2019.06.18

ダ・ヴィンチの自画像!

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     ‘ルカーニアの肖像画’(NHK・BS1ダヴィンチ 幻の肖像画より)

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    肖像画が発見された南イタリアのサレルノ

先月、NHK・BS1で‘ダ・ヴィンチ 幻の肖像画’という美術番組
(1時間43分)が放送された。BS1はときどきこういう美術ドキュメ
ントものをするが、今回は運良くアンテナに引っかかった。2018
年フランスのTV局の制作でNHKやドイツも参画している。

2008年にイタリアの美術史家はこの古い肖像画を発見した。すぐ
ダ・ヴィンチと直感したという。これを所蔵していたのはサレルノに
住むコレクターで‘ガリレオの絵’と思っていたようだ。こういう情報は
まったく入ってこなかったが、この美術史家は修復士らとプロジェク
トつくってこれがダ・ヴィンチ(1452~1519)が描いた自画
像かどうか科学的な調査を入念にしていた。

確認することはいろいろある。使われた顔料、絵の土台であるパネル
板の材質の特定(ポプラと判明)、木が存在した時期(炭素14法に
よる年代測定)、弟子のメルツィが1515年頃描いたダ・ヴィンチ
の肖像画との比較、‘モナ・リザ’で使われたスフマートの技法との
関連性、そして画面に残された指紋の分析。

‘ルカーニアの肖像画’と名付けられたこの絵はこうした分析によって
ダ・ヴィンチが15世紀の末から16世紀の初頭にかけて描いた自画
像という可能性が高くなってきた。ダ・ヴィンチがちょうど50歳の
頃である。現在、修復されて‘古代ルカーニア博物館’におさまっている。
ルカ―ニアはサレルノの古い呼び名、俄然みたくなった。どこかの
美術館が動いてくれるとありがたいのだが、、果たして。

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2019.01.10

‘初夢’展覧会! その六

Img ランブール兄弟の‘ベリー公のいとも豪華なる時祷書:5月’(1410年 コンデ美)

Img_0004    ジョットの‘パドヴァのアレーナ礼拝堂’(1303~06年)

Img_0001    ジョットの‘アレーナ礼拝堂:キリストの哀悼’(1303~05年)

Img_0002 ピエロ・デッラ・フランチェスカの‘慈悲の聖母’(1445年 サンセポルクロ市美)

西洋絵画に関心をもったころからその中心にどんとあたったのがルネサンス絵画と印象派。そのため作品とのつきあいは一番長く名画への思い入れはとても強い。

海外の美術館をみてまわるとき鑑賞する機会がもっとも多いのはルネサンスやバロックを中心とした古典絵画。観光目的で海外に出かけたとしてもツアーのなかに例えばルーブルやプラドやウフィッツイなどは必ず組み込まれているので美術にそれほど詳しくなくても一時的には西洋絵画のど真ん中を楽しんでいることになる。

こういう旅をしたあと美術の真髄に深く入っていきたいと思うようになると絵画の世界の探索がはじまる。すると、普通のツアー旅行に参加しているだけではとても目にすることができないスゴイ作品があることがわかってくる。でも、こういうケースでは実際に鑑賞するとなるとそう簡単にはいかない。

そんな思いがずっと続いているのがパリの北50㎞くらいのところにあるシャンティイのコンデ美、ここの至宝中の至宝がランブール兄弟の‘ベリー公のいとも豪華なる時祷書’。はじめて絵の存在を知ったのはもうずいぶん前のことだが、その頃はこの美術館を訪問すればみれると思っていた。ところが、後でこれは一般公開はされてない特別な美術品であることがわかった。だから、これからも心を奪われるのはずっと夢のなかだけ。

ジョット(1267~1337)はフィレンツのウフィッツイを訪問したりアッシジのサン・フランチェスカ聖堂へ足を運び連作‘フランチェスカ物語’をみたので画集にでている代表作はかなりみたことになる。しかし、ある絵をみないとこの画家に最接近したとはいえない。

それはパドヴァのアレーナ礼拝堂に描かれている連作‘イエスキリスト物語’。パドヴァはヴェネツィからはクルマで1時間ほどで行ける距離だからその気になれば出かけることはできるが、このフレスコ壁画をみるためには予約が必要になる。そのためイタリア旅行の実行計画をつくるとなると結構面倒。わが家はまだ機が熟してない。

ピエロ・デッラ・フランチェスカ(1416~1492)の画業がとても詳しく書かれた本が2004年、岩波から‘世界の美術’の一冊として出版された。このシリーズにとりあげられた画家は10人。ルネサンスではミケランジェロとピエロ・デッラ・フランチェスカの二人。この本を熱心に読んだおかげでピエロにのめり込んだか、‘慈悲の聖母’などみたい絵がたくさん残っている。いつか画家の生地、サンセポルクロに行ってみたい。

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2019.01.09

‘初夢’展覧会! その五

Img     グリューネヴァルトの‘磔刑図’(1515年 ウンターリンデ美) 

Img_0001  ホルバインの‘商人ゲオルク・ギーゼ’(1532年 ベルリン絵画館)

Img_0003     フリードリヒの‘山上の十字架’(1808年 ドレスデン近美)

Img_0002 フリードリヒの‘リューゲン島の白亜岩’(1818年 オスカー・ラインハルト・コレクション)

ルネサンス絵画というとすぐダ・ヴィンチ、ボッティチェリ、ラファエロといったイタリアの画家を思い浮かべるが、15世紀はイタリアだけでなくフランドルやドイツでも天才画家が多く出現した。フランドルはファン・エイク、ダビンチとほど同世代のボス、そしてブリューゲル。今日はドイツルネサンスの注目絵画をみてみたい。

2年前クラーナハの回顧展が西洋美で開かれた。このクラーナハ(1472~1553)とデューラー(1471~1528)の作品はルーブルやプラドなどのブランド美術館でよく出くわすので画集にでている主要作品はかなりの数お目にかかることができた。また、ホルバイン(1497~1543)についてもときどき遭遇する。

ところが、もうひとりの大家、グリューネヴァルト(1480~1528)はこれまでみたのは片手くらいしかない。だから、フランスアルザス地方のコルマールのある代表作‘イーゼンハイム祭壇画’が長年気になっている。この祭壇画に描かれた9つの画面のなかで衝撃度が半端でないのが‘磔刑図’。

図版でも磔刑のキリスト像の痛々しさが伝わってくるが、実際に絵の前に立ったら茨の鞭のとげが全身に刺さり苦痛で体がよじれたキリストの姿は長くみれないかもしれない。コルマールはスイスのバーゼルからそれほど遠くないところに位置している。スイスで美術館をまわるときはなんとか段取りをつけて行こうと思っている。

ホルバインの写実表現にはカラヴァッジョと同じくらい魅了されている。ロンドンのナショナルギャラリーで‘大使たち’、NYのフリックコレクションで‘トーマス・モア’、‘トーマス・クロムウェル’をみたから、次はベルリンの‘商人ゲオルク・ギーゼ’。日本の美術館がもっとホルバインに光をあててくれたらいいのだが、ちょっと残念!

古典絵画ではないがとても気になっているドイツの画家がいる。それはロマン派のフリードリヒ(1774~1840)、TASCHENのフリードリヒ本を購入し主な作品は頭に入っているのであとは本物に出会うだけ。でも、これはかなりの時間がかかる。日本の展覧会にほとんど登場しないので所蔵しているドイツの美術館に出向かないとみれない。

で、当面の目標は2点に絞っている。ドレスデンにある‘山上の十字架’とヴィンタートウールのラインハルト・コレクションの‘リューゲン島の白亜岩’。ともに200%KOされている。

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2017.12.24

メリークリスマス!

Img     リベーラの‘羊飼いの礼拝’(1650年 ルーヴル美)

Img_0001     リッピの‘幼児を礼拝する聖母’(1459年 ベルリン絵画館)

Img_0002  ボッティチェリの‘東方三博士の礼拝’(15世紀 ウフィッツイ美)

今日は年末の大事な日になっているクリスマスイブ、小さい頃のことを思い出すのが少なくなる齢ではあるが、クリスマスイブにケーキを食べる習慣はずっと続いている。

ケーキを食べることは今では年に数回しかない。何年か前はサントリー美で展覧会をみたあと、ミッドタウン内に店を構える‘鎧塚’の創作ショートケーキを買って帰ることがあったが、今は店に寄らなくなった。これは胃がケーキを重く感じるようになっていることとも関係している。

2年前までは週3回、昼食と夕食の後スイーツを食べていた。ところが、目標の体重に近づけるためそれをやめたのでスイーツの習慣がなくなった。では、甘いものをまったく口にしていないかというとそうではなくたまには食べる。でも、回数は少ない。例えば、パーティに参加したときとか皆で会食をしたときなど。

これにわが家では秋に食べることを定番にしている岡埜栄泉(虎ノ門)の‘栗饅頭’が加わる。そして秋から冬にかけてときどき横浜そごうで買う安くてボリュームのある‘今川焼’も楽しみのひとつ。甘いものとのつきあいがこのように少なくなるとたまの機会がとても楽しくなる。今年は会食した人に‘栗饅頭’をお土産にもたせることが2回あったので、ニコニコ顔が続いた。

クリスマスイブになるとみているのが‘羊飼いの礼拝’、‘幼児を礼拝する聖母’、‘東方三博士の礼拝’。今回とりあげたのはリベーラ(1591~1652)、リッピ(1406~1469)、ボッティチェリ(1445~1510)のもの。メリークリスマス!

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2017.11.19

ダ・ヴィンチの‘サルバトーレ・ムンディ’ 510億円で落札!

Img       ‘サルバトーレ・ムンデイ(救世主)’(1500年頃)

美術館には頻繁に通っているがコレクターではないから、美術品のオークションにはまったく縁がない。でも、メディアで報じられる‘史上最高の落札額!’といった話には敏感に反応する。3日前飛び込んできた落札額には200%驚いた。

NYのクリスティーズが主催するオークションにかけられた作品はダ・ヴィンチ(1452~1519)が1500年頃描いたといわれる‘サルバトーレ・ムンディ(救世主)’、落札額は日本円で約510億円! 予想の金額を大幅に上回った。気になるのは誰が落札したかだが、その情報はなし。

絵の存在は2011年の7月にでた新聞報道で知った。そして、この年の11月にロンドンのナショナルギャラリーで開催された大ダ・ヴィンチ展に出品されることはわかっていたが、タイミングがあわずロンドン訪問は実現しなかった。

そのあと、この絵は2013年ロシアのコレクターが145億円で落札したという情報があるが、そうだとするとこのコレクターが今回売りに出したいうことになる。一体誰の手に渡ったのだろうか。美術館が手に入れたのならすぐわかるので、やはり莫大な資金力をもつ個人のコレクターの可能性が高い。

今後、本物をみる機会があるだろうか。これだけ話題になると、日本の美術館だって公開へ向けて動きたくなるだろう。期待するとしたら、西洋美、国立新美、東京都美あたりか、そしてBunkamuraも狙っているかもしれない。やってくれそうな気もするが、はたして。

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2017.06.11

もっとみたいダ・ヴィンチ!

Img     ダ・ヴィンチの‘救世主キリスト’(16世紀)

Img_0001     ケンプ・コット著‘美しき姫君’(2010年 草思社)

テレビ局が制作する美術番組に対する好感度がここ数年で大きく変わってきた。以前ほどみなくなったのが‘日曜美術館’、その理由は俳優の井浦新が司会をやっているから。年度が替わってまだこの俳優を起用し続けるNHKの神経がわからない。

同じ人物を何年も出演させるのではなく、前のようにアートの知識を豊富にもっていなくても自分の言葉で感想が述べられる人を1,2年のタクトで司会者に起用するほうがずっと新鮮で楽しいことがNHKにはまだわからない。今は日曜美術館よりBSプレミアムなどで放送される美術番組のほうが情報が豊富で番組の構成がよくできている。

例えば、3月にBSプレミアムでとりあげられた‘スラブ叙事詩’を描いたミュシャ物語。案内役を務めた若い女優は西洋絵画になると口が重くなりほとんどしゃべれない井浦新にくらべると明らかに反応のセンスがよく的を得たことをしゃべっていた。

一方、民放のテレビ東京の看板番組のひとつ‘美の巨人たち’は相変わらず30分のなかに新しい情報を盛り込んでくれる。先月登場した‘ミケランジェロ’では今年1月に修復が終了した‘モーゼ’を取材し、修復の過程で明らかになったミケランジェロの彫刻技術の使い分けを紹介していた。こういうのはルネサンス愛好家としては大変ありがたい。

今年前半にみた美術番組で内容が秀逸だったのはBSプレミアムの‘ミュシャ物語’、先般取り上げた‘4人のモナリザ、謎の微笑 モデルの真実’、そして‘ミケランジェロ’。テレビ東京がいいスタッフを抱えているなと思うのはその取材力と企画力の高さ。とくにルネサンスと印象派に深くきりこんでいくのが頼もしい。

こうしたルネサンスの巨匠たちがでてくる番組をみて、ここ10年くらいの間に発見されたダ・ヴィンチの真筆にお目にかかりたくてしょうがなくなってきた。2つある。ひとつは2011年夏にNYでみつかりその年の11月にロンドンのナショナルギャラリーで開催されたダ・ヴィンチ展で公開された‘救世主キリスト’。当時、話題になったこの回顧展に心が動いたがタイミングが合わなかった。

もう一点は2009年にダヴィンチの真作とわかった‘美しき姫君’、この話はパスカル・コット氏とマーテイン・ケンプ氏が出演した美術番組‘美しき姫君物語’をみて、2010年に草思社から発行された本も手に入れたので情報はかなり厚くなった。

本の訳者あとがきにスウェーデンのイェボリで開かれた展覧会(2010.3.20~8.15)で展示されたこの少女の横顔の肖像画がこのあと世界各地をまわりいずれ日本でもみられる、と書かれている。で、期待していたがまったくその気配なし。どこかの美術館が企画してくれると楽しくなるのだが、はたして。

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2017.06.02

決定!? ‘モナ・リザ’物語

Img    ダ・ヴィンチの‘モナ・リザ’(1503~05年 ルーヴル美)

Img_0002      ‘モナ・リザ’のオリジナルカラー(コット氏制作)

Img_0001      モナ・リザの下に描かれた女性の肖像(コット氏再現)

Img_0003ティツィアーノの‘イッポーリト・デイ・メデイチの肖像’(1532~34年)

先月BSプレミアムで放送された‘4人のモナ・リザ 謎の微笑モデルの真実’のことで今頭がいっぱいになっている。長年ひっかかっていた‘モナ・リザ’のモデルの謎がようやく解けたような気がするのだが、、、果たして。

パリ在住の工学技士のパスカル・スコット氏がこれまでダヴィンチ(1452~1519)の‘モナ・リザ’を自身が開発したマルチスペクトルカメラを使って分析し、描かれた当時のオリジナルカラーを再現するなど大きな成果をあげてきたことは美術番組で何度か取り上げられてきた。

そして、2015年の12月には新しい分析として‘モナ・リザ’の下に描かれた本当のモナ・リザが発見されたという話もニュースで知っていた。今回の番組はこの詳細情報(放送時間90分)。われわれが知っているモナ・リザの絵の下にダ・ヴィンはデッサンを含めて3人描いていたことが画像分析によって浮かび上がってきた。こんなことはコット氏が登場するまでは誰もわからなかった。今は科学の力によって肖像画の制作過程がここまでつきとめられるのだから、スゴい時代に生きている。

番組のハイライトはモナ・リザのすぐ下に描かれていたのが本当のモナリザだったということ。その再現画像をみてピンとくるものがあった。それは‘モナ・リザ物語’が語られるときは必ずでてくるラファエロの模写。この模写ではモデルの目が大きく描かれているが、細い顔や顔の向きなどは再現画像とよく似ている。これをみせられると、ラファエロはこの絵をみて模写したのかなと思う。

ではこの再現されたモナ・リザは誰なのか、これは定説通りで2005年にドイツのハイデルベルク大学の図書館で見つかった資料にもでてくるフィレンツェの商人の妻、リザ・デル・ジョコンド。ダ・ヴィンチの父はリザが住んでいた家の向かいの家に住んでいたので顔見知りで、主人ともつきあいがあった。そのため、ダ・ヴィンチがリザの肖像を描くことになった。ここまでは、たいたい知っていた話なので、そう色めき立ちはしない。

話が俄然おもしろくなったのはそのあと、このリザを描き変えて現在のモナ・リザになったいきさつ。普通に考えると肖像画は出来上がると依頼主に渡されるはずだから、このリザの絵が商人の所有になる。が、どういう事情があったのかわからないがそうはならず、この肖像は描き変えられ、今の‘モナ・リザ’になった。

こうなったのはダ・ヴィンチが1513年ローマへ行った時のパトロン、ジュリアーノ・デ・メディチ(1479~1516)に肖像画を依頼されたから。この人物はロレンツォ豪華王の3男で時の教皇レオ10世の弟。ジュリアーノにはウルビーノ出身のパチフィカという女性との間にできた子どもがいた。

パチフィカは出産直後に亡くなったため、ジュリアーは子どもを養子として育てることにし‘イッポ―リト’と名付けた。メデイチ家で愛されたこのイッポ―リト(1511~1535)の肖像画をティツイアーノが描いていており、フィレンツェのピッティ宮殿に飾ってある。

‘モナ・リザ’のモデルの研究を文献にもとずいて長年研究している老先生はジュリアーノはダ・ヴィンチに寂しがる息子のために母親を描いてくれないかと頼んだのではないかと、推察している。

その証拠として、ダヴィンチが亡くなる2年前の1517年にフランスアンボワーズ郊外のクルー城を訪問した枢機卿の秘書が書いた日記のなかに‘モナ・リザ’の依頼者はジュリアーノと記されていることをあげている。ジュリアーノは1516年に亡くなったのでこの絵の受け取り手はいなくなった。で、ダヴィンチはこの絵を携えて同年フランスへ向かった。

メディチ家物語は熱心に読んだのでジュリアーノも庶子のイッポ―リトのことも知っていた。でも、この二人と‘モナリザ’の関係は思ってもみなかった。これまで‘モナリザについてしっくりこなかったことが二つあった。ひとつはどうしてリザの旦那である商人がこの肖像画を受けとらなかったのか、もうひとつはラファエロの模写がどういう関係になっているのか、これが今回の話ですっきりした。ちょっと興奮している。

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2017.03.02

待望の‘ティツィアーノとヴェネツィア派展’!

Img ティツィアーノの‘ダナエ’(1546年 ナポリ カポディモンテ美)

Img_0001 ティントレットの‘ディアナとエンディミオン’(1544年 ウフィッツイ美)

Img_0002     ベッリーニの‘聖母子’(1470年 コッレール美)

Img_0003 ヴェロネーゼの‘聖家族と聖バルバラ、幼いヨハネ’(1565年 ウフィッツイ美)

昨年に続き今年もヴェネツィア派の絵画がどっと日本にやって来た。場所は東京都美、現在ここで‘ティツィアーノとヴェネツィア派展’(1/21~4/2)が開かれている。一ヶ月遅れの出動となったが、お目当てのティツィアーノ(1485~1576)を存分に楽しんだ。

メインディッシュのティツィアーノは7点、ナポリのカポディモンテから4点、そしてウフィッツイからは有名な‘フローラ’など2点が出品された。何年か前行われたカポディモンテ美名品展では‘マグダラのマリア’が展示されたが、今回再来日のこの作品に加え‘ダナエ’、‘教皇パウルス3世の肖像’、‘枢機卿ピエトロ・ベンボの肖像’が初お目見えした。

最も関心を寄せていたのは‘ダナエ’、3点あるダナエのうち最初に描かれたのがこれ。美術書ではお馴染みの絵だが、ナポりは簡単には行けないので鑑賞の機会があるとしてもそれはだいぶ先のことと思っていた。だから、日本で対面できたのは本当に運がよかった。

注目のまとはダナエの美貌、これほどの美形だと女好きのゼウスがほっておかないのもわかる。得意の変身の術を使って黄金の雨になりすましダナエに最接近、画面の右に暑苦しい老女がいるプラドのものよりこちらのほうがダナエとゼウスの恋物語にすっと入っていける。絵画はやはり本物をみるに限る。

ティントレット(1519~1594)はウフィッツイ蔵の2点、現地でみたことのある‘レダの白鳥’よりぐっと惹かれたのは天使たちが渦巻きをつくって空を飛んでいる‘ディアナとエンディミオン’、ティントレットはキリストの悲劇を絵画化するときよりギリシャ神話を表現するときのほうが人物がよりダイナミックに空間を動く。

展示室のはじめのほうにでてくるベッリーニ(1429~1507)の‘聖母子’に思わず足がとまった。すがすがしい気持ちになるのは背景の空の青さ、この明るい青空のおかげで宗教画の枠が取っ払われ、近代的な母子の肖像画をみているような気にさせてくれる。これは大きな収穫だった。

ヴェロネーゼ(1528~1588)はウフィッツイから出品された‘聖家族と聖バルバラ 幼い洗礼者ヨハネ’の構図に見惚れた。画面の中央に描かれたとても可愛い赤ちゃんをみんながみつめる姿がじつにいい。子どもはこんなふうに祝福されるために生まれてきたことをつくづく実感する。

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2016.12.31

今年 My‘好きな女性画’に加わった作品!

Img_0002     フラ・アンジェリコの‘ザクロの聖母’(15世紀 プラド美)

Img_0003ジェンティレスキの‘悔悛のマグダラのマリア’(1640年代中頃 バルベリーニ美)

Img_0001     ワイエスの‘マガの娘’(1966年)

Img     勝川春章の‘石橋図’(1783~87年)

絵画をみる一番の楽しみは‘女性画’との出会いなので一年の締めとして、今年My‘好きな女性画’加わった作品を登場させることにした。

12月に入ったときこの4枚は決まっていたが、6月初旬マドリードのプラド美でみたフラ・アンジェリコ(1400~1455)の‘ザクロの聖母’はケンスケさんの情報によると、イギリスの美術・文化雑誌はこの絵を世界の美術館が新たに収蔵した作品のベストワンに選んだとのこと。

不思議に思ったのは聖母の顔、ほかの宗教画に描かれた聖母とくらべとても親近感がありドラマやCMにでている人気のタレントと対面しているような気がした。この現代に生きる女性を思わせる容姿と身につけている服の青の輝きが目に焼きついている。

カラヴァッジェスキの女流画家、ジェンティレスキ(1593~1654)の‘悔悛のマグダラのマリア’も忘れられない一枚になった。大盛況の‘カラヴァッジョ展’(西洋美 3/1~6/12)に出品されたこの絵を所蔵しているのはローマにあるバルベリーニ宮国立古典美術館、一度訪問したときは展示されてなかったので目の前に現れたときは大きな衝撃を受けた。とくに息を呑むのが静脈のリアルすぎる表現。

今年はマドリードでの美術館巡りが大きな喜びをもたらしてくれたが、メインディッシュのボス、ラ・トゥールの絵だけでなく、想定外のワイエス(1917~2000)もそのなかに入っている。肌の皺やしみなど思わず見入ってしまうほど精緻に描くのがワイエスの肖像画の特徴、画面に大きく描かれた‘マガの娘’を長くみていた。

日本画でもいい絵に遭遇した。それは2月から3月にかけて出光美と太田記念美で開催された勝川春章(1726~1792)の回顧展に姿を現してくれた‘石橋図’、はじめてお目にかかる肉筆画で視線を釘付けにするのが被り物の獅子の毛の鮮やかな赤、こんないい獅子舞の絵を個人コレクターがもってたのか!という感じ。

今年も拙ブログにおつきあいいただきましてありがとうございます。
皆様よいお年をお迎えください。

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2016.12.23

ヴェネツィアの‘影追い’!

Img_0002     ヴェネツィアの中心 サンマルコ広場

Img        ‘影追い’ (TV東京‘美の巨人たち’11月放送より)

わが家では美術とのつきあいは展覧会をみるため出かける美術館だけでなくTV局が制作する美術関連の番組をみることも大きなウエートを占めている。そこで今年収穫のあった番組をふりかえってみた。

毎月購入している‘TVガイドブック’で番組内容をチェックしているのは‘美の巨人たち’、‘日曜美術館’、‘イッピン’(BSプレミアム火曜 午後7時30分)、そして‘美の壺’。このなかで最も注目しているのが‘美の巨人たち’と工芸が中心の‘イッピン’。

定番の‘日曜美術館’は井浦新と女性アナウンサーのMCがつまらないから関心度はだんだん低下している。二人には早くやめてもらいたいと願うばかり。これに対して、30分なのに収穫が多いのが‘美の巨人たち’。

もうかれこれ10数年みているが、番組作りの傾向がだいたいわかってきた。西洋絵画でよくとりあげるのはやはり美術史を語るうえで欠かせない最重要ピースのルネサンスと印象派、そして日本画でく繰り返し登場するのが江戸絵画と浮世絵。

明治以降に活躍した日本画家や洋画家についてはぐっと少なくなるが、そのなかで断トツに多いのが東山魁夷と横山大観と上村松園。今月は東山魁夷と川端康成のコラボ話が興味深かった。番組スタッフに魁夷が好きな者がいるのかもしれない。

先月ヴェネツィア派のティントレットの‘最後の晩餐’に続いて放送された‘サンマルコ広場’ではじめて聞いた話がでてきた。それはかつて存在した流しのワイン売りが鐘楼の影の動きにあわせて動く‘影追い’。ヴェネツィアではワインを飲むことを‘影を飲む’といったらしい。これはおもしろい!

この話はヴェネツィアの‘光と影’と深くかかわっている。観光客としてぽっとここを訪問してもこの光と影のことはわからない。現地に住んでいる人には真昼のまばゆい光と夕暮れ時の光と影のドラマがこの街で暮す一番の理由なのである。一日中ヴェネツィアにいる旅行をいつか計画してみたくなった。

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