2022.05.03

ビアズリーの‘サロメ’挿絵!

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 ‘おまえに口付けしたよ、ヨナカ―ン’(1894年)

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    ‘舞姫の報酬’

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   ‘孔雀のスカート’

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   ‘ヘロデの目’

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 ‘アーサー王、探し求めていた獣に出会う’(1892年)

ラファエロ前派のロセッティ(1828~1882)が描いた‘プロセルピナ’
をテートブリテン(当時はテートギャラリーと呼ばれていた)ではじめてみ
たのは40年前の1982年。この女性の姿態から発せられる圧の強さにた
じたじになった。官能的というより強くて神秘的な美しさが際立ち一度見た
ら忘れられない感じ。200%イギリス絵画、恐るべし!だった。

イギリスにはもうひとり、インパクトが半端でない人物画を描く画家がいる。
オスカー・ワイルド(1854~1900)の戯曲‘サロメ’に挿絵をそえた
鬼才ビアズリー(1872~1898)。19世紀末のロンドンでまたたく
間に美術界のスターダムにのし上がり、26歳の若さで亡くなった。死因は
わずか7歳でかかった当時不治の病と言われた結核。

サロメの絵というとモローの‘出現’とビアズリーの挿絵が一緒に思い浮かんで
くる。ビアズリーの挿絵の魅力は白と黒の強いコントラスト、そして流麗な
線の美しさ。‘おまえに口付けしたよ、ヨナカーン’でサロメは宙を浮くよう
に恍惚の表情で欲していたヨナカーン(洗礼者ヨハネ)の首を見つめている。
男を破滅に追いやったファムファタル、サロメの激しい愛に視線が釘づけに
なる。

‘孔雀のスカート’に登場する孔雀のデザインはその頃ロンドンで評判になって
いたホイッスラーの壁画‘孔雀の間’(ワシントン フリーア美)を使っている。
ビアズリーもジャポニスムに強く惹かれていたので、よく知られている孔雀
のイメージを繰り返した。これはメディアの手法そのもの。大衆に訴えるイメ
ージづくりにおいてもビアズリーは先駆者だった。‘アーサー王、探し求めて
いた獣に出会う’は‘サロメ’の2年前に描いたトーマス・マロリーの‘アーサー王
の死’の挿絵。装飾的な細部描写や平面的な画面処理は浮世絵からインスピレ
ーションを得ている。

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2022.04.25

サージェント、ゲインズバラの肖像画!

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 サージェントの‘マクベス夫人に扮するエレン・テリー’(1889年 テート)

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サージェントの‘レディ―・アグニュー’(1893年 スコットランド国立美)

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 ヘンリーの‘東と西’(1904年以降 スコットランド国立美)

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 ゲインズバラの‘ゲインズバラ夫人マーガレットの肖像’(1778年 コートールド美)

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 ゲインズバラの‘デボンシャー公爵夫人ジョルジアーナ’(1787年頃)

シャーロック・ホームズの探偵物語にグイグイ引きこまれている。世界中にたく
さんいるといわれる‘ホームズ中毒’にかかってしまったようだ。BSプレミアム
で放送されるときイギリスの地名の場所がすぐイメージできないので、若い頃
ロンドンに3ヶ月滞在したとき手に入れたイギリスの地図(MICHELIN)
を引っ張り出してきてじっと眺めている。ロンドン市内だと大英博物館や美術
館をいろいろまわったから東西南北の感覚を忘れずにいるが、ほかの都市だと
見当がつかないことが多い。地図を頼りに点と点を結び線をつくっていくとだん
だん地域の位置関係が頭に入ってくるようになるだろう。

コナン・ドイル(1859~1930)に最接近してみてひとつわかったこと
がある。それはこの推理小説作家がサージェント(1856~1925)とほぼ
同じ時代を生きていたこと。好きな肖像画家サージェントとコナン・ドイルが
一緒にくくれるとは思ってもみなかった。とすると、ドイルはサージェントが
有名な女優を描いた‘マクベス夫人に扮するエレン・テリー’やロイヤルアカデミ
ー展で大喝采を博した‘レディ―・アグニュー’をみたことがあるかもしれない。
何度もみている肖像画をまたあらたな気持ちでみている。これはおもしろい。

スコットランド出身のジョージ・ヘンリー(1858~1943)も二人と同世
代。Myお気に入り肖像画に登録されている画家がこれで2人、ドイルとつなが
った。ジャポニスムに影響をうけたヘンリーの‘東と西’を日本の美術館で開催さ
れたスコットランド美名品展で遭遇したとき、思わず足がとまった。知らない
画家だったが、ヘンリーにすぐチェックマークをつけた。

イギリスの女性を描いた肖像画でサージェントの次に心のなかに大きく広がって
いったのがゲインズバラ(1727~1887)。2010年のイギリス旅行で
足を運んだコートールド美でみた‘ゲインズバラ夫人マーガレットの肖像’が決定
的な鑑賞体験となった。女性画はマネ・ルノワールだけじゃないなとつくづく思
った。この絵とともにぐっときているのが‘デボンシャー公爵夫人ジョㇽジア―
ナ’。まだ、縁がないが対面を夢見ている。

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2022.04.24

ミレイの肖像画!

Img_0002_20220424222701   ‘エフィー・ミレイ’(1873~74年)

Img_0001_20220424222701   ‘名残りのバラ’(1888年)

Img_20220424222701   ‘エヴェリーン・テナント’(1874年)

Img_0003_20220424222701   ‘ハントリー侯爵夫人’(1870年)

Img_0004_20220424222701   ‘サー・ヘンリー・トンプソン’(1881年)

絵をみることが好きになり、この趣味を大きく膨らませようと美術関連の本
を購入するようになった。そのなかで大変重宝したのが‘週刊グレート・ア―
ティスト’。価格は500円と安いのに情報は盛りだくさん。画家の物語や
主要絵画の紹介のほかに‘生涯の1年 たとえば1745年’とタイトルをつ
けて名画が描かれたとき、国や世界の情勢がどうなっていたか歴史的な背景
が記述されている。画家の名前や絵の特徴を知ることにエネルギーを注いで
いたので当初はこの情報にはあまり熱心ではなかった。

でも、絵画とのつきあいが長くなると、こういう歴史的な文脈のなかで画家
の創作活動をみてみるというのも作品を深く感じることには必要なことだと
思うようになった。そして、最近はあらたな刺激が加わった。作家たちの作
品。昨日とりあげたヘミングウェイの文章にもセザンヌの表現方法が関係し
ていたことを知った。毎週楽しみにしているTV映画、BSプレミアムの
‘シャーロック・ホームズの冒険’にはホームズが活躍する舞台であるイギリス
のヴィクトリア朝(1873~1901)の様子や上流階級の人々の館や華
やかな生活が頻繁にでてくる。

‘犯人は二人’で夫人の肖像画を披露するパーティが挿入されているのをみると
由緒ある貴族にとって肖像画を画家に描いてもらうのはとても大事なこと
だということを再認識させられる。夫人や令嬢の場合、美しく描かれている
と気分は最高にいいだろう。このシーンがでてきたのでホイッスラー
(1834~1903)の肖像画を紹介したくなった。そうなるとミレイ
(1829~1896)も外せない。

ミレイについては2回好きな作品を取り上げたが、ここには子ども以外の肖像
画は入ってなかった。でも、ミレイは本当に上手な画家だから、肖像画も一級
品揃い。妻の‘エフィー・ミレイ’と娘を描いた‘名残りのバラ’がとてもいい。
美形の‘エヴェリーン・テナント’にもぐっと惹き込まれる。そして、見事な
‘ハントリー侯爵夫人’。縦2.2m、横1.3mの大作だから、屋敷に飾ると
招待客はみんな唸るにちがいない。お医者さんの‘サー・ヘンリー・トンプソン’
は威厳のある顔がよくとらえられている。

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2018.06.17

心に響くターナーの海洋画!

Img  ターナーの‘風下側の海辺にいる漁師たち、時化模様’(1802年)

Img_0003  ‘ソマーヒル、トンブリッジ’(1811年 スコットランド国立美)

Img_0001     ‘キルカーン城、クラチャン・ベン山ー真昼’(1801年)

Img_0002     ‘風景 タンバリンを持つ女’(1845年 栃木県美))

現在、新宿の損保ジャパン日本興和美では‘ターナー 風景の詩’(4/24~7/1)が行われている。4月池大雅展をみるため京都へいったときは別の美術館でこの展覧会をやっていたが、いずれ損保ジャパンに巡回することがわかっていたのでパスして帰って来た。

出動は遅くなったが、5月にTV東京の‘美の巨人たち’がターナー(1775~1851)の‘難破船’とりあげてくれ、番組の最後でこの回顧展を案内していたので、その情報分だけ関心の度合いは増大した。といっても昨年の京都行きで手に入れたチラシで気になっていたのは‘風下側の海辺にいる漁師たち、時化模様’(サウサンプトン・シテイ・アートギャラリー)1点のみというのが正直なところ。

番組で紹介された‘難破船’が描かれたのが1805年だから、この‘漁師たち’はその3年前の作品。8年前テートブリテンで‘難破船’に出会ったとき、海面の波の迫力ある描写に目が釘づけになった。海洋画で心を奪われている画家はターナー、アメリカのホーマー(1836~1910)の2人、そして浜辺に打ち寄せる波をリアルに描いたクールベ(1819~1877)にも魅せられている。

ホーマーは海が大きく揺れ動く光景をもっと近くからとらえているのに対し、ターナーは焦点をあてている船を軸にしてまわりの大きな船も入れ俯瞰的に描いているので船が波に翻弄される場面に強いハラハラドキドキ感がある。27~30歳にかけてターナーが手がけた海洋画の傑作を2点もみれたのは幸運だった。

この絵に満足したのでほかの絵はさらっとみた。そのなかで足がとまったのがチラシに載っている‘ソマーヒル、トンブリッジ’と虹のかかった‘lキルカーン城、クラチャン・ベン山ー真昼’。そして、日本の美術館が所蔵しているものではトップクラスの‘風景 タンバリンを持つ女’もながくみていた。この絵は一度と栃木県美へ遠征したとき平常展に飾ってあったし、5年前の東京都美のターナー展にも出品された。

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2018.01.08

夢の‘コンスタブル展’!

Img     ‘跳ねる馬’(1825年 ロンドン ロイヤル・アカデミー)

Img_0001     ‘水門を通過する舟’(1826年 ロイヤル・アカデミー)

Img_0002     ‘麦畑’(1826年 ナショナルギャラリー)

年のはじめはこんな画家の回顧展があったらいいなと、夢想している。まあ、それはだいたいが夢のままだが、たまに実現することがある。3年前、2度目のカラヴァッジョ展がみたい、とつぶやいたらなんと2016年に開催された。そんなこともあるので、‘夢の展覧会’という帆はなるべく高く掲げておきたい。

ターナー(1775~1851)とコンスタブル(1776~1837)はイギリスではどっこいどっこいの人気があり、コンスタブルの方が好きというファンも結構いる。ところが、日本で回顧展が行われるのはターナーばかり、2013年に東京都美で開かれ、今年は損保ジャパン美に巡回してくる(4/24~7/1)。

ターナーは好きなので何度も回顧展が開かれるのは嬉しいに決まっているが、心の中ではコンスタブルを一度はやってよ、という思いが強くある。アメリカの美術館をまわってみて感心するのはターナーだけでなくコンスタブルのいい絵が飾られていること。

回顧展を行うとなるとイギリスの美術館が所蔵するものが軸となるが、こうしたものを揃えアメリカにある作品などを集めてくれば立派なコンスタブル展になる。これにチャレンジしてくれる美術館があると信じているのだが、はたして。

トライしてほしいのはロンドンのロイヤル・アカデミーにある‘跳ねる馬’、この絵をみたくて2010年に再訪したのに運悪く展示されてなかった。ガックリ!ものごとは思い通りにはいかない。同じくロイヤルアカデミー蔵の‘水門を通過する舟’は2003年、六本木の森美術館がオープンしたとき出品された。大変魅了されコンスタブルが忘れられない画家になった。

コンスタブルはテート・ブリテンやナショナルギャラリー、ヴィクトリア&アルバート美へ出かけるとおおいに楽しめる。ロイヤルアカデミーへ行く前に入館したナショナルギャラリーで遭遇したのが‘麦畑’、コンスタブルはこの絵ともう一点しかなかったが、どちらも心に残る名画だった。

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2014.03.14

心に響くホイッスラーの名画!

Img_0005 ‘シシリー・アレキサンダー嬢’(1872~74年 テート・ブリテン)

Img_0006 ‘白衣の少女’(1862年 ワシントン ナショナルギャラリー)

Img      ‘バタシーの古橋’(1872~75年 テート・ブリテン)

Img_0002      歌川広重の‘名所江戸百景 京橋竹がし’(1857年)

今から16年前の1998年に東京都美で‘テートギャラリー展’が開かれた。現在、森アーツセンターで行なわれている‘ラファエロ前派展’はテートギャラリーが所蔵するものによって構成されているが、東京都美のときはロセッティやミレイをはじめブレイク、ターナー、コンスタブルなどビッグネームがずらっと揃った豪華なラインアップ、テートにあるイギリス絵画の名作を全部みせますという感じだった。

そのなかにホイッスラー(1834~1903)も2点あった。その一枚が‘シシリー・アレキサンダー嬢 灰と緑のハーモニー’、この絵によってホイッスラーとの付き合いがはじまった。ホイッスラーは肖像画家という顔とジャポニスムに影響を受けた風景画家という二つの顔をもっている。

東京都美でホイッスラーを体験したあと、肖像画と霞のかかった川や海の情景を描いたものを半々ぐらいの割合でいくつかの美術館でみた。パリのオルセー美、NYのメトロポリタン美、フリックコレクション、ワシントンのナショナルギャラリーとフリーア美、コーコラン美、そしてフィラデルフィア美。

肖像画のお気に入りベスト3は‘シシリー・アレキサンダー嬢’、‘白衣の少女’、‘磁器の国の姫君’、もしこの3点のなかでお好きな絵をさしあげるといわれたら、すぐに‘シシリー・アレキサンダー嬢’を指さす。この愛らしいシシリーちゃんは8歳、お父さんは銀行家でコレクター。

シシリーはホイッスラーに70回以上もポーズをとらされたから、もうふくれっ面、‘おじさん、まだぁー?、もう遊びたいよー’と言っているにちがいない。我慢も限界にきているので顔の前に蝶々がひらひら飛んでいても心は和まない。本当にご苦労さん、とってもきれいに描かれているよ、といつも声をかけている。

風景画は‘ノクターン 青と金 バタシーの古橋’に魅せられている。この絵は歌川広重(1797~1858)の晩年の傑作、‘名所江戸百景 京橋竹がし’に構図を学んでいる。インパクトがあるのがなんといっても画面中央の橋桁、広重の‘名所江戸百景’の魅力のひとつになっているのがモチーフを手前でクローズアップでとらえる近像型と呼ばれる構図。ホイッスラーはこれを近景ではなく中景でおこない橋の存在感をだしている。

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2014.03.11

フリーアの日本美術趣味に影響を与えたホイッスラー!

Img     ホイッスラーの‘磁器の国の姫君’(1864年 フリーア美)

Img_0001     ホイッスラーの‘バルコニー’(1865年 フリーア美)

Img_0002 鳥居清長の‘美南見十二候 六月 品川の夏’(1784年 シカゴ美)

Img_0006 鳥居清長の‘美南見十二候 四月 品川沖の汐干’(1784年 シカゴ美)

ワシントンのフリーア美には日本人ならとても親近感を覚える部屋が二つある。そこに飾られているのはフリーア(1854~1919)が日本美術にのめり込むのに大きな影響を与えたホイッスラー(1834~1903)の作品。2008年はじめてこの美術館を訪問したとき、ホイッスラーに開眼することになったのはここのコレクションのお蔭。

フリーアはロンドンで会った20歳年上のホイッスラーから浮世絵などの話を聞き、次第に日本美術に関心を寄せるようになった。当時ホイッスラーはジャポニスムの影響を受けた作品を沢山制作していたから、日本美術の指南役としては最適の人物。

ホイッスラーも浮世絵を所蔵しており、その9点が1万点あるといわれる大英博の浮世絵コレクションにおさまっている。1864年に描かれた‘バルコニー’はホイッスラーがもっていた鳥居清長の‘美南見十二候’を下敷きにしていることは明らか。

フリーアはホイッスラーとつきあいがあったからこうした女性たちの群像表現を目にし、浮世絵の美人画への興味を深めていったのかもしれない。鈴木春信の作品にも清長の絵のような遊里の座敷から女性が海の風景をながめるものがあり、‘バルコニー’は春信からも刺激をうけている。すると、フリーアの目は春信、歌麿へと向かう。そういう視覚体験の積み重ねがフリーアの眼力を鍛え、歌麿の‘品川の月’との出会いにつながった。

昨年‘ピーコックルーム’で‘磁器の国の姫君’と再会した。海外ニュースに時々パリとかロンドンで行われる‘ジャパンデイ’のイベントが報じられ、必ずそこにはこんな格好で着物を着た外人女性が登場する。ブロンドや青い目の女性は着物の着方が少々変でも一向にかまわない。むしろこういう着方のほうが愛嬌がある。

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2013.12.19

植田正治とターナーをつなげる光!

Img         植田正治の‘童暦 運動に出された仔牛’(1969年)

Img_0001     植田正治の‘白い風’(1981年)

Img_0002_2     ターナーの‘カラカラ浴場、ローマ’(1819年)

はじめて体験した写真展‘植田正治のつくりかた’(10/12~1/5 東京駅ステーションギャラリー)ですっかり植田正治(1913~2000)ファンになってしまった。楽しかったのは作品がいろんなことを思いおこさせてくれたこと、植田は写真のマグリットではないかとか、植田とオキーフが花の表現でコラボしているではないかとか。

もう一人画家とのつながりがあった。それは直接の作品ではなく太陽の光に対する感じ方。この展覧会では作品とともに植田の写真制作への思いや芸術観について語ったことがパネルにして表示されている。そのなかに思わずうなずくような話が、植田はこんなことをいっている。‘山陽は光が強くすぎるのであまり長くいたくない’

これを読んだ後すぐターナー(1775~1851)のイタリア旅行の話が頭をよぎった。ターナーは44歳になる1819年にイタリア各地を旅行している。でかけたのはヴェネツィア、ミラノ、フィレンツエ、ローマ、そしてナポリまで足をのばしている。

雨が多く湿潤なイギリスで育ったターナーだから太陽の国イタリアはどこへ行っても楽しい気分だったろうと想像するのだが、意外にもローマとフィレンツエの風景はさほど心を震わせなかったようだ。理由は空気が乾燥し太陽がまぶしすぎたため。目の前の風景がぱさぱさに感じられたのだろう。

山陰の空と日差しを体験した方なら植田の気持ちはすぐ理解できるはず。写真家は総じて強すぎる日差しは避けるが、山陰で写真を撮っている植田は光の感じ方がさらに繊細。植田とターナーが光に対して同じように感じていたのはとても興味深い。

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2013.12.03

アートに乾杯! アメリカにあるターナーの傑作

Img_0001_2      ‘国会議事堂の炎上’(1834年 フィラデルフィア美)

Img_0002_2     ‘奴隷船’(1840年頃 ボストン美)

Img_0003_2     ‘ヴェネツィアの景色’(1835年頃 NY メトロポリタン美)

Img_0005_2 ‘月明かりに石炭を積み込む水夫たち’(1835年 ワシントンナショナルギャラリー)

現在、東京都美で開催中の‘ターナー展’(10/8~12/18)は会期が残り2週間となった。先月日曜美術館で取り上げられたので、観客の数はグッとふえているかもしれない。

回顧展があると心が弾むのは画家の作品が沢山みれるだけでなく、これに合わせて制作されたTV局の美術番組からもいろいろな情報が入ってくるから。ターナー(1775~1851)の場合、9月に‘美の巨人たち’が‘戦艦テメレール’の制作の謎を解き明かしていたし、つい2週間前にも日曜美術館で松岡正剛さんがターナー作品の深い読み解きをしてくれた。

そしてもうひとつターナーに最接近するのに役立ったものがある。それは展覧会の図録にオマケとして添付されている地図。これは大変気が利いていて出品作に描かれた風景のある場所がイギリス国内、フランス、スイス、イタリアのどこにあるかが一目でわかるようになっている。お蔭でターナーが追い求めた崇高な自然美や大気や光をよりイメージしやすくなった。

わが家は今年のはじめアメリカで美術館めぐりをしたため、西洋絵画のビッグネームが何人も当たり年になった。その双璧がともに東京都美で回顧展が行われたエル・グレコとターナー。日本で多くの作品に出会っただけでなく、アメリカでも予想を上回る作品が姿を現してくれた。

ターナーの収穫はなんといってもフィラデルフィア美で念願の‘国会議事堂の炎上’に遭遇したこと。さらにワシントンナショナルギャラリーでも08年のとき工事のため展示されてなかった‘月明かりに石炭を積み込む水夫たち’と‘ヴェネツィア、税関舎とサン・ジョルジョ・マジョーレ’もみることができた。

ボストン美にある有名な‘奴隷船’とか日本に昨年やって来た‘ヴェネツィア、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂の前廊から望む’(メトロポリタン美)、そしてNYのフリックコレクションが所蔵する5点のターナー作品は以前みたので、これでアメリカの美術館にあるターナーは済みマークがつけられる。ここまでくるのに長い時間がかかったのでちょっと感慨深い。

今、ターナー旅行地図をみながら名画の数々を楽しんでいる。

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2013.10.09

名画がずらっと揃った‘ターナー展’!

Img     ‘スピットヘッド’(1808年)

Img_0003     ‘レグルス’(1828年)

Img_0007     ‘平和ー水葬’(1842年)

Img_0004     ‘湖に沈む夕陽’(1840~45年)

上野へ出かけ待望の‘ターナー展’(10/8~12/8)をみてきた。開幕するまで展覧会の内容を知らせるチラシが複数つくられ主だった出品が両手くらい載っていたから、この日本初の回顧展に対する期待値がどんどんあがっていた。その絵と次々遭遇し館内では終始ご機嫌だった。

作品は2点を除きすべてロンドンにあるテートブリテンが所蔵するもの。油彩、水彩、スケッチブックなどが110点。展示の仕方はオーソドックスに若い頃の作品から順番に飾られ最後に晩年のものが6点でてくる。

手元に現地で購入した美術館がつくったターナー(1775~1851)の画集があり、家に帰ったあとそこに載っている作品と今回出品されているものをつきあわせてみた。125点のうち20点がやってきた。だから、ラインナップはかなり見ごたえがある。

テートブリテンのターナールームは定期的に作品をローテーションしているので、4,5回くらい足を運ばないと全部をみとどけることはできない。今回はそのローテーション1回分をみた感じ。日本に居ながらターナーの傑作を体験できるのだから、これは一つの‘事件’といっていい。

33歳のころに描かれた‘スピットヘッド:ポーツマス港に入る拿捕された二隻のデンマーク船’は画面の下1/3の波の表現に目が釘づけになった。中央に拿捕されたデンマークの船やイギリス海軍の船が横一線にきれいに配置されており、そこがまるで崖の上のほうにみえ小舟が波にゆれているところまで岩がどどっと崩れ落ちたような感じ。

最も心を奪われたのが‘レグルス’、絵からだいぶ離れたところからでも吸い寄せられそうになるくらい強い磁力を発していた。絵自体がまるで発光体のよう。こういう強い光を感じさせる絵はそうない。風景画では印象派のモネとカイユボット、そして人物画ではフェルメール、ルノワールとサージェントの女性の肖像画など。全部あわせても片手くらい。この神々しいくらいまぶしい光を息を呑んでみていた。

最後の部屋にぐっとくる作品が3点ある。対になっている‘平和ー水葬’と‘戦争、流刑者とカサ貝’、‘湖に沈む夕陽’。船体の黒の輝きに強いインパクトがあり、銀が塗りこめられたようにみえる光が海面に反射する光景が目を惹く‘平和ー水葬’。思わず背筋がしゃんとした。ナポレオンが描かれた‘戦争’は現地でみたことがあるので、このペアとなる絵が日本でみれたのは幸運だった。

‘湖に沈む夕陽’をながめていてすぐ頭をよぎったのがブリジストン美にあるザオ・ウーキーの作品。こういう画風になるともう抽象画の世界にかなり足をつっこんでいる。ウーキーはモネよりもターナーのほうに影響を受けたのかもしれない。

満足度200%の展覧会だった。ミューズに感謝!

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