2018.07.24

納涼アート! 北斎

Img     ‘下野黒髪山きりふきの滝’(1833年 東洋文庫)

Img_0001     ‘滝に鯉’(1834年 大英博)

Img_0003     ‘瑞亀図’(19世紀初頭 奈良県美)

Img_0002          ‘西瓜図’(1839年 三の丸尚蔵館)

連日の厳しい暑さで汗を相当かいている。日中は仕方がないにしても夜になっても温度が下がらないのはしんどい。TVで危険的な暑さを警告してくれ熱中症対策の情報を流してくれるので水分補給を欠かさないようにしている。

わが家は夏はクーラーを使わない習慣なので朝からずっと扇風機が回っている。普通は‘弱’なのだが、今年はあまりに暑いので‘中’にしておくことが多い。問題は寝るとき、風邪をひくのでなるべく扇風機は使わないことにしているが、これも限界。ここ数日ベッドから遠く離してつけっぱなしにしている。とにかく一体どうなっているのかというほど今年は暑い!

冷たい飲み物で喉をうるおすとき一番ほっとするが、気休めに涼しさを呼ぶ美術品にも助けてもらうことにした。‘納涼アート’を思いつくまま選んでみた。まずみたいのが葛飾北斎の(1760~1849)の浮世絵。涼しさを運んでくれるのはやはり水。

北斎の‘諸国瀧廻り’で最も激しい水しぶきを感じさせてくれるのが日光三名瀑のひとつ‘下野黒髪山きりふりの滝’、これくらいどどっと水が落ちてくると滝壺あたりでは涼しいにちがいない。まだこの光景をみてないが、現地の人が羨ましい。

出世を願う鯉の滝登りを描いた‘滝に鯉’もずっとみていたい滝。北斎は本当に水の表現がうまい。形がない水の動きを描くのは並みの絵師にはとっても難しいことだが、北斎は観察の天才だから滝を落下する水の帯のなかを抜けてくる鯉を量感豊かにとらえる。お気に入りの一枚。

井戸から水があふれでるのをみたことないが、‘瑞亀図’では長寿を告げる吉兆とされた瑞亀が湧き出る水とともに出現したところが描かれている。亀を横にみながらこの水を手ですくって飲んだら一息つくだろう。

暑いときに欠かせない食べ物がそーめんとスイカ。三の丸尚蔵館にある‘西瓜図’をみるたびに暑さを乗りきるには西瓜が一番だなと思う。

 


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2017.12.30

北斎 VS セザンヌ モネ!

Img_0003     北斎の‘富嶽三十六景 東海道程ヶ谷’

Img_0001 セザンヌの‘サント=ヴィクトワール山’(1887年 フィリップスコレクション)


Img     北斎の‘富嶽三十六景 駿州江尻’

Img_0002     モネの‘アンティーブ’(1888年 コートールド美)

最近は日曜美術館への関心が薄くなっているため、見るのは月に1回くらい。今月は‘HOKUSAIの衝撃’を熱心にみた。出演した解説者は西洋美の馬淵館長、現在行われている‘北斎とジャポニスム’(10/21~1/28)の仕掛け人である。

馬淵さんは印象派の専門家だから、西洋の画家たちに影響を与えたジャポニスムの関連で浮世絵にはとても詳しい。今回の展覧会では北斎(1760~1849)の‘富嶽三十六景’や‘北斎漫画’に刺激をうけて構図やモチーフの描き方を真似た西洋美術がどどっと登場した。

西洋の絵画や工芸、彫刻といろいろあるが、やはり関心が強いのが絵画への北斎の影響。これまでドガやロートレック、モネ、ゴッホ、ゴーギャンについては浮世絵の構図をヒントにした作品は明確にイメージできる。これはモノグラフなどからも情報は入っている。

ところが、セザンヌ(1839~1906)は例えば、‘サンク=ヴィクトワール山’のように北斎の‘東海道程ヶ谷’にでてくる松の木と富士山などがヒントになっていることは明らかなのに、セザンヌ本には自身が浮世絵から影響を受けたことを語るくだりはまったくでてこない。たぶん、セザンヌはモネやゴッホたちとはちがい、作品の独自性を意識するあまり浮世絵のことを口にしたくなかったのだろう。

一方、モネ(1840~1926)は浮世絵が好きでたまらないから、コレクションしている浮世絵師の作品から貪欲に構図や色彩を吸収していく。画面の中央にすこし傾いた木の幹をどーんとみせる‘アンティ―ブ’は北斎の目にみえない風を表現した傑作‘駿州江尻’をそっくりいただいている。モネはもちろんこの絵を描くにあたって北斎の絵だけではなく広重の前景にモチーフを大きく描く‘江戸名所百景’なども参考にしている。

モネの風景画はほかにも富士山を意識した‘コルサ―ス山’や北斎が得意とした波の描写を真似た‘ベル=イル海岸沖の嵐’も紹介されたが、こうした作品が並ぶと北斎がモネに与えた影響の大きさがわかる。質の高い展覧会をみせてくれた馬淵館長に拍手!

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2017.12.29

高まる浮世絵人気 ‘歌川豊国展’がみたい!

Img      歌川豊国の‘沢村宗十郎のさつま源五兵衛’

Img_0002       ‘役者舞台之姿絵 やまとや’

Img_0001     ‘両画十二候五月’

毎年どこかの美術館でいい浮世絵の展覧会が開催されるが、今年は数が多かった。
★‘深川の雪と吉原の花’    7/28~10/29  岡田美
★‘ボストン美蔵 鈴木春信展’ 9/6~10/23   千葉市美
★‘北斎ー富士を超えてー’   10/6~11/19  あべのハルカス美
★‘北斎とジャポニスム’    10/21~1/28  西洋美
★‘菊川英山展’        11/3~12/20  太田記念美

浮世絵とのつきあいは長いので、美術館のなかにいる観客の数が増える傾向にあることが実感できる。昔に較べて目につくようになったのが女性。年代でいうと30代あたりが結構いる。最近出かけた太田記念美の菊川英山展では30代後半の二人連れが熱く語っているのが印象的だった。もしかしたら
‘浮女’(My造語)?

また、大阪のあべのハルカス美で北斎展をみたときは若い女性が予想以上にいた。北斎のようなビッグネームの回顧展だと男性も含めて若年層の心を浮世絵は今確実にとらえている。この光景は西洋美の‘北斎とジャポニスム’でもみられた。

こうした浮世絵人気を反映して、美術館が仕掛ける浮世絵展も充実した内容のものが多くなってきた。だから、これからも海外からの里帰りもラインナップに加わる質の高い作品が楽しめそう。

今年は想定外の菊川英山展があった。次に期待したいのはまだ縁がない歌川豊国(1769~1825)。来年の展覧会にはでてこないが、どこかの美術館がとりあげてくれることを強く願っている。

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2017.12.08

美人画の名手 菊川英山!

Img     ‘青楼美人合 岡本屋内 稲岡 茂枝’(1812~13年)

Img_0001     ‘風流美人揃 五色墨 猫を抱く美人’(1814~17年)

Img_0002     ‘風流青楼美人六玉川之内 陸奥 千鳥玉川’(1814~17年)

Img_0004     ‘花車子供遊’(1814~17年)

太田記念美で行われている‘菊川英山展’(11/3~12/20)の後期をみてきた。チケットの半券をみせると200円引。普通は100円引だから美術館に対する好感度は上がる。

喜多川歌麿の美人画のDNAを引き継ぐといわれる菊川英山(1787~1867)だが、歌麿が亡くなった1806年は二十歳のころ。英山は長生きの家系だったのかを80歳まで生きた。同世代では歌川国貞(1786~1864)がいる。そして、10歳若いのが広重(1797~1861)と国芳(1797~1858)。

この回顧展にでた作品は全部で200点、後期はその半分。以前から英山の描く女性のハッとする色っぽさに魅了されていたが、英山の美人画をこれほど多く楽しめたのは本当に幸せだった。これまで美人画の浮世絵師列伝に入れていたのは春信、春章、清長、歌麿。これからは英山を加えることにした。

見事な遊女の半身像に思わず足がとまるのが‘青楼美人合 岡本屋内 稲岡 茂枝’、上の女性の口紅は高価な緑色の笹色紅、歌麿がこれをみたら裸足で逃げたかもしれない。

‘風流美人揃 五色墨 猫を抱く美人’と‘風流青楼美人六玉川之内 陸奥 千鳥玉川’では英山流のゾクッとするほど女性美が心をかきむしる。とびっきりの美形で色白、ここですぐ頭をよぎるのが女優の沢尻エリカ、そして、女性を引き立てる猫と千鳥の群れにも視線がむかう。

感心してみていたのは‘花車子供遊’。清長、国貞、国芳にも気持ちが和む子どもの風俗画があるが、英山がこれほど上手に子どもたちを描いていたとは。英山に乾杯!

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2017.11.23

太田記念美の‘菊川英山展’!

Img     ‘雪月花図’(1814~18年 東博)

Img_0001     ‘江戸名所美人八景 上野暮雪’(1808~09年)

Img_0002     ‘当風三美人’(部分 1811~14年 太田記念美)

Img_0004     ‘花あやめ五人揃 廊下’(1811~13年 日本浮世絵博)

久しぶりに行った太田記念美、今‘菊川英山展’(11/3~12/20)を開催している。手にしたチラシに‘二百年前のエレガンス’とある。菊川英山(1787~1867)が描く美人画のイメージにぴったりのコピー。展示室に入る前から期待がもてそうな空気を感じた。

作品は全部で200点、前期(11/3~26)と後期(12/1~20)で半分づつでてくる。これほど多くの英山をみる機会がやって来るとは思ってもいなかった。たまたま美術館のHPをみて開催に気がついた。色っぽい遊女が手招きをしたのかもしれない。

はじめはいつものように靴をぬいで肉筆画を楽しんだ。東博でみた覚えがある‘雪月花図’は季節柄、右の雪の降るなかを歩いていく女性に目がとまる。さしている傘のデザインがじつにシャープ。

歌麿の美人画を彷彿とさせるのが‘江戸名所美人八景 上野暮雪’、雪の積もった寛永寺を背景に本を読む女性が大きく描かれている。歌麿が亡くなったあと、またうっとりさせる美人画が登場したので江戸っ子たちは大喜びだったにちがいない。

‘当風三美人’では反対側の座敷の様子がシルエットになっているところに歌麿の影響がみられる。廊下でリラックスする芸者の描き方は平板なのに奥の部屋を影絵でみせることで奥行きのある空間表現になっている。こういう浮世絵をみるとゴッホたちは痺れただろうなとつくづく思う。

英山独自の美人画になってきたなというのが‘花あやめ五人揃 廊下’、障子をあけて室内からでてきた遊女にはゾクッとするような色香がただよう。英山のこの遊女になぜか女優の沢尻エリカが重なる。真っ赤な口紅が色白の顔に映えるところもそっくり。

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2017.10.22

北斎のダイナミズム!

Img     上町祭屋台天井絵‘男浪図’(1845年 小布施町上町自治会)

Img_0001      ‘女浪図’

Img_0004          ‘滝に鯉’(1834年 大英博)

Img_0002     ‘長春・黄鳥’(1834年 大英博)

Img_0003     葛飾応為の‘関羽割臂図’(1844~54年 クリーブランド美)


以前小布施の北斎館でみた祭屋台天井絵‘浪図’が大英博物館で展示されるという話が今年初めに放送された日曜美術館にでてきたとき、イギリスの浮世絵ファンはどんな反応をするだろかと思った。おそらく、北斎は‘グレートウエーブ’のほかにこんな波も描いていたのか!とびっくりしたにちがいない。

‘男浪’と‘女浪’をあらためてじっくりみると、やはり‘男浪’のほうにぐっと惹きつけられる。どちらも濃い青の中心部分は巨大な渦巻きがトンネルのようにダイナミックに描かれている。そしてその渦巻きが回転速度を増すたびに大きなしぶきが上から下から飛び散る。まさに動画をみているよう。

大英博物館から色がよく残ったすばらしい版画が沢山やって来ているが、思わず足がとまったのが‘滝に鯉’。鯉の体が流れ落ちる滝によって分断されるというシュールな表現がなんともすごい。円山応挙にもこんな絵があることをすぐ思い出した。

北斎の魅力のひとつが花鳥画。大英博の摺りのいい13点を息を呑んでみていた。お気に入りは正面をむいた鳥が印象深い‘長春・黄鳥’、海外のブランド美術館が所蔵する花鳥画はいずれも心を打つ。ミューズに感謝!

NHKは展覧会に関連してを北斎の番組をつくったが、今回は娘の応為にも光を当てている。応為の作品は会期中5点でてくるが、チラシで気になっていたのは‘関羽割臂図’。三国志を全巻読破したのでこの絵には敏感に反応する。

関羽は毒矢で傷ついた腕を治すため荒っぽい治療をうけても平気な顔をしているのに、まわりの者は痛そうでみておれないとあたふたしている。これは記憶に残る一枚。応為もやるねぇ。

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2017.10.21

大盛況の‘北斎展’!

Img     ‘雪中虎図’(1849年)

Img_0001     ‘鍾馗図’(1846年 メトロポリタン美)

Img_0002     ‘露草に鶏と雛’(1832年 メトロポリタン美)

Img_0003     ‘河骨に鵜図’(1847年 大英博)

国宝展をみたあとヘビーな昼食をとり、大阪の天王寺をめざした。大阪に土地勘がなく天王寺駅と難波駅との区別があやふや。そのため、ホテルの案内係から教えてもらったJRで大阪まで行きそのあと環状線に乗り換え天王寺で下車するというルートを選択した。

天王寺にある日本一高いビル、あべのハルカスは駅から歩いて5分で着いた。現在‘北斎ー富士を超えて’(10/6~11/19)を行っているあべのハルカス美は16階。ガラス越しに外がみえるエレベーターの大きいこと!30人くらい乗せられそうな広さに目を白黒させていた。

国宝展は入館に40分かかったが、ここでもチケットを買うのに長い列ができていた。この展覧会は当初パスのつもりだったのでローソンで前売り券を購入するのを忘れていた。20分くらい待ってようやく館内に入ることができたが、なかも人だらけ。京都が国宝展で大賑わいなら、大阪は北斎展で大いに盛り上がっている。

今回、関心を寄せていたのは肉筆画だが、作品の構成は版画が予想以上に多く2005年に東博であった北斎展以来の質の高い回顧展となっていた。まさに超一級の浮世絵展。出かけたのは大正解だった。これも龍光院の曜変天目が出品されたおかげ。

一番のお目当ては肉筆の‘雪中虎図’、この虎が気持ちを揺すぶってきた。なにか優しそうで愛嬌のある虎が雪のなか横を飛ぶように描かれている。雪が積もった木の枝に上下から囲まれるように虎を配置する構図がとてもいい。本物は図版でみるより3倍も魅了された。

赤一色の‘鍾馗図’はチラシで気になっていた作品。すみだ北斎美にある体を横に曲げた鍾馗も展示されるが(11/6~19)、シャンとした姿で鋭い目で前をみつめるこのMET蔵のほうに惹かれる。同じくMETからやって来た‘露草に鶏と雛’と大英博の‘河骨に鵜図’も浮世絵本でみたことのない絵、こんないい北斎に出会えるのだから回顧展はありがたい。

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2017.10.03

浮世絵で盛り上がる秋の展覧会!

Img

今年も残り3ヶ月となり、でかける予定の展覧会は少なくなってきた。前半はミュシャの‘スラブ叙事詩’やブリューゲルの‘バベルの塔’、アルチンボルトなど西洋絵画が美術ファンの心を奪ったが、後半は日本美術が断然輝いている。

今日から京博で‘国宝展’がはじまり(11/26まで)、東博では大運慶展(11/26まで)が行われている。そして、西でも東でもこの秋は浮世絵の展覧会が充実している。すでにみたものを含めざっとあげてみると、

★‘深川の雪と吉原の花’   7/28~10/29   岡田美
★‘鈴木春信展’       9/6~10/23    千葉市美
★‘北斎~富士を超えて~’  10/6~11/19  あべのハルカス美
★‘北斎とジャポニスム’   10/21~1/28   西洋美

まわりにいる浮世絵が好きそうな人には岡田美と千葉市美で展示してある歌麿の傑作‘吉原の花’と春信の美人画を見逃さないように言っている。二人の美人画をみれば西洋画ではマネとルノワールの女性画を存分に楽しんだようなもの。アクセスがちょっと悪いがそれでもでかける価値がある。

大阪で話題の北斎展がもうすぐスタートするが、北斎は東京でも登場する。21日からはじまる西洋美の‘北斎とジャポニスム’、ともに未見の北斎に何点遭遇するか、西洋美がつくるチラシには作品の情報がないがはたしてどんな北斎に出会えるか、サプライズに期待したいところ。。

これに対して、あべのハルカス美では狙いの作品は決めてある。美術館は天王寺駅にすぐそばにあるらしいが、天王寺で降りたことはないので、京都からどういう風にいくのが一番早いのかあれこれ調べている。やはり、四条烏丸から阪急で梅田まで出て、そこから地下鉄御堂筋線に乗り換えるのがベストルートだろうか。

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2017.09.30

期待を上回る‘鈴木春信展’!

Img_0002     ‘八つ橋の男女(見立八橋)’(1767年)

Img     ‘流れのほとりで菊をつかむ女(見立菊慈童)’(1765年)

Img_0001     ‘夕立’(1765年)

Img_0003     ‘風流江戸八景 両国橋夕照’(1768年)

千葉市美では現在、ボストン美所蔵による‘鈴木春信展’(9/6~10/23)が行われている。ここは15年前にも超一級の春信展をやり世の浮世絵好きを大いに楽しませてくれた。当時横浜にはいなかったが、幸運にも萩の浦上記念館に巡回してくれたので広島からクルマでかけつけた。

このときボストン美からは16点でてきたが、今回はこれらを含む90点ほどが里帰りした。ボストンにこれほど多くの鈴木春信(1725~1770)があったとは!ボストン、メトロポリタン、シカゴ、フィラデルフィア、アメリカのビッグな美術館には感心するほど質の高い浮世絵が揃っている。そして、それらが頻繁に日本で公開されるのだから嬉しくなる。

足がとまることたびたびなのでどれを選ぶか悩む。ポイントは色彩の鮮やかさとハッとする構図と描写、‘八つ橋の男女(見立八橋)’は画面をジグザグに曲がる八つ橋の造形的なおもしろさと鮮やかな黄色が目を釘づけにする。

‘見立菊慈童’は春信全作品のなかでベスト5に入れるほど気に入っている。春信は水の流れの描写が抜群に上手く、娘の前を流れる川にはミニ滝のような激しい流れができている。かわいい娘が醸し出すやわらかい雰囲気が自然の動的描写によってぴりっと締まる感じがする。

‘夕立’の荒々しさは春信のなかでは異色の作品。夕立が急にきたものだから、若い女性は大慌て、急いで洗濯物を取り込もうとするあまり下駄が脱げてしまった。よくある日常の光景をこれほど緊張感をもたせて表現するのだから、春信の画技はずぬけている。少女風の女性ばかり描いている絵師では決してない。

長くみていたのは‘風流江戸八景 両国橋夕照’、立っている女性に目をやると自然にその背景に描かれた富士山と沈む夕日にも視線が向かう。計算された構図のつくりかたに一本とられた。

なお、この春信展はこのあと次の美術館を巡回する。
★名古屋ボストン美   11/3~2018/1/21
★あべのハルカス美  4/24~6/24
★福岡市博        7/7~8/26

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2017.09.17

美人画競演 歌麿 VS 松園!

Img_0002         喜多川歌麿の‘芸妓図’(1802年)

Img_0001       喜多川歌麿の‘三美人図’(1789~1801年) 

Img       上村松園の‘汐くみ’(1941年)

岡田美で今、歌麿の大作‘雪月花’(ただし、‘品川の月’は複製画)を展示しているのは2階、この部屋を出た後、4階へ移動するとこの特別展に関連した‘人物表現のひろがりー土偶・埴輪から近現代の美人画までー’というテーマ展示を楽しめる。

腹が減っていたのでこれはパスして美術館を後にしたが、手に入れた作品リストには前回出会った歌麿と上村松園(1875~1949)の美人画が載っていた。ともに2点ずつ。この美術館が歌麿の肉筆画を何点もってるか正確には知らないが、大作の‘深川の雪’に加え長いことフランスにあった‘芸妓図’と1910年ロンドンで開催された日英博覧会に出品され評判になった‘三美人図’も並ぶとなると日本で一番の歌麿コレクションといっても過言でない。

熱海のMOA美には尾形光琳の国宝‘紅白梅図’があり、箱根の岡田美にはいずれ国宝になると思われる歌麿の‘深川の雪’がおさまっている。パリのルーヴルやNYのメトロポリタンをみれば明らかなようにいい絵を揃えた美術館は観光の大きな目玉になる。そう離れてないこの二つの美術館は今やそんな存在、これからますます来館者を増やすにちがいない。

先月、ホテルオークラで行われた恒例のチャリティ展で松園のとてもいい‘うつろう春’(霊友会妙一コレクション)に遭遇した。そのため、リストにあった‘汐くみ’と‘夕涼’を敏感に思い浮かべた。とくにぐっとくるのが‘汐くみ’、これほどの傑作なのこれまで上村松園展でお目にかかったことがない。例えば、2010年東近美であった超一級の回顧展に‘汐くみ’のタイトルがついた作品は2点でたが、完成度では岡田美のほうが上だった。

コレクターというのは誰も咎められないわがままなところがあって‘うつろう春’と同じようにいい絵ほど展覧会に出したがらない。是非、箱根へお越しくださいと岡田美は言いたいのだろう。

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