2025.07.31

イギリス人が好きなアーサー王物語!

Img_20250731233501 ビアズリーの‘湖水の令人、アーサー王に剣について語る’(1892年 V&A)

Img_0003_20250731233501  バーン=ジョーンズの‘アヴァロンのアーサー王の眠り’(1881~98年 ポンセ美)

Img_0001_20250731233501  バーン=ジョーンズの‘欺かれるマーリン’(1873~74年 レイデイ・リーヴァー美)

Img_0002_20250731233501  ワッツの‘サー・ガラハット’(1862年 フォッグ美)

Img_0004_20250731233501  ウオーターハウスの‘シャロットの女’(1888年 テート美)

わが家の映画DVDコレクションでもっとも楽しく観ているのはサスペンス・刑事&探偵ものと喜劇映画の‘社長、駅前シリーズ’だが、歴史ものや戦争ものもいろいろ揃えている。根っからの歴史好きだから、映画を観ることで海外の国の成り立ちや変遷がおおよそつかめるのはその国に一歩も二歩も近づけたような気になる。強い関心をもっているのがイギリス史で‘アーサー王物語’は‘円卓の騎士’(1953年)‘エクスカリバー’(1981年)など4本観た。

以前アメリカのラスベガスを旅行したとき、泊ったホテルの名前が‘エクスカリバー’だった。当時はこれがビアズリー(1872~1898)の‘湖水の令人、アーサー王に剣(エクスカリバー)について語る’に描かれている有名な剣であることは知る由もなかった。でも、今は石に刺さった剣をいとも簡単にアーサーが引き抜き、王になったことはしっかりインプットされた。

ラファエロ前派のバーン=ジョーンズ(1833~1898)の最後の大型作品である‘アヴァロンのアーサー王の眠り’(縦2.8m、横6.5m)は現在、プエルトリコのポンセ美にある。こんなすごい絵が海外に流出してしまった。日本の絵でいうと俵屋宗達の‘松島図’がアメリカワシントンのフリーア美にあるようなもの。一度でいいからみてみたい。老魔法使いマーリンを描いた‘欺かれるマーリン’にも惹き込まれる。

ワッツ(1817~1904)はアーサー王の円卓の騎士のひとりランスロットの息子、がラハットを描いている。ガラハットは武勇に優れ信仰心の篤い騎士に成長し、父が果たせなかった聖杯の顕現に立ち会うことができた。ランスロットの愛を得られないことを知った悲しみのあまりに死を選んだ乙女を描いたのがウオーターハウス(1849~1917)の代表作‘シャロットの女’。テート美では息を呑んでみていた。

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2025.07.30

画家を刺激したサロメ!

Img_0004_20250730230301   ビアズリーの‘踊り手の褒美’(1893年 V&A)

Img_20250730230301   モローの‘出現’(1876年頃 モロー美)

Img_0001_20250730230301  シャヴァンヌの‘洗礼者ヨハネの斬首’(1865~69年 ナショナルギャラリー)

Img_0002_20250730230301   シュトゥックの‘サロメ’(1906年 レンバッハ・ハウス)

Img_0003_20250730230301   ミュシャの‘サロメ’(1897年 クラヴリーヌ美)

数多くある西洋絵画の傑作のなかで心をザワザワさせ息を呑んでみたものは
忘れられない。その代表がモロー(1826~1898)の‘出現’とクリムト
(1862~1918)の‘接吻’。ビアズリー(1872~1898)の‘踊
り手の褒美’をみるまでは、‘サロメ’はモローの‘出現’によって強烈なイメージ
がつくられていた。

ビアズリーの絵でおもしろいのは斬首された洗礼者ヨハネの顔がなぜかサロメの顔とあまり変わらないこと。丸いテーブルの上に置かれたヨハネの首は長い髪がぬめっとのびて生き血になりしたたり落ちる感じ、まるで狂気じみたオカルト映画のワンシーンをみているよう。これに対し、モローの‘出現’は宙に浮くヨハネの首がサロメを睨む姿に圧倒的な存在感があり、サロメはそのパワーに負けまいと必死に立っている感じ。パリのモロー美でこの絵と対面したときは瞬時に体がフリーズした。

ロンドンのナショナルギャラリーにあるシャヴァンヌ(1824~1898)の‘洗礼者ヨハネの斬首’は時代劇の切腹のシーンを連想させる。これを後ろでみているサロメはどこか物憂げ。‘私の愛に素直にこたえてくれないから、こんなことになるのよ。生きているあなたがよかったのに’という気持ちの表れだろうか。

ファムファタル(妖婦)全開のサロメを描いたシュトゥック(1863~1928)の作品は世紀末のデカタンスな妖気が漂っている。サロメはとびっきりの美女で男を虜にするファムファタルで、嬉しそうな顔をみるとヨハネの首はおもちゃとして遊ばれそう。ポスター画家として大活躍していたミュシャ(1860~1939)もサロメのイラストを描いている。

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2025.07.29

ビアズリーと北斎!

Img_20250729231501 ビアズリーの‘おまえの口にくちづけしたよ、ヨナカーン’(1893年 V&A)

Img_0001_20250729231501  ‘アーサー王は、唸る怪獣に出会う’(1893年 V&A)

Img_0002_20250729231501   葛飾北斎の‘富嶽百景 登龍の不二’(1834年)

Img_0003_20250729231601   ‘武者絵本’(19世紀 メトロポリタン美)

Img_0004_20250729231601   ‘和漢 絵本魁’(1936年)

春に三菱一号館美で行われた‘異端の奇才 ビアズリー展’は今、久留米市美に
巡回している(8/31まで)。NHKの日曜日美術館は現地に出張し、専門家
の解説付きで鋭く切り込んでいた。25歳で亡くなったビアズリー(1872
~1898)は7歳のときに結核の症状がでたというから悲しい運命である。
洋画家の関根正二が20歳、村山槐多が22歳で天に召されたのと同じように
イギリスが生んだ天才もその才能を長く示すことができなかった。

番組によりビアズリーの出世作であるオスカー・ワイルドの戯曲‘サロメ’の挿絵がどのようないきさつで誕生したかがよくわかった。そして、‘おまえの口にくちづけしたよ、ヨナカーン’を何度もみているうちにある日本の画家の絵が不思議なことにくっついてきた。その画家とはあの葛飾北斎(1760~1849)!1834年に描かれた‘富嶽百景’の一枚に‘登龍の不二’というのがある。視線が釘付けになるのが富士の山頂に向かう龍のまわりに描かれている図案化された黒雲の表現。このフォルム、ビアズリーの絵でサロメの背後にみられる鯉のうろこのようなものと似てないか。勝手な妄想をすると、ビアズリーは浮世絵に興味があり、インプットされていた北斎の作品を意識したのかもしれない。

また、同じ年に描かれた‘アーサー王は、唸る怪獣に出会う’にも同じような鱗模様をみせる怪獣がでてくる。図録では王を睨み返す怪獣の姿はビアズリーが故郷のブライトンでみた中国趣味のシャンデリアのもとづく、と解説されている。そうなると、妄想は消える。でも、龍の姿を全部いただいたとは限らない。果たして?

北斎にはまだ妄想を続けろ、と背中を押してくれる作品がほかにもある。メトロポリタン美が所蔵する‘武者絵本’の一枚には放射する光線により全体の形がカットされた海の渦巻が描かれているし、日本と中国の武者を描いた‘和漢 絵本魁’ではアーサー王が出会った怪獣を連想させる生き物が暴れている。

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2022.05.03

ビアズリーの‘サロメ’挿絵!

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 ‘おまえに口付けしたよ、ヨナカ―ン’(1894年)

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    ‘舞姫の報酬’

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   ‘孔雀のスカート’

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   ‘ヘロデの目’

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 ‘アーサー王、探し求めていた獣に出会う’(1892年)

ラファエロ前派のロセッティ(1828~1882)が描いた‘プロセルピナ’
をテートブリテン(当時はテートギャラリーと呼ばれていた)ではじめてみ
たのは40年前の1982年。この女性の姿態から発せられる圧の強さにた
じたじになった。官能的というより強くて神秘的な美しさが際立ち一度見た
ら忘れられない感じ。200%イギリス絵画、恐るべし!だった。

イギリスにはもうひとり、インパクトが半端でない人物画を描く画家がいる。
オスカー・ワイルド(1854~1900)の戯曲‘サロメ’に挿絵をそえた
鬼才ビアズリー(1872~1898)。19世紀末のロンドンでまたたく
間に美術界のスターダムにのし上がり、26歳の若さで亡くなった。死因は
わずか7歳でかかった当時不治の病と言われた結核。

サロメの絵というとモローの‘出現’とビアズリーの挿絵が一緒に思い浮かんで
くる。ビアズリーの挿絵の魅力は白と黒の強いコントラスト、そして流麗な
線の美しさ。‘おまえに口付けしたよ、ヨナカーン’でサロメは宙を浮くよう
に恍惚の表情で欲していたヨナカーン(洗礼者ヨハネ)の首を見つめている。
男を破滅に追いやったファムファタル、サロメの激しい愛に視線が釘づけに
なる。

‘孔雀のスカート’に登場する孔雀のデザインはその頃ロンドンで評判になって
いたホイッスラーの壁画‘孔雀の間’(ワシントン フリーア美)を使っている。
ビアズリーもジャポニスムに強く惹かれていたので、よく知られている孔雀
のイメージを繰り返した。これはメディアの手法そのもの。大衆に訴えるイメ
ージづくりにおいてもビアズリーは先駆者だった。‘アーサー王、探し求めて
いた獣に出会う’は‘サロメ’の2年前に描いたトーマス・マロリーの‘アーサー王
の死’の挿絵。装飾的な細部描写や平面的な画面処理は浮世絵からインスピレ
ーションを得ている。

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2022.04.25

サージェント、ゲインズバラの肖像画!

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 サージェントの‘マクベス夫人に扮するエレン・テリー’(1889年 テート)

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サージェントの‘レディ―・アグニュー’(1893年 スコットランド国立美)

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 ヘンリーの‘東と西’(1904年以降 スコットランド国立美)

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 ゲインズバラの‘ゲインズバラ夫人マーガレットの肖像’(1778年 コートールド美)

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 ゲインズバラの‘デボンシャー公爵夫人ジョルジアーナ’(1787年頃)

シャーロック・ホームズの探偵物語にグイグイ引きこまれている。世界中にたく
さんいるといわれる‘ホームズ中毒’にかかってしまったようだ。BSプレミアム
で放送されるときイギリスの地名の場所がすぐイメージできないので、若い頃
ロンドンに3ヶ月滞在したとき手に入れたイギリスの地図(MICHELIN)
を引っ張り出してきてじっと眺めている。ロンドン市内だと大英博物館や美術
館をいろいろまわったから東西南北の感覚を忘れずにいるが、ほかの都市だと
見当がつかないことが多い。地図を頼りに点と点を結び線をつくっていくとだん
だん地域の位置関係が頭に入ってくるようになるだろう。

コナン・ドイル(1859~1930)に最接近してみてひとつわかったこと
がある。それはこの推理小説作家がサージェント(1856~1925)とほぼ
同じ時代を生きていたこと。好きな肖像画家サージェントとコナン・ドイルが
一緒にくくれるとは思ってもみなかった。とすると、ドイルはサージェントが
有名な女優を描いた‘マクベス夫人に扮するエレン・テリー’やロイヤルアカデミ
ー展で大喝采を博した‘レディ―・アグニュー’をみたことがあるかもしれない。
何度もみている肖像画をまたあらたな気持ちでみている。これはおもしろい。

スコットランド出身のジョージ・ヘンリー(1858~1943)も二人と同世
代。Myお気に入り肖像画に登録されている画家がこれで2人、ドイルとつなが
った。ジャポニスムに影響をうけたヘンリーの‘東と西’を日本の美術館で開催さ
れたスコットランド美名品展で遭遇したとき、思わず足がとまった。知らない
画家だったが、ヘンリーにすぐチェックマークをつけた。

イギリスの女性を描いた肖像画でサージェントの次に心のなかに大きく広がって
いったのがゲインズバラ(1727~1887)。2010年のイギリス旅行で
足を運んだコートールド美でみた‘ゲインズバラ夫人マーガレットの肖像’が決定
的な鑑賞体験となった。女性画はマネ・ルノワールだけじゃないなとつくづく思
った。この絵とともにぐっときているのが‘デボンシャー公爵夫人ジョㇽジア―
ナ’。まだ、縁がないが対面を夢見ている。

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2022.04.24

ミレイの肖像画!

Img_0002_20220424222701   ‘エフィー・ミレイ’(1873~74年)

Img_0001_20220424222701   ‘名残りのバラ’(1888年)

Img_20220424222701   ‘エヴェリーン・テナント’(1874年)

Img_0003_20220424222701   ‘ハントリー侯爵夫人’(1870年)

Img_0004_20220424222701   ‘サー・ヘンリー・トンプソン’(1881年)

絵をみることが好きになり、この趣味を大きく膨らませようと美術関連の本
を購入するようになった。そのなかで大変重宝したのが‘週刊グレート・ア―
ティスト’。価格は500円と安いのに情報は盛りだくさん。画家の物語や
主要絵画の紹介のほかに‘生涯の1年 たとえば1745年’とタイトルをつ
けて名画が描かれたとき、国や世界の情勢がどうなっていたか歴史的な背景
が記述されている。画家の名前や絵の特徴を知ることにエネルギーを注いで
いたので当初はこの情報にはあまり熱心ではなかった。

でも、絵画とのつきあいが長くなると、こういう歴史的な文脈のなかで画家
の創作活動をみてみるというのも作品を深く感じることには必要なことだと
思うようになった。そして、最近はあらたな刺激が加わった。作家たちの作
品。昨日とりあげたヘミングウェイの文章にもセザンヌの表現方法が関係し
ていたことを知った。毎週楽しみにしているTV映画、BSプレミアムの
‘シャーロック・ホームズの冒険’にはホームズが活躍する舞台であるイギリス
のヴィクトリア朝(1873~1901)の様子や上流階級の人々の館や華
やかな生活が頻繁にでてくる。

‘犯人は二人’で夫人の肖像画を披露するパーティが挿入されているのをみると
由緒ある貴族にとって肖像画を画家に描いてもらうのはとても大事なこと
だということを再認識させられる。夫人や令嬢の場合、美しく描かれている
と気分は最高にいいだろう。このシーンがでてきたのでホイッスラー
(1834~1903)の肖像画を紹介したくなった。そうなるとミレイ
(1829~1896)も外せない。

ミレイについては2回好きな作品を取り上げたが、ここには子ども以外の肖像
画は入ってなかった。でも、ミレイは本当に上手な画家だから、肖像画も一級
品揃い。妻の‘エフィー・ミレイ’と娘を描いた‘名残りのバラ’がとてもいい。
美形の‘エヴェリーン・テナント’にもぐっと惹き込まれる。そして、見事な
‘ハントリー侯爵夫人’。縦2.2m、横1.3mの大作だから、屋敷に飾ると
招待客はみんな唸るにちがいない。お医者さんの‘サー・ヘンリー・トンプソン’
は威厳のある顔がよくとらえられている。

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2018.06.17

心に響くターナーの海洋画!

Img  ターナーの‘風下側の海辺にいる漁師たち、時化模様’(1802年)

Img_0003  ‘ソマーヒル、トンブリッジ’(1811年 スコットランド国立美)

Img_0001     ‘キルカーン城、クラチャン・ベン山ー真昼’(1801年)

Img_0002     ‘風景 タンバリンを持つ女’(1845年 栃木県美))

現在、新宿の損保ジャパン日本興和美では‘ターナー 風景の詩’(4/24~7/1)が行われている。4月池大雅展をみるため京都へいったときは別の美術館でこの展覧会をやっていたが、いずれ損保ジャパンに巡回することがわかっていたのでパスして帰って来た。

出動は遅くなったが、5月にTV東京の‘美の巨人たち’がターナー(1775~1851)の‘難破船’とりあげてくれ、番組の最後でこの回顧展を案内していたので、その情報分だけ関心の度合いは増大した。といっても昨年の京都行きで手に入れたチラシで気になっていたのは‘風下側の海辺にいる漁師たち、時化模様’(サウサンプトン・シテイ・アートギャラリー)1点のみというのが正直なところ。

番組で紹介された‘難破船’が描かれたのが1805年だから、この‘漁師たち’はその3年前の作品。8年前テートブリテンで‘難破船’に出会ったとき、海面の波の迫力ある描写に目が釘づけになった。海洋画で心を奪われている画家はターナー、アメリカのホーマー(1836~1910)の2人、そして浜辺に打ち寄せる波をリアルに描いたクールベ(1819~1877)にも魅せられている。

ホーマーは海が大きく揺れ動く光景をもっと近くからとらえているのに対し、ターナーは焦点をあてている船を軸にしてまわりの大きな船も入れ俯瞰的に描いているので船が波に翻弄される場面に強いハラハラドキドキ感がある。27~30歳にかけてターナーが手がけた海洋画の傑作を2点もみれたのは幸運だった。

この絵に満足したのでほかの絵はさらっとみた。そのなかで足がとまったのがチラシに載っている‘ソマーヒル、トンブリッジ’と虹のかかった‘lキルカーン城、クラチャン・ベン山ー真昼’。そして、日本の美術館が所蔵しているものではトップクラスの‘風景 タンバリンを持つ女’もながくみていた。この絵は一度と栃木県美へ遠征したとき平常展に飾ってあったし、5年前の東京都美のターナー展にも出品された。

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2018.01.08

夢の‘コンスタブル展’!

Img     ‘跳ねる馬’(1825年 ロンドン ロイヤル・アカデミー)

Img_0001     ‘水門を通過する舟’(1826年 ロイヤル・アカデミー)

Img_0002     ‘麦畑’(1826年 ナショナルギャラリー)

年のはじめはこんな画家の回顧展があったらいいなと、夢想している。まあ、それはだいたいが夢のままだが、たまに実現することがある。3年前、2度目のカラヴァッジョ展がみたい、とつぶやいたらなんと2016年に開催された。そんなこともあるので、‘夢の展覧会’という帆はなるべく高く掲げておきたい。

ターナー(1775~1851)とコンスタブル(1776~1837)はイギリスではどっこいどっこいの人気があり、コンスタブルの方が好きというファンも結構いる。ところが、日本で回顧展が行われるのはターナーばかり、2013年に東京都美で開かれ、今年は損保ジャパン美に巡回してくる(4/24~7/1)。

ターナーは好きなので何度も回顧展が開かれるのは嬉しいに決まっているが、心の中ではコンスタブルを一度はやってよ、という思いが強くある。アメリカの美術館をまわってみて感心するのはターナーだけでなくコンスタブルのいい絵が飾られていること。

回顧展を行うとなるとイギリスの美術館が所蔵するものが軸となるが、こうしたものを揃えアメリカにある作品などを集めてくれば立派なコンスタブル展になる。これにチャレンジしてくれる美術館があると信じているのだが、はたして。

トライしてほしいのはロンドンのロイヤル・アカデミーにある‘跳ねる馬’、この絵をみたくて2010年に再訪したのに運悪く展示されてなかった。ガックリ!ものごとは思い通りにはいかない。同じくロイヤルアカデミー蔵の‘水門を通過する舟’は2003年、六本木の森美術館がオープンしたとき出品された。大変魅了されコンスタブルが忘れられない画家になった。

コンスタブルはテート・ブリテンやナショナルギャラリー、ヴィクトリア&アルバート美へ出かけるとおおいに楽しめる。ロイヤルアカデミーへ行く前に入館したナショナルギャラリーで遭遇したのが‘麦畑’、コンスタブルはこの絵ともう一点しかなかったが、どちらも心に残る名画だった。

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2014.03.14

心に響くホイッスラーの名画!

Img_0005 ‘シシリー・アレキサンダー嬢’(1872~74年 テート・ブリテン)

Img_0006 ‘白衣の少女’(1862年 ワシントン ナショナルギャラリー)

Img      ‘バタシーの古橋’(1872~75年 テート・ブリテン)

Img_0002      歌川広重の‘名所江戸百景 京橋竹がし’(1857年)

今から16年前の1998年に東京都美で‘テートギャラリー展’が開かれた。現在、森アーツセンターで行なわれている‘ラファエロ前派展’はテートギャラリーが所蔵するものによって構成されているが、東京都美のときはロセッティやミレイをはじめブレイク、ターナー、コンスタブルなどビッグネームがずらっと揃った豪華なラインアップ、テートにあるイギリス絵画の名作を全部みせますという感じだった。

そのなかにホイッスラー(1834~1903)も2点あった。その一枚が‘シシリー・アレキサンダー嬢 灰と緑のハーモニー’、この絵によってホイッスラーとの付き合いがはじまった。ホイッスラーは肖像画家という顔とジャポニスムに影響を受けた風景画家という二つの顔をもっている。

東京都美でホイッスラーを体験したあと、肖像画と霞のかかった川や海の情景を描いたものを半々ぐらいの割合でいくつかの美術館でみた。パリのオルセー美、NYのメトロポリタン美、フリックコレクション、ワシントンのナショナルギャラリーとフリーア美、コーコラン美、そしてフィラデルフィア美。

肖像画のお気に入りベスト3は‘シシリー・アレキサンダー嬢’、‘白衣の少女’、‘磁器の国の姫君’、もしこの3点のなかでお好きな絵をさしあげるといわれたら、すぐに‘シシリー・アレキサンダー嬢’を指さす。この愛らしいシシリーちゃんは8歳、お父さんは銀行家でコレクター。

シシリーはホイッスラーに70回以上もポーズをとらされたから、もうふくれっ面、‘おじさん、まだぁー?、もう遊びたいよー’と言っているにちがいない。我慢も限界にきているので顔の前に蝶々がひらひら飛んでいても心は和まない。本当にご苦労さん、とってもきれいに描かれているよ、といつも声をかけている。

風景画は‘ノクターン 青と金 バタシーの古橋’に魅せられている。この絵は歌川広重(1797~1858)の晩年の傑作、‘名所江戸百景 京橋竹がし’に構図を学んでいる。インパクトがあるのがなんといっても画面中央の橋桁、広重の‘名所江戸百景’の魅力のひとつになっているのがモチーフを手前でクローズアップでとらえる近像型と呼ばれる構図。ホイッスラーはこれを近景ではなく中景でおこない橋の存在感をだしている。

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2014.03.11

フリーアの日本美術趣味に影響を与えたホイッスラー!

Img     ホイッスラーの‘磁器の国の姫君’(1864年 フリーア美)

Img_0001     ホイッスラーの‘バルコニー’(1865年 フリーア美)

Img_0002 鳥居清長の‘美南見十二候 六月 品川の夏’(1784年 シカゴ美)

Img_0006 鳥居清長の‘美南見十二候 四月 品川沖の汐干’(1784年 シカゴ美)

ワシントンのフリーア美には日本人ならとても親近感を覚える部屋が二つある。そこに飾られているのはフリーア(1854~1919)が日本美術にのめり込むのに大きな影響を与えたホイッスラー(1834~1903)の作品。2008年はじめてこの美術館を訪問したとき、ホイッスラーに開眼することになったのはここのコレクションのお蔭。

フリーアはロンドンで会った20歳年上のホイッスラーから浮世絵などの話を聞き、次第に日本美術に関心を寄せるようになった。当時ホイッスラーはジャポニスムの影響を受けた作品を沢山制作していたから、日本美術の指南役としては最適の人物。

ホイッスラーも浮世絵を所蔵しており、その9点が1万点あるといわれる大英博の浮世絵コレクションにおさまっている。1864年に描かれた‘バルコニー’はホイッスラーがもっていた鳥居清長の‘美南見十二候’を下敷きにしていることは明らか。

フリーアはホイッスラーとつきあいがあったからこうした女性たちの群像表現を目にし、浮世絵の美人画への興味を深めていったのかもしれない。鈴木春信の作品にも清長の絵のような遊里の座敷から女性が海の風景をながめるものがあり、‘バルコニー’は春信からも刺激をうけている。すると、フリーアの目は春信、歌麿へと向かう。そういう視覚体験の積み重ねがフリーアの眼力を鍛え、歌麿の‘品川の月’との出会いにつながった。

昨年‘ピーコックルーム’で‘磁器の国の姫君’と再会した。海外ニュースに時々パリとかロンドンで行われる‘ジャパンデイ’のイベントが報じられ、必ずそこにはこんな格好で着物を着た外人女性が登場する。ブロンドや青い目の女性は着物の着方が少々変でも一向にかまわない。むしろこういう着方のほうが愛嬌がある。

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