2022.05.04

シェークスピアの世界を描く画家!

Img_0004_20220504222401   ミレイの‘オフィーリア’(1851~52年 テートブリテン)

Img_20220504222401   ドラクロアの‘墓場のハムレットとホレーショ’(1839年 ルーヴル美)

Img_0002_20220504222401  フュースリの‘短剣を奪うとるマクベス夫人’(1812年 テートブリテン)

Img_0001_20220504222401  ブレイクの‘オベロン、タイタニア、パックと妖精のダンス’(1786年 テートブリテン)

団体ツアーでロンドン旅行をするとシェークスピア(1564~1616)
の生まれたストラットフォード・アポン・エイボンを訪問することが多い。
大学町のケンブリッジやオクスフォードに行くオプションもあるが、人気
はやはりシェークスピアのほう。だから、イギリス観光から帰ってからの
土産話はロンドン市内のバッキンガム宮殿、大英博物館とロンドンから
北西200㎞ほどのシェークスピアの町で盛り上がる。

絵画になったシェークスピアの戯曲でもっとも印象深いのはあの有名な
‘ハムレット’。ミレイ(1829~1896)の描いた‘オフィーリア’は数
多くある傑作のなかでも特別な一枚という感じ。西洋絵画の鑑賞体験とし
てはダ・ヴィンチの‘モナリザ’をみたときと同じくらい大きな衝撃を感じる
絵である。気がふれて小川で溺死したオフィーリアだが、水面に浮かぶ姿が
これほど美しいと暗い影や心の乱れはみんな掻き消されてしまっている。

ロマン派のドラクロア(1798~1863)が描く‘ハムレット’は髑髏
を掘り出す墓掘り人夫をみつめるハムレットと友人のホレーショ。蒼白
い顔のハムレットはぱっとみると女性のよう。手も女性そのもの。その
軟弱で優柔不断な男性のイメージは消えず暗い闇のなかをさまよう姿が浮
かんでくる。ドラクロアにはリトグラフの‘オフィーリアの死’があるが、
狂気に陥って破滅する女主人公に強く心を揺すぶられる。

フュースリ(1741~1825)の‘短剣を奪いとるマクベス夫人’は幽霊
や幻覚と深くむすびついているシャークスピアの悲劇に大接近していると
いう感覚がすごくある。こういうのはフュースリが得意とするところ。ス
コットランドの国王を殺したマクベスを襲う恐怖の感情が細部をきちんと
描写しないことで強くでている。喜劇‘真夏の夜の夢’をフュースリから影響を
受けたブレイク(1757~1826)も水彩で表現している。この‘王オ
ベロン、王妃タイタニア、パックと妖精のダンス’は終幕、左端に王と王妃
がいる。

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2022.05.02

幻想画家 フュースリの怖い絵!

Img_20220502222801  

 ‘夢魔’(1781年頃 ゲーテ博物館)

Img_0002_20220502222901   ‘羊飼いの夢’(1793年 テートブリテン)

Img_0001_20220502222901   ‘タイタニア’(1790年 テートブリテン)

イギリス絵画への関心はこれまではラファエロ前派やブレイク、風景画の
ターナー・コンスタブルといった限られた画家へむけられたものだった。
だが、今年はちょっとした揺らぎがおきている。それはコナン・ドイルの
シャーロック・ホームズの探偵物語やエドガー・アラン・ポーの推理小説
やホラー小説がどっと押し寄せてきたためで、その影響によりほかの作品
の系譜も含めて絵画全般、そしてイギリスの小説の世界で18世紀末に生
まれたゴシック・ロマンスとの関係などにも興味が広がっている。

スコットランド国立美展(東京都美)に出品されていたブレイク(1757
~1827)はフュースリ(1741~1825)から強い影響を受けて
いた。生まれながらの幻想画家だったフュースリは本籍スイス、現住所
イギリスの画家。チューリヒの画家の子として生まれ、24歳のときロンド
ンに渡り、以後生涯イギリスですごした。

若い頃スイスのジュネーブに住んでいたこともありこの画家は気になってい
たが、そのとても怖い絵のせいでなかなか近寄れなかった。でも、今はBS
プレミアムで放送されているホームズ探偵物語のTV映画で‘バスカヴィル家
の犬’や‘サセックスの吸血鬼’をみたことで、フュースリの絵も感情重視の
ロマン主義や恐怖やサスペンスを好むイギリスの人々の風潮が反映されてい
るのでないかと思うようになり、しっかり向きあう気になっている。

グロテスクでかなり恐怖心をうえつけられるのが‘夢魔’。手前の娘の体は異様
な曲がり方をしており、夢魔を呼び寄せた馬の頭部はドキッとさせるとびで
た白い目が奇怪さを一層強めている。この絵がフュースリの出世作となった。
‘羊飼いの夢’と‘タイタニア’はともに背景を暗くしたくさんの人物を密集させ、
真上からの視点とか渦巻きのような動きのある描写により幻想的な世界を
表現している。  

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2017.03.20

美女に救われた‘シャセリオー展’!

Img     ‘カバリュス嬢の肖像’(1848年 カンベール美)

Img_0001  ‘泉のそばで眠るニンフ’(1850年 フランス国立造形芸術センター)

Img_0002     ‘アポロンとダフネ’(1848年 ルーヴル美)

Img_0003     シャヴァンヌの‘海辺の娘たち’(1879年 オルセー美)

美術館めぐりの最後に入館したのは西洋美、現在ここで‘シャセリオー展’(2/28~5/28)が開かれている。シャセリオー(1819~1856)の作品をどこの美術館でみたか、すぐいえるのはルーヴルとオルセーしかない。ほかの美術館でこの画家をみたという記憶はない。だから、2つの美術館でみたオリエンタリスム的な匂いのする女性の肖像を描いた画家というのがシャセリオーのイメージ。

とくべつ前のめりになる画家ではないが、チラシに大きく載っている‘カバリュス嬢の肖像’がどうも気になるのでパスというわけにはいかない。はたして、この美形の女性の絵が群を抜いてよかった。のぼせるような目で彼女をみていたら、もし今人気のモデルの奈々緒ちゃんにこういう衣装を着せたら瓜二つの感じになるかもしれないと思った。

いつものように男性の肖像への食いつきは悪く、どんどん進んでいたら、もう一点ぐっとくるのが現れた。‘泉のそばで眠るニンフ’、これはもうけものの作品。これで2点は確保した。でもじつをいうとこれでおわりだった.。印象に残る作品が少なく、期待していたルーヴル、オルセーの作品は1点もでてこなかった。だから、評価はよくないのだが、この2点に大変魅せられたので大甘で‘まあーいいか’とした。


期待していたルーヴルの作品はなんといっても‘エステルの化粧’と‘2人の姉妹’、チラシには載ってないが回顧展なのだから館内では会えるだろう、とふんでいた。ところが、かすりもしない。やって来たのは感じるものが少ない神話画の‘アポロンとダフネ’。でも、またいうが2点いい女性画に出会ったから他は忘れようと心を鎮める。

この展覧会ではシャセリオー以外にも、ドラクロア、モロー、シャヴァンヌがでている。そのなかでシャヴァンヌ(1824~1898)の‘海辺の娘たち’の前に長くいた。これに加えてルーヴルから件の2点のうちどちらかでもあったら評価はぐんと上がったのに。残念!とびっきりの美女、カバリュス嬢に救われた回顧展だった。

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2015.06.27

圧倒されるドラクロアの‘ライオン狩り’!

Img     ドラクロアの‘ライオン狩り’(1855年)

Img_0002     ラクールの‘ボルドーの港’(1806年) 

Img_0001     ペルジーノの‘王座の聖母子と2聖人’(1510年)

Img_0003     ‘角をもつヴィーナス’(25000年前)

現在、西洋美で開催中の‘ボルドー展’(6/23~9/23)をみてきた。サブタイトルが‘美と陶酔の都へ’、ボルドーの街の歴史を知っている人ならこのキャッチコピーはその通り!となるのかもしれない。これは都市物語をテーマにしたオールラウンドな展覧会、10年くらい前確か千葉市美で‘ミラノ展’があったが、展示品の幅は今回のほうが広いのが特徴。

ボルドーという街の名前をきくとすぐ‘ワインの街’を思い浮かべる。だが、街が大西洋岸にあることはわかっていてもどのあたりかはアバウト。地図で確認するとこの街は北スペインからそう遠くないところにある。パリからはTGVで3時間でつくらしい。

展示会場のまんなかくらいにラクールがボルドーの港の様子を描いた大きな絵が飾ってある。風景画というより港で働く人々やそれをながめている貴族たちが綿密に描かれた風俗画なので、みていて楽しい。ボルドーは19世紀の初頭こんなに活気のある街だった。

今回のお目当てはなんといってもドラクロア(1798~1861)の‘ライオン狩り’、この展覧会の情報が入ってきたときとびあがるほど嬉しかったのがこの絵。絵の存在を知ったのは20数年前のこと。そのとき1870年の火災により一部が破損してしまったという情報もくっついていた。そして、ルドンが焼けるまえ模写したものがあるということも。でも、実際にこの絵がみれるとは思ってもいなかった。

時が流れてその絵が目の前にある。そして、横に展示してあるルドンの模写によって絵の全体像がわかった。もとの絵をみて、災難にはあったが運もずいぶん残っていたなと思った。主役のライオンがかろうじてみれるのは幸いだった。

ドラクロアは動いている人物や動物を描くのはとても上手い。ライオンに爪でひっかかれている人物の横にはひんまがった体が複雑骨折しそうな馬の姿、そして右にいる剣をもっている男の描写がちょっとややこしい。
こういう格好でしゃがんでいる?顔が異常に大きいため、ベラスケスの肖像画に登場する小人をみているような気分になる。ドラクロアが何度となく手がけたライオン狩り、ライオンの強さがいつも目に焼きつく。

じつをいうと今回はこの‘ライオン狩り’の1点買い。だから、ほかの作品(大半はボルドー美の所蔵)はさらさらとみた。そのなかで足がとまったのがペルジーノの‘王座の聖母子と聖ヒエロニムスと聖アウグスティヌス’と25000年前につくられた‘角をもつヴィーナス’。

パリから3時間で着くボルドー、大好きなゴヤもここで亡くなった。いつか訪ねてみたい。

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2012.04.05

ブレイクの幻視ワールドをのぞいてみたい!

3705_2     ‘ヘカテ’(1795年 テート・ブリテン)

3706_2     ‘大きな赤い竜と海の獣’(1803~05年 ワシントン ナショナル・ギャラリー)

3707_2         ‘旋風’(1803~05年 ボストン美)

3708_2     ‘ペスト’(1805年 ボストン美)

詩を書き絵筆もとったウイリアム・ブレイク(1757~1827)の絵はフュースリ同様、不気味で奇怪な雰囲気につつまれているものが多い。二人はイギリスのロマン主義の先駆者だった。

ブレイクの版画や水彩画はロンドンのテート・ブリテンを訪問するとかなりみることができる。作品の数が多いのでローテーションによる展示、だから画集に載っている所蔵品を全部見ようとすると数回は足を運ぶ必要がある。

次回の訪問で対面を願っているのはフュースリの‘悪魔’のような奇怪さにちょっと腰がひける‘ヘカテ’。ヘカテはギリシャ神話のなかでもとくに謎めいた女神。女性の守護神で3つの顔をもち、幽霊や精霊や気味の悪い生き物を飼っていた。横向きで描かれたヘカテは目力のあるただならぬ美女の姿。でもこれが曲者。

強烈な幻視体験と鋭い想像力を駆使して生み出されるブレイクの絵画世界は怖さや不気味さがじわじわと体を沁みてくる感じ。‘大きな赤い竜と海の獣’は西洋の地獄絵をみているようで心がザワザワする。この絵と同じく画面の中心に裸の人物を配置する構成になっているのが‘旋風’。ブレイクの絵にはこういうぐるぐる回る車輪のようなモチーフがよくでてくる。

ボストン美のあるもうひとつの‘ペスト’は一度みたら忘れられない絵。濃い緑で体を彩られたペストの巨大な擬人像は大きく手を広げ、世界を死体で埋め尽くす悪の力を人々にみせつけている。

ブレイクは‘ダンテに語りかけるベアトリーチェ’のような明るい色調の絵も描いているが、大半はこういう霊的な幻視ワールドが表現されている。ブレイクの絵で連想されるのが何年か前にヒットしたサイコ殺人映画‘羊たちの沈黙’(ジュディ・フォスター主演)。この映画にブレイクの絵がでてきたこともあり、以来ブレイクというとこの怖ーい映画がセットで思い起こされる。

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2012.04.04

フュースリの奇怪な絵!

3701_2       ‘悪夢’(1781年 フランクフルト ゲーテ博物館)

3702_2     ‘夢魔’(1781年 デトロイト美)

3703_2     ‘ボトムを抱擁するティターニア’(1792~93年 チューリヒ美)

3704_2        ‘ティターニアが魔法の指輪をみつける’(1805年 チューリヒ美)

美術本をコンスタントに買い込むのは作品情報を得るのが目的。で、文章は横においてひたすら画像をながめ絵の特徴を目に焼きつけている。作品情報が沢山入ってくると似たような絵をひとくくりにしてみたくなる。そして、それを表す気の利いたフレーズをつける。これは結構楽しい。

時代の異なる作品をフレーミングするとき誰しも思いつくのは感情表現の言葉。楽しい絵、悲しい絵、怖い絵、奇怪な絵、人間の心のなかは単純なところと複雑なところが半々。だから、楽しい嬉しい気分のままでいたいときもあれば、心の奥底にある自分でもよく分からない世界をのぞいてみたいときもある。

そのなかでインパクトの強いのが怖い絵とか奇怪な絵、不思議な絵。ベックリンの絵は骸骨やグロテスクな顔をした怪物が登場するから怖い系タイプ。そのベックリンよりもっと不気味で奇怪なのがスイス人画家、フュースリ(1741~1825)。

この画家はベックリン同様縁がほとんどなく、すぐ思い出されるのはテート・ブリテンにある‘羊飼いの夢’だけ。でも、ずいぶん前から画集に載った不気味な絵が目に焼きついている。

みるたびに体がフリーズするのが目玉が飛び出た馬の登場する‘悪夢’と‘夢魔’。この馬はあまりながくみていると夢でうなされるような気がしてならない。一度お目にかかりたいが、絵があるのはフランクフルトとデトロイト。そう簡単には行けない。

フュースリはチューリヒの生まれなので、この街の美術館には作品が揃っていそう。チューリヒ美はスイスで美術館めぐりのときの主要美術館、フュースリの強く緊張させられる奇怪な絵といくつか対面できるかもしれない。

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2012.02.14

ドイツロマン派のフリードリヒはお好き?

3524_2     ‘北極での難破’(1824年 ハンブルク美)

3525_2     ‘眺望(人生の諸段階)’(1835年 ライプツィヒ造形美)

3523_2     ‘山上の十字架’(1807~08年 ドレスデン国立美)

3526_2     ‘教会のある冬景色’(1811年 ロンドンナショナルギャラリー)

あるひとりの絵画への関心というのはなにかをきっかけとして急に高まることがある。ここ半年くらいBS各局の美術番組を見ているうちに、ドイツにある美術館に展示されているドイツロマン派のビッグネーム、フリードリヒ(1774~1840)がだんだん気になりだした。

フリードリヒの絵はルーヴルとロンドンナショナルギャラリーで2点みたくらいで、05年東博で開催された‘ベルリンの至宝展’でみた‘海辺の月の出’など3点を加えても両手にはとどかないほど少ない鑑賞体験。やはりドイツの美術館へ出むかないとこの画家の全貌はつかめないのだろう。

だが、ドイツの美術館めぐりは簡単ではなく一般のツアーに参加するだけだと思いの丈の3割くらいしか果たせない。例えば、ドレスデンとかベルリンは行程によく入っているので、ドレスデン国立美の近代絵画館に飾られている‘山上に十字架’と対面できる可能性はある。これが最高傑作といわれているから、是非ともお目にかかりたいのだが、、

ロンドンナショナルギャラリー蔵の‘教会のある冬景色’は少しコンスタブルの絵を彷彿とさせるが、コンスタブルの風景画はこれほど精神性は強くない。フリードリヒの描く風景は山でも海でも人間が生きていることの意味が深く投影されている感じなので、気分は次第に重たくなる。

ちょっと息がつまりそうなところもあるのだが、ハンブルク美にある‘北極での難破’のように一度みたら忘れることはできないほどの強烈な印象をもっているため、いつか絵の前に立ちたいという気にさせられる。この美術館にはもう一点魅せられる絵がある。それは後ろ姿の人物が中央で岩の上に立っている‘雲海の上のさすらい人’。その前方の風景は神秘的な雰囲気につつまれている。実物と対面したら、その人物のなかに即入っていくことだろう。

沖の5隻の船と手間中央に描かれた5人の3世代の人物を象徴的にむすびつけている‘眺望’もしばらくみていたくなる作品。‘海辺の月の出’と同じタイプの絵だが、こういう風景画はほかにみたことがないから関心は高い。でも、この絵を所蔵しているのはライプツィヒの美術館。夢のままで終わるかもしれない。

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2008.04.01

その八 ダビッド  ジェリコー  ドラクロア

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ルーヴルの絵画を見ていて気分が一番高揚するのはドノン翼2階のフランス絵画の大作がずらっと飾られているところ。とにかく一点々がデカイ。ここへいると絵はやはり本物の前に立ってみるものだなと実感する。大きな絵の場合、画集に載っている画像のイメージ以上に“絵の力”を感じることが多い。

新古典主義のダビッド(1748~1825)の絵はこれまでドラクロア、アングルにくらべて執着度がうすく、よく覚えているのは“ナポレオン1世の戴冠式”と“レカミエ夫人”の2点のみ。で、今回は必見リストに載せた作品を中心にじっくりみた。プッサン同様、古代ギリシャ・ローマの英雄たちを題材にとったダビッドの絵は鮮明な線、なめらかな表面の仕上げ、大理石の浮き彫りのようなフォルムが特徴。とくに惹きつけられるのが人物の演劇的な身振りと激しい感情表現。

お目当ては“サビニの女たちの略奪”、上の“ホラティウス兄弟の誓い”,“息子の遺骸を迎えるブルータス”。“ホラティウス兄弟の誓い”は見ごたえのある絵。父親が手にもつ剣にむけて息子たちが右手をまっすぐ伸ばすポーズがすごくカッコいい。右のほうに母親や姉妹が迫り来る永遠の別れを嘆き悲しんでいる様子が描かれているだけに、愛国心にもえる兄弟は気高くみえる。“ナポレオン1世の戴冠式”にも描かれているピウス7世の肖像画があったが、以外にも小さな作品だった。

久しぶりにみたジェリコー(1791~1824)の“メジュース号の筏”にまたまた感動した。何度みても心が揺さぶられ、見れば見るほどすごい絵だなと思う。はるか遠くの水平線に見える船影はほとんど見えないくらいに小さいのに、樽の上に乗って赤い布をふる男を中心にまわりにいる者たちがかすかな希望を見出し、手をあげ体を前に乗り出す姿が実にリアルで胸を打つ。

歴史上の事件や聖書、神話の物語の劇的な瞬間を描いた絵は沢山あるが、緊迫度、衝撃度からいうとこの絵がNO.1かもしれない。しかも、実際に起こった事件の悲惨さを生存者に聞いて描いたので、この絵は当時の社会にとって衝撃的だったにちがいない。

死体の描写や筏のまわりの波のしぶきを見るとジェリコーは相当高い技量をもっていたことがわかるが、ドラクロア(1789~1863)はジェリコーの画風の影響をかなり受けている。下は前回見逃した“ダンテの小舟”。舟端をかんでいる亡者、暗い海などは“メジュース号の筏”と絵の感じが似通っている。

この絵で目に焼きつくのが左のダンテがかぶっている赤い頭巾。ドラクロアはこれを描いたのは24歳のときだが、天性の色彩感覚がすでに発揮されている。待望の絵をみたので、あとはわがドラクロアの大胆な筆致と輝く色彩で描かれた代表作“民衆を導く自由の女神”、“サルダナパロスの死”、“キオス島の虐殺”などを肩の力をぬいて楽しんだ。

上の画像はクリックで大きくなります。

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2005.06.06

ルーヴル美術館展

87ルーヴル美術館にはこれまで2回縁があり、2回目に訪れたのが1990年なので、それからもう15年たつ。この間、リシュリュー館が新たに加わり、展示の配置変えがあったと聞く。

また、ここに行きたいが、まだ見てない名所のほうが優先順位が高く、パリは2、3年先になりそう。横浜美術館で開催中のルーヴル美術館展で本場の気分を味わうことにした。ルーブルという名前がきいてるのか、入場者は多い。
3ヶ月の展示期間があるのでかなりの人を集めそう。会期は7/18まで

チラシにはアングルの傑作2点、“トルコ風呂”、“泉”が載っている。アングル
が80歳をこえて描いたトルコ風呂は日本、初お目見え。裸婦像の研究に
多くの時間を費やしたアングルが晩年、その集大成としてこの絵を制作した。
円形の画面に様々なポーズをとる女性が何人も描かれている。手前の6人は
大きく、向こうのほうにいる女は小さく、沢山描き込んでいる。奥行き感があり、
オリエンタルムードが漂っている。もう少し、明るい絵と想像してたが、全体
はグレーぽい。裸婦像が数え切れないほど出てくるので、色調はこのくらいの
ほうがいいかもしれない。アングルの絵では“スフィンクスの謎を解くオイディ
プス”もいい。

この展覧会で期待してたのがドラクロアの作品。全部で6点あった。ルーヴル
にはドラクロアの代表作が大半あり、それらはもってこれないだろうが、今回
出品されたのも質は低くない。ローズ嬢という裸婦像があった。ドラクロアにも
こんな作品があったとは知らなかった。右の絵は特に気に入った“レベッカ
の略奪”(部分)。ドラクロア得意の文学作品を題材にした絵である。ウォルタ
ー・スコットの歴史小説“アイヴァンホー”のなかにでてくる、美しいユダヤ娘
レベッカがテンプル騎士団の騎士に奪われていく場面から着想を得ている。

ルーベンスを思わせるような劇的で動きのある構図で暴力的な、レベッカに
とっては悲しい情景を描いている。色の使い方も巧みで、レベッカの衣装や
馬の白が際立ち、馬をひいてる男のターバン、騎士の上着の青も鮮やか。
ドラクロアはアングルに比べるとデッサンは下手かもしれないが、勢いのある
筆致と色調、動きのある構図、的確な人物描写により、劇的な瞬間や登場
する人物の悲しみや怒り、空しさなどの内面を表現している。

アングルやドラクロアだけでなく、ダヴィッド、ジェリコー、グロ、ジェラ-ル、
そして、コローのいい風景画など名画が沢山でている。ルーヴル美術館の
カタログに出ている作品ばかりが傑作というのではない。ここは所蔵品が多
すぎて割愛しているだけ。こういう展覧会をみるとそのことがよくわかる。

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