Anytime アート・パラダイス! モロー(2)
2年前、パナソニック汐留美で代表作の‘出現’とともにモローファンを楽しま
せてくれたのが‘一角獣’。一角獣は森のなかに一糸まとわぬ処女をおいておく
と、その匂いにつられて姿を現しおとなしくなる。ここでは3頭もやってき
た。ほかに一角獣がでてくる絵に出会ったのはほんの数点、ローマのボルゲ
ーゼ美に展示されているラファエロの作品と10年くらい前?パリのクリュ
ニー美から出品された中世タピスリーの名品、‘一角獣と婦人’。この3点をみ
たので十分満足している。
ギリシャ神話に登場する‘キマイラ’は獅子の頭、山羊の胴、蛇の尾をもつ怪物
で英雄べレロフォンにやっつけられる。でも、モローはこのスペックではな
く腕の代わりに翼をもつケンタウロスとして描いている。さあ、崖からとび
だし天空に舞い上がるぞ、という体勢だが裸体の女に首をつかまれ緊張して
いるのか顔がこわばっている。とても惹きつけられる絵柄。
一方、青ざめた詩人の遺体を肩にかついでうなだれている半獣半人のほうは
本来のたくましい体をした真正ケンタウロス。白く透き通る肌をした詩人の
背中には竪琴が携えられているが、もうその音色を聴くことができない。この
詩人は男なのか、女なのか?
モローはイタリアで古典絵画をしっかり学んだので、定番の‘聖ゲオルギウス’
もすごくカッコいい。白馬に跨りおそってくる怪物を長い槍で一撃のもと撃退
している。ゲオルギウスの厳しい顔、馬の頭、そして口から血を吐き出す怪物
が一直線でつながるように描いているので迫力満点の戦闘シーンが生み出され
ている。
シカゴ美でみた‘ヘラクレスとレルネーのヒドラ’は縦1.75m、横1.54m
の大作。題材はヘラクレスの12の偉業からとられている。ヒドラは沼沢地
レルネーに棲む多頭の大蛇。この大蛇はしぶとく首を斬り落とされてもすぐ2
つになり息の根をとめることができない。そこでヘラクレスは首をちょん切る
たびにその切り口を焼き、最後の不死の頭は岩の下に封じ込めた。鎌首を高く
上げたヒドラはあまりに獰猛なので長くはみれない。蛇は大の苦手、インドで
みたコブラと重なって怖かった。
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