美術館に乾杯! 日本芸術院 その二
東山魁夷(1908~1999)の風景画は深い青というイメージが強
くきざまれているが、色を一色に限らずカラフルに仕上げた作品もある。
日本芸術院にある‘光昏’はそのひとつ。空がゴールドで山は紫。そして、漆黒
の湖を挟んで手前に紅葉。人目を引く絶景がすぐ絵になるわけではないから、
印象の装飾化が必要になってくる。どの色もひきたつ風景画はそうはない。
高山辰雄(1912~2007)の‘沼’は湖面が鏡のようになって木々を映し
出す風景画を多く描いた魁夷の作風がダブってくる。同じ時代を生きた二人に
はときに同じような心象風景が心のなかにひろがることがあるのかもしれない。
広島に9年住んだので広島県出身の奥田元宋(1912~2003)や平山
郁夫(1930~2009)の絵をみる機会がよくあった。元宋については
中規模の回顧展に運よく遭遇し、‘かい’に出会った。元宋の風景画では月の明
りが山々を照らす神秘的な作品にぐっとくることがある。この作品も暗闇に
浮かび上がる三日月のフォルムが印象深い。
風景画で深く魅了された画家はある時まで東山魁夷と奥田元宋の二人だったが、
10年前岩澤重夫(1927~2009)の作品をみてからは風景画はトリオ
になった。岩澤は大分県の日田市の出身。日本橋高島屋であった回顧展で心に
200%響いたのは‘渓韻’。山歩きに縁がないからこの緑一色の光景に接する
にはどのくらい山奥にいかなければいけないか見当がつかないが、ヘリコプタ
ーに乗ってこの上空にいってみたくなる。
西山翠嶂(1879~1958)は京都の生まれで竹内栖鳳に師事し娘と結婚
した。翠嶂の作品はほんの数点しかみてないが‘牛賈ひ’がとても気に入っている。
三頭の牛の親子をひき砂浜を歩いている牛買いの後ろ姿がじつにいい。海のほ
うに目をやると、波が静かに浜にうち寄せ遠くに白い三日月がみえる。
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