美術館に乾杯! 静岡県立美術館 その二
以前TVの美術番組をみていたらで中国の北京かどこかの街でストリート
絵画をしている人物が登場した。石の歩道をキャンバスにして水をたっ
ぷり含ませた大きな筆を使い風景画をどんどん描いていく。それは水墨画
のようにみえる。本来は紙の上に墨の濃淡で作品を完成させるのだろうが、
こうやって山々を軽妙に表現するのをみるとやはり中国は墨文化の国だな
と感心しながらみていた。
その中国から伝わって来た水墨画は日本でも画聖、雪舟をはじめとして多く
の天才画家たちによって生み出されてきた。江戸時代、武士をやめて画家に
なった浦上玉堂(1745~1820)の水墨画は山々をさらさらとひかれ
た輪郭線でもっこりした形にしてその量感を部分的な濃淡と点々によって
だしているのが特徴。静岡県美にある‘抱琴訪隠図’もいい感じ。
酒井抱一(1761~1828)の‘月夜楓図’は2011年千葉市美で行われ
た酒井抱一展でお目にかかった。とても装飾性の高い水墨画で月明りによっ
て楓がシルエットとなって映える様子が心を微妙にゆする。太い幹のたらし
こみにも目がすっと寄っていく。
抱一には‘四季花鳥図巻’(東博)というすばらしい花鳥画があるが、これを
ふっと連想させるのが山口素絢(やまぐちそけん 1759~1818)の
‘春秋草花図屏風’。大きな屏風のなかにモチーフをごちゃごちゃもちこまず斜
めに傾かせた藤の木のまわりにつくしやタンポポなどを描きさわやかに仕上
げている。
山本梅逸(1783~1856)は名古屋に生まれた文人画家。この画家と
出会ったのは出光美でみた‘四季花鳥図屏風’。作品の数が少なかったときは
それほど意識しなかったが、アメリカのギッターコレクションやファインバ
ーグコレクションの所蔵作などと遭遇するうちに関心が高まっていった。
太湖石と草花を組み合わせた‘花卉竹石図’にも思わず足がとまる。
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