美術館に乾杯! 茨城県近代美術館 その二
人気の高い横山大観(1868~1958)の絵はヨーロッパの美術館を訪
問してバロックの巨匠ルーベンスとよく出くわすように、日本画で名が知れ
た美術館ならそのコレクションに含まれていることが多い。そのため、大観
の生まれた水戸にある茨城県近美が突出した数の作品を所蔵しているわけで
はない。これまでお目にかかったのは両手くらい。そのなかにすばらしい
女性画がある。菱田春草(1874~1911)と一緒にインドを旅した
体験をもとにして描いた‘流燈’。朦朧体から脱した大観の新たな挑戦がこの絵
からはじまった。
春草が1909~10年にかけて描いた‘落葉’は4つのヴァージョンがあるが、
そのひとつがここにある。音の消えた静かな秋の光景だが、黄色の落葉がど
こかやさしさをたたえているので心が洗い清められるような気分になる。
と同時に、木の幹の表現に使われた琳派のたらし込みの技法によって、抑制を
きかせた装飾性にも敏感に反応する。
大観、春草、下村観山とともに五浦に都落ちした木村武山(1876~
1942)は笠間の出身で大観より8歳年下。31歳のとき五浦で描きあげた
のが代表作の‘阿房劫火’、これは秦の始皇帝が建てた大宮殿‘阿房宮’が始皇帝没
後の紀元前206年、楚の項羽に攻められて炎上する場面。明治以降の日本画
で炎の描写が強く印象に残っているのはこの絵と川端龍子の‘金閣炎上’。
大観同様、茨城というとすぐ思い浮かべる画家は牛久村に長く住んで狐などの
生き物や河童をユーモラスに描いた小川芋銭(1868~1938)。‘狐隊行’
は最初に覚えた芋銭の絵で‘昭和の日本画100選’(1989年)に選ばれて
いる。2009年冨田渓仙(1879~1936)の大回顧展が開かれたのは
この美術館。これで好感度がぐっと上がった。‘長江鵜船’をみて中国でも鵜飼い
が行われていたことを知った。
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