2018.06.17

心に響くターナーの海洋画!

Img  ターナーの‘風下側の海辺にいる漁師たち、時化模様’(1802年)

Img_0003  ‘ソマーヒル、トンブリッジ’(1811年 スコットランド国立美)

Img_0001     ‘キルカーン城、クラチャン・ベン山ー真昼’(1801年)

Img_0002     ‘風景 タンバリンを持つ女’(1845年 栃木県美))

現在、新宿の損保ジャパン日本興和美では‘ターナー 風景の詩’(4/24~7/1)が行われている。4月池大雅展をみるため京都へいったときは別の美術館でこの展覧会をやっていたが、いずれ損保ジャパンに巡回することがわかっていたのでパスして帰って来た。

出動は遅くなったが、5月にTV東京の‘美の巨人たち’がターナー(1775~1851)の‘難破船’とりあげてくれ、番組の最後でこの回顧展を案内していたので、その情報分だけ関心の度合いは増大した。といっても昨年の京都行きで手に入れたチラシで気になっていたのは‘風下側の海辺にいる漁師たち、時化模様’(サウサンプトン・シテイ・アートギャラリー)1点のみというのが正直なところ。

番組で紹介された‘難破船’が描かれたのが1805年だから、この‘漁師たち’はその3年前の作品。8年前テートブリテンで‘難破船’に出会ったとき、海面の波の迫力ある描写に目が釘づけになった。海洋画で心を奪われている画家はターナー、アメリカのホーマー(1836~1910)の2人、そして浜辺に打ち寄せる波をリアルに描いたクールベ(1819~1877)にも魅せられている。

ホーマーは海が大きく揺れ動く光景をもっと近くからとらえているのに対し、ターナーは焦点をあてている船を軸にしてまわりの大きな船も入れ俯瞰的に描いているので船が波に翻弄される場面に強いハラハラドキドキ感がある。27~30歳にかけてターナーが手がけた海洋画の傑作を2点もみれたのは幸運だった。

この絵に満足したのでほかの絵はさらっとみた。そのなかで足がとまったのがチラシに載っている‘ソマーヒル、トンブリッジ’と虹のかかった‘lキルカーン城、クラチャン・ベン山ー真昼’。そして、日本の美術館が所蔵しているものではトップクラスの‘風景 タンバリンを持つ女’もながくみていた。この絵は一度と栃木県美へ遠征したとき平常展に飾ってあったし、5年前の東京都美のターナー展にも出品された。

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2018.01.08

夢の‘コンスタブル展’!

Img     ‘跳ねる馬’(1825年 ロンドン ロイヤル・アカデミー)

Img_0001     ‘水門を通過する舟’(1826年 ロイヤル・アカデミー)

Img_0002     ‘麦畑’(1826年 ナショナルギャラリー)

年のはじめはこんな画家の回顧展があったらいいなと、夢想している。まあ、それはだいたいが夢のままだが、たまに実現することがある。3年前、2度目のカラヴァッジョ展がみたい、とつぶやいたらなんと2016年に開催された。そんなこともあるので、‘夢の展覧会’という帆はなるべく高く掲げておきたい。

ターナー(1775~1851)とコンスタブル(1776~1837)はイギリスではどっこいどっこいの人気があり、コンスタブルの方が好きというファンも結構いる。ところが、日本で回顧展が行われるのはターナーばかり、2013年に東京都美で開かれ、今年は損保ジャパン美に巡回してくる(4/24~7/1)。

ターナーは好きなので何度も回顧展が開かれるのは嬉しいに決まっているが、心の中ではコンスタブルを一度はやってよ、という思いが強くある。アメリカの美術館をまわってみて感心するのはターナーだけでなくコンスタブルのいい絵が飾られていること。

回顧展を行うとなるとイギリスの美術館が所蔵するものが軸となるが、こうしたものを揃えアメリカにある作品などを集めてくれば立派なコンスタブル展になる。これにチャレンジしてくれる美術館があると信じているのだが、はたして。

トライしてほしいのはロンドンのロイヤル・アカデミーにある‘跳ねる馬’、この絵をみたくて2010年に再訪したのに運悪く展示されてなかった。ガックリ!ものごとは思い通りにはいかない。同じくロイヤルアカデミー蔵の‘水門を通過する舟’は2003年、六本木の森美術館がオープンしたとき出品された。大変魅了されコンスタブルが忘れられない画家になった。

コンスタブルはテート・ブリテンやナショナルギャラリー、ヴィクトリア&アルバート美へ出かけるとおおいに楽しめる。ロイヤルアカデミーへ行く前に入館したナショナルギャラリーで遭遇したのが‘麦畑’、コンスタブルはこの絵ともう一点しかなかったが、どちらも心に残る名画だった。

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2014.03.14

心に響くホイッスラーの名画!

Img_0005 ‘シシリー・アレキサンダー嬢’(1872~74年 テート・ブリテン)

Img_0006 ‘白衣の少女’(1862年 ワシントン ナショナルギャラリー)

Img      ‘バタシーの古橋’(1872~75年 テート・ブリテン)

Img_0002      歌川広重の‘名所江戸百景 京橋竹がし’(1857年)

今から16年前の1998年に東京都美で‘テートギャラリー展’が開かれた。現在、森アーツセンターで行なわれている‘ラファエロ前派展’はテートギャラリーが所蔵するものによって構成されているが、東京都美のときはロセッティやミレイをはじめブレイク、ターナー、コンスタブルなどビッグネームがずらっと揃った豪華なラインアップ、テートにあるイギリス絵画の名作を全部みせますという感じだった。

そのなかにホイッスラー(1834~1903)も2点あった。その一枚が‘シシリー・アレキサンダー嬢 灰と緑のハーモニー’、この絵によってホイッスラーとの付き合いがはじまった。ホイッスラーは肖像画家という顔とジャポニスムに影響を受けた風景画家という二つの顔をもっている。

東京都美でホイッスラーを体験したあと、肖像画と霞のかかった川や海の情景を描いたものを半々ぐらいの割合でいくつかの美術館でみた。パリのオルセー美、NYのメトロポリタン美、フリックコレクション、ワシントンのナショナルギャラリーとフリーア美、コーコラン美、そしてフィラデルフィア美。

肖像画のお気に入りベスト3は‘シシリー・アレキサンダー嬢’、‘白衣の少女’、‘磁器の国の姫君’、もしこの3点のなかでお好きな絵をさしあげるといわれたら、すぐに‘シシリー・アレキサンダー嬢’を指さす。この愛らしいシシリーちゃんは8歳、お父さんは銀行家でコレクター。

シシリーはホイッスラーに70回以上もポーズをとらされたから、もうふくれっ面、‘おじさん、まだぁー?、もう遊びたいよー’と言っているにちがいない。我慢も限界にきているので顔の前に蝶々がひらひら飛んでいても心は和まない。本当にご苦労さん、とってもきれいに描かれているよ、といつも声をかけている。

風景画は‘ノクターン 青と金 バタシーの古橋’に魅せられている。この絵は歌川広重(1797~1858)の晩年の傑作、‘名所江戸百景 京橋竹がし’に構図を学んでいる。インパクトがあるのがなんといっても画面中央の橋桁、広重の‘名所江戸百景’の魅力のひとつになっているのがモチーフを手前でクローズアップでとらえる近像型と呼ばれる構図。ホイッスラーはこれを近景ではなく中景でおこない橋の存在感をだしている。

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2014.03.11

フリーアの日本美術趣味に影響を与えたホイッスラー!

Img     ホイッスラーの‘磁器の国の姫君’(1864年 フリーア美)

Img_0001     ホイッスラーの‘バルコニー’(1865年 フリーア美)

Img_0002 鳥居清長の‘美南見十二候 六月 品川の夏’(1784年 シカゴ美)

Img_0006 鳥居清長の‘美南見十二候 四月 品川沖の汐干’(1784年 シカゴ美)

ワシントンのフリーア美には日本人ならとても親近感を覚える部屋が二つある。そこに飾られているのはフリーア(1854~1919)が日本美術にのめり込むのに大きな影響を与えたホイッスラー(1834~1903)の作品。2008年はじめてこの美術館を訪問したとき、ホイッスラーに開眼することになったのはここのコレクションのお蔭。

フリーアはロンドンで会った20歳年上のホイッスラーから浮世絵などの話を聞き、次第に日本美術に関心を寄せるようになった。当時ホイッスラーはジャポニスムの影響を受けた作品を沢山制作していたから、日本美術の指南役としては最適の人物。

ホイッスラーも浮世絵を所蔵しており、その9点が1万点あるといわれる大英博の浮世絵コレクションにおさまっている。1864年に描かれた‘バルコニー’はホイッスラーがもっていた鳥居清長の‘美南見十二候’を下敷きにしていることは明らか。

フリーアはホイッスラーとつきあいがあったからこうした女性たちの群像表現を目にし、浮世絵の美人画への興味を深めていったのかもしれない。鈴木春信の作品にも清長の絵のような遊里の座敷から女性が海の風景をながめるものがあり、‘バルコニー’は春信からも刺激をうけている。すると、フリーアの目は春信、歌麿へと向かう。そういう視覚体験の積み重ねがフリーアの眼力を鍛え、歌麿の‘品川の月’との出会いにつながった。

昨年‘ピーコックルーム’で‘磁器の国の姫君’と再会した。海外ニュースに時々パリとかロンドンで行われる‘ジャパンデイ’のイベントが報じられ、必ずそこにはこんな格好で着物を着た外人女性が登場する。ブロンドや青い目の女性は着物の着方が少々変でも一向にかまわない。むしろこういう着方のほうが愛嬌がある。

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2013.12.19

植田正治とターナーをつなげる光!

Img         植田正治の‘童暦 運動に出された仔牛’(1969年)

Img_0001     植田正治の‘白い風’(1981年)

Img_0002_2     ターナーの‘カラカラ浴場、ローマ’(1819年)

はじめて体験した写真展‘植田正治のつくりかた’(10/12~1/5 東京駅ステーションギャラリー)ですっかり植田正治(1913~2000)ファンになってしまった。楽しかったのは作品がいろんなことを思いおこさせてくれたこと、植田は写真のマグリットではないかとか、植田とオキーフが花の表現でコラボしているではないかとか。

もう一人画家とのつながりがあった。それは直接の作品ではなく太陽の光に対する感じ方。この展覧会では作品とともに植田の写真制作への思いや芸術観について語ったことがパネルにして表示されている。そのなかに思わずうなずくような話が、植田はこんなことをいっている。‘山陽は光が強くすぎるのであまり長くいたくない’

これを読んだ後すぐターナー(1775~1851)のイタリア旅行の話が頭をよぎった。ターナーは44歳になる1819年にイタリア各地を旅行している。でかけたのはヴェネツィア、ミラノ、フィレンツエ、ローマ、そしてナポリまで足をのばしている。

雨が多く湿潤なイギリスで育ったターナーだから太陽の国イタリアはどこへ行っても楽しい気分だったろうと想像するのだが、意外にもローマとフィレンツエの風景はさほど心を震わせなかったようだ。理由は空気が乾燥し太陽がまぶしすぎたため。目の前の風景がぱさぱさに感じられたのだろう。

山陰の空と日差しを体験した方なら植田の気持ちはすぐ理解できるはず。写真家は総じて強すぎる日差しは避けるが、山陰で写真を撮っている植田は光の感じ方がさらに繊細。植田とターナーが光に対して同じように感じていたのはとても興味深い。

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2013.12.03

アートに乾杯! アメリカにあるターナーの傑作

Img_0001_2      ‘国会議事堂の炎上’(1834年 フィラデルフィア美)

Img_0002_2     ‘奴隷船’(1840年頃 ボストン美)

Img_0003_2     ‘ヴェネツィアの景色’(1835年頃 NY メトロポリタン美)

Img_0005_2 ‘月明かりに石炭を積み込む水夫たち’(1835年 ワシントンナショナルギャラリー)

現在、東京都美で開催中の‘ターナー展’(10/8~12/18)は会期が残り2週間となった。先月日曜美術館で取り上げられたので、観客の数はグッとふえているかもしれない。

回顧展があると心が弾むのは画家の作品が沢山みれるだけでなく、これに合わせて制作されたTV局の美術番組からもいろいろな情報が入ってくるから。ターナー(1775~1851)の場合、9月に‘美の巨人たち’が‘戦艦テメレール’の制作の謎を解き明かしていたし、つい2週間前にも日曜美術館で松岡正剛さんがターナー作品の深い読み解きをしてくれた。

そしてもうひとつターナーに最接近するのに役立ったものがある。それは展覧会の図録にオマケとして添付されている地図。これは大変気が利いていて出品作に描かれた風景のある場所がイギリス国内、フランス、スイス、イタリアのどこにあるかが一目でわかるようになっている。お蔭でターナーが追い求めた崇高な自然美や大気や光をよりイメージしやすくなった。

わが家は今年のはじめアメリカで美術館めぐりをしたため、西洋絵画のビッグネームが何人も当たり年になった。その双璧がともに東京都美で回顧展が行われたエル・グレコとターナー。日本で多くの作品に出会っただけでなく、アメリカでも予想を上回る作品が姿を現してくれた。

ターナーの収穫はなんといってもフィラデルフィア美で念願の‘国会議事堂の炎上’に遭遇したこと。さらにワシントンナショナルギャラリーでも08年のとき工事のため展示されてなかった‘月明かりに石炭を積み込む水夫たち’と‘ヴェネツィア、税関舎とサン・ジョルジョ・マジョーレ’もみることができた。

ボストン美にある有名な‘奴隷船’とか日本に昨年やって来た‘ヴェネツィア、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂の前廊から望む’(メトロポリタン美)、そしてNYのフリックコレクションが所蔵する5点のターナー作品は以前みたので、これでアメリカの美術館にあるターナーは済みマークがつけられる。ここまでくるのに長い時間がかかったのでちょっと感慨深い。

今、ターナー旅行地図をみながら名画の数々を楽しんでいる。

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2013.10.09

名画がずらっと揃った‘ターナー展’!

Img     ‘スピットヘッド’(1808年)

Img_0003     ‘レグルス’(1828年)

Img_0007     ‘平和ー水葬’(1842年)

Img_0004     ‘湖に沈む夕陽’(1840~45年)

上野へ出かけ待望の‘ターナー展’(10/8~12/8)をみてきた。開幕するまで展覧会の内容を知らせるチラシが複数つくられ主だった出品が両手くらい載っていたから、この日本初の回顧展に対する期待値がどんどんあがっていた。その絵と次々遭遇し館内では終始ご機嫌だった。

作品は2点を除きすべてロンドンにあるテートブリテンが所蔵するもの。油彩、水彩、スケッチブックなどが110点。展示の仕方はオーソドックスに若い頃の作品から順番に飾られ最後に晩年のものが6点でてくる。

手元に現地で購入した美術館がつくったターナー(1775~1851)の画集があり、家に帰ったあとそこに載っている作品と今回出品されているものをつきあわせてみた。125点のうち20点がやってきた。だから、ラインナップはかなり見ごたえがある。

テートブリテンのターナールームは定期的に作品をローテーションしているので、4,5回くらい足を運ばないと全部をみとどけることはできない。今回はそのローテーション1回分をみた感じ。日本に居ながらターナーの傑作を体験できるのだから、これは一つの‘事件’といっていい。

33歳のころに描かれた‘スピットヘッド:ポーツマス港に入る拿捕された二隻のデンマーク船’は画面の下1/3の波の表現に目が釘づけになった。中央に拿捕されたデンマークの船やイギリス海軍の船が横一線にきれいに配置されており、そこがまるで崖の上のほうにみえ小舟が波にゆれているところまで岩がどどっと崩れ落ちたような感じ。

最も心を奪われたのが‘レグルス’、絵からだいぶ離れたところからでも吸い寄せられそうになるくらい強い磁力を発していた。絵自体がまるで発光体のよう。こういう強い光を感じさせる絵はそうない。風景画では印象派のモネとカイユボット、そして人物画ではフェルメール、ルノワールとサージェントの女性の肖像画など。全部あわせても片手くらい。この神々しいくらいまぶしい光を息を呑んでみていた。

最後の部屋にぐっとくる作品が3点ある。対になっている‘平和ー水葬’と‘戦争、流刑者とカサ貝’、‘湖に沈む夕陽’。船体の黒の輝きに強いインパクトがあり、銀が塗りこめられたようにみえる光が海面に反射する光景が目を惹く‘平和ー水葬’。思わず背筋がしゃんとした。ナポレオンが描かれた‘戦争’は現地でみたことがあるので、このペアとなる絵が日本でみれたのは幸運だった。

‘湖に沈む夕陽’をながめていてすぐ頭をよぎったのがブリジストン美にあるザオ・ウーキーの作品。こういう画風になるともう抽象画の世界にかなり足をつっこんでいる。ウーキーはモネよりもターナーのほうに影響を受けたのかもしれない。

満足度200%の展覧会だった。ミューズに感謝!

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2013.07.25

エンジョイ 海百景! ロラン、ターナー、モネ、シーレ

Img_2  ロランの‘海港、シバの女王の船出’(1684年 ロンドン ナショナルギャラリー)

Img_0001_2     ターナーの‘勇敢なるテメレール号’(1838年 ナショナルギャラリー)

Img_0003_3     モネの‘印象、 日の出’(1873年 パリ マルモッタン美)

Img_0005_2     シーレの‘トリエステの港’(1908年 シュタイアマルク州立博)

横浜美で今開催中の‘プーシキン美展’にプッサンの初期のいい絵がでているが、クロード・ロラン(1604~1682年)の‘アポロとマルシェアスのいる風景’も強く惹かれる一枚。プッサンとロランはルーヴルでは同じ部屋に飾れているから、二人はフランス絵画ではひとくくりにしてインプットされている。

ロランはロンドンのナショナルギャラリーにとても魅せられる絵がある。それはルーム15にターナーの‘カルタゴ帝国の興隆’と一緒に展示されている‘海港、シバの女王の船出’。早朝の光が海面に反射する光景が大変美しく、これから船に乗り込みソロモン王を訪ねていく女王シバの張りつめた心が手にとるように伝わってくる。と同時にみているこちらの旅心も呼び起こされる。

ロランの画風から強い影響を受けたターナー(1775~1851)が描いた‘勇敢なるテメレール号’はじつに堂々とした船の絵。御存じのようにテメレール号は1805年のトラファルガーの海戦で活躍した軍艦、時代が変わり現役を引退するときがやってきた。夕日が赤く輝くなか、黒い引き船に引かれてゆっくり進むテメレール号の姿には哀愁が漂っている。

港の絵で最も心を打つのはやはりモネ(1840~1918)の‘印象、日の出’。この絵は1985年に盗難に会い1990年無事発見された。お目にかかったのは美術館に戻り再公開された1991年。パリの訪問とこの絵の鑑賞がうまくシンクロしたので忘れられない一枚になった。とくに魅せられるのが光があたった海面がゆらゆら揺れる感じを表現した筆のタッチ、これをみないとモネははじまらない。

海面の揺らぎで思い出す絵がもう一枚ある。シーレ(1890~1918)が18歳のとき北東イタリアの港町、トリエステの光景を描いた絵。船のマストなどが反射している海面が静かにゆれる様が縦にまっすぐのびるギザギザの線で装飾的に描かれている。20年くらい前日本で見たときは衝撃が走った。シーレは18歳でもうこんないい絵を描いている。ミューズにその豊かな才能を愛されたことは間違いない。

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2013.05.23

東芸大美の好きそうな‘夏目漱石の美術世界展’!

Img_0002_2     ターナーの‘金枝’(1874年 ロンドン テート・ブリテン)

Img_2            ミレイの‘ロンドン塔幽閉の王子’(1878年 ロンドン大学)

Img_0004_2              与謝蕪村の‘竹渓訪隠図’(重文 18世紀)

Img_0006_2            長沢蘆雪の‘山姥図’(18世紀 遠山記念館)

東芸大美では現在‘夏目漱石の美術世界展’(5/14~7/7)が行われている。足を運んだのは漱石の絵画に対する好みに興味があったからではなく、チラシにのっているある絵がみたかったから。1点買いの鑑賞だから、さらさらとみて20分で終わった。

ターナー(1775~1851)の‘金枝’は一度現地でみたことがある。黄金色の光にあふれた画面はクリムトの金箔で彩られたものとはだいぶ趣がちがう。描かれているのはヴェルギリウスの詩‘アエネアスの歌’の一場面。左にいるのが金枝をもった巫女。巫女は地下の世界へ行こうとする英雄アエネアスに‘ささげものとして金枝を探してもっていかないと入れてくれない’と教えてやる。

真ん中の踊りの輪を対角線的にとりかこむように立っているのがキノコのような形をした松。こんな松は実際にみたことがない。慣れ親しんでいる日本の松とは異なった形なのでこの松ばかりに視線がいく。

今回のお目当てはミレイ(1829~1896)の絵。エドワード4世の二人の王子が叔父のリチャード3世によってロンドン塔に幽閉され殺されたことをテーマにしたこの絵の存在を知ったのは17年前のこと。一生縁がないと思っていたが、日本でみる幸運に恵まれた。不安げな表情をみせる二人の王子、死はそこまでしのびよってきている。

ミレイがみれればそれで目的は達せられたのに、嬉しいオマケがあった。5/26までの展示となっている与謝蕪村(1716~1783)の‘竹渓訪隠図’。以前MIHO MUSEUMであった蕪村の回顧展でこの絵は展示替えで見逃したので、追っかけ画リストにずっと残っていた。その絵が目の前に現れた。まさに犬も歩けば棒にあたる!

再会した長沢蘆雪(1754~1799)の‘山姥図’は緊張をしいられる作品。山姥の顔はまるで般若の能面のよう。厳島神社にあるグロテスクな山姥と金太郎の作品と較べると、こちらの山姥のほうがずっと怖い目をしている。


テーマ型の展覧会のときはいつも軽くみている。ミレイと蕪村があったからそれで十分。

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2012.11.07

ブレイクの追っかけ画がやっとみれた!

4426            ブレイクの‘日の老いたる者’(1827年)

4427          ミレイの‘ブラック・ブランズウィッカー’(1867年)

4428     ターナーの‘コンウェイ城’(1801~02年)

4429     コンスタブルの‘デダム教会と渓谷、サフォーク’(1800年)

Bunkamuraで開催中の‘巨匠たちの英国水彩画展’(10/20~12/9)を少しばかり楽しんだ。なぜ少しかというと水彩画への関心が薄いため。普通ならパスするところだが、出品作のなかにどうしてもみたい絵が一枚あるので雨のなか渋谷をめざした。

思い入れの強い絵はブレイク(1757~1827)の‘日の老いたる者’。絵の存在を知ったのは21年前、白髪と口ひげが風で真横になびいているこの老人の姿は体を震撼させた。前に屈み込み左手を前に出している。その大きく広げた親指とほかの4本からは山の稜線をつくるかのように光が出ている。一体この老人は何をしているの?

その意味は横において、とにかくブレイクはハットさせる絵を描く。この絵はマンチェスター大学のウィットワース美にあるから、まず縁はないだろうと思っていた。ところが、日本にやってきた!長年の夢が叶ったのでミューズに特別の捧げ物をしなくてはならない。今回展示されている157点はすべてウィットワースが所蔵しているもの。水彩画の国イギリスで蒐集された最も有名なコレクションだから、水彩画が好きな人にはたまらないだろう。

チラシに気になる絵がもう1点あった。それはミレイ(1829~1896)の‘ブラック・ブランズウィッカー’。ブレイク同様とても色の濃い水彩画、この絵に注目していたのは油彩で全身像を描いた同名の作品が画集に載っていたから。

お目当ての2点をみたので、あとはさらさらとみた。足がとまるのはどうしてもターナー(1775~1851)、全部で30点ある。そのなかでとくに惹かれたのが‘コンウェイ城’、イギリス旅行の回数が少ないのでこの城のある場所がイメージできない。

ほかは大好きなコンスタブル(1776~1837)やパーマー、ハント、マーチンをしばらくみて、15分で引き上げた。

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