2017.06.11

もっとみたいダ・ヴィンチ!

Img     ダ・ヴィンチの‘救世主キリスト’(16世紀)

Img_0001     ケンプ・コット著‘美しき姫君’(2010年 草思社)

テレビ局が制作する美術番組に対する好感度がここ数年で大きく変わってきた。以前ほどみなくなったのが‘日曜美術館’、その理由は俳優の井浦新が司会をやっているから。年度が替わってまだこの俳優を起用し続けるNHKの神経がわからない。

同じ人物を何年も出演させるのではなく、前のようにアートの知識を豊富にもっていなくても自分の言葉で感想が述べられる人を1,2年のタクトで司会者に起用するほうがずっと新鮮で楽しいことがNHKにはまだわからない。今は日曜美術館よりBSプレミアムなどで放送される美術番組のほうが情報が豊富で番組の構成がよくできている。

例えば、3月にBSプレミアムでとりあげられた‘スラブ叙事詩’を描いたミュシャ物語。案内役を務めた若い女優は西洋絵画になると口が重くなりほとんどしゃべれない井浦新にくらべると明らかに反応のセンスがよく的を得たことをしゃべっていた。

一方、民放のテレビ東京の看板番組のひとつ‘美の巨人たち’は相変わらず30分のなかに新しい情報を盛り込んでくれる。先月登場した‘ミケランジェロ’では今年1月に修復が終了した‘モーゼ’を取材し、修復の過程で明らかになったミケランジェロの彫刻技術の使い分けを紹介していた。こういうのはルネサンス愛好家としては大変ありがたい。

今年前半にみた美術番組で内容が秀逸だったのはBSプレミアムの‘ミュシャ物語’、先般取り上げた‘4人のモナリザ、謎の微笑 モデルの真実’、そして‘ミケランジェロ’。テレビ東京がいいスタッフを抱えているなと思うのはその取材力と企画力の高さ。とくにルネサンスと印象派に深くきりこんでいくのが頼もしい。

こうしたルネサンスの巨匠たちがでてくる番組をみて、ここ10年くらいの間に発見されたダ・ヴィンチの真筆にお目にかかりたくてしょうがなくなってきた。2つある。ひとつは2011年夏にNYでみつかりその年の11月にロンドンのナショナルギャラリーで開催されたダ・ヴィンチ展で公開された‘救世主キリスト’。当時、話題になったこの回顧展に心が動いたがタイミングが合わなかった。

もう一点は2009年にダヴィンチの真作とわかった‘美しき姫君’、この話はパスカル・コット氏とマーテイン・ケンプ氏が出演した美術番組‘美しき姫君物語’をみて、2010年に草思社から発行された本も手に入れたので情報はかなり厚くなった。

本の訳者あとがきにスウェーデンのイェボリで開かれた展覧会(2010.3.20~8.15)で展示されたこの少女の横顔の肖像画がこのあと世界各地をまわりいずれ日本でもみられる、と書かれている。で、期待していたがまったくその気配なし。どこかの美術館が企画してくれると楽しくなるのだが、はたして。

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2017.06.02

決定!? ‘モナ・リザ’物語

Img    ダ・ヴィンチの‘モナ・リザ’(1503~05年 ルーヴル美)

Img_0002      ‘モナ・リザ’のオリジナルカラー(コット氏制作)

Img_0001      モナ・リザの下に描かれた女性の肖像(コット氏再現)

Img_0003ティツィアーノの‘イッポーリト・デイ・メデイチの肖像’(1532~34年)

先月BSプレミアムで放送された‘4人のモナ・リザ 謎の微笑モデルの真実’のことで今頭がいっぱいになっている。長年ひっかかっていた‘モナ・リザ’のモデルの謎がようやく解けたような気がするのだが、、、果たして。

パリ在住の工学技士のパスカル・スコット氏がこれまでダヴィンチ(1452~1519)の‘モナ・リザ’を自身が開発したマルチスペクトルカメラを使って分析し、描かれた当時のオリジナルカラーを再現するなど大きな成果をあげてきたことは美術番組でなどで何度か取り上げられてきた。

そして、2015年の12月には新しい分析として‘モナ・リザ’の下に描かれた本当のモナ・リザが発見されたという話もニュースで知っていた。今回の番組はこの詳細情報(放送時間90分)。われわれが知っているモナ・リザの絵の下にダ・ヴィンはデッサンを含めて3人描いていたことが画像分析によって浮かび上がってきた。こんなことはコット氏が登場するまでは誰もわからなかった。今は科学の力によって肖像画の制作過程がここまでつきとめられるのだから、スゴい時代に生きている。

番組のハイライトはモナ・リザのすぐ下に描かれていたのが本当のモナリザだったということ。その再現画像をみてピンとくるものがあった。それは‘モナ・リザ物語’が語られるときは必ずでてくるラファエロの模写。この模写ではモデルの目が大きく描かれているが、細い顔や顔の向きなどは再現画像とよく似ている。これをみせられると、ラファエロはこの絵をみて模写したのかなと思う。

ではこの再現されたモナ・リザは誰なのか、これは定説通りで2005年にドイツのハイデルベルク大学の図書館で見つかった資料にもでてくるフィレンツェの商人の妻、リザ・デル・ジョコンド。ダ・ヴィンチの父はリザが住んでいた家の向かいの家に住んでいたので顔見知りで、主人ともつきあいがあった。そのため、ダ・ヴィンチがリザの肖像を描くことになった。ここまでは、たいたい知っていた話なので、そう色めき立ちはしない。

話が俄然おもしろくなったのはそのあと、このリザを描き変えて現在のモナ・リザになったいきさつ。普通に考えると肖像画は出来上がると依頼主に渡されるはずだから、このリザの絵が商人の所有になる。が、どういう事情があったのかわからないがそうはならず、この肖像は描き変えられ、今の‘モナ・リザ’になった。

こうなったのはダ・ヴィンチが1513年ローマへ行った時のパトロン、ジュリアーノ・デ・メディチ(1479~1516)に肖像画を依頼されたから。この人物はロレンツォ豪華王の3男で時の教皇レオ10世の弟。ジュリアーノにはウルビーノ出身のパチフィカという女性との間にできた子どもがいた。

パチフィカは出産直後に亡くなったため、ジュリアーは子どもを養子として育てることにし‘イッポ―リト’と名付けた。メデイチ家で愛されたこのイッポ―リト(1511~1535)の肖像画をティツイアーノが描いていており、フィレンツェのピッティ宮殿に飾ってある。

‘モナ・リザ’のモデルの研究を文献にもとずいて長年研究している老先生はジュリアーノはダ・ヴィンチに寂しがる息子のために母親を描いてくれないかと頼んだのではないかと、推察している。

その証拠として、ダヴィンチが亡くなる2年前の1517年にフランスアンボワーズ郊外のクルー城を訪問した枢機卿の秘書が書いた日記のなかに‘モナ・リザ’の依頼者はジュリアーノと記されていることをあげている。ジュリアーノは1516年に亡くなったのでこの絵の受け取り手はいなくなった。で、ダヴィンチはこの絵を携えて同年フランスへ向かった。

メディチ家物語は熱心に読んだのでジュリアーノも庶子のイッポ―リトのことも知っていた。でも、この二人と‘モナリザ’の関係は思ってもみなかった。これまで‘モナリザについてしっくりこなかったことが二つあった。ひとつはどうしてリザの旦那である商人がこの肖像画を受けとらなかったのか、もうひとつはラファエロの模写がどういう関係になっているのか、これが今回の話ですっきりした。ちょっと興奮している。

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2017.03.02

待望の‘ティツィアーノとヴェネツィア派展’!

Img ティツィアーノの‘ダナエ’(1546年 ナポリ カポディモンテ美)

Img_0001 ティントレットの‘ディアナとエンディミオン’(1544年 ウフィッツイ美)

Img_0002     ベッリーニの‘聖母子’(1470年 コッレール美)

Img_0003 ヴェロネーゼの‘聖家族と聖バルバラ、幼いヨハネ’(1565年 ウフィッツイ美)

昨年に続き今年もヴェネツィア派の絵画がどっと日本にやって来た。場所は東京都美、現在ここで‘ティツィアーノとヴェネツィア派展’(1/21~4/2)が開かれている。一ヶ月遅れの出動となったが、お目当てのティツィアーノ(1485~1576)を存分に楽しんだ。

メインディッシュのティツィアーノは7点、ナポリのカポディモンテから4点、そしてウフィッツイからは有名な‘フローラ’など2点が出品された。何年か前行われたカポディモンテ美名品展では‘マグダラのマリア’が展示されたが、今回再来日のこの作品に加え‘ダナエ’、‘教皇パウルス3世の肖像’、‘枢機卿ピエトロ・ベンボの肖像’が初お目見えした。

最も関心を寄せていたのは‘ダナエ’、3点あるダナエのうち最初に描かれたのがこれ。美術書ではお馴染みの絵だが、ナポりは簡単には行けないので鑑賞の機会があるとしてもそれはだいぶ先のことと思っていた。だから、日本で対面できたのは本当に運がよかった。

注目のまとはダナエの美貌、これほどの美形だと女好きのゼウスがほっておかないのもわかる。得意の変身の術を使って黄金の雨になりすましダナエに最接近、画面の右に暑苦しい老女がいるプラドのものよりこちらのほうがダナエとゼウスの恋物語にすっと入っていける。絵画はやはり本物をみるに限る。

ティントレット(1519~1594)はウフィッツイ蔵の2点、現地でみたことのある‘レダの白鳥’よりぐっと惹かれたのは天使たちが渦巻きをつくって空を飛んでいる‘ディアナとエンディミオン’、ティントレットはキリストの悲劇を絵画化するときよりギリシャ神話を表現するときのほうが人物がよりダイナミックに空間を動く。

展示室のはじめのほうにでてくるベッリーニ(1429~1507)の‘聖母子’に思わず足がとまった。すがすがしい気持ちになるのは背景の空の青さ、この明るい青空のおかげで宗教画の枠が取っ払われ、近代的な母子の肖像画をみているような気にさせてくれる。これは大きな収穫だった。

ヴェロネーゼ(1528~1588)はウフィッツイから出品された‘聖家族と聖バルバラ 幼い洗礼者ヨハネ’の構図に見惚れた。画面の中央に描かれたとても可愛い赤ちゃんをみんながみつめる姿がじつにいい。子どもはこんなふうに祝福されるために生まれてきたことをつくづく実感する。

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2016.12.31

今年 My‘好きな女性画’に加わった作品!

Img_0002     フラ・アンジェリコの‘ザクロの聖母’(15世紀 プラド美)

Img_0003ジェンティレスキの‘悔悛のマグダラのマリア’(1640年代中頃 バルベリーニ美)

Img_0001     ワイエスの‘マガの娘’(1966年)

Img     勝川春章の‘石橋図’(1783~87年)

絵画をみる一番の楽しみは‘女性画’との出会いなので一年の締めとして、今年My‘好きな女性画’加わった作品を登場させることにした。

12月に入ったときこの4枚は決まっていたが、6月初旬マドリードのプラド美でみたフラ・アンジェリコ(1400~1455)の‘ザクロの聖母’はケンスケさんの情報によると、イギリスの美術・文化雑誌はこの絵を世界の美術館が新たに収蔵した作品のベストワンに選んだとのこと。

不思議に思ったのは聖母の顔、ほかの宗教画に描かれた聖母とくらべとても親近感がありドラマやCMにでている人気のタレントと対面しているような気がした。この現代に生きる女性を思わせる容姿と身につけている服の青の輝きが目に焼きついている。

カラヴァッジェスキの女流画家、ジェンティレスキ(1593~1654)の‘悔悛のマグダラのマリア’も忘れられない一枚になった。大盛況の‘カラヴァッジョ展’(西洋美 3/1~6/12)に出品されたこの絵を所蔵しているのはローマにあるバルベリーニ宮国立古典美術館、一度訪問したときは展示されてなかったので目の前に現れたときは大きな衝撃を受けた。とくに息を呑むのが静脈のリアルすぎる表現。

今年はマドリードでの美術館巡りが大きな喜びをもたらしてくれたが、メインディッシュのボス、ラ・トゥールの絵だけでなく、想定外のワイエス(1917~2000)もそのなかに入っている。肌の皺やしみなど思わず見入ってしまうほど精緻に描くのがワイエスの肖像画の特徴、画面に大きく描かれた‘マガの娘’を長くみていた。

日本画でもいい絵に遭遇した。それは2月から3月にかけて出光美と太田記念美で開催された勝川春章(1726~1792)の回顧展に姿を現してくれた‘石橋図’、はじめてお目にかかる肉筆画で視線を釘付けにするのが被り物の獅子の毛の鮮やかな赤、こんないい獅子舞の絵を個人コレクターがもってたのか!という感じ。

今年も拙ブログにおつきあいいただきましてありがとうございます。
皆様よいお年をお迎えください。

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2016.12.23

ヴェネツィアの‘影追い’!

Img_0002     ヴェネツィアの中心 サンマルコ広場

Img        ‘影追い’ (TV東京‘美の巨人たち’11月放送より)

わが家では美術とのつきあいは展覧会をみるため出かける美術館だけでなくTV局が制作する美術関連の番組をみることも大きなウエートを占めている。そこで今年収穫のあった番組をふりかえってみた。

毎月購入している‘TVガイドブック’で番組内容をチェックしているのは‘美の巨人たち’、‘日曜美術館’、‘イッピン’(BSプレミアム火曜 午後7時30分)、そして‘美の壺’。このなかで最も注目しているのが‘美の巨人たち’と工芸が中心の‘イッピン’。

定番の‘日曜美術館’は井浦新と女性アナウンサーのMCがつまらないから関心度はだんだん低下している。二人には早くやめてもらいたいと願うばかり。これに対して、30分なのに収穫が多いのが‘美の巨人たち’。

もうかれこれ10数年みているが、番組作りの傾向がだいたいわかってきた。西洋絵画でよくとりあげるのはやはり美術史を語るうえで欠かせない最重要ピースのルネサンスと印象派、そして日本画でく繰り返し登場するのが江戸絵画と浮世絵。

明治以降に活躍した日本画家や洋画家についてはぐっと少なくなるが、そのなかで断トツに多いのが東山魁夷と横山大観と上村松園。今月は東山魁夷と川端康成のコラボ話が興味深かった。番組スタッフに魁夷が好きな者がいるのかもしれない。

先月ヴェネツィア派のティントレットの‘最後の晩餐’に続いて放送された‘サンマルコ広場’ではじめて聞いた話がでてきた。それはかつて存在した流しのワイン売りが鐘楼の影の動きにあわせて動く‘影追い’。ヴェネツィアではワインを飲むことを‘影を飲む’といったらしい。これはおもしろい!

この話はヴェネツィアの‘光と影’と深くかかわっている。観光客としてぽっとここを訪問してもこの光と影のことはわからない。現地に住んでいる人には真昼のまばゆい光と夕暮れ時の光と影のドラマがこの街で暮す一番の理由なのである。一日中ヴェネツィアにいる旅行をいつか計画してみたくなった。

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2016.12.13

2016年 感動の西洋絵画 ベスト10!

Img      ボッテイチェリの‘聖母子’(1483年 ポルデイ・ベッツオーリ美)

Img_0001     カラヴァッジョの‘法悦のマグダラのマリア’(1606年)

Img_0002  ボスの‘聖アントニウスの誘惑’(1485~1505年 リスボン国立美)

今年出かけた美術鑑賞の振り返りはいつもの展覧会のお好みだけでなく、はじめてお目にかかったもので即Myアートの殿堂に登録した作品も選んでみた。ベスト10を遭遇した順番にそって3回にわけて紹介したい。

東京都美の‘ボッティチェリ展’(1/16~4/3)は日本で開催されたルネサンス関連の展覧会では一番よかったのではないかと思われるほどいい絵が揃った。そのなかで群を抜いて輝いていたのがミラノのポルデイ・ベッツオーリ美からやって来た‘聖母子(書物の聖母)’。

画集で絵の存在は知っていたが、本物がこれほどすばらしいものだったとは!一瞬ウフィッツイ美の展示室にいるような錯覚を覚えた。まさに‘マグニフィカトの聖母’クラスの傑作でボッティチェリのベスト5入りは間違いないところ。

‘カラヴァッジョ展’(3/1~6/12 西洋美)の目玉のひとつ‘法悦のマグダラのマリア’にも200%KOされた。この絵が日本で最初に公開されたというのもスゴイこと。イタリアに数多くいるカラヴァッジョファンは心穏やかではなく、‘イタリアで披露するのが先だろう’と思ったにちがいない。回顧展には3回足を運んだのでこの絵もとことんみた。忘れられない一枚になりそう。

マドリードのプラド美で行われた‘ボス展’(5/31~9/25)で最もみたかったのが‘聖アントニウスの誘惑’。この絵をみるためにポルトガル旅行をもう一度しようと計画していたが、その必要がなくなった。ずいぶん昔ウイーンのアカデミー美でこの絵の模写と遭遇したので、長年これでみたことにするかと納得させてきたが、本物との対面が叶って天にも昇る気持ちだった。

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2016.11.27

ティツィアーノの‘ダナエ’と‘マグダラのマリア’!

Img_0001     ‘ダナエ’(1544~46年 ナポリ カポデイモンテ美)

Img     ‘ダナエ’(1551~53年 マドリード プラド美)

Img_0003    ‘マグダラのマリア’(1533年 フィレンツェ ウフィッツイ美)

Img_0002    ‘マグダラのマリア’(1560年代 エルミタージュ美)

今年の8月から10月にかけて国立新美でアカデミア美が所蔵するヴェネツィア派の作品が公開されたが、この続きが来年はじめ東京都美である。チラシに嬉しさがこみあげてくる作品が載っている‘ティツィアーノとヴェネツィア派展’(1/21~4/2)。

ナポリのカポディモンテ美はティツィアーノのいい絵やカラヴァッジョ、ブリューゲルなど質の高い作品があることで有名な美術館、一度そのコレクションが日本にやって来たが、そのときはティツィアーノは‘マグダラのマリア’1点だけだった。

ところが、今回はそんなに貸し出してくれるの?というほど太っ腹、‘ダナエ’、‘教皇パウルス3世の肖像’、そして再来日となる‘マグダラのマリア’の3点がでてくる。だったら、もうひとつ‘パウルス3世とその孫アレッサンドロ、オッタヴィオ・ファルネーぜ’も加えてといいたくなるがこれは強欲というもの。

6月に訪問したマドリードのプラド美では駆け足でヴェネツィア派を楽しんだが、思わず足が止まったのがティツィアーノの‘ダナエ’とティントレットの大作‘使徒の足を洗うキリスト’、‘ダナエ’はこれまで幸運なことにウフィッツイ美とエルミタージュ美にある2つのヴァージョンをみた。

カポディモンテにあるのは最初に描かれたもので黄金の雨に変装したゼウスをダナエとともにみているのはキューピッド、このキューピッドがあとのヴァージョンでは老婆に変わっている。早くカポディモンテのものがみたい!

‘マグダラのマリア’については、ウフィッツイ美にあるものが第一作ではちきれんばかりの豊満な体をしたマグダラのマリアが画面いっぱいに描かれている。これにたいし30年くらい後に描かれたエルミタージュとカポディモンテにあるものはマグダラがすこし小さくなりまわりの背景にも目がいくような構成になっている。また、マグダラの目がうるうるになっているのも大きな違い。

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2016.11.26

ティントレットの‘最後の晩餐’がみたい!

Img_0002_2 ドゥカーレ宮殿の真正面にあるサン・ジョルジョ・マジョーレ島(右端中央)

Img_2  ティントレットの‘最後の晩餐’(1594年 サン・ジョルジョ・マジョーレ教会) 

Img_0001    ティントレットの‘天国’(部分 1590年 ドゥカーレ宮殿)

今月は2週連続でTV東京の人気番組‘美の巨人たち’を楽しんだ。最初が3人の画家の描いた‘最後の晩餐’、そして先週はヴェネツィアの‘サンマルコ広場’の物語。おもしろいめぐりあわせでこの番組の間にみた映画‘インフェルノ’にもヴェネツィアがでてきた。

事前に番組をチェックしていてどうして今ダ・ヴィンチ(1452~1519)の‘最後の晩餐’なのかと?いう気がしたが、この絵にティントレット(1519~1594)とルーベンス(1577~1640)の描いた‘最後の晩餐’とぶつけるという構成、そして翌週にサンマルコ広場の話をもってくるという流れをみてぴーんときた。

勝手な想像はこう、番組スタッフはヴェネツィアを取材すると絵画と建築の2本が効率よくつくれると考えた。絵画は今回はティトレットでいく。ヴェネツィアの正面玄関に建つドゥカーレ宮殿から真正面にみえるサン・ジョルジョ・マジョーレ島の教会にある最晩年の傑作‘最後の晩餐’を軸にしてこれに本家のダ・ヴィンチとバロックの王、ルーベンスをくっつける。これで1本撮れる。そして、もうひとつはサンマルコ広場の‘光と影’を浮かび上がらせて建築シリーズに仕立てる。あたっている?

ティントレットへの関心は同じヴェネツィア派のティツィアーノ(1485~1576)に負けず劣らず高い。だから、今回紹介された‘最後の晩餐’はいつかこの目でと思い続けている。この絵があるのはサンマルコ小広場の停留所から水上バスに乗ると数分で到着するサン・ジョルジョ・マジョーレ教会、だからその気になれば本島のように迷路に迷うことはなく簡単にいける。

ヴェネツィアをまた訪問することがあったらこの教会に最優先で出かけることにしている。おそらく、ドゥカーレ宮殿大会議の間の奥の壁に飾られている大作‘天国’と同じくらい感激するような気がする。いつか夢を叶えたい。

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2016.11.25

忘れられないクラーナハ!

Img_0003  ‘ヴィーナスと蜂の巣をもつキューピッド’(1531年 ボルゲーゼ美)

Img ‘ヴィーナスに訴えるキューピッド’(1525年 ナショナルギャラリー)

Img_0001     ‘アダムとイヴ’(16世紀 ウフィッツイ美)

Img_0002     ‘パリスの審判’(1528年 メトロポリタン美)

多くの美術ファンが足を運ぶ人気の美術館には2度訪問することを目標として世界中の美術館巡りをしているが、ローマにあるボルゲーゼ美はまだこれがはたせてない。ここは事前にネットで入館日を予約することが必要。だから、日程の調整がいるので団体ツアーに参加するときはかなり神経を使う。でも、もう一度という思いはずっともっている。

ここの古典絵画コレクションはカラヴァッジョやティツイアーノ、ラファエロなどのスゴイ絵を揃えている。そのなかにクラーナハ(1472~1553)も入っている。それは最も魅せられている‘ヴィーナスと蜂の巣をもつキューピッド’、プロポーションが異常にひきのばされおしゃれな帽子を被っているヴィーナスと蜂に刺されて痛そうな顔をしているキューピッド、親しみを覚える二人の組み合わせが目に強く焼き付いている。快楽には苦痛をともなうという教訓をキューピッドで表現しているのがおもしろい。

ヴィーナスとキューピッドを描いたものはロンドンのナショナルギャラリーにも蜂の巣をもったキューピッドの別ヴァージョンがあり、またサンクトペテルブルクのエルミタージュ美にあるものはキューピッドは弓矢をもっている。

アダムとイヴを題材にしたものはウフィッツイ美とブリュッセルのベルギー王立美でお目にかかった。ここに登場する男女はきわだってリアルに描かているわけではなく、かといって宗教色の強い人物描写になってもいない。だから、わりと気楽に二人をみつめられる。これがクラーナハの一番の魅力かもしれない。

クラーナハの真骨頂はやはり薄いヴェールをまとう裸婦像、このヌードパワーが‘パリスの審判’でも全開、美女を前にして木の下で腰をおろしているパリスの姿をみれば誰を一番の美女にするか大いに悩んでいることがよくわかる。

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2016.11.24

西洋美の‘クラーナハ展’!

Img     ‘正義の寓意’(1537年)

Img_0003‘ホロフェルネスの首を持つユディット’(1530年、ウィーン美術史美)

Img_0001  ‘聖カタリナの殉教’(1509年 ブダべスト ラーダイ改革派教会)

Img_0002   ‘ディアナとアクタイオン’(1550年 トリエステ国立古典絵画館)

現在、西洋美で開催中の‘クラーナハ展’(10/15~1/15)をみてきた。クラーナハ(1472~1553)はデューラーと並ぶドイツルネサンスの巨匠なのだが、どちらが好きかというとデューラーのほう。そのため、出動は率直に言って遅くなるが、クラーナハの衣装の赤の強さや肌色の輝きにはグッときているのでパスというわけにはいかない。

この回顧展はローマやロンドンなどを巡回したものだというから、作品は確かにいいものが揃っている。よく記憶しているワシントンナショナルギャラリーの‘泉のニンフ’やウイーン造形美術アカデミーの‘ルクレティア’、メトロポリタンの‘サムソンとデリラ’、そしてウイーン美術史美の‘ホロフェルネスの首を持つユディット’が入っているのは豪華なラインナップというほかない。作品選定には相当熱が入っている。

クラーナハという画家のイメージができたのは30数年前ウイーン美術史美でみた‘ホロフェルネスの首を持つユディット’、この青白く目のまわりにくまのできた首をみたときはM7クラスの衝撃度があり一瞬体が硬直した。異様な光景をみたショックの大きさは剣を握りしめるユディットの冷めたい表情によってさらに深められる。‘私、ホロフェルネスの首を切ったのよ、でもそれほど怖くなかったわ’、そうさらっといわれると後ずさりしたくなる。

はじめてお目にかかる作品で収穫がいくつかあった。全作品中最も長くみていたのは‘正義の寓意’、画面に寄ってじっとみると顔の目の下から顎、そして首のところを除いて薄い布が髪の毛から両腕、腰から下まですっぽり包んでいる。この姿がみようによってはすごく艶めかしい。

‘聖カタリナの殉教’はカラヴァッジョに同じ題材の作品があるのでそれを頭に思い浮かべながら処刑の残忍さを目にやきつけた。このカタリナは色白でその顔はハットするほど美形、その美貌に免じて処刑は無しということにしてもらえないだろうか、とついお願いしたくなる。

裸婦がたくさん登場するにぎやかな‘ディアナとアクタイオン’にも思わず足がとまった。裸婦だけでなくまわりには犬や鹿が走り回っている。クラーナハは鹿狩りをよく描いており、ウイーン美術史美でみたことがある。また、6月プラド美でも目を楽しませてくれた。風俗画っぽい作品はお好みだから画面の隅から隅までじっくりみた。

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