2017.09.17

美人画競演 歌麿 VS 松園!

Img_0002         喜多川歌麿の‘芸妓図’(1802年)

Img_0001       喜多川歌麿の‘三美人図’(1789~1801年) 

Img       上村松園の‘汐くみ’(1941年)

岡田美で今、歌麿の大作‘雪月花’(ただし、‘品川の月’は複製画)を展示しているのは2階、この部屋を出た後、4階へ移動するとこの特別展に関連した‘人物表現のひろがりー土偶・埴輪から近現代の美人画までー’というテーマ展示を楽しめる。

腹が減っていたのでこれはパスして美術館を後にしたが、手に入れた作品リストには前回出会った歌麿と上村松園(1875~1949)の美人画が載っていた。ともに2点ずつ。この美術館が歌麿の肉筆画を何点もってるか正確には知らないが、大作の‘深川の雪’に加え長いことフランスにあった‘芸妓図’と1910年ロンドンで開催された日英博覧会に出品され評判になった‘三美人図’も並ぶとなると日本で一番の歌麿コレクションといっても過言でない。

熱海のMOA美には尾形光琳の国宝‘紅白梅図’があり、箱根の岡田美にはいずれ国宝になると思われる歌麿の‘深川の雪’がおさまっている。パリのルーヴルやNYのメトロポリタンをみれば明らかなようにいい絵を揃えた美術館は観光の大きな目玉になる。そう離れてないこの二つの美術館は今やそんな存在、これからますます来館者を増やすにちがいない。

先月、ホテルオークラで行われた恒例のチャリティ展で松園のとてもいい‘うつろう春’(霊友会妙一コレクション)に遭遇した。そのため、リストにあった‘汐くみ’と‘夕涼’を敏感に思い浮かべた。とくにぐっとくるのが‘汐くみ’、これほどの傑作なのこれまで上村松園展でお目にかかったことがない。例えば、2010年東近美であった超一級の回顧展に‘汐くみ’のタイトルがついた作品は2点でたが、完成度では岡田美のほうが上だった。

コレクターというのは誰も咎められないわがままなところがあって‘うつろう春’と同じようにいい絵ほど展覧会に出したがらない。是非、箱根へお越しくださいと岡田美は言いたいのだろう。

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2017.09.15

待望の喜多川歌麿の‘吉原の花’!

Img 喜多川歌麿の‘雪月花 吉原の花’(1791~92年 ワズワース・アセーニアム美)

Img_0004    一階部分の拡大

Img_0002       ‘深川の雪’(1802~06年 岡田美)

Img_0001       ‘品川の月’(1788年 フリーア美)

3年前、喜多川歌麿(1753~1806)の‘雪月花 深川の雪’をみた箱根の岡田美を再訪し、開催中の‘歌麿大作 138年ぶりの夢の再会 深川の雪と吉原の花’(7/28~10/29)をみてきた。箱根はクルマだと1時間半くらいで到着するので、美術館へは楽に出かけられる。

今回のお目当てはアメリカから22年ぶりにやって来た‘吉原の花’。このすばらしい肉筆画の存在は前から知っていたが、千葉市美の歌麿展(開館記念)があったとき生憎東京にいなかったので対面は叶わなかった。図録でいつもため息とつきながらながめていたその絵がまた日本に登場したのだから、幸運というほかない。

入館するとすぐ2階へあがり、‘吉原の花’に突進した。図録通りの見応え十分の大傑作!一階と二階に描かれている女性の数はなんと52人。ちなみに横に飾ってある‘深川の雪’に出てくる芸者たちは28。遊び人の旗本やらお金をたっぷりもっている豪商たちがこぞって繰り出す吉原、この絵にはそうした男たちはでてこないが、きれいな衣装を身につけた遊女たちが満開の桜を楽しむ姿が生き生きと描かれている。

茶屋の二階では武家の奥方たちを楽しませる花笠踊りの真っ最中、踊りを盛り上げる三味線や鼓、太鼓の軽やかな音が聞こえてくるよう。そして、エンターテイメント気分をさらに高める演出が上の金雲、洛中洛外図でおなじみの雲が白い桜の花びらと華やかに響きあっている。この絵に出会ったことは生涯の喜び、ミューズに感謝!

オマケで展示されている‘品川の月’は所蔵しているフリーア美(ワシントンD.C.)からは門外不出となっているため、原寸大の高精細複製画。これもいつかこの目でと思っているが、そのチャンスがやってくる可能性は小さい。だから、本物のつもりで隅から隅までじっくりみた。

今年みた日本画で大きな収穫はボストン美が所蔵する英一蝶の‘涅槃図’と歌麿の‘吉原の花’、当分はこのふたつが心のなかを占領しそう。

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2016.12.21

来年のお楽しみ浮世絵展!

Img       すみだ北斎記念美術館

Img_0001      ‘北斎の帰還’展の図録

ひとりの作家に光をあてた回顧展とともに展覧会巡りの大きな楽しみなのがやきものと浮世絵の特別展。今年は浮世絵で最後に北斎の描いたサプライズの肉筆絵巻が待ち受けていた。

新たにオープンしたすみだ北斎記念美で開催中の‘北斎の帰還’展(11/22~1/15)は想像するに相当混んでいそうな気がする。多くの浮世絵ファンの関心の的は目玉の‘隅田川両岸景色図巻’と関東大震災で焼失した絵馬の復元図。初日でもチケットを購入するのに30分も並んだから今はそれ以上を覚悟しなくてはならないだろう。

昨日からはじまった後期展示はNHKで放送した‘須佐之男命厄神退治之図’の復元図をもう一度じっくりみる狙いもあって出かけ気ではいたが、大混雑の予感がするので止めにした。開館人気が落ち着いたころまた足を運ぶつもり。

来年に開かれる展覧会の情報がいろいろ入ってきた。浮世絵展は期待できそうなのが二つある。
★ボストン美蔵春信展    9/6~10/23     千葉市美
★北斎とジャポニスム展   10/21~1/28    西洋美

ボストン美が所蔵する浮世絵の名品展は2014年上の森美であった‘北斎’で一旦終了と思っていたが、まだ続けるらしい。今度は鈴木春信にスポットをあて場所は東京を離れ千葉市美。これは楽しみ。

驚かされるのは西洋美でも北斎をやること。今から28年前の1988年、大御所の高階秀爾氏が西洋美の館長だったとき、‘ジャポニスム展’が行なわれた。これはパリのクランパレでも開催された一級の展覧会。そのとき高階氏と一緒に働いていたのが現女性館長の馬場さんと三菱一号館美の高橋館長。馬場館長のことだからまたいい作品を集めてくるにちがいない。おおいに期待したい。

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2016.12.19

2016年 感動の日本美術 ベスト10!

Img_0002

Img_0003    ‘羯鼓催花・紅葉賀図蜜陀絵屏風’(重文 17世紀 静嘉堂文庫美)

Img  葛飾北斎の‘隅田川両岸景色図巻’(1805年 すみだ北斎記念美)

Img_0001    佐竹曙山の‘松に唐鳥図’(重文 18世紀)

美術品と出会って大きな感動をおぼえる作品は二つの場合がある。ひとつはずっと追っかけていたものと対面したとき。もうひとつは情報のなかったものが現れるとき。

ベスト10のうち後者のものは4点、静嘉堂文庫美で開催された‘漆芸名品展’(10/8~12/11)で10年ぶりに公開された‘羯鼓催花・紅葉賀図蜜陀絵屏風’も情報がまったくなかったもの。漆を使って描かれた絵をみる機会はきわめて少ないから、こうした屏風サイズの大きな蜜陀絵と遭遇したことはエポック的な鑑賞体験となった。

西洋画では陰影や奥行きを表現するのは当たり前のことだけれど、日本画では画面は平板で物の影はつけないのが伝統的な描き方。でも、浮世絵師の葛飾北斎(1760~1849)や歌川国芳(1797~1861)は影をつけたり遠近法を使い奥行きのある画面をつくることに躊躇しなかった。

開館を首を長くして待っていた‘すみだ北斎記念美術館’、11/22にはじまった‘北斎の帰還’(来年の1/15まで)には目を釘付けにする肉筆の絵巻が登場した。100年ぶりに日本に帰ってきた‘隅田川両岸景色図巻’、7mもある画面を夢中になってみた。

目を見張らされるのが大川橋や川をいきかう舟の川面に映る影、これほど西洋画的な陰影表現がでてくる浮世絵をみたことがない。流石、北斎! 西洋画の手法でも貪欲に吸収し絵画表現の可能性をとことん極めようとした北斎だからこそこんなすばらしい風景画が誕生した。北斎に乾杯!

サントリー美の‘小田野直武と秋田蘭画’(11/6~1/9)で期待値の高かったのが佐竹曙山(1748^1785)の‘松に唐鳥図’、赤い鳥と近景の松をどんと大きく描いて画面に奥行きを強く感じさせる構図のインパクトの強さが忘れられない。

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2016.11.23

すみだ北斎美術館 開館!

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Img     ‘隅田川両岸景色図巻’(1805年)

Img_0002     ‘遊亀図’(部分 1800年)

Img_0003     ‘寒山捨得図’(1826~33年)

すみだ北斎美術館が開館したので、初日に出かけてきた。これまでJR両国駅で降りて江戸東博に向かうのがお決まりのコースだったが、今回は地下鉄大江戸線に乗り両国駅で下車するとちょうど江戸東博の裏側にでてきた。ここから新しくオープンした‘すみだ北斎美術館’までは歩いて10分くらい。美術館はあまり大きくない公園の一角に建っていた。

時間は昼の1時半、建物の外に行列ができていたのでこれは出遅れたかなと思ったが、20分ほどでチケットが買えた。館内は勝手がわからないまま3階で降りて開館記念展のなかに入った。‘第2章’とあったので?という気がしたが、そのまま進むとうわさに聞いていた絵巻が現れた。

100年ぶりに発見されたこの‘隅田川両岸景色図巻’については、今回その情報にはノータッチだったし、北斎にこういう絵巻があったことも知らなかった。どういう経緯でこの美術館におさまったのか詳細はわからないが、とにかく奇跡がおこったことはまちがいない。2014年、再発見された歌麿の肉筆画‘深川の雪’を箱根の岡田美でお目にかかったが、そのときと同じようにワクワクしながらみた。

まずびっくりするのはコンデイションの良さ、発見されたあと修復に時間をかけたのだろうか、これまで北斎のこういう風景画で目を楽しませてくれたのは色がばっちりでている‘絵本隅田川両岸一覧’、これに対して‘景色図巻’は肉筆画で描き方はまったく違う。

目が釘づけになるのは川の水面が鏡のように岸のそばの家々や土手、両岸にかかる橋、そして川に浮かぶ舟のそれぞれの影を映しだしていること。これほど影が描かれている浮世絵はみたことがない。まるで西洋画をみているような感覚。

左端は新吉原でお楽しみの場面、大きな鯛を前にしてくつろぐ二人の男、その隣の部屋では女たちがにぎやかにおしゃべりし座はおおきに盛り上がっている。絵巻の長さは約7m、今日はこの前では大勢の人であふれかえっていただろう。本当にいいものをみた。

版画はお馴染みのものが多いので初見の肉筆のほうを長くみていた。収穫は親子亀、子亀を背中に乗せて小岩をよじ登ろうとする親亀の姿についみとれてしまった。北斎の観察力のすごさがこんな絵にもしっかり表れている。

‘寒山捨得図’は2005年、東博で行われた北斎展に出品されていた。このときは墨田区の所蔵と記されていた。それから11年のときが流れ、これからはこの美術館でちょくちょくお目にかかることができる。めでたい話である。

この記念展‘北斎の帰還’は来年の1月15日まで、作品は前期(11/22~12/18)、後期(12/20~1/15)で多くが入れ替わるので後期も足を運ぶかもしれない。

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2016.05.11

日本のラ・トウール、葛飾応為とルーベンス!

Img_0001       葛飾応為の‘夜桜美人図’(19世紀中頃 メナード美)

Img_0003  ルーベンスの‘月明かりの景色’(部分 1637年 コートールド美)

Img          近藤浩一路の‘十三夜’(1936年 東京都現美)

テレビ東京の人気番組‘美の巨人たち’が今、西洋美で回顧展(6/12まで)が行われているカラヴァッジョを取り上げるのではないかと期待していたが、どうも制作される気配がない。2本つくったNHKほどの厚いスタッフをかかえられずで贅沢な予算もないテレビ東京ではカラヴァッジョにまで手がまわらないのだろう。過去に2回いいものをつくっただけに残念!

そのかわりいい絵にスポットをあててくれた。それは先月に放送された葛飾応為の‘夜桜美人図’、ご存知のように応為は北斎の娘、この女流絵師はいうなれば日本のラ・トウールのような存在、目を見張らされるのはその光の描写。

この‘夜桜美人図’は幸運なことに2年前江戸東博で行われた‘大浮世絵展’でお目にかかった。これは浮世絵のオールスターゲームのようなビッグな展覧会だったので、この絵に足がとまった人も多くいるのではなかろうか。絵の見どころはなんといっても灯篭の明かりとその光がうつしだす女性の姿、そして夜空の星。

夜の情景をこれほど強い陰影をきかせて描いた絵はほかにない。こんなすごい絵をあの北斎の娘が描いていたのである。番組の中で詳しく解説していたが、星の描写がじつにリアル。北斎の鋭い観察力はしっかり娘にひき継がれている。

つい見惚れてしまう星の描き方をみてある絵を思い出した。2010年、ロンドンにあるコートールド美でみたルーベンス(1577~1640)の‘月明りの景色’、西洋絵画でも星がこのように繊細に描かれることはほとんどないのでその美しい星の輝きが強く記憶に刻まれている。

もうひとつ、近藤浩一路(1884~1962)の‘十三夜’に描かれた星々も心を打つ。‘美の巨人たち’が応為に光をあててくれたおかげでルーベンス、葛飾応為、近藤浩一路による星のコラボレーションが生まれた。しばらく楽しんでいたい。

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2016.04.24

2度目の‘ファンタスティック 江戸絵画の夢と空想’!

Img_0001     歌川国芳の‘一休和尚と地獄太夫’(1854年)

Img_0003     歌川国貞の‘奇術競 鳴神上人’(1862年 仙台市博)

Img     円山応挙の‘地獄変相図’(18世紀後半 東京都杉並区・眞盛寺)

Img_0002          葛飾北斎の‘富士越龍図’(19世紀前半)

府中市美で開催中の‘ファンタスティック 江戸絵画の夢と空想’(3/12~5/8)は後期に作品が入れ替わったので再度出かけた。今回は美術館に着くまでの道順を変えてみた。京王線の特急に乗り府中で下車し、そこからいつもは東府中から利用している巡回のバスに乗り込んだ。5つ目の停留所が府中美。こちらのルートのほうがだいぶ早く美術館に着ける。

江戸絵画の魅力をいろいろな切り口でみせてくれるこのシリーズは今や府中美の価値を大いにあげている注目の展覧会、今年は‘ファンタスティック’、江戸時代に描かれた絵画をどういうイメージで楽しんでもらうか、学芸員の腕のみせどころであるが、会場をまわっているうちに‘なるほどね、ファンタスティックいう横櫛を通してみてみるとこれまでとは異なる画家のイメージが浮かび上がってくるものだな’、と感心してしまう。

そして大きな満足を感じる一番の理由は作品のセレクション、こんな絵があったの!と何度も驚かされる。歌川国芳(1797~1861)の‘一休和尚と地獄太夫’ははじめてお目にかかる作品。この画題は髑髏の上に足をのせて踊る一休が登場する河鍋暁斎の絵をすぐ思い出すが、国芳は和尚と地獄太夫を対面させている。

Bunkamuraの‘国芳、国貞’に続き、ここでも二人はコラボしている。歌舞伎をみているような気分になるのがカッコいい姿が視線を釘づけにする歌川国貞(1786~1864)の‘奇術競 鳴神上人’、この連作を通期で6点もみれたのは大きな収穫。

図録をみて狙いをつけていたのが円山応挙(1733~1795)と葛飾北斎(1760~1849)。応挙がこんな‘地獄変相図’を描いていたとはまったく想定外だが、絵が達者な人物は求められれば何でも上手に仕上げるんだということである。

昨日放送された‘美の巨人たち’は北斎の娘の葛飾応為に焦点を当てていたが、最後に北斎の‘富士越龍図’がでてきた。長野県の小布施の北斎館でみたもののほかに別ヴァージョンを個人コレクターが所蔵していた。こんな絵をみせてくれる府中市美がますます好きになった。

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2016.04.06

エドガールズ 美女くらべ!

Img     歌川国芳の‘当世商人日斗計 日五つ時’(1823年)

Img_0003     歌川国芳の‘当世商人日斗計 日九時’(1823年)

Img_0002     歌川国貞の‘集女八景 粛湘夜雨’(1829年)

Img_0001     歌川国貞の‘美人八景 晴嵐’(1833年)

絵画の楽しみのひとつが女性画、西洋画でこれを得意としたのがルノワール、日本画の場合、明治以降人々の目を楽しませたのは上村松園、鏑木清方、そして伊東深水。

この3人は当然、江戸時代の浮世絵美人画を強く意識している。この美人画で江戸っ子たちを浮き浮きさせたのはまず最初が菱川師宣の見返り美人画、そして次に登場するのは女の子がそのまま大人になったように描いた鈴木春信、ところが時代は女らしい女を求めるようになる。それに応えたのがとびっきりの美人を肉筆画で輝かせた勝川春章。

では版画で美人画の世界を極めたのは誰かというと女性を長身にして描いた鳥居清長と大首絵の美人画で一世を風靡した喜多川歌麿。女性を描いた作品をみることが無類に好きだから、ここまではすっとでてくる。だが、この後は美人画への興味はがくんと落ちる。

そのため、歌川国芳(1797~1861)と歌川国貞(1786~1864)の描く女性を前のめりになってみることは正直いってない。でも、みんな足がとまらないわけではない。国芳では‘当世商人日斗計’シリーズについニヤニヤしてしまう。

‘日五つ時’に描かれているのは女性の朝方におけるルーチン、房楊枝で歯をみがく場面。こういう素のままの姿に意外と隠された魅力がひそんでいる。‘日九時’は正午、猫を愛した国芳は女が足で猫をさわって遊んでいるところをまったりと描いている。国芳自身がいつも手や足で猫とじゃれあっていたにちがいない。

国貞の女で今回長くみていたのは外で激しい雨に遭遇しずぶぬれになって家に戻って来た女、さしていた傘はぼろぼろに破れ、着物はびしょびしょ、こういう経験は日常よくあることだから、絵のなかにすっと入っていける。
‘美人八景 晴嵐’もなかなかいい。強い風が吹き、手ぬぐいをとばされないよう口で必死にくわえている女の表情がじつにリアル。

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2016.04.05

摺物を楽しむとっておきの見方!

Img_0001      歌川国芳の‘国芳もやう正札付現金男 野晒悟助’(1845年)

Img   歌川国貞の‘五代目瀬川菊之丞 七代目市川團十郎’(1830年)

Img_0003     歌川国芳の‘汐干五番内’(1829年)

Img_0002     歌川国貞の‘扇合三番内’(1822年)

歌川国芳(1797~1861)の人物表現にはギョッとするものがいくつかある。そのひとつがチラシに使われているイケメン男、これは任侠シリーズ(10人)の一枚で最もカッコいいもの。浮世絵の展覧会でみかけることが多くなった女性、こういう男の前では彼女たちの足は思わずとまるだろう。

だが顔ばかりうっとりながめていると、この侠客の男ぶりを浮き上がらせる着物の髑髏の柄をそのまますっと見てしまうことになる。髑髏をよーくみると、そう猫が何匹も集まって形をつくっている。アンチンボルドの奇妙な画法に触発された国芳は自分流のおもしろい描き方を生み出した。

例えば、男たちを何人も集めてつくった人間の顔、またかつおやたこ、うなぎといった文字を猫などを巧みに配置して描いたりもしている。この猫の別ヴァージョンが着物の模様になっている髑髏。

とくに時間をかけてみたものがもうひとつある。それはお金持ちの町人たちからの特別の注文によってつくられる摺物、この豪華な摺物を楽しむとっておきの見方があるが、まわりをみてそれをしている人はいない。歌川国貞(1786~1864)の刀を抜こうとしている瀬川菊之丞と市川團十郎の場面を立ったままの視線でみても照明の当たり具合で肝心の見せ所がとらえられない。

ではどうすればいいか、しゃがんで下から画面を仰ぎみると刀身が施された雲母摺りにより銀色に輝いているのがはっきりとわかる。この金属の質感描写が見事!国芳の‘汐干五番内’では波の動きが雲母できれいにみえるし、国貞の‘扇合三番内’でも金や雲母で装飾された着物がまぶしいくらい豪華にみえる。

摺物の前ではこの方法でみると楽しみが倍増することは請け合い。

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2016.04.04

サプライズ! Bunkamuraの‘国芳 国貞展’

Img     歌川国芳の‘水瓶砕名誉顕図’(1856年)

Img_0002     歌川国芳の‘江戸ノ花 木葉渡 早竹虎吉’(1857年)

Img_0003     歌川国貞の‘東都両国橋 川開繁栄図’(1858年)

Img_0001     歌川国貞の‘春夕美女の湯かゑり’(1833年)

渋谷のBunkamuraでは現在‘ボストン美蔵 俺たちの国芳 わたしたちの国貞’(3/19~6/5)が行われている。Bunkamuraで浮世絵の展覧会!?というのが正直なところ。この美術館に期待するのは質のいい西洋絵画でヒット確率が非常に高いブランド美術館というのが一般的なイメージ。

その美術館がどういう風のふきまわしかボストン美の浮世絵コレクションをずらっと並べてきた。しかも、色がよく残ったクオリティの高い歌川国芳(1797~1861)と歌川国貞(1786~1864)が次々と登場する。流石、ボストン美と関心するが、同時にBunkamuraでこのようなわくわくする浮世絵展をみたということが強く記憶に残る。

今回の主役は国芳と国貞、国貞のほうが一回り上の世代で3代目の歌川豊国を継いだから浮世絵師としては最も高いところにいる。広重と同じ年に生まれた国芳は広重が亡くなった3年後に64歳で人生を閉じる。年長の国貞は長生きし、死んだのは第一次長州征伐があった1864年、享年78。時代が江戸から明治へと移るのはその4年後の1868年。

海外の美術館から浮世絵が里帰りするとなんとしても出かけようと思うのはまだお目にかかったことがなく保存状態の抜群にいい作品に数多く遭遇するから。今回、またガツンとやられた。こんないい国芳、国貞があったのか!という感じ。プラスαがこれほど登場すると浮世絵の虜になる。

国芳で長くみていたのは合戦絵の‘水瓶砕名誉顕図’、目が点になったのは中央の豪傑の強さ、画面の上のほうに敵の武将たちが宙に放り投げられている。よく見るとそこには刎ねられた首や胴体が、なんだか岩佐又兵衛の絵巻に描かれた血が飛び散る戦いの場面をみているよう。

江戸の軽業師、早竹虎吉の芸を描いたものをみたのははじめて。体を地面にむけてのばしひとりの子どもの足首を持っているのはまあ理解できる。だが、もう一人の子の着物の衿のところをもつことができるのだろうか?このパフォーマンスは大喝采を受けたにちがいない。

2年前大田記念美で国貞の回顧展をみたが、そのときなかった作品がいくつもでてきた。画面の隅から隅までみたのが花火の絵。画面構成がじつに上手い、手前に男女や子どもを横一列に大きく描き、その向こうにある屋台の賑わいを中景として人物の大きさを3分の1くらいに縮小、さらの橋の上をギュウギュウづめになって花火をみている人たちを点々でびっちりうめている。やはり国貞の腕前は半端じゃない。

そして国貞のシュールな絵にまた出会った。それは提灯から漏れた光が大きな三角形をつくり通りを行き交う人々をシルエットで映し出す‘春夕美女の湯かゑり’、これは参った!

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