美術館に乾杯! 石川県立美術館 その二
金沢は京都、松江とともに日本の‘三大和菓子街'といわれている。以前TVで
金沢の人たちは和菓子を家や街のお店で日常的に食べているところが紹介
されていた。京都なら生八橋をお土産によく買うし、松江についても彩雲
堂の‘伯耆坊'を美味しくいただいている。でも、金沢の銘菓にはまったく縁
がない。誰もが知っている銘菓は何というのだろう?
お菓子の情報はないが、金箔や蒔絵のことは美術番組をみたり人間国宝展
などへ足を運んでいるのでかなり目が慣れてきた。石川県美にはこうした
工芸品の傑作がたくさん展示されている。体が吸い寄せられるのが漆芸界
の神様のような存在である松田権六(1896~1986)の‘蓬莱之棚'。
日本美術におけるMy‘鶴ベスト3'は宗達・光悦の‘鶴下絵三十六歌仙和歌巻'、
加山又造の‘千羽鶴'、そして松田権六の蒔絵。宗達、又造が飛翔する鶴の
集団を描いたのに対し、権六の鶴たちは川のなかで羽を休めている。琳派
風の美しい流水文が立ち姿の鶴を引き立てているが、ぱっとみると鶴群
が意匠化され装飾的な表現になっているようにみえるが、棚を横に視線を動
かすと一羽々の姿にはバラエティがあり、方向性も一様ではない。このあた
りがとても上手い。
松田権六に師事した大場松魚(1916~2012 人間国宝)の‘平文輪
彩箱'は6年前開催された日本伝統工芸展の特別展に出品された。繊細に細工
された輪が幾重にも重なる文様はモダンな香りがしてまるでホテルのVIPル
ームに置いてある装飾品のよう。
柴田是真(1807~1891)の‘漆絵画帖'は工芸品ハンターの心を揺す
ぶる一品かもしれない。全部で10図あり、魚や蝶々のほかに二見浦、月に
兎、亀にも目が寄っていく。安田靫彦(1884~1978)の‘飛鳥をと
め'は蓮の花をもった乙女の配置がとてもいい。後ろの仏像をふくめて画面に
広がりが感じられる。簡単に描けそうだが、こういう構図におさまるのは
画家のもっている空間感覚のなせる技。
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