メリー クリスマス!
You Tube ‘音楽で巡る世界の旅 My Jet Stream’
リッピの‘幼児を礼拝する聖母’(1459年頃 リカルディ宮)
2年前まではクリスマスはいつも飲食店やイベントパークは大賑わいで人々
であふれかえっていた。ところが、今はその楽しさと熱気は新型コロナウイ
ルスの感染のお陰でぐんと萎み繁華街に繰り出す人もかなり減っている。
昨日も今日もケーキ屋さんの前は大勢の人が並んでいた。多くの人は生活ス
タイルを変え家でクリスマスをエンジョイしている感じ。
つい2週間くらい前から、You Tubeで‘音楽で巡る世界の旅 My Jet Stream’
を頻繁に聴いている。‘音楽の定期便 ジェット ストリーム!’は若い人は
縁がないだろうが、シニア世代にとっては懐かしいラジオ番組、記憶が定か
でないが、確か深夜のFM?に流れていた。ナレーションは声がとてもい
い城達也(じょうたつや 声優のはず)。ちょっと聴いてみるか、と軽く
クリックするとあまりの選曲の良さでいっぺんに嵌った。シリーズの一つに
うってつけの‘クリスマス特集 ホワイト・クリスマス’があったのでここ
数日いい気分で聴いている。お馴染みのクリスマスソングを演奏する楽団も
歌手も一流どころがずらっと登場するから、クリスマスモードは否が応でも
高まる。いいタイミングで遭遇したことを喜んでいる。
このTou Tubeがいいのは今流れている曲がどれかわかること。メロディは
聴いた覚えはあるが、タイトルは忘れていたり知らないことはよくある。
だから、琴線にふれるこのメロディラインは○○という曲だったんだ、と
新鮮な発見がある。ドーパミンがどっとでて心地よい快感につつまれる。
ラインナップされた曲が流れ終えるのは1時間くらいだが、いい曲が多いの
で高揚感はずっとプラトー状態のまま。
ヴァリエーションの多さに感心するが、よく聴いているのが‘魅惑のハリウ
ッド 大いなる西部’。ブックオフで西部劇のDVDをせっせと購入している。
今14本。そのなかでこのジェット ストリームに選曲されている主題歌は
‘シェ―ン 遥かなる山の呼び声’、‘駅馬車’、‘アラモ’、‘黄色いリボン’。有名
な‘荒野の七人’はこれを聴くまではパスと決めていたが、昔よく聴いた主題歌
だったことを思い出させてもらったので近々手配するつもり。
フィレンツェのリカルデイ宮でお目にかかった‘幼児を礼拝する聖母’を描いた
のはボッティチェリ(1445~1510)の師匠、フィリッポ・リッピ
(1406~1469)。幼子キリストとまわりで咲き誇る花の美しさに思
わず足がとまった。
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コメント
フィレンツェ・メディチ・リッカルディのベノッツオ・ゴッツォーリ作フレスコ画に囲まれた聖母子の絵「幼児キリストを礼拝する聖母」ですが、残念ながら現在の作品はフィリッポ・リッピの絵ではありません。では、誰の絵かというと、作者名が分からない仮名「偽ピエル・フランチェスコ・フィオレンティーノ」の作とされています。
本物のフィリッポ・リッピの作品はベルリンの絵画館にあります。私がリッカルディ宮のメディチ家礼拝堂に行ったのはもう30年以上前になりますが、その前に行った時はゴッツォーリの絵は修復中で見られなかったので、修復が終了して公開されるのを待っていました。そして、その後ベルリンに行き本物のリッピの絵を見ることができるまで、また長い時間がかかりました。(2016年に初めてベルリンやドレスデン、ポツダムを訪問)。
今メディチ・リッカルディ宮にある幼児礼拝の絵は15世紀後半のコピーとされています。しかし、この絵とリッピをめぐる話はなかなか複雑で、リッピの絵は19世紀初めにはベルリンにあったようです。メディチ家は1490年代にフィレンツェを追放されてから何度か復帰と追放を繰り返しているので、この長い歴史の中のある時点でリッピの絵はメディチ・リッカルディ宮を離れ、その代わりとして現在の絵がもたらされたと思います。
私たちは15世紀半ばから後半のフィレンツェ派の画家として、フィリッポ・リッピやフラ・アンジェリコ以降ではヴェロッキョ、ポライウォーロ、ボッティチェリ、ギルランダイオ、ペルジーノなどのことは知っていますが、これらのヴァチカン・システィーナ礼拝堂側壁の仕事に招かれたり、ヴァザーリが芸術家列伝に取り上げた画家以外に、フィレンツェやその周辺の地方で活動した画家はかなりたくさんいて、そのほとんどを我々は知らないのが実態です。偽ピエル・フランチェスコ・フィオレンティーノもそのような画家の一人ですが、我々が現在推定するような「後の時代に模倣作を作った画家」というのではなく、リッピ本人か工房のメンバー(ディアマンテやペゼリーノ)から承認を得て模倣作を作ったというのが実態です。
このメディチ・リッカルディに今ある絵はリッピの絵から直接下描き(カルトン)を取って作られたと考えられているようで、それは当然リッピ本人か工房が承認していなければできないことです。そして、現在リッピ作とされているウフィッツイなどにある聖母子2人が描かれた絵が成立するきっかけとして、このメディチ・リッカルディにあったような絵から、偽ピエル・フランチェスコが寄せ集めて作った絵から、逆にリッピが影響を受けて聖母子2人の絵が成立したとも考えられています。15世紀後半のルネサンス画家は現代の我々が考えるよりも「職人」の世界であり、現代の芸術家意識とはかなり違うようです。
ベルリンにあるリッピの真作と今メディチ・リッカルディにある偽ピエル・フランチェスコの絵を見比べると、絵の出来栄え、質の点でかなりの差があることは否めません。それでもこの偽ピエル・フランチェスコの絵は、当時のルネサンスの工房制作を考える上で重要です。(メディチ・リッカルディ宮の現地では近くから見ることはできません。ベルリンの真筆の方は間近でその素晴らしさを見ることができます。)
なお、フィレンツェでメディチ・リッカルディを訪問する人は、同じ2階にあるフィリッポ・リッピの真作の聖母子の絵を忘れずに見ていただきたいと思います。私が見に行った30年以上前の時はメディチ家礼拝堂へ行くのとは別の階段で2階へ上がり、トスカーナ州の地方事務所のような場所に絵が展示されていましたが、最近のガイドブックを見るとメディチ家礼拝堂からそのまま行くことができるようです。この辺はよく確認してください。リッピの聖母子は晩年の板絵で、さらに裏面に男性聖人の素描が描かれていて、これが聖母子以上にリッピの真筆として素晴らしい絵です。
フィレンツェでフィリッポ・リッピの絵を見るには、ウフィッツイ、ピッティ以外ではサン・ロレンツォの受胎告知とこのメディチ・リッカルディの聖母子が必見の作品だと思っています。(SMデル・カルミネにも会則の確認のフレスコ画断片がありますが、公開していないようで、私もまだ見たことがありません。)
投稿: むろさん | 2021.12.31 22:59
toむろさん
明けましておめでとうございます。
リッピの話は情報が盛りだくさんですね。
じつはベルリンにある絵も知っていたのです
が、実際に見たのはリカルデイ宮のものです
から、こちらを採用しました。購入した絵葉
書をウフィッツイ美のカタログに張り付けて
いたのです。これはコピーですか!お詳しい
ですね。
2枚買ったリッピの絵葉書の片方はご指摘の
真筆の‘バンビーノの聖母’のことですね。
ゴッツオ―リの絵をもう一度見たいです。
感動しっぱなしでみてました。
投稿: いづつや | 2022.01.01 23:05