メトロポリタン美 VS ワシントン国立美!(26)
モディリアーニの‘ジプシー女と赤ん坊’(1918年 ワシントンナショナルギャラリー)
モディリアーニの‘ホアン・グリス’(1915年 メトロポリタン美)
マグリットの‘白紙委任状’(1965年 ワシントンナショナルギャラリー)
マグリットの‘人間の条件’(1933年 ワシントンナショナルギャラリー)
いろいろなテーマのもので行われる展覧会で最も人気があるのがひとりの画
家に焦点をあて画業全体をみせる回顧展。何回も行われる画家がいる一方で、
一度出くわすのが精いっぱいという画家もいる。モディリアー二(1880
~1920)は後者に入る画家。2008年に名古屋市美ではじめて回顧展
に出くわしたが、それから14年にもなる。1回で終わりかなと思っていた
ら、今年久しぶりに登場する。場所は2月にオープンする大阪中之島美で
会期は4/9~5/22。名古屋市美と同じようにおそらく世界中の美術館か
ら作品を集めてくるのでなかろうか。
画集に載っていてまだお目にかかってないものが何点みれるか、収穫が多い
ことを期待したいが果たして。ワシントンのナショナルギャラリーでみた
‘ジプシー女と赤ん坊’が出品されるなら申し分ない。では、メトロポリタン
蔵はどうだろうか、2008年のときは‘花売り娘’が披露されたが、日本で
行われたメトロポリタン美展に出品された‘ホアン・グリス’とか‘横たわる
裸婦’と再会するのも悪くない。
シュルレアリストのマグリット(1898~1967)の回顧展は
2015年国立新美で行われた。このときナショナルギャラリーの‘白紙委
任状’が宮崎県美が所蔵するもうひとつのヴァージョンと一緒に並べられた。
思わず目が点になるのが馬の体が女性が手綱をもっているあたりで分断さ
れていること。でも、森でこの光景に出くわしたところを想像してみると、
周りの樹々が馬や馬上の女性を垂直の線でカットするようにみえるのはイ
メージできる。錯覚でもそう映ることはある。だから、シュールな作品で
はあるがじつはそれほど不思議な絵でもない。
‘人間の条件’はぱっと見ると何ら違和感はない。どこがシュールなの?しば
らくみていると変な絵であることに気づく。部屋の窓の前にイーゼルが立
てられ、そのキャンバスに外の風景が描かれているのである。
2015年に訪問したメトロポリタンでなんとデルヴォー(1897~
1994)の‘セイレーン’に遭遇した。METにデルヴォーがあったとは!
オデュッセウスが故郷に帰還する途中たくさんの苦難が待ち構えていた。
難所のひとつが‘セイレーンの島’。人間の女性の顔に鳥の身体をもつセイレ
ーンは美しい歌声で船乗りたちを死に追いやる恐ろしい怪物だった。彼女
たちの歌に誘われて上陸したら最後、死ぬまで歌を聞き続けなければいけ
ない。オデュッセウスは部下たちにはしっかりと蜜蝋で耳栓をし、自分は
帆柱に体を縛らせておいた。こういう工夫をして誘惑に敗けずに乗りきっ
た。
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