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2023.07.31

美術で‘最高の瞬間‘! 奈良美智

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    ‘あおもり犬’(2006年 青森県美)

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    ‘The little star dweller’(2006年)

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    ‘Agent Orange’(2006年)

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    ‘Puff Marshie, Hirosaki Version’(2006年)

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    ‘春少女’(2012年)

青森県弘前市出身の奈良美智(1959~)は村上隆同様、回顧展が開か
れるのを心待ちにしている現代アーティスト。回顧展には2回縁があった。
最初は2006年、弘前市の吉井酒造煉瓦倉庫で開催された‘A to Z’展。その
6年後、横浜美でも最新作の絵画、ドローイング、ブロンズ像が披露された。

2006年に開館した青森県美でシャガールの大壁画が展示されるという情
報が入ったので、急遽クルマで青森を目指すことが決まった。朝早く出発し
て、東北自動車道を走り続け午後4時くらいに到着した。メインディッシュ
のシャガールの前に大きなオマケが目を楽しませてくれた。それが奈良智が
美術館のためにつくった高さが8.5mもある巨大な立体作品‘あおもり犬’。
こんな馬鹿デカい犬のつくりものはほかにみたことがない。これは生涯の思
い出になった。

翌日、弘前まで足をのばし、奈良智の回顧展をたっぷりみた。不二家のペコ
ちゃんを連想させる女の子が奈良智の代名詞、目の間が大きく空き顔全体が
横にペタッと広がった感じがとても可愛い。いろんな表情で心を癒してくれ
る‘The little star dweller’や‘Agent Orange’などをながめていると自然に肩の力
が抜けリラックスした気分になる。そして、立体作品に強い磁力を発してい
るものがあった。‘Puff Marshie, Hirosaki Version’は一見するとカボチャのなか
にペコちゃんの頭が入ったようにみえる。

横浜美で披露された最新作でおもしろかったのは‘春少女’、まず視線がむかう
お馴染みの女の子の目は色付きコンタクトレンズのように複数の色の星が
輝いているよう。その調子はカールされた髪、衣服にまで広がっており、すご
く垢抜けた女の子に変身している。また、はじめて挑戦したというブロンズ像
もなかなかの出来栄えでぐるくる回ってみた。

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2023.07.30

美術で‘最高の瞬間‘! 中島潔

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    ‘大漁’(2001年)

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    ‘お花だったら’(2000年)

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    ‘夏のバス停(1985年)

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    ‘風の色’(1990年)

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    ‘色染む頃’(1990年)

デパートで開催される展覧会にはいろいろ思い出がつまっている。東京では
日本橋三越、日本橋高島屋、銀座松屋、そして横浜ではそごうと高島屋にな
んども足を運んだ。童画で知られる中島潔(1943~)の回顧展に運よく
遭遇したのは日本橋三越。2003年の‘中島潔が描く金子みすゞ’、2005
年の‘中島潔が描くパリそして日本’が強く記憶に残っている。

‘大漁’は26歳でこの世を去った童謡詩人金子みすゞ(1903~1930)
のもっとも有名な詩を中島が絵にしたもの。大漁のイワシでびっしりうまっ
た画面に女の子が立ちイワシの命に思いをはせている。詩と絵が完璧にコラ
ボしている。息を呑んでみていた。
 ☆大漁  朝焼小焼だ
      大漁だ
      大羽鰮の
      大漁だ
     
      濱は祭りの
      ようだけど
      海の中では
      何萬の
      鰮のとむらひ
      するだろう。

明るい色彩につつまれた‘お花だったら’も大変惹かれる作品。お花畑の感じ
がよくでており、金子みすゞの詩にすっとはいっていける。

農村の風景のなかにいる少年少女を描いた中島の絵には弱いものへのいたわ
りや自然への畏敬が感じられる。最近よくみている古い日本映画にでてくる
昔の日本の風景と重なり心が安らぐのが‘夏のバス停’。バスの行先は唐津と
なっているのは、中島の故郷は佐賀県の唐津だから。男の子も女の子の顔は
どこかやさしくほっこりしているが、思わず足がとまったのが‘風の色’。大
きく曲がった木に登って休んでいる二人と犬の姿につい頬がゆるむ。‘色染む
頃’はお地蔵さんのすました顔がかわいい。中島潔に乾杯!

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2023.07.29

美術で‘’最高の瞬間‘! 谷内六郎

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   ‘ねえたのむよ’(1965年)

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   ‘髪の毛スキーヤー’(1962年)

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   ‘夢の中の道’(1969年)

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   ‘買ってもらった気持’(1969年)

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   ‘ラッシュアワー’(1978年)

鑑賞する絵画の数が増えてくると、その画家にいだいていたイメージが大き
く変わることがある。‘週間新潮’の表紙絵で知られる谷内六郎(たにうちろ
くろう 1921~1981)はそのひとり。週刊誌を毎週購入する習慣が
ないが、新聞広告をみてどんなことに今スポットがあたっているかはアバウ
トにインプットされる。その表紙に子どもを主人公にした絵を使ったのが
‘週刊新潮’。描かれた昔の日本人の素朴な暮らしや風土はどこか安全基地の
ような感じがして、肩の力をぬいてくれる。

ところが、一体誰が描いていたのかはよく知らなかった。それが解消された
のは運よく横浜そごうで開かれた回顧展(2006年)や横須賀市美の谷内
六郎専用展示室でコレクションをみたから。はじめは‘ねえたのむよ’のような
絵を、こんなことを小さい頃母親から頼まれたなと思い出しながら懐かしく
みていた。

そのうち、こういう子ども絵にはっとする表現やシュルレアリスム気分に満
ちた要素をしのばせていることに気づいた。これを勝手に‘谷内六郎の
ソフト・シュルレアリスト’と呼んでいる。‘髪の毛のスキーヤー’は床屋で髪を
切ってもらっている女の子がかけている白い布に今カットされた髪の毛がス
キーヤーに変身して下へ滑り落ちている。こんなことを発想するなんて、
これはスゴイ!そして、‘夢の中の道’もよくみると大変怖い絵。黒いお化けが
ベルトコンベアーを回し続けているので、男の子はいつまでたっても家にたど
り着かない。これを夢に見たら気が狂いそうになるだろう。

‘買ってもらった気持’は瞬間的にミロの絵にでてくる梯子を連想した。男の子
はバスのおもちゃを買ってもらって大喜び。だから、デパートのエスカレー
ターはどんどん天まで伸びていく。この嬉しい気持ちはよくわかる。さて、
もっともぐっとくるのが‘ラッシュアワー’、蟻の行列を人々の通勤風景に見立
ている。ダリの絵にも蟻がでてくるので、強く惹きこまれる。参りました!

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2023.07.28

美術で‘最高の瞬間‘! 岡本太郎

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    ‘夜’(1947年 川崎市岡本太郎美)

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    ‘森の掟’(1950年 川崎市岡本太郎美)

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    ‘太陽の塔’(1970年 万博記念公園)

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    ‘縄文人’(1982年 川崎市岡本太郎美)

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    ‘邂逅’(1971年 川崎市岡本太郎美)

小さい頃、芸術家のイメージを植え付けられたのが岡本太郎(1911
~1996)。お馴染みのフレーズは‘芸術は爆発だ!’表現したいことをエネル
ギッシュにまるで気がふれているような調子で語るので、芸術家の発想は平凡
に生きている人間にはとても理解できないと思った。シュルレアリストのダリも
岡本太郎同様、奇人にみえるが、実際はメディア前では注目を浴びようと演技し
ていた。でも、岡本太郎は演出は一切なしだから、その内面は一筋縄ではつかみ
とれない。

1970年の大阪万博でみた‘太陽の塔’しか岡本太郎の作品に縁がなかったが、
美術の鑑賞が趣味になり彫刻だけでなく絵画をみる機会が増えていった。よく
足を運んだ南青山にある岡本太郎記念館はすぐ近くにある根津美にでかけたと
きに寄っていた。ここは自宅兼アトリエだったところで岡本太郎ワールドをコ
ンパクトに楽しむにはもってこいだった。回顧展などをみるため何度も訪問し
たのは川崎市岡本太郎美。小田急線の向ヶ丘遊園駅で下車し、生田緑地まで歩い
て行った。

ここではまったくみたことのなかった絵画とたくさん出会った。お気に入りは‘夜’
。強い風にスカートがなびく少女は後ろにナイフを隠し、前方の髑髏に立ち向か
っている。枝に囲まれる不気味で緊迫感に満ち満ちた空間には10本もある足指
がうごめき、赤い稲妻が鋭い光を放っている。戯画チックなシーンは映画でも使
えそう。‘森の掟’は森の怪物がぞろぞろ登場してくる。一見するとサメを連想さ
せる赤いチャックの怪物。チャックに命を与える発想が飛んでいる。その右には
赤ちゃん怪物のトリオ、すぐ上では怒りの表情をみせる紙風船のお化けがみえる。

岡本太郎の作品は絵画より彫刻のほうに大きな感動をもらっている。有名な
‘太陽の塔’は大きくゆがんだ鼻と唇は怒ったような表情にうつり、それをてっぺ
んの梟が鎮めている感じ。縄文土器に魅せられた岡本太郎の真骨頂ともいえる
作品がパワフルな造形が目に焼きつく‘縄文人’。そして、抽象彫刻の‘邂逅’にも
思わず足がとまる。

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2023.07.27

美術で‘最高の瞬間‘! 村上隆

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     ‘とんがり君’(2005年)

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     ‘五百羅漢図’(2012年)

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   ‘その手に触れる異次元’(2015年)

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   ‘宇宙の産声’(2005年~)

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    ‘ブラックホール’(2015年)

現代美術家として世界的に知られている村上隆(1962~)の回顧展に
2015年、お目にかかれたのは生涯の思い出である。それから8年経った
が、ここ数年はコロナ禍のため美術館巡りの回数が激減しアートを幅広くみ
る機会が細くなっているため、村上隆に関する新作情報もまったく入ってき
てない。今、どんな作品を創作しているのだろうか。

NHKの日曜美術館などに出演して日本画やミュシャについて語る村上のこと
が気になりだしたが、作品をみる縁がなかった。やっと本物がみれたのが
2005年六本木ヒルズの毛利庭園池に出現した巨大彫刻‘とんがり君’(高さ
7m)。漫画のキャラクターを立体にしたような作品はとても愛嬌があり、
親しみが湧く。これがきっかけになりまた作品がどこかの美術館に登場する
ことを期待したが、それはなかなか実現せず10年後の森美でも回顧展まで
待たされた。

待望の回顧展の目玉は縦3m、横100mの巨大なキャンバスに描かれた
‘五百羅漢図’。中国、日本ではお馴染みの画題である五百羅漢図がマンガやア
ニメ調によって現代版羅漢図になって登場した。こんなに楽しくわくわくす
る宗教画はほかにみたことがない。春の東福寺の‘五百羅漢図’が披露されその
表現が目に焼き付いている。だから、村上が目指した全体の構想やアイデア
が規格外のものだということがよくわかる。ところで、この作品が今どこに
あるのだろうか? 海外の美術館あるいはコレクター、それとも村上が所有
している。

回顧展ではキャラクターもののDOB君シリーズの最新ヴァージョン‘その手に
触れる異次元’や大型立体作品の‘宇宙の産声’が目を楽しませてくれた。そし
て、想定外の抽象絵画が現れたのにはびっくりした。‘ブラックホール’は二次
元的なスーパーフラットの表現に多次元の宇宙をからませる画面構成が斬新。
宇宙論は今メインテーマになっているので敏感に反応する。

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2023.07.26

美術で‘最高の瞬間‘! 王子江

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Img_0004_20230726225301     ‘雄原大地’(部分 1996年 茂原市美)

Img_20230726225301     ‘人生楽事’(部分 2004年)

Img_0003_20230726225301     ‘大餐図’

Img_0001_20230726225301     ‘京都遺韻’

Img_0006_20230726225301     ‘夢帰木曽福島’

水墨画アーティストの王子江(1958~)は日本で活躍する中国人画家。
1988年、30歳のとき来日し千葉県の茂原市で創作活動をはじめた。
そのすごい画才のことを知ったのはNHKの日曜美術館。1996年に描か
れた大作‘雄原大地’(2m×100m)を制作の現場にカメラをもちこみ、
ドキュメンタリータッチで紹介していた。衝撃が大きかったので何年か後、
この襖壁画をみるため茂原までクルマを走らせた。もう、みた瞬間テンシ
ョンが一気に上がり、大観の代表作‘生々流転’と対面したときと同じくらい
の大きな感動が腹の底から湧き上がってきた。王子江さんはこのとき37歳。
大観が‘生々流転’が描いたのは55歳だから、王さんは20歳も若い30代
でこんな傑作水墨山水画を完成させた。本当にすごい画家である。

待望の回顧展が開催されたのは2008年の2月。場所は上野の森美。王さんは中国の山々を連想させる山水画だけでなく、人物画、風俗画、日本の街を描いた風景画、なんでもすばらしい作品を描きあげる。とくにみて楽しいのが風俗画、‘人生楽事’。これは中国での里帰り展が国立中国美(北京)で2004年に開かれたとき出品され、本場中国でも高く評価された。一日の仕事を終えた庶民が居酒屋に集まり好きなものを食べて飲み語り合う様子が見事に描かれている。王さんが日本に来る前、1980年代は庶民の暮らしはまだ厳しく、こうした光景はみられなかったという。

‘大餐図’に魅了され続けている。白い布が敷かれたテーブルに美味しそうな料理がならべられ、ビールを飲みながら宴会を満喫している。みんなの笑顔がじつにいい。以前香港を旅行したとき、食事をした店はどこも活気があり客たちは大きな声でしゃべりながら、どんどん料理を口にいれていた。人々の心を幸せにする中国料理が世界中で人気が高いのはよくわかった。

王さんが毎年銀座のギャラリーで行う個展にはここ数年はコロナ禍のため出かけてないが、その前は案内状がくるたびに出かけていた。嬉しいのは中国の風景だけでなく、日本各地にでかけ詩情豊かな風景画を描いていること。回顧展にとても惹かれる風景画があった。‘京都遺韻’や‘夢帰木曽福島’。今年は秋の個展に足を運ぶことにしており、また大規模な回顧展が開かれないかひそかに期待している。

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2023.07.25

美術で‘最高の瞬間‘! 森本草介 奥谷博 池口史子

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   森本草介の‘窓’(2007年)

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    ‘横になるポーズ’(1998年 ホキ美)

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    ‘初秋の川辺’(2007年)

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   奥谷博の‘歓喜の極’(2007年)

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   池口史子の‘ワイン色のセーター’(2002~03年)

神田の古本屋で過去に行われ展覧会の図録や美術本を探し回っていたとき、
とびっきり高い値段がついた洋画家がいた。写実画家の森本草介(1937
~2015)。作品をはじめてみたのは2006年の東京美術倶楽部アート
フェア。出品作は話を聞いた人によると2700万円で売却されたらしい。
その翌年に描かれたのが‘窓’。美しい女性が目の前の椅子に座っているよう
だった。そして、衣服や木の椅子の質感描写はまさに神業的なリアルさ。
多くのコレクターが森本の女性像を欲しがるのはよくわかる。

2014年、日本橋三越で千葉のホキ美所蔵品による森本草介展が開かれた。
ホキ美には日本最大の森本コレクションがあり、36点もっている。その第
1号が‘横になるポーズ’、何点もみているうちにわかったが、モデルはみな同
じ女性。女性像と同様に魅了されるのが静物画と風景画。森本の風景画は
フランスの田舎の風景で占められている。多く描かれているのが川辺の風景。
その場にいるような気分になる‘初秋の川辺’はセピアトーンの画面に木々の細
い枝々を精緻に描く高い画力に目が点になった。

2017年に文化勲章を受章した奥谷博(1934~)は気になる画家だっ
たので、昨年春、神奈川県近美葉山館で開かれた回顧展に出かけるつもりで
いた。でも、コロナ禍が続いており出かけるのをやめた。この画家に関心をも
ちはじめるきっかけになった絵が‘歓喜の極’。激しく動き回る渦潮のなかから
二羽の鷹が勢いよく垂直に飛び出している。映画のワンシーンに使えそうな
作品である。

亡くなった作家の堺屋太一の奥さんである川口史子(1943~)は
2004年の損保ジャパン東郷青児美術館大賞に輝いた‘ワイン色のセーター
’が忘れられない。ぱっとみてすぐホッパーの絵が思い浮かんだ。こんな日本
人離れした絵が描ける画家がいることに200%驚いた。回顧展に遭遇する
とほかの作品にも心が開けるのだが、果たして。

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2023.07.24

美術で‘最高の瞬間‘! 絹谷幸二

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    ‘スピードスケート’(1997年)

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    ‘三美神’(1996年)

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    ‘ヴェネツィア朝暘・希望’(2006年)

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    ‘自画像・夢’(2005年)

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    ‘日月黄金海山富士山’(2007年)

デパートのなかにある美術館で回顧展が開かれる場合、初日に画家や陶芸家
がいて図録にサインをしてくれることがある。今年80歳になる文化勲章受
章者の絹谷幸二(1943~)さんとは2006年に日本橋三越で開催され
た‘イタリアを描く 絹谷幸二展’ですこし話をした。NHKの日曜美術館など
で受けた印象そのままで気さくな人柄だった。図録をみるとイタリア留学時
代は細身のイケメンのイメージ、これにはびっくりした。

画伯の作品で最初に目に入ったのは1998年長野オリンピックの公式ポス
ター、とくに惹かれたのが‘スピードスケート’。おもしろいのは先頭を走っ
ているスケーターの口から‘ファイト’の吹き出しがでていること。こんな絵は
みたことない。なんだか戯画のよう。あとで作品といろいろ出会い、これが
絹谷ワールドのひとつの特徴だった。色彩豊かで文字の入ったエネルギッシ
ュな絵画をみていると腹の底から元気が出てくる。‘三美神’では口から花
を出している女神もいる。目鼻立ちの整った三つの顔をぐるっとまわってみ
るとティツィアーノの‘賢明の寓意’を思い出す。

イタリアの絵がたくさん飾ってあった回顧展で‘ヴェネツィア朝暘・希望’に思
わず足がとまった。運よく5回この街を訪問したので、サンマルコ寺院など
人気の観光名所に入ったときの感動がよみがえってくる。運河の真ん中のと
ころに‘Sallute’の文字がみえる。また出かけたいが、複雑な細い道に迷ってし
まいそう。アカデミア美は今も賑わっているだろうか。

‘自画像・夢’には絹谷さんのイタリア好きがそのままでている。大きく描かれ
た顔は夢に登場した人々で囲まれ、吹き出しには‘色即是空’,‘無’が鮮やかな色
で書かれている。イタリアの街にいても無の境地といったところだろうか。
日本の風景では富士山がモチーフになることが多い。とくに好きなのが‘日月
黄金海山富士山’。3年前,フジヤマミュージアムで友人の長嶋茂雄との合作
‘新世紀生命富士’をみた。

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2023.07.23

美術で‘最高の瞬間‘! 田中一村

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‘アダンの海辺’(1969年 田中一村記念美)

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‘初夏の海にアカショウビン’(1962年頃)

Img_0003_20230723223901       ‘不喰芋と蘇鉄’

Img_0004_20230723223901       ‘草花に蝶と蛾’

Img_20230723223901      ‘熱帯魚三種’(1973年)

石田徹也が‘日本のマグリット’なら、日本画家の田中一村(1908~1977)は‘日本のアンリ・ルソー’といえるかもしれない。一村は50歳のとき奄美大島に渡り、熱帯の植物や鳥、魚を亡くなるまで描き続けた。そのルソーの熱帯シリーズを連想させる作品は2001年奄美に開館した田中一村記念館にあり、2010年千葉市で行われた回顧展で披露された。

一村の代名詞となった絵が‘アダンの海辺’。浮世絵の広重の‘名所江戸百景’のように縦長の画面に南国特有のアダンがアクロバチックな姿で大きく描かれている。このインパクトのある木に目が寄っていくが、背景の砂浜の表現が見事。砂や小さな石ころが一粒々丁寧にえがかれている。奄美大島へはまだ縁がないが、こういう絵をみると出かけてみたくなる。

‘初夏の海にアカショウビン’も傑作。画面上部の大きなビロウの木の下で、くちばしの長い鳥アカショウビンが尖った岩に足をかけ休んでいる。その印象的な姿から視線を遠くにやると明るい海が広がっている。ぱっとみるとビジーな感じだが、それは気にならず、奄美の自然の命をクリアに感じ取れる構図の作り方に感動する。

一村の奄美を描いた絵に関連して出てくる画家は熱帯雨林に魅了されたルソーやタヒチに渡ったゴーギャンであるが、日本の伊藤若冲を彷彿とさせる作品もある。それが濃い密度の画面構成と緑の力に目が釘付けになる‘不喰芋と蘇鉄’と装飾性豊かにモチーフを繊細に表現した‘草花に蝶と蛾’。そして、南国らしいカラフルな色彩がどっと目にとびこんでくる‘熱帯魚三種’は魚図巻風にならないように上から細い草花を垂らし洒落た味付けにしている。すばらしい!

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2023.07.22

美術で‘最高の瞬間’! 石田徹也

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    ‘燃料補給のような食事’(1996年 静岡県美)

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    ‘接触’(1998年頃 CBコレクション)

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    ‘父性’(1999年)

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    ‘囚人’(1999年頃 CBコレクション)

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    ‘面接’(1998年頃 CBコレクション)

東京都の練馬区美は好感度の高い美術館でHPをみて企画展の予定を定点観
測している。2008年にここで石田徹也(1973~2005 静岡県焼
津市の生まれ)の回顧展が開催された。このとき出品された70点により、
惜しくも31歳の若さで亡くなったこの画家のイメージがおおよそつかめた。
どういう作品がインプットされ石田に関心をもつようになったかあまり覚え
ていないが、火をつけてくれたのがシュルレアリズム絵画であることははっ
きりしている。

もっとも惹かれているのが‘燃料補給のような食事’。これをみてすぐ思い浮か
んだのがマグリットで、石田徹也は‘日本のマグリット’と思った。絵画鑑賞が
趣味でないサラリーマンにこの絵をみせたら、多くの人がこのタイトルに納
得し、現代アートに興味をいだくにちがいない。石田がスゴイのは現代社会
における見慣れた光景を鋭くみていること。朝、出勤時に駅の構内や周辺で
あるお店で食事をとるときはこんな感じでせわしなくエネルギーを補給され
る。

そして、仕事が終わったあと直行する居酒屋の店内での様子がよく
でている‘接触’もぐっとくる。感心するのが缶ビールやキャベツなどの驚く
ばかりの質感描写。ビールを客のコップについでいるのは店員の人手不足を
カバーするために投入されたミニショベルカー。ロボット使用を時代を先取
りするように20世紀の末にしっかりイメージできている!

‘父性’は例外的に怒った頑固おやじが描かれている。ひっくり返ったこたつ
の足は父親の手足がなっているのがおもしろい。こんな体が一気に縮じまる
人物描写はボスの絵をみるよう。そして、目が点になるのが畳の目の繊細で
リアルな表現。これほど畳の質感にびっくりしたのは速水御舟の絵のほかに
はみたことがない。家ではときどき大爆発する父親の乱行にあい、小学校へ
行くと規則でがんじがらみにされる。‘囚人’をみるとこれが腹にすとんと落ち
る。学校を卒業して社会人になるために受ける‘面接’もそのシュールな感覚
にはっとする。

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2023.07.21

美術で‘最高の瞬間‘! 有元利夫

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    ‘室内楽’(1980年 東近美)

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    ‘花降る日’(1977年 三番町小川美)

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    ‘春’(1979年 三番町小川美)

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    ‘一人の夜’(1982年 三番町小川美)

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    ‘雲を創る人’(1983年 三番町小川美)

東博や東近美では特別展を目的にでかけた際、時間に余裕があるときは平常
展にも寄ってみることが多い。その積み重ねで日本美術の流れをつかむこと
ができ、新たに発見した洋画家がどんどん増えていく。東近美の場合、近代
日本画だけでなく、近現代アートで活躍している日本の画家と巡り合う機会
も多い。38歳で亡くなった有元利夫(1946~1985)を知ったのは
平常展をぶらぶらしていて代表作‘室内楽’に遭遇したから。

‘室内楽’は不思議な絵だが、日本の画家が描いた感じがしない。真ん中の半身
裸婦は彫刻的に様式化されており、絵全体の質感はフレスコ画をみているよ
う。テーブルの後ろの壁に描かれている青い空と白い雲はすぐびびっとくる。
そう、シュルレアリストのマグリットの作品が浮かんでくる。古典絵画と
マグリット調が融合している、どこからこのアイデアは生まれてきたのか。

とても気になる画家に出会ったという思いだったが、ほかの作品はどこ
にいけばみれるのかさっぱりわからない。それが解消されたのが2007年
横浜そごうで開かれた回顧展。そして、3年後にまた回顧展があった。今度
は東京都庭園美。これにより画業の全貌にふれることができた。どの作品で
も描かれる人物は一人の女性だけ。思わず惹きつけられるのが‘花降る日’、
人形のような女性が山を登っている。ダンテの神曲を題材にした古典絵画で
これとよく似た絵をフィレンツでみたことがある。宙を舞う綺麗な花びらに
心が寄っていくが、上から出てくる金箔を使った細い線の束にも注意が集中
する。

‘春’は横向きの女が手にもつ白とうすピンクの花びらと背景の山の形をした
フォルムが強く印象に残る。山と女の形は相似形になっているようですごく
安定感がいい。有元はルネッサンスのピエロ・デラ・フランチェスカに大き
な影響をうけたが、‘一人夜’をみるとアンリ・ルソーにも思い入れがあるこ
とがわかる。フィラデルフィア美でお目にかかった‘カーニヴァルの夜’の下
の木々の描き方が酷似している。さらに興味深いのが‘雲を創る人’、マグ
リット風の空と雲がでてくるとは全く予想外だった。シュールな絵にもイメ
ージが広がるのだからほとほと感心させられる。有元利夫に乾杯!

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2023.07.20

美術で‘最高の瞬間‘! 高島野十郎

Img_0002_20230720221501     ‘絡子をかけたる自画像’(1920年 福岡県美)

Img_0003_20230720221501     ‘雨 法隆寺’(1965年頃)

Img_0005_20230720235801     ‘リンゴの木のある風景’(部分 1948年以降)

Img_20230720221501     ‘からすうり’(1948年以降)

Img_0001_20230720221501     ‘蝋燭’(1912~26年 福岡県美)

2006年、東芸大美でとても興味深い‘日曜美術館30年展’が開かれた。
美術が好きな人にとっては日曜のルーティンになっているNHKの
‘日曜美術館’が放送開始から30年経ったので、注目度の高かったものや
スポットのあたった話題の作品や画家を思い出してみようという高企画の
特別展だった。そのなかにまったく知らなかった画家が登場した。
1993年12月19日に放送された‘高島野十郎 孤高の精神’、これは
見逃したので思わぬリカバリーになった。

高島野十郎(たかしまやじゅうろう 1890~1975)は福岡県久留
米市の出身で画壇とは一切交流を絶ち、長いこと無名の謎の画家だった。
世に知られるきっかけをつくったのが1986年に福岡県美で開かれた
高島野十郎展。当時はまだ絵画鑑賞が趣味になった入口の頃だから、無
名の画家の回顧展は知る由もない。29歳のとき描かれた‘絡子をかけたる
自画像’は凄味のある表情をした野十郎がけわしい目にじっとこちらをみて
いる。高倉健のやくざ映画のワンシーンのようでタジタジになった。

風景画では‘雨 法隆寺’が忘れられない。この絵は東芸大美には出品されな
かったが、2016年、目黒美で行われた‘没後40年 高島野十郎展 
光と闇、魂の軌跡’で運よくお目にかかることができた。視線が集中する
のは雨の描き方。まさに五重塔がしきりに降る雨の中に建っていると
いう感じ。このリアルな写実表現に驚愕した。これまでこれほど雨を実感
する風景画はみたことがない。目黒美に集結した風景画には感心するもの
が多くあった。その一枚が‘リンゴの木のある風景’。広々とした構図の取り
方と明るい光の表現が大変上手い。

野十郎の最大の収穫は静物画の‘からすうり’。本物のからすうりが目の前に
あるよう。この細部にわたる超絶質感描写をみたら、岸田劉生が描いた
セザンヌ風の静物画にこれを加えて一緒にベストワンにせざるをえない。
ほんとうにスゴイ絵。連作の‘蝋燭’も心に深く刻まれる作品。炎のゆらゆら
感と赤の強さが目に焼きついている。

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2023.07.19

美術で‘最高の瞬間‘! 棟方志功

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    ‘華狩頌’(1945年)

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    ‘二菩薩釈迦十大弟子’(1939年 棟方板画美)

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    ‘弁財天妃の柵’(1974年 棟方板画美)

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    ‘御吉祥大辨才天御妃尊像図(1966年 青森県美)

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    ‘御群鯉図’(1940年 大原美)

わが家にある展覧会の図録のなかで数が多いグループに入っているのは横山
大観、上村松園、鏑木清方、竹久夢二、棟方志功、東山魁夷。棟方志功
(1903~1975)と縁の深い美術館というと東京の日本民藝館、鎌倉
の棟方板画美(今はない)、倉敷の大原美、そして青森の棟方志功記念館。
美術館に足を運んでみたり、ほかの美術館で開催された棟方志功展にもせっ
せと顔を出した。今年は生誕120年にあたるので秋に東近美で久しぶりの
特別展(10/6~12/3)が行われる。とても楽しみで、まわりの美術フ
ァンに薦めている。

色のつかないモノクロの木版でお気に入りは‘華狩頌’。中国にある高句麗古
墳の狩猟壁画をもとにして、空の四方にむけて綺麗な削り矢を放つというア
イヌの祭りの儀式が描かれている。普通なら弓や鉄砲がでてくるところだが、
花だと心で狩るという表現になっている。すごく心に響く傑作である。
ヴェネツィア・ビエンナーレ展で国際版画大賞を受賞した‘二菩薩釈迦十
大弟子’によって棟方志功は‘世界のムナカタ’になった。一人一人の表情やアク
ションやポーズが内面をよくとらえた力強いフォルムで見事に描かれている。

鎌倉の棟方板画美にはよくクルマで通った。ここでみた棟方板画によってだ
んだん棟方ワールドができあがっていった。墨がどんと目に入ってくる大作
がある一方で、色つきの‘弁財天妃の柵’のように天平美人を思い出させる豊満
な女性に目を楽しませてもらった。この絵が棟方の美人画にのめりこむきっ
かけとなったが、青森県美でも思わず、おおーとなる傑作に出会った。それ
が大きな絵の‘御吉祥大辨財天御妃尊像図’、これは木版ではなく肉筆で色も多
く衣服には金彩が施されており、リズミカルな輪郭線や衣文線に強く惹きつ
けられた。同じような絵が日本民藝館にもある。

大原美にも肉筆の傑作がある。六曲一双の‘御群鯉図’に描かれているのは緋鯉
32匹。紙の柔らかな白と鯉の緋色のコントラストが目に心地よく、池をゆっ
たり泳ぐ鯉の動感描写を息を呑んでみていた。これは大原孫三郎の還暦祝いに
描かれたもので、回顧展にはあまりでてこない。秋の回顧展で再会できそうな
予感がするのだが、果たして。

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2023.07.18

美術で‘最高の瞬間‘! 山下清

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    ‘長岡の花火’(1950年)

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    ‘桜島’(1954年)

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    ‘群鶏’(1960年)

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    ‘ロンドンのタワーブリッジ’(1965年)

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    ‘コペンハーゲンの人魚像’(1961年)

現在、東京都美で開催されている‘マティス展’(8/20まで)は残り1ヶ月
となったので週末は相当混むことが予想される。鮮やかな色彩と無駄を省い
たすっきり構図で鑑賞欲を刺激する切り紙絵をもう一回みようと思っていた
が、どうもそれは無しになりそう。このマティスの晩年の傑作、切り紙絵と
同じくらいすばらしい絵が日本にもある。描いたのは貼り絵画家・山下清
(1922~1971)。

昭和の人気テレビドラマ‘裸の大将放浪記’はよくみていたので、放浪の画家、
山下清には親しみが湧く。でも、回顧展にであったのは1回しかない。回顧
展は2回遭遇するのが理想なのだが、嬉しいことにこれが実現する。今日の
朝日の夕刊に載った美術館の展覧会情報によると、SONPO美で‘山下清展 
百年目の大回想’(9/10まで)が行われている。これは迂闊だったが、楽
しみが一つ増えた。

代表作‘長岡の花火’は本当に目を楽しませくれる。有名な花火大会のにぎや
かな様子が気の遠くなるような時間とエネルギーを必要とする貼り絵によっ
て見事に表現されている。驚異的な記憶力で行く先々の風景をたくさん描い
た山下清が鹿児島でモチーフに選んだのが‘桜島’。手前の線路はペタッとし
た平板な描き方だが、その向こうの海の表現がすばらしい。近くと遠くの
桜島あたりとは青の点描風の貼り絵が異なっているのにとても惹かれる。

1960年に描かれた油絵の‘群鶏’をみて200%仰天した。ええー、あの
山下清が伊藤若冲の絵をこんなに生き生きと模写していたとは!若冲がこれ
をみたら、裸足で逃げるに違いない。ヨーロッパ旅行したときみた各国の
観光名所を描いた貼り絵にもいいのがある。お気に入りは‘ロンドンのタワー
ブリッジ’。色彩といい構図といい惚れ惚れする風景画である。2018年の
北欧旅行で体験した‘コペンハーゲンの人魚像’(水彩画)も忘れられない。

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2023.07.17

美術で‘最高の瞬間‘! 香月泰男

Img_0004_20230717224701     ‘水鏡’(1942年 東近美)

Img_0003_20230717224701     ‘草上’(1950年)

Img_0002_20230717224701     ‘青の太陽’(1969年 山口県美)

Img_0001_20230717224701     ‘北へ西へ’(1959年 山口県美)

Img_20230717224701     ‘デモ’(1973年 山口県美)

香月泰男(1911~1974 山口県出身)という画家は東近美に頻繁に
通っていたころみた‘水鏡’によってインプットされた。画面に平行におかれた
水槽のどす黒い水面を男の子がじっとみている。顔が見えないこの子は明る
い気質にはとてもみえない。どこか寂しそうで、孤独な気分がそのまま描か
れている。

香月の作品がどどっと増えたのは広島で仕事をしていたとき、山口県美で
開催された大回顧展(2004年)に遭遇し山口県長門市にある三隅町立香
月美を訪問したから。これは願ってもない巡りあわせだった。‘草上’でも丸刈
りの少年は顔はみせない。脱ぎ捨てた白の衣服が後ろ姿の子と呼応するよう
に描かれている。ちょっとマグリットのシュールさをイメージさせる。

回顧展での大きな収穫は香月の名を世に知らしめた‘シベリアシリーズ’が57
点全部みれたこと。敗戦によってシベリアに抑留され2年にわたる強制労働
を強いられ、飢餓と極寒の生活に苦しめられた。その記憶とむきあったの
がシベリア連作。‘青の太陽’は演習の折、自分の穴に出入りする蟻を羨み描い
たもの。蟻になって穴の底から青空だけをみていたい。青の太陽はほかにみ
たことがない。

みてるとジーンとくるのが‘北へ西へ’。虜因の貨車は行く先も告げられぬま
ま北上する。彫刻のような黒い顔で表現された兵隊たちが貨車のわずかな窓
にむらがり不安な表情で外の光景をみている。‘デモ’は早く日本に帰してやる
と言われたのでインターナショナルを歌わされて、スクラムを組んで行進している場面。

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2023.07.16

美術で‘最高の瞬間‘! 須田国太郎 松本竣介

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   須田国太郎の‘法観寺塔婆’(1932年 東近美)

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    ‘書斎’(1937年 東近美)

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    ‘犬’(1950年 東近美)

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    松本竣介の‘立てる像’(1942年 神奈川県近美)

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     ‘並木道’(1943年 東近美)

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     ‘黒い花’(1940年 岩手県美)

洋画家の回顧展をみているときはこれまで馴染んだ西洋画の中から似た画風
の作品がないか思いめぐらしている。幸い美術書や回顧展の図録などがだい
ぶ揃ってきたので即興スピードチェックでひっかかるものもでてくる。でも、
トップレベルにいる洋画家の絵心は豊かでその技量は高く、刺激をうけた作
品を消化したうえで独自の表現にたどり着き、画壇に新風をふきこむ。

2006年、東近美で回顧展に遭遇した須田国太郎(1891~1961
 京都市生まれ)はすでに平常展に知っていた‘法観寺塔婆’などのほかに刺
激の強い作品をたくさん描いていた。びっくりしたのがティツィアーノ、
ティントレット、グレコの作品の模写。どれも本物かと見まがうばかりの出
来栄え。ええー、国太郎はこんなに上手に古典西洋画を模写できるの!こん
なすごい腕をもった画家が日本の五重塔をモチーフにしてぴんと張り詰めた
ような空間を表現していたのである。

‘書斎’で右の黒のシルエットで描かれた眼鏡をかけた人物をみているとデ・
キリコの絵が浮かんでくる。そして、日本の家々バックにして描いた‘犬’も
ドラクロアやデ・キリコの描き方に似ている。デ・キリコが遠くに立派な
洋館をみせて前に花を大きく描いたのに対し、国太郎はインパクトある赤い
目をした黒犬を立たせている。

本籍地東京で小さい頃の現住所が岩手県だった松本竣介(1912~
1948)の絵に大変魅せられている。一番好きなのは‘立てる像’だが、
この絵も‘並木道’もアンリ・ルソーの作品に影響をうけていることはすぐわか
るが、日本の都市のもっている雰囲気はずいぶん暗くで寂しい。竣介には
もうひとり、シャガールを連想させる作品もある。それは赤一色の画面に
人物や建物を丁寧かつ芯の強い線で描いた‘黒い花’。ほかには‘都会’や‘街にて’
がある。

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2023.07.15

美術で‘最高の瞬間‘! 林武 前田寛治

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    林武の‘富士’(1965年)

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    ‘少女’(1963年 東近美)

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    ‘三味線’(1964年 笠間日動美)

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    前田寛治の‘赤い帽子の少女’(1926年 兵庫県美)

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    ‘少年の像’(1928年 ウッドワン美)

今年の4月から東京都美で開かれている‘マティス展’は4ヶ月のロングラン
興行(8/20まで)。マティスがはじめた色彩の革命、フォーヴィスムは
ピカソのキュビスム同様、西洋絵画に大きなムーブメントをおこした。
人物でも風景でも実際の色でなく画家の心に浮かんだ色彩で自由に描けばい
いのだから、誰もがその色彩表現に戸惑う。2018年、デンマークのコペ
ンハーゲン国立美で女性の顔に緑のすじが入った‘マティス夫人’にお目にか
かった。フォーヴィスムを一番感じた肖像画だったので、感動した。

日本のフォーヴィストでもっともマティスを思わせるのはズバリ、林武
(1896~1975)。風景画では何点も描いた富士山がすぐ頭に浮かん
でくる。富士山は明治以降になっても日本画家や洋画家の表現意欲を刺激し
続けている。横山大観、横山操、片岡球子、福王寺法林、棟方志功、梅原龍
三郎、、林の赤富士は強烈な色彩によって端正な姿をした富士が一転して
激しく唸り、躍動しているようにみえる。

人物画は一段とマティス風の色彩感覚となり、さらにゴッホ的な力強さも加
わる。東近美でお目にかかった‘少女’は背景の濃い黄色が少女の顔と手にも使
われているので一瞬体がフリーズした。黄色と黒のコントラスがこれほど強
い力をもっている絵はほかに知らない。この黄色パワーは翌年に描かれた
‘三味線’にも受け継がれる。これは笠岡日動美にとっては自慢のコレクション
にちがいない。

19歳で幕内力士になった伯桜鵬(はくおうほう、落合)は鳥取県の倉吉市
の出身、今日は遠藤に勝った(5勝2敗)。倉吉は広島で仕事をしていると
き2度訪問したが、この街からは有名な洋画家がでている。藤島武二に師事
した前田寛治(1896~1930)。とくに魅了されているのはおっとり
して優しい感じのする‘少女’と志の高そうな‘少年の像’。

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2023.07.14

美術で‘’最高の瞬間‘! 岡鹿之助

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    ‘雪の発電所’(1956年 アーティゾン美)

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    ‘岬’(1975年)

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    ‘水辺の城’(1968年 長谷川町子美)

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    ‘献花’(1971年)

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    ‘遊蝶花’(1951年 下関市美)

洋画家の絵がたくさん展示される回顧展に出かけたとき、これをみて外国
の西洋画愛好家がどう評価するかをよく考える。日本的な油絵とみるかワー
ルドクラスで通用する絵として魅了されるか。たとえば、岡鹿之助(1898
~1978)は後者の画家として注目されるのはまちがい。2008年、は
じめて遭遇した回顧展(ブリジストン美)をみてて国内にも海外にも岡の絵を
欲しがるコレクターは大勢いるなと思った。

もっとも有名な‘雪の発電所’は日本画家だととりあげないモチーフ。発電所に
目をつけたのは水平線と垂直線からできあがる角々した幾何学的な造形と水路
が走る安定感のある三角形、電柱とによって自然と建物がうまく溶け合った
立体的な画面をつくりたかったから。旅のガイドブックに載るような風景では
ないが、思わず見入ってしまう傑作である。

岡の作品からすぐ思い浮かぶ画家が二人いる。‘岬’で大きく描かれた白い燈台
は同じモチーフの絵が何点もあるホッパー。違いはホッパーの燈台は画面に光
が眩しいくらいあふれているのに対し、岡の絵は最接近するとスーラの点描
法のように小さな粒子にまみれている感じ。そのため、風景の神秘的な雰囲気
が漂っているようにみえてくる。点描法の魅力が全面的にでているのが‘水辺の
城’。左右対称な城館は前の水面に反射してもその対称性は保たれている。岡は
アンリ・ルソーからも影響をうけており、左右の平面的に描かれた並木にそ
れがみてとれる。

静物画にもいいのがたくさんある。お気に入りは点描的な表現を横に置くと
ルドンやキスリングを連想させる‘献花’。様々な種類の花をずらっと揃えた豊か
な色彩表現が目を楽しませてくれる。こういう見栄えのする花の絵はそうはな
い。‘遊蝶花’は構図がすばらしい。手前に三色すみれ(パンジー)を美しく描き、
その向こうに積もった雪と礼拝堂をみせ奥行き感のある画面をうみだしている。

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2023.07.13

美術で‘最高の瞬間‘! 古賀春江 北脇昇 靉光

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   古賀春江の‘海’(1929年 東近美)

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    ‘窓外の化粧’(1939年 神奈川県近美)

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    ‘単純な哀話’(1930年 アーティゾン美)

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   北脇昇の‘クォ・ヴァディス’(1949年 東近美)

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   靉光の‘眼のある風景’(1938年 東近美)

今週の土曜日(15日)から東京都現美で開幕する‘デイヴィッド・ホックニ
ー展’(11/5まで)への期待が高まるが、大相撲7月場所が終わったあと
出動していることにしている。今日は福島市出身の若元春と盛岡市生まれの
錦木の一番でなんと錦木が一気の寄りで完勝した。錦木は覚醒したかもしれ
ない。ホックニーのあとはポンピドー蔵の作品がどどっとやって來る‘キュビ
スム・レボリューション’(西洋美 10/3~1/28)が大きな楽しみ。

ポンピドーのコレクションを披露する特別展は2011年に国立新美でシュ
ルレアリスム展は行われているので、今回はキュビスムの番。シュールな絵
には目が無いので前のめりになってみたが、そのなかにイヴ・タンギーがあ
った。その作品のシュールさは深海の静謐な世界にフィギュアの一部のよう
な得体のしれない物体がなんら脈絡もなく置かれているイメージ。日本のシ
ュルレアリストとして名の知られた古賀春江(1895~1933)はタン
ギーをちょっと思い起こさせる。とくにそれを感じさせるがアーティゾン美
にある‘単純な哀話’。

東近美ではじめて‘海’をみたときは戸惑いが二つあった。プレートには古賀
春江とある。普通は女流画家と思う。でも、古賀は男性で久留米市で浄土真
宗のお寺の住職の長男として生まれた。画面の右で天を指さすモダンガール
が視線を釘付けにする。その前に目を移すと海底が広がり魚と潜水艦がみえ
る。シーンとはしてないがどこがタンギーあるいはクレー風。海面には帆
船が浮かび、空には飛行船が鳥とともに飛んでいる。たしかに意味のつなが
りがすぐには理解できないシュールさがつまっている。これが日本のシュル
レアリス絵画か、という感じだった。次に遭遇した‘窓外の化粧’は目が慣れ、
しばらくながめることができた。

古賀のほかで思わず足がとまったシュルレアリスム画はガリバーの物語を連
想させる北脇昇(1901~1933)の‘クォ・ヴァディス’と同じく東近美
に定期的に展示される靉光(あいみつ 1907~1946)の‘眼のある風
景’。北脇の作品はやはりダリと結びつくし、不気味でギョッとさせる‘眼のあ
る風景’はエルンストのイメージと重なってくる。

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2023.07.12

美術で‘最高の瞬間‘! 村山槐多

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    ‘バラと少女’(1917年 東近美)

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    ‘湖水と女’(1917年 ポーラ美)

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    ‘自画像’(1916年 三重県美)

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    ‘紙風船をかぶれる自画像’(1914年)

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    ‘庭園の少女’(1914年 福島県美)

1919年(大正8)にスペイン風邪にかかり亡くなった洋画家は関根正二
のほかにもう一人いた。22歳で生涯を閉じた村山槐多(かいた 1896
~1919)。洋画家の物語は情報が少なく岸田劉生の麗子像くらいしか
エピソードがまとまって記憶されてなかった。そのため、関根にしても槐多
にしても、夭折の画家としてインプットされて終わり。

でも、関根に比べれば槐多に目が慣れているのは東近美で‘バラと少女’を何度
もみることができたから。赤い頬ぺたが印象的な娘がたくさんのバラの花に
囲まれている。関根も‘姉弟’で同じように花を添えており、二人の描く人物画
は全体的に似た感じがある。

しかも、自画像でも女性画でも人物の圧がとても強いことも共通している。
ポーラ美にある‘湖水と女’はまだ一度しかお目にかかってないが、2009年
渋谷区立松濤美で開催された回顧展では、着物姿の女性の圧倒的な存在感に
思わず後ずさった。そして、‘自画像’でみせる槐多の鋭い視線と白や紫、黄色
の大胆な色使いに強烈に惹きつけられる。萬鉄五郎同様、一流の表現主義の画
家として村山槐多の画才は輝いている。

水彩画の‘紙風船をかぶれる自画像’と横向きに女の子を描いた‘庭園の少女’も
回顧展の大収穫。紙風船の柔らかい赤・黄色の色と遊び心のある槐多の表情が
目にやきついている。

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2023.07.11

美術で‘最高の瞬間‘! 関根正二

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    ‘子供’(1919年 アーティゾン美)

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    ‘少年’(1917年)

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    ‘信仰の悲しみ’(重文 1918年 大原美)

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    ‘三星’(1919年 東近美)

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    ‘姉弟’(1918年 福島県美)

東北にある美術館でこれまで足を運んだのは山形美、福島県美、青森県美だ
け。今年は秋に藤田嗣治の大作をみるため秋田県近美に出かけることを計画
をしているが、まだ具体的な日程は決まってない。ついでに盛岡県美にも足
をのばすことも検討中。大相撲7月場所がはじまったが、岩手県出身の錦木
が昨日は横綱照ノ富士をぶん投げた。岩手がぐっと近くなった感じ。相撲は
大好きなのでつい脱線するが、福島県の相撲ファンは今場所は応援に熱が入
るだろう。県民期待の力士は大関への昇進を目指す若元春。今日は正代に
負けたが、大丈夫!明日からまた勝ち星を積み重ねていくだろう。

福島県にはすごい洋画家がでた。20歳の若さで亡くなった関根正二
(1899~1919)。福島県美を訪問したのは気になる企画展があった
からなのだが、関根とワイエスの絵をみることも頭のなかに入っていた。
ミニ関根展を開催中で‘自画像’や‘風景’など7点みることができた。関根正二
を知ったのは日曜美術館(1976年)でとりあげられたのをみていたから。
9歳の関根が東京に移ってきたとき友達だった直木賞作家の今東光が親友の
天才ぶりを熱く語っていた。番組に登場した‘子供’の目の覚める赤、‘関根の
バーミリオン’が強烈だった。のちにブリジストン美(現アーティゾン美)
で本物と対面したときは、背景の青に浮き上がる衣服の赤の力に200%魅
了された。

‘少年’では子どもにしては目がきつすぎる男の子の真っ赤な頬が印象深い。
この強い目力が正面からつき刺さってくるような感じなのが東近美の平常展
で定期的に展示される‘三星‘。真ん中が関根で向かって左が姉、そして右が恋
人。とても圧の強い群像表現となっている。一番大事な顔を赤を多用して生
き生きと描いているため、存在感にある人物画に仕上がっている。

‘信仰の悲しみ’は女性5人の群像画、目のくっきりした丸顔の女性たちが片足
を前に出すポーズで描かれている。一人だけ赤が使われているが、この女性
は恋人のイメージ。一度見たら忘れられない作品である。横からとらえられ
た‘姉弟’は手前の花の咲き乱れる野原のすごく効果的で装飾的な花園の雰囲気
がでている。

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2023.07.10

美術で‘最高の瞬間‘! 梅原龍三郎

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    ‘紫禁城’(1940年 永青文庫)

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    ‘北京秋天’(1942年 東近美)

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    ‘雲中天壇’(1939年 京近美)

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    ‘朝陽’(1945~47年 大原美)

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    ‘竹窓裸婦’(1937年 大原美)

梅原龍三郎(1888~1986)と安井曾太郎(1888~1955)は
同じ年に同じ京都の街で生まれた。のちに誰でも知っている有名な洋画家に
なるのだから、興味をそそる芸術家物語である。そんな二人だが、NHKの
日曜美術館など美術番組を長くみているのに、どういうわけか二人を特集し
た番組に遭遇したことがなく、大規模な回顧展にも縁がない。ふつうなら、
手元に立派な図録が1冊や2冊はあってもいいのに本棚には満足なレベルに
は達しないものが1冊ずつ並んでいるだけ。

梅原でもっとも惹かれているのは1936年から1943年にかけて毎年で
かけていた北京で描かれた風景画。最初にお目にかかったのが東近美にして
あった‘北京秋天’。この絵で視線が集中するのは空の描き方。ルノワールから
学んだ描法で、青や緑の絵の具を薄くのびやかに筆をはこび光と淡い秋の空
を見事に表現している。ここにも紫禁城がとらえられているが、2年前には
すばらしい‘紫禁城’を梅原は描いている。これを目白の永青文庫でみたときは
体が震えるくらい感動した。言葉を失い、まさに‘最高の瞬間!’だった。

1994年、念願の中国旅行が実現し、西安、北京、万里の長城を訪問した。
北京では紫禁城をみたあと、ガイドさんがやりくりしてくれ予定になかった
天壇に連れて行ってくれた。丸い円盤を3つ重ねたようなフォルムがとても
いい。そのため、京近美で‘雲中天壇’に会うとすぐそのときの感動がよみがえ
ってきた。傑作である!日本の山々を描いたものでは大原美にある‘朝陽’が忘
れられない。ほかにも富士山のいい絵があると思っているが、回顧展に恵ま
れないので姿を見せてくれない。

人物画で惹かれているのは‘竹窓裸婦’。梅原は印象派のルノワールから影響を
受けた色彩の画家だが、この緑色の裸婦をみるとマティスのフォーヴィスム
を連想させる。強烈な緑に目をとられ男性のような足や手が気にならない。
これをマティスがみたら裸足で逃げだすだろう。

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2023.07.09

美術で‘最高の瞬間‘! 安井曾太郎

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    ‘金蓉’(1934年 東近美)

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    ‘婦人像’(1930年 京近美)

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    ‘外房風景’(1931年 大原美)

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    ‘承徳の喇嘛廟’(1937年 永青文庫)

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    ‘薔薇’(1932年 アーティゾン美)

美術品のコレクターは財力があるかぎり好きな絵画や陶磁器を集める。一方、
コレクションには縁がない普通の美術愛好家は本物の傑作を求めて美術館へ
足を運ぶ。これを何年も続けていると入館料の費用だけ名画や名品をとこと
ん楽しめる。だから、人気の画家や陶芸家の作品を結集させた回顧展の開催
については常日頃から定点チェックなどをして情報を見逃さないようにして
いる。

東近美で回顧展を開いてくれないかと強く希望しているのが安井曾太郎
(1888~1955)。回顧展は残念なことに肖像画を軸にしたものを一
度みただけ。そのため、あまり作品が載っていない画集と肖像画を足しただ
けの数しか目の中に入ってない。大観展のように何度もでかけると画業の
全貌はだいたいつかめてくるが、安井の場合、まだまだ知らない名画がある
のではないかという気がしている。

安井の画風のイメージができあがったのは東近美でよくお目にかかった’金蓉’。
はじめのころはモデルの女性は中国服を着た中国人と思っていた。日本人も
中国人もアジア人だから同じにみえる。たとえ、中国の女性であっても構わな
い。いつも、感心してこのすばらしい肖像画をながめている。この絵の4年前
に描かれた‘婦人像’はドキッとしするほど美しい女性が椅子に座り今度は着物
姿でポーズをとっている。古い日本映画にでてくる女優は皆こんな顔や髪型を
しているから、映画のワンカットをみているような感じ。

風景画では大原美にある‘外房風景’と明快な色彩が心を打つ‘承徳の喇嘛廟’に
魅了され続けている。すぐれた人物画というイメージが強かった安井だが、
大作の‘外房風景’をみたときは洋画家が描いた風景画ではこれが一番いいとい
う印象をもった。生き生きとした自然の息吹とパノラマ風の広々とした画面構
成が心をとらえて離さない。永青文庫でようやく対面が叶ったラマ廟の絵は
黄色とピンクの組み合わせが目に心地よく、まるで有名なホテルをながめてい
るよう。安井はまたすぐれた静物画家でもある。お気に入りは‘薔薇’。これなら
毎日みたくなる。

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2023.07.07

美術で‘最高の瞬間‘! 山下新太郎 中村彝

Img_20230707223001     山下新太郎の‘読書の後’(1908年 泉屋博古館東京)

Img_0001_20230707223001      ‘読書’(1908年 アーティゾン美)

Img_0002_20230707223001      

‘端午’(1915年 アーティゾン美)

Img_0003_20230707223001    中村彝の‘エロシェンコ氏の像’(重文 1920年 東近美)

Img_0004_20230707223001      

 ‘少女裸像’(1914年 愛知県美)

フィレンツェのウフィツィ美でみたボッティチェリの‘ヴィーナスの誕生’に感
動して以来、女性画の傑作を追い求めている。女性の美しさをかぎりなく表
現した作品は時代毎に途切れることなくバトンを受け渡すように生み出され
ており、印象派の時代にその頂点がやってくる。その画家はマネとルノワー
ル。この二人は日本画への思い入れでいうと上村松園と鏑木清方の美人画と
同じ関係。では、洋画では誰かというと、ずばり藤島武二と山下新太郎
(1881~1966)。

黒田清輝に師事した山下を知ったのは絵画鑑賞が趣味になってからのこと。
東近美の平常展でお目にかかり気になりだしたが、画家との距離がぐんと近
くなったのは泉屋博古館東京で遭遇した‘読書の後’。大変魅了された。藤島
武二もいいが、この外人モデルも優しい感じがして日本人の心の琴線にふれ
る。‘読書’は山下にのめりこむ決定打となった作品。こちらは西洋絵画の
肖像画の定番の画題である読書をする女性が描かれている。小気味よいタッ
チはマネの描き方とも通じる。

アーティゾン美蔵の‘端午’は千葉県の川村記念美で行われた企画展で遭遇した
。劉生の‘麗子像’も飾ってあったが、男の子の絵に思わず足がとまった。そし
て、瞬間的にルノワールの絵を連想した。この幼子は山下の子供で初節句を
描いている。横には柘榴をもった妻を描いた‘供物’が一緒に展示されていた。
この絵もルノワール風。だから、敏感に反応した。

ルノワールに影響された画家はもうひとりいる。茨城県生まれの中村彝
(つね 1887~1966)。代表作の‘エロシェンコ氏の像’は素早い筆致
はルノワールを思い起こさせ、ながくみてしまう。金色に輝くロシアの亡命
詩人をこんに上手に描くのだから、たいした才能である。‘少女裸像’はパトロ
ンの相馬夫妻の娘がモデルとつとめている。みずみずしい若さにあふれた
少女に200%KOされた。

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2023.07.06

美術で‘最高の瞬間‘! 萬鉄五郎 小出楢重

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   萬鉄五郎の‘裸体美人’(重文 1912年 東近美)

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    ‘赤い目の自画像’(1912年 岩手県美)

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    ‘雲のある自画像’(1912~27年 岩手県美)

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   小出楢重の‘帽子をかぶった自画像’(1924年 アーティゾン美)

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     ‘子供立像‘(1923年 山種美)

絵画鑑賞が趣味となってからは頻繁に通う美術館がいくつかできた。日本
絵画は東博、浮世絵は東博と太田記念美、近代日本画は東博、東近美、
山種美、そして洋画は東近美、東博、東芸大美。洋画ついては美術の教科
書で知った画家はごく限られているので、東近美に足を運ぶことにより
洋画の世界が大きく広がった。

所蔵作品をローテーションしながら一定の期間展示していく東近美の平常
展を繰り返しみていると、作品の見方がだんだん変わっていくことがある。
たとえば、岩手県出身の萬鉄五郎(1885~1927)の‘裸体美人’は
はじめの頃は裸婦のポーズが大胆すぎてあまり長くはみてなかった。とこ
ろが、何度も対面しているうちに肌色、下半身にまとった布の赤、緑の草
原の色彩表現をゴッホの絵と同じように前のめりで楽しむようになった。

そして、萬の評価が決定的に高くなったのが‘赤い目の自画像’。おおげさ
にいうとこの絵はドイツ表現主義の画家のキルヒナーと同じレベルの出来
栄えである。画面の多くを占める目の覚める赤、眼のまわりの黄色や青の
効果的な使い方がズシンと腹に響く。このレベルなら日本の画家ではなく
藤田嗣治のようにヨーロッパ画壇で認められる画家として注目される。
‘雲のある自画像’は髪の紫が鬱の表情を浮き彫りにし、頭の上の落花生の
ような形をした雲はどこかシュールな感覚をうみだしている。萬の回顧
展はまだ1回しか遭遇してないので、東近美での開催を強く望んでいる。
果たして、実現するだろうか。

小出楢重(1887~1931 大阪生まれ)は縁の薄い洋画家。‘重要文
化財の秘密’(3~5月、東近美)に出品された‘Nの家族’はやっとみたとい
う感じになった。大原美でみているはずなのになぜか絵の実感がないため、
小出というとアーティゾン美にある‘帽子をかぶった自画像’で画風が摺りこ
まれている。すっきりした構成によって自信満々の画家の姿をストレート
に表現している。劉生の‘麗子像’が女の子の肖像画の代表なら、男の子は
楢重の‘子供立像’を並べたい。

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2023.07.05

美術で‘最高の瞬間‘! 岸田劉生

Img_20230705223901      ‘麗子微笑’(重文 1921年 東博)

Img_0002_20230705223901    ‘二人麗子図(童女飾髪図)’(1922年 泉屋博古館東京)

Img_0004_20230705223901      ‘麗子肖像(麗子五歳之像)’(1918年 東近美)

Img_0001_20230705223901     ‘静物(土瓶とシュスの布と林檎)’(1917年)

Img_0003_20230705224001     ‘道路と土手と堀’(重文 1915年 東近美)

女性を描いた絵をみるのが絵画鑑賞の一番の楽しみとなっているため、画家
への深い愛着度は作品の中に心を打つ女性画があるかで決まってくる。西洋
画家では‘モナ・リザ’のダ・ヴィンチ、‘ヴィーナス’のボッティチェリ、‘聖母
子像’のラファエロ、‘王女マルガリータ’のベラスケス、‘真珠の首飾りの少女’
のフェルメール。では、日本の洋画家では誰か。もちろん‘麗子像’の岸田劉生
(1891~1929)。

たくさん描かれた麗子像で‘最高の瞬間’を感じるのはやはり‘麗子微笑’。この
とき麗子はまだ8歳なのにエジプトの女王を思わせる神秘的な表情をみせて
いる。泉屋博古館東京が所蔵する‘二人麗子像(童女飾髪図)’もお気に
入り。二人の麗子を同じ画面に登場させ髪飾りをつけあうという場面設定に
驚かされる。劉生にこんなシュールな感覚があったとは!麗子像でもっとも
多くみているのが‘麗子五歳之像’。東近美の平常展に通い続ければ一年に何度
も会える。顔がぷくっとふくれた幼子、麗子をそのまま描いている。この最
初の肖像画から15歳になるまで劉生は麗子を繰り返し描いた。未見の‘麗子
住吉詣之立像’との遭遇を待ち望んでいるが、まだその時がこない。

劉生で仰天させられたのは麗子像だけではない。すごい静物画がある。‘静物
(土瓶とシュスの布と林檎)’をはじめてみたときはセザンヌの林檎の絵をみ
ているような気がして大変興奮した。こんな写実性の高い静物画が描けるなん
て、セザンヌがこれをみたら裸足で逃げるだろう。

重文に指定されている‘道路と土手と堀’は通りの土の質感描写に驚愕する。しかも、細い草木の影が地面のぼこぼこ感を表すように黒の線をすっとのばさずにニョロニョロとはわせている。ここは急な坂になってようでかなりしんどいかもしれない。それを暗示させるのが左の短縮法で表現された白い石壁。遠くまで奥行きのある光景をみせている。

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2023.07.04

美術で‘最高の瞬間‘! 青木繁

Img_20230704222601     ‘海の幸’(重文 1904年 アーティゾン美)

Img_0001_20230704222601     ‘大穴牟知命’(1905年 アーティゾン美)

Img_0004_20230704222601     ‘わだつみのいろこの宮’(重文 1907年 アーティゾン美)

Img_0003_20230704222601     ‘日本武尊’(1906年 東博)

Img_0002_20230704222701     ‘海景(布良の海)’(1904年 アーティゾン美)

東京駅の八重洲口から歩いてすぐのところにあるアーティゾン美は倉敷の
大原美同様、質の高い西洋絵画のコレクションで多くの美術ファンに親しま
れている。これまで何度も足を運び、カイユボット展のような予想もしなか
った画家の作品なども楽しませてもらった。前のブリジストン美といってい
たときの最大の思い出はやはり2011年に開催された青木繁(1882~
1911)の回顧展。

青木繁というとすぐ思い浮かぶのが‘海の幸’。長い銛(もり)に獲物を担いで
力強く歩く漁師たちの姿が描かれている。じっくりみるとこの絵は先頭と後
ろの人物は仕上がってない感じなのでまだ完成していないのかなと思わせる。
でも、茶褐色で表現された男たちの体が映画のワンシーンにでてくる勇壮な
行進を連想させるので、そんなことは気にせずみつめてしまう。この
中にひとり気になる人物がいる。後ろから4番目はその目のぱっちりした顔
からしてどうみても女性。この発想がすごい。

この女性のイメージが古事記にある物語を題材にした‘大穴牟知命’(おおなむ
ちのみこと)にも現れる。右にいる美形の女性は見る者の視線を独占しそう
なほど強い目力をしている。そして、縦長の画面でラファエロ前派のバーン
=ジョーンズの影響をうけて描かれた‘わだつみのいろこの宮’で木の枝に腰掛
ける山幸彦の下にいる豊玉姫(左)の美しさが目をひく。3人ともモデルは
青木繁の恋人の福田たね。

とてもカッコいい‘日本武尊’の顔は青木自身の顔を描いたといわれているが、
これほどのイケメンぶりだと福田たねのことを思って筆を動かしたとみるほう
があたっているかもしれない。ブリジストン美で千葉県の布良(めら)の海
を描いた‘海景’とみたとき、瞬間的にモネの海の絵が頭をよぎった。こんな
印象派顔負けの海景画を描く青木繁の画才にびっくりした!

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2023.07.03

2023年後半展覧会プレビュー!

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今年後半に開催される展覧会で期待しているものをピックアップしてみた。
☆西洋美術
テート美展    7/12~10/2    国立新美
ホックニー展   7/15~11/5    東京都現美
キュビスム展   10/3~1/28    西洋美
ゴッホと静物画  10/17~1/21   SONPO美
モネ連作の情景  10/20~1/28   上野の森美
マリー・ローランサン展   12/9~3/3     アーティゾン美

☆日本美術
甲斐荘楠音展   7/1~8/27     東京ステーション・ギャラリー
棟方志功展    10/6~12/3    東近美
長沢芦雪展    10/7~12/3    大阪中之島美
やまと絵     10/11~12/3   東博
古伊賀      10/21~12/3   五島美
北宋書画精華   11/3~12/3    根津美

(注目の展覧会)
西洋美術は後半もいいのがずらっと登場する。とても楽しみなのが今月
半ばからはじまる‘テート美展’と‘デイヴィッド・ホックニー展’。テート
自慢のブレイクやターナーをはじめ、近現代アートのカンディンスキー、
ロスコが揃うのだからたまらない。さらにビッグネームのホックニーの回
顧展、久しぶりの東京都現美で長年の夢が叶うなんて思ってもみなかった。

日本美術は東博の‘やまと絵’が最大のアートエンターテイメントになりそう。
まわりの美術ファンにこれを大いに薦めている。東博は1993年に同じ
タイトルで特別展を開催している。そのときの図録はずっと日本絵画のバイ
ブル。チラシをみると国宝の‘源氏物語絵巻‘、‘日月四季山水図屏風’など傑作
の数々が並んでいる。開幕が待ち遠しい。

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2023.07.02

美術で‘最高の瞬間’! 山本芳翠 原田直次郎 和田三造

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    山本芳翠の‘浦島図’(1893∼95年 岐阜県美)

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     ‘西洋婦人像’(1882年 東芸大美)

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    原田直次郎の‘騎龍観音’(重文 1890年 東近美)

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     ‘靴屋の親爺’(重文 1886年 東芸大美)

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    和田三造の‘南風’(重文 1907年 東近美)

岐阜県出身の山本芳翠(1850~1906)が描いた‘浦島図’をみたのは
前田青邨の大回顧展が開かれた岐阜県美。お目当ての青邨をたくさんみれてい
い気持になっていたら、オマケにいいのがあった。その絵が平常展示されてい
た浦島太郎の絵。誰もが知っている日本の説話が西洋画の描き方で表現されて
いる。亀の上に乗り玉手箱をもっている浦島太郎は足元をみると男だが、顔や
髪からするとどうみても綺麗な女性にみえる。まわりに付き添う女たちはニコ
ニコした表情ではしゃぎまくっている。違和感はあるが見てて楽しいこの絵と
対面したことで山本芳翠(ほうすい)という洋画家を知った。

芳翠の作品はまだ両手くらいしか縁がない。評価のランクがまた一段上がった
のが東芸大美でお目にかかった‘西洋婦人像’、とくに引き込まれるのが白いド
レスの描き方。すばやい筆触はまるでベラスケスやマネの肖像画をみているよ
う。200%KOされた。モデルをつとめる聡明そうで美貌の婦人は芳翠がパリ
滞在中に親交をもった女流作家ジュディット・ゴーティエ。

原田直次郎(1863~1899)は東近美の平常展に通っているとき名前を
覚えた洋画家。いつも絵の前に立つと緊張感が走る‘騎龍観音’は日本画を半分、
西洋画を半分みている感覚。橋本雅邦の描く龍とはかなりイメージがちがい、
どこかの中華料理店の壁に描かれているようにみえることもある。なんども
会っているとだんだん魅せられ、重文に指定されたと聞いたときは素直に喜ん
だ。直次郎にはもう一点重文になっているのがある。東芸大美蔵の‘靴屋の親爺’、
こちらは数多くはみてないが、すごい肖像画だなと思う。ドイツに留学中に描
かれたもので靴職人の頑固一徹な性格がしっかりとらえられている。

‘騎龍観音’同様、鑑賞の機会が増えていくにつれて画面にひきこまれていったの
が和田三造(1883~1969)の‘南風’。難破した船の中央に立つ筋肉隆々
の男の姿が圧倒的な存在感を放っている。じっとみているとルーヴルにある
ジェリコーの‘メデューズ号の筏’が思い浮かんでくる。

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2023.07.01

美術で‘最高の瞬間‘! 藤島武二

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     ‘黒扇’(重文 1908~09年 アーティゾン美)

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     ‘チョチャラ’(1908~09年 アーティゾン美)

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     ‘婦人と朝顔’(1904年)

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     ‘東洋振り’(1924年 アーティゾン美)

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     ‘音楽六題 鼓’(1901~06年 ひろしま美)

日本人が描く西洋画については美術の教科書で学んだとき刷り込まれたイメ
ージが強くかかわっている。ビッグ3は黒田清輝、麗子像の岸田劉生、‘海の
幸’の青木繁。黒田と同じ鹿児島生まれの藤島武二(1867~1943)は
あまり響いていなかった。黒田を知っとけばいいか、という感じ。ところが、
絵画の鑑賞が趣味になり本格的に美術館めぐりをするようになると藤島武二
の評価がぐんぐん上がっていった。

鏑木清方の美人画に心底惚れているので、回顧展ではいつも夢中になってみ
ている。洋画でこういう気分になるのが藤島の女性肖像画。これまで回顧展
と2度縁があり、1点を除いて主要作品はだいたいお目にかかることができ
た。以前のブリジストン美(現アーティゾン美)でよくみた‘黒扇’に魅了され
続けている。この絵をみるたびに肖像画で大事なのは目の描き方ということ
がよくわかる。生き生きとした美しい目に心がとろけそう。この絵と同じく
藤島がイタリアに滞在しているときに描かれた‘チョチャラ’と遭遇するのは
ずいぶん待たされた。展示されたのは八重洲ではなくて、2017年、生誕
150年記念の回顧展が開催された練馬区美。端正な小顔が印象的で日本の
画家が描くからなのかイタリア女性のイメージが強くないので、親しみを覚
える。

日本の女性がモデルになった作品で惹かれているのが‘婦人と朝顔’、画面いっ
ぱいに上半身が描かれた美形な女性がこちらをじっとながめている。視線の
圧力が背景の朝顔によって薄められているため、ちょっと後ろにさがればい
つまでもみていられる。演歌歌手の藤あや子がふと頭をよぎった。‘東洋振り’
は中国服を着た女性が横向きで描かれている。横顔の肖像画はイタリアルネ
サンス絵画の影響で、藤島は3、4点制作している。これは最も早いもの。

‘音楽六題 鼓’はアールヌーヴォー風の色彩豊かな作品。この笑顔が本当に可
愛い。ほかには琵琶、三味線でのはちきれんばかりの表情がとてもいい。
藤島は女性の美しさを表現するのが天才的に上手い。

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