2019.11.30

摺りのいい写楽が続々!

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  東洲斎写楽の‘3代目大谷鬼次の江戸兵衛’(1794年 ベルギー王立美歴博)

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   葛飾北斎の‘雪月花 隅田’(1833~44年 江戸東博)

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  歌川広重の‘和漢朗詠集 月に雁’(1830~44年 ミネアポリス美)

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           歌川国芳の‘双龍’(1831~32年)

東洲斎写楽の摺りのいい大首絵がみられる浮世絵展に遭遇するのは10年に
一度くらいのこと。今回は2011年に東博で開かれた写楽展と同じように
浮世絵のコレクションで有名な海外の美術館からたくさん里帰りしている。
お気に入りの悪党、‘江戸兵衛’はベルギー王立美歴博とシカゴ美から出品さ
れている。ワルの怖さを200%みせつけるため写楽は目をつりあげ指を大
きく広げた手を描いた。この手がいつもイモリの足を連想させる。

葛飾北斎(1760~1849)と歌川広重(1797~1861)は定番
の‘富嶽三十六景’と‘東海道五捨三次’が軸となるラインナップ。まだみてない
ものがあるか目をこらしてみたが、数点にとどまった。そのためこのコーナ
ーでは進むスピードを早めたが、今の時分北斎の‘雪月花 墨田’に思わず足
がとまった。この冬、何度雪景色がみられるだろうか。

広重の‘月に雁’はミネアポリス美蔵の2点が並んでいる。見慣れているのは
絵だけの‘月に雁’だが、和漢朗詠集の漢詩が上に書かれているほうはこれまで
みたかはあやふや。2枚は雁の群れが大きな月を背景にして飛んでいるところ
は同じ。違いをさがすと、漢詩つきは雁の影が下の水面に描かれている。雁
が飛んでいく姿が影となって映る表現に心が揺れる。

歌川国芳の人気がどんどん高まっていく感じ。人気の秘密は画題の多さと
戯画チックな人物描写が圧倒的な存在感を感じさせることかもしれない。
今回‘大江山酒呑童子’や‘川中嶋合戦’だけでなく二匹の龍の睨みあいが刺激的
だった。これはたぶんはじめてお目にかかったもの。一見すると迫力のある
龍だが、よくみるとユーモラスでとぼけた味をだしている。

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2019.09.12

待望の‘歌川豊国展’!

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   ‘役者舞台之姿絵 まさつや’(1794年 太田記念美)

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    ‘子どもの戯れ’(1798~1800年 太田記念美)

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     ‘三福神’(1801年 日本浮世絵博)

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     ‘座頭の行列’(1801年 東博)

歌川豊国(1769~1825)は浮世絵展が開催されるときには必ず登場
する人気の浮世絵師。ところが、なぜかこれまで回顧展に遭遇しなかった。
この絵師の作品がたくさん載った図録がないというのはどうもしっくりこな
い。それがようやく解消された。太田記念美で今、‘写楽を超えた男 歌川
豊国’(9/3~9/29)が行われている。

作品の数は140点弱、前期と後期に分けそっくり入れ替える展示をすると
推測していたが、今回はそうではなく部分的に替わるだけ。だから一回出動
すれば豊国を存分に楽しめる。豊国の出世作はなんといっても‘役者舞台之姿
絵’、そのなかで多くの浮世絵ファンを熱狂させたのが‘まさつや’、足と手を
大きく広げる姿がいかにも歌舞伎の舞台を思わせる。写楽の‘三代目大谷鬼次
の江戸兵衛’とかぶるので鬼次の悪役ぶりがいっそう目に焼きつく。

同じく太田記念美が所蔵している‘子どもの戯れ’にも惹きこまれる。3人の
子どもが障子の腰板に映る自分の表情を無邪気に楽しんでいる。こういう日
常のひとこまを生き生きと描くのが浮世絵のおもしろいところ。西洋絵画で
も風俗画はあるがこうした素の笑いがとりあげられるのはごく一部の絵だけ。

いくつもあった収穫のなかでじっくりみたのが‘三福神’。ここではめでたい
七福神に女がなっている。真ん中の打ち出の小槌を持っているのが大黒天、
右手に白い鼠をのせている。その右で鯛を釣りあげるのは恵比寿さん。さて、
残るは左の女性、ちょっとわかりにくいが布で琵琶をつつんでいる弁財天。
船首の大きな鶏が強く印象に残る。

もっとも興味深かったのが‘座頭の行列’、東博の浮世絵が飾ってある部屋へは
これまで何度も足を運んだが、この座頭の絵はお目にかからなかった。豊国
にもこんな戯画があったのか!目が悪いため座頭たちはお互いに協力して
丸木の橋を渡っている。これは忘れられない。

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2019.05.01

企画力が光る‘北斎のなりわい大図鑑’!

Img_0001_40      葛飾北斎の‘蛤売り図’ 蛤売り

 

Img_0003_36      ‘今戸川’ 今戸焼職人

 

Img_0002_40      ‘富嶽三十六景 尾州不二見原’ 桶屋

 

Img_44      ‘五十三次江都の往かい大津’ 大津絵師

久しぶりに両国にあるすみだ北斎美へ行ってきた。背中を押してもらったの
はいつもお世話になっているみどりがめさん。今開催中の‘北斎のなりわい
大図鑑’(4/23~6/7)に新発見の北斎(1760~1849)の肉筆画
‘蛤売り図’が展示されていることを教えてもらった。これは見逃せない!
展示は前期(4/23~5/19)のみなので普通は出歩かない連休中にもか
かわらず出動した。

今回の展覧会は江戸の人々のなりわいが北斎と弟子たちにどう描かれたかを
みせてくれている。すばらしい企画力で拍手々!浮世絵は風俗画の最たる
ものだから、みててこれほど楽しいことはない。まずはお目当ての‘蛤売り
図’をじっくりみた。描かれたのは寛政9~10年(1797~98)、驚い
たのは籠に入れている蛤が白の胡粉を使って描かれ輝いていること。日本画
をみるときはいつもこの胡粉に注目しているが、北斎の肉筆でも白のアクセ
ントが印象的だった。

一休みしている棒手振りの蛤売りが商売するのは9月、十五夜に蛤の吸い物
を食べる風習があるため毎晩売り歩いた。美味しい吸い物だったにちがい
ない。食物の話をすると元気になる。興味深いのがあった。‘今戸川’に描かれ
ている今戸焼職人。江戸のころから今川焼があったのは知らなかった。わが
家の秋から冬にかけの美味しいもの定番は横浜そごうで売ってる‘御座候の
今川焼’、安くて餡がたっぷり入っているので最高。

ほかにもいろいろな生業で生計をたてている人たちが登場する。みてのお楽
しみ。思わず足がとまったのがとても見慣れている傑作‘富嶽三十六景 尾州
不二見原’にでてくる桶屋職人。大きな丸い桶の圧倒的なリアリティ、丸の
なかに描かれた富士山は完全に食われている感じ。この職人の仕事ぶりには
流石の富士山もお手上げだろう。

大津絵は当地のお土産やお守りとして人気があったらしい。以前、日本民藝
館で大津絵を夢中になってみたので‘五十三次江都の往かい大津’にも敏感に
反応する。こんな風にして絵師たちは忙しく描いていたのだ。後ろの女は
‘ちょいと、次は人気の鬼にするかい。在庫が少なくなったから’なんて言っ
てる?

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2019.04.24

‘メアリー・エインズワース浮世絵コレクション’展!

Img_37      鈴木春信の‘六玉川・調布の玉川’(1767年)

 

Img_0001_33      鳥文斎栄之の‘御殿山の花見’(1781~89年)

 

Img_0002_33      喜多川歌麿の‘見立唐人行列’(部分 1797~98年)

 

Img_0003_29      葛飾北斎の‘唐子遊び’(1790年)

例年のように海外の美術館が所蔵する質のいい浮世絵コレクションが里帰り
するが、今年はアメリカ人女性、メアリー・エインズワースさんが愛した
浮世絵(オハイオ州オーバリン大学アレン・メモリアル美蔵)が千葉市美に
やって来た。ここで4/13~5/26に開催されたあと、静岡市美(6/8
~7/28)、大阪市美(8/10~9/29)にも巡回する。

千葉市美は過去に鳥居清長展(2007年)、鈴木春信展(2017年)で
目を楽しませてくれたが、今回も200点のラインナップは圧巻! 
菱川師宣からはじまり、春信、清長、写楽、豊国、歌麿、北斎、広重、国芳
と名の知れた浮世絵師をほとんど網羅している。しかも、初見のものが多く
含まれ、色もよく残っているからたまらない。心を浮き浮きさせる一級の
浮世絵展に遭遇したことを腹の底から喜んでいる。

鈴木春信(1725~1770)の‘六玉川・調布の玉川’は川の流れの描写に
思わず足がとまる。方向をS字に曲げる水流に入り布を晒す娘の足が水面から
透けて見えるのがじつにいい。ほかにこれまでお目にかかったことのない
初期の作品など12点。見てのお楽しみ!鳥文斎栄之(1756~1829)
の‘御殿山の花見’はちょっと前に終わった上野の花見の再現。今の季節にもっ
てこいの絵柄。

喜多川歌麿(1753~1806)は9点でている。そのうち3枚続の横長
ワイド画面が2点、そしてサプライズはもっと長い7枚続の‘見立唐人行列’、
これは大収穫、歌麿に乾杯!葛飾北斎(1760~1849)の子ども絵
‘風流見立狂言 三本柱’と‘唐子遊び’を長くみていた。まるっこい男の子たち
は清長の描く子どもを連想させる。

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2019.02.23

北斎の‘向日葵図’!

Img_0001        ‘向日葵図’(1847年 シンシナティ美)

Img_0002     ‘曙艸 吉野山花見’(部分 1797年 島根県美)

Img     ‘円窓の美人図’(1804年 シンシナティ美)

Img_0003     ‘鯉亀図’(1813年 埼玉県立歴史と民俗の博物館)

21日(木)六本木の森アーツセンターへでかけ‘新・北斎展’(1/17~3/24)をみてきた。‘日曜美術館’が2回にわたって北斎(1760~1849)をとりあげたことが浮世絵ファンの関心をさらに高めたのか、チケット売り場へ着くと案内係から‘現在、60分待ちです’と告げられた。

お目当ての‘向日葵図’をみてさっと帰る予定だったが、入場するのに1時間も待つことは想定外。北斎人気がこれほど盛り上がっていたとは!そのため、次のサントリー美へ行く時間が大幅に狂った。

大規模な北斎展が続く。昨年10月大阪のあべのハルカス美で大英博との共同プロジェクト‘北斎ー富士を超えてー’があり、その3ヶ月後今度は東京で永田コレクションを軸にして北斎のバラエティにとんだ作品がずらっと並ぶ。‘浮世絵界の大スター、北斎、カッコいいねぇ’と声をかけたくなる。

展覧会のチラシをみて鑑賞欲を強く刺激された‘向日葵図’はこれまで情報がなかった絵。シンシナティ美所蔵の浮世絵は2005年東博であった北斎展に‘円窓の美人図’が出品されたが、この美人は今回ひまわりも一緒にもってきてくれた。

こういうふうに向日葵を単独で描いたものですぐ思い浮かべるのは畠山記念館にある鈴井其一(1796~1858)の向日葵図。ひょっとして其一は北斎の向日葵の絵を知っていて、じゃあ、自分もと筆をとった?
北斎のとてもやさいい感じのする向日葵に会えたのは生涯の思い出。本当にすばらしい!

永田コレクションの‘曙艸 吉野山花見’の展示期間(2/21~3/4)と無意識にタイミングがあっていたことに気づいた。そして、2005年にみた‘鯉亀図’(2/21~3/24)とも運よく再会した。混雑する会場をすりぬけながら進んでいったが、はじめてみるものが数多くあった。北斎の展覧会へ何度足を運んでも大きな満足がえられるのは作品の幅が広いから。

浮世絵特有の小さな絵がたくさんあるので鑑賞に相当なエネルギーを使う。だから、途中で休憩を入れてみるほうがよいかもしれない。

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2018.10.20

横浜高島屋の‘浮世絵 最強列伝展’!

Img     喜多川歌麿の‘名所腰掛八景 すだれ’(1795~96年)

Img_0004     喜多川歌麿の‘女行列川渡’(1804年)

Img_0003     菱川師宣の‘低唱の後’(1679~84年)

Img_0001     勝川春章の‘坂東三津五郎’(1780~81年)

来週の月曜、22日まで横浜高島屋で行われている‘サンタフェ リー・ダークスコレクション 浮世絵最強列伝’をみてきた。この浮世絵展はつい最近知り、散歩がてら出かけてきた。前もって案内しておくと来年1/9~21に日本橋の高島屋にも巡回する。

浮世絵のコレクターは日本人に限らず世界中に大勢いる。リー・ダークス氏はアメリカ人で空軍士官として日本に駐留したとき浮世絵の虜になり、収集にのめり込んだらしい。このコレクションについてはNO情報だったが、会場を進んでいくうちに予想以上にいい作品が揃っていることがわかってきた。師宣、春信、清長、写楽、歌麿、北斎、広重、国芳、豊国、国貞、、といった浮世絵オールスターが続々現れてくる。

期待値がアバウトなとき収穫が多いと本当に嬉しくなる。その筆頭が喜多川歌麿(1753~1806)、‘名所腰掛八景 すだれ’と三枚続きの‘女行列川渡’に大変魅了された。‘川渡’は以前展示替えでみれなかったもの。これはラッキー。そして、‘名所腰掛八景’シリーズはこれまで一枚も縁がなかった。すばらしい!

菱川師宣(?~1694)は定番の‘衝立のかげ’の隣にひょいと‘低唱の後’が飾ってあった。これは画集に載っていたかどうか?‘最強列伝’もわかるーという感じ。美人画はほかにも春信、清長、栄之、英山も揃っているのだから申し分ない。みてのお楽しみ!

そして、歌舞伎役者を描いた勝川春章(1726~1792)の‘坂東三津五郎’に思わず足がとまった。役者を中心からすこし左にずらして描き、腕の一部を画面からはみ出すところが上手い。こうしたちょっとした工夫が肖像画を生き生きとしたものにしている。ほかにも豊国の大きな相撲絵にも惹きこまれた。

今年は太田記念美で広重を楽しみ想定外の最強列伝に遭遇した。帰り際、来年森アーツセンターで開催される‘新・北斎展’(1/17~3/24)のチラシが目に入った。楽しみがまた増えた。

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2018.10.04

2回目の‘歌川広重展’!

Img     ‘尾州有松絞店之図’(1830~44年)

Img_0001     ‘鯛 鯉 鰹’(1830~44年)

Img_0002     ‘古今浄瑠理尽 飛ら仮名盛衰記’(1846~48年)

Img_0003     ‘道中膝栗毛 参宮道白子’(1836~37年)

太田記念美で開催中の‘没後160年記念 歌川広重展’は後期(9/29~10/28)になり作品が全部入れ替わったので再度足を運んだ。出品されているのは全作品213点の半分ほど。前期同様すべて太田記念美のコレクション。ここは何度も通っているので馴染みの作品も多いが、そこは浮世絵の専門美術館。まだお目にかかったことのない風景画、美人画などがさらっと現れる。

歌川広重(1797~1858)は東海道の宿場や日本各地の名所をたくさん描いた浮世絵風景画の達人、その影響はヨーロッパの画家たちにも及んだ。ゴッホは前期に展示された‘大はしあたけの夕立’をまねて描いているし、モネは‘亀戸天神社’の太鼓橋が気に入り‘睡蓮’の連作でこのアーチ型の橋を描き入れている。

‘尾州有松絞店ノ図’は当時大繁盛した名古屋の有松絞の店から依頼されてつくったPRチラシのようなもの。店に立ち寄る旅人の多いこと。店先にならぶ籠が人気のバロメーターとなっている。依頼主の要求に200%応えた広重。現在生きていたら、売れっ子のクリエーターになれる。

花鳥画が会期を通じて17点並ぶ。まだみてなかったものでもっとも魅了されたのが‘鯛 鯉 鰹’。これは見事な魚の絵。ほかに龍、錦鶏、寿帯鳥、鴨、牡丹、猿、鹿が目を楽しませてくれる。

思わず足がとまったのが‘古今浄瑠理尽 飛ら仮名盛衰記’。国芳をおもわせる武者絵だが、松の木に登り琵琶湖の方をみている男の姿がじつにカッコいい。国芳がこれを見たら、‘広重、腕上げたなぁー、あせるぜ!’とつぶやいたかもしれない。

地下の展示室に飾られている戯画の数々が痛快!腹の底から笑えるのがユーモラスな‘道中膝栗毛 参宮道白子’、喜多さんの乗った馬の尻を馬方がぴしゃっとたたいたものだから馬は飛び出した。喜多さんはその動きについていけず落下。‘オイオイ、よしてくれよ、俺お客だよ’、と喜多さんは嘆くが、借金取りに馬をとられたら商売できなくなるので馬方は必死。こんなおもしろい絵を描いた広重に乾杯!

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2018.09.20

太田記念美の‘歌川広重展’!

Img_0002     ‘東海道五捨三次之内 日本橋 行烈振出’(1835年頃)

Img_0003     ‘東都名所 高輪之明月’(1831年頃)


Img_0001     ‘山海見立相撲 越中立山’(1858年)


Img     ‘大井川歩行渡’(1852年)

太田記念美では現在歌川広重(1797~1858)の没後160年を記念した回顧展(9/1~10/28)が開かれている。作品は前期(9/1~24)と後期(9/29~10/28)で総入れ替えし、全部で213点でてくる。

2007年には神奈川県立歴史博物館で没後150年展があった。10年毎に広重の特別展に遭遇できるのは嬉しいかぎり。この度は浮世絵の専門館での開催だから目に力が入る。今日の午前中に入館したが、来館者がどんどん増えていくので、開幕してから大勢の人が広重の風景画、花鳥画、美人画、戯画を存分に楽しんだにちがいない。

広重とのつきあいは長いから期待ははじめてみる絵に集中するが、流石は太田記念美。プラスαが続々と登場する。目をこらしてみたのは東海道五十三次の‘日本橋’の別ヴァージョン。静かな早朝を描いたものがお馴染みの絵だが、橋を渡ってくる大名行列の前方に多くの人数が描かれた‘行烈振出’は初版の2年後に摺られた。行列が迫ってくると皆大急ぎで道の脇に移動するのだろう。これはこれでおもしろい。

広重の名を一躍有名にした傑作‘東都名所 高輪之明月’を久しぶりにみた。満月をバックにして気持ちよさそうに飛んでいく雁の群れに思わず見入ってしまう。宗達&光悦の合作にたくさんの鶴が優雅に飛翔する作品があるが、広重の雁もこれと同様見るたびに魅了される。

初見の‘山海見立相撲 越中立山’の前では以前TVでみた中国の観光名所となっている奇岩が林立する山々を思い出した。山派ではないのでここに描かれた剣岳はとんとわからないが、構図のつくり方に惹かれて長くみていた。

今回の収穫のひとつが‘大井川歩行渡’、これもこれまで縁がなかったもの。輦台に乗ったり人足の肩車で川を渡る女がここにもあそこにもいる。ここでは旅人の主役は女たちで後ろのほうで人足の数が多い大名乗物が行き来している。タイムワープして肩車してもらいたくなった。

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2018.07.24

納涼アート! 北斎

Img     ‘下野黒髪山きりふきの滝’(1833年 東洋文庫)

Img_0001     ‘滝に鯉’(1834年 大英博)

Img_0003     ‘瑞亀図’(19世紀初頭 奈良県美)

Img_0002          ‘西瓜図’(1839年 三の丸尚蔵館)

連日の厳しい暑さで汗を相当かいている。日中は仕方がないにしても夜になっても温度が下がらないのはしんどい。TVで危険的な暑さを警告してくれ熱中症対策の情報を流してくれるので水分補給を欠かさないようにしている。

わが家は夏はクーラーを使わない習慣なので朝からずっと扇風機が回っている。普通は‘弱’なのだが、今年はあまりに暑いので‘中’にしておくことが多い。問題は寝るとき、風邪をひくのでなるべく扇風機は使わないことにしているが、これも限界。ここ数日ベッドから遠く離してつけっぱなしにしている。とにかく一体どうなっているのかというほど今年は暑い!

冷たい飲み物で喉をうるおすとき一番ほっとするが、気休めに涼しさを呼ぶ美術品にも助けてもらうことにした。‘納涼アート’を思いつくまま選んでみた。まずみたいのが葛飾北斎の(1760~1849)の浮世絵。涼しさを運んでくれるのはやはり水。

北斎の‘諸国瀧廻り’で最も激しい水しぶきを感じさせてくれるのが日光三名瀑のひとつ‘下野黒髪山きりふりの滝’、これくらいどどっと水が落ちてくると滝壺あたりでは涼しいにちがいない。まだこの光景をみてないが、現地の人が羨ましい。

出世を願う鯉の滝登りを描いた‘滝に鯉’もずっとみていたい滝。北斎は本当に水の表現がうまい。形がない水の動きを描くのは並みの絵師にはとっても難しいことだが、北斎は観察の天才だから滝を落下する水の帯のなかを抜けてくる鯉を量感豊かにとらえる。お気に入りの一枚。

井戸から水があふれでるのをみたことないが、‘瑞亀図’では長寿を告げる吉兆とされた瑞亀が湧き出る水とともに出現したところが描かれている。亀を横にみながらこの水を手ですくって飲んだら一息つくだろう。

暑いときに欠かせない食べ物がそーめんとスイカ。三の丸尚蔵館にある‘西瓜図’をみるたびに暑さを乗りきるには西瓜が一番だなと思う。

 


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2017.12.30

北斎 VS セザンヌ モネ!

Img_0003     北斎の‘富嶽三十六景 東海道程ヶ谷’

Img_0001 セザンヌの‘サント=ヴィクトワール山’(1887年 フィリップスコレクション)


Img     北斎の‘富嶽三十六景 駿州江尻’

Img_0002     モネの‘アンティーブ’(1888年 コートールド美)

最近は日曜美術館への関心が薄くなっているため、見るのは月に1回くらい。今月は‘HOKUSAIの衝撃’を熱心にみた。出演した解説者は西洋美の馬淵館長、現在行われている‘北斎とジャポニスム’(10/21~1/28)の仕掛け人である。

馬淵さんは印象派の専門家だから、西洋の画家たちに影響を与えたジャポニスムの関連で浮世絵にはとても詳しい。今回の展覧会では北斎(1760~1849)の‘富嶽三十六景’や‘北斎漫画’に刺激をうけて構図やモチーフの描き方を真似た西洋美術がどどっと登場した。

西洋の絵画や工芸、彫刻といろいろあるが、やはり関心が強いのが絵画への北斎の影響。これまでドガやロートレック、モネ、ゴッホ、ゴーギャンについては浮世絵の構図をヒントにした作品は明確にイメージできる。これはモノグラフなどからも情報は入っている。

ところが、セザンヌ(1839~1906)は例えば、‘サンク=ヴィクトワール山’のように北斎の‘東海道程ヶ谷’にでてくる松の木と富士山などがヒントになっていることは明らかなのに、セザンヌ本には自身が浮世絵から影響を受けたことを語るくだりはまったくでてこない。たぶん、セザンヌはモネやゴッホたちとはちがい、作品の独自性を意識するあまり浮世絵のことを口にしたくなかったのだろう。

一方、モネ(1840~1926)は浮世絵が好きでたまらないから、コレクションしている浮世絵師の作品から貪欲に構図や色彩を吸収していく。画面の中央にすこし傾いた木の幹をどーんとみせる‘アンティ―ブ’は北斎の目にみえない風を表現した傑作‘駿州江尻’をそっくりいただいている。モネはもちろんこの絵を描くにあたって北斎の絵だけではなく広重の前景にモチーフを大きく描く‘江戸名所百景’なども参考にしている。

モネの風景画はほかにも富士山を意識した‘コルサ―ス山’や北斎が得意とした波の描写を真似た‘ベル=イル海岸沖の嵐’も紹介されたが、こうした作品が並ぶと北斎がモネに与えた影響の大きさがわかる。質の高い展覧会をみせてくれた馬淵館長に拍手!

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