Anytime アート・パラダイス! シーレ(1)
‘縞模様の服を着たエディット・シーレ’(1915年 ハーグ市美)
以前はクリムトの回顧展があるとエゴン・シーレ(1890~1918)の
作品があまり間をおかずにやって来るとこがよくあった。その展示パターン
が繰り返されるなら、2年前大クリムト展が開催されたからシーレもつい
期待したくなる。でも、今のところ関連する情報は入ってない。
これまでシーレとの最接近があったのは3,4回。国内の美術館では30年
前の1991年に渋谷のBunkamuraで回顧展に遭遇した。そして、2005
年アムステルダムのゴッホ美へ行ったとき、別館の展示室でなんとシーレの
特別展をやっていた。大きなオマケなので大急ぎでみてまわると収穫の絵が
いくつもあった。そのひとつが‘縞模様の服を着たエディット・シーレ’。
これはハーグの美術館の所蔵なのですぐ貸し出してくれたのであろう。エデ
ィットはシーレの妻となった女性でやさしそうな感じ。目に飛び込んでくる
のは色とりどりの細かい縞模様。この明るい色調のドレスに釘づけになった。
シーレが亡くなった年はクリムトと同じ1918年。シーレはまだ28歳だ
った。シーレと妻のエディットの命を奪ったのはヨーロッパで大流行したス
ペイン風邪。‘家族’はこの年の3月に開催された49回分離派展の出品され
た大作。男性はまともな顔をしたシーレだが、女性はエディットではない。
シーレより3日早い10月28日に天国に召されたエディットが妊娠してい
たため、シーレの死後‘家族’という題名がつけられた。家族の幸せを望んでい
たシーレの気持ちがよく伝わってくるとてもいい絵。魅了され続けている。
これとは対照的に絶望感が漂い死の影がしのびよる‘死と乙女’も忘れられな
い一枚。シーレの自画像である男と細い細い腕の女が抱き合っているが、
シーレのちじこまった姿にくらべると女の目にはまだ生きる強さが残って
いる。この存在感に妙に惹かれる。したたかさは横顔が画面いっぱいに
描かれた‘イーダ・レスラーの肖像’にもうかがえる。目をつぶった妹、ゲル
トルーデを茶色のグラデーションを使って描くアイデアには強い刺激を受け
る。表現主義と装飾性を意識した現代アートをミックスしたような肖像画に
なっている。
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