美術館に乾杯! 京都国立博物館 その三
光悦・宗達の‘鶴下絵三十六歌仙和歌巻’(重文 17世紀前半)
京博で開催された展覧会で最も強く印象に残っているのは2002年の雪舟
展。当時広島にいたが、万難を排して出かけた。まさに50年に一度クラス
の大回顧展、雪舟(1420~1506)の絵を全部見せますという感じで
海外からの里帰りも含めて画集載っている主要作品はほとんど結集していた
。京博所蔵の雪舟はご存知‘天橋立図’。雪舟が82歳のころの作品といわれ
ている。天橋立へは行ったことがあるから、この風景にすっと入っていけ
る。じつに絵になる水墨画であり興奮してみていた。
唐紙に夾竹桃の文様が雲母で刷りだされている‘古今和歌集 巻第十二残巻
(本阿弥切本)’は花が比較的大きく描かれているので和歌よりも下絵のほう
を目で追っかけてしまう。もし書かれた和歌の文字が読み取れればイメー
ジがふくらむだろうが、それが無理なのでいつもこういう楽しみ方になって
しまう。
琳派狂だから本阿弥光悦(1558~1637)と俵屋宗達がコラボした
‘鶴下絵三十六歌仙和歌巻’に魅了され続けている。いちど鶴の群れが海の上を
飛ぶ姿を右から左へとじっくりみたことがある。まるで本物の鶴が飛翔する
ところを撮影した観光案内用の映像をみているよう。数えきれないほど多く
の鶴が水平飛行や上昇と下降を繰り返し、ときどき鳴き声も聞こえてくる。
書の達人光悦と宗達の類まれな感性によりこんなすばらしい絵巻が生まれた。
宗達の‘蓮池水禽図’は水墨画の傑作。構図がとてもいい。下半分にいる二羽
のかいつぶりが蓮の池ですーっと泳いでいる感じがよくでている。そして上
に描かれた蓮の葉や茎の大きいこと。だから、蓮と水鳥両方に視線がむかい
なにかゆったりした気分になる。これを墨の濃淡だけで表現できるのだから
宗達の技と絵心は神業的。
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