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2020.10.29

美術館に乾杯! 永青文庫 その二

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    狩野元信の‘細川澄元像’(重文 室町・1507年)

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        宮本武蔵の‘鵜図’(重文 江戸・17世紀)

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    谷文晁の‘東海道勝景図巻’(江戸・19世紀)

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        白隠の‘乞食大燈像’(江戸・18世紀)

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    仙厓の‘花見図’(江戸・19世紀)

美術館とのつきあいが長くなると、ひとつのコレクションをまるごとみせ
てくれる企画展に遭遇することがある。2010年に東博で‘細川家の至宝
 珠玉の永青文庫コレクション’が開催された。これによって永青文庫の
お宝をみるために足を運ぶ回数が大幅に減少した。そのなかにはまだお目
にかかってない日本絵画がどどっと姿を現した。

狩野元信(1477~1559)の‘細川澄元像’は見事な武将画。小さい頃、
強い武将の姿は馬に乗っているというイメージがうめこまれたので本物を
前にすると戦国時代にタイムスリップしたような気分になる。歴史に名を
残す武将は大勢の武士たちのヒーローといえる存在だが、剣豪は相手は多数
で自分はひとりという不利な状況でも生きのびてきた剣の達人。宮本武蔵
(1582~1645)が水墨画でもすごい腕前をもっていたことを知った
のは絵画が趣味になってからのこと。武蔵と縁の深い細川家には‘鵜図’など
ぐっとくる絵がいくつもある。

谷文晁(1763~1840)の風景画で馴染みのあるのは東博の平常展に
通っていたときよくみた‘公余探勝図’。これは相模・伊豆の光景を描いたもの
だが、ここが所蔵する画巻は品川から大津までの東海道の勝景。全部で20
図ある。これは‘富士川 自岩渕望渡口’。奥行き感があり富士山をゆったりみ
れるのがいい。

永青文庫は白隠(1685~1768)を数多く所蔵していることで知られ
る。2,3回ミニ白隠展を体験しリラックスモードで白隠の水墨画を楽しん
だ。‘乞食大燈像’はほかの作品とちがいちょっと緊張を強いられる人物画。
この乞食の目力は半端ではない。また、仙厓(1750~1837)の‘花見
図’もおもしろい絵。肩の力が抜け一緒に酒を飲みたくなる。

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2020.10.28

美術館に乾杯! 永青文庫 その一

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Img_0001_20201028223901      国宝‘時雨螺鈿鞍’(鎌倉・13世紀)

Img_20201028223901      国宝‘金銀錯狩猟文鏡’(中国 戦国・前3~4世紀)
    
Img_0003_20201029000301 ‘三彩宝相華文三足盤’(重文 唐・7~8世紀)

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‘唐物尻膨茶入 利休尻ふくれ’(南宋・13世紀)

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林又七の‘桜に破扇図鍔’(重文 江戸・17世紀)

文京区目白台にある永青文庫はJR目白駅から新宿行きのバスに乗ると10分
くらいで到着する。このところご無沙汰しているが、以前は定期的にでかけ
ていた。夏の季節は何度も通っているうちに蚊に刺されないように館内に急
いで入ることを心掛けた。ここは海外なら邸宅美術館といえる典型的なお屋
敷美術館。展示室は3つくらいあるが、こじんまりとした広さなので30分も
あれば展示品はみることができる。

ここの所蔵品を美術本でチェックしている際もっとも興味をそそられたのが
国宝の‘時雨螺鈿鞍’と‘柏木菟螺鈿鞍’。そして、本物との対面が実現したとき
はその見事な螺鈿細工を夢中になってみた。‘時雨’で目を凝らしてみたのは
松と蔦の文様のなかに隠されている文字。この和歌を暗示する歌文字が書か
れた葦手絵はとても刺激的だった。鞍に螺鈿を使って文字をデザイン化する
発想がスゴイ。

中国の戦国時代につくられた‘金銀錯狩猟文鏡’、これは青銅の鏡でその装飾
のために金銀を象嵌したり、メッキを施している。目を惹く図柄は中央上に
みられる馬に乗った人物と虎の戦う場面。この激しいバトルの様子が強く
印象づけられている。

忘れられない中国のやきものがふたつある。鮮やかな色彩が器を引き立てる
唐三彩‘三彩宝相華文三足盤’と南宋時代につくられた‘唐物尻膨茶入 利休尻
ふくれ’。日本にある唐三彩で一番ぐっときたのがこの三足盤。そして、利休
が所持していた尻が膨らんだ茶入。こういう形の茶入はお目にかかったこと
がなかったのでニヤニヤしながらみていた。

刀の鍔をみる機会があるのは東博の平常展示くらいなもので、永青文庫で数
が揃ったコレクションと遭遇したのはエポック的な鑑賞体験となった。‘桜に
破扇図鍔’をつくった林又七は細川家のお抱え工でこの鍔を肥後鍔という。
この意匠にすぐズキンときた。これは重文に指定されているが、ほかに重文
の鍔があるのだろうか。

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2020.10.27

美術館に乾杯! サントリー美術館 その四

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     久隅守景の‘瀟湘八景図屏風’(江戸・17世紀)

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    英一蝶の‘田園風俗図屏風’(部分 江戸・18世紀初)

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    ‘鼠草子絵巻’(室町・16世紀)

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          鏑木清方の‘春雪’(1946年)

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    柴田是真の‘五節句蒔絵手箱’(19世紀)

2015年、サントリーが開催した‘久隅守景展’はおもわず‘待ってました!’
と拍手を送りたくなる特別展だった。久隅守景なら国宝の‘納涼図屏風’を
所蔵している東博が行っていいくらいなのにサントリーはがつーんとやって
しまう。まさに‘やってみなはれ’である。この‘瀟湘八景図’は右隻と左隻に
四景ずつまとめて描くタイプのもので、これは‘瀟湘夜雨’や‘遠浦帰帆’などが
でてくる右隻。

英一蝶(1652~1924)の描く風俗画に大変魅了されている。板橋区
美で一度回顧展を体験したので画業全体はおおよそつかめたが、できること
ならもう一回別の作品を集めたものをみてみたい。‘田園風俗図屏風’ではお
得意の画題‘雨’がみられる。左隻には春の農村の光景が描かれているが、
視線が集中するのが突然の雨に人々があわてる場面。このスピード感のある
人物描写は‘鳥獣戯画’を思い起こさせる。

室町時代後期につくられた‘鼠草子絵巻’は狐が人間の男に化けて美しい娘と
結婚するというユーモラス極まりない婚礼の場面が描かれている。でも、鼠
の魂胆は最後にはバレて失敗する。狐というとお稲荷さんのイメージが強い
が、こんな変身の術も使うとは。また、ここは大蛇になって恋する僧を追っ
かける女の話で知られる‘道成寺縁起絵巻’も所蔵している。

鏑木清方(1878~1972)にぞっこん参っているからどの絵がどこの
美術館にあるかは正確に認識している。サントリーにあるのは‘春雪’。この
女性は江戸末期の武家の女房という設定で帰宅した夫の羽織をたたんでいる
ところ。清方展には欠かせない作品である。

工芸作品を幅広く蒐集しているサントリーだから、柴田是真(1807~
1891)の‘五節句蒔絵手箱’もしっかり手に入れている。是真の漆絵のスゴ
イところはモチーフにスッキリ感がありひとつ々の質感描写が神業的といえ
るほどリアルなこと。

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2020.10.26

美術館に乾杯! サントリー美術館 その三

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    狩野元信の‘酒呑童子絵巻’(重文 室町・1522年)

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    狩野探幽の‘桐鳳凰図屏風’(江戸・17世紀)

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       円山応挙の‘青楓瀑布図’(1787年)

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     池大雅の‘青緑山水画帖’(1763年)

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      伊藤若冲の‘墨梅図’(江戸・18世紀)

サントリーへの期待値が高いのは企画展の内容が東博や京博で行われるもの
と遜色がないから。例えば、2015年には若冲と蕪村の二人展があり、
2017年には待望の狩野元信展も実現させた。こういうビッグネームの
絵師たちの回顧展を実施するのは大変な労力がいるが、それに果敢にチャ
レンジするところがすばらしい。

雪舟同様、日本絵画のど真ん中にいるといってもいい狩野派の絵画はどこの
美術館でもみられるというわけではないから、狩野元信(1477~
1559)の‘酒呑童子絵巻’や狩野探幽(1602~1674)の‘桐鳳凰図
屏風’は強く心に刻まれている。菱川師宣にも酒呑童子があるが、これほど
激しくはない。画面中央には首を斬られた酒呑童子の体が横たわり、その首
は鬼退治のリーダー源頼光の頭に食らいつこうとしている。これをみたら
岩佐又兵衛も裸足で逃げるにちがいない。

探幽の絵は京都の修学旅行のとき二条城でたくさんみるから、ある時期まで
狩野派というと最初に刷り込まれた探幽の印象でかたまっている。だが、
永徳の金碧障壁画を実際に目にするようになると探幽が存在感がだんだん薄
れてくる。そして、サントリーにある鳳凰の絵をみてふたたび探幽が復活す
る。それくらいこの優雅な美しさをそなえている番の鳳凰は細いが強烈な
磁力を発している。

京都で江戸絵画の隆盛を築いた中心人物である円山応挙(1377~
1795)の‘青楓瀑布図’はなかなか冴えた瀑布図。大阪市美であった大円山
応挙展には出品されなかったので、この絵と対面したときは腰をぬかすほど
感動した。そして、2018年の池大雅展(京博)で再会した‘青緑山水画帖’
も濃密な青緑の力によって10ある山水図の1点々に惹きつけられる。

与謝蕪村(1716~1783)については特別展で3,4点お目にかかっ
たが、伊藤若冲(1716~1800)は‘墨梅図’しかみていない。
出光にプライスコレクションがはいったから、サントリーでも若冲が増える
ことをひそかに願っている。

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2020.10.25

美術館に乾杯! サントリー美術館 その二

Img_0002_20201025223201      ‘佐竹本三十六歌仙絵 源順’(重文 鎌倉・13世紀)

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俵屋宗達の‘伊勢物語図色紙 水鏡’(江戸・17世紀)

Img_20201025223201      ‘祇園祭礼図屏風’(室町~桃山・16世紀)

Img_0003_20201025223201     狩野山楽の‘南蛮屏風’(重文 桃山・17世紀初)

Img_0001_20201025223201      ‘南蛮屏風’(江戸・17世紀)

昨年の10/24は京博で佐竹本歌仙絵をどどっとみた日。それから一年経っ
た今、美術館の展覧会シーンはコロナ禍で盛況というにはほど遠い状態。
世の中何が起ころかわからない。佐竹本三十六歌仙絵展の図録には37幅の
歌仙絵の所蔵の変遷が載っており、サントリーが所蔵している‘源順(みなも
とのしたごう)’は3人のコレクターをへてサントリーにおさまったことに
なっている。こういう話を裏事情まで含めて調べた本があったらすぐに
でも購入するのだが。

サントリーは出光同様、佐竹本と俵屋宗達の‘伊勢物語図色紙 水鏡’をもっ
ている。ブランド美術館はだいたい琳派を揃えているが、ここには
ほかにも光悦と宗達がコラボした‘鹿下絵新古今集和歌断簡’や光琳の‘秋草図
屏風’がある。

2007年に開催された‘BIOMBO 屏風ー日本の美’は東博がおこなう
ような一級の特別展だった。サントリーの企画力は本当にスゴイ。こういう
ものができるのは自分のところにもいい屏風がいくつもあるから。‘日吉山
王祗園祭礼図屏風’は近江坂本の日吉大社山祭礼と京都八坂神社の祗園祭を
組み合わせ異色の屏風。見応えがあるのが左隻の山鉾巡行の場面。祭りの
活気がびんびん伝わってくる。

狩野山楽(1559~1635)の‘南蛮屏風’は絵の出来映えに見惚れるば
かりでなく、当時の南蛮交易の様子がよくわかる文献資料としても価値が
ある。歴史本とこうした絵画で得られる情報を合わせると実態をかなり把
握することができる。宣教師も含めて南蛮人の身長がやはり高く描かれて
いるところがおもしろい。

江戸・寛永期(1624~44年)に登場した‘舞踊図’はお気に入りの美人
画。もとは屏風だったが、現在は六面の額装になっている。目が自然に
寄っていくのが身につけている小袖のハッとさせる文様。いつまででもみ
ていたくなる。

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2020.10.24

美術館に乾杯! サントリー美術館 その一

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     国宝‘浮線綾螺鈿蒔絵手箱’(鎌倉時代・13世紀)

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     ‘色絵‘花鳥文八角大壺’(重文 17世紀末~18世紀初)

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     野々村仁清の‘色絵七宝繋文茶碗’(江戸・17世紀後半)

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  尾形乾山の‘白泥染付彩芒文蓋物’(重文 江戸・18世紀後半)

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  ‘薩摩切子 藍色被船形鉢’(江戸・19世紀中頃)

リニューアルしたサントリー美では現在‘日本美術の裏の裏’(9/30~
11/29)という奇妙なタイトルがついた特別展が開催されている。ここは
予約の必要がないので久しぶりに出かけてみようかと思ったりもするが、
一方でまだ慎重にしていたほうがいいという声も聞こえてくる。こうしたも
どかしい展覧会状況がずっと続きそう。

サントリーが2007年六本木の東京ミッドタウンに移転してから前より足
を運ぶ回数がぐっと増えた。ここの企画展の特徴はやきものやガラス作品な
ど工芸関連のものが多いこと。例えば、奇跡的ともいえる薩摩切子展や紅型
展といった心に沁みるものに遭遇できたことは生涯の思い出となっている。

所蔵するお宝の筆頭は国宝の‘浮線綾螺鈿蒔絵手箱’。整然と並んだ円文から
発せられる薄緑やピンクの光を視線の角度を変えて感じとる楽しみを一度味
わったらもうこの手箱の虜になる。京都や奈良の神社や寺を訪問しなくても、
サントリーと畠山へ行けば螺鈿の美しい輝きを目に焼きつけることができる
のだから恵まれた美術環境のなかにいる。

金襴手様式の見事な‘色絵花鳥文八角大壺’にも魅了される。これはヨーロッパ
へ輸出するためにつくられたもので龍や鳳凰など中国の意匠をつかって王侯
貴族の心をがっちりとらえた。野々村仁清の京焼の200%参っているので
‘色絵七宝繋文茶碗’のような洒落たデザインにもすぐ反応する。忘れられない
一品。モダンな意匠感覚という点では尾形乾山(1663~1743)もお
おいに跳んでいる。白と茶色の線が交錯する様は抽象絵画のイメージとも重
なる。

サントリーは薩摩切子をたくさん所蔵していることで知られている。だから、
薩摩切子展(2009年)を開催することができる。もっとも有名なのが吉
祥文の蝙蝠が使われている‘藍色被船形鉢’。ほかにも‘紅色被鉢’など心が浮き
浮きするような薩摩切子がいろいろある。本当にすばらしいコレクション。

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2020.10.23

美術館に乾杯! 三井記念美術館 その三

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    ‘日月松鶴図屏風’(重文 16世紀)

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       梁楷の‘六祖破経図’(南宋・13世紀)

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       ‘伊勢参詣曼荼羅’(江戸・17世紀)

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    伊藤若冲の‘乗興舟’(江戸・1767年)

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    鍬形蕙斎の‘江戸名所の絵’(1803年)

‘日月松鶴図屏風’は縁起のいい画題である松と鶴を楽しむには最高の一枚かも
しれない。水辺に3羽の鶴が上手く配置されている。枝ぶりのいい松は自然
の風景をデフォルメしてコンパクトにまとめ鶴との親和性を高めているとこ
ろに構成の妙がある。そのため、松だけをみると盆栽を連想する。

茶の湯の掛物には中国の絵がよく使われる。その筆頭が牧谿の叭々鳥などの
花鳥画。そして、梁楷の‘六祖破経図’などもリストアップされる。これは足利
義満が所持していたもの。描かれているのは六祖慧能が経巻を激しく破って
いるところ。これで禅の悟りは文字や言葉で書かれたものでは伝えられない
ということを表現している。

展覧会のなかにはあるテーマを設定しそれに関連する作品を展示するものが
ある。三井では2011年、日本橋が石造二連アーチ橋になってから100
年が経つのを記念して、‘日本美術にみる橋ものがたりー天橋立から日本橋ま
で’が開催された。‘伊勢参詣曼荼羅’は出品作のひとつ。これは左隻で内宮が
描かれている。隣の右隻は外宮。強いインパクトで目を惹きつけるのが龍の
胴体を思わせる五十鈴川、その上に架かる宇治橋を式年遷宮時に派遣される
勅使が渡っている。画面を隅から隅までみるとおもしろい。左上には富士山
がみえる。

伊藤若冲(1716~1800)の拓版画‘乗興舟’は4つあり、そのひとつを
三井が所蔵している。若冲展にでてくるのはいつも京博蔵が多いので、これ
をみたのはまだ一度しかない。墨でつぶされた背景が夜景のようにみえると
ころが普通の木版画とちがっており、京都の伏見から大阪の天満橋までの川
くだりの光景が味わい深い情趣をうみだしている。

鍬形薫斎(1764~1824)の‘江戸名所の絵’は江戸市中を上空から俯瞰
した絵。飛行機に乗ったわけでもないのに想像力だけでこうした広々とした
空間が表現できるのはひとにぎりの絵描きだけが授かった特殊な才能のたま
もの。

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2020.10.22

美術館に乾杯! 三井記念美術館 その二

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    国宝‘志野茶碗 銘 卯花墻’(桃山~江戸・16~17世紀)

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       ‘青磁筒花入’(南宋・13世紀)

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      ‘粉引茶碗 三好粉引’(重文 朝鮮・16世紀)

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    長次郎の‘黒楽茶碗 銘 俊寛’(重文 桃山・16世紀)

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    ‘唐物肩衝茶入 北野肩衝’(重文 南宋~元・13~14世紀)

応挙の‘雪松図’とともに三井のお宝中のお宝なのが‘志野茶碗 銘 卯花墻’。
日本の茶碗の頂点に位置する傑作として多くのやきものファンに愛されて
きた。美濃で焼かれたこの志野茶碗の魅力はところどころにみれる緋色とピ
ンクがかった薄茶色がかもしだす甘い柔らかさ。そして、この色の下から
存在感を発揮しているのが井桁の垣根文様。歪みをすこし施した筒型の器に
引かれた水平と垂直の線によってこの茶碗がどこかの景色を見ているような
感じさえ与える。

やきものに惹かれる要素は形と色の発色具合があるが、‘卯花墻’と同じく美
しい色が心に広がっていくのが‘青磁筒花入’。貫入がないため粉青色の釉が
目に心地いい。豊臣秀吉もこの砧手の青磁をながめていた。また、武将三好
長慶が所持していた‘粉引茶碗 三好粉引’は2016年重文に指定された。
一度見たら忘れられないのが胴部にある褐色の部分。これは釉薬のかけはず
れによってできたものだが、いつもクリップとか鋭利な竹べらが刺さった感
じにみえてしょうがない。

黒の深いパワーが強烈なのが長次郎の‘黒楽茶碗 銘 俊寛’。いかにも手び
ねりでつくりあげた造形という感じがし、胴のくびれに視線が集中する。
黒楽茶碗で重文に指定されているのは3碗。‘俊寛’と個人が所蔵している
‘銘 大黒’と胴部が四角になっている‘銘 ムキ栗’(2013年指定)。手に
もってみたいが、叶わぬ夢だと観念している。

肩衝茶入の名品がここにもある。‘唐物肩衝茶入 北野肩衝’。‘初花’(徳川記
念財団)、‘松屋肩衝’(根津)、‘油屋’(畠山)などと同様に褐色の美にとり
つかれている。もうひとつある‘銘 遅桜’の釉薬の流れの景色もなかなかいい。

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2020.10.21

美術館に乾杯! 三井記念美術館 その一

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    円山応挙の国宝‘雪松図’(江戸時代・18世紀)

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    ‘雲龍図’(1784年)

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    ‘芭蕉図’(1781~88年)

五島や静嘉堂が山手線の外側にありここへいくと他の美術館へはあまり寄れ
ないのに対して、根津、畠山、出光、三井記念美は都心にあるためいろいろ
くっつけて効率的にまわれるという便利さがある。昨年、三井とは相性が良
く2回特別展を鑑賞した。最初は1月、長澤芦雪が描いたもうひとつの‘白象
黒牛図屏風’に遭遇するという幸運に恵まれた。また、やきもの好きの友人と
出かけた秋の‘高麗茶碗展’も楽しませてもらった。

2005年に三井記念美が日本橋室町に開館したおかげで円山応挙(1733
~1795)の有名な水墨画‘雪松図’をみる機会がぐんと増えた。毎年正月に
公開されるようになったのに加え、2010年に開催された回顧展でもでーん
と飾られた。水墨画の屏風でみごたえのあるのは長谷川等伯の‘松林図’と応挙
のこの‘雪松図’。これをはじめてみたとき大きな驚きだったのは松に積もる雪
を紙面を塗り残すことによって表現したこと。これって、かなり難しそう。
にもかからわず老松を量感豊かに立体的に描くのだから応挙の技は半端でない。
一瞬巨大な盆栽をみているような錯覚を覚える。

応挙とのつきあいがはじまったのは2003年大阪市立美でみた大回顧展から。
雪松図、超リアルに描かれた孔雀、群鶴図、大迫力の雲龍図、、展示室にいる
あいだテンションが上がりっぱなしだった。おもしろかったのは全然怖くない
とぼけた龍がいたこと。それは三井が所蔵する‘雲龍図’、真横からとらえた龍と
いうのは珍しいうえ、龍の頭だけが突出し胴体部分は蛇のぬけがらみたいな感
じで弱々しいイメージ。こういう姿ならすぐゆるキャラモデルへ変身できる。

芭蕉の絵が強いインパクトで記憶されているのは兵庫の大乗寺で芭蕉の葉で遊
ぶ子どもたちをみたからかもしれない。これほど大きい葉だと小さな子どもな
ら容易に乗れて空をとびまわることができる。そうした空想を膨らませて‘芭蕉
図’をみていた。

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2020.10.20

美術館に乾杯! 出光美術館 その八

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     野々村仁清の‘色絵芥子文茶壺’(重文 江戸時代前期)

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      ‘色絵菊文皿’(江戸時代前期)

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      ‘色絵花鳥文八角共蓋壺’(重文 江戸時代前期)

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     ‘絵唐津柿文三耳壺(水指)’(桃山時代)

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    板谷波山の‘葆光彩磁草花文花瓶’(1917年)

美術館で行なわれたやきもの展で一番多く足を運んだのは出光。だから、
図録がたくさんある。21世紀になり2010年くらいまで‘やきものに親し
むシリーズ’が9回?あり半分ほど出かけた。おかげで中国磁器や日本のやき
ものについての知識が深まった。こういう企画展ができるのはここが膨大な
やきものコレクションをもっているからで東博の常設展示のような役割を
果たしてくれた。すばらしい!

京焼の野々村仁清の色絵茶壺に大変魅了されているが、ここにある芥子文の
茶壺には特別の思い入れがある。丸い形がじつに心地よくぐるっとまわって
みる芥子の姿も装飾性と安定感があり高揚感をかりたてられる。古九谷の
大皿をみているときも気分はかなりハイになる。緑や黄色がズドンとくるほ
ど強い力で刺激するのが‘色絵菊文皿’。これまで古九谷で感動したのは3回
ある。最初が出光のコレクションで、次が石川県美、そして2013年に
開館した箱根の岡田美でも大皿の古九谷に遭遇した。

出光佐三(1885~1981)は九州出身(福岡県)なのでやきものへの
関心は強く、柿右衛門や古伊万里の名品をたくさん蒐集した。そのなかで目
を奪われるのが柿右衛門様式の‘色絵花鳥文八角共蓋壺’、有田ややきので評判
をとっている美術館へでかけると柿右衛門にはよくでくわすが、こういう名品
はそうはない。また、佐三は古唐津にも愛着が深く一大コレクションを築きあ
げた。お気に入りは水指の‘絵唐津柿文三耳壺’。丸みのあるフォルムと柿がと
ても合っている。このところ柿を毎日のように食べている。

映画もつくられた板谷波山(1872~1963)にのめりこんだのは出光の
お陰かもしれない。霧や靄がかかったような感じがする‘葆光彩’は波山マジッ
ク。とくに参っているのがアールヌーヴォー様式を連想させる‘葆光彩磁草花文
花瓶’。絵柄にチューリップを使うのが波山流。しなやかでモダンな意匠が目に
焼きついている。

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2020.10.19

美術館に乾杯! 出光美術館 その七 

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    酒井抱一の‘燕子花図屏風’(1801年)

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 尾形乾山の‘銹絵染付金銀白彩松波文蓋物’(重文 18世紀)

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    上村松園の‘青葉’(1945年)

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    小杉放菴の‘山中秋意’(1935年)

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    小杉放菴の‘天のうづめの命’(1951年)

出光の琳派コレクションは根津、畠山と同じく質の高いものが揃っている。
光悦、宗達、光琳、乾山、抱一、其一と琳派オールスターのものが並び目を
楽しませてくれる。数が多いのが酒井抱一(1761~1828)。風神雷
神図、銀地の屏風に描いた紅白梅図、お得意の四季花鳥図など進化した江戸
琳派の真髄をみせてくれる。そのなかでとくに気に入ってるのが構図のつく
り方に魅了される‘燕子花図屏風’。おもしろいのは葉先にとまるトンボ。燕子
花とトンボの組み合わせは気がつかなかった。

尾形乾山(1663~1743)のやきものも美術館自慢のひとつ。乾山は
まじめで学者肌のところがあり、角皿の絵付けのモチーフを藤原定家の和歌
にもとめ花や鳥を描いたものを複数ヴァージョンつくっている。まるで小さ
な画面の絵画をみているよう。重文に指定されている銹絵の蓋物は金銀白で
彩色された松と波の文様が心をとらえて離さない。

意外だったのは出光が上村松園(1875~1949)の美人画を所蔵して
いること。ある企画展で5点ぐらいお目にかかった。どれもこれまで出かけた
松園の回顧展でみたことがなかったので、一気にみるぞ!モードになった。
心がとろけそうになったのが‘青葉’に描かれている女性。松園の美人画をみて
いるといつもラファエロの聖母像が重なってくる。

出光の創業者である出光佐三は小杉放菴(1881~1964)とうまがあい、
パトロンになった。それでここに放菴の絵がたくさんある。洋画家として絵描
き人生をスタートさせた放菴は池大雅の南画と出会い、日本画に転向した。
この画家を知ったのは‘昭和の日本画100選’(1989年)に選ばれた‘山中
秋意’をみたから。

その後、もうひとつのサプライズがあった。それは1951年に描かれた‘天の
うづめの命’。この笑顔に親しみをおぼえる女は天の岩戸に身を隠した天照大御
神を誘い出そうとして踊る天(あめ)のうづめに命(みこと)。ブギの女王・
笠屋(かさぎ)しづ子がモデルなのはすぐ合点がいった。この歌手、わかる人
はわかる。

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2020.10.18

美術館に乾杯! 出光美術館 その六

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        葛飾北斎の‘鐘馗騎獅図’(1844年)

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    仙厓の‘坐禅蛙画賛’(江戸時代)

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    山本梅逸の‘四季花鳥図屏風’(1845年)

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       富岡鉄斎の‘口出蓬莱図’(1893年)

このところ浮世絵師の図録を片っ端から再編成しMyベスト図録をつくって
いる。つい最近完成したのが葛飾北斎(1760~1849)、北斎は作品
が多いので全部で5冊。複数の図録に載っている作品を一つだけ残しコンパ
クト化を図ったのでずいぶん見やすくなった。出光が所蔵する‘鐘馗騎獅図’
は晩年に描いた肉筆画。鐘旭が獅子に載って疾走している。馬が人を載せて
勢いよく駆ける様子はよくみる画題だが、獅子が天空を人間と一緒に飛び回
るというのは珍しい。鐘旭と獅子が組み合わされているのはともに魔除けの
働きをし縁起がいいから。

仙厓(せんがい 1750~1837)の禅画を知ったのは出光へ通うよう
になってから。ほかの美術館で博多のお寺の住職でもあったこの名僧の絵を
みたことがなく、日本最大の質と量を誇る出光コレクションを2度体験した
おかげで仙厓のユーモラスな作品の数々を存分に楽しむことができた。‘坐禅
蛙画賛’は以前にも紹介した‘老人六歌仙賛’などとともに肩のこりをほぐしてく
れるまさにほっこり画。笑う蛙というのはじつにいい。鳥獣戯画に登場する蛙
が元気一杯の牡蛙なのに対し、この蛙はほほほと笑う雌蛙のイメージ。

名古屋に生まれで南画の花鳥画を得意とした山本梅逸(1783~1856)
の‘四季花鳥図屏風’はある時期一気に開眼した。そのきかっけは日本にやって
きたアメリカのギッターコレクションやファインバーグコレクションでみた
梅逸の屏風。海外の目ききが手に入れた梅逸をみて出光の絵のよさが真にみえ
てきた。

孤高の画家、富岡鉄斎(1836~1924)の回顧展に名古屋に住んでいる
とき運よく遭遇した。1996年のこと。そこに飾られていたのは画集によく
載っているもので大多数を占める清荒神清澄寺蔵や東博などからの出品だった。
出光のものは1点もなかった。ところが、2014年、出光で開かれた鉄斎の
没後90年にあわせた特別展にでかけるとなんと70数点が展示されていた。
ええー、こんなに鉄斎をもっていたの!興味深くみたのが‘口出蓬莱図’。仙人が
口から神山の景色をだしてみせている。これには童子もビックリ仰天。口から
孫悟空や蝦蟇が飛び出す妖術は馴染みがあるが、理想郷をみせてくるとは。

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2020.10.17

美術館に乾杯! 出光美術館 その五

Img_20201017222001     池大雅の‘十二ヶ月離合山水図屏風’(重文 1769年)

Img_0004_20201017222101     与謝蕪村の‘山水図屏風’(重文 1763年)

Img_0002_20201017222101       伊藤若冲の‘紫陽花双鶏図’(18世紀)

Img_0003_20201017222101     浦上玉堂の‘籠煙惹滋図’(重文 19世紀)

Img_0001_20201017222101         田能村竹田の‘梅花書屋図’(重文 1832年)

昨年、アメリカの有名な日本画コレクター、プライス氏が所蔵する伊藤若冲
(1716~1800)の作品などがごっそり出光に売却されたというニュ
ースに接した。とてもいい話。これで出光は三の丸尚蔵館とともに若冲の
東京における一大拠点になったので‘紫陽花双鶏図’などが定期的にみれるよう
になる。今年そのお披露目が予定されていたが、コロナ禍のため中止になっ
た。今は再会を静かに待ちたい。

出光のスゴイところは日本画の色々なジャンルをまんべんなくカバーしてい
ること。江戸絵画もいいのが揃っている。池大雅(1723~1776)の
‘十二ヶ月離合山水図屏風’は2018年京博であった大回顧展で久しぶりに
みた。何度もここへは通っているのでミニ大雅展、蕪村展を通じて所蔵品は
おおよそ縁があった。与謝蕪村(1716~1783)の‘山水図屏風’は牡鹿
に哀愁を感じさせる‘寒林孤鹿図’とともにお気に入りの一枚。

最近、足が遠のいているので展示内容がどんなラインナップがなっているの
か疎遠になっているが、2011年に‘大雅・蕪村・玉堂と仙厓ー笑いのここ
ろ’展があり、浦上玉堂(1745~1820)の水墨画も‘籠煙惹滋図’などが
ずらっと飾られた。玉堂を出光がたくさんもっていることを確認したのは
この5年前、千葉市美で開かれた大規模な浦上玉堂展。個人が多くを所蔵し
ているなか美術館では22点と群を抜く多さだった。

美術全集といった企画でとりあげられる作家の作品が特定の美術館に集中して
いることがよくある。関心を寄せている洋画家の森本草介だと千葉のホキ美が
数多く所蔵している。大分出身の田能村竹田(1777~1835)の美術本
に載っている作品もその大半が出光。2015年に竹田の没後180年を回顧
する特別展があり18年ぶりに出光コレクションが公開された。大雅や蕪村
らによって大成された日本の文人画を継承し、独自の画風を生み出した竹田
とはそれまでなかなか縁がなく画集の図版をみるだけだった。それがようやく
思いの丈が叶えられた。期待値の高かった‘梅花書屋図’などを息を呑んでみて
いた。

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2020.10.16

美術館に乾杯! 出光美術館 その四

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     ‘江戸名所図会’(部分 江戸時代・17世紀前半)

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     ‘桜下弾弦図屏風’(江戸時代・17世紀前半)

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    菱川師宣の‘遊楽人物図貼付屏風’(江戸時代・17世紀)

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    勝川春章の‘美人鑑賞図’(1790~92年)

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       喜多川歌麿の‘更衣美人図’(重文 18世紀)

日本の風俗画をみていてもっとも楽しいのが洛中洛外図。その最高傑作であ
る狩野永徳の描いた‘上杉本’をみたくて山形の米沢市上杉博までクルマを走ら
せた。これも生涯の思い出となる美術館巡りのひとつ。いろいろな洛中洛
外図がインプットされるとき、出光が所蔵する‘江戸名所図屏風’にも遭遇した。
洛中洛外図に較べると画面のサイズは小さいので鑑賞のエネルギーの消費量は
少なくあまり疲れない。そのため集中力が増し細部にまでフォーカスされた
人々の遊興の場面や職人たちの仕事ぶりなどを興味深くみることができる。

例えば、歌舞伎と並んで人気の娯楽だった人形浄瑠璃(上の画像)だったり、
町屋の建築風景、吉原と遊女、湯屋と湯女、、文字の情報で江戸の社会状況
を知るより絵画をみるほうが情報が立体的になりいろいろとイメージが膨ら
む。もともと好きな歴史が絵画を通じてより深く理解できるようになった。

出光に通って大きな収穫だったのが‘桜下弾弦図屏風’に出会ったこと。顔の描
き方は岩佐又兵衛風の表現だが、ここに登場する女性たちはどこか愛嬌がある。
視線がすぐ向かうのが長煙管(キセル)をもち立っている女。まわりの桜や
藤の花のなかに溶け込んでいるところがじつにいい。

浮世絵の楽しみは版画だけでなく数が少ない肉筆画と対面しているときも心
が浮き浮きしてくる。出光は肉筆浮世絵のコレクションで知られている。
その全貌を知ったのは2006年に開かれた企画展。出光蔵のものだけでなく
東博などからもいい絵が揃い肉筆の魅力を堪能した。そのなかで長くみていた
のが、菱川師宣(?~1694)の‘遊楽人物図貼付屏風’、勝川春章(1726
~1792)の絶品‘美人鑑賞図’、喜多川歌麿(1753~1806)の‘更衣
美人図’。とくに群像美人画の‘美人鑑賞図’に魅了され続けている。

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2020.10.15

美術館に乾杯! 出光美術館 その三

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  ‘佐竹本三十六歌仙絵 柿本人麻呂’(重文 鎌倉時代・13世紀)

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   岩佐又兵衛の‘三十六歌仙図 山辺赤人’(江戸時代・17世紀)

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           鈴木其一の‘三十六歌仙図’(1845年)

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          岩佐又兵衛の‘在原業平図’(江戸時代・17世紀)

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   俵屋宗達の‘伊勢物語図色紙 武蔵野’(江戸時代・17世紀)

昨年秋、京博で奇跡的ともいえる‘佐竹本三十六歌仙絵展’があった。これによ
り新たにお目にかかったのがぐっと増え30点が眼の中に入った。まだ7点
残っているが、佐竹本はこれで終わりになりそう。この特別展の前、歌仙
絵をまとめて見る機会があったのは東博と出光。これが鑑賞のベースになり
1点、2点と増えていった。だから、佐竹本というと出光には大変お世話に
なっている。

出光が所蔵しているのは‘歌聖’と称される柿本人麻呂とお坊さんの僧正遍照。
佐竹本を複数持っているのは東博、文化庁、出光(ともに2点)、サンリツ
服部美(3点)だけ。あとは個人と私立の美術館に分散している。コレクタ
ーが欲しがるこの歌仙絵が運よく2つもおさまっているのだから、流石出光
という感じ。

美術館には相性のいい作家がいる。出光の場合、絵描きでは長谷川等伯、
岩佐又兵衛(1578~1650)、田能村竹田、仙崖、勝川春章、小杉放菴、
陶芸家では板谷波山。又兵衛は熱心に三十六歌仙を描いており、全員そろった
ものや柿本人麻呂、山辺赤人らを座った姿でひとりずつ描いたものもある。
また、在原業平については立ち姿にし、伊勢物語の場面を絵画化している。
顔の下半分がぷくっとふくれる独特の人物表現が目に焼きつく。

江戸時代になって光琳、抱一らに習って全員が揃った‘三十六歌仙図’に挑戦した
のが鈴木其一(1796~1858)。表装の装飾も華やか、一度でいいから
1カ月くらい貸し出してもらえると有り難いのだが。宗達の‘伊勢物語図色紙
 武蔵野’はここにある琳派の自慢の一枚かもしれない。2008年に開かれ
た‘王朝の恋―描かれた伊勢物語’展では60点ある色紙のうち29点が集結
した。出光の企画力は本当にスゴイ。

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2020.10.14

美術館に乾杯! 出光美術館 その二

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     牧谿の‘平沙落雁図’(重文 南宋時代・13世紀)

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         牧谿の‘叭々鳥図’(南宋時代・13世紀)

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     徐祚の‘漁釣図’(重文 南宋~元時代・13世紀)

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    能阿弥の‘四季花鳥図屏風’(重文 室町時代・1469年)

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     ‘四季花木図屏風’(重文 室町時代・15世紀)

現存する牧谿の‘瀟湘八景図’は4幅、出光にあるのは‘平沙落雁図’。畠山に
ある‘煙寺晩鐘図’と同様に画面全体は靄があつくかかり確認できるのは一
部の山と左の方向へ飛んでいく雁と中央で餌を探したり羽づくろいしてい
る雁だけ。こういう水墨風景画をみると絵というのは見たものを全部描か
なくても感じたことは表現できることがよくわかる。

牧谿は絵にする生き物では猿は手長猿、鳥は叭々鳥を好んだ。‘叭々鳥'は
もともと3幅1組で足利将軍家が所蔵していたが、時が流れて今は五島、
MOA、出光に分かれておさまっている。1996年五島美で牧谿展が
開かれたとき3幅はもとの形で展示されたようだが、そのころ東京にいな
かったので見逃した。残念!

南宋から元のはじめ頃に描かれた‘漁釣図’はとても心に響く一枚。背を丸
めて釣りをしている漁夫の姿につい感情移入してしまう。漁釣は隠逸
を願う士大夫たちの理想とする行動。世捨て人にならなくても釣りは存分
に楽しめるが、釣りの趣味がないので釣り人の深い心境はわからない。
でも、のんびりと難しいことを考えずに素になってぼやーっと魚と対話を
していることは容易にはかりしれる。

ここには室町時代に描かれたいい屏風がある。アートディクターとして
足利将軍家につかえた能阿弥(1397~1471)の水墨の‘四季花鳥図’
と土佐光信筆という説もある‘四季花木図’(ともに重文)。これから紅葉が
美しい季節になるが、‘花木図’の咲き誇る紅葉と秋草、竹の取り合わせで
ぐっと秋らしくなっていきそう。

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2020.10.13

美術館に乾杯! 出光美術館 その一

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    国宝‘伴大納言絵巻’(平安時代・12世紀)

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    雪舟の‘溌墨山水図’(室町時代・15世紀)

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    長谷川等伯の‘竹鶴図屏風’(桃山時代・16世紀)

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    海北友松の‘扇面貼付屏風’(桃山時代・16世紀)

帝国劇場の隣にある出光美へはよくでかけた。美術品が展示されているのは
ビルのワンフロア―だけなのでスペース的にはあまり広くなく急いでいる
ときは10分で終わることもある。でも、そこに飾られている絵画ややきも
のなどはどの企画展でも質の高いものが多い。親しい友人がこの会社に勤め
ていたので昔から特別な美術館として心に刻まれている。

出光の誇るお宝中のお宝は国宝に指定されている‘伴大納言絵巻’。緊張感に
つつまれるのが朱雀門を通り抜けて火事場に駆けつける民衆の場面(上)と
燃え上がる応天門(下)が描かれている上巻。火事がおきるといつの時代
でも人々は大パニックに陥る。火災がおきたのは866年3月10日の夜。
消化の環境が整備されてなかった当時は火が出たら終わり。紅蓮の炎が恐ろ
しいほどリアルに表現された絵画はほかにみたことがない。この絵との出会
いはエポック的な鑑賞体験。またみてみたい。

画聖・雪舟(1429~1506)の絵を所蔵しているというのは美術館に
とっては胸をはれること。ここには拙宗と名乗っていた頃描いた達磨図を含
めて3点ある。‘溌墨山水図’は岩々を墨の濃淡でざざっと力強く描いたという
印象が強い作品。

長谷川等伯(1539~1610)の作品が東京でみられるところですぐ
思いつくのは‘松林図’が定期的に公開される東博と出光。以前ミニ長谷川等伯
展を体験したが‘竹鶴図屏風’や‘竹虎図屏風’などにお目にかかった。最近ご無
沙汰しているが、等伯の展示はどうなっているのだろうか。また、等伯と同
じ桃山時代を生きた海北友松(1533~1615)の‘扇面貼付屏風’にも
魅了される。     

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2020.10.12

美術館に乾杯! 畠山記念館 その五

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Img_0001_20201012223001     国宝‘蝶螺鈿蒔絵手箱’(鎌倉時代・13世紀)

Img_0006_20201012223001     本阿弥光悦の‘扇面月兎図’(江戸時代・17世紀)

Img_0002_20201012223001     尾形光琳の‘紅葵花蒔絵硯箱’(江戸時代・18世紀)

Img_0005_20201012223001     尾形乾山の‘色絵絵替り土器皿’(江戸時代・18世紀)

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Img_0004_20201012223101     雪村の‘竹林七賢図屏風’(重文 室町時代・16世紀)

畠山へでかけると毎回サプライズの作品に遭遇したという思い出がある。
国宝の‘蝶螺鈿蒔絵手箱’をみたときも蝶や牡丹の文様に使われた貝片がえも
いわれぬ美しさで薄ピンクや緑色に輝いていた。こういう螺鈿や蒔絵の
細工がされた手箱をいくつかみたが、感動の大きさではこれが一番。

琳派の大御所といった存在の本阿弥光悦(1558~1637)、ここに
は宗達の絵とコラボした和歌の書、そしてコレクターが競って手に入れ
ようとした光悦茶碗が2点、変わったところでは山に棲む鬼女の能面が
ある。光悦は書や工芸的なものを創作しただけでなく絵もしっかり描いて
いる。それが扇面に描かれた月と兎。右の金箔が月に見立てられ、左では
緑の地に浮き上がる白兎が月を見上げている。まわりには萩とススキが咲
き乱れているのでこれは中秋の名月の場面。非対称に分割された金色と緑
のコントラストが強いインパクトを放っている。

畠山は琳派コレクションの一大拠点のひとつだから、なんでもでてくる。
尾形光琳(1858~1716)は2点の絵のほかに‘紅葵花蒔絵硯箱’もあ
る。尾形乾山(1663~1742)の乾山焼もずらずらっと揃っている。
お気に入りは梅、菊、ススキなどを絵柄に使った‘色絵絵替り土器皿’。根津
にある同様の五枚組が目の前をかすめる。

ここの隠れた名画が室町時代末期に関東で活躍した画僧、雪村の‘竹林七賢
図’。隠れたという意味はこの屏風が回顧展に登場しないから。2度雪村展
に遭遇したが、いずれも出品されなかった。だから、竹林に集まって子ど
もと遊んだり仲間と談義している七賢者がみれたのは貴重な体験だった。

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2020.10.11

美術館に乾杯! 畠山記念館 その四

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    長次郎の‘赤楽茶碗 銘 早船’(桃山時代・16世紀)

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     ‘備前火襷水指’(重文 桃山時代・16世紀)

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     ‘志野水指 銘 古岸’(重文 桃山時代・16世紀)

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     ‘伊賀花入 銘 からたち’(重文 桃山時代・16世紀)

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    野々村仁清の‘銹絵富士山香炉’(江戸時代・17世紀)

日本の窯で焼かれたものに対する好みは人夫々。趣味でやきものをつくって
いる友人だと、つくりたいのものが絞られているから例えば織部風が好きな
のか備前風にほれ込んでいるのかがわかる。実際に土をこねたり釉薬を調合
することがないと、作品にたいする興味は広がったまま。そのため、目の前
に現れたやきもの展など鑑賞する機会は逃さないようにしている。これを積
み重ねたお蔭でどこの美術館が名品を所蔵しているかおおよそわかっている。

私立のブランド美術館は長次郎や光悦の黒楽、赤楽茶碗を所蔵しているとこ
ろが多い。畠山にある長次郎は‘赤楽茶碗 銘 早船’。これは長次郎七種に
数えられているもの。貫入があるのと高台の上に山形の青鼠色の釉薬が流れ
ている景色が味わい深い。赤と黒の美が心に響く楽茶碗は別格の存在という
思いが強いが、ほかのやきもにも茶人たちに愛された茶道具がある。その
ひとつが‘備前火襷水指’。備前焼茶陶というと花入と水指だが、これは絶品の
水指。備前の見どころである薄い赤茶色の火襷模様が心をとらえて離さない。

志野焼のお宝として誰もが思い浮かべるのは三井記念美にある国宝の‘志野
茶碗 銘 卯花墻’、そして次に有名なのが五島と根津が所蔵する鼠志野(共
に重文)。では、ほかにはどれがあるの?と言われてピンとくる人は何度も
畠山へ通っている人かもしれない。‘志野水指 銘 古岸’は女性的なイメージ
のある志野とはちがい力強く男性的な志野。これと対面するのにえらく時間
がかかり、思いの丈が叶ったのは5年前のこと。葦と桧垣文の絵付けをしみ
じみとみていた。

伊賀焼だと条件反射的にでてくるのが五島の‘古伊賀水指 銘 破袋’とここに
ある‘伊賀花入 銘 からたち’。‘からたち’をみたとき思わずのけぞった。
スゴイ存在感である。表面のビロード釉、黒く焦げた部分が荒々しく備前以上
に強烈な土味が感じられる。やきもののアヴァンギャルドといったところ。

野々村仁清の‘銹絵富士山香炉’は一瞬あっけにとられる作品。富士山に見立て
たのが香炉の蓋の部分、山頂には穴が開いていて香木を焼いた煙がでてくる
ようになっている。この富士山は朝、昼、夜の3ヴァージョンがあり夫々
景色がちがう。仁清の創作センスは天才的。

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2020.10.10

美術館に乾杯! 畠山記念館 その三

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       ‘染付龍濤文天球瓶’(重文 明時代・15世紀)

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     ‘金襴手六角瓢形花入’(重文 明時代・16世紀)

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     ‘唐物肩衝茶入 銘 油屋’(重文 南宋時代・13世紀)

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    ‘大井戸茶碗 銘 細川’(重文 李朝時代)

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    ‘割高台茶碗’(李朝時代)

やきもの展をよく開催する美術館というとすぐ思いつくのは五島、根津、
出光、プラス銀座の松屋、ここでもいい企画展が定期的に行われる。
また、やきものを含めた工芸展が得意なのがサントリー。畠山でこういう
作品がたくさん並ぶやきもの展が開かれることはないが、所蔵の名品を
ローテーションして披露している。これをみるためよく足を運んだ。

・2007年 ‘染付・呉須・祥瑞ー青と白のやきものー’
・2008年 ‘赤のやきものー金襴手・万暦赤絵・古赤絵・南京赤絵ー’
・2010年 ‘織部が愛した茶碗ー高麗 割高台ー’

こうした展示でチラシに載っているのは多くが重文指定。この目玉に遭遇
したときの感動は半端じゃないものがある。‘染付龍濤文天球瓶’はその堂々
とした風格に圧倒される。龍が描かれたこのタイプの天球瓶はほかでもみ
たことがあるが、青の輝きといい大きさといいこれがベストワン。生涯の
思い出である。翌年に遭遇した‘金襴手六角瓢形花入’にも吸いこまれる。
瓢箪形をきれいに六角にする造形センスがすばらしい。

そして、その2年後に登場したのが李朝時代につくられた‘割高台茶碗’。
これは古田織部が所持していたもの。圧倒的な存在感を発揮しているのが
一部が大きく切り落とされた高台。これほど大胆にカットされた高台はほ
かにみたことがない。こういう茶碗は異形の部類にはいるかもしれないが、
一度みてしまうとこの立ちすぎるキャラに病みつきになる。

茶人に愛される茶道具がまだある。南宋時代につくられた‘唐物肩衝茶入 
銘 油屋’と大井戸茶碗の名品‘銘 細川’。小さいが胴がぷくっと膨れたこげ
茶色の茶入に大変魅了されている。なかでも‘油屋’はお気に入りの茶入。
いつまでもみていたくなる。‘天下三井戸’といわれてきたのが‘喜左衛門’
、‘加賀’とこの‘細川’。お椀形の茶碗は普段これでご飯を食べているからとて
も親しみやすい。そして、枇杷色の釉薬と梅花皮のぶつぶつにも目が寄って
いく。

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2020.10.09

美術館に乾杯! 畠山記念館 その二

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   光悦・宗達の‘四季草花下絵和歌巻’(重文 江戸・17世紀)

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    本阿弥光悦の‘赤楽茶碗 銘 雪峯’(重文 江戸・17世紀)

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    尾形光琳の‘躑躅図’(重文 江戸・18世紀)

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   酒井抱一の‘賤が屋の夕顔図’(江戸・19世紀)

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        鈴木其一の‘向日葵図’(江戸・19世紀)

畠山へ行く楽しみのひとつが琳派との出会い。ここの琳派コレクションもい
ろいろ揃っており、しかも質が高いので琳派の装飾性と豊かなデザイン感覚
を存分に堪能できる。王朝の和歌の世界と琳派の華麗な装飾美が融合した
新しい日本美を生み出したのが本阿弥光悦(1558~1637)と俵屋
宗達のコラボ。この和歌と絵の組み合わせはいくつかのヴァリエーションが
あるが、‘四季草花下絵和歌巻’は太い竹の幹からはじまり梅、躑躅、蔦が金銀
泥のたらしこみ技法で描かれている。

光悦茶碗は黒楽でも赤楽でもつくられたものは全部みたいという思いに駆ら
れる。それほど光悦のやきものには魅力がある。‘赤楽茶碗 銘 雪峯’は茶碗
の半面と高台のところにできた大きな火割れが強いインパクトをもっており、
その金粉漆でなされた繕いが目に焼きつく。この火割れによる力強さが茶人
の心をぐっと惹きつけた。

尾形光琳(1658~1716)の‘躑躅図’はぱっとみると平板的な印象だが、
じっとみてると右からせり出す土の盛り上がりはこちらと向こう側を分割し
奥行きをつくっている。何気なくこういう配置になった感じだが、そこが
光琳の面を使った天性の造形感覚。そして、赤い躑躅の下に光琳特有の流水
が流れ動きがでている。この‘動’と安定感のある土のかたまりの‘静’の対比も
感心させられる趣向。

酒井抱一(1761~1828)にこんなおもしろい絵があったのかと仰天し
たのが、猫が藁ぶきの家の屋根にのぼりきょろきょろしている‘賤が屋の夕顔図'。
夕顔が猫に完全に食われている。この猫以上にサプライズなのが鈴木其一
(1796~1858)の‘向日葵図’、みた瞬間其一は日本のゴッホか、と思っ
た。2年くらい前、また、浮世絵のひまわりの絵をみた。描いたのはあの北斎、
この向日葵はアメリカのシンシナティ美が所蔵している。嬉しい里帰りに遭遇
した。

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2020.10.08

美術館に乾杯! 畠山記念館 その一

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    牧谿の国宝‘煙寺晩鐘図’(南宋時代・13世紀)

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    夏珪の‘山水図’(重文 南宋時代・13世紀)

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    因陀羅の国宝‘禅機図断簡’(元時代・14世紀)

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    趙昌の国宝‘林檎花図’(南宋時代・13世紀)

白金台にある畠山記念館は以前よく通い牧谿、琳派、やきものなどを楽しま
せてもらった。おかげで図録に載っている主要な美術工芸品はおおよそ目の
なかに入った。美術館へは地下鉄浅草線の高輪台駅で下車し10分くらい歩
くと到着する。2階の展示室では畳が敷いてあるところで掛物をじっくりみ
れるようになっている。まさに美術コレクターの家へお邪魔してみせてもら
っている感じ。今年はコロナ禍で展示のスケジュールがくるっているが、
通常は年4回の展観となっている。

当初、ここへ出かける目的は牧谿の‘瀟湘八景図 煙寺晩鐘図’をみることだ
ったが、なかなか対面できなかった。瀟湘八景図は4点あり‘漁村夕照図’
(国宝 根津美)と‘遠浦帰帆図’(重文 京博)は画面全体に靄がかかって
いるがモチーフの輪郭や配置状況はだいだいつかめる水墨風景画になって
いるのに対し、この‘煙寺晩鐘図’と‘平沙落雁図'(重文 出光美)はさらに靄
がかかりどこに寺があり雁がいるのかぱっとみただけではわからない。目が
慣れてくると靄のなかにさすかすかな光によって寺の屋根がとらえられて
くる。もうどっぷり靄の世界につつまれているから精神状態は普通ではなく
なっている。鐘の音が聞こえてきた。これが牧谿マジック。

牧谿に較べると画院画家の夏珪の‘山水図'はバランスがよく安心してみられ
る。雪舟の‘山水長巻'に似たような構図がでてくるので、雪舟は夏珪を意識
したにちがいない。因陀羅の‘禅機図断簡'のひとつが畠山にもおさまってい
る。禅師が教えを請う人物に悟りの機略を説いている場面が描かれている。
‘分別心を断ち切れば自由自在にものがみえてくるぞ'と笑い顔で言っている。

趙昌の‘林檎花図'は中国絵画で知られる花鳥画の名品のひとつ。団扇形の小
さな画面に描かれているのは緑の葉が目に焼きつく一枝の林檎花。中国の
花鳥画もとても魅力的。

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2020.10.07

美術館に乾杯! 静嘉堂文庫美術館 その五

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Img_0005_20201007224401     橋本雅邦の‘龍虎図屏風’(重文 1895年)

Img_0002_20201007224401     前田青邨の‘唐獅子図’(1936年)

Img_20201007235101      鏑木清方の‘朝図’

Img_0003_20201007224501           歌川国貞の‘星の霜当世風俗 蚊やき’(1819年)

どこの美術館でもお宝中のお宝はそう簡単には姿を現してくれない。静嘉堂
の場合は橋本雅邦(1835~1908)の最高傑作‘龍虎図屏風’がそうだ
った。絵の存在を知ったのはずいぶん前になるが、何度も通った静嘉堂での
対面は叶わず、三菱一号館が開館し三菱所蔵の名品展という大イベントが
開催されたときようやくみることができた。印象的だったのは胡粉の白が
たっぷり使われた波濤の描写。そこから2頭の龍が突進してきてくる。それ
をかっとみているのが右の2頭の虎。その姿勢はまわりの竹が大きく曲がる
ほど強く吹く風をさけるように腰を落として低く構えている。白、金色、
緑の対比がじつに鮮やかでテンションが一気に上がった。

それから十数年経つが2度目の鑑賞はまだ遭遇してない。だから、これまで
4回くらいみた狩野芳崖の‘悲母観音図’(東芸大美)と比べると鑑賞時間が
短い分龍虎がまだ完全に体のなかに入っていない。来年三菱一号館美で前と
同じように静嘉堂文庫や東洋文庫のお宝をどっど公開するようなので、再会
が期待できるかもしれない。

静嘉堂には画集に載っている近代日本画はあまりない。龍虎図のほかで記憶
にあるのは前田青邨(1885~1977)の‘唐獅子図’など3点と鏑木
清方(1878~1972)の‘朝図’くらい。‘唐獅子図’は三の丸尚蔵館にあ
る六曲一双に描かれた唐獅子の小型ヴァージョン。金銀が輝く飾り物の彫刻
のような独特の唐獅子はどことなく琳派風でとても惹かれる。

ここは浮世絵師、歌川国貞(1786~1864)のコレクションで有名。
一度企画展でみたが、美人画も役者絵も風俗画も描ける国貞の底力をみせつ
けられた感じだった。とくにおもしろかったのが‘星の霜当世風俗 蚊やき’。
女がひざまづいて蚊帳のなかに入ってきた蚊を火でやっつけようとしている。
小さい頃、こういう蚊帳のなかで寝ていたことを懐かしく思い出した。

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2020.10.06

美術館に乾杯! 静嘉堂文庫美術館 その四

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        円山応挙の‘江口君図’(1794年)

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        池大雅の‘寿老図’(江戸・18世紀)

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    英一蝶の‘朝暾馬曳図’(江戸・17世紀)

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        沈南蘋の‘老圃秋容図’(18世紀)

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        渡辺崋山の‘遊漁図’(重文 1840年)

絵画の情報は展覧会へでかけ生の絵に接して得るだけでなく、美術本からも
目を惹く作品が入ってくる。そうしてインプットされたものが実際に作品
を所蔵する美術館でお目にかかれるまでにはまた時間がかかる。静嘉堂に
ある江戸絵画のなかで円山応挙(1733~1795)の‘江口君図’につい
てはなかなか縁がなかった。なにかの企画展がここであったときようやく
対面が叶った。象に乗った普賢菩薩に見立てられているのは遊女。ところが、
この遊女はとても品よく描かれている。絵画とつきあっていると遊女を普賢
菩薩に変身させるという大胆な発想をする画家にも遭遇する。

池大雅(1723~1776)の‘寿老図’と英一蝶(1652~1724)の
‘朝暾曳馬図’は2009年に開催された‘静嘉堂の水墨画名品選’でお目にかかっ
た。縁起のいい寿老人に出会うのは楽しい。異様にデカい頭にさほど違和感
を感じないのは大きな鼻と垂れ目に愛嬌があるから。後ろにいる丹頂鶴は
本来はもっと華やかなのに小さく描かれているため影が薄い。

‘朝暾曳馬図’の見どころは川面に映る童と馬の影。17世紀の後半ごろ描かれ
た風俗画に影の表現が使われていたとは!英一蝶、スゴイじゃないか。この
絵や浮世絵に描かれた影をみたらヨーロッパの人たちは目を白黒させるにち
がいない。エポック的な鑑賞体験になった。

江戸中期の18世紀、清の画家、沈南蘋(しんなんぴん)が日本のやって来
て濃密でリアルな花鳥画を広めた。これに応挙、曾我蕭白、伊藤若冲らも影
響を受けた。‘老圃秋容図’はなにかをじっと見つめる猫の姿が強く印象に残る。
渡辺崋山(1793~1841)の‘遊漁図’も美術館自慢の一枚。画面の上と
下に酒井抱一を連想させる荒々しい波があり、その間を鯛などがとびはねて
いる。これは元気が出る。

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2020.10.05

美術館に乾杯! 静嘉堂文庫美術館 その三

Img_20201005223501        馬遠の国宝‘風雨山水図’(南宋時代・13世紀)

Img_0003_20201005223501     因陀羅の国宝‘禅機図断簡’(元時代・14世紀)

Img_0002_20201005223501        ‘竹林山水図’(重文 明時代・14世紀)

Img_0001_20201005223501     式部輝忠の‘四季山水図屏風’(重文 室町時代・16世紀)

Img_0004_20201005223501        前嶋宗祐の‘高士観瀑図’(室町時代・16世紀)

静嘉堂が所蔵する水墨山水画のコレクションはときどき公開される。美術館
とのつきあいが長くなり、展覧会計画をまめにチェックするようになるとふ
だんは縁のうすい中国の水墨画や雪舟ではない絵師たちの作品との対面も叶
うようになる。ここならと決めたブランド美術館へはとことん通うのが名画
を楽しむコツかもしれない。

ここには国宝に指定された中国絵画が2点ある。南宋時代の画院画家の馬遠
が描いた‘風雨山水図’と元時代の禅僧、因陀羅の‘禅機図断簡’。‘風雨山水図’で
視線がとまるのは左下にみえる傘をさした人物。どこかでみた覚えがある。
そう、歌川広重の‘東海道五十三次之内 庄野’。天に突き抜けるようにそびえ
たつ遠景の山々にかき消されてしまいそうな存在ではあるが、その姿にはじ
んとくる。5幅ある‘禅機図断簡’はテーマはちがうがどれもどこか笑いを含む
人物描写が心を和ませる。余裕の感じられる高僧というのやはり特別の存在。

竹というのは小さい頃から馴染みが深い。竹トンボというのを小刀をつかって
よくつくった。わかる人にはわかる。また筍も好物のひとつ。幾本もの竹が揺
れる情景がしんみりくる‘竹林山水図’は明時代の描かれたものだが、円山応挙
の‘雨竹風竹図’(重文 京都・圓光寺)を連想させる。

日本の水墨画というと雪舟や周文のものばかりが思い浮かんでくるが、ほかの
画家たちのものはまとまってみる機会が少ないためついつい忘れがち。静嘉堂
でみた式部輝忠の‘四季山水図屏風’や前嶋宗祐の‘高士観瀑図’は強く目に焼きつ
いている。こういう水墨画に出会えるというのがブランド美術館ならではの
体験。

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2020.10.04

美術館に乾杯! 静嘉堂文庫美術館 その二

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     国宝‘曜変天目茶碗’(南宋時代・12~13世紀)

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    ‘大井戸茶碗 越後’(重文 朝鮮時代・16世紀)

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   野々村仁清の‘色絵法螺貝香炉’(重文 江戸・17世紀)

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    ‘色絵牡丹文水注’(江戸・17~18世紀)

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    ‘色絵鶴亀松竹梅菊花形大鉢’(18~19世紀)

中国・南宋時代につくられた曜変天目茶碗で日本に伝世した3碗のひとつを
静嘉堂文庫が所蔵している。大阪の藤田美と京都の龍光院にあるものはみる
機会が少ないのに対して、ここにある‘稲葉天目’は定期的(1年半くらい?)
に公開される。また、国宝展が開催されるときは主催者からは欠かせない
特別なピースとしてお声がかかる。だから、これまで片手をこえる回数ほ
ど鑑賞することができた。最近は宇宙のことを考える時間が多くなっている
から、以前にも増してこの茶碗が放つ星々の輝きに魅了されている。小さな
茶碗から広大な宇宙に想像が膨らんでいくなんてすごくロマンチックな美術
鑑賞である。

静嘉堂のやきものコレクションは唐物や朝鮮のものをふくめて質が高い一品
がたくさんそろっている。館蔵品のやきもの展はこれまで3回くらい遭遇し
たので、そのとき制作された図録をみると主要なものはだいたいみたことに
なる。‘大井戸茶碗 越後’は大変有名で2013年根津美で開かれた井戸茶碗
展にも出品された。

野々村仁清の‘色絵法螺貝香炉’はじつにユニークなやきもの。法螺貝が香炉に
変身するとは。この飛んだ発想は現代オブジェにも通じるものがあり、仁清
の革新的な創作は茶道具の絵付けを絵画のイメージでおこなうだけでなく、
法螺貝と香炉をむすびつけることにまで及んでいる。まったくすばらしい!

2008年、コレクションの柱のひとつとなっている肥前磁器のなかから古
伊万里・金襴手様式の作品にスポットをあてた‘岩崎家の古伊万里’展が開かれ
た。ここで目が点になるすごい名品に出会った。鍋島の‘色絵牡丹文水注’と
金襴手様式の‘色絵鶴亀松竹梅菊花形大鉢’。鍋島も金襴手も目は慣れていたが、
これには参った!流石、岩崎家という感じ。

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2020.10.03

美術館に乾杯! 静嘉堂文庫美術館 その一

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   俵屋宗達の国宝‘源氏物語関屋・澪標図屏風’(江戸・17世紀)

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        尾形光琳の‘鵜船図’(江戸・18世紀)

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    酒井抱一の‘波図屏風’(右隻 1815年)

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    鈴木其一の‘雪月花三美人図’(江戸・19世紀)

静嘉堂文庫美へいくときの交通ルートは東急田園都市線あるいは東急大井町
線で二子玉川駅まで行き、そこからはバスに乗り静嘉堂文庫で下車。降りて
からは5分も歩くと到着するがちょっと坂道なのでで少しおっくう。このと
ころ足が遠のいているが、五島美同様、以前はよく通った。

この美術館の最大のお宝は俵屋宗達の‘源氏物語関屋・澪標図屏風’とやきもの
好きにはたまらない魅力を秘めた‘曜変天目茶碗’。展示される頻度は曜変天目
のほうが多く、関屋・澪標はここではまだ2回くらいしかみていない。
宗達の描いた屏風で国宝に指定されているのは‘風神雷神図’と‘関屋澪標’の2点。
琳派狂いとしてはこういう傑作は何度でもみたいが、残念なことに尾形光琳
(1658~1716)の2点の国宝‘紅白梅図’と‘燕子花図’とくらべると目にふ
れる機会はぐんと下がる。東京の美術館にある‘関屋・澪標’は公開の回数が増
えることを切に願っている。

‘関屋・澪標図’に大変魅了されるのは伊勢物語図色紙の拡大版といった感じで、
人物描写や牛の描き方がかわいくてどこかもっこりとしているところ。浮世絵
の美人画でいうと鈴木春信的な子供っぽさがある。そして、平板に描かれてい
るが目を惹く構図と緑と金色の明快なコントラストも心をとらえて離さない。

ここも根津、五島、畠山と同様、琳派コレクションの一大拠点。光琳、酒井
抱一(1761~1828)、鈴木其一(1796~1858)のいい絵を揃
えている。お気に入りは光琳の‘鵜船図’、波が上下に大きく動きそれに呼応する
ように鵜も船も鵜匠もゆらゆらしている。せかせかしている鵜飼の様子を瞬間
的にみせるのだから光琳はたいした表現力をもっている。

この水の数倍も激しく揺れうごく波濤を銀で描いた抱一の‘波図屏風’も忘れら
れない一枚。展覧会にはあまりでてこないが、この波の怪物が荒れ狂っている
ようなイメージは装飾的な琳派の描き方では異色の部類に入る。其一の‘雪月花
三美人図’は寛永のころの美人画を連想させる。    

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2020.10.02

美術館に乾杯! 五島美術館 その四

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   直翁の国宝‘六祖挟担図’(南宋時代・13世紀 大東急記念文庫)

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    横山大観の‘水温む’(1954年)

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    小川芋銭の‘夕風’(1924年)

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    川端龍子の‘富貴盤’(1946年)

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       小茂田青樹の‘緑雨’(1926年)

国宝に指定された絵画の価値がすっとわからないときがある。五島美の横に
併設されている大東急記念文庫が所蔵する‘六祖挟担図’をはじめてきたときは
ピンとこなかった。淡い墨でさらっと描かれた中国禅宗の第六祖慧能が真に
迫ってみえてきたのは次の対面のとき。顔の部分をじっくりみると小さな目
ときりっとし端正な口元もなかなかいい。墨の表現に通じるには時間がかか
るので中国の絵とのつきあいは長くなる。

あまり頻繁には公開されないがここには近代日本画が結構な数ある。そのな
かでとくに有名なのが横山大観(1868~1958)の‘水温む’と小川芋銭
(1868~1938)の‘夕風’。大観の水墨画をたくさんみたが、最も魅了
されているのがこの‘水温む’(みずぬるむ)。美術館はいい絵はほかの美術館
に貸したがらないという法則の通り、何度も開催された大観展でこれにお目
にかかったのは一度しかない。以前、ここの学芸員に所蔵名品展を企画する
ときは是非これを入れてと依頼しておいたが、運よくそれが実現し2度目の
対面が叶った。やはり傑作だった。

大観と同じ年に生まれた芋銭の‘夕風’は珍しく色彩の印象が強く残る一枚。
この絵は注意が必要。あまり手前にどんと並ぶ唐黍ばかりに気をとられると
その向こうに描かれている白馬や子どもをふくめた村人の存在を見落として
しまう。でも、風になびく唐黍が目立ちすぎるので視線がどうしてもこっちに
向かう。

派手な牡丹を描くのは大変難しい。だから、並の絵描きはこれに手をださない。
川端龍子(1885~1966)の牡丹は島根県の足立美でもお目にかかった
が、ここの‘富貴盤’もずっとみていたくなる牡丹である。萎れはじめているが、
白い花びらからはまだオーラがでている。

小茂田青樹(1891~1933)の‘緑雨’はお気に入りの絵でMyベスト5
青樹に入れている。この絵もふつうは大きな芭蕉の葉に目がいく。そして、
視線を下に落とすとなんと小さな蛙がいる。この対比のさせ方が意表をつく。
また、降っている雨の描写にとても情感を感じる。

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2020.10.01

美術館に乾杯! 五島美術館 その三

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    ‘佐竹本三十六歌仙絵 清原元輔’(重文 鎌倉時代・13世紀)

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     ‘寸松庵色紙’(重文 平安時代・11世紀)

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    尾形光琳の‘紅葉流水図’(江戸時代・18世紀)

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      牧谿の‘叭々鳥図’(南宋時代・13世紀)

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    馬麟の‘梅花小禽図’(重文 南宋時代・13世紀)

五島でも根津でも静嘉堂でもお目当ての所蔵品が一度にみられるわけではな
いので何度も足を運ぶことになる。訪問を重ねるにつれ美術館への親近感が
増し美術館通いが本当に楽しいものになっていく。つくづく美術品の鑑賞を
趣味にして良かったなと思う。

五島へは何度も出かけたので図録に載っている絵画、やきもの、書などはお
およそ目に入った。ときどきそれらをながめているが、コレクションの質の
高さにはほとほと感心させられる。‘佐竹本三十六歌仙絵 清原元輔’はここに
来た最初の頃にみた覚えがあるが、2年前逸翁美とのコラボ展で久しぶりに
再会し、昨年も京博の‘佐竹本三十六歌仙絵展’でみた。大集結した歌仙絵をみ
るために大勢の人が集まるのだから、‘清原元輔像’は美術館にとっては特別な
お宝にちがいない。

西本願寺に‘本願寺三十六人家集’(国宝)という装飾料紙の限りを尽くした
美しい冊子本があるが、これと同じくらい唐紙の綺麗な雲母摺りにうっとり
するのが‘寸松庵色紙’。この雲母の磁力はとても強く、顔をくっつけるように
してみてしまう。こうした雅なイメージにつつまれた和歌の世界と自然とつ
ながるのが尾形光琳(1658~1716)の‘紅葉流水図’。はっとさせる
大胆な画面構成だが、その優れたデザイン感覚は歌に詠まれた竜田川の紅葉
にぴったりあっているような気がする。

高い人気を誇る牧谿の‘叭々鳥図’は自慢の一品だろう。これはもともと三幅対
で織田信長が所持していた。ほかの二幅はMOAと出光にある。そして、思わ
ず足がとまるのが馬麟の‘梅花小禽図’。画面を対角線で切る太い梅の枝が印象
的でそこにとまる二羽の小鳥が可愛い。

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