Anytime アート・パラダイス! ワイエスのレアリスム
海外の美術館をめぐっているとまったく想定外の展覧会に出くわすことがあ
る。このたまたまがビッグな画家の回顧展だともう天にも昇るような気持ち。
2008年のホッパー展(シカゴ美)がそうだし、2016年のワイエス展
(マドリード テイッセン・ボルネミッサ美)も嬉しくてたまらなかった。
名の知れた画家に関連する書物、例えばTASCHEN本とか日本の出版社が市販
している画集(高価な専門美術本ではないもの)はかなり揃っているが、
アンドリュー・ワイエス(1917~2009)については1冊もない。
そのため、アメリカの国民的画家なのにその画業全体がつかめずにいた。それ
がマドリードで遭遇した回顧展のおかげで半分くらいのところまできた。立派
な図録はホッパー展のもの同様わが家の家宝である。
NYのMoMAで‘クリスティ―ナの世界’に出会ったことでワイエスという画家を
知った。目が点になったのは体を地面に横たえた少女のまわるにはえている
草々の超精密が描写。なぜこの少女はこんな格好でいるかということより、絵
の完成には点描と同じくらいの高い技術を必要とし長い時間がかかっただろう、
と制作のことばかりに気が回っていた。男性の肖像画‘シードッグ’の金色の
髭にも参ったという感じ。
1943年に描かれた‘ハンター’と‘競売’でも草一本々の描き方には相変わらず
の高い写実性がみられる。さらに意表を突かれるのが‘ハンター’の俯瞰の視点。
枝を沢山出した大木の下にハンターがうろついている。競売にかけられた農場
に大勢の人たちが集まっている場面を絵にするというルポライター的な感覚も
社会的レアリスムに関心の高かったワイエスの真骨頂がでている。
‘アルバートの息子’は2018年北欧を旅したとき、オスロ国立美でお目にか
かった。ここでワイエスがみれるとは。ヨーロッパの美術館でワイエスをみた
のははじめてのこと。大収穫だった。
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