2024.05.10

二度目の‘浮世絵の別嬪さん’!

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  勝川春章の‘雪月花図’(重文 1787~88年 MOA美)

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  葛飾北斎の‘二美人図’(重文 1801~04年 MOA美)

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  喜多川歌麿の‘納涼二美人図’(1804~06年)

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  歌川豊春の‘花魁と禿図’(1789~1801年 中外産業株式会社)

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  鳥文斎栄之の‘蛍狩美人図’(1803~1810年)

大倉集古館で開催されている‘浮世絵の別嬪さん’は後期(5/8~6/9)に
入り、作品がごそっと入れ替わったので早速出動した。お目当てはズバリ
勝川春章(1743~1792)の‘雪月花図’。前回みたのは2006年に
MOA美(熱海)で公開されたときだから、それから18年ぶりの対面であ
る。つくづく日本画や浮世絵の鑑賞は長期戦だなと思う。3点のなかでぞ
っこん参っているのは真ん中の‘月’に描かれている机に頬杖をついて筆をと
る超別嬪(べっぴん)さん。再度、顔の白の輝きを焼きつけた。

MOAからはもう一点重文の肉筆美人画が出品されている。葛飾北斎
(1760~1849)の‘二美人図’。今回前期とあわせると全部で4点み
れるが、こんな機会は滅多になくその3点がはじめてお目にかかるものだ
から大収穫だった。北斎の肉筆も師匠の春章の技をうけついで紋様をふく
めて衣裳の描き方がとても精緻なのでつい見入ってしまう。

前期に新発見の美人画が登場した喜多川歌麿(1753~1806)は幼い
男の子と兎に視線を奪われる‘雪兎図’と二人の女性のくつろぐ姿に感情移入し
てしまう‘納涼二美人図’。My‘歌麿図録’は5冊もできたのに、この2点は入
ってない。個人が所蔵する肉筆の美人画がひょいとでてくるのだから、浮世
絵の世界は奥が深い。

会期の終了(5/15まで)が近づいている‘大吉原展’とコラボする歌川豊春
(1735~1814)の‘花魁と禿’を息を呑んでみていた。‘登竜門’の模様
が強いインパクトをもっており、思わず足がとまる。これぞ見ごたえ十分の
THE花魁!といった感じ。そして、視線を釘付けにするのが鳥文斎栄之
(1756~1829)の‘蛍狩美人図’。細い白い足をみていたら、あるこ
とがかぶってきた。どうでもいいことだが、それは大相撲春場所で新入幕
優勝して大きな話題になった尊富士(たけるふじ)の異様に細い足。

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2024.05.08

河鍋暁斎の日本神話画!

Img_0002_20240508225501    ‘日本神話 島々の誕生’(1878年)

Img_0001_20240508225501    ‘須佐男命の追放’

Img_0004_20240508225501    ‘天孫降臨’

Img_20240508225501    ‘海幸と山幸’

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‘惺々狂斎画帖 日本武尊東夷征伐’(1870年以前 河鍋暁斎記念美)

長らく手掛けてきたMy‘浮世絵図録’が完成に近づきつつある。最後に残った
ピースが国芳のDNAをしっかり受け継いだ河鍋暁斎(1831~1889)。
これまで3回遭遇した回顧展で制作された図録をベースにしてダブりを排し
再編集する。そうしてできた余白に市販された河鍋本に掲載されている作品
や解説文をぺたぺた貼っていく。見栄えも気にするのでお化粧も必要で元の
図柄をインク消しや白紙を使ってみえなくする。こうしたことに結構時間
がかかり、エネルギーを消耗するから作業をしているときはクラシックの
ピアノソロとかバロック音楽のCDをずっと流している。

3冊の図録のうち核となるのは2008年京博で開催された大回顧展のとき
につくられたもの。ここに暁斎の描いた傑作がすべてといっていいくらい集
まっている。空白の頁は1頁もない。図版をどんどん追加していくと元の
図録に比べるとずしっと重くなっていくので、最後のほうにある作品の一覧
や英文の頁は削除し重さを調整している。

ここに並んだ作品をみてつくづく感心するのは暁斎がとにかく絵が上手いこ
と。国芳風の戯画も抜群におもしろいし、狩野派にならった技法で描かれた
物語絵なども見惚れてしまう。今回の集中作業でひとつ忘れていた作品がで
てきた。それは日本神話を描いたもの。明治10(1877)年、東京大学
化学教師として来日していたアトキンソンが直接暁斎を訪れて制作を依頼した。

古事記をテーマにした全10図が描かれたが、現在5図が確認されている。3月に神話のふるさと宮崎を旅行し、このあと古事記関連の本を読んだので、ここにとりあげた‘島々の誕生’、‘須佐男命の追放’、‘天孫降臨’、‘海幸と山幸’が物語のイメージをより立体的にしてくれる。もう一点ほかのシリーズのなかで‘日本武尊東夷征伐’が描かれている。これまで日本神話の絵画化は青木繁と安田靫彦ばかりに関心がいって、暁斎のパワフルな絵が消えていた。これで古事記の絵がコンプリートになった。

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2024.05.05

歌川国芳の子ども絵!

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   ‘雅遊五節句之内 端午’(1839年頃)

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   ‘雅遊五節句之内 菊月’(1839年頃)

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   ‘新板子供遊びのうち ぼんぼんうた’(19世紀)

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   ‘新板子供遊びのうち 春のあそび’(19世紀)

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   ‘子供あそびのうち 川がり’(19世紀)

今日は‘こどもの日’だから子どもたちを描いた絵をとりあげたい。するとすぐ
思い浮かぶのが浮世絵。浮世絵は風俗画だから美人画や役者絵、風景画だけ
でなく、子どもを描いたものもたくさんある。なかでも鳥居清長(1752
~1815)と歌川国芳(1797~1861)が子ども絵の名手。清長の
お気に入りは元気いっぱいの金太郎。一方、国芳はいろんなバリエーション
があり、みてると頬がゆるみっぱなしになる。5点選ぶのにちょっと時間が
かかった。

江戸時代になると五節句が定められ端午(五月五日)が祝日となり、男子の
健康と出世を願う祭りが行われた。国芳の絵で男の子がもっている鯉のぼり
は出世のシンボル。描かれているのは菖蒲を編んで地面に打ちつけ、音の高
さを競って遊ぶ‘菖蒲打ち’の場面。活気があり音が聞こえてきそう。

‘こどもの日’がとても楽しかった頃を思い出してみると、町内の行事で‘子ど
も相撲大会‘が行われたような記憶がある。小学校、中学校の生徒で相撲の強
いのが参加していた。大相撲が全盛のころだから大勢の大人たちも熱心に応
援していた。だから、優勝でもすると祝いの品がもらえみんなから祝福され
るのでちょっとした町のヒーローだった。‘雅遊五節句之内 菊月’をみると
相撲のおもしろさが思い出される。

‘新板子供遊びのうち ぼんぼんうた&春の遊び’、‘子供あそびのうち 川が
り’では子どもたちが家の中や外でどんなことをして遊んでいたのか生き生き
と描かれている。川の傍で女の子たちが手をつなぎ歌を歌い、それに合わせ
て男の子が上手に踊っている。家のなかでは男女一緒にカルタやすごろくで
遊んでいる。‘川がり’はすごく懐かしい。大きな亀が採れたときは嬉しくて
たまらなかった。

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2024.04.29

歌麿の最高傑作、‘吉原の花’の楽しみ方!

Img_20240429224401   ‘吉原の花’(1793年頃 ワズワース・アテネウム美)

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拡大図 ‘腕に鼠を乗せて遊ぶ禿‘(1階)

Img_0002_20240429224401   ‘花魁の登場’(1階)

Img_0003_20240429224401   ‘指先を後ろにむけてお辞儀する女性‘(2階)

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‘笑うお多福’(2階)

好きな画家が描いた傑作をみることほど楽しいことはない。今それを東芸大
美で開催中の‘大吉原展’に飾られている歌麿の最高傑作‘吉原の花’で200%
感じている。この肉筆美人画の大作は会期中出ずっぱりで終了日の5/19ま
でいつ出かけてもお目にかかれる。こんなすばらしい浮世絵が日本に里帰り
することは滅多にないので、絵画の好きそうな友人や知人に会うたびに鑑賞
を薦めている。

歌麿本で知ったこの絵との対面が叶ったのは2017年。場所は箱根の岡田
美。同じく肉筆画で幻の絵といわれた‘深川の雪’をコレクションに加えた岡田
美がアメリカにある‘吉原の花’と一緒に並べて展示するという願ってのない
企画を実現させてくれたのである。そのとき、いつか東博で同じペアリング
で公開されたらもっともっと大勢の浮世絵ファンがいい気持になれるだろう
なと思った。

その予想は半分あたり、また‘吉原の花’は東博ではなく目と鼻の先の東芸大美
に姿を現してくれた。これほど嬉しいことはない。だから、2回足を運び、
長く時間をかけ大画面の隅から隅までじっくりみた。‘名画は会うたびに新発
見がある!‘といわれるようにあらたにみえてきたものがいくつもでてきた。

1階の中央で座敷に座っている赤い着物を着た禿(かむろ)は右手になにか
黒いものが描かれていることに気づいた。単眼鏡でみるとなんと鼠!
岡田美の図録にもこれが出ており、18世紀後半、鼠をペットとして可愛が
ることが流行ったらしい。白いハツカネズミならすっと腹に落ちるが、普通
の灰色の鼠だとちょっと違和感がある。

この絵で一番華やかなところは花魁が振袖新造を従えて登場する画面。頭の
上の桜をみてさらにその向こうの青の暖簾に目をやると、部分的にひらひら
揺れている。箱根ではここまでしっかりみなかった。風の動きまで描いてた
とは。そして、気になったのが6人の新造のなかにひとりだけ真正面を向い
ていること。この絵には全部で52人の女性が登場するが、もうふたりこち
らをじっとみている女性がいる。さて、どこだろう?

視線を2階に移すと、おもしろい仕草がでてくる。主客の青い着物の婦人の
前で女性が手の指先を後ろに向けてお辞儀をしている。これは武家の座礼
‘折手礼’で応じているとのこと。もうひとつ思わず口元がゆるむ女性がいる。
右端のおでこと頬がふくれた丸顔の‘お多福’。2階にもうひとりいるが、、

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2024.04.28

今年は浮世絵展の大当たり!

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先週の24日(木)にみた2つの浮世絵展、‘大吉原展’と‘浮世絵の別嬪さん’
で味わった感動の余韻に今浸っている。みどりがめさんから教えてもらった
‘別嬪さん’が加わったので今年は浮世絵展の大当たり!という思いを強くし
ている。で、このほかにも浮世絵や風俗画にスポットをあてた特別展がどこ
かの美術館で開催されるか確認してみると、いくつかでてきた。

最初から並べてみると、こんな感じ。
☆‘鳥文斎栄之展’(1/6~3/3 千葉市美)
☆‘大吉原展’(3/26~5/19 東芸大美)
☆‘浮世絵の別嬪さん’(4/9~6/9 大倉集古館)
☆‘北斎と広重’(4/13~5/26 中之島香雪美)
☆‘広重ー摺の極’(7/6~9/1 あべのハルカス美)
☆‘英一蝶’(9/18~11/10 サントリー美)

大坂の中之島香雪美で4/13から行われているのは江戸東博のコレクション
で構成されており、このあと岡山県美(6/7~7/7)と大分県美(7/26
~9/8)に巡回する。そして、気合が入っていそうなのが開館10周年を記
念して開催するあべのハルカス美の広重展。サブタイトルに‘摺の極’とつけて
いるのは出品される約330点のなかにヨーロッパの美術館から里帰りする
極上の摺の作品がどどっと含まれているからだろう。こう書かれると出かけ
たくなる。サントリー美の英一蝶展は‘布晒舞図’など肉筆画の傑作と久しぶり
に対面できそうなので、秋の美術館巡りの楽しみのひとつになっている。

浮世絵展の場合、作品が数多くでてくるためだいたい前期・後期で作品が大
きく変わる。そのため2度出かけると首都圏だけでも全部で8回出動するこ
とになる。2014年に江戸東博で‘大浮世絵展’と銘打ったイベントみたいな
スゴイ特別展があった。これに相当するのが大吉原展。今年はこのほかにも
浮世絵ファンを喜ばせるいい絵がたくさん登場する。浮世絵展でこれほど全
国的に盛り上がるのははじめてかもしれない。

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2024.04.25

2度目の‘大吉原展’!

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  勝川春章の‘竹林七妍図’(1789~92年 東芸大)

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 喜多川歌麿の‘扇屋十二美人張見世’(1806年 たばこと塩博)

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 歌川国貞の‘三ヶ月お仙つぼね見世之図’(1804~18年 静嘉堂文庫美)

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   菊川英山の‘花魁図’(1804~18年 千葉市美)

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  歌川広重の‘江戸名所 雪’(1848~49年 神奈川県歴博)

大倉集古館の帰りは楽な坂を雨に濡れないように下り、次の目的地に向かっ
た。これも今話題の浮世絵展の‘大吉原展’。後期(4/23~5/19)の展示
がはじまったのでウキウキして東芸大美をめざした。雨にもかかわらず大
勢の人がいた。そのなかに外国人観光客がかなりいる。みな事前にSNSでこ
の展覧会の情報をゲットしてるのだろう。これまででかけた浮世絵展とは観
客の風景がだいぶ変わってきた。大倉でも‘別嬪さんを’楽しんでいた10人く
らいのなかに二人の外国人カップルがいた。

前回手に入れた出品リストをチェックしながら後期の作品をみていった。
図録でみているからすぐこれだと気づく。嬉しいのは勝川春章(1726~
1792)の肉筆画が2点もみれたこと。‘竹林七妍図’と‘遊女と燕図’(東博)、
前期に東芸大と出光美のものがでたので全部で4点。春章の肉筆美人画をみる
のは版画の歌麿の大首絵と同じく生涯の楽しみだから、嬉しくてたまらない。
‘竹林七妍図’で中央にいる孔雀模様の打掛を羽織っているのが花魁。まわりの
芸者や遊女たちも色が白く‘別嬪さん’揃い。

数多く飾られている喜多川歌麿(1753~1806)はどれも頭がくらく
らするほど魅了されたが、後期で印象深かったのが大勢の遊女が集まった
‘扇屋十二美人張見世’。夢でこの場にいることをイメージして楽しんだ。映画
や芝居でみる遊女の感情や振る舞いを勝手に妄想すると、それに一番近いのが
歌川国貞(1786~1864)の‘三ヶ月お仙つぼね見世之図’。部屋から手
をのばして門口を掃除している女の姿に視線が釘付けになる。

歌麿が亡くなった後美人画で人気の絵師となったのが菊川英山(1789~
1867)。‘花魁図’に思わず足がとまった。打掛の模様がなんと烏。黒の
衣裳に白く輝く顔が浮き上がっている。歌川広重(1797~1858)は
前期に収穫があったが、‘江戸名所 雪’もはじめてお目にかかったもの。浮世
絵師のオールスターで本当にいい気分にさせてもらった。東芸大美に感謝!

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2024.04.24

大倉集古館の‘浮世絵の別嬪さん’!

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   菱川師宣の‘馬上若衆図’(1688~94年)

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   勝川春章の‘青楼遊宴図’(1788年頃)

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   喜多川歌麿の‘蛍狩り美人図’(1801~04年)

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  鳥文斎栄之の‘立美人図’(1804~18年 摘水軒記念文化振興財団)

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   歌川広重の‘三美人図’(1818~30年 似鳥美)

今日は予定していた美術館巡りのほかに1館が加わったので忙しくまわって
きた。最初に向かったのはその追加となった大倉集古館。ここで今‘浮世絵の
別嬪さん’(4/9~6/9)が開催されており、展覧会情報でいつもお世話に
なっているみどりがめさんから新たに発見された歌麿の絵が展示されている
ことを教えてもらった。この展覧会のことはアバウトにインプットされてい
たが、関心の外にはじき出されていたので、この話にすぐとびついた。

出品されているのはすべて肉筆画。喜多川歌麿(1753~1806)は
前期(4/9~5/6)に‘嶋台持つ娘立姿図’と新発見の‘蛍狩り美人図’、その
あと後期(5/8~6/9)にもう2点でてくる。この4点はいずれもまだ縁
がないのでMy歌麿図録にとって貴重なピースになりそう。なんだか降って
わいたような幸運に遭遇した気分である。

ところで、この特別展につけられているタイトル‘別嬪さん’(べっぴんさん)
のことを若い方はわかるだろうか?シニアから高齢者にとってこの言葉は
すごく響きがよくて美人を話題にするときはピッタリの感じがして、話が
弾むのだが。その別嬪さんが続々登場する。大きな収穫だったのが菱川師宣
(?~1694)の‘馬上若衆図’、なかなかみれない師宣が今回会期中に3点
でてくる。

肉筆の美人画でもっとも人気があったのが勝川春章(1726~1792)。
今は‘青楼遊宴図’と‘立姿美人図’だが、後期になると傑作中の傑作が飾られる。
それはMOA美が所蔵する‘雪月花図’(重文)。運がいいことに全部お目にか
かっているが、‘雪月花’は2016年出光美であった肉筆画に絞った‘勝川春章
展’に出品されなかった。まさか、大倉集古館で再会が果たせるとは。本当に
楽しみ、お見逃しなく!

今年は鳥文斎栄之(1756~1829)の当たり年!千葉市美で開かれた
回顧展は最高にすばらしかったし、現在、東芸大美の‘大吉原展’にも大英博か
ら回顧展に里帰りしたものがずっと日本に居残り出品されている。そして、
大倉に集結した‘別嬪さん‘のなかで‘立美人図’が強い輝きを放っている(前期)。
サプライズの肉筆美人画は歌川広重(1797~1858)。まったくイメ
ージできなかった‘三美人図’を息を呑んでみていた。広重がこんな菊川英山風
の美人画を描いていたのか!

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2024.04.23

東博に興味深い相撲絵!

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  勝川春章の‘赤沢山の相撲’(18世紀 東博)

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  ‘谷風 小野川 木村庄之助’(18世紀 東博)

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  ‘日本一江都大相撲土俵入後正面之図’(18世紀 太田記念美)

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  勝川春英の‘柏戸 錦木’(18世紀 名古屋テレビ放送)

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    ‘雷電 滝ノ音’(18世紀 ギメ美)

東博の平成館で開かれている‘法然展’をみたあと、本館に移動して平常展を久
しぶりにじっくりみた。以前は東博のHPで出品作を事前にチェックして頻繁
に通っていた。絵画は正面に向かって左の展示室で一階(明治以降の日本画
と洋画)と二階(日本画)をみて、最後に二階の正面側に飾ってある浮世絵
をみるのはお決まりのルーティン。

今回浮世絵を楽しんでいたら、とても興味深い三枚続きの相撲絵‘赤沢山の
相撲’に遭遇した。描いたのは勝川春章(1726~1792)。説明書きを
読んでいたら、おもしろいことになってきた。白い肌の男が浅黒い男の首を
左手で力強くブロックし、背後から体をもちあげ土俵の外に出そうとしてい
る相手の足に自分の左足を絡ませて後ろに倒そうとしている。この技は相撲
好きの人にはすぐわかる‘河津掛け’(かわづがけ)。

これは赤沢山で源頼朝(左の後ろでみている)を前に行われた余興相撲。
不利な体勢になっているのが‘曽我物語’で知られる曽我兄弟の父、河津祐泰
(かわづすけやす)。相撲の決まり手‘かわづがけ’があの曽我兄弟が仇討ち
をなしとげた父親の苗字からきていたとは。こういう話を知ったことにわけ
もなく興奮している。

家に帰り2016年に開催された勝川春章展(太田記念美)の図録をひっぱ
りだしてみると、この絵もしっかり載っていた。でも、解説は読んでないの
で‘かわづがけ’の由来には気づかなかった。頁をぱらぱらめくっていると春章
が本格的にはじめた相撲絵がいくつもでてきた。年六場所開かれる大相撲を
TVでいつも前のめりになってみているので、‘谷風 小野川’ 、‘錦木 
柏戸’、‘雷電 滝ノ音’や力士の土俵入りを描いたものに敏感に反応する。
‘錦木’(にしきぎ)と‘柏戸’は伊勢ノ海部屋の伝統の四股名で春場所2度目の
小結になった錦木は七代目。来月12日からはじまる本場所が待ち遠しい。

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2024.03.30

東芸大美の‘大吉原展’ 10年に一度の浮世絵展!

Img_0001_20240330223301  歌川広重の‘新吉原五丁町弥生花盛全図’(1831~45年頃 江戸東博)

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Img_0003_20240330223401   喜多川歌麿の‘吉原の花’(1793年頃 ワズワース・アテネウム美)

Img_0004_20240330223401  歌川国貞の‘桜下吉原仲之町賑之図’(19世紀 川崎・砂子の里資料館)

Img_20240330223401   勝川春章の‘吾妻風流図’(1781年頃 東芸大)

Img_0005_20240330223401  菊川英山の‘風流逢身八契 夕きりの暮雪’(1804~18年 たばこと塩博)

開幕4日目に足を運んだ‘大吉原展’(東芸大美 3/26~5/19)は予想の
2倍くらいの浮世絵ファンが押し寄せていた。多くの人が目玉の絵としてア
メリカのワーズワース・アテネウム美から里帰りした喜多川歌麿(1753
~1806)の肉筆美人画‘吉原の花’をお目当てにしているにちがいない。この大作を2017年箱根の岡田美でみたとき、体が震えるくらい感動した。そして、今年上野公園の桜が開花したこの時期に歌麿の最高傑作をまたみることができた。嬉しくてたまらない!展示作品は前期(3/26~4/21)と後期(4/23~5/19)で大幅に変わるが、この絵は通期出ずっぱりなのでご心配なく、終了の日だけをおぼえていればいい。でも、平日でこの混雑だから早めに出動されることをお薦めしたい。

東芸大で浮世絵展に巡りあうとは思ってもみなかったが、浮世絵と密接に
繋がっている吉原にスポットを当てるアイデアを実現させた企画力はたいし
たものである。しかも、これまでお目にかかったことがない絵や質が高い
作品が数多く集まっているので、トータルの評価としては10年に一度クラ
スの浮世絵展であることは間違いない。そのなかで驚かされたのが浮世絵
コレクションで世界的に知られている大英博物館からやって来た歌麿、鳥居
清長、鳥文斎栄之が描いた摺りの状態がとてもいい作品。千葉市で3/3ま
で行われていた‘鳥文斎栄之展’に出品されたものが日本にとどまっていて
東芸大美にふたたび登場している。これは気が利いた対応。

吉原で主役をはる艶やかな花魁が次から次にでてくる。数が多いのは歌麿、歌川国貞(1786~1864)、遊女をいっぱい描いた渓斎英泉。歌川広重(1797~1858)が鳥瞰の視点から描いた‘新吉原五丁町弥生花盛全図’はじつは長く‘追っかけリスト’に載せていたもの。ようやくお目にかかることができた。新規の作品としては一番の収穫。また、歌川豊春は大英博や個人蔵のいい絵があったのも幸運だった。

肉筆の美人画でもっとも人気があった勝川春章(1726~1792)は‘吾妻風流図’をはじめ会期中に全部で4点でてくる。お見逃しなく。渓斎英泉と同様に遊女の浮世絵師として知られる菊川英山(1787~1867)は影がなく華やかなイメージの強い花魁をたくさん描いた。歌麿もいいが英山にはまた別の魅力がある。寅さんの映画にでてくる浅丘ルリ子が演じたリリーみたいな女をいつも思い浮かべている。

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2024.02.07

2度目の‘鳥文斎栄之展’!

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   ‘貴婦人の船遊び’(1792~93年頃 ボストン美)

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   ‘青楼万歳俄 七月盆おどり’(1791年 江戸東博)

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   ‘名所盃合 高輪’(1794年頃 太田記念美)

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    ‘弓矢を持つ美人’(1788~89年 山口県萩美・浦上記念館)

千葉市美で開催されている‘鳥文斎栄之展’の後期展示(2/6~3/3)を早速み
てきた。千葉への出動がこんなに機敏なのは世界で初めてとなる回顧展に強
く惹きつけられているから。お楽しみのど真ん中にあるのが横に長いワイド
スクリーンに描かれた作品。このスタイルは鳥居清長(1752~1815)
の独壇場と思っていたが、そうではなかった。鳥文斎栄之(1756~
1829)もまた清長と双子かと錯覚するくらいこのワイド画に傑作を連発
しているのである。すばらしい!

会期中出ずっぱりの‘貴婦人の船遊び’を再度長くみていた。この絵が飾ってあ
る部屋では後期にワイド画は全部で8点みられる。これは圧巻!内訳はボス
トン美蔵が‘貴婦人’を含めて4点、大英博、千葉市美、サントリー、東博の
ものが各1点。今、浮世絵好きの知人、友人にこの回顧展を推薦しまくって
いる。

動きのある絵では前期の‘茶屋娘見立雁金五人男’よりさらにスピード感がある
‘青楼万歳俄 七月盆おどり’に思わず足がとまった。つられて踊りたくなる
気分。まるで洛中洛外図の踊りの場面をみているよう。これに対し、‘弓矢を
持つ美人’は緊張感がみなぎる前、肩をほぐすためにちょっと軽口をたたいて
いるところを想像させる。‘前回は全然ダメだったけど、今日は上手く当てる
からね’とかなんとか言っているのだろうか。

‘名所盃合 高輪’はじっとみていると目が点になった。ここにはじつにシュー
ルな表現がある。掛け軸から船に見立てた赤い盃が3つ飛び出してきており、
上では盃が朝日となり立体的に表現されている。鳥文斎がこんな意表をつく
おもしろい絵を描いてたとは、真にすごい絵師である。 

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