美術館に乾杯! 福島県立美術館 その二
日本画の展覧会に出かけたとき作品を所蔵する美術館のなかに地方の公立や
私立の美術館をみつけることがよくある。例えば、島根県の足立美は大観な
どビッグネームの作品をびっくりするほど多く揃えている。また、滋賀県美
には小倉遊亀がずらずらっと並ぶ。東日本では長野市の東山魁夷や飯田市の
菱田春草。そして、茨城県近美にも福島県美にも画家の回顧展があれば必ず
お呼びがかかる名画がある。
速水御舟(1894~1935)の‘女二題 其一 其二’はとても印象に残る
肖像画。ひとりは手を後ろにまわし帯の具合を直している。一方、濃いえび
茶色の着物を着た女性は斜め正面に向き頭の髪を整えている。こういう動作
入りの姿だと映画のワンカットをみているような気分になり記憶に長くとど
まる。運がいいことに2回みた。
御舟の盟友、小茂田青樹(1891~1933)の‘農婦’は6年前世田谷美で
あった御舟・青樹展ではじめて遭遇した。視線が思わず向かったのは籠に入
ったトウモロコシを天秤棒でかついで歩いている農婦のキリットしまった目。
まるで農村のマドンナといったところ。青樹は蜘蛛や蛙など小さな生き物を
精緻に描写する画家というイメージができあがっているので、こういう女性
に出くわすと面食らう。
安田靫彦(1884~1978)の‘茶室’は御舟の‘女二題’とともに福島県美の
名前がしっかり記憶されるきっかけとなった絵。伊東深水に香を楽しむ女性
たちを描いたものがあるが、靫彦はこれに刺激をうけて茶室の女性を画題に
したのだろうか。この女性をもっと大きくして画面いっぱいに座らせると
深水風の美人画になる。
政治家は骨太の政策を立案したとドヤ顔でいうが、山本丘人(1900~
1986)の画風は‘骨太絵画’と呼べるかもしれない。‘月夜の噴煙’は太い黒の
線で表現された山のフォルムと野原の平面性が銀色と白の色面によりくっきり
印象づけられている。
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