’と‘女占い師’、‘アロフ・ド・ヴィニャクールの肖像’の3点、さてこの絵をどこの美術館が手にいれるのだろうか。旅行のしやすさからいうとやはりパリでみたいからルーヴルにおさまってくれるのがベスト、さてどうなるか。

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2016.04.01

カラヴァッジョ、ベラスケスとつながるマネ!

Img_0002     カラヴァッジョの‘いかさま師’(1595年 フォートワース キンベル美)

Img     マネの‘ラテュイユ親父の店’(1879年 トゥルネ美)

Img_0001  ベラスケスの‘鏡をみるヴィーナス’(1651年 ロンドン ナシュナルギャラリー) 

Img_0003    マネの‘フォリー=ベルジェールのバー’(1882年 ナショナルギャラリー)

好きな絵を何度も何度もみていると、よく似た絵がでてくるとつい2つの絵を結びつけたくなる。カラヴァッジョ(1571~1610)の初期の作品、‘いかさま師’に大変魅せられている。2010年ローマで大回顧展があったとき、意を決して出かけようと思ったのは普段はアメリカのキンベル美(テキサス州 フォートワース)に飾られているこの絵が出品されていたから。

それほど思い入れのあるこの絵にちょうど同じころ日本でみたある絵が最接近してきた。その絵は三菱一号館美の開館記念として行われたマネ(1832~1883)の回顧展にベルギーのトゥルネ美からやって来た‘ラテュイユ親父の店’。

2つの絵をしばらくみているうちにマネは‘いかさま師’を下敷きにして描いたんだと直感した。素直にみたらカラヴァッジョとマネは結びつく。‘いかさま師’に描かれたトランプを後ろに持っている右の男の横顔がマネの絵の椅子に座りテーブルの上に手を置いている女性の顔と非常に似ている。そして、その女性を恋心丸出しでみているいる男のぎょろっとした目がこれまた‘いかさま師’の純真な若い男の持ち札を教えている武骨な男と重なってくる。マネに‘カラヴァッジョを意識したのでは?’と聞いたら、‘そうだよ、気がついた’と応えるにちがいない。

マネの作品にはもうひとつ先達の作品がインスピレーションを与えたのではないかと思わせる絵がある。ロンドンのコートールド美にある晩年の傑作‘フォリー=ベルジェールのバー’、この絵はちょっと複雑な構図になっている。中央の寂しげな表情をした給仕娘と右奥にいる男の客に対応している後ろ向きの女は一見すると別人のようにみえる。

ところが、じつは同じ人物。正面を向いている女の後ろに鏡がありそこにこの女の後ろ姿が映っているのである。説明書きなしでこの絵をみると10人いたら10人が2人の給仕女が描かれていると思うだろう。鏡に映る後ろ姿をトリックのように描くアイデアはどこからきたのか?

それはマネが敬愛していたベラスケス(1599~1660)の作品ではないかと勝手に想像している。その絵はロンドンのナショナルギャラリーにある‘鏡をみるヴィーナス’。ベラスケスは2度目のイタリア滞在のときスペインでは御法度の裸婦図を描いた。モデルはこちらをむかせずその顔をキューピッドが持つ鏡でちらっとみせている。ローマにいるからといって裸婦をティツイアーノのように大胆には描けない。で、ベラスケスはこういう構図にした。その気持ちはよくわかる。

マネはベラスケスが小道具に使った鏡を自分の絵にどんと持ち込んだが、ぱっとみると鏡に映った女が主役の女とはみえないような描き方はした。鏡により人物をトリック的に変容させる表現がとてもおもしろい。

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2016.03.29

マドリードにあるカラヴァッジョ!

Img_0003    マドリード 王宮

Img_0001     ‘サロメ’(1610年 王宮)

Img ‘アレクサンドリアの聖カタリナ’(1597年 テイッセン・ボルネミッサ美)

Img_0002     ‘ゴリアテを負かしたダヴィデ’(1600年 プラド美)

現在、西洋美で行なわれているカラヴァッジョ展(3/1~6/12)に連動したTVの美術番組がわかった。
★4/8(金) PM10時 NHK総合 ‘カラヴァッジョ・光と闇のエクスタシー’
★4/17(日) AM9時 日曜美術館 ‘カラヴァッジョ世界初公開の傑作’

NHKは展覧会の主催者に名を連ねているのでカラバッジョの特集を必ず組むと思っていたが2本立て。総合のものは番組ガイドによるとタイトルのあとに‘ヤマザキマリと北村一輝?のイタリア’が続く。ローマには詳しい漫画家のヤマザキマリがどんな切り口でカラヴァッジョに迫るのか興味津々。

テレビ東京の人気美術番組‘美の巨人たち’は4月カラヴァッジョは登場しない。今制作中なのかもしれない。この番組では2012年に‘エマオの晩餐’(ロンドン ナショナルギャラリー)、そして2014年に‘いかさま師’(フォートワース キンベル美)がとりあげられた。2回ともすごくよくできていたので、次に選ばれる作品も期待できそう、さてどの絵か?

昨年12月、NYのメトロポリタン美でカラヴァッジョを3点みたが、今年もまた海外でみられるかもしれない。6月のはじめプラド美を訪問しボスとラ・トゥールの回顧展をみることになっている。パスポートの更新も済ませたのであとは出発の日を待つだけ。

マドリードで一日自由行動する予定だが、二つの回顧展が最優先のためまだお目にかかってない‘サロメ’(王宮)や2011年のスペイン旅行のときティッセン・ボルネミッサ美で心を奪われた‘アレクサンドリアの聖カタリナ’と対面できるかどうかわからない。というのも、ボス展は大盛況となる可能性が高いので入館に長い待ち時間ができることは十分予想される。朝一番に並ぶつもりだが、どういう状況になるのか読めない。

ボスとラ・トゥールがうまくまわれば、そのあとの時間をプラドの通常展示の鑑賞や王宮、ティッセン・ボルネミッサ美の訪問に使える。なんとかして‘サロメ’の前に立ちたいが、そもそもこの絵がいつも公開されているのかまだつかめてない。そのチェックを出発前にしておくつもり。

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2016.03.26

もっとみたいカラヴァッジョ!

Img_0001     ‘トマスの不信’(1601年 ポツダム サン・スーシ宮殿)

Img  ‘慈悲の七つの行い’(1607年 ナポリ ピオ・モンテ・デラ・ミゼリデイア聖堂)

Img_0002  ‘聖フランチェスコの法悦’(1596年 ワーズワース・アテネウム)

Img_0003     ‘ラザロの復活’(1609年 メッシーナ州立美)

友人のなかにはとくにうまが合う人がいるように、相性のいい画家がいる。そういう画家が描いた作品はできるだけ多くみたい。究極の理想は画集に載っている作品を全部みつくすこと。この夢のコンプリートを実現したい画家のなかにカラヴァッジョ(1571~1610)は勿論入っている。

これまで体験したカラヴァッジョの回顧展は今行われている西洋美のものを入れて3回、このため画集にでてくる作品はかなりみることができた。コンプリートにはあと10点くらい。でも、これから先は大変、何点済みマークがつけられるだろうか、これはミューズの御心次第だから幸運を待つしかない。

事が成るには運を呼び込む好奇心をもち続けることも必要。だから、アバウトにはコンプリートの道のりをイメージしている。ここにあげた4点はおおよその順番で並んでいる。一度訪問したことがあるベルリン、この街にはパリと同じようにワクワクさせる美術館や博物館がいくつもあるのでもう一回は出かけようと思っている。

ドイツ旅行ツアーに参加した場合、カラヴァッジョがみれる可能性がある。ベルリンからそう遠くないポツダムにあるサンスーシ宮殿の見学が行程に含まれているので、その際前にみている宮殿まわりはパスして‘トマスの不信’のところへ突進する。

ナポリへもう一度行きたいのは古典絵画の傑作がたくさん揃っているカポデイ・モンテ美に入館したいから。一日ナポリで自由行動すれば、カラヴァッジョの‘慈悲の七つの行い’が飾ってある聖堂にもたどりつけるだろう。もう一点‘聖ウルスラの殉教’はカポデイ・モンテに寄託されているのでナポリでは2点遭遇できそう。

アメリカのハートフォードの美術館にある‘聖フランチェスカの法悦’とシチリア島のメッシーナ州立美が所蔵する‘ラザロの復活’にお目にかかれるのはだいぶ先になりそう。カラヴァッジョとのつきあいはライフワークだから、幸運にライドするのを夢見てぼちぼち進んでいきたい。

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2016.03.25

絵画の革新者 カラヴァッジョと響き合った画家たち!

Img_0001 アルテミジア・ジェンテイレスキの‘ユデイットと待女’(1625年 デトロイト美)

Img_0003  マンフレーディの‘マルスに罰せられるキューピッド’(1621年 シカゴ美)

Img     ルーベンスの‘蝋燭を持つ老婆と少年’(1617年 マウリッツハイス美)

Img_0002  ダービーの‘空気ポンプの実験’(1768年 ナショナルギャラリー)

今秋、上野の森美でデトロイト美展(10/7~1/22)が開かれることになっており、目玉の作品としてゴッホの自画像がやって来る。ゴッホ好きなので楽しみにしているが、この美術館にはこれよりもっとみたい絵が2点ある。ブリューゲルとカラヴァジェスキのひとり、アルテミジア・ジェンティレスキ。

今、西洋美で行われているカラヴァッジョ展(3/1~6/12)にこの最強の女流画家、ジェンティレスキ(1593~1654)の描いたマグダラのマリアがカラヴァッジョの作品の隣に飾られている。やっぱりこの画家の才能はスゴイ。こういう絵をみるとデトロイト美の絵をいつかこの目でという気になる。蝋燭の光に照らされるユディットの凄みのある顔、カラヴァッジョだってこの絵の前に立てば声を失うだろう。

アメリカの美術館にもう一点、カラヴァジェスキのいい絵がある。それはシカゴ美が所蔵するマンフレーディ(1582~1622)の‘マルスに罰せられるキューピッド’、2008年にはじめてこの美術館を訪れたとき必見リストのなかにこの絵を入れていたが、残念なことに姿を見せてくれなかった。驚かされるのはキューピッドの体の描写、この肌の温もりが感じられる表現はカラヴァッジョの技術と変わらない。シカゴ美にまた縁があったら、いの一番に向かいたい。

2011年、ハーグのマウリッツハイス美へ行ったとき思わぬ作品に遭遇した。あのバロック絵画の代名詞みたいなルーベンス(1577~1840)がカラヴァッジョ以上に明暗をきかせて描いた‘蝋燭をもつ老婆と少年’、ルーベンスにこういう絵があることは知っていたが、実際にみたのははじめて。ルーベンスはカラヴァッジョに強く影響をうけたから光が人物の内面をてらしだすような作品だって描こうと思えばしっかり描ける。

ラ・トゥールを思わせる光の描写が18世紀によみがえる。描いたのはイギリスのジョセフ・ライト(1734~1797)。‘空気ポンプの実験’をロンドンのナショナルギャラリーでみたときは日本で琳派の画風が長きにわたって継承されているようなことが西洋画でもおこっているのかと感慨深かった。

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2016.03.24

カラヴァッジョとレンブラントの光、感情表現!

Img_0001 カラヴァッジョの‘聖マタイの殉教’(1600年 サン・ルイジ・デイ・フランチェージ聖堂)

Img_0002    レンブラントの‘目を潰されるサムソン’(1636年 シュテーデル美)

Img     カラヴァッジョの‘イサクの犠牲’(1601年 ウフィツィ美)

Img_0003    レンブラントの‘ガニュメデスの略奪’(1635年 ドレスデン国立絵画館)

現在、西洋美でカラヴァッジョ(1571~1610)のビッグな回顧展が行われているが、今から12年前には京博で大レンブラント展があった。西洋絵画と長くつきあっていると‘大事件’という表現を使いたくなるようなすばらしい展覧会と遭遇する。

このとき200%心を奪われたのがフランクフルトにあるシュテーデル美からやって来た‘目を潰されるサムソン’、この傑作が日本でみれたのは生涯における幸運だったかもしれない。レンブラント(1606~1669)の絵にMyランキングをつけると別格扱いの‘夜警’が文句なく1位で、2位はこの‘サムソン’。

この絵がカラヴァッジョの‘聖マタイの殉教’と光の描写や構図がよく似ていることを気づかせてくれたのは、あるレンブラント本。それは何年か前アムステルダムの空港にある書店で手に入れた‘アートブック レンブラント’(DK社 1999年 英語版)。

サムソンの力の源泉である髭を切ったデリダが左手のその髭を持つ姿はカラヴァッジョの絵で大きく口をあけて何かをさけんでいる子どもの手ぶりを思わせるし、サムソンの目を思いっきりつぶしている兵士は聖マタイをにらみつけている若い刺客を連想させる。レンブラントはカラヴァッジョの絵を意識していたにちがいない。

レンブラントの秀でた才能のひとつが人物の感情表現。いつも感心しながらみているのが幼児が泣いている絵、‘ガニュメデスの略奪’、この男の子は鷲がよほど怖かったのか大泣きしおしっこまでもらしている。子どもがこういう風に激しく泣く光景にはよく出くわすから、この絵にはすっとはいっていける。

一方、カラヴァッジョの‘イサクの犠牲’でもアブラハムに押さえつけられたイサクが恐怖のあまり顔をゆがめている。いくら親とはいえナイフをちらつかされたら体がちじこまるほど怖いだろう。これほどリアルに人間の感情を表現できるのは日頃から人をよくみていることの証。ダ・ヴィンチ同様、カラヴァッジョとレンブラントは人間観察の達人である。

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2016.03.23

驚愕のリアリズム カラヴァッジョとベラスケス!

Img_0002  カラヴァッジョの‘キリストの鞭打ち’(1607年 カポデイモンテ美)

Img_0001_2 ベラスケスの‘教皇インノケンテイウス10世’(1650年 ローマ ドーリア・パンフィーリ美)

Img_2 カラヴァッジョの‘エジプト逃避途上の休息’(1595年 ドーリア・パンフィーリ美)

Img_0003     ベラスケスの‘鏡をみるヴィーナス’(1651年 ナショナル・ギャラリー美)

スペインの首都マドリードにはパリのルーブルのように多くの観光客が足を運ぶ美術館がある。ご存知、プラド美、ここでもっとも有名な絵はベラスケス(1599~1660)の‘ラス・メニーナス’、この絵によってベラスケスは絵を描く特別な才能に恵まれた宮廷画家というイメージができあがる。

ところが、ローマにあるドーリア・パンフィーリ美という邸宅美術館に飾れている肖像画をみると、ベラスケスが本当に描きたかった絵というものがわかるような気がする。その絵はベラスケスがローマに滞在しているときに制作した‘教皇インノケンティウス10世’。みた瞬間、教皇と会っているような気持になった。じっさい教皇はこんな厳しい顔をしていたのだろう。ベラスケスはフェリペ4世の肖像を描くときとちがって脚色なしで素の教皇の姿を描いている。

この人物描写にみられる驚愕のリアリズムは腹の底からスゴイなと思う。宮廷画家としての立場を離れるとベラスケスの絵筆は究極の写実主義につきすすむ、教皇の気難しそうな顔をじっとながめているとカラヴァッジョ(1571~1610)の‘キリストの鞭打ち’に登場するキリストをいためつける強面の刑吏が重なってくる。そして、ベラスケスはラ・トゥール同様、カラヴァッジョの生まれかわりではないかとつい想像をふくらましてしまう。

二人を強く結びつける作品の組み合わせがもうひとつある。ロンドンのナショナルギャラリーが所蔵するベラスケスの傑作‘鏡をみるヴィーナス’、そしてカラヴァッジョの作品は‘エジプト逃避途上の休息’。‘鏡をみるヴィーナス’もベラスケスがイタリアへ派遣されたときに描いたもの。モデルは現地で愛した女性といわれている。

スペインであれば絶対描けない裸婦、でもここは絵画の本場イタリア、ティツィアーノだって裸婦を手がけているのだから俺だって描きたいように描くぞとベラスケスは思ったにちがいない。絵筆の力は超一流だからこんな魅力的な裸婦像に仕上がった。この肌のやわらかさやふくらはぎの生々しい表現は思わず脈拍数があがるほど見事なもの。この女性の肌の描写がまたカラヴァッジョの絵を連想させる。中央でバイオリンを弾いている天使の肌の生感覚がとてもよく似ている。

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