西洋美の‘ロンドン・ナショナル・ギャラリー展’!(2)
クリヴェッリの‘聖エミデイウスを伴う受胎告知’(1486年)
エル・グレコの‘神殿から商人を追放するキリスト’(1600年)
ナショナル・ギャラリー展の開催を知って手にしたPRチラシにクリヴェッリ
(1430年代~1494)の‘聖エミディウスを伴う受胎告知’が載ってい
るのをみて、‘いやー、ずいぶん渋い絵をもってくるね’と思った。日本で海外
の美術館が所蔵する西洋古典絵画はこれまで多数披露されたが、クリヴェッ
リをみた記憶がない。
この画家のイメージは女性の着ている衣裳や宝飾品を豪華で緻密に表現す
ることと、その魔性を秘めた目があまりにゾクッとさせられるので当時の
画家の世界では規格外の表現だっただろうと思わせるところ。ナショナル・
ギャラリーにもそのタイプの絵があるが、今回やって来たのはそれではなく、
オーソドックスなマリアの受胎告知の絵。遠近法が駆使された画面で視線が
集中するのは精霊の鳩が飛んできたことを示す金色の光線。これほど明確に
光線が輝いている受胎告知の絵はあまりない。また、この場面に孔雀が登場
するというのも珍しい。
ヴェネツィア派のティツィアーノ(1485~1576)の‘ノリ・メ・タン
ゲル(我に触れるなかれ)’とティントレット(1518~1596)の‘天の
川の起源’は大収穫。ともに美術品によく掲載されている名画だから、ダ・ヴ
ィンチとラファエロがなくてもOKマークは出せる。この美術館にはいいヴェ
ロネーゼがあるのから1枚でも展示してくれたら申し分なかったが。
エル・グレコ(1541~1614)の‘神殿から商人を追う払うキリスト’は
描かれた人物の姿をひとり々みていると神殿に奥行き感がでてくる。前かが
みになっている者、右手を横にふるキリストと呼応するように手を曲げたり
頭の方にもっていく者もいる。右側では話し込むグループが前後に2組みられ
る。その表情、手振りはダ・ヴィンチの‘最後の晩餐’の人物表現を連想させる。
会場で一際輝いている肖像画が目にとまった。それはヴァン・ダイク
(1599~1641)の‘レデイ・エリザベス・シンベビーとアンドーヴァ
ー子爵夫人ドロシー’。同じような顔つきでとても綺麗に描かれた二人は姉妹。
右のキューピッドからバラを受け取っているのが姉でアンドーヴァー子爵夫人
ドロシー。これは彼女の結婚を記念して描かれたもの。
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