オリヴァー・サックス ‘レナードの朝’!
食べ物に好き嫌いがあるように絵画についても大変のめり込むものがある一
方で、どうしても好きになれない画家もいる。それでも、つきあうアーテイ
ストはなるべく多くし美術を幅広く楽しむように心がけている。こうしたこ
とは知的興味が専門分野の外に広がる場合でもそうありたいと思っているが、
能力に限界があり長く知識をためこんでいる分野に比べると相当ハードルが
高くなる。たとえば、10年くらい前からチャレンジしている脳の話は理解
が進むように時間をさいて集中的に本を読んでいる。しかし、本を一冊読み
終わったらといって頭がクリアになったということにはならない。だから、
何度も何度もページをめくりポイントがそこそこつかめるようなったら、少
しレベルアップした本に時間とエネルギーを注ぎ込んでいく。
今年は買い込んでいた脳関連の本を何冊も読んだ。一番多いのが脳神経科医
として活躍したオリヴァー・サックスの著作。お陰で理解の小さなジャンプ
が何度か起こった。その本をあげると
☆‘レナードの朝’(1973年 早川書房)
☆‘妻を帽子とまちがえた男’(1985年 早川書房)
☆‘火星の人類学者’(1995年 早川書房)
☆‘音楽嗜好症’(2008年 早川書房)
☆‘見てしまう人びと 幻覚の脳科学’(2012年 早川書房)
ラマチャンドランの‘脳のなかの幽霊’(1998年 角川書店)を読んだとき、解説を書いた養老孟司さんの冒頭の文章が目にとまった。こうある。‘ラマチャンドランの本にオリヴァー・サックスが序を書いている。それなら面白い本に決まっているから、本当は蛇足の解説は必要ない’。オリヴァー・サックスの本を5冊読んで、その通りだということがよくわかった。文章が本当に上手いからおもしろい上に、難しい話がすっすっと頭に入ってくる感じ。頭が緻密に整理されていて複雑なことをイメージできるように語ってくれるのだからスゴイ。だから、2015年に出版された658頁もある分厚い文庫本‘レナードの朝’を夢中になって読んだ。この本は1920年代に流行した謎の眠り病‘嗜眠性脳炎’にかかって話すことも動くこともできない患者にかかわったオリヴァー・サックスの奮闘記が元になっている。
この原作を映画化したのがロバート・デ・ニーロがレナード役、ロビン・ウイリアムズがオリヴァー・サックス役で共演した‘レナードの朝’(アメリカ 1990年)。本を読んだあとすぐブックオフへ行き、DVDを探しゲットした。この映画は一度観たことはあるが、記憶がまったくなくなっていたので、あらためてまさに真剣にみた。30年間も半昏睡状態だったレナードをはじめとする患者たちが試験的な新薬の投与により奇跡的に‘めざめ’ていく。だが、その効果は長くは続かなかった、、原作をしっかり読んだので患者たちの身振りや行動が胸を打った。ほかの本も今繰り返し読んでいる。
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