Anytime アート・パラダイス! フリードリヒ(2)
‘リューゲン島の白亜岩’(1818年 オスカー・ラインハルト・コレクション)
‘窓辺の婦人’は日本でベルリン美のコレクションが披露されたときにお目にかか
った。女性を描いた絵には強い思い入れがあるため、惹かれたものは特定の画家
に絞らずどんどん名画ファイルに登録してきた。でも、顔をみせず後ろ姿で描か
れた女性に対しては関心が薄い。ところが、ときどき例外扱いになるものがでて
くる。フリードリヒのこの絵もその一枚。バルテュスには‘窓辺の少女’というタ
イトルのついた絵が2点(ともにメトロポリタン美)あるが、フリードリヒの
婦人を少女に変えてコラボしている。
‘霧の海の旅人’でも旅人は顔が見られないように背を向けている。フリードリヒ
の風景画に登場する人物はだいたい後ろ姿で描かれているのが特徴。はじめはな
かなか絵のなかに入りこめないが、慣れてくると自然の崇高な瞬間を彼らのその
後ろで一緒に感じられるようになる。だから、この絵では旅人同様に霧のベール
につつまれた雲海の世界を心をふるわせて眺めている気分である。なんだか中国
の黄山の景色がかぶってくる。
スイスの美術館巡りを数年後に実現させたいと思っているが、訪問することを
予定している美術館のなかにチューリヒの近くのヴィンタートゥ―ルにあるオス
カー・ラインハルト・コレクションンも含まれている。お目当ては有名な印象派
やゴッホだが、楽しみにしているのがフリードリヒの代表作‘リューゲン島の白亜岩’。この構図は引きこまれる。左右からでている木でつくらえた円に囲まれて尖ったガラスをイメージさせる白亜の岩がV字の形態で表現されている。そして、遠景の海原には2隻の帆船が小さく縦にぽんぽんとみえる。高所恐怖症の人はここには近づけないかもしれない。
エルミタージュにある‘帆船の上にて’はやはり顔をみせない男女が船の舳先に座り前方かすかにみえる街並みを眺めている。帆の大きなマストを大胆に描く表現は広重の‘名所江戸百景’にでてくる船頭が艪を漕ぐ場面を彷彿とさせる。‘眺望(人生の諸段階)’はよくみるとバランスよく配置された船が5隻で岩のところに描かれた三世代の人物は5人、数を同じにしている。本物をみてみたい。
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